特許第6548648号(P6548648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6548648シアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548648
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】シアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/06 20060101AFI20190711BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20190711BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20190711BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190711BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20190711BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20190711BHJP
   F21K 9/64 20160101ALI20190711BHJP
   F21S 9/03 20060101ALI20190711BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20190711BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20190711BHJP
【FI】
   C07D471/06CSP
   H01L33/50
   C09K11/06
   H05B33/14 A
   H05B33/12 E
   G02B5/20
   F21K9/64
   F21S9/03
   F21Y115:10
   F21Y115:15
【請求項の数】28
【全頁数】94
(21)【出願番号】特願2016-532774(P2016-532774)
(86)(22)【出願日】2014年8月4日
(65)【公表番号】特表2016-534100(P2016-534100A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】IB2014063674
(87)【国際公開番号】WO2015019270
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年7月26日
(31)【優先権主張番号】13179303.6
(32)【優先日】2013年8月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ケーネマン
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエレ マッタン
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート ヴァーゲンブラスト
(72)【発明者】
【氏名】ソリン イヴァノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ゼント
【審査官】 松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02820037(US,A)
【文献】 特開2003−012516(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/168395(WO,A1)
【文献】 RUI-FA,J. et al.,JOURNAL OF MOLECULAR SCIENCE (WUHAN. CHINA),2009年,Vol.25, No.2,p.127-131
【文献】 山崎康男,有機合成化学,1962年,第20巻,第11号,第1016−1022頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/06
C09K 11/06
C07D
F21K
F21S
G02B
H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、それぞれ独立して、水素、シアノまたは非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、
ここで、それぞれのRArは、独立して、シアノ、ヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、C1〜C20−アルコキシ、C1〜C20−アルキルチオ、ニトロ、−NRAr2Ar3、−NRAr2CORAr3、−CONRAr2Ar3、−SO2NRAr2Ar3、−COORAr2、−SO3Ar2
1〜C30−アルキル、C2〜C30−アルケニル、C2〜C30−アルキニル(これらの3つの基は、非置換であるか、または1つ以上のRa基を有する)、
3〜C8−シクロアルキル、3員ないし8員のヘテロシクリル(これらの2つの基は、非置換であるか、または1つ以上のRb基を有する)、
アリール、U−アリール、ヘテロアリールおよびU−ヘテロアリール(これらの4つの基は、非置換であるか、または1つ以上のRb基を有する)
から選択され、
その際、
それぞれのRaは、独立して、シアノ、ヒドロキシル、オキソ、メルカプト、ハロゲン、C1〜C20−アルコキシ、C1〜C20−アルキルチオ、ニトロ、−NRAr2Ar3、−NRAr2CORAr3、−CONRAr2Ar3、−SO2NRAr2Ar3、−COORAr2、−SO3Ar2、C3〜C8−シクロアルキル、3員ないし8員のヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールから選択され、ここで、前記シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリール基は、非置換であるか、または1つ以上のRb基を有し、
それぞれのRbは、独立して、シアノ、ヒドロキシル、オキソ、メルカプト、ハロゲン、C1〜C20−アルコキシ、C1〜C20−アルキルチオ、ニトロ、−NRAr2Ar3、−NRAr2CORAr3、−CONRAr2Ar3、−SO2NRAr2Ar3、−COORAr2、−SO3Ar2、C1〜C18−アルキル、C2〜C18−アルケニル、C2〜C18−アルキニル、C3〜C8−シクロアルキル、3員ないし8員のヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールから選択され、ここで、前記C3〜C8−シクロアルキル、3員ないし8員のヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリール基は、非置換であるか、または1つ以上のRb1基を有し、
それぞれのRb1は、独立して、シアノ、ヒドロキシル、メルカプト、オキソ、ニトロ、ハロゲン、−NRAr2Ar3、−NRAr2CORAr3、−CONRAr2Ar3、−SO2NRAr2Ar3、−COORAr2、−SO3Ar2、−SO3Ar2、C1〜C18−アルキル、C2〜C18−アルケニル、C2〜C18−アルキニル、C1〜C12−アルコキシおよびC1〜C12−アルキルチオから選択され、
Uは、−O−、−S−、−NRAr1−、−CO−、−SO−または−SO2−部であり、
Ar1、RAr2、RAr3は、それぞれ独立して、水素、C1〜C18−アルキル、3員ないし8員のシクロアルキル、3員ないし8員のヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールであり、ここで、アルキルは非置換であるか、または1つ以上のRa基を有し、前記3員ないし8員のシクロアルキル、3員ないし8員のヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールは、非置換であるか、または1つ以上のRb基を有するが、
但し、式(I)の化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基の1、2、3、4、5、6または7つは、非置換のアリールであるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであって、かつR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基の1または2つは、シアノである]のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または該シアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物のみから構成された混合物。
【請求項2】
それぞれのRArは、独立して、シアノ、C1〜C12−アルコキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、ニトロ、−NRAr2Ar3、−NRAr2CORAr3、−CONRAr2Ar3、−SO2NRAr2Ar3、−COORAr2、−SO3Ar2、C1〜C18−アルキルであって非置換であるか、またはヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロもしくは−NRAr2Ar3によって一置換もしくは多置換された前記C1〜C18−アルキル、またはC3〜C8−シクロアルキルもしくはフェニルであり、ここで、前記C3〜C8−シクロアルキルおよびフェニルは、また非置換であるか、またはC1〜C18−アルキル、C1〜C12−アルコキシもしくはシアノによって一置換もしくは多置換されている、請求項1に記載のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または該シアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物のみから構成された混合物。
【請求項3】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基の少なくとも1つは、非置換のフェニルであるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するフェニルである、請求項1または2に記載のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または該シアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物のみから構成された混合物。
【請求項4】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基の少なくとも1つは、非置換のフェニルであるか、またはシアノ基を有するフェニルである、請求項3に記載のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または該シアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物のみから構成された混合物。
【請求項5】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基の少なくとも1つは、非置換のフェニルであるか、またはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有するフェニルである、請求項3に記載のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または該シアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物のみから構成された混合物。
【請求項6】
1、R2、R3、R4、R5およびR6基の1または2つは、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有するフェニルであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5およびR6基は、水素であり、かつ
7、R8、R9およびR10基の0、1または2つは、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有するフェニルであり、その他のR7、R8、R9およびR10基は、水素またはシアノである、請求項1から5までのいずれか1項に記載のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または該シアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物のみから構成された混合物。
【請求項7】
1、R2、R3、R4、R5およびR6基の1または2つは、フェニル、4−シアノフェニル、シアノまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有するフェニルであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5およびR6基は、水素であり、かつ
7、R8、R9およびR10基の0、1、2または3つは、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有するフェニルであり、その他のR7、R8、R9およびR10基は、水素またはシアノである、請求項1から5までのいずれか1項に記載のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物。
【請求項8】
一般式(I−A)
【化2】
[式中、
3およびR4は、それぞれ独立して、シアノ、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有するフェニルであり、かつ
7、R8、R9およびR10は、それぞれ独立して、水素、シアノ、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有するフェニルである]またはこれらの混合物に相当する、請求項1から7までのいずれか1項に記載のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または該シアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物のみから構成された混合物。
【請求項9】
式(I−Aa)
【化3】
[式中、
4は、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2または3つの置換基を有するフェニルであり、かつ
基R7、R8、R9およびR10の2つは、それぞれ独立して、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2または3つの置換基を有するフェニルであり、その他の基R7、R8、R9およびR10は、水素である]に相当する、請求項8に記載のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物。
【請求項10】
式(I−Ab)および(I−Ab’)
【化4】
[式中、
4は、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2または3つの置換基を有するフェニルであり、かつ
基R7、R10、R8およびR9の0、1または2つは、存在するのであれば、それぞれ独立して、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2または3つの置換基を有するフェニルであり、その他の基R7、R10、R8およびR9は、存在するのであれば、水素である]に相当する、請求項8に記載のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物の混合物。
【請求項11】
式(Ia)または(Ib)
【化5】
[式中、
Arは、場合によりRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、RArは、請求項1に定義される通りであり、
nは、1または2であり、かつ
mは、1または2であり、ここで(Ar)mは、*で示された位置のいずれかにある]の化合物または式(Ia)の化合物と式(Ib)の化合物との混合物に相当する、請求項1に記載の式(I)のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または該シアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物のみから構成された混合物の製造方法であって、
a1)1,8−ナフタル酸無水物を、3,4−ジアミノベンゾニトリルと反応させることで、式(IIa)および(IIb)
【化6】
の化合物を得て、
a2)ステップa1)で得られた式(IIa)および(IIb)の化合物を臭素化することで、式(IIIa)および(IIIb)
【化7】
[式中、
nは、1または2であり、
mは、1または2であり、ここで(Br)mは、*で示された位置のいずれかにある]の化合物を得て、
a3)ステップa2)で得られた式(IIIa)および(IIIb)の化合物を、式(IV)
Ar−Met (IV)
[式中、
Arは、RArによって一置換または多置換されたアリールであり、かつ
Metは、B(OH)2、B(OR’)(OR’’)、Zn−R’’’またはSn(R*3であり、ここで
R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素、C1〜C30−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールまたはヘテロアリールであるか、またはR’およびR’’は、一緒になって、C2〜C4−アルキレンであり、該アルキレンは、場合によりC1〜C4−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールおよびヘテロアリールから選択される1、2、3、4、5、6、7または8個の置換基を有し、
R’’’は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルであり、かつ
*は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルである]の有機金属化合物を用いて、遷移金属触媒の存在下でクロスカップリングに供することで、式(Ia)および(Ib)の化合物を得て、そして
a4)ステップa3)で得られた式(Ia)および(Ib)の化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供する、前記製造方法。
【請求項12】
式(Ic)または(Id)
【化8】
[式中、
3は、非置換のアリール、またはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、
4は、非置換のアリール、またはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、
Arは、非置換のアリール、またはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、
Arは、請求項1に定義される通りであり、かつ
nは、1または2である]の化合物または式(Ic)の化合物と式(Id)の化合物との混合物に相当する、請求項1に記載の式(I)のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または該シアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物のみから構成された混合物の製造方法であって、
b1)式(V)
【化9】
[式中、Halは、臭素または塩素である]の4,5−ジハロナフタル酸無水物を、3,4−ジアミノベンゾニトリルと反応させることで、式(VIa)および(VIb):
【化10】
の化合物を得て、
b2)ステップb1)で得られた式(VIa)および(VIb)の化合物を臭素化することで、式(VIIa)および(VIIb)
【化11】
[式中、nは、1または2である]の化合物を得て、
b3)ステップb2)で得られた式(VIIa)および(VIIb)の化合物を、式(IV)
Ar−Met (IV)
[式中、
Arは、RArによって一置換または多置換されたアリールであり、かつ
Metは、B(OH)2、B(OR’)(OR’’)、Zn−R’’’またはSn(R*3であり、ここで
R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素、C1〜C30−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールまたはヘテロアリールであるか、またはR’およびR’’は、一緒になって、C2〜C4−アルキレンであり、該アルキレンは、場合によりC1〜C4−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールおよびヘテロアリールから選択される1、2、3、4、5、6、7または8個の置換基を有し、
R’’’は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルであり、かつ
*は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルである]の有機金属化合物を用いて、遷移金属触媒の存在下でクロスカップリングに供することで、式(Ic)および(Id)の化合物を得て、そして
b4)ステップb3)で得られた式(Ic)および(Id)の化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供する、前記製造方法。
【請求項13】
式(Ie)または(If)
【化12】
[式中、
3は、存在するのであれば、非置換のアリール、またはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、
4は、存在するのであれば、非置換のアリール、またはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、
それぞれのR*は、独立して、シアノまたは非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、
Arは、請求項1に定義される通りであり、かつ
kは、0、1または2である]の化合物または式(Ie)の化合物と式(If)の化合物との混合物に相当する、請求項1に記載の式(I)のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または該シアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物のみから構成された混合物の製造方法であって、
c1)式(V)
【化13】
[式中、Halは、臭素または塩素である]の4,5−ジハロナフタル酸無水物を、式(VIII)
【化14】
[式中、R*は、前記定義の通りであり、かつkは0、1または2である]の化合物と反応させることで、式(IX)
【化15】
の化合物を得て、
c2)ステップc1)で得られた式(IX)の化合物を、式(IV)
Ar−Met (IV)
[式中、
Arは、RArによって一置換または多置換されたアリールであり、かつ
Metは、B(OH)2、B(OR’)(OR’’)、Zn−R’’’またはSn(R*3であり、ここで
R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素、C1〜C30−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールまたはヘテロアリールであるか、またはR’およびR’’は、一緒になって、C2〜C4−アルキレンであり、該アルキレンは、場合によりC1〜C4−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールおよびヘテロアリールから選択される1、2、3、4、5、6、7または8個の置換基を有し、
R’’’は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルであり、かつ
*は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルである]の有機金属化合物を用いて、遷移金属触媒の存在下でクロスカップリングに供することで、式(Xa)および/または(Xb)
【化16】
の化合物を得て、
c3)適宜、ステップc2)で得られた式(Xa)および/または(Xb)の化合物を分離し、
c4)ステップc2)またはc3)で得られた式(Xa)および/または(Xb)の1種以上の化合物を金属シアン化物と反応させることで、式(Ie)および/または(If)の化合物を得るか、または
c2a)ステップc1)で得られた式(IX)の化合物を金属シアン化物と反応させることで、式(XIa)および/または(XIb)
【化17】
の化合物を得て、そして、
c3a)ステップc2a)で得られた式(XIa)および/または(XIb)の1種以上の化合物を、式(IV)
Ar−Met (IV)
[式中、
Arは、RArによって一置換または多置換されたアリールであり、かつ
Metは、B(OH)2、B(OR’)(OR’’)、Zn−R’’’またはSn(R*3であり、ここで
R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素、C1〜C30−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールまたはヘテロアリールであるか、またはR’およびR’’は、一緒になって、C2〜C4−アルキレンであり、該アルキレンは、場合によりC1〜C4−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールおよびヘテロアリールから選択される1、2、3、4、5、6、7または8個の置換基を有し、
R’’’は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルであり、かつ
*は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルである]の有機金属化合物を用いて、遷移金属触媒の存在下でクロスカップリングに供することで、式(Ie)および/または(If)の1種以上の化合物を得て、
c5)ステップc3)またはc3a)で得られた式(Ie)および/または(If)の1種以上の化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供する、前記製造方法。
【請求項14】
式(Ig)
【化18】
[式中、
それぞれのR*は、独立して、非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、ここで、RArは、請求項1に定義される通りであり、
kは、1または2である]の化合物に相当する、請求項1に記載の式(I)のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物の製造方法であって、
d1)式(IX)
【化19】
[式中、
Halは、臭素または塩素であり、
*は、前記定義の通りであり、かつ
kは、1または2である]の化合物を金属シアン化物と反応させることで、式(Ig)の化合物を得て、そして
d2)ステップd1)で得られた式(Ig)の化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供する、前記製造方法。
【請求項15】
化合物(Ih)、(Ii)、(Ik)または(Im)
【化20】
[式中、
Arは、非置換のアリール、またはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、RArは、請求項1に定義される通りであり、かつ
*は、0、1または2である]またはこれらの化合物の混合物に相当する、請求項1に記載の式(I)のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または該シアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物のみから構成された混合物の製造方法であって、
e1)式(VIIa)および(VIIb)
【化21】
[式中、Halは、臭素または塩素であり、かつnは、1または2である]の化合物を、置換反応に供し、その際、1つのHalおよびそれぞれの臭素原子は、非置換のアリールまたは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリール(ここで、RArは、請求項1に定義される通りである)によって置換されるか、もしくは
式(VIIa)および(VIIb)の化合物を、置換反応に供し、その際、1つのHalは、アリールによって置換され、ベンゾイミダゾール部のベンゼン環に結合された臭素原子の一部は、アリールによって置換され、その他の臭素原子は、アリールによって置換されず、水素によって置換され、ここで、アリールは、非置換であるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有し、ここで、RArは、請求項1に定義される通りであり、
前記置換反応は、クロスカップリングによって、式(IV)
Ar−Met (IV)
[式中、
Arは、RArによって一置換または多置換されたアリールであり、かつ
Metは、B(OH)2、B(OR’)(OR’’)、Zn−R’’’またはSn(R*3であり、ここで
R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素、C1〜C30−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールまたはヘテロアリールであるか、またはR’およびR’’は、一緒になって、C2〜C4−アルキレンであり、該アルキレンは、場合によりC1〜C4−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールおよびヘテロアリールから選択される1、2、3、4、5、6、7または8個の置換基を有し、
R’’’は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルであり、かつ
*は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルである]の有機金属化合物を用いて、遷移金属触媒の存在下で行われ、こうして式(XIIa)、(XIIb)、(XIIc)および(XIId)
【化22】
[式中、
*は、0、1または2であり、かつ
Arは、前記定義の通りである]の化合物を得て、
e2)適宜、式(XIIa)、(XIIb)、(XIIc)および(XIId)の化合物を分離することで、式(XIIa)および(XIIb)の化合物の混合物と、式(XIIc)および(XIId)の化合物の混合物を得て、
e3)ステップe1)またはe2)で得られた化合物を金属シアン化物と反応させることで、式(Ih)、(Ii)および/または(Ik)および(Im)の化合物を得て、
e4)ステップe3)で得られた式(Ih)、(Ii)および/または(Ik)または(Im)の1種以上の化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供する、前記製造方法。
【請求項16】
マトリックスとしての少なくとも1種のポリマーと、蛍光色素としての、請求項1から10までのいずれか1項に記載の少なくとも1種の式(I)のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または該シアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物のみから構成された混合物とを含む色変換体。
【請求項17】
前記少なくとも1種のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または前記混合物は、式(3)〜(54)
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
の化合物またはそれらの混合物から選択される、請求項16に記載の色変換体。
【請求項18】
前記少なくとも1種のポリマーは、90質量%以上が、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリブテン、シリコーン、ポリアクリレート、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリスチレンアクリロニトリル(SAN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルブチレート(PVB)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、またはそれらの混合物からなる、請求項16または17に記載の色変換体。
【請求項19】
前記色変換体は、更に、散乱体として少なくとも1種の無機白色顔料を含む、請求項16から18までのいずれか1項に記載の色変換体。
【請求項20】
式(XIV)、(XV)および(XVI)
【化27】
[式中、
pは、1〜4であり、
11およびR12は、それぞれ独立して、C1〜C30−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル、アリール、ヘタリールまたはアリール−C1〜C10−アルキレンであり、ここで、前記アリール、ヘタリールおよびアリール−C1〜C10−アルキレン中の芳香族環は、非置換であるか、またはC1〜C10−アルキルによって一置換もしくは多置換されており、
13は、C1〜C30−アルコキシまたはアリールオキシであり、前記アリールオキシは、非置換であるか、またはC1〜C10−アルキルによって一置換もしくは多置換されており、ここでR13基は、*によって示される位置の1つ以上にある]の化合物またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種の更なる有機蛍光色素を含む、請求項16から19までのいずれか1項に記載の色変換体。
【請求項21】
前記更なる有機蛍光色素は、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6,7,12−テトラフェノキシペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ジ(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6−ジ(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ジ(p−t−オクチルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6−ジ(p−t−オクチルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ジフェノキシペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6−ジフェノキシペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミドおよびそれらの混合物から選択される、請求項20に記載の色変換体。
【請求項22】
更なる蛍光着色剤として、希土類ドープされたアルミン酸塩、ケイ酸塩、窒化物およびガーネットから選択される少なくとも1種の無機蛍光着色剤を含む、請求項16から21までのいずれか1項に記載の色変換体。
【請求項23】
請求項16から22までのいずれか1項で定義される色変換体の、発光ダイオード(LED)によって生成された光の変換のための使用。
【請求項24】
請求項23で定義される色変換体の使用であって、青色ダイオードによって生成された光の変換のための前記使用。
【請求項25】
請求項16から22までのいずれか1項で定義される色変換体の、有機発光ダイオード(OLED)によって生成された光の変換のための使用。
【請求項26】
少なくとも1つのLEDと、請求項16から22までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの色変換体とを含む照明装置。
【請求項27】
少なくとも1つのLEDと、請求項16から22までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの色変換体とを含む、請求項26に記載の照明装置であって、LEDと色変換体とがリモート・ホスファー配置で存在する前記照明装置。
【請求項28】
光起電セルと、請求項16から22までのいずれか1項で定義される色変換体とを含む照射により電力を生成する装置であって、前記光起電セルによって吸収されなかった光の少なくとも一部が前記色変換体によって吸収される前記装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物およびそれらの混合物、それらの製造方法、マトリックス材料としての少なくとも1種のポリマーおよび蛍光色素としての少なくとも1種のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物またはそれらの混合物を含む色変換体、前記色変換体の使用、ならびに少なくとも1つのLEDおよび少なくとも1つの色変換体を含む照明装置に関する。
【0002】
その低いエネルギー消費量のため、LED(発光ダイオード、LED)は、一般照明、例えばオフィスおよび住居における一般照明のための光源として、または建築照明のために、情報表示板、小型機器、ならびに自動車産業および航空産業においてますます使用されるようになってきている。光の放出は、半導体において順方向バイアスされたpn接合の接合領域内での電子・正孔対(励起子)の再結合に基づくものである。この半導体のバンドギャップの大きさが放出される光のおおよその波長を決める。特定の色を発生させるために異なるバンドギャップを有する異なる複数のLEDを組み合わせることで、マルチチップLED(multi−LED)を構成することができる。
【0003】
その一方で、放射変換型発光体(蛍光体、または蛍光着色剤もしくは蛍光色素とも呼ばれる)をLEDと組み合わせることもできる。この状況において、該LEDによって放出される放射は、部分的に該放射変換型発光体によって吸収され、こうして光ルミネセンスが引き起こされる。該LEDの結果的な光の色は、透過されたLED光の割合と放射変換型発光体の放出スペクトルに起因する。ある方法では、このためにLED光源(LEDチップ)に対して直接的に、放射変換型発光体を含むポリマー材料が適用される。しばしば、該ポリマー材料は、LEDチップへと、例えば滴形または半球形で適用され、その結果として光の放出に特殊な光学的効果をもたらす。ポリマーマトリックス中の放射変換型発光体がLEDチップへと介在空間を全く設けずに直接的に適用されるというこの種類の構成は、「ホスファー・オン・ア・チップ(phosphor on a chip)」とも呼ばれている。ホスファー・オン・ア・チップ式LEDにおいて、使用される放射変換型発光体は一般的に無機材料である。ホスファー・オン・ア・チップ式LEDにおいて、そのポリマー材料および放射変換型発光体は、比較的高い熱ストレスおよび放射ストレスを受ける。この理由のため、有機的な放射変換型発光体は、今日では、ホスファー・オン・ア・チップ式LEDで使用するには適していないとされていた。
【0004】
もう一つの方法では、一般的にポリマー層と1種以上の放射変換型発光体とを含む色変換体(「変換体」または「光変換体」とも呼ばれる)がLEDチップから一定の距離で置かれる。この種類の構成は、「リモート・ホスファー(remote phosphor)」と呼ばれる。
【0005】
その一次光源、つまりLEDと、色変換体との間の空間的距離は、熱および放射によりもたらされるストレスを、有機的な蛍光色素も放射変換型発光体として使用することができるような程度にまで低減する。更に、その「リモート・ホスファー」コンセプトによるLEDは、「ホスファー・オン・ア・チップ」コンセプトによるLEDよりもエネルギー効率が高い。これらの変換体における有機的な蛍光色素の使用は、様々な利点をもたらす。まず第一に、光の色相が蛍光色素で良好に調整できる。第二に、採掘によって得る必要があり、供給に費用がかかり不便であり、限られた程度でしか入手できない、希土類を含む材料が必要とされない。
【0006】
白色光放出LEDは、多くの応用分野で、光源またはフルカラーディスプレイにおけるバックライトとして使用される。白色光は、複数のLEDを用いて様々な様式で生成できる。白色光の放出のための基礎は、常に様々な色の重ね合わせ(混色)である。マルチチップLEDと呼ばれるものにおいて、例えば異なる色の光を発する3種の発光ダイオード、一般的には1つの青色発光ダイオード、1つの緑色発光ダイオード、および1つの赤色発光ダイオード、または補色の光を発する2種の発光ダイオード、つまり1つの青色発光ダイオードおよび1つの黄色発光ダイオードが1つのハウジング内で組み合わされる。様々な発光ダイオードについて、輝度および作動条件が異なるので、該マルチチップLEDは技術的に複雑であり、従って高価である。更に、マルチチップLEDの部品小型化は厳しく制限される。
【0007】
白色光は、少なくとも1種の放射変換体を、好ましくは400nm〜500nmの波長を有する青色光を発するLEDへと適用することによって生成することもできる。使用される放射変換型発光体は、しばしばセリウムドープされたイットリウムアルミニウムガーネット(以下、Ce:YAGとも呼ばれる)である。セリウムは、約560nmに極大値を有する幅広い発光バンドを示す発光体である。該放射変換体の濃度に応じて、該LEDによって放出される青色光の一部は吸収されて、ほとんどの部分につき黄色のルミネセンス光に変換され、こうして透過した青色光と放出された黄色光が混合されることで、白色光が生ずる。従って、該LEDの白色の色相または色温度は、Ce:YAG放射変換体の層厚および正確な組成に左右される。青色発光LEDとCe:YAGを基礎とするLEDは、製造が容易である。演色性および色相があまり重要でない単純な用途の場合には、Ce:YAG型の青色発光LEDを基礎とするLEDで十分な適性がある。そのスペクトル中には赤色成分が存在しないので、その青色部分が放出される光を特色づける。従って、青色発光LEDと単独の放射変換型発光体としてのYAGを基礎とするLEDは、多くの用途について不適である。高い質の演色性が望まれる用途の場合には、460nmから580nmまでの波長範囲でのLEDの光放射では不十分である。更なる欠点の一つは、以下に説明されるように、Ce:YAGのような希土類を含む材料の使用である。
【0008】
演色評価数(CRI)は、一覧となった14色までの基準色(CIE 1974)の演色性に対する質に関して、理想光源(完全放射体)と比較して光源の評価を付ける測光パラメータを意味すると理解される。CRI値の大きさは、0から100の間であってよく、光源が種々の色の基準色を表現しうる程度を説明するものである。はじめて市販された白色光LEDは、70〜80の演色性を有するものであった。太陽光は、100までのCRIを有する。
【0009】
国際公開第2012/168395号パンフレットは、少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の有機蛍光色素を含む色変換体であって、前記有機蛍光色素は、式(A)
【化1】
の少なくとも1つの構造単位を含み、該構造単位は、同一もしくは異なる置換基によって一置換もしくは多置換されていてよく、かつ示されたベンゾイミダゾール構造の6員環中の1つ以上のCH基は窒素によって置換されていてよい色変換体を記載している。シアノ化された蛍光色素はこの文献には記載されていない。
【0010】
国際公開第2013/018041号パンフレットは、Ce:YAGと一緒に無機の緑色および赤色の放射変換体を含む、LED用の色変換体を記載している。無機の放射変換体は希土類であり、それらは、採掘によって費用をかけて得られ、簡便に得られないため、高価である。更に、該LEDの演色評価数は、常に満足のいくものではない。
【0011】
先行技術から公知の有機蛍光色素の幾つかは、400nmから500nmまでの波長範囲の青色光に対する光安定性および/または蛍光量子収率の点で不十分である。
【0012】
本発明の課題は、新規の有機蛍光色素を提供することである。該蛍光色素は、以下の特性の少なくとも1つを有するべきである:
− 高い光安定性、
− 高い蛍光量子収率、
− LED生産作業との高い適合性、
− Ce:YAGに代えて放射変換型発光体として使用されること、
− 更なる赤色発光蛍光色素と組み合わせて、光源の演色評価数が改善されること。
【0013】
前記課題は、式I
【化2】
[式中、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、それぞれ独立して、水素、シアノ(CN)または非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、
ここで、それぞれのRArは、独立して、シアノ、ヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、C1〜C20−アルコキシ、C1〜C20−アルキルチオ、ニトロ、−NRAr2Ar3、−NRAr2CORAr3、−CONRAr2Ar3、−SO2NRAr2Ar3、−COORAr2、−SO3Ar2
1〜C30−アルキル、C2〜C30−アルケニル、C2〜C30−アルキニル(これらの3つの基は、非置換であるか、または1つ以上のRa基を有する)、
3〜C8−シクロアルキル、3員ないし8員のヘテロシクリル(これらの2つの基は、非置換であるか、または1つ以上のRb基を有する)、
アリール、U−アリール、ヘテロアリールおよびU−ヘテロアリール(これらの4つの基は、非置換であるか、または1つ以上のRb基を有する)
から選択され、その際、
それぞれのRaは、独立して、シアノ、ヒドロキシル、オキソ、メルカプト、ハロゲン、C1〜C20−アルコキシ、C1〜C20−アルキルチオ、ニトロ、−NRAr2Ar3、−NRAr2CORAr3、−CONRAr2Ar3、−SO2NRAr2Ar3、−COORAr2、−SO3Ar2、C3〜C8−シクロアルキル、3員ないし8員のヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールから選択され、ここで、前記シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリール基は、非置換であるか、または1つ以上のRb基を有し、
それぞれのRbは、独立して、シアノ、ヒドロキシル、オキソ、メルカプト、ハロゲン、C1〜C20−アルコキシ、C1〜C20−アルキルチオ、ニトロ、−NRAr2Ar3、−NRAr2CORAr3、−CONRAr2Ar3、−SO2NRAr2Ar3、−COORAr2、−SO3Ar2、C1〜C18−アルキル、C2〜C18−アルケニル、C2〜C18−アルキニル、C3〜C8−シクロアルキル、3員ないし8員のヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールから選択され、ここで、前記C3〜C8−シクロアルキル、3員ないし8員のヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリール基は、非置換であるか、または1つ以上のRb1基を有し、
それぞれのRb1は、独立して、シアノ、ヒドロキシル、メルカプト、オキソ、ニトロ、ハロゲン、−NRAr2Ar3、−NRAr2CORAr3、−CONRAr2Ar3、−SO2NRAr2Ar3、−COORAr2、−SO3Ar2、−SO3Ar2、C1〜C18−アルキル、C2〜C18−アルケニル、C2〜C18−アルキニル、C1〜C12−アルコキシ、C1〜C12−アルキルチオから選択され、
Uは、−O−、−S−、−NRAr1−、−CO−、−SO−または−SO2−部であり、
Ar1、RAr2、RAr3は、それぞれ独立して、水素、C1〜C18−アルキル、3員ないし8員のシクロアルキル、3員ないし8員のヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールであり、ここで、アルキルは非置換であるか、または1つ以上のRa基を有し、前記3員ないし8員のシクロアルキル、3員ないし8員のヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールは、非置換であるか、または1つ以上のRb基を有するが、但し、式Iの化合物は、少なくとも1つのシアノ基を含むものとする]のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物およびそれらの混合物を提供することによって解決される。
【0014】
本発明による式Iの化合物は、1化合物当たり少なくとも1つのシアノ(CN)基を有する。一般に、本発明による式Iの化合物は、1、2、3または4つのシアノ基を含む。前記シアノ基は、式A
【化3】
の1,8−ナフトイレン−1,2−ベンゾイミダゾール基本骨格に、および/または該式Aの基本骨格に、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10の少なくとも1つを介して直接的に結合されている。
【0015】
本発明による式Iのシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物およびそれらの混合物は、驚くべきことに光安定性であり、従ってそれらは、青色OLED用の色変換体で使用できる。更に、本発明による式Iのシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物およびそれらの混合物は、高い蛍光量子収率を有する。それらは、LED生産プロセスと高い適合性を有する。本発明による式Iのシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物およびそれらの混合物は、赤色発光蛍光色素と組み合わせて、90を上回るCRIを有する光源の生産のために、特に青色発光LED、緑色発光LEDまたは白色発光LEDにおける色変換体に適している。驚くべきことに、前記新規の蛍光色素は、Ce:YAGのための代替の放射変換型発光体としても適しており、こうして発光体として希土類を全く含まない白色LEDを得ることができる。
【0016】
更に、本発明は、以下に記載される方法によって得ることができる、式Iのシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物またはこれらの混合物を提供する。
【0017】
更に、本発明は、以下に記載される方法によって得ることができる、式IaおよびIb
【化4】
[式中、
Arは、非置換のアリールまたはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、ここで、RArは前記定義の通りであり、かつnおよびmはそれぞれ1もしくは2であり、かつ(Ar)mは、*で示された位置のいずれかにある]のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物およびそれらの混合物を提供する。
【0018】
更に、本発明は、以下に記載される方法によって得ることができる、式IcおよびId
【化5】
[式中、
3、R4およびArは、非置換のアリールまたはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、ここで、RArは前記定義の通りであり、かつnは1もしくは2である]のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物およびそれらの混合物を提供する。
【0019】
更に、本発明は、以下に記載される方法によって得ることができる、式IeおよびIf
【化6】
[式中、
3は、存在するのであれば、非置換のアリールまたはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、
4は、存在するのであれば、非置換のアリールまたはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、
それぞれのR*は、独立して、シアノまたは非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、ここで、RArは前記定義の通りであり、かつ
kは、0、1または2である]のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物およびそれらの混合物を提供する。
【0020】
更に、本発明は、以下に記載される方法によって得ることができる、式Ig
【化7】
[式中、
それぞれのR*は、独立して、シアノまたは非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、ここで、RArは前記定義の通りであり、かつ
kは、0、1または2である]のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物を提供する。
【0021】
更に、本発明は、式Iのシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または式Ih、Ii、IkもしくはIm
【化8】
[式中、Arは、非置換のアリールまたはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、ここで、RArは前記定義の通りであり、かつn*は0、1もしくは2である]のこれらの混合物を提供する。
【0022】
更に、本発明は、少なくとも1種のポリマーと、前記定義の少なくとも1種の式Iのシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物またはそれらの混合物とを含む色変換体、および前記色変換体の使用を提供する。
【0023】
更に、本発明は、少なくとも1つのLEDと、前記定義の少なくとも1つの色変換体とを含む照明装置を提供する。
【0024】
更に、本発明は、光起電セルと、本明細書に定義される色変換体とを含む照射により電力を生成する装置であって、前記光起電セルによって吸収されなかった光の少なくとも一部が前記色変換体によって吸収される装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明による化合物(11)の国際公開第2012/168395号パンフレットからの例10に対する相関色温度CCTに対してのエネルギー変換効率を示している。
【0026】
前記式中で特定された可変部の定義は、集合名を使用しており、それらは一般的にそれぞれの置換基を代表するものである。定義Cn〜Cmは、それぞれの置換基または置換基部においてそれぞれの場合に可能な炭素原子数を示している。
【0027】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。
【0028】
アルキルならびにアルコキシおよびアルキルチオ中のアルキル部は、飽和の直鎖状または分枝鎖状の炭化水素基であって、1〜30個の炭素原子(C1〜C30−アルキル)、しばしば1〜20個の炭素原子(C1〜C20−アルキル)、特に1〜10個の炭素原子(C1〜C10−アルキル)を有する基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル、n−ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピルおよび1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルである。
【0029】
ハロアルキルおよびハロアルコキシ中の全てのハロアルキル部は、1〜30個の炭素原子、しばしば1〜20個の炭素原子、特に1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基(上述の通り)であって、これらの基中の水素原子の幾つかまたは全てが上述の通りのハロゲン原子によって置き換えられている基である。
【0030】
アルケニルは、一不飽和の直鎖状または分枝鎖状の炭化水素基であって、2〜30個の炭素原子(C2〜C30−アルケニル)、例えば2〜20個または3〜10個の炭素原子と、任意の位置の二重結合とを有する基、例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−メチルエテニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−メチル−1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニルである。
【0031】
アルキニルは、直鎖状または分枝鎖状の炭化水素基であって、2〜30個の炭素原子(C2〜C30−アルキニル)、例えば2〜20個または3〜10個の炭素原子と、任意の位置の三重結合とを有する基、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−メチル−2−プロピニルである。
【0032】
シクロアルキルは、3〜8個の炭素環員を有する単環式または二環式の飽和炭化水素基、例えばC3〜C8−シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−1−イル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−7−イル、ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−イルおよびビシクロ[3.3.0]オクチルである。
【0033】
アリールは、6〜14個の炭素原子、より好ましくは6〜10個の炭素原子を有する単核、二核または三核(単環式、二環式または三環式)の芳香族炭化水素基であって、環ヘテロ原子を一切含まない基である。アリールの例は、特にフェニル、ナフチル、インデニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、殊にフェニルまたはナフチルである。
【0034】
6〜C14−アリールオキシは、前記定義のC6〜C14−アリール基であって、その骨格へと酸素原子(−O−)を介して結合されている基である。フェノキシおよびナフチルオキシが好ましい。
【0035】
3員ないし8員のヘテロシクリルは、3、4、5、6、7または8つの環員を有する単環式または二環式の飽和または部分不飽和の環系であって、環員としての炭素原子に加えて、環員としてO、N、S、SOおよびS(O)2から選択される1、2、3または4つのヘテロ原子またはヘテロ原子含有基を含む環系である。
【0036】
ヘテロアリール(ヘタリール)は、5〜14個の環員を有する単核、二核または三核(単環式、二環式または三環式)の芳香族環系であって、その幾つかが上述のアリールから誘導されうるものであり、アリール基本骨格中の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子によって置き換えられている環系である。好ましいヘテロ原子は、N、OおよびSである。より好ましくは、前記ヘテロアリール基は、5〜13個の環原子を有する。より好ましくは、前記ヘテロアリール基は、炭素原子に加えて、O、SおよびNから選択される1、2、3または4つのヘテロ原子を環員として有する。特に好ましくは、前記ヘテロアリール基の基本骨格は、以下のような系から選択される:
− 酸素、窒素および硫黄の群からの1、2、3または4つのヘテロ原子を含む5員または6員の芳香族複素環、例えば1〜3個の窒素原子または1もしくは2個の窒素原子および/または1個の硫黄もしくは酸素原子を環員として含む炭素で結合される5員のヘテロアリール基、例えば2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−イル、1,2,4−チアジアゾール−5−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−イルおよび1,3,4−トリアゾール−2−イル;1〜3個の窒素原子を環員として含む窒素で結合される5員のヘテロアリール、例えばピロール−1−イル、ピラゾール−1−イル、イミダゾール−1−イル、1,2,3−トリアゾール−1−イルおよび1,2,4−トリアゾール−1−イル;1〜3個の窒素原子を環員として含む6員のヘテロアリール、例えばピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、2−ピラジニル、1,3,5−トリアジン−2−イルおよび1,2,4−トリアジン−3−イル;
− 酸素、窒素および硫黄の群からの1、2、3または4個の、好ましくは1、2または3個のヘテロ原子を含むベンゾ縮合された5員または6員の芳香族複素環、例えば前記定義の5員または6員の芳香族複素環であって、炭素原子に加えて、1〜4個の窒素原子または1〜3個の窒素原子および1個の硫黄もしくは酸素原子を環員として含んでよいとともに、2つの隣接した炭素環員もしくは1つの窒素環員と1つの隣接した炭素環員が、ブタ−1,3−ジエン−1,4−ジイル基によって橋かけされていてよい芳香族複素環、例えばインドリル、インダゾリル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、カルバゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニル、フタラジニル、プリニル、アクリジニル、フェナントリジニル、フェナジニルおよび1,7−フェナントロリニル。
【0037】
本発明の文脈においては、「青色LED」は、400nmから500nmまでの、好ましくは420nmから480nmまでの、特に440nmから460nmまでの波長範囲の光を発するLEDを意味するものと解される。適切な半導体材料は、炭化ケイ素、セレン化亜鉛および窒化物、例えば窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)および窒化インジウムガリウム(InGaN)である。本発明の文脈においては、「緑色LED」は、501nmから560nmまでの、好ましくは501nmから540nmまでの、特に520nmから540nmまでの波長範囲の光を発するLEDを意味するものと解される。適切な半導体材料は、例えばGaInNAsを基礎とするものである。本発明の文脈において、「白色LED」は、白色光を生成するLEDを意味するものと解される。白色LEDの例は、マルチチップLEDまたは少なくとも1種の放射変換型発光体と組み合わせた青色LEDである。
【0038】
本発明の文脈において、「色変換体」は、特定波長の光を吸収し、それを他の波長の光へと変換することができるあらゆる物理的デバイスを意味するものと解される。色変換体は、例えば照明装置の部分、特に光源としてLEDもしくはOLEDを利用する照明装置の部分、または蛍光変換型太陽電池の部分である。
【0039】
本発明の文脈における語句「本質的に」は、語句「完全に」、「全体的に」および「全て」を包含する。前記語句は、90%以上、例えば95%以上、特に99%または100%の割合を包含する。
【0040】
式I、I−A、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、Ih、Ii、IkまたはImの化合物の可変部(置換基)の好ましい実施形態に関連する以下の特記事項は、あらゆる置換基に独立して当てはまり、同様に該置換基の互いの組み合わせにおいても当てはまる。
【0041】
更に、前記可変部の好ましい実施形態に関連する以下の特記事項は、式I、I−A、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、Ih、Ii、IkまたはImの化合物にも当てはまり、また前記化合物の色変換体および照明装置における使用にも当てはまる。
【0042】
本発明による式Iの化合物は、好ましくは、1、2または3個のシアノ(CN)基、特に1または2個のシアノ基を含む。
【0043】
本発明による式Iの化合物の蛍光色素としての使用に関して、可変部R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、それぞれ独立して、好ましくは組み合わせて、以下に定義される通りであるが、但し、どの式Iの化合物も少なくとも1つのシアノ基を含むものとする。
【0044】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基の0、1、2、3、4、5、6または7つは、同一または異なるアリール基であって、非置換であるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有する基である。これらのなかでも、式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基の1、2、3または4つが、同一または異なるアリール基であって、非置換であるか、または1、2もしくは3つの同一もしくは異なる置換基RArを有する基であるこれらの化合物およびそれらの混合物が好ましい。好ましくは、それぞれのRArは、独立して、シアノ、C1〜C12−アルコキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、ニトロ、−NRAr2Ar3、−NRAr2CORAr3、−CONRAr2Ar3、−SO2NRAr2Ar3、−COORAr2、−SO3Ar2、C1〜C18−アルキル(このC1〜C18−アルキルは、非置換であるか、またはヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロもしくは−NRAr2Ar3によって一置換もしくは多置換、例えば一置換、二置換、三置換または四置換されている)ならびにC3〜C8−シクロアルキルおよびフェニル(それらの2つのC3〜C8−シクロアルキルおよびフェニルは、また非置換であるか、またはC1〜C18−アルキル、C1〜C12−アルコキシもしくはシアノによって一置換もしくは多置換、例えば一置換、二置換もしくは三置換されている)から選択される。特に、RArは、存在するのであれば、シアノおよびC1〜C10−アルキルから選択される。更に特に好ましい実施形態においては、RArは、シアノである。同様に、更なる特に好ましい一実施形態においては、RArは、C1〜C10−アルキル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルである。
【0045】
式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基の少なくとも1つが非置換のフェニル基であるか、または1つ以上の同一もしくは異なるRAr基を有するフェニルであり、ここでRArは、前記の定義のいずれか、特に好ましい定義のいずれかを有する化合物およびそれらの混合物が特に好ましい。その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基は、それぞれ水素またはシアノである。式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基の少なくとも1つが非置換のフェニルであるか、またはシアノ基を有するフェニルである化合物およびそれらの混合物が更により好ましい。同様に、式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基の少なくとも1つが非置換のフェニルであるか、またはC1〜C10−アルキルから選択される1、2または3個の置換基を有するフェニルである化合物およびそれらの混合物が更により好ましい。より具体的には、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基の1、2、3または4つ、最も好ましくは前記基の1、2または3つは、非置換のフェニルであるか、または1、2または3つの同一もしくは異なるRAr基を有するフェニルであり、ここでRArは、一般に前記のいずれか、または特に前記の好ましい意味のいずれかを有する。その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基は、それぞれ水素またはシアノである。具体的な一実施形態においては、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがフェニルまたは4−シアノフェニルであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素またはシアノであり、かつR6、R7、R8、R9およびR10基の0、1または2つがフェニルまたは4−シアノフェニルであり、その他のR6、R7、R8、R9およびR10基が水素またはシアノである。同様に、更に具体的な一実施形態においては、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがフェニルであり、該フェニルが非置換であるか、もしくはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有し、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素またはシアノであり、かつR6、R7、R8、R9およびR10基の1または2つがフェニルであり、該フェニルが非置換であるか、もしくはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有し、その他のR6、R7、R8、R9およびR10基が水素またはシアノである。
【0046】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基の0、1、2または3つは、シアノである。これらのなかでも、式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基の0、1または2つがシアノであるこれらの化合物およびそれらの混合物が好ましい。より具体的には、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10基の1または2つは、シアノである。
【0047】
第一の好ましい一実施形態においては、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1または2つがフェニル、C1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有するフェニルまたは4−シアノフェニルであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR7、R8、R9およびR10基の0、1または2つがフェニル、C1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有するフェニルまたは4−シアノフェニルであり、その他のR7、R8、R9およびR10基が水素またはシアノである。これらのなかでも、式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1または2つがフェニルまたは4−シアノフェニルであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR7、R8、R9およびR10基の0、1または2つがフェニルまたは4−シアノフェニルであり、その他のR7、R8、R9およびR10基が水素またはシアノであるこれらの化合物およびそれらの混合物が好ましい。より好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1または2つがフェニルであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR7、R8、R9およびR10基の1または2つがフェニルであり、R7、R8、R9およびR10基の1つがシアノであり、その他のR7、R8、R9およびR10基が水素である。
【0048】
第二の好ましい一実施形態においては、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1または2つがシアノ、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有するフェニルであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR7、R8、R9およびR10基の0、1または2つがフェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有するフェニルであり、その他のR7、R8、R9およびR10基が水素またはシアノである。特に、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1または2つがフェニル、4−シアノフェニルまたはシアノであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR7、R8、R9およびR10基の0、1、2または3つがフェニルまたは4−シアノフェニルであり、その他のR7、R8、R9およびR10基が水素またはシアノである。これらのなかでも、式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがフェニルであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがシアノであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR7、R8、R9およびR10基の2つがフェニルであり、その他のR7、R8、R9およびR10基が水素であるこれらの化合物およびそれらの混合物が好ましい。また、これらのなかでも、式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがフェニルであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがシアノであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR7、R8、R9およびR10基が水素であるこれらの化合物およびそれらの混合物が好ましい。また、これらのなかでも、式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の2つがシアノであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR7、R8、R9およびR10基の2つがフェニルであるこれらの化合物およびそれらの混合物が好ましい。また、これらのなかでも、式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがフェニルであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがシアノであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR7、R8、R9およびR10基の2つがフェニルであり、R7、R8、R9およびR10基の1つがシアノであり、R7、R8、R9およびR10基の1つが水素であるこれらの化合物およびそれらの混合物が好ましい。また、これらのなかでも、式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがフェニルであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の2つがシアノであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR7、R8、R9およびR10基の2つがフェニルであり、その他のR7、R8、R9およびR10基が水素であるこれらの化合物およびそれらの混合物が好ましい。また、これらのなかでも、式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つが4−シアノフェニルであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがシアノであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR7、R8、R9およびR10基の2つがフェニルであり、その他のR7、R8、R9およびR10基が水素であるこれらの化合物およびそれらの混合物が好ましい。同様に、好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがフェニルであり、該フェニルが非置換であるか、もしくはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有し、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがシアノであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR6、R7、R8、R9およびR10基の2つがフェニルであり、該フェニルが非置換であるか、もしくはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有し、その他のR7、R8、R9およびR10基が水素である。同様に、好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがフェニルであり、該フェニルがC1〜C10−アルキルから選択される1または2つの置換基、より好ましくは1つの置換基を有し、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがシアノであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR7、R8、R9およびR10基の2つがフェニルであり、その他のR7、R8、R9およびR10基が水素である。同様に、好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがフェニルであり、該フェニルがC1〜C10−アルキルから選択される1もしくは2つの置換基、より好ましくは1つの置換基を有し、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがシアノであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR7、R8、R9およびR10基の2つがフェニルであり、該フェニルがC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有し、その他のR7、R8、R9およびR10基が水素である。同様に、好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがフェニルであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6基の1つがシアノであり、その他のR1、R2、R3、R4、R5、R6基が水素であり、かつR7、R8、R9およびR10基の2つがフェニルであり、該フェニルがC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有し、その他のR7、R8、R9およびR10基が水素である。
【0049】
これらのなかでも、特に好ましい一実施形態は、一般式I−A
【化9】
[式中、
3およびR4は、それぞれ独立して、シアノ、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有するフェニル、特にシアノ、フェニルまたは4−シアノフェニルであり、かつ
7、R8、R9およびR10は、それぞれ独立して、水素、シアノ、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2もしくは3つの置換基を有するフェニル、特に水素、シアノ、フェニルまたは4−シアノフェニルである]の化合物およびそれらの混合物に関する。
【0050】
前記式I−Aの化合物のなかでも更に好ましい化合物は、式I−Aa
【化10】
[式中、
4は、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2または3つの置換基を有するフェニルであり、かつ
基R7、R8、R9およびR10の2つは、それぞれ独立して、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2または3つの置換基を有するフェニルであり、その他の基R7、R8、R9およびR10は、水素である]に相当する化合物である。
【0051】
前記式I−Aの化合物のなかでも更に好ましい化合物は、また、式I−AbおよびI−Ab’
【化11】
[式中、
4は、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2または3つの置換基を有するフェニルであり、かつ
基R7、R10、存在するのであれば、R8およびR9の0、1または2つは、それぞれ独立して、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2または3つの置換基を有するフェニルであり、その他の基R7、R8、R9およびR10は、存在するのであれば、水素である]に相当する化合物である。
【0052】
前記式I−Aの化合物のなかでも更に好ましい化合物は、また、式I−Ac
【化12】
[式中、
基R7、R8、R9およびR10の1または2つは、それぞれ独立して、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2または3つの置換基を有するフェニルであり、その他の基R7、R8、R9およびR10は、水素である]に相当する化合物である。
【0053】
前記式I−Aの化合物のなかでも更に好ましい化合物は、また、式I−AdおよびI−Ad’
【化13】
[式中、
基R7、R8、R9およびR10の1または2つは、それぞれ独立して、フェニル、4−シアノフェニルまたはC1〜C10−アルキルから選択される1、2または3つの置換基を有するフェニルであり、その他の基R7、R8、R9およびR10は、水素である]に相当する化合物である。
【0054】
式I−Aで示され、その式中、
3は、シアノであり、
4、R8およびR10は、フェニルであり、かつ
7およびR9は、水素であり、または
3は、シアノであり、
4、R7およびR9は、フェニルであり、かつ
8およびR10は、水素である、
化合物、ならびにそれらの混合物が特に好ましい。
【0055】
また、式I−Aで示され、その式中、
4は、シアノであり、
3、R8およびR10は、フェニルであり、かつ
7およびR9は、水素であり、または
4は、シアノであり、
3、R7およびR9は、フェニルであり、かつ
8およびR10は、水素である、
化合物、ならびにそれらの混合物が特に好ましい。
【0056】
また、式I−Aで示され、その式中、
3およびR4、シアノであり、
8およびR10は、フェニルであり、かつ
7およびR9は、水素であり、または
3およびR4は、シアノであり、
4、R7およびR9は、フェニルであり、かつ
8およびR10は、水素である、
化合物、ならびにそれらの混合物が特に好ましい。
【0057】
また、式I−Aで示され、その式中、
3は、シアノであり、
4は、フェニルであり、かつ
7、R8、R9およびR10は、水素であり、または
3は、フェニルであり、
4は、シアノであり、かつ
7、R8、R9およびR10は、水素である、
化合物、ならびにそれらの混合物が特に好ましい。
【0058】
また、式I−Aaで示され、その式中、
4は、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1つの置換基を有するフェニルであり、かつ
8およびR10は、互いに独立して、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1または2つの置換基を有するフェニルであり、かつ
7およびR9は、水素である、
化合物が特に好ましい。
【0059】
また、式I−Aaで示され、その式中、
4は、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1つの置換基を有するフェニルであり、かつ
7およびR9は、互いに独立して、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1または2つの置換基を有するフェニルであり、かつ
8およびR10は、水素である、
化合物が特に好ましい。
【0060】
また、式I−Aaで示され、その式中、
4は、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1つの置換基を有するフェニルであり、かつ
8およびR9は、互いに独立して、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1または2つの置換基を有するフェニルであり、かつ
7およびR10は、水素である、
化合物が特に好ましい。
【0061】
また、式I−Aaで示され、その式中、
4は、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1つの置換基を有するフェニルであり、かつ
7およびR10は、互いに独立して、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1または2つの置換基を有するフェニルであり、かつ
8およびR9は、水素である、
化合物が特に好ましい。
【0062】
また、式I−Abで示され、その式中、
4は、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1つの置換基を有するフェニルであり、かつ
基R7、R8およびR10の1つは、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1または2つの置換基を有するフェニルであり、かつ
その他の基R7、R8およびR10は、水素である、
化合物が特に好ましい。
【0063】
また、式I−Abで示され、その式中、
4は、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1つの置換基を有するフェニルであり、かつ
基R7、R8およびR10の2つは、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1または2つの置換基を有するフェニルであり、かつ
その他の基R7、R8およびR10は、水素である、
化合物が特に好ましい。
【0064】
また、式I−Ab’で示され、その式中、
4は、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1つの置換基を有するフェニルであり、かつ
基R7、R9およびR10の1つは、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1または2つの置換基を有するフェニルであり、かつ
その他の基R7、R9およびR10は、水素である、
化合物が特に好ましい。
【0065】
また、式I−Ab’で示され、その式中、
4は、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1つの置換基を有するフェニルであり、かつ
基R7、R9およびR10の2つは、非置換のフェニル、またはC1〜C10−アルキルから選択される1または2つの置換基を有するフェニルであり、かつ
その他の基R7、R9およびR10は、水素である、
化合物が特に好ましい。
【0066】
式Iの化合物およびそれらの混合物は、当業者に公知の方法または以下の実験部に記載される方法によって製造することができる。1つの方法は、1,8−ナフタル酸無水物と、1,2−ジアミノ置換された芳香族化合物であって場合により最終生成物の所望の置換基を既に有する化合物とを縮合させ、縮合生成物を臭素化し、そして引き続き臭素原子を場合により置換されたアリールおよび/またはシアノへと置換することを含む。
【0067】
更なる方法は、4,5−ジハロ−1,8−ナフタル酸無水物と、1,2−ジアミノ置換された芳香族化合物であって場合により最終生成物の所望の置換基を既に有する化合物とを縮合させ、そして引き続きハロゲン原子を場合により置換されたアリールおよび/またはシアノへと置換することを含む。
【0068】
更なる方法は、4,5−ジハロ−1,8−ナフタル酸無水物と、1,2−ジアミノ置換された芳香族化合物であって場合により最終生成物の所望の置換基を既に有する化合物とを縮合させ、縮合生成物を臭素化し、そして引き続きハロゲン原子と臭素原子を場合により置換されたアリールおよび/またはシアノへと置換することを含む。
【0069】
更なる方法は、4,5−ジクロロ−1,8−ナフタル酸無水物と、1,2−ジアミノ置換された芳香族化合物であって場合により最終生成物の所望の置換基を既に有する化合物とを縮合させ、縮合生成物を臭素化し、そして1つの塩素原子と臭素原子の一部を置換されたアリールへと置換し、引き続き残りの塩素原子をシアノによって置換することを含む。
【0070】
式Iの純粋な化合物または式Iの1種以上の化合物が富化された生成物混合物の製造のためには、1つ以上の反応段階で形成された異性体を部分的にまたは完全に分離させて、前記完全にまたは部分的に分離された異性体を後続の反応段階において反応物として使用することが有利なことがある。
【0071】
本発明は、式I
【化14】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は前記定義の通りである]のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物またはこれらの混合物であって、
1.1)1,8−ナフタル酸無水物を、式(i)
【化15】
[式中、
それぞれのR*は、独立して、シアノまたは非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、ここでRArは、前記定義の通りであり、
kは、0、1または2である]のジアミンと反応させることで、式(ii)
【化16】
の化合物を得て、
1.2)ステップ1.1)で得られた式(ii)の化合物を臭素化することで、式(iii)
【化17】
[式中、
nは、1または2であり、
mは、1または2であり、ここで(Br)m基は、*によって示された位置の1つ以上にある]の化合物を得て、
1.3)ステップ1.2)で得られた式(iii)の化合物を、臭素の、非置換のアリールまたは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリール(ここで、RArは前記定義の通りである)への置換に供し、その置換は、クロスカップリングによって、式iv
Ar−Met (iv)
[式中、
Arは、RArによって一置換または多置換されたアリールであり、かつ
Metは、B(OH)2、B(OR’)(OR’’)、Zn−R’’’またはSn(R*3であり、ここで
R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素、C1〜C30−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールまたはヘテロアリールであるか、またはR’およびR’’は、一緒になって、C2〜C4−アルキレンであり、該アルキレンは、場合によりC1〜C4−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールおよびヘテロアリールから選択される1、2、3、4、5、6、7または8個の置換基を有し、
R’’’は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルであり、かつ
*は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルである]の有機金属化合物を用いて、遷移金属触媒の存在下で行われ、こうして式I
【化18】
[式中、
基R1、R2、R3、R4、R5またはR6の1または2つは、非置換のアリールであるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、その他の基R1、R2、R3、R4、R5またはR6は水素であり、かつ
基R7、R8、R9またはR10の1または2つは、非置換のアリールであるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、その他の基R7、R8、R9またはR10は水素、シアノまたは非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールである]の化合物を得て、
1.4)ステップ1.3)において得られた化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供するか、または
2.1)式(v)
【化19】
[式中、Halは塩素または臭素である]の1,8−ジハロナフタル酸無水物を、式(i)
【化20】
[式中、
それぞれのR*は、独立して、シアノまたは非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、ここでRArは、前記定義の通りであり、
kは、0、1または2である]のジアミンと反応させることで、式(vi)
【化21】
の化合物を得て、
2.2)ステップ2.1)で得られた式(vi)の化合物を臭素化することで、式(vii)
【化22】
[式中、nは、1または2である]の化合物を得て、
2.3)ステップ2.2)で得られた式(vii)の化合物を、置換反応に供し、その際、それぞれのHalおよびそれぞれの臭素原子は、非置換のアリールまたは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリール(ここで、RArは前記定義の通りである)によって置換されるか、もしくは
ステップ2.2)で得られた式(vii)の化合物を、置換反応に供し、その際、それぞれのHalは、アリールによって置換され、ベンゾイミダゾール部のベンゼン環に結合された臭素原子の一部は、アリールによって置換され、その他の臭素原子は、アリールによって置換されず、水素によって置換され、ここで、アリールは、非置換であるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有し、ここで、RArは前記定義の通りであり、前記置換反応は、クロスカップリングによって、式iv
Ar−Met (iv)
[式中、ArおよびMetは、前記定義の通りである]の有機金属化合物を用いて、遷移金属触媒の存在下で行われ、こうして式I
【化23】
[式中、
基R3およびR4は、非置換のアリールであるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、
基R7、R8、R9またはR10の0、1または2つは、非置換のアリールであるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、その他の基R7、R8、R9またはR10は水素、シアノまたは非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールである]の化合物を得て、
2.4)ステップ2.3)において得られた化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供するか、または
3.1a)ステップ2.2)で得られた式(vii)で示され、それぞれのHalが塩素である化合物を、置換反応に供し、その際、Halの1つは、アリールによって置換され、ベンゾイミダゾール部のベンゼン環に結合された臭素原子の全てもしくは一部は、アリールによって置換され、その他の臭素原子は、アリールによって置換されず、水素によって置換され、ここで、アリールは、非置換であるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有し、ここで、RArは請求項1に定義される通りであり、前記置換反応は、クロスカップリングによって、式IV
Ar−Met (IV)
[式中、ArおよびMetは、前記定義の通りである]の有機金属化合物を用いて、遷移金属触媒の存在下で行われ、こうして式(viiia)および(viiib)
【化24】
[式中、
3は、存在するのであれば、非置換のアリールであるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、
4は、存在するのであれば、非置換のアリールであるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、
基R7、R8、R9またはR10の0、1または2つは、非置換のアリールであるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、その他の基R7、R8、R9またはR10は水素、シアノまたは非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールである]の化合物を得て、
3.2b)適宜、式(viiia)および(viiib)の化合物を、少なくとも1つの精製および/または分離ステップに供し、
3.3a)ステップ3.1a)または3.2a)で得られた化合物を、金属シアン化物と反応させることで、式I
【化25】
[式中、
3は、存在するのであれば、アリールであり、該アリールは、非置換であるか、またはRArによって一置換もしくは多置換されており、
4は、存在するのであれば、アリールであり、該アリールは、非置換であるか、またはRArによって一置換もしくは多置換されており、
基R7、R8、R9またはR10の0、1または2つは、非置換のアリールであるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、その他の基R7、R8、R9またはR10は水素、シアノまたは非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールである]の化合物を得て、
3.4a)ステップ3.3a)において得られた化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供するか、または
3.1b1)ステップ2.1)において得られた式(vi)の化合物を、金属シアン化物と反応させることで、式(ixa)および(ixb)
【化26】
[式中、(R*kおよびHalは前記定義の通りである]の化合物を得て、
3.1b2)ステップ3.1b1)で得られた式(ixa)および(ixb)の化合物を、式iv
Ar−Met (iv)
[式中、ArおよびMetは、前記定義の通りである]の有機金属化合物を用いて、遷移金属触媒の存在下でクロスカップリングに供することで、式I
【化27】
[式中、
3は、存在するのであれば、アリールであり、該アリールは、非置換であるか、またはRArによって一置換もしくは多置換されており、
4は、存在するのであれば、アリールであり、該アリールは、非置換であるか、またはRArによって一置換もしくは多置換されており、
基R7、R8、R9またはR10の0、1または2つは、シアノまたは非置換のアリールであるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、そして残りの基R7、R8、R9またはR10は水素である]の化合物を得て、
3.1b3)式Iの化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供するか、または
3.2b1)ステップ2.1)で得られた式(vi)の化合物を、まず式(iv)
Ar−Met (iv)
[式中、ArおよびMetは、前記定義の通りである]の化合物と、遷移金属触媒の存在下で反応させることで、式(xa)および(xb)
【化28】
の化合物を得て、
3.2b2)ステップ3.2b1)で得られた式(xa)および(xb)の化合物を、金属シアン化物と反応させることで、式:
【化29】
[式中、
3は、存在するのであれば、アリールであり、該アリールは、非置換であるか、またはRArによって一置換もしくは多置換されており、
4は、存在するのであれば、アリールであり、該アリールは、非置換であるか、またはRArによって一置換もしくは多置換されており、
基R7、R8、R9またはR10の0、1または2つは、シアノまたは非置換のアリールであるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、そして残りの基R7、R8、R9またはR10は水素である]の化合物を得て、
3.2b3)ステップ3.2b2)において得られた化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供するか、または
4.1)ステップ2.1)で得られた式(vi)の化合物を、金属シアン化物と反応させることで、式(I)
【化30】
[式中、
基R7、R8、R9またはR10の0、1または2つは、シアノまたは非置換のアリールであるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、そして残りの基R7、R8、R9またはR10は水素である]の化合物を得て、
4.2)式Iの化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供する、方法によって得られる前記化合物および混合物を提供する。
【0072】
該方法に関して、ステップ1.1)、1.2)、1.3)および1.4)の手順は、以下に記載されるステップa1)、a2)、a3)およびa4)に記載される通りである。
【0073】
該方法に関して、ステップ2.1)、2.2)、2.3)および2.4)の手順は、以下に記載されるステップb1)、b2)、b3)およびb4)に記載される通りである。
【0074】
該方法に関して、ステップ3.1a)、3.2a)、3.3a)および3.4a)の手順は、以下に記載されるステップc2)、c3)、c4)およびc5)に記載される通りである。
【0075】
該方法に関して、ステップ3.1b1)、3.1b2)、3.1b3)および3.2b1)、3.2b2)、3.2b3)の手順は、以下に記載されるステップc2a)、c3a)およびc5)に記載される通りである。
【0076】
該方法に関して、ステップ4.1)、4.2)の手順は、以下に記載されるステップd1)およびd2)に記載される通りである。
【0077】
前記の反応順序は変更でき、そして任意のステップで得られた化合物は、少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供することができることは自明のことである。
【0078】
更に、本発明は、式IaおよびIb
【化31】
[式中、
Arは、場合によりRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、ここで、RArは前記定義の通りであり、
nは、1または2であり、かつ
mは、1または2であり、かつ(Ar)mは、*で示された位置のいずれかにある]の化合物およびそれらの混合物に相当する、式Iのシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物またはこれらの混合物であって、
a1)1,8−ナフタル酸無水物を、3,4−ジアミノベンゾニトリルと反応させることで、式IIaおよびIIb
【化32】
の化合物を得て、
a2)ステップa1)で得られた式IIaおよびIIbの化合物を臭素化することで、式IIIaおよびIIIb
【化33】
[式中、
nは、1または2であり、
mは、1または2であり、ここで(Br)mは、*で示された位置のいずれかにある]の化合物を得て、
a3)a2)で得られた式IIIaおよびIIIbの化合物を、式IV
Ar−Met (IV)
[式中、
Arは、RArによって一置換または多置換されたアリールであり、かつ
Metは、B(OH)2、B(OR’)(OR’’)、Zn−R’’’またはSn(R*3であり、ここで
R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素、C1〜C30−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールまたはヘテロアリールであるか、またはR’およびR’’は、一緒になって、C2〜C4−アルキレンであり、該アルキレンは、場合によりC1〜C4−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールおよびヘテロアリールから選択される1、2、3、4、5、6、7または8個の置換基を有し、
R’’’は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルであり、かつ
*は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルである]の有機金属化合物を用いて、遷移金属触媒の存在下でクロスカップリングに供することで、式IaおよびIbの化合物を得て、そして
a4)ステップa3)で得られた式IaおよびIbの化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供する、方法によって得られる前記化合物または混合物を提供する。
【0079】
ステップa1)
反応ステップa1)におけるカルボン酸無水物基のイミド化は、原則的に公知である。1,8−ナフタル酸無水物を3,4−ジアミノベンゾニトリルと極性非プロトン性溶剤の存在下で反応させることが好ましい。適切な極性非プロトン性溶剤は、窒素複素環式化合物、例えばピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、キナルジン、N−メチルピペリジン、N−メチルピペリドンおよびN−メチルピロリドンである。
【0080】
前記反応は、有利にはイミド化触媒の存在下で行われる。適切なイミド化触媒は、有機酸および無機酸、例えばギ酸、酢酸、プロトン酸およびリン酸である。適切なイミド化触媒は、更に、遷移金属、例えば亜鉛、鉄、銅およびマグネシウムの有機塩および無機塩である。これらの例は、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、酸化亜鉛、酢酸鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、酢酸銅(II)、酸化銅(II)および酢酸マグネシウムを含む。無水物のイミド化触媒に対するモル比は、一般に1.2:1〜1:1.2、好ましくは1:1である。
【0081】
反応温度は、一般的に、周囲温度から200℃まで、好ましくは120℃〜160℃である。
【0082】
1,8−ナフタル酸無水物および3,4−ジアミノベンゾニトリルは市販されている。
【0083】
反応ステップa1)で得られた式IIaおよびIIbのイミドは、一般的に、後続反応のために更なる精製をせずに使用される。
【0084】
ステップa2)
式IIaおよびIIbの化合物は、一般的に、元素の臭素により溶剤中で臭素化される。更なる適切な臭素化剤は、N−ブロモスクシンイミドおよびジブロモイソシアヌル酸である。適切な溶剤は水または脂肪族モノカルボン酸、および塩素化炭化水素、例えばクロロベンゼンおよびクロロホルムである。適切な脂肪族のモノカルボン酸は、2〜6個の炭素原子を有する脂肪族のモノカルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタンカルボン酸およびヘキサンカルボン酸ならびにそれらの混合物である。脂肪族のモノカルボン酸が溶剤として使用される場合に、触媒としてヨウ素を用いることが有利な場合がある。
【0085】
一般的に、臭素は、式IIaおよびIIbの化合物に対して大過剰で使用される。臭素のモル量は、式IIIaおよびIIIbの化合物の所望のハロゲン化レベルに依存する。式IIaおよびIIbの化合物の二臭素化、三臭素化および四臭素化を目的とする場合には、臭素の式IIaおよびIIbの化合物に対するモル比は、好ましくは20:1〜3:1、より好ましくは10:1〜5:1である。
【0086】
反応ステップa2)で得られた式IIIaおよびIIIbのイミドは、一般的に、後続反応のために更なる精製をせずに使用される。
【0087】
ステップa3)
ステップa3)での反応において、ステップa2)で得られた式IIIaおよびIIIbの化合物は、式Vの有機金属化合物を用いたクロスカップリングに供される。
【0088】
該反応は、周期律表の遷移族VIII(IUPACによる第10族)の遷移金属、例えばニッケル、パラジウムまたは白金の触媒活性量の存在下で、特にパラジウム触媒の存在下で行うことが好ましい。適切な触媒は、例えばパラジウム−ホスフィン錯体、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、PdCl2(o−トリル3P)2、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロリド−ジクロロメタン錯体、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)および[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム(II)クロリド、ホスフィン化合物の存在下での活性炭上パラジウム、ならびにトリフェニルホスフィン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンおよび1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンのようなホスフィン化合物の存在下でのパラジウム(II)化合物、例えば塩化パラジウム(II)もしくはビス(アセトニトリル)パラジウム(II)クロリドである。触媒の量は、一般的に、式IIIaおよびIIIbの化合物に対して、10モル%〜150モル%である。
【0089】
特に適切な有機金属化合物IVは、適切に置換されたアリールボロン酸およびアリールボロン酸エステル[化合物IV、式中、Met=B(OH)2またはB(OR’)(OR’’)、ここでR’、R’’=C1〜C4−アルキルであり、またはR’とR’’は一緒になってC2〜C4−アルキレンであり、該アルキレンは、場合によりC1〜C4−アルキルから選択される1、2、3または4つの置換基を有する]である。
【0090】
該反応は、例えばSuzukiら,Chem.Rev.,1995,95,2457−2483およびそこに引用された文献から公知の鈴木カップリングの条件下で行われる。アリールボロン酸およびそのエステルは、文献から公知であり、市販されており、または相応のアリールマグネシウム化合物から適切なホウ酸エステルとの反応によって製造することができる。
【0091】
適切な有機金属化合物IVは、また特にアリールスタンナン(化合物IV、式中、Met=Sn(R*3であり、ここでR*=C1〜C4−アルキルである)である。その場合に、該反応は、例えばD.Milstein,J.K.Stille,J.Am.Chem.Soc.1978,100,第3636−3638頁またはV.Farina,V.Krishnamurthy,W.J.Scott,Org.React.1997,50,1−652から公知のスティルカップリングの条件下で行われる。アリールスタンナンIVは、公知法と同様にして、アリールリチウム化合物と(R*3SnClとの反応によって製造できる。
【0092】
適切な有機金属化合物IVは、更に、有機亜鉛化合物(化合物IV、式中、Met=Zn−Halであり、ここでHal=Cl、Br、特にBrである)である。その場合に、該反応は、例えばA.Luetzen,M.Hapke,Eur.J.Org.Chem.,2002,2292−2297から公知の根岸カップリングの条件下で行われる。アリール亜鉛化合物は、自体公知のようにして、アリールリチウム化合物から、またはアリールマグネシウム化合物から、塩化亜鉛のような亜鉛塩との反応によって製造できる。
【0093】
IIIaおよびIIIbと有機金属化合物IVとの反応は、特に鈴木カップリングの場合には、塩基性条件下で行われる。適切な塩基は、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属炭酸水素塩、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、アルカリ土類金属炭酸塩およびアルカリ土類金属炭酸水素塩、例えば炭酸マグネシウムまたは炭酸水素マグネシウム、または第三級アミン、例えばトリエチルアミン、トリメチルアミン、トリイソプロピルアミンもしくはN−エチル−N−ジイソプロピルアミンである。
【0094】
一般的に、化合物IIIaおよびIIIbの化合物IVを用いたカップリングは、溶剤中で行われる。適切な溶剤は、有機溶剤、例えば芳香族化合物、例えばトルエン、エーテル、例えば1,2−ジメトキシエタン、環状エーテル、例えばテトラヒドロフランまたは1,4−ジオキサン、ポリアルキレングリコール、例えばジエチレングリコール、カルボニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、カルボキサミド、例えばジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドである。鈴木カップリングにおいて、上述の溶剤は、水との混合物で使用することもできる。例えば有機溶剤の水に対する比率は、5:1〜1:5の範囲であってよい。
【0095】
交換されるべき臭素原子1モルに対して、少なくとも1モルの有機金属化合物IVが使用される。交換されるべき臭素原子1モルに対して、5%〜30%モル過剰の式IVの有機金属化合物を使用するのが好ましいことがある。
【0096】
ステップa4)
ステップa4)における分離および/または精製は、当業者に公知の慣用の方法によって、例えば抽出、蒸留、再結晶化、適切な固定相での分離、およびこれらの措置の組み合わせによって行うことができる。
【0097】
反応ステップa1)および/またはa2)後に得られた異性体を部分的または完全な分離に供することが有利なことがある。
【0098】
更に、本発明は、式IcおよびId
【化34】
[式中、
3は、非置換のアリール、またはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、
4は、非置換のアリール、またはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、
Arは、非置換のアリール、またはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、
Arは、前記定義の通りであり、かつ
nは、1または2である]の化合物に相当する、式Iのシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物またはこれらの混合物であって、
b1)式V
【化35】
[式中、Halは、臭素または塩素である]の4,5−ジハロナフタル酸無水物を、3,4−ジアミノベンゾニトリルと反応させることで、式VIaおよびVIb:
【化36】
の化合物を得て、
b2)ステップb1)で得られた式VIaおよびVIbの化合物を臭素化することで、式VIIaおよびVIIb
【化37】
[式中、nは、1または2である]の化合物を得て、
b3)b2)で得られた式VIIaおよびVIIbの化合物を、式IV
Ar−Met (IV)
[式中、
Arは、RArによって一置換または多置換されたアリールであり、かつ
Metは、B(OH)2、B(OR’)(OR’’)、Zn−R’’’またはSn(R*3であり、ここで
R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素、C1〜C30−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールまたはヘタリールであるか、またはR’およびR’’は、一緒になって、C2〜C4−アルキレンであり、該アルキレンは、場合によりC1〜C4−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールおよびヘテロアリールから選択される1、2、3、4、5、6、7または8個の置換基を有し、
R’’’は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルであり、かつ
*は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルである]の有機金属化合物を用いて、遷移金属触媒の存在下でクロスカップリングに供することで、式IcおよびIdの化合物を得て、
b4)ステップb3)で得られた式IcおよびIdの化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供する、方法によって得られる、前記化合物またはこれらの混合物を提供する。
【0099】
ステップb1)
該方法に関して、ステップb1)における手順は、ステップa1)に記載される通りである。1,2−ジアミノ−3,5−ジフェニルベンゼンは、国際公開第2012/168395号パンフレットから公知である。4,5−ジクロロナフタル酸無水物は、Ukrainskii Khimicheskii Zhurnal(ロシア版),1952,第18巻,第504,507頁から公知である。4,5−ジブロモナフタル酸無水物は、Tesmer,Markus;Vahrenkamp,Heinrich;European Journal of Inorganic Chemistry,2001,第5号 第1183頁〜第1188頁から公知である。
【0100】
ステップb2)、b3)およびb4)
該方法に関して、その手順は、ステップa2)、a3)およびa4)に記載される通りである。
【0101】
反応ステップb1)および/またはb2)後に得られた異性体を部分的または完全な分離に供することが有利なことがある。
【0102】
更に、本発明は、式Ieおよび/またはIf
【化38】
[式中、
3は、存在するのであれば、非置換のアリール、またはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、
4は、存在するのであれば、非置換のアリール、またはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、
それぞれのR*は、独立して、シアノまたは非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、
Arは、前記定義の通りであり、かつ
kは、0、1または2である]の化合物に相当する、式Iのシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物またはこれらの混合物であって、
c1)式V
【化39】
[式中、Halは、臭素または塩素である]の4,5−ジハロナフタル酸無水物を、式VIII
【化40】
[式中、R*は、前記定義の通りであり、かつkは0、1または2である]の化合物と反応させることで、式IX
【化41】
の化合物を得て、
c2)ステップc1)で得られた式IXの化合物を、式IV
Ar−Met (IV)
[式中、
Arは、RArによって一置換または多置換されたアリールであり、かつ
Metは、B(OH)2、B(OR’)(OR’’)、Zn−R’’’またはSn(R*3であり、ここで
R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素、C1〜C30−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールまたはヘタリールであるか、またはR’およびR’’は、一緒になって、C2〜C4−アルキレンであり、該アルキレンは、場合によりC1〜C4−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールおよびヘテロアリールから選択される1、2、3、4、5、6、7または8個の置換基を有し、
R’’’は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルであり、かつ
*は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルである]の有機金属化合物を用いて、遷移金属触媒の存在下でクロスカップリングに供することで、式Xaおよび/またはXb
【化42】
の化合物を得て、
c3)適宜、ステップc2)で得られた式Xaおよび/またはXbの化合物を分離し、
c4)ステップc2)またはc3)で得られた式Xaおよび/またはXbの化合物を金属シアン化物と反応させることで、式Ieおよび/またはIfの化合物を得るか、または
c2a)ステップc1)で得られた式IXの化合物を金属シアン化物と反応させることで、式XIaおよび/またはXIb
【化43】
の化合物を得て、
そして、
c3a)c2a)で得られた式XIaおよび/またはXIbの化合物を、式IV
Ar−Met (IV)
[式中、
Arは、RArによって一置換または多置換されたアリールであり、かつ
Metは、B(OH)2、B(OR’)(OR’’)、Zn−R’’’またはSn(R*3であり、ここで
R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素、C1〜C30−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールまたはヘタリールであるか、またはR’およびR’’は、一緒になって、C2〜C4−アルキレンであり、該アルキレンは、場合によりC1〜C4−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C14−アリールおよびヘテロアリールから選択される1、2、3、4、5、6、7または8個の置換基を有し、
R’’’は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルであり、かつ
*は、C1〜C8−アルキルまたはフェニルである]の有機金属化合物を用いて、遷移金属触媒の存在下でクロスカップリングに供することで、式Ieおよび/またはIfの化合物を得て、
c5)ステップc4)またはc3a)で得られた式Ieおよび/またはIfの化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供する、方法によって得られる前記化合物またはこれらの混合物を提供する。
【0103】
ステップc1)
該方法に関して、その手順は、ステップb1)に記載される通りである。式VIIIで示され、oが1、2または3である化合物が使用される場合に、式IXの2種類の異性体化合物が形成されることが理解される。好ましい一実施形態においては、使用される式VIIIのジアミンは、o−フェニレンジアミンまたは3,4−ジアミノベンゾニトリルである。
【0104】
ステップc2)およびc3a)
該方法に関して、その手順は、ステップb3)に記載される通りである。
【0105】
ステップc3)
式XaおよびXbの化合物は、沈殿物をC1〜C4−アルカノールで洗浄し、引き続き場合により熱水で洗浄することで、式Xの化合物がフィルタ中に保持され、濾液中に式Xbの化合物が保持されうる。
【0106】
ステップc4)およびc2a)
シアノ−脱ハロゲン化のために適した方法条件は、J.March,Advanced Organic Chemistry,第4版,John Wiley & Sons出版(1992),第660頁〜第661頁、および国際公開第2004/029028号パンフレットに記載されている。これらの一例は、シアン化銅との反応である。更に適しているのは、アルカリ金属シアン化物、例えばKCNおよびNaCNであり、またシアン化亜鉛である。典型的には、シアン化物源は過剰に使用される。該反応を亜鉛の存在下で行うことが好ましいことがある。該反応は、一般的に、極性非プロトン性溶剤中で遷移金属、例えばPd(II)塩またはPd錯体、銅錯体またはニッケル錯体の存在下で行われる。前記パラジウム触媒は、インサイチューでPd(0)錯体から、例えばトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)および1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンから製造できる。好ましい極性非プロトン性溶剤は、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、(CH32SO、ジメチルスルホンおよびスルホランである。該反応は、一般的に80℃〜160℃、好ましくは100℃〜140℃、特に好ましくは130℃〜150℃の温度で行われる。交換されるべきハロゲン原子のシアン化亜鉛に対するモル比は、一般的に1:1〜1:3、好ましくは1.5:2.5である。その一方で、CuCNをN−メチルピロリドンまたはスルホラン中で触媒の不在下で使用することも可能である。
【0107】
ステップc5)
該方法に関して、その手順は、ステップa4)に記載される通りである。
【0108】
反応ステップc1)および/またはc2)後に得られる異性体を早期の部分的または完全な分離に供することが有利なことがある。同様に、反応ステップc1)および/またはc2a)後に得られた異性体を早期の部分的または完全な分離に供することが有利なことがある。
【0109】
更に、本発明は、式Ig
【化44】
[式中、
*は、独立して、シアノまたは非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、ここでRArは、前記定義の通りであり、かつ
kは、0、1または2である]の化合物に相当する、式Iのシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物またはこれらの混合物であって、
d1)式IX
【化45】
[式中、
それぞれのR*は、独立して、シアノまたは非置換のアリールもしくは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリールであり、ここでRArは、前記定義の通りであり、
kは、0、1または2である]の化合物を金属シアン化物と反応させることで、式Igの化合物を得て、そして
d2)ステップd1)で得られた式Igの化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供する、方法によって得られる前記化合物またはこれらの混合物を提供する。
【0110】
ステップd1)
該方法に関して、その手順は、ステップc4)またはc2a)に記載される通りである。
【0111】
ステップd2)
該方法に関して、その手順は、ステップa4)に記載される通りである。
【0112】
更に、本発明は、化合物Ih、Ii、IkまたはIm
【化46】
[式中、
Arは、非置換のアリール、またはRArによって一置換もしくは多置換されたアリールであり、RArは、前記定義の通りであり、かつ
*は、0、1または2である]に相当する、式Iのシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物またはこれらの混合物であって、
e1)式VIIaおよびVIIb
【化47】
[式中、nは、1または2である]の化合物を、置換反応に供し、その際、1つのHalおよびそれぞれの臭素原子は、非置換のアリールまたは1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有するアリール(ここで、RArは前記定義の通りである)によって置換されるか、もしくは
式(VIIa)および(VIIb)の化合物を、置換反応に供し、その際、1つのHalは、アリールによって置換され、ベンゾイミダゾール部のベンゼン環に結合された臭素原子の一部は、アリールによって置換され、その他の臭素原子は、アリールによって置換されず、水素によって置換され、ここで、アリールは、非置換であるか、または1つ以上の同一もしくは異なる置換基RArを有し、ここで、RArは前記定義の通りであり、前記置換反応は、クロスカップリングによって、式IV
Ar−Met (IV)
[式中、ArおよびMetは、前記定義の通りである]の有機金属化合物を用いて、遷移金属触媒の存在下で行われ、こうして式XIIa、XIIb、XIIcおよびXIId
【化48】
[式中、
*は、0、1または2であり、かつ
Arは、前記定義の通りである]の化合物を得て、
e2)適宜、式(XIIa)、(XIIb)、(XIIc)および(XIId)の化合物を分離することで、式(XIIa)および(XIIb)の化合物の混合物と、式(XIIc)および(XIId)の化合物の混合物を得て、
e3)ステップe1)またはe2)で得られた化合物を金属シアン化物と反応させることで、式Ih、Iiおよび/またはIkおよびImの化合物を得て、
e4)ステップe3)で得られた式Ih、Iiおよび/またはIkまたはImの化合物を、場合により少なくとも1つの分離および/または精製ステップに供する、方法によって得られる前記化合物またはこれらの混合物を提供する。
【0113】
ステップe1)
該方法に関して、その手順は、ステップc2)に記載される通りである。
【0114】
ステップe2)
該方法に関して、その手順は、ステップc3)に記載される通りである。
【0115】
ステップe3)
該方法に関して、その手順は、ステップc4)に記載される通りである。
【0116】
ステップe4)
該方法に関して、その手順は、ステップc5)に記載される通りである。
【0117】
出発材料は、市販されていないならば、標準的な有機化学技術、既知の構造的に類似した化合物の合成に類似の技術、または前記のスキームもしくは合成例の節に記載される手順に類似した技術から選択される手順によって製造してよい。
【0118】
先に記載されていない他の本発明による化合物は、本明細書中に記載される方法と同様にして製造できる。
【0119】
更に、本発明は、マトリックス材料としての少なくとも1種のポリマーと、蛍光色素としての前記定義の少なくとも1種のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物またはそれらの混合物とを含む色変換体を提供する。
【0120】
適切なポリマーは、原則的に、式Iの少なくとも1種のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物または混合物を十分な量で溶解または均質分布させることができる全てのポリマーである。
【0121】
適切なポリマーは、無機ポリマーまたは有機ポリマーである。
【0122】
適切な無機ポリマーは、例えばケイ酸塩または二酸化ケイ素である。無機ポリマーの使用のための前提条件は、式Iの少なくとも1種のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物またはそれらの混合物が、前記無機ポリマー中に分解することなく溶解または均質分布されうることである。例えばケイ酸塩または二酸化ケイ素の場合に、これは、水ガラス溶液からのポリマーの分離によって達成できる。
【0123】
好ましい一実施形態においては、前記有機ポリマーは、本質的に、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリブテン、シリコーン、ポリアクリレート、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリスチレンアクリロニトリル(SAN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルブチレート(PVB)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、またはそれらの混合物からなる。
【0124】
好ましくは、前記少なくとも1種のポリマーは、本質的に、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはそれらの混合物からなる。
【0125】
最も好ましくは、前記少なくとも1種のポリマーは、本質的に、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンまたはポリカーボネートからなる。
【0126】
ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコールとテレフタル酸との縮合によって得ることができる。
【0127】
本明細書では、ポリスチレンは、とりわけ、スチレンおよび/またはスチレンの誘導体の重合から得られる全てのホモポリマーまたはコポリマーを意味すると理解される。スチレンの誘導体は、例えばアルキルスチレン、例えばα−メチルスチレン、オルト−、メタ−、パラ−メチルスチレン、パラ−ブチルスチレン、特にパラ−t−ブチルスチレン、アルコキシスチレン、例えばパラ−メトキシスチレン、パラ−ブトキシスチレン、パラ−t−ブトキシスチレンである。
【0128】
一般的に、適切なポリスチレンは、10000g/モル〜1000000g/モル(GPCによって測定)、好ましくは20000g/モル〜750000g/モル、より好ましくは30000g/モル〜500000g/モルの平均分子量Mnを有する。
【0129】
好ましい一実施形態においては、前記色変換体のマトリックスは、本質的にまたは完全に、スチレンまたはスチレン誘導体のホモポリマーからなる。
【0130】
本発明の更なる好ましい実施形態においては、前記マトリックスは、本質的にまたは完全に、本出願の文脈では同様にポリスチレンとみなされるスチレンコポリマーからなる。スチレンコポリマーは、更なる成分として、例えばブタジエン、アクリロニトリル、無水マレイン酸、ビニルカルバゾールまたはアクリル酸、メタクリル酸もしくはイタコン酸のエステルをモノマーとして含んでよい。適切なスチレンコポリマーは、一般的に、少なくとも20質量%のスチレン、好ましくは少なくとも40質量%の、より好ましくは少なくとも60質量%のスチレンを含む。もう一つの実施形態においては、前記コポリマーは、少なくとも90質量%のスチレンを含む。
【0131】
好ましいスチレンコポリマーは、スチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、スチレン−1,1’−ジフェニルエテンコポリマー、アクリル酸エステル−スチレン−アクリロニトリルコポリマー(ASA)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(MABS)である。更なる好ましいポリマーは、α−メチルスチレン−アクリロニトリルコポリマー(AMSAN)である。
【0132】
スチレンホモポリマーまたはコポリマーは、例えばフリーラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合によって、または有機金属触媒の作用下に(例えばツィーグラー・ナッタ触媒反応)製造できる。これは、アイソタクチックな、シンジオタクチックな、アタクチックなポリスチレンまたはコポリマーをもたらしうる。それらは、好ましくはフリーラジカル重合によって製造される。その重合は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合または塊状重合として行うことができる。
【0133】
適切なポリスチレンの製造は、例えばOscar Nuyken,Polystyrenes and Other Aromatic Polyvinyl Compounds、Kricheldorf,Nuyken,Swift,New York 2005,第73頁〜第150頁およびそこに引用される参考資料、ならびにElias,Macromolecules,Weinheim 2007,第269頁〜第275頁に記載されている。
【0134】
ポリカーボネートは、炭酸と芳香族もしくは脂肪族のジヒドロキシル化合物とのポリエステルである。好ましいジヒドロキシル化合物は、例えばメチレンジフェニレンジヒドロキシル化合物、例えばビスフェノールAである。
【0135】
ポリカーボネートの製造の一つの手段は、適切なジヒドロキシル化合物とホスゲンとの界面重合における反応である。他の手段は、炭酸のジエステル、例えばジフェニルカーボネートとの重縮合における反応である。
【0136】
適切なポリカーボネートの製造は、例えばElias,Macromolecules,Weinheim 2007,第343頁〜第347頁に記載されている。
【0137】
好ましい実施形態においては、酸素を排除して重合されたポリマーが使用される。好ましくは、重合の間のモノマーは、全体で1000ppmより多くの酸素を含まず、より好ましくは100ppmより多くの酸素を含まず、特に好ましくは10ppmより多くの酸素を含まなかった。
【0138】
適切なポリマーは、更なる成分として、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、フリーラジカル捕捉剤、帯電防止剤を含んでよい。この種の安定剤は、当業者に公知である。
【0139】
適切な酸化防止剤またはフリーラジカル捕捉剤は、例えばフェノール、特に立体障害フェノール、例えばブチルヒドロキシアニソール(BHA)またはブチルヒドロキシトルエン(BHT)、または立体障害アミン(HALS)である。この種の安定剤は、販売されており、例えばBASF社によってIrganox(登録商標)という商品名で販売されている。幾つかの場合に、酸化防止剤およびフリーラジカル捕捉剤を、補助安定剤、例えば亜リン酸塩または亜ホスホン酸塩、例えばBASF社によってIrgafos(登録商標)という商品名で販売されている補助安定剤によって補うことができる。
【0140】
適切な紫外線吸収剤は、例えばベンゾトリアゾール、例えば2−(2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(BTZ)、トリアジン、例えば(2−ヒドロキシフェニル)−s−トリアジン(HPT)、ヒドロキシベンゾフェノン(BP)またはオキサニリドである。この種の紫外線吸収剤は、販売されており、例えばBASF社によってUvinul(登録商標)という商品名で販売されている。
【0141】
好ましい一実施形態においては、TiO2は、単独の紫外線吸収剤として使用される。
【0142】
本発明の好ましい一実施形態においては、適切なポリマーは、酸化防止剤またはフリーラジカル捕捉剤を一切含まない。
【0143】
本発明の更なる一実施形態においては、適切なポリマーは、透明なポリマーである。
【0144】
もう一つの実施形態においては、適切なポリマーは、不透明なポリマーである。
【0145】
上述のポリマーは、適切な有機蛍光色素のためのマトリックス材料として用いられる。
【0146】
特に好ましくは、式Iの少なくとも1種のシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物は、式(1)〜(54)の化合物およびそれらの混合物から選択される。
【0147】
【化49】
【0148】
【化50】
【0149】
【化51】
【0150】
【化52】
【0151】
本発明による蛍光色素、すなわち式Iのシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物およびそれらの混合物は、ポリマー中に溶解されていても、または均質分布した混合物の形態であってもよい。該蛍光色素は、好ましくはポリマー中に溶解されている。
【0152】
好ましい一実施形態においては、色変換体は、本発明による少なくとも1種の式Iの蛍光色素またはそれらの混合物に加えて、更なる蛍光着色剤を含む。例えば、前記少なくとも1種の本発明による有機蛍光色素は、赤色蛍光性の蛍光着色剤と組み合わせてよい。多くの場合において、蛍光着色剤が互いに組み合わされて、こうして青色光を良好な演色性を有する白色光に変換できる色変換体が得られる。
【0153】
適切な更なる蛍光着色剤は、例えば無機蛍光着色剤である。これらのなかでも特に好ましいのは、希土類でドープされたアルミン酸塩、ケイ酸塩、窒化物およびガーネットのクラスからの着色剤である。更なる無機発光性着色剤は、例えば「ルミネッセンス − 理論から応用まで(Luminescence − from Theory to Applications)」,Cees Ronda[編集],Wiley−VCH,2008,第7章,「蛍光体変換型LED用の発光性材料(Luminescent Materials for Phosphor−Converted LEDs)」,Th.Juestel,第179頁〜第190頁に挙げられる着色剤である。
【0154】
ガーネットは、一般式X32[ZO43の化合物であり、式中、Zは、二価のカチオン、例えばCa、Mg、Fe、Mnであり、Yは三価のカチオン、例えばAl、Fe、Cr、希土類であり、かつZは、Si、Al、Fe3+、Ga3+である。前記ガーネットは、好ましくはCe3+、Gd3+、Sm3+、Eu2+、Eu3+、Dy3+、Tb3+またはその混合物でドープされたイットリウムアルミニウムガーネットY3Al512である。
【0155】
適切な窒化物は、米国特許第8,274,215号明細書に記載されている。適切なケイ酸塩は、例えば米国特許第7,906,041号明細書および米国特許第7,311,858号明細書に記載されている。
【0156】
適切なアルミン酸塩は、例えば米国特許第7,755,276号明細書に記載されている。
【0157】
式SrLu2-xAl412:Cexで示され、xが0.01から0.15までの範囲の値である適切なアルミン酸塩蛍光体は、国際公開第2012010244号パンフレットから公知である。組成MLn2QR412で示され、その式中、Mが元素Mg、Ca、SrまたはBaの少なくとも1つであり、Lnが元素Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの少なくとも1つであり、Qが元素Si、Ge、SnおよびPbのいずれかであり、最後にRが元素B、Al、Ga、InおよびTlの少なくとも1つである発光体は、米国特許出願公開第2004/0062699号明細書から公知である。
【0158】
更に、全ての赤色または桃色の有機蛍光色素が特に適している。もう一つの実施形態においては、更なる蛍光着色剤は、更なる橙色蛍光性または黄色蛍光性の蛍光色素を含む。適切な赤色の有機蛍光色素は、一般式
【化53】
[式中、
pは、1〜4であり、
11、R12は、それぞれ独立して、C1〜C30−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル、アリール、ヘタリール、アリール−C1〜C10−アルキレンであり、ここで、前記アリール、ヘタリール、アリール−C1〜C10−アルキレン中の芳香族環は、非置換であるか、またはC1〜C10−アルキルによって一置換もしくは多置換されており、かつ
13は、C1〜C30−アルコキシまたはアリールオキシであり、前記アリールオキシは、非置換であるか、またはC1〜C10−アルコキシによって一置換もしくは多置換されており、ここでR13基は、*によって示される位置の1つ以上にある]を有する。
【0159】
好ましくは、R11およびR12は、それぞれ独立して、C1〜C10−アルキル、2,6−ジ(C1〜C10−アルキル)アリールおよび2,4−ジ(C1〜C10−アルキル)アリールから選択される。より好ましくは、R11およびR12は、同一である。より具体的には、R11およびR12は、それぞれ2,6−ジイソプロピルフェニルまたは2,4−ジ−t−ブチルフェニルである。
【0160】
13は、好ましくは、フェノキシ、またはC1〜C10−アルキルフェノキシであり、より好ましくは2,6−ジアルキルフェノキシ、2,4−ジアルキルフェノキシである。特に好ましくは、R13は、フェノキシ、2,6−ジイソプロピルフェノキシ、2,4−ジ−t−ブチルフェノキシまたは4−t−オクチルフェノキシである。
【0161】
より具体的には、適切な更なる有機蛍光色素は、式XIV−1、XIV−2およびXIV−3
【化54】
[式中、
11およびR12は、それぞれ前記定義の通りであり、特に先に好ましいものとして定義されたものであり、
Yは、直鎖状または分枝鎖状のC1〜C10−アルキルであり、かつ
yは、0、1、2または3である]の化合物から選択される。
【0162】
特に適切な更なる有機蛍光色素の更なる例は、国際公開第2007/006717号パンフレット第1頁第5行〜第22頁第6行で特定されたペリレン誘導体である。
【0163】
特に適切な更なる有機蛍光色素は、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6,7,12−テトラフェノキシペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ジ(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6−ジ(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ジ(p−t−オクチルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6−ジ(p−t−オクチルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ジフェノキシペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6−ジフェノキシペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミドである。好ましくは、前記更なる有機蛍光色素は、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ジ(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6−ジ(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミドおよびそれらの混合物である。
【0164】
更なる一実施形態においては、本発明による色変換体は、更に式
【化55】
[式中、R11およびR12はそれぞれ前記定義の通りである]の少なくとも1種の更なる有機蛍光色素を含む。
【0165】
本発明の一実施形態においては、本発明による色変換体は、積層構造を有する。それらの色変換体は、一層構造または多層構造のいずれかを有してよく、前記多層構造は、一般に1種以上の蛍光着色剤および/または散乱体を含む複数のポリマー層から構成される。
【0166】
一実施形態においては、前記色変換体は、一緒になって積層されて複合材を形成した複数のポリマー層からなり、異なるポリマー層中に、様々な蛍光着色剤および/または散乱体が存在してよい。
【0167】
本発明による色変換体が1種より多くの蛍光着色剤を含む場合には、本発明の一実施形態においては、一層中に、複数の蛍光着色剤が互いに共存することができる。
【0168】
もう一つの実施形態においては、様々な層中に様々な蛍光着色剤が存在する。好ましい一実施形態においては、本発明による色変換体は、本発明により存在する少なくとも1種の有機蛍光色素に加えて、式(XIV)の少なくとも1種の更なる有機蛍光色素、TiO2を基礎とする散乱体、および本質的にポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリカーボネートからなる少なくとも1種のポリマーを含む。
【0169】
更なる好ましい一実施形態においては、本発明による色変換体は、本発明により存在する少なくとも1種の有機蛍光色素に加えて、式(XIV)の少なくとも1種の更なる有機蛍光色素および式(XV)もしくは(XVI)の少なくとも1種の更なる有機蛍光色素、TiO2を基礎とする散乱体、および本質的にポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリカーボネートからなる少なくとも1種のポリマーを含む。
【0170】
特に好ましい一実施形態においては、本発明による色変換体は、本発明により存在する少なくとも1種の有機蛍光色素に加えて、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6,7,12−テトラフェノキシペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ジ(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6−ジ(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミドから選択される少なくとも1種の更なる赤色有機蛍光色素、およびN,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミドまたはN’−(2,6−ジイソプロピルフェニル)ペリレン−9−シアノ−3,4−ジカルボキシイミドから選択される少なくとも1種の更なる有機蛍光色素、TiO2を基礎とする散乱体、ならびに本質的にポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートまたはポリカーボネートからなる少なくとも1種のポリマーを含む。
【0171】
一般的に、本発明による式Iの有機蛍光色素の濃度は、それぞれ使用されるポリマーの量に対して、0.001質量%〜0.5質量%、好ましくは0.005質量%〜0.2質量%、最も好ましくは0.01質量%〜0.1質量%である。一般的に、前記赤色有機蛍光色素の濃度は、使用されるポリマーの量に対して、0.0001質量%〜0.5質量%、好ましくは0.002質量%〜0.1質量%、最も好ましくは0.005質量%〜0.05質量%である。
【0172】
本発明による少なくとも1種の有機蛍光色素の、少なくとも1種の更なる赤色有機蛍光色素に対する比率は、一般的に4:1〜25:1の範囲、好ましくは6:1〜20:1の範囲である。
【0173】
更に特に好ましい一実施形態においては、本発明による色変換体は、本発明による有機蛍光色素としての式3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、21、22、25、26、37、41、45、49、50、51、52、53、54の化合物から選択される式Iの化合物およびそれらの混合物、赤色有機蛍光色素としてのN,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ジ(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6−ジ(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、TiO2を基礎とする散乱体、ならびに本質的にポリスチレンからなる少なくとも1種のポリマーを含む。
【0174】
更に特に好ましい一実施形態においては、本発明による色変換体は、本発明による有機蛍光色素としての式3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、21、22、25、26、37、41、45、49、50、51、52、53、54から選択される式Iの化合物およびそれらの混合物、赤色有機蛍光色素としてのN,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ジ(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6−ジ(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、TiO2を基礎とする散乱体、ならびに本質的にPETからなる少なくとも1種のポリマーを含む。
【0175】
更に特に好ましい一実施形態においては、本発明による色変換体は、本発明による有機蛍光色素としての式3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、21、22、25、26、37、41、45、49、50、51、52、53、54から選択される式Iの化合物およびそれらの混合物、赤色有機蛍光色素としてのN,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ジ(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6−ジ(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、TiO2を基礎とする散乱体、ならびに本質的にポリカーボネートからなる少なくとも1種のポリマーを含む。
【0176】
前記色変換体が多層構造である場合には、一実施形態においては、1層は、少なくとも1種の赤色蛍光色素を含み、その他の層は、式Iの少なくとも1種の本発明による蛍光色素またはそれらの混合物を含む。
【0177】
一実施形態においては、前記少なくとも1種の赤色有機蛍光色素は、LEDに面した色変換体の層中にある。もう一つの実施形態においては、前記少なくとも1種の緑色または緑色/黄色有機蛍光色素は、LEDに面した色変換体の層中にある。
【0178】
更なる一実施形態においては、散乱体は、LEDに面した層中に存在し、その上に色変換体が存在し、またその上に場合により、散乱体を含む更なる層が存在する。
【0179】
好ましい一実施形態においては、前記色変換体は、赤色蛍光性の層と、本発明により存在する少なくとも1種の蛍光色素を含む緑色/黄色蛍光性の層とを有し、該赤色層が青色光源に面している二層構造を有する。この実施形態においては、両方の層は、散乱体としてTiO2を含む。
【0180】
色変換体の更なる好ましい一実施形態は、1層中に、本発明により存在する少なくとも1種の黄色蛍光色素と少なくとも1種の式(XVI)の赤色蛍光色素と散乱体とが含まれている一層構造を有する。該散乱体は、好ましくは二酸化チタンである。この実施形態においては、ポリマーは、好ましくはポリスチレン、PETまたはポリカーボネートからなる。
【0181】
一実施形態においては、色変換体の少なくとも1つのポリマー層は、ガラス繊維で機械的に補強されている。
【0182】
本発明による色変換体は、任意の所望の形状的構成で存在してよい。該色変換体は、例えばフィルム、シートまたはプラーク(plaque)の形態で存在してよい。同様に、有機蛍光着色剤を含むマトリックスは、滴形または半球形または凸表面および/または凹表面、平坦もしくは球状の表面を有するレンズ形で存在してよい。
【0183】
「キャスティング」とは、LEDまたはLEDを含むコンポーネントが、有機蛍光色素を含むポリマーで注型されるか、または完全に包み込まれる実施形態を指す。
【0184】
本発明の一実施形態においては、前記有機蛍光色素を含むポリマー層(マトリックス)は、25マイクロメートル〜250マイクロメートル厚であり、好ましくは35μm〜200μm、特に50μm〜160μmである。
【0185】
もう一つの実施形態においては、前記有機蛍光色素を含むポリマー層は、0.2ミリメートル〜5ミリメートル厚であり、好ましくは0.3mm〜3mm、より好ましくは0.4mm〜1mmである。
【0186】
該色変換体が1層からなるか、または積層構造を有する場合には、個々の層は、好ましい一実施形態においては、連続的であり、隙間または間断を一切有さない。
【0187】
該ポリマー中の有機蛍光色素の濃度は、色変換体の厚さおよびポリマーの種類に関連して定められる。薄いポリマー層が使用される場合に、有機蛍光色素の濃度は、一般に厚いポリマー層の場合よりも高い。
【0188】
好ましい一実施形態においては、蛍光色素を含む層またはマトリックスの少なくとも1つは、光に対する散乱体を含む。
【0189】
多層構造の更なる好ましい一実施形態においては、蛍光色素を含む複数の層と、蛍光色素を含まず散乱体を含む1つ以上の層とが存在する。
【0190】
適切な散乱体は、DIN 13320による0.01μm〜10μmの、好ましくは0.1μm〜1μmの、より好ましくは0.15μm〜0.4μmの平均粒度を有する、無機白色顔料、例えば二酸化チタン、硫酸バリウム、リトポン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸カルシウムである。
【0191】
散乱体は、一般的に、それぞれの場合に散乱体を含む層中のポリマーに対して、0.01質量%〜4.0質量%の量で、好ましくは0.05質量%〜2質量%の量で、より好ましくは0.1質量%〜1質量%の量で存在する。
【0192】
本発明による色変換体は、場合により支持層のような更なる構成要素を含んでよい。
【0193】
支持層は、色変換体に機械的安定性を付与するために用いられる。該支持層のための材料の種類は重要ではないが、それは透明でありかつ所望の機械的強度を有するものとする。支持層に適した材料は、例えばガラスまたは透明な硬質の有機ポリマー、例えばポリカーボネート、ポリスチレンまたはポリメタクリレートもしくはポリメチルメタクリレートである。
【0194】
支持層は、一般的に0.1mm〜10mmの、好ましくは0.3mm〜5mmの、より好ましくは0.5mm〜2mmの厚さを有する。
【0195】
本発明の一実施形態においては、本発明による色変換体は、国際公開第2012/152812号パンフレットに開示されるような、酸素および/または水に対する少なくとも1つのバリヤ層を有する。バリヤ層に適したバリヤ材料の例は、例えばガラス、石英、金属酸化物、SiO2、Al23層とSiO2層の交互の層から構成される多層系、窒化チタン、SiO2/金属酸化物多層材料、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、液晶ポリマー(LCP)、ポリスチレン−アクリロニトリル(SAN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリビニルブチレート(PVB)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、エチレン−酢酸ビニルから誘導されるポリマー(EVA)およびエチレン−ビニルアルコールから誘導されるポリマー(EVOH)である。
【0196】
バリヤ層に好ましい材料は、ガラスまたはAl23層とSiO2層の交互の層から構成される多層系である。
【0197】
好ましくは、適切なバリヤ層は、酸素について低い透過性を有する。
【0198】
より好ましくは、適切なバリヤ層は、酸素および水について低い透過性を有する。
【0199】
本発明による色変換体は、特に青色光を緑色/黄色光に変換するのに適している。
【0200】
より具体的には、前記色変換体は、青色LEDによって発される光の変換のために適している。適切なLEDは、例えば窒化ガリウム(GaN)または窒化インジウムガリウム(InGaN)を基礎とするLEDである。同様に、水銀ランプ、有機発光ダイオード(OLED)または紫外線LEDによって生成された光の変換のために使用することが可能である。
【0201】
また、本発明による色変換体は、特に緑色光または白色光をより赤色スペクトルが増加された光に変換するのに適している。
【0202】
より具体的には、前記色変換体は、緑色LEDによって発される光の変換のために適している。適切なLEDは、例えばGaInNAs、例えばTeドープされたGaInNAsおよびMgドープされたGaInNAsを基礎とするLEDである。より具体的には、前記色変換体は、白色LEDによって発される光を、良好な演色性を有する心地よい光に変換するために適している。
【0203】
前記色変換体は、更に光起電装置および蛍光変換型太陽電池における集光システム(蛍光集光体(fluorescence collector)としての用途に適切である。
【0204】
更なる一実施形態においては、本発明による色変換体は、青色光の変換のために使用される。
【0205】
更なる一実施形態においては、色変換体は、青色ダイオードによって生成された光を、Ce:YAGではなく、式Iの少なくとも1種の化合物またはそれらの混合物を放射変換体として使用して変換するために使用される。好ましくは、前記色変換体は、蛍光色素として、本発明による式Iの化合物またはそれらの混合物に加えて、赤色有機蛍光色素を含む。赤色有機蛍光色素は、好ましくは式XIV、XVおよびXVIの化合物から選択される。この実施形態においては、青色LEDおよび色変換体は、リモート・ホスファー構成(またはリモート・ホスファー配置;remote phosphor arrangement)で存在する。そのようなLEDの演色性は高い要求を満たす。
【0206】
更なる一実施形態においては、色変換体は、青色ダイオードによって生成された光を、蛍光色素としての式Iの少なくとも1種の化合物またはそれらの混合物を希土類ドープされたアルミン酸塩、ケイ酸塩、窒化物およびガーネット、特にセリウムドープされたイットリウムアルミニウムガーネットから選択される少なくとも1種の無機蛍光着色剤と組み合わせて使用して変換するために使用される。この実施形態においては、青色LEDおよび色変換体は、リモート・ホスファー構成で存在する。
【0207】
本発明による色変換体は、光を照射すると、特に青色LED光を照射すると、高い量子収率を示す。更に、前記色変換体は、青色光での照明に対して高い光安定性を有する。更に、前記色変換体は、酸素および水に対して安定性である。前記色変換体は、良好な演色性を有する心地よい光を発する。更なる一つの利点は、希土類を含まない色変換体が提供できることである。式Iのシアン化された化合物またはそれらの混合物と一緒に希土類ドープされた無機有機蛍光体を含む本発明による色変換体は、青色LEDで生成され、変換体材料としてのCe:YAGを含む照明装置の演色性値を改善する。
【0208】
本発明による色変換体は、種々の方法によって製造されうる。
【0209】
一実施形態においては、本発明による色変換体の製造方法は、少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の有機蛍光色素を溶剤中に溶解させ、引き続き溶剤を除去することを含む。
【0210】
もう一つの実施形態においては、本発明による色変換体の製造方法は、少なくとも1種の有機蛍光色素を少なくとも1種のポリマーと一緒に押し出すことを含む。
【0211】
更に、本発明は、少なくとも1つのLEDと、本発明による少なくとも1種の色変換体とを含む照明装置を提供する。少なくとも1つのLEDは、好ましくは青色であり、好ましくは400nmから500nmまでの、好ましくは420nmから480nmまでの、より好ましくは440nmから470nmまでの、最も好ましくは445nmから460nmまでの波長範囲内の光を発する。
【0212】
一実施形態においては、本発明による照明装置は、ちょうど1つのLEDを含む。もう一つの実施形態においては、本発明による照明装置は、2つ以上のLEDを含む。
【0213】
一実施形態においては、本発明による照明装置は、全てが青色の複数のLEDを含む。もう一つの実施形態においては、本発明による照明装置は、少なくとも1つのLEDが青色であり、少なくとも1つのLEDは青色ではなくて、その他の色、例えば赤色の光を発する複数のLEDを含む。
【0214】
更に、使用されるLEDの種類は、本発明による照明装置にとっては重要ではない。好ましい一実施形態においては、使用されるLEDの出力密度は、100mW/cm2未満、好ましくは60mW/cm2未満である。より高い出力密度の、例えば150mW/cm2または200mW/cm2のLEDの使用も同様に可能である。しかしながら、より高い出力密度のLEDは、蛍光色素および色変換体の寿命を短くしうる。
【0215】
本発明による色変換体は、事実上あらゆる寸法形状のLEDと組み合わせて、照明の構造を問わず使用することができる。
【0216】
一実施形態においては、色変換体とLEDは、ホスファー・オン・ア・チップ構成をとる。
【0217】
好ましくは、本発明による色変換体は、リモート・ホスファー配置(remote phosphor setup)で使用される。この場合には、該色変換体は、LEDと空間的に隔離されている。一般的に、LEDと色変換体との間の距離は、0.1cmから50cmであり、好ましくは0.2cmから10cmであり、最も好ましくは0.5cmから2cmである。色変換体とLEDとの間には、種々の媒体、例えば空気、希ガス、窒素もしくは他のガスまたはそれらの混合物が存在してよい。
【0218】
色変換体は、例えばLEDを囲って同心円状に配置されていてもよく、または平坦な形状を有してもよい。該色変換体は、例えばプラーク、シートまたはフィルムの形態をとることができ、滴形で存在してもよく、または注型成形物の形をとることもできる。
【0219】
本発明による照明装置は、屋内、屋外、オフィス、ビークル、トーチ、ゲーム操作盤、街灯、交通標識における明かりに適している。
【0220】
本発明による照明装置は、高い量子収率を示す。更に、前記色変換体は、長寿命、特に青色光での照明に対して高い光安定性を有する。前記色変換体は、良好な演色性を有する心地よい光を発する。
【0221】
更に、本発明は、光起電セル(太陽電池)と、前記定義の色変換体とを含む照射により電力を生成する装置であって、前記光起電セル(太陽電池)によって吸収されなかった光の少なくとも一部が前記色変換体によって吸収される装置を提供する。該色変換体は、通常はその光起電セルの頂部にある。該色変換体は、紫外光および可視光が太陽電池によってより高い効率で変換されるより深色のスペクトルへと変換されるように、スペクトルを変えるために使用される。
【0222】
実施例
様々な蛍光色素を合成した。実施例により製造された蛍光色素を使用して色変換体を製造した。このために、前記蛍光色素を以下に記載されるように、ポリマーから構成されるマトリックス中に混加した。使用したポリマーは、PMMA(Evonik社製のPlexiglas(登録商標)6N)、ポリスチレン(BASF社製のPS168N)およびPC(Bayer社製のMacrolon(登録商標)2808)であった。
【0223】
色素の試験のための色変換体の製造:
約2.5gのポリマーおよび0.02質量%の色素を、約5mlの塩化メチレン中に溶解させ、そこに、それぞれ使用したポリマーの量に対して0.5質量%のTiO2を分散させた。得られた溶液/分散液を、ガラス表面上にフレームアプリケーターを用いてコーティングした(湿式膜厚400μm)。溶剤を乾燥除去した後に、その皮膜をガラスから剥がし、真空乾燥キャビネット中で50℃で一晩乾燥させた。それぞれの厚さ80μm〜85μmの被膜から直径15mmを有する2つ円形被膜片を抜き出し、これらを分析試料として用いた。
【0224】
分析試料の蛍光量子収率(FQY)を、C9920−02型の量子収率測定装置(Hamamatsu社製)を用いて測定した。これは、それぞれの試料を、積分球(ウルブリヒト球)中で450nm〜455nmの光で照らすことによって行われた。積分球中での試料が無い状態での参照測定値との比較によって、吸収されなかった分の励起光と試料によって放出された蛍光を、CCD分光計を用いることによって測定する。吸収されなかった励起光のスペクトルにわたる強度の積分または放出された蛍光のスペクトルにわたる強度の積分により、それぞれの試料の吸収強度もしくは蛍光強度の度合いまたは蛍光量子収率が得られる。
【0225】
例1:
【化56】
の製造
5.4g(27ミリモル)の1,8−ナフタル酸無水物、4.05g(30ミリモル)の3,4−ジアミノベンゾニトリル、4.95g(27ミリモル)の酢酸亜鉛および150mlのキノリンの混合物を、145℃に1時間にわたり加熱した。引き続き、10mlのエタノールを添加し、そして沈殿物を濾別し、そしてエタノールおよび水で洗浄した。これにより、表題化合物が帯黄色の沈殿物として得られた(4.92g、62%)。
【0226】
例2:
【化57】
[式中、ナフタレン部に結合されたフェニル部は*によって示される位置のいずれかにある]の製造
2.1
【化58】
[式中、ナフタレン部に結合されたBrは*によって示される位置のいずれかにある]の製造
3.0g(6.6ミリモル)の例1の化合物、8.0g(100ミリモル)の臭素および150mlの水の混合物を3時間にわたり加熱還流させた(55℃)。引き続き、臭素を排出し、残留物を濾別し、そして熱水で洗浄した。これにより、二臭素化された化合物と三臭素化された化合物の混合物が得られた。
【0227】
2.2 化合物(3)、(4)、(5)および(6)の製造
2.0g(4.9ミリモル)の例2.1の化合物、3.6g(29.4ミリモル)のフェニルボロン酸、2.8g(20ミリモル)の炭酸カリウムおよび0.6g(4.9ミリモル)のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを、100mlのトルエン中で2時間にわたり90℃へと加熱した。該反応混合物を冷却し、濾過し、トルエンで洗浄し、そしてシリカゲルおよびトルエンを用いたカラムクロマトグラフィーによって後処理した。これにより、0.928gの生成物が得られた。その生成物は、質量分光分析によればジフェニル化された表題化合物とトリフェニル化された表題化合物(3)、(4)、(5)および(6)からなる。
Rf(トルエン/酢酸エチル 10:1)=0.59
放出:λmax(PS):501nm
放出:λmax(PS):501nm
FQY(ポリスチレン):92%。
【0228】
このように、前記化合物は、以下の例7からの比較化合物
【化59】
よりも高い蛍光量子収率を有する。
【0229】
例3:
【化60】
の製造
3.1
【化61】
の製造
30mlのキノリン、2.69g(10ミリモル)の4,5−ジクロロナフタル酸無水物、3.25g(12.5ミリモル)の1,2−ジアミノ−3,5−ジフェニルベンゼン(国際公開第2012/168395号パンフレットに記載されるように得られる)および1.83g(10ミリモル)の酢酸亜鉛の混合物を、1時間にわたり145℃に加熱した。引き続き、該反応混合物を冷却し、そしてメタノールで希釈した。これにより、4.2g(85%)の黄色の固体が得られた。該固体は、前記の2種の異性体からなっていた。
【0230】
3.2
【化62】
の製造
0.98g(2ミリモル)の例3.1からの化合物、0.24g(2ミリモル)のフェニルボロン酸、0.85g(6ミリモル)の炭酸カリウムおよび0.03g(0.02ミリモル)のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを、25mlのトルエン中で1時間にわたり90℃へと加熱した。該反応混合物を冷却し、そして濾過した。濾液を水対ジクロロメタンと一緒に振り混ぜ、単離した。精製は、シリカゲル上でトルエンを用いて行った。これにより、0.738g(70%)の固体が得られた。該固体は、13C NMRによれば、83:17の比率で、異性体(B)および(D)と、異性体(C)および(E)とからなっていた。
異性体(B)および(D):Rf(トルエン)=0.56
異性体(C)および(E):Rf(トルエン)=0.18。
【0231】
3.3 異性体(11)および(13)
【化63】
の製造
0.2g(0.37ミリモル)の上述の化合物(B)および(D)(Rf(トルエン)=0.56)、0.087g(0.07ミリモル)のシアン化亜鉛、0.3gのトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムおよび0.1gの1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンの混合物を、10mlのDMF中で2時間にわたり150℃に加熱した。該反応混合物を冷却し、濾過し、そして水で洗浄した。残留物をシリカゲル上でトルエンを用いて精製した。これにより、61mg(31%)の黄色の化合物が得られる。該化合物は、13C NMRによれば、主に異性体(11)からなる。
Rf(トルエン)=0.55
放出:λmax(PS):551nm
放出:λmax(PC):551nm
FQY(ポリスチレン):87%
光安定性寿命T80(80mW/cm2)=ポリカーボネート中で65日間。
【0232】
3.4 異性体(12)および(14)
【化64】
の製造
異性体(B)および(D)ではなく、異性体(C)および(E)(Rf(トルエン)=0.18)を使用したことを除き、例3.3に記載される方法を繰り返した。これにより、表題化合物が、黄色蛍光性の化合物として得られた。
Rf(トルエン/酢酸エチル 10:1)=0.51
放出:λmax(PS):547nm
放出:λmax(PC):547nm。
【0233】
例4:
【化65】
の製造
4.1
【化66】
の製造
5.38g(20ミリモル)の4,5−ジクロロナフタル酸無水物、2.7g(25ミリモル)の3,4−ジアミノベンゾニトリル、3.66g(20ミリモル)の酢酸亜鉛および60mlのキノリンの混合物を、145℃に2時間にわたり加熱した。引き続き、該混合物を室温に冷却し、そしてメタノールを添加した。該混合物を濾過し、そして得られた固体をメタノールおよび水で洗浄した。これにより、6.37g(88%)の表題化合物が帯黄色の固体として得られた。
【0234】
4.2
【化67】
の製造
1.82g(5ミリモル)の例4.1の化合物、1.6g(20ミリモル)の臭素および120mlの水の混合物を3時間にわたり加熱還流させる。更なる1.6g(20ミリモル)の臭素を添加し、該混合物を更に9時間にわたり還流で保持した。過剰の臭素を排気した。該反応混合物を濾過し、そして残留物を熱水で洗浄した。これにより、2.37gの表題化合物が得られ、該化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製した。質量分光分析によれば、該生成物は、一臭素化された化合物と二臭素化された化合物との混合物からなるものである。
【0235】
4.3 化合物(15)、(16)、(17)および(18)の製造
0.3gの例4.2からの混合物、0.28g(2.3ミリモル)のフェニルボロン酸、0.23g(1.7ミリモル)の炭酸カリウム、30mg(0.02ミリモル)のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、3mlの水および10mlのトルエンを、1時間にわたり90℃へと加熱した。該混合物を室温に冷却し、そしてトルエンで希釈し、そして相を分離させた。精製は、シリカゲル上でトルエンを用いて行った。これにより、340mgの表題化合物が得られた。その化合物は、質量分光分析によればトリフェニル化された表題化合物とテトラフェニル化された表題化合物(15)、(16)、(17)および(18)の混合物からなる。
FQY(ジクロロメタン):100%。
【0236】
例5:
【化68】
の製造
1.8g(3.7ミリモル)の例3.1からの化合物、1.74g(14.8ミリモル)のシアン化亜鉛、1.5gのトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムおよび0.5gの1,1−ビスジフェニルホスフィノフェロセンの混合物を、2時間にわたり150℃に加熱した。該生成物を、水性アンモニアの添加によって沈殿させ、濾過し、水で洗浄し、そして乾燥させた。精製は、シリカゲル上でトルエンを用いて行った。2種の生成物が単離された。それらのRf(トルエン)値は、0.30および0.46であった。
【0237】
例6:
【化69】
の製造
6.1
【化70】
の製造
5.38g(20ミリモル)の4,5−ジクロロナフタル酸無水物および2.7g(25ミリモル)のo−フェニレンジアミン、100mlのキノリン、3.66g(20ミリモル)の酢酸亜鉛の混合物を、4時間にわたり145℃に加熱した。引き続き、該混合物を冷却し、濾過し、そして水で洗浄した。これにより、5.9g(87%)の表題化合物が帯黄色の固体として得られた。
【0238】
6.2
【化71】
の製造
50mlのトルエン、0.67g(2ミリモル)の例6.1からの化合物、0.24g(2ミリモル)のフェニルボロン酸、0.85g(6ミリモル)のK2CO3、5mlの水および30mg(0.02ミリモル)のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムの混合物を、2時間にわたり90℃へと加熱した。引き続き、該混合物を室温に冷却し、濾過し、そしてメタノールで洗浄した。これにより、0.7g(92%)の表題化合物が黄色の固体として得られた。
【0239】
6.3
【化72】
の製造
25mlのジメチルホルムアミド、0.6g(1.6ミリモル)の例6.2からの化合物、0.87g(7.4ミリモル)のシアン化亜鉛、0.75gのトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.8ミリモル)および0.25g(0.4ミリモル)の1,1’−ビスジフェニルホスフィノフェロセンの混合物を、2時間にわたり160℃に加熱した。引き続き、更に0.2g(0.5ミリモル)のシアン化亜鉛をそこに添加し、そして該混合物を更に2時間にわたり160℃へと加熱した。該反応混合物を冷却し、水性アンモニアと混合し、濾過し、そして水で洗浄した。残留物をシリカゲル上でトルエンを用いてクロマトグラフィーに供した。これにより、115mgの表題化合物(21)および(22)が、黄色蛍光性の化合物として得られた。
Rf(トルエン/酢酸エチル 40:1)=0.38。
【0240】
例7:比較例(国際公開第2012/168395号パンフレットの例10)
【化73】
FQY(ポリスチレン):86%
光安定性寿命T80(80mW/cm2)=12日(ポリスチレン)、19日(ポリカーボネート)。
【0241】
例8:
【化74】
の製造
8.1 2,4−ビス(2,6−ジメチルフェニル)−6−ニトロアニリンの製造
200mlのトルエン、20mlの2−メチル−2−ブタノール、5.4g(18.4ミリモル)の2,4−ジブロモ−6−ニトロアニリン、5.5g(36.8ミリモル)の2,6−ジメチルフェニルボロン酸、9.7g(45.9ミリモル)のリン酸カリウム、10mlの水、0.2g(0.218ミリモル)のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムおよび0.34g(0.828ミリモル)のSPhos(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル)の混合物を窒素下で80℃において6時間にわたり加熱し、次いで90℃で16時間にわたり加熱した。溶剤を蒸発させた後に、残留物を温度40℃を有する石油エーテルから晶出させた。これにより、6.44g(定量的)の固体が得られた。該固体は89%のHPLC純度を有していた。
Rf(トルエン)=0.57。
【0242】
8.2 3,5−ビス(2,6−ジメチルフェニル)ベンゼン−1,2−ジアミンの製造
3.46g(0.01モル)の例8.1の化合物、90mlのエタノール、7.58g(0.04モル)のSnCl2の混合物を、還流下で2時間にわたり加熱した。次いで、更に2.0g(0.01モル)のSnCl2を添加し、該混合物を還流下で16時間にわたり加熱した。溶剤を減圧下で除去し、その残留物をジクロロメタン中に取り、そしてジクロロメタンで抽出した。これにより、1.36g(43%)の表題化合物が得られた。
Rf(トルエン)=0.24。
【0243】
8.3
【化75】
の製造
20mlのキノリン、1.04g(3.8ミリモル)の4,5−ジクロロナフタル酸無水物、1.2g(3.8ミリモル)の例8.2の化合物および0.7g(3.8ミリモル)の酢酸亜鉛(II)の混合物を、2時間にわたり100℃へと加熱した。該反応混合物を室温に冷却し、濾過し、そして得られた残留物を、20mlのメタノールで洗浄し、引き続き0.5lの熱水で洗浄し、そして減圧下で乾燥させることで、1.44g(69%)の黄色の固体が得られた。
Rf(トルエン:酢酸エチル=10:1)=0.85。
【0244】
8.4
【化76】
の製造
12mlのトルエン、0.6g(1.1ミリモル)の例8.3の化合物、227mg(0.001ミリモル)のn−ヘキシルフェニルボロン酸、0.44gの炭酸カリウムおよび1.27mgのテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムの混合物を、2時間にわたり80℃へと加熱した。該反応混合物を濃縮し、6mlの石油エーテルを添加し、次いで該混合物を2時間にわたり撹拌した。該混合物を濾過し、そして10mlのメタノールで洗浄し、引き続き0.5lの熱水で洗浄することで、HPLCによれば、0.72のRf(トルエン)を有する表題化合物52%とビフェニル化された化合物43%とを含む0.87gの黄色の混合物が得られた。
【0245】
8.5
【化77】
の製造
20mlのジメチルホルムアミド(DMF)、1.28g(1.9ミリモル)の例8.4の化合物(Rf(トルエン)=0.72)、0.18g(1.6ミリモル)のシアン化亜鉛(II)、0.08gの亜鉛、0.25g(0.3ミリモル)のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムおよび0.16g(0.3ミリモル)の1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを、2時間にわたり60℃に加熱した。引き続き、更に0.18g(1.6ミリモル)のシアン化亜鉛を添加し、そして該混合物を、更に5時間にわたり60℃へと加熱した。該混合物を冷却し、水で希釈し、そして濾過することで、1.29gの粗製表題化合物が得られ、該化合物を、シリカゲル上でトルエンを用いて精製した。これにより、0.376g(29%)の表題化合物が得られた。
Rf(トルエン)=0.17
λmax(ジクロロメタン):423nm。
【0246】
例9:
【化78】
の製造
9.1
【化79】
の製造
1.12g(2.3ミリモル)の例3.1の化合物、50mlのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2.5mlの2−メチル−2−ブタノール、0.31g(2.3ミリモル)の2−メチルフェニルボロン酸、1.21gのリン酸カリウムを1.5mlの水中に溶かした溶液、0.025gのトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムおよび0.043gのS−Phosの混合物を、14時間にわたり65℃へと加熱した。次いで、同量の触媒(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム)および配位子(S−Phos)を添加し、該混合物を更に3時間にわたり撹拌し、引き続き同量の触媒を添加し、更に60時間にわたり撹拌して65℃とすることで、0.85gの粗製表題生成物が得られ、該生成物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによって精製して、0.19g(15%)の表題化合物が得られた。
Rf(トルエン:石油エーテル=4:1)=0.44。
【0247】
9.2
【化80】
の製造
10mlのDMF、0.15g(0.27ミリモル)の例9.1の化合物、0.05g(0.42ミリモル)のシアン化亜鉛、0.022gの亜鉛(0.33ミリモル)、0.07gのトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムおよび0.044gの1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)の混合物を、2時間にわたり60℃で撹拌した。次いで、同量のシアン化亜鉛を添加し、該混合物を3時間にわたり60℃へと加熱した。水を添加し、該混合物を濾過し、残留物を洗浄し、乾燥させることで、300mgの粗製表題生成物が得られ、それをシリカゲル上で精製し(溶離液:トルエン:石油エーテル 4:1)、そしてトルエンを用いて結晶化させる。
Rf(トルエン:石油エーテル=4:1)=0.34。
【0248】
例10:
【化81】
の製造
10.1
【化82】
の製造
280mlのキノリン、18.28g(68ミリモル)の4,5−ジクロロナフタル酸無水物、19.34g(68ミリモル)の1,2−ジアミノ−3,5−ジフェニルベンゼンおよび12.44g(68ミリモル)の酢酸亜鉛の混合物を、2時間にわたり100℃へと加熱した。該反応混合物を、室温に冷却し、そして濾過した。得られた残留物を200mlのメタノールおよび2lの熱水で洗浄し、引き続き120mlのエタノールで洗浄することで、20.57g(62%)の黄色の表題化合物が得られ、それはHPLCによれば99%の純度を有していた。
Rf(トルエン)=0.66。
【0249】
10.2
【化83】
の製造
60mlのトルエン、2.35g(4.8ミリモル)の例10.1の化合物、0.99g(4.8ミリモル)のn−ヘキシルフェニルボロン酸、2.15gの炭酸カリウムの15mlの水中の溶液および6mgのテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムの混合物を、10時間にわたり70℃へと加熱した。該反応混合物を約15mlの容量にまで濃縮し、80mlの石油エーテルを添加し、そして残留物を50mlのメタノールおよび0.5lの熱水で洗浄することで、1.98g(67%)の黄色の固体が得られ、それはHPLCによれば91%の純度を有していた。
Rf(トルエン)=0.75。
【0250】
10.3
【化84】
の製造
47mlのDMF、1.9g(3.1ミリモル)の例10.2の化合物、0.55g(4.65ミリモル)のシアン化亜鉛、0.73gのトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムおよび0.48gの1,1’−ビスジフェニルホスフィノフェロセンの混合物を、2時間にわたり120℃へとに加熱した。該混合物を室温に冷却し、濾過し、そして残留物を100mlのDMF、100mlのメタノールで洗浄し、引き続き熱水で洗浄することで、1.85gの黄色の固体が得られた。該固体を260gのシリカゲル上で精製することで、1.32g(70%)の表題化合物が黄色の固体として得られた。
Rf(トルエン)=0.37
λmax(PC)=548nm;FQA=88.10%
光安定性寿命T80(80mW/cm2)=ポリカーボネート中で53日間。
【0251】
例11:
【化85】
の製造
11.1 3,6−ジブロモ−1,2−ジアミン
11.8g(0.04モル)の4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(Macromolecules 2005,38,244−253に記載されるように製造した)を380mlのエタノール中に溶かした溶液に、28.0g(0.74モル)のホウ水素化ナトリウムを0℃で添加した。該混合物を室温に温め、溶剤を蒸発させた。その残留物をジエチルエーテルおよび水中に取った。有機相を分離した。溶剤を蒸発させた後に、8.86g(83%)の鮮やかな黄色の固体が得られた。
【0252】
11.2
【化86】
の製造
60mlのキノリン、3.1g(11ミリモル)の4,5−ジクロロフタル酸無水物、3.0g(11ミリモル)の例11.1の化合物および2.1g(11ミリモル)の酢酸亜鉛の混合物を、4時間にわたり180℃へと加熱した。該混合物を室温に冷却し、そして沈殿物を吸引分離し、石油エーテルおよび水で洗浄し、最後に乾燥させることで、1.64g(29%)の表題化合物が得られた。
【0253】
11.3
【化87】
の製造
45mlのトルエン、1.5g(3ミリモル)の例11.2の化合物、1.1g(9ミリモル)のフェニルボロン酸、1.35g(10ミリモル)の炭酸カリウム、15mlの水、4mgのテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムの混合物を、5時間にわたり90℃へと加熱した。該混合物を室温に冷却し、相を分離させ、そして有機相を蒸発させた。得られた残留物をトルエンでカラムクロマトグラフィーによって精製することで、479mg(30%)の表題化合物が得られた。
【0254】
11.4
【化88】
の製造
9mlのDMF、0.35g(0.6ミリモル)の例11.3の化合物、0.10g(0.9ミリモル)のシアン化亜鉛、0.14g(0.15ミリモル)のトリスジベンジリデンアセトンジパラジウムおよび0.095g(0.15ミリモル)の1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを、130℃に加熱した。該反応混合物を冷却し、そして濾過することで、0.3gの粗生成物が得られた。この材料を更にクロマトグラフィー(トルエン)によって精製することで、0.088g(28%)が得られた。
【0255】
例12:
【化89】
の製造
12.1 4−メチル−N−[2−(p−トリルスルホニルアミノ)フェニル]ベンゼンスルホンアミドの製造
1000mlのピリジンおよび416g(2.16モル)の4−トルエンスルホニルクロリドの混合物を−10℃にまで冷却した。117.4g(1.08モル)の1,2−フェニレンジアミンを窒素下で小分けにして添加し、そして該混合物を室温で28時間にわたり撹拌した。次いで、塩化水素酸(15%)を添加し、得られた沈殿物を吸引分離し、そして氷水で洗浄した。その固体を2800mlのエタノールと混合し、そして還流させた。次いで、100mlのメタノールを添加した。該混合物を更に1時間にわたり還流させ、次いで室温へと冷却した。形成された沈殿物を濾過し、そして乾燥させることで、390.8g(82.5%)の表題化合物が得られ、それは、100%のHPLC純度(面積%)を有していた(1H−NMRによる純度>95%)。
【0256】
12.2 N−[4,5−ジブロモ−2−(p−トリルスルホニルアミノ)フェニル]−4−メチル−ベンゼンスルホンアミドの製造
75g(0.17モル)の12.1の化合物、300mlの氷酢酸および28.1g(0.34モル)の酢酸ナトリウムの混合物に、61.5g(0.77モル)の臭素を15℃で添加した。添加が完了した後に、該混合物を110℃で1.5時間にわたり加熱した。得られた懸濁液を氷水中に注ぎ、そしてエタノールを添加した。該混合物を0℃〜5℃で1時間にわたり撹拌し、得られた沈殿物を濾過し、そして冷エタノールで洗浄することで、86.2g(79%)の表題化合物が得られ、それは90%のHPLC純度(面積)を有していた。
【0257】
12.3 4,5−ジブロモベンゼン−1,2−ジアミンの製造
70mlの硫酸および35.2g(0.058モル)の例12.2の化合物の混合物を、15分にわたり110℃に加熱した。該混合物を室温に冷却し、氷水に注ぎ、そして50%の水酸化ナトリウム水溶液で中和した。形成された沈殿物を濾過し、300mlの水で洗浄し、そして乾燥させることで、14.3g(91%)の表題化合物が得られ、それは97%のHPLC純度(面積)を有していた。
【0258】
12.4 4,5−ジフェニルベンゼン−1,2−ジアミンの製造
100mlのトルエン、10g(0.036モル)の例12.3の化合物、9.65g(0.079モル)のフェニルボロン酸、10gの炭酸カリウムおよび1.05gのテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムの混合物を、5時間にわたり70℃で加熱した。次いで、該反応混合物を水と混合した。相を分離させることで、10.7gの粗生成物が得られ、それをカラムクロマトグラフィー(トルエン)によって精製し、こうして8.1g(79%)の表題化合物が得られ、それは91.5%のHPLC純度(面積%)を有していた。
【0259】
12.5
【化90】
の製造
160mlのキノリン、10.2g(0.036モル)の例12.4の化合物、9.6g(0.036モル)の4,5−ジクロロナフタル酸無水物および6.6g(0.036モル)の酢酸亜鉛の混合物を、8時間にわたり100℃へと加熱した。引き続き、該反応混合物を室温に冷却し、そして沈殿物を濾過した。その沈殿物を、150mlのメタノール、900mlの熱水、そして90mlのエタノールで洗浄することで、12.8gの粗製表題化合物が得られ、それを50mlのメタノールと一緒に撹拌した。その固体を濾過し、エタノールおよびメタノールで洗浄することで、2.5g(71%)の表題化合物が得られ、それは97%のHPLC純度(面積%)を有していた。
【0260】
12.6
【化91】
の製造
50mlのTHF、1.5g(0.003ミリモル)の例12.5の化合物、0.36g(0.003モル)のフェニルボロン酸、1.3gの炭酸カリウムおよび0.34gのテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムの混合物を、8時間にわたり70℃へと加熱した。溶剤を減圧下で蒸発させた。残留物をトルエン中に取り、そして水で抽出した。有機相を濃縮し、そして粗生成物をメタノールと一緒に撹拌することで、1.1g(62.5%)の表題化合物が得られ、それは90%のHPLC純度(面積%)を有していた。
【0261】
12.7
【化92】
の化合物の製造
18mlのDMF、0.7g(1.2ミリモル)の例12.6の化合物、0.21g(1.8ミリモル)のシアン化亜鉛、0.28g(0.3ミリモル)のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムおよび0.19g(0.3ミリモル)の1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを、12時間にわたり120℃へと加熱した。該混合物を冷却し、そして濾過することで、0.6gの粗製表題化合物が得られ、それをトルエンを用いたカラムクロマトグラフィーによって精製し、こうして0.35g(56%)の表題化合物が得られ、それは99.6%のHPLC純度(面積%)を有していた。
【0262】
例13:
【化93】
の製造
13.1
【化94】
の製造
60mlのキノリン、5.38g(0.02モル)の4,5−ジクロロナフタル酸無水物、2.7g(0.025モル)の3,4−ジアミノベンゾニトリルおよび3.66gの酢酸亜鉛の混合物を、2時間にわたり145℃へと加熱した。該反応混合物を、少量のメタノールで希釈し、濾過し、水で洗浄し、そして乾燥させることで、6.37g(88%)の表題化合物が黄色の混合物として得られた。
Rf(トルエン:酢酸エチル 10:1)=0.33、0.44。
【0263】
13.2
【化95】
[式中、qは1または2である]の製造
240mlの水、3.64g(0.01モル)の13.1の化合物、3.2gの臭素(0.04モル)の混合物を3時間にわたり還流させた。次いで、更に9.6g(0.12モル)の臭素を添加し、そして該混合物を一晩還流させた。引き続き、臭素を窒素で排出することで、4.64g(89%)の黄色の生成物が得られ、それをトルエンを使用したカラムクロマトグラフィーによって分離し、こうしてRfが0.65である画分が得られ、それは1.57gの表題化合物であった。
【0264】
13.3
【化96】
の製造
30mlのトルエン、1.0g(2ミリモル)の例13.2の化合物、0.24g(2ミリモル)のフェニルボロン酸、0.9gの炭酸カリウムおよび2.4mgのテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムの混合物を、2時間にわたり60℃へと加熱した。更に9.6mgのテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムおよび更に0.24g(2ミリモル)のフェニルボロン酸を添加し、そして該混合物を6時間にわたり85℃へと加熱し、そして2日間にわたり100℃に加熱した。室温に冷却した後に、表題化合物は石油エーテルで沈殿させ、それを濾過し、そして水で洗浄することで、0.98gの粗生成物が得られ、それをトルエンを用いたクロマトグラフィーによって精製した。Rf(トルエン:酢酸エチル=10:1)が0.75である画分を濃縮することで、0.32g(33%)の表題化合物が得られた。
【0265】
13.4 化合物(25)、(26)、(51)、(52)、(53)および(54)の製造
20mlのDMF、0.3g(0.6ミリモル)の例13.3の化合物、0.11g(0.9ミリモル)のシアン化亜鉛、0.066gの亜鉛、0.16gのトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、89mgの1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンの混合物を、60℃で2時間にわたり撹拌した。更に110mgのシアン化亜鉛を添加し、そして該混合物を60℃で一晩撹拌した。表題化合物は、水の添加によって沈殿させ、それをトルエンを用いたクロマトグラフィーによって精製することで、70mgの表題化合物が得られた。
Rf(トルエン)=0.5。
【0266】
例14: 色変換体デバイスの応用例
本発明によるシアノ化されたナフタレンベンゾイミダゾール化合物の利用可能性を実証するために、化合物(11)を幾つかの色変換体を作製するために使用した。
【0267】
新規の黄色蛍光性化合物(11)と公知の赤色蛍光色素N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6,7,12−テトラフェノキシペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ジイミド(DPI)と散乱剤TiO2(Kronos 2233)とを含有する、ポリカーボネートからなるポリマー薄膜からなる、青色LED光を種々の色温度(相関色温度CCT)を有する白色光へと変換する、本発明による色変換体
14.0gのポリカーボネートMakrolon 2808(Bayer)を、6mg〜8mg(CCTに応じて)の例3.3からの本発明による黄色蛍光性の化合物(11)および0.3mg〜1mg(CCTに応じて)の赤色蛍光色素DPIおよび112mgのTiO2と一緒に使用した。この混合物に、36.4mlのジクロロメタンを添加し、密封容器中で16時間にわたり撹拌した。次いで、得られた分散液をガラス板上へとドクターブレード(4方向フレームアプリケーター(Vierfach−Filmziehrahmen)、Erichsen、モデル360、スリット高さ800μm)を用いてドクター塗布した。未乾燥塗膜を空気下で1時間にわたり乾燥させ、次いでガラスから剥離し、真空下で50℃において少なくとも3時間にわたり乾燥させた。この方法で約135μmの厚さを有する複数のポリカーボネート薄膜を得る。これらの薄膜から、直径23mmおよび61.5mmを有する試験片を打ち抜き加工によって作製した。
【0268】
比較例のために、本発明による化合物(11)および赤色蛍光色素DPIの代わりに、例7からの黄色の化合物および赤色蛍光色素DPIを使用した。
【0269】
特性決定:
蛍光の量子効率は、絶対量子効率測定装置(Hamamatsu社、モデルC9920−02)を使用して測定した。その量子効率は、450nmで励起させたときの全体蛍光(黄色および赤色の蛍光)を指す。
【0270】
色変換体としての利用可能性は、61.5mmの試験片を使用して、一連の青色LED(450nm)の光を下から照らすことによって試験した。これらのLEDは、高反射性混合チャンバ中に配置した。前記変換体の上方から放出される白色光を、分光放射計(CAS 140 CT−156、Instrument Systems、ミュンヘン)を備えた50cmの積分球(モデルISP 500、Instrument Systems)を用いて測定した。色のデータ(色度座標CIE−x、CIE−y、CCT、プランク曲線からの偏差duv、演色評価数CRI)は、放出されたスペクトルから計算した。エネルギー変換効率は、白色光のエネルギー積分(色変換体を用いて測定)と青色LEDのエネルギー積分(色変換体を用いずに測定)との比率から計算した。第1表は、色変換体の組成を示している。それらの結果は、第2表で以下にまとめられている。
【0271】
第1表:
【表1】
【0272】
第2表:
【表2】
【0273】
図1は、本発明による化合物(11)および比較例7を使用することで、プランク曲線に近い色温度の広い範囲について青色LED光を高品質の白色光に変換し、高いCRIを有する色変換薄膜を製造できることを示している。しかしながら、本発明による化合物(11)を含有する色変換体は、色素(7)(比較例)を含有する色変換体と比べてより高い変換効率を示す。
図1