特許第6548866号(P6548866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友精化株式会社の特許一覧

特許6548866弱酸性化粧料用増粘剤、及び当該増粘剤を配合してなる弱酸性化粧料
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548866
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】弱酸性化粧料用増粘剤、及び当該増粘剤を配合してなる弱酸性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20190711BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20190711BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20190711BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20190711BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20190711BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20190711BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190711BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/60
   A61K8/02
   A61K8/67
   A61K8/73
   A61Q19/02
   A61Q19/00
   C08F2/44 B
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-23518(P2014-23518)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-151336(P2015-151336A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中塚 昭男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正博
(72)【発明者】
【氏名】矢野 貞樹
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−157130(JP,A)
【文献】 特開2006−008980(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/111224(WO,A1)
【文献】 特開平08−245348(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/160919(WO,A1)
【文献】 特開2013−199444(JP,A)
【文献】 特表2008−528749(JP,A)
【文献】 特開2012−241000(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/014732(WO,A1)
【文献】 坂元隆一,溶液中におけるポリアクリル酸の分子の広がりにおよぼす中和度の影響,日本化学雑誌,1962年,第83巻 第4号,pp.389-395
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
C08F 2/00− 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱酸性化粧料用増粘剤において、
前記弱酸性化粧料はpHが4以上7未満であり、
水溶性ショ糖アリルエーテルの存在下に水溶性不飽和カルボン酸単量体を重合して得られる、中和度50%以下且つ中位粒子径が5〜30μmの樹脂粒子を含有する弱酸性化粧料用増粘剤。
【請求項2】
水溶性不飽和カルボン酸単量体が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、及びイタコン酸からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の弱酸性化粧料用増粘剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の増粘剤を配合してなる弱酸性化粧料。
【請求項4】
さらに酸性物質を含有する、請求項3に記載の弱酸性化粧料。
【請求項5】
さらに多糖類系水溶性高分子を含有する、請求項3又は4に記載の弱酸性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弱酸性化粧料用増粘剤に関する。また、当該増粘剤を配合してなる弱酸性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
薬用クリーム、美白クリーム、美白乳液、及び毛髪化粧料等では、酸性物質として、消炎剤、抗ニキビ剤(例えば、サリチル酸、サリチル酸誘導体、レチノイン酸、およびその誘導体)、酸性老化防止剤(例えば、アスコルビン酸(ビタミンC))、等を含有し、pH4〜6程度の弱酸性に調整されたものが多く製造されている。このような化粧料においても、さっぱりした触感が好まれるため、カルボキシルビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマー等の、カルボキシル基を有する親水性重合体が増粘剤、分散剤又は乳化安定剤等として使用されている。しかしながら、これらの親水性重合体は、少量の使用で優れた増粘性を示し、さっぱりしたみずみずしい使用感が得られるものの、酸性条件下では多量に使用しないと所用の増粘効果が得られず、その際、べたつき、ヨレ等の問題を生じる。また、耐塩増粘性の観点からやむを得ずヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム等の多糖類系水溶性高分子が使用される場合もあるが、さっぱりしたみずみずしい触感を得ることは出来ない。
【0003】
特許文献1記載の親水性増粘剤は従来のカルボキシビニルポリマーよりも更にさっぱりした軽い触感の化粧料の調製を可能としたものであるが、酸性物質を配合し、弱酸性(例えばpH4〜6)の化粧料を調製すると、減粘、べたつきを生じ、さっぱりしたみずみずしい使用感を得ることは出来ない。
【0004】
特許文献2では、アルキル変性カルボキシビニルポリマーにトラネキサム酸を併用した乳化組成物を提案しているが、所用のクリームを得るにはアルキル変性カルボキシビニルポリマーの配合量を増量する必要があり、べたつき、ヨレなどの問題を生じる。
【0005】
特許文献3には、アルコキシサリチル酸等のサリチル酸誘導体を塩類及び所定分子量を持つポリエチレングリコールとともに配合することにより安定な油中水型乳化組成物が得られることが記載されている。しかし、さっぱりした軽い使用感触という観点からは満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2012/160919号パンフレット
【特許文献2】特開平09−263510号公報
【特許文献3】特開2005−132807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来のカルボキシビニルポリマーや特許文献1記載の親水性増粘剤では、べたつき、ヨレ等の問題を生じる、酸性物質を含有した酸性の化粧料においても、ヨレの発生がなく、さっぱりした軽い使用感を達成することができる親水性増粘剤を提供することにある。また、当該使用感を有する化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、水溶性架橋剤の存在下に水溶性不飽和カルボン酸単量体を重合して得られる、中和度50%以下で、且つ中位粒子径が5〜30μmの樹脂粒子が、弱酸性条件下において優れた増粘効果を有することを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
水溶性架橋剤の存在下に水溶性不飽和カルボン酸単量体を重合して得られる、中和度50%以下且つ中位粒子径が5〜30μmの樹脂粒子を含有する弱酸性化粧料用増粘剤。
項2.
水溶性架橋剤が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート及び水溶性ショ糖アリルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である項1に記載の弱酸性化粧料用増粘剤。
項3.
水溶性架橋剤が、水溶性ショ糖アリルエーテルである項1に記載の弱酸性化粧料用増粘剤。
項4.
水溶性不飽和カルボン酸単量体が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、及びイタコン酸からなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜3のいずれかに記載の弱酸性化粧料用増粘剤。
項5.
項1〜4のいずれかに記載の増粘剤を配合してなる弱酸性化粧料。
項6.
さらに酸性物質を含有する、項5に記載の弱酸性化粧料。
項7.
さらに多糖類系水溶性高分子を含有する、項5又は6に記載の弱酸性化粧料。
【0010】
項A.
水溶性架橋剤の存在下に水溶性不飽和カルボン酸単量体を重合して得られる、中和度50%以下の樹脂粒子を含み、
当該樹脂粒子は膨潤しており、その中位粒子径は40〜300μmである、
弱酸性化粧料。
項B.
水溶性架橋剤が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート及び水溶性ショ糖アリルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である項Aに記載の弱酸性化粧料。
項C.
水溶性架橋剤が、水溶性ショ糖アリルエーテルである項Aに記載の弱酸性化粧料。
項D.
水溶性不飽和カルボン酸単量体が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、及びイタコン酸からなる群より選択される少なくとも1種である、項A〜Cのいずれかに記載の弱酸性化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、水溶性不飽和カルボン酸単量体を、水溶性架橋剤の存在下に重合して得られる中和度50%以下、中位粒子径5〜30μmの樹脂粒子を増粘剤として用いることにより、弱酸性化粧料においても、当該増粘剤を少量添加することにより、べたつきのないさっぱりした触感の化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明の弱酸性化粧料用増粘剤は、水溶性不飽和カルボン酸単量体を、水溶性架橋剤の存在下に重合して得られる、中和度50%以下で、且つ中位粒子径が5〜30μmの樹脂粒子を含んでなる。また、当該樹脂粒子は親水性であることが好ましい。そして、本発明の増粘剤は親水性であることが好ましい。
【0014】
前述の通り、本発明の弱酸性化粧料用増粘剤は、水溶性架橋剤によって架橋された、水溶性不飽和カルボン酸単量体の重合体(樹脂)を含む。当該重合体は、例えば、水溶性不飽和カルボン酸単量体を、水溶性架橋剤の存在下で懸濁重合法により重合させる工程を含む方法により得ることができる。懸濁重合法のなかでも、水溶性不飽和カルボン酸単量体、水溶性架橋剤及び水を含む水相の液滴を疎水性溶媒中に分散させながら重合反応を行う逆相懸濁重合法が好ましい。
【0015】
水溶性不飽和カルボン酸単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸などが挙げられる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。水溶性不飽和カルボン酸単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては水溶性不飽和カルボン酸のカルボキシル基をアルカリにより中和することにより、得られる重合体の中和度を容易に調整することができる。本発明において、中和度とは水溶性不飽和カルボン酸のカルボキシル基の総モル数に対する中和された基のモル数の割合を言う。中和に用いられるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、等が挙げられる。中和の方法としては特に限定されず、例えば、予め水溶性不飽和カルボン酸単量体を中和する方法、重合により得られた重合体を中和する方法等が挙げられる。
【0016】
水溶性不飽和カルボン酸単量体を、水溶性架橋剤の存在下に重合して得られる重合体(樹脂)の中和度は、弱酸性化粧料への適合性および耐塩性の観点から50%以下であり、45%以下が好ましく、40%以下がさらに好ましい。中和度が50%より大きい場合、当該重合体を配合してなる弱酸性化粧料の粘度が低くなり、実用性に劣る。
【0017】
水溶性架橋剤としては、好ましくは、重合性不飽和基及び/又は反応性官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。反応性官能基は、水溶性不飽和カルボン酸単量体が有するカルボキシル基と反応して、架橋構造を形成し得る官能基である。その具体例としては、グリシジル基が挙げられる。2個以上のグリシジル基を有する水溶性架橋剤の例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル及びポリエチレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。2個以上の重合性不飽和基を有する水溶性架橋剤の例としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート及び水溶性ショ糖アリルエーテルが挙げられる。これらの中でも水溶性ショ糖アリルエーテルが好ましく用いられる。なお、水溶性架橋剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
水溶性ショ糖アリルエーテルのエーテル化度は、好ましくは2.0〜3.5、より好ましくは2.2〜3.2である。水溶性ショ糖アリルエーテルのエーテル化度が低いと、架橋反応に関わる官能基であるアリル基が不足して、架橋反応が効果的に進行し難くなる傾向が若干ある。水溶性ショ糖アリルエーテルのエーテル化度が高いと、水に対する溶解性が若干低下するため、水相中においてショ糖アリルエーテルと水溶性不飽和カルボン酸単量体との架橋反応が若干進行し難くなる傾向がある。このエーテル化度は、ショ糖に対するアリルエーテル基のモル比の平均値である。エーテル化度は、ショ糖アリルエーテル中に残存する水酸基を、ピリジン中で無水酢酸と反応させ、このとき消費される無水酢酸の量から算出することができる。
【0019】
水溶性ショ糖アリルエーテルは、例えば、ショ糖水性液に触媒の水酸化ナトリウムを加え、ショ糖をアルカリショ糖に転化した後、臭化アリルを滴下してエーテル化を行う方法により得ることができる。このとき、臭化アリルの量を、ショ糖に対して2〜6倍モル、好ましくは2〜5倍モルの範囲に調整することにより、効率的に水溶性ショ糖アリルエーテルを得ることができる。エーテル化の反応温度は、例えば80℃程度である。通常、臭化アリルの滴下後3時間程度で反応が完結する。反応液から分離した水相にアルコールを添加し、析出する塩類を濾別した後、余分なアルコールと水分を留去させることにより、水溶性ショ糖アリルエーテルを回収することができる。
【0020】
逆相懸濁重合に用いられる疎水性溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素から選ばれる石油系炭化水素溶媒が用いられる。脂肪族炭化水素としては、n−ペンタン、n−ヘキサン及びn−ヘプタン等が挙げられる。脂環式炭化水素としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサン等が挙げられる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン及びキシレン等が挙げられる。特に、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン及びトルエンから選ばれる少なくとも1種の疎水性溶媒が、工業的な汎用溶媒として好適に使用される。疎水性溶媒の比率は、水溶性不飽和カルボン酸単量体等を含む水相100質量部に対して、例えば100〜200質量部である。
【0021】
逆相懸濁重合の際、水溶性不飽和カルボン酸単量体等を含む水相、又は前記疎水性溶媒は、界面活性剤及びラジカル開始剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0022】
界面活性剤は、主に重合中の懸濁状態を安定化させるために用いられる。界面活性剤は、逆相懸濁重合において通常用いられるものであれば特に限定されない。好ましくは、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、変性ポリエチレンワックス、変性ポリプロピレンワックス、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、セルロースエーテル(ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース等)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤が用いられる。
【0023】
界面活性剤の量は、水溶性不飽和カルボン酸単量体に対して好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。界面活性剤の量が少ないと重合の際の懸濁状態の安定性に問題が生じる可能性が若干あり、界面活性剤の量が多いと経済的に不利となる傾向がある。
【0024】
ラジカル開始剤は、通常のラジカル重合に用いられるものであれば特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及びアゾ系開始剤などが好適に使用される。例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩をラジカル開始剤として用いることができる。
【0025】
ラジカル開始剤の量は、水溶性不飽和カルボン酸単量体に対して好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.02〜0.2質量%である。ラジカル開始剤の量がこの範囲内にあると、重合反応がより効率的に進行し得、また得られる重合体を親水性増粘剤として用いた際の増粘性により優れる。
【0026】
逆相懸濁重合の際、水溶性不飽和カルボン酸単量体等を含む液滴のサイズは、得られるポリマー粒子のサイズと密接な関係がある。反応容器及び製造スケール等の条件により異なるが、例えば2Lのフラスコを反応容器として用いた場合、撹拌速度800〜1000回転/分の条件で逆相懸濁重合を行うことにより、適当なサイズのポリマー粒子を得ることができる可能性が高い。このように、重合反応時の撹拌速度を調整し、ポリマー粒子(樹脂粒子)のサイズを制御することで、中位粒子径5〜30μmの樹脂粒子を得ることができる。このようにして得られたポリマー粒子の形状は球状であり、化粧品等の水性液中においても保持されるためこれを用いた化粧料において、種々の特性や触感・使用感によい影響を及ぼすものと考えられる。
【0027】
なお、当該粒子の中位粒子径は、当該粒子をn−ヘキサン中に分散させ、レーザー回折法により測定した体積平均粒径の中位粒子径である。当該方法による測定装置(レーザー回折式粒度分布測定装置)として、例えばSALD−2000A(島津製作所製)を用いることができる。
【0028】
本発明において、当該粒子の中位粒子径は、上述の通り5〜30μmであり、好ましくは5〜25μmであり、より好ましくは6〜20μmである。中位粒子径が当該範囲内にない場合、当該粒子を配合してなる弱酸性化粧料を皮膚に適用したときの触感(さっぱりとした軽い触感)に劣り、また、ヨレが出やすくなる。
【0029】
重合反応のその他の諸条件、例えばラジカル開始剤の量、重合反応温度、反応時間等も適宜調整される。重合反応温度は、例えば50〜80℃であり、反応時間は、例えば30分〜3時間である。例えば2Lのフラスコを反応容器として用いる場合、その浴温を60℃に調整して重合反応を開始させることができる。この場合、重合反応の開始は、反応容器内の温度が重合熱で70℃程度に上昇することから確認できる。その後、30分〜3時間程度の熟成反応を行うことで、通常は重合反応が完結する。熟成時間が、それより短いと反応が充分に完了せず、残存する水溶性不飽和カルボン酸単量体が多くなることがある。熟成反応後、浴温を上昇させて反応容器内の水及び石油系炭化水素溶媒を留去させることで、生成物を取得することができる。
【0030】
本発明の弱酸性化粧料用増粘剤は、上記樹脂粒子以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の水溶性増粘剤を含んでもよい。このような水溶性増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム等の多糖類系水溶性高分子、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等が例示できる。なお、本発明の弱酸性化粧料用増粘剤は、上記樹脂粒子からなることが好ましい。
【0031】
本発明の弱酸性化粧料用増粘剤は、その0.5質量%水溶液のpHが4〜7であることが好ましく、4.5〜6.5であることがより好ましい。また、当該0.5質量%水溶液の粘度が、10,000〜20,000(mPa・s)であることが好ましく、12,000〜19,000(mPa・s)であることがより好ましい。
【0032】
また、上記の通り、本発明は、上記弱酸性化粧料用増粘剤を配合してなる弱酸性化粧料も包含する。当該弱酸性化粧料は、さらに酸性物質を含んでもよい。
【0033】
本発明において、弱酸性化粧料はpHが4以上7未満の化粧料であり、好ましくはpHが4〜6.5の化粧料であり、より好ましくはpHが4〜6の化粧料である。また、本発明において、弱酸性化粧料の粘度は、12,000〜20,000(mPa・s)であることが好ましい。
【0034】
なお、上記弱酸性化粧料用増粘剤の0.5質量%水溶液、及び本発明の弱酸性化粧料におけるpH及び粘度は、いずれも、次の方法により測定される。
【0035】
すなわち、pHは、25℃においてpHメーターを用いて測定した値である。pHメーターとしては、例えばHORIBA D−51(株式会社堀場製作所)を用いることができる。また、粘度は、25℃においてBH型回転粘度計(ローターNo.6あるいは7を使用し、回転速度は毎分20回転)を用いて、ローターの回転を開始してから1分後に測定された値である。
【0036】
本発明の弱酸性化粧料用増粘剤に含有される上記樹脂粒子は、弱酸性化粧料に配合されると、吸水して膨潤するため、その中位粒子径が配合前に比べて好ましくは約8〜10倍になる。吸水した当該樹脂粒子の中位粒子径は、40〜300μm程度であることが好ましく、50〜250μm程度であることがより好ましい。なお、当該中位粒子径は、レーザー回折法により測定した体積平均粒径の中位粒子径である。当該方法による測定装置(レーザー回折式粒度分布測定装置)として、例えばSALD−2000A(島津製作所製)を用いることができる。
【0037】
本発明に用いられる酸性物質としては、水溶液中で酸性を示す、化粧料に用いられることが公知の成分であればよい。例えば、水溶液中で酸性を示す、公知の消炎剤、保湿剤、角質溶解剤、収斂剤、酸性老化防止剤、抗脂肪沈着剤、美白剤および抗ニキビ剤等が挙げられる。
【0038】
具体的には、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、マンデル酸、ベンジル酸、アゼライン酸、α−リポ酸、サリチル酸、α−ヒドロキシ酪酸、β−ヒドロキシ酪酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸(ビタミンC))、アスコルビン酸グルコシド、サリチル酸、サリチル酸グリコール、レチノイン酸等が挙げられる。
【0039】
本発明の弱酸性化粧料における酸性物質の含有量は、その含有される成分に応じて異なるが、概ね全成分に対して0.5〜5質量%含有することが好ましい。
【0040】
本実施形態に係る化粧料の種類は、特に限定されないが、例えば、薬用クリーム、化粧水、乳液、美容液、クリーム、クリームパック、マッサージクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングジェル、ジェルクリーム、洗顔フォーム、保湿ジェル、ヘアーセッティングジェル、日焼け止め、スタイリングジェル、アイライナー、マスカラ、口紅及びファンデーション等が挙げられる。また、本発明の化粧料に含まれるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、化粧料に配合される公知の成分であれば特に制限はされないが、例えば、水、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等が挙げられる。
【0041】
クリーム、クリームパック、マッサージクリーム及びクレンジングクリーム等のクリーム化粧料、又は、クレンジングジェル、ジェルクリーム、保湿ジェル、ヘアーセッティングジェル及びスタイリングジェル等のジェル系化粧料として本実施形態に係る化粧料を用いると、高濃度で配合してもヨレを生じることなく、さっぱり感及び軽さも付与され、メリットが特に大きい。
【0042】
例えば水中油型乳化化粧料である乳液及びクリームは、油性成分と、水及び本発明の弱酸性化粧料用増粘剤に加え、必要に応じて、酸性物質や、植物エキス等の有効成分、界面活性剤、キレート剤(エデト酸ナトリウム等)、防腐剤、香料などの成分から構成され得る。一般的には、水中油型乳化化粧料は、水相と油相を70℃前後に加熱溶解し、ホモミキサーで乳化した後、撹拌しながら冷却する工程で製造される。本発明の弱酸性化粧料用増粘剤はこれらの製品のレオロジーコントロール剤及び乳化安定剤として機能すると考えられる。
【0043】
本発明の弱酸性化粧料における弱酸性化粧料用増粘剤の配合量は、当該化粧料の種類や求められる粘度に応じて、適宜設定することができる。例えば、0.3〜2質量%であり得る。なお、弱酸性化粧料における弱酸性化粧料用増粘剤の配合量は、通常の化粧料における増粘剤の添加量は、例えば、一般的な乳液では全成分に対し0.1〜0.3質量%、一般的なクリームでは0.2〜2質量%程度である。一般的に1質量%以上配合すると、べたつき、ヨレを生じやすいからである。しかし、本発明の弱酸性化粧料においては、所望の粘性を得る観点から、弱酸性化粧料用増粘剤を1〜2質量%程度好ましく配合することもできる。
【0044】
弱酸性化粧料のなかでも、水中油型乳化化粧料である乳液及びクリームについて、以下述べる。
【0045】
油性成分は、特に限定されないが、肌への質感、馴染み、外観、滑り性等を考慮して、天然系オイル、シリコーン系オイル及びエステル油等であってもよい。
【0046】
天然系オイルとしては、例えば、流動パラフィン等のパラフィン系炭化水素、オリーブオイル、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、ホホバ油、オレンジラフィー油、ミツロウ、ラノリン、ミネラルオイル、及びスクワラン等が挙げられる。
【0047】
シリコーン系オイルとしては、例えば、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状メチルシロキサン、及びシリコーンポリエーテルコポリマー等の変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0048】
エステル油としては、各種脂肪酸エステルが挙げられる。例えば、オレイン酸、エルカ酸、ミリスチン酸、リシノレイン酸等の各脂肪酸のオクチルドデシルエステルが好適である。
【0049】
これらの油性成分は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
美白剤や保湿剤を配合してもよい。なお、美白剤や保湿剤のなかで、水溶液中で酸性を示す成分は、酸性物質である。
【0051】
美白剤としては、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸2グルコシドなどが使用させる。
【0052】
保湿剤は、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビット、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジグリセリン、マンニトール及びPOEメチルグリコシド等から適宣選ばれる。
【0053】
界面活性剤は、ノニオン性のモノステアリン酸グリセリン、POEソルビタン脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステル等が使用されることが多い。ただし、アニオン性、カチオン性又は両性の界面活性剤を使用することもできる。
【0054】
また、弱酸性化粧料が保湿ジェル、及びヘアーセッティングジェル等のジェル系化粧料の場合は、例えば水、保湿剤、及び必要によりヘアーセッティング剤などの薬剤と、弱酸性化粧料用増粘剤とを含有する。当該増粘剤の量は、ジェル系化粧料の質量を基準として好ましくは0.3〜2質量%である。
【0055】
また、本発明の弱酸性化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに親水性増粘剤を含んでもよい。このような親水性増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム等の多糖類系水溶性高分子、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等が例示できる。これらのなかでも、キサンタンガムは、本発明の弱酸性化粧料用増粘剤と組み合わせて用いることにより増粘効果がより一層高まるため、特に好ましい。なお、弱酸性化粧料にさらに配合するこれら親水性増粘剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
<水溶性ショ糖アリルエーテルの合成>
(製造例1)
1000mLのセパラブルフラスコに撹拌機、還流冷却管及び滴下ロートを取り付けた。このセパラブルフラスコの中で、水144gに水酸化ナトリウム48g(1.2モル)を溶解した。そこにショ糖136.8g(0.4モル)を加え、70〜85℃で120分間撹拌して、アルカリショ糖水溶液を調製した。このアルカリショ糖水溶液に対して、臭化アリル145.2g(1.2モル)を、70〜85℃で1.5時間かけて滴下し、その後、80℃で3時間熟成して、ショ糖をアリルエーテル化した。冷却後、水440gを添加し、分液ロートで余分な油分を分離して、粗ショ糖アリルエーテル水溶液を得た。この粗ショ糖アリルエーテル水溶液に塩酸を加えてpHを6〜8に調整した後、ロータリーエバポレーターを用いて、水溶液の質量が480gになるまで水分を除去した。そして、エタノール200gを添加して副生成物の臭化ナトリウム等の塩類を析出させ、析出物を濾別により水溶液から除去した。さらにエバポレーターを用いて水溶液から余分な水分を除去し、エーテル化度2.4の精製された水溶性ショ糖アリルエーテル166gを得た。
【0058】
<樹脂(水溶性架橋剤によって架橋された水溶性不飽和カルボン酸単量体の重合体)の合成>
(製造例2)
500mLセパラブルフラスコに撹拌機、還流冷却管及び滴下ロートを取り付けた。このセパラブルフラスコの中にアクリル酸72g及び水を入れ、80質量%のアクリル酸水溶液90gを調製した。さらにイオン交換水56gと、架橋剤として製造例1の水溶性ショ糖アリルエーテル0.023g(アクリル酸水溶液に対して0.25質量%)と、開始剤としての2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩(和光純薬工業株式会社製 V−50)0.04gとを加えて、水溶性不飽和カルボン酸単量体水溶液を調製した。
【0059】
これとは別に、撹拌機、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を取り付けた2Lのセパラブルフラスコにn−ヘプタン330gを入れ、さらに界面活性剤であるソルビタンモノステアレート(日油株式会社製、ノニオンSP-60R)2.7gを加え、これをn−ヘプタンに分散及び溶解させた。そこに、先に調製した水溶性不飽和カルボン酸単量体水溶液を加えた。反応容器内の雰囲気、原料および溶媒中に存在している酸素を除去するために溶液中に窒素ガスを吹き込んで系内を窒素置換しながら、浴温を60℃に保持して、撹拌速度1000回転/分で撹拌して、1時間かけて逆相懸濁重合法により重合を行った。重合終了後、水およびn−ヘプタンを留去して、アクリル酸及びそのナトリウム塩の重合体であって、水溶性ショ糖アリルエーテルによって架橋された重合体である中和度0%の樹脂の粉末62gを得た(以下当該樹脂を樹脂Aとよぶ)。
【0060】
(製造例3)
500mLセパラブルフラスコに撹拌機、還流冷却管及び滴下ロートを取り付けた。このセパラブルフラスコの中にアクリル酸72g及び水を入れ、80質量%のアクリル酸水溶液90gを調製した。アクリル酸水溶液を冷却しながら、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液27gを滴下して、水溶液を中和した。さらにイオン交換水56gと、架橋剤として製造例1の水溶性ショ糖アリルエーテル0.023g(アクリル酸水溶液に対して0.25質量%)と、開始剤としての2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩(和光純薬工業株式会社製 V−50)0.04gとを加えて、水溶性不飽和カルボン酸単量体水溶液を調製した。
【0061】
これとは別に、撹拌機、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を取り付けた2Lのセパラブルフラスコにn−ヘプタン330gを入れ、さらに界面活性剤であるソルビタンモノステアレート(日油株式会社製、ノニオンSP-60R)2.7gを加え、これをn−ヘプタンに分散及び溶解させた。そこに、先に調製した水溶性エチレン不飽和単量体水溶液を加えた。反応容器内の雰囲気、原料および溶媒中に存在している酸素を除去するために溶液中に窒素ガスを吹き込んで系内を窒素置換しながら、浴温を60℃に保持して、撹拌速度1000回転/分で撹拌して、1時間かけて逆相懸濁重合法により重合を行った。重合終了後、水およびn−ヘプタンを留去して、アクリル酸及びそのナトリウム塩の重合体であって、水溶性ショ糖アリルエーテルによって架橋された重合体である中和度20%の樹脂の粉末80gを得た(以下当該樹脂を樹脂Bとよぶ)。
【0062】
(製造例4)
30質量%の水酸化ナトリウム水溶液を54gに変更したこと以外は製造例3と同様の操作により、中和度40%の樹脂の粉末90gを得た(以下当該樹脂を樹脂Cとよぶ)。
【0063】
(製造例5)
撹拌回転数を800回転に変更した以外は製造例4と同様の操作により、中和度40%の樹脂の粉末90gを得た(以下当該樹脂を樹脂Dとよぶ)。
【0064】
(製造例6)
撹拌回転数を600回転に変更した以外は製造例4と同様の操作により、中和度40%の樹脂の粉末90gを得た(以下当該樹脂を樹脂Eとよぶ)。
【0065】
(製造例7)
30質量%の水酸化ナトリウム水溶液を94gに変更したこと以外は製造例3と同様の操作により、中和度70%の樹脂の粉末102gを得た(以下当該樹脂を樹脂Fとよぶ)。
【0066】
<カルボキシビニルポリマーの合成>
(製造例8)
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管及び冷却管を取り付けた500mL容の四つ口フラスコに、アクリル酸45g(0.625モル)、ペンタエリトリトールアリルエーテル0.27g、ノルマルヘキサン150g及び2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.081g(0.00035モル)を仕込んで、反応液を調製した。反応液を撹拌して各原料を均一に混合した後、反応容器の雰囲気、原料及び溶媒中に存在している酸素を除去するために溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、反応液を60〜65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、n−ヘキサンを留去し、さらに、110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末状のカルボキシビニルポリマーの粉末42gを得た。
【0067】
<樹脂及びカルボキシビニルポリマーの特性評価>
〈中位粒子径の測定〉
製造例2〜7で得られた各樹脂および製造例8で得られたカルボキシビニルポリマーの粉末を、それぞれn−ヘキサン中に分散させ、島津製作所製レーザー粒子径測定装置(SALD2000 フローセル使用)により体積平均粒径の中位粒子径を測定した。結果を表1に示した。
【0068】
〈0.5質量%水性液粘度の測定〉
各樹脂及びカルボキルビニルポリマーを水と混合して、それぞれの水性液(濃度0.5質量%)を調製した。樹脂がアクリル酸ナトリウム塩をモノマー単位として含む場合、アクリル酸のモノマー単位の質量を基準として、樹脂の質量%を計算した。樹脂B〜Fを含む各水性液のpHは4.8〜7.0であった。樹脂A及びカルボキルビニルポリマーを含む各水性液については、所定量の6質量%水酸化ナトリウム水溶液を中和剤として用いてpHを6.0に調整するとともに、樹脂濃度を0.5質量%とした。各0.5質量%水性液の粘度を、BH型回転粘度計を用いて測定した。スピンドルローターの回転速度を毎分20回転として、25℃において、ローターの回転を開始してから1分後の粘度の値を読み取った。樹脂A〜FはローターNo.6、カルボキシビニルポリマーはローターNo.7を使用した。結果を表1に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
<化粧料の調整>
<美白クリームA>
(実施例1)
以下のオイル成分1〜4を混合し、そこに樹脂Aを加えホモミキサーで分散させ、さらに成分6〜10を水に溶解して得た均一混合液を加え、ホモミキサー(13000rpm)により乳化し、美白クリームA−1を得た。
【0071】
油相
1.流動パラフィン 5%
2.スクワラン 5%
3.パルミチン酸イソプロピル 5%
4.トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 5%
5.樹脂A 1.5%
水相
6.イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(20E.O.) 3%
7.アスコルビン酸グルコシド 1.5%
8.フェノキシエタノール 0.5%
9.6%水酸化ナトリウム 適量
10.精製水 残余
【0072】
(実施例2)
樹脂Aを樹脂Bに変更したこと以外は実施例1と同様の操作により、美白クリームA−2を調製した。
【0073】
(実施例3)
樹脂Aを樹脂Cに変更したこと以外は実施例1と同様の操作により、美白クリームA−3を調製した。
【0074】
(実施例4)
樹脂Aを樹脂Dに変更したこと以外は実施例1と同様の操作により、美白クリームA−4を調製した
【0075】
(比較例1)
樹脂Aを樹脂Eに変更したこと以外は実施例1と同様の操作により、美白クリームA−5を調製した
【0076】
(比較例2)
樹脂Aを樹脂Fに変更したこと以外は実施例1と同様の操作により、美白クリームA−6を調製した
【0077】
(比較例3)
樹脂Aをカルボキシビニルポリマーに変更したこと以外は実施例1と同様の操作により、美白クリームA−7を調製した
【0078】
<美白クリームB>
(実施例5)
以下のオイル成分1〜4を混合し、そこに樹脂Cを加えホモミキサーで分散させ、さらに成分6〜11を水に溶解して得た均一混合液を加え、ホモミキサー(13000rpm)により乳化し、美白クリームB−1を得た。
【0079】
油相
1.流動パラフィン 5%
2.スクワラン 5%
3.パルミチン酸イソプロピル 5%
4.トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 5%
5.樹脂C 1%
水相
6.イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(20E.O.) 3%
7.アスコルビン酸グルコシド 1.5%
8.キサンタンガム 0.5%
9.フェノキシエタノール 0.5%
10.6%水酸化ナトリウム 適量
11.精製水 残査
【0080】
(比較例4)
実施例5において、樹脂Cを用いなかった以外は実施例5と同様にして美白クリームB−2を得た。
【0081】
<薬用クリーム>
(実施例6)
以下のオイル成分1〜4を混合し、そこに樹脂Cを加えホモミキサーで分散させ、さらに成分6〜10を水に溶解して得た均一混合液を加え、ホモミキサー(13000rpm)により乳化し、薬用クリームを得た。
【0082】
油相
1.流動パラフィン 5%
2.スクワラン 5%
3.パルミチン酸イソプロピル 5%
4.トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 5%
5.樹脂C 1.5%
水相
6.グリセリン 5%
7.1,3−ブチレングリコール 5%
8.イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(20E.O.) 3%
9.サリチル酸グリコール 1.5%
10.フェノキシエタノール 0.5%
11.6%水酸化ナトリウム 適量
12.精製水 残余
【0083】
(比較例5)
実施例6において、樹脂Cを樹脂Fに変更したこと以外は実施例6と同様の操作により、薬用クリームを調製した。
【0084】
(比較例6)
実施例6において、樹脂Cをカルボキシビニルポリマーに変更したこと以外は実施例6と同様の操作により、薬用クリームを調製した。
【0085】
<化粧料の特性評価>
実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた化粧料について、pH、粘度、触感、ヨレ性を以下の方法により評価した。結果を表2に示した。
【0086】
<pH>
25℃においてpHメーターHORIBA D−51(株式会社堀場製作所)を用いて測定した。
【0087】
〈粘度〉
BH型回転粘度計を用いて測定した。スピンドルローターの回転速度を毎分20回転として、25℃において、ローターの回転を開始してから1分後の粘度の値を読み取った。なお、粘度1000(mPa・s)以下はローターNo.2、粘度 8000〜20000(mPa・s)はローターNo.6を使用した。
【0088】
〈触感〉
男女各5人(計10人)の試験者によって、触感を以下の通り評価した。適量の化粧料を手の甲に塗付し、指で伸ばした時のさっぱり感および軽さを質感として以下の基準で評価した。
【0089】
評価基準
○:さっぱり感、軽さが良いと評価した試験者が8人以上いた。
×:さっぱり感、軽さが良いと評価した試験者が7人以下であった。
【0090】
〈ヨレ性〉
男女各5人(計10人)の試験者によって、触感を以下の通り評価した。化粧料0.5gを肌にとり、塗りこみ時間1分で前腕部に塗布した際のヨレ(凝集物)の発生状況を確認した。
【0091】
評価基準
×:10人中9人以上が多量の凝集物ありと評価した。
△:10人中2人〜8人がわずかに凝集物ありと評価した。
○:10人中9人以上がほとんど凝集物無しと評価した。
【0092】
【表2】
【0093】
表2に示すように、樹脂A〜Dを用いた実施例1〜4および実施例6によれば、酸性物質を含有する化粧料においても、さっぱりした軽い触感とヨレの出ない良好な化粧料が得られた。これら特定の樹脂(水溶性架橋剤の存在下に重合して得られる中和度50%以下、中位粒子径5〜30μmの樹脂)が親水性増粘剤として、特に酸性の化粧料に用いるのに適していることが分かった。
【0094】
またさらに、実施例5によれば、当該特定の樹脂とキサンタンガムを併用することによって、増粘相乗効果が認められた。