特許第6548908号(P6548908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548908
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】測定力を示す変位センサを有するノギス
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/20 20060101AFI20190711BHJP
   G01B 7/02 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   G01B3/20 101B
   G01B7/02 Z
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-34209(P2015-34209)
(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公開番号】特開2015-165232(P2015-165232A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2018年1月12日
(31)【優先権主張番号】14/194,320
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100170346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 望
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】テッド ステイトン クック
(72)【発明者】
【氏名】ビヨン ヤンソン
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0047009(US,A1)
【文献】 特開平09−049720(JP,A)
【文献】 特開2008−040835(JP,A)
【文献】 特開2005−030836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/00− 3/08
3/11− 3/56
G01B 7/00− 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定時に測定対象物に対向する第1の測定面を有するスケール部材と、
測定時に測定対象物に対向する第2の測定面を有するスライダと、
前記スライダに設置された回路基板に作製された導電性信号検知素子を有し、前記スライダの前記スケール部材に沿った位置変化に応じて位置信号を供給するスライダ変位センサと、
前記スライダに設置された測定力検知機構であって、
前記回路基板に対して移動する圧力アクチュエータと、
圧力素子変位センサと、
圧力検知回路とを有し、
前記圧力素子変位センサは、
前記回路基板に対して固定された少なくとも1つの導電性信号検知素子と、
前記圧力アクチュエータと連結し、前記少なくとも1つの導電性信号検知素子の近傍に配置される少なくとも1つの信号変調素子とを有し、
前記圧力検知回路は、前記回路基板に設置され、前記少なくとも1つの導電性信号検知素子と接続する、前記測定力検知機構と
を具備し、
前記圧力アクチュエータは、コイルばねと連結する剛性素子を有し、ユーザが前記圧力アクチュエータを介して前記コイルばねの寸法を変化させると、測定時に前記第1及び第2の測定面の少なくとも何れか一方を介してユーザから測定対象物に印加された測定力が変化する
ノギス。
【請求項2】
請求項1に記載のノギスであって、
前記測定力検知機構は、前記測定力の変化に応じて圧力信号を供給する
ノギス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のノギスであって、
前記少なくとも1つの信号変調素子は、前記圧力アクチュエータと連結し、前記少なくとも1つの導電性信号検知素子の近傍で前記変化した寸法に応じて移動する
ノギス。
【請求項4】
測定時に測定対象物に対向する第1の測定面を有するスケール部材と、
測定時に測定対象物に対向する第2の測定面を有するスライダと、
前記スライダに設置された回路基板に作製された導電性信号検知素子を有し、前記スライダの前記スケール部材に沿った位置変化に応じて位置信号を供給するスライダ変位センサと、
前記スライダに設置された測定力検知機構であって、
前記回路基板に対して移動する圧力アクチュエータと、
圧力素子変位センサと、
圧力検知回路とを有し、
前記圧力素子変位センサは、
前記回路基板に対して固定された少なくとも1つの導電性信号検知素子と、
前記圧力アクチュエータと連結し、前記少なくとも1つの導電性信号検知素子の近傍に配置される少なくとも1つの信号変調素子とを有し、
前記圧力検知回路は、前記回路基板に設置され、前記少なくとも1つの導電性信号検知素子と接続する、前記測定力検知機構と
を具備し、
前記少なくとも1つの導電性信号検知素子は、前記スライダに設置された前記回路基板の金属層に作製される
ノギス。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のノギスであって、
前記圧力検知回路は、前記少なくとも1つの導電性信号検知素子に対する前記少なくとも1つの信号変調素子の位置に反応する
ノギス。
【請求項6】
請求項5に記載のノギスであって、
前記少なくとも1つの導電性信号検知素子は、前記少なくとも1つの信号変調素子の前記位置に依存するインダクタンスをもつ可変インダクタンス素子を有する
ノギス。
【請求項7】
請求項6に記載のノギスであって、
前記圧力素子変位センサは、前記少なくとも1つの可変インダクタンス素子と誘導結合した少なくとも1つの電磁誘導式駆動素子をさらに有し、
前記誘導結合は、前記少なくとも1つの信号変調素子の前記位置に依存する
ノギス。
【請求項8】
請求項7に記載のノギスであって、
前記少なくとも1つの信号変調素子は、非鉄導体及びフェライト材の少なくとも何れか一方を含む
ノギス。
【請求項9】
請求項7に記載のノギスであって、
前記少なくとも1つの可変インダクタンス素子は、前記スライダに設置された前記回路基板の金属層に作製された少なくとも2つの平面コイルを有する
ノギス。
【請求項10】
請求項9に記載のノギスであって、
前記少なくとも2つの平面コイルは、互いに対称である
ノギス。
【請求項11】
請求項10に記載のノギスであって、
前記少なくとも1つの信号変調素子は、静止位置にあるとき、前記少なくとも2つの平面コイルのそれぞれの略半分を覆う
ノギス。
【請求項12】
請求項7に記載のノギスであって、
前記少なくとも1つの可変インダクタンス素子は、平面信号コイルを有し、
前記少なくとも1つの電磁誘導式駆動素子は、前記スライダに設置された前記回路基板の金属層に作製された平面駆動コイルを有する
ノギス。
【請求項13】
請求項12に記載のノギスであって、
前記平面信号コイル及び前記平面駆動コイルは、共通領域を取り囲み、
前記回路基板は、2つの層を有し、
前記平面信号コイル及び前記平面駆動コイルは、前記回路基板の同一の金属層に作製される
ノギス。
【請求項14】
請求項12に記載のノギスであって、
前記平面信号コイル及び前記平面駆動コイルは、共通領域を取り囲み、
前記回路基板は、4つの層を有し、
前記平面信号コイル及び前記平面駆動コイルは、前記回路基板の異なる金属層にそれぞれ作製される
ノギス。
【請求項15】
測定時に測定対象物に対向する第1の測定面を有するスケール部材と、
測定時に測定対象物に対向する第2の測定面を有するスライダと、
前記スライダに設置された回路基板に作製された導電性信号検知素子を有し、前記スライダの前記スケール部材に沿った位置変化に応じて位置信号を供給するスライダ変位センサと、
前記スライダに設置された測定力検知機構であって、
前記回路基板に対して移動する圧力アクチュエータと、
圧力素子変位センサと、
圧力検知回路とを有し、
前記圧力素子変位センサは、
前記回路基板に対して固定された少なくとも1つの導電性信号検知素子と、
前記圧力アクチュエータと連結し、前記少なくとも1つの導電性信号検知素子の近傍に配置される少なくとも1つの信号変調素子とを有し、
前記圧力検知回路は、前記回路基板に設置され、前記少なくとも1つの導電性信号検知素子と接続する、前記測定力検知機構と
を具備し、
前記スライダに設置された前記回路基板は、前記回路基板の実装領域が前記スライダに当接し、
前記スライダ変位センサの前記導電性信号検知素子は、前記実装領域から遠ざかる方向である第1の横方向に位置するスケール領域内の前記スケール部材と重なり合い、
前記圧力素子変位センサの前記少なくとも1つの導電性信号検知素子は、前記実装領域から遠ざかる方向の逆方向である横方向に位置する領域に配置される
ノギス。
【請求項16】
測定時に測定対象物に対向する第1の測定面を有するスケール部材と、
測定時に測定対象物に対向する第2の測定面を有するスライダと、
前記スライダに設置されたプリント回路基板の金属層に作製された少なくとも1つの変位センサ部品を有し、前記スライダの前記スケール部材に沿った位置変化に応じて位置信号を供給するスライダ変位センサと、
前記スライダに設置された測定力検知機構であって、測定時に前記第1及び第2の測定面の少なくとも何れか一方を介してユーザから測定対象物に印加された測定力の変化に応じて圧力信号を供給し、前記測定力検知機構は圧力素子変位センサを有し、前記圧力素子変位センサは、前記スライダに設置された前記プリント回路基板の金属層に作製された少なくとも1つの変位センサ部品を有する前記測定力検知機構と
を具備するノギス。
【請求項17】
請求項16に記載のノギスであって、
前記測定力検知機構は、
コイルばねと連結する剛性素子を有する圧力アクチュエータであって、ユーザが前記圧力アクチュエータを介して前記コイルばねの寸法を変化させると、前記測定力が変化する前記圧力アクチュエータと、
前記圧力アクチュエータと連結し、前記プリント回路基板の前記金属層に作製された前記圧力素子変位センサの少なくとも1つの変位センサ部品の近傍で前記変化した寸法に応じて移動する少なくとも1つの信号変調素子と、を有する
ノギス。
【請求項18】
請求項16に記載のノギスであって、
前記スライダに設置された前記回路基板は、前記回路基板の実装領域が前記スライダに当接し、
プリント回路基板の金属層に作製された前記スライダ変位センサの前記少なくとも1つの変位センサ部品は、前記実装領域から遠ざかる方向である第1の横方向に位置するスケール領域内の前記スケール部材と重なり合い、
プリント回路基板の金属層に作製された前記圧力素子変位センサの前記少なくとも1つの変位センサ部品は、前記実装領域から遠ざかる方向の逆方向である横方向に位置する領域に配置される
ノギス。
【請求項19】
請求項16に記載のノギスであって、
前記測定力検知機構は、前記回路基板に設置され、前記プリント回路基板の前記金属層に作製された前記圧力素子変位センサの前記少なくとも1つの変位センサ部品に接続する圧力検知回路を有する
ノギス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、精密測定器に関し、具体的には、対象物の寸法を測定するための可動ジョウ付ノギスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子式位置エンコーダを使用する各種電子ノギスが知られている。一般に、このエンコーダは、低電力の電磁誘導式、静電容量式、又は磁気式の位置検知技術に基づくものである。一般に、エンコーダは、読取ヘッドとスケールとを有してもよい。一般に、読取ヘッドは、読取ヘッドセンサと読取ヘッド電装部とを有してもよい。読取ヘッドは、信号を出力する。この信号は、スケールに対する読取ヘッドセンサの測定軸に沿った位置に応じて変化する。電子ノギスにおいて、一般に、スケールは、第1の測定ジョウを有する長尺状のスケール部材に設けられる。読取ヘッドは、第2の測定ジョウを有するスライダに設けられる。スライダは、スケール部材に沿って移動可能である。従って、読取ヘッドからの信号に基づいて、2つの測定ジョウの間の距離測定値を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国再発行特許第37490号
【特許文献2】米国登録特許第5574381号
【特許文献3】米国登録特許第5973494号
【特許文献4】米国公開特許第2003/0047009号
【特許文献5】米国登録特許第5901458号
【特許文献6】米国登録特許第6400138号
【特許文献7】米国特許出願第13/706225号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同一出願人による特許文献1、特許文献2及び特許文献3には、典型的な電子ノギスが開示される。特許文献4には、圧力(測定力)を測定可能な電子ノギスの先行技術が開示される。特許文献4に記載のように、従来技術に係るノギスの使用上の欠陥の一つは、測定ジョウが印加する圧力(測定力)が変動することである。その結果、測定値にバラツキが生じるおそれがある。とりわけ、柔軟性を有する対象物を測定する場合、この対象物の測定値は、信頼性が低いものであったり、再現性(反復性)が無かったりすることがある。なぜなら、ユーザがノギスのジョウに印加する圧力が高いと柔軟な対象物の「圧縮量が大きく」なったり、圧力が低いと柔軟な対象物の「圧縮量が小さく」なったりすることがあるからである。解決策として、特許文献4に開示されるノギスは、対象物のサイズと対象物に印加される圧力との両方を測定可能である。これらの値を解析することで、再現性の高い測定値が得られるとされる。この圧力は、歪みゲージセンサにより測定される。歪みゲージセンサは、ブラケットを用いて読取ヘッドに取り付けられる。歪みゲージセンサは、ノギスでの測定時に対象物に印加される加圧量を示す信号を出力する。そして、この信号は、プリント回路基板に送信される。特許文献4には圧力の測定が確かに開示されてはいるが、圧力を測定するための構成として、歪みゲージセンサを設置し使用しなければならない。加えて、信号を何らかの手段でプリント回路基板に送信する必要があるため、配線やその他の連結技術がさらに必要となる。さらに、歪みゲージセンサからの信号を、ノギスが利用可能な圧力測定値に変換するために、特殊な処理が必要になることもある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、必要とされるプリント回路基板の実装部品や取付部品が最小限であり、典型的なノギス使用環境において確実に動作する、ノギスに印加される圧力のレベルを示すためのより効率的な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この「課題を解決するための手段」では、以下の「発明を実施するための形態」に詳細に記載された各構想のなかから選択した構想を単純化したものを紹介する。この「課題を解決するための手段」は、「特許請求の範囲」の内容の重要な特徴を特定するためのものではなく、「特許請求の範囲」の範囲を特定するのに用いられるものでもない。
【0007】
電動ノギスは、スケール部材と、スライダと、スライダ変位センサと、測定力検知機構とを具備する。スケール部材は、測定時に測定対象物に対向する第1の測定面を有する。スライダは、測定時に測定対象物に対向する第2の測定面を有する。スライダ変位センサは、スライダに設置された回路基板に作製された導電性信号検知素子を有し、スライダのスケール部材に沿った位置変化に応じて位置信号を供給する。
【0008】
測定力検知機構は、スライダに設置され、圧力アクチュエータと、圧力素子変位センサと、圧力検知回路とを有する。圧力アクチュエータは、回路基板に対して移動する。圧力素子変位センサは、少なくとも1つの導電性信号検知素子と、少なくとも1つの信号変調素子とを有する。少なくとも1つの導電性信号検知素子は、回路基板に対して固定される。少なくとも1つの信号変調素子は、圧力アクチュエータと連結し、少なくとも1つの導電性信号検知素子の近傍に配置される。圧力検知回路は、回路基板に設置され、少なくとも1つの導電性信号検知素子と接続する。測定力検知機構は、測定時に第1及び第2の測定面の少なくとも何れか一方を介してユーザから測定対象物に印加された測定力の変化に応じて圧力信号を供給する。
【0009】
各実装形態において、圧力アクチュエータは、コイルばねと連結する剛性素子を有してもよく、ユーザが圧力アクチュエータを介してコイルばねの寸法を変化させると、測定力が変化する。少なくとも1つの信号変調素子は、圧力アクチュエータと連結し、少なくとも1つの導電性信号検知素子の近傍で変化した寸法に応じて移動してもよい。少なくとも1つの導電性信号検知素子は、スライダに設置された回路基板の金属層に作製されてもよい。圧力検知回路は、少なくとも1つの導電性信号検知素子に対する少なくとも1つの信号変調素子の位置に反応してもよい。
【0010】
各実装形態において、少なくとも1つの導電性信号検知素子は、少なくとも1つの信号変調素子の位置に依存するインダクタンスをもつ可変インダクタンス素子を有してもよい。圧力素子変位センサは、少なくとも1つの可変インダクタンス素子と誘導結合した少なくとも1つの電磁誘導式駆動素子をさらに有してもよく、誘導結合は、少なくとも1つの信号変調素子の位置に依存する。少なくとも1つの信号変調素子は、非鉄導体及びフェライト材の少なくとも何れか一方を含んでもよい。
【0011】
各実装形態において、少なくとも1つの可変インダクタンス素子は、スライダに設置された回路基板の金属層に作製された少なくとも2つの平面コイルを有してもよい。一実装形態において、少なくとも2つの平面コイルは、互いに対称であってもよい。信号変調素子は、静止位置にあるとき、少なくとも2つの平面コイルのそれぞれの略半分を覆ってもよい。
【0012】
各実装形態において、少なくとも1つの可変インダクタンス素子は、平面信号コイルを有してもよく、少なくとも1つの電磁誘導式駆動素子は、スライダに設置された回路基板の金属層に作製された平面駆動コイルを有してもよい。平面信号コイル及び平面駆動コイルは、共通領域を取り囲んでもよい。一実装形態において、回路基板は、2つの層を有してもよく、平面信号コイル及び平面駆動コイルは、回路基板の同一の金属層に作製されてもよい。別の実装形態において、回路基板は、4つの層を有してもよく、平面信号コイル及び平面駆動コイルは、回路基板の異なる金属層にそれぞれ作製されてもよい。
【0013】
各実装形態において、スライダ変位センサは、駆動回路から位置駆動信号を受信してもよい。駆動回路はまた、圧力素子変位センサに圧力駆動信号を供給してもよい。一実装形態において、位置駆動信号及び圧力駆動信号は、駆動回路用の異なるクロックサイクルで供給すればよい。
【0014】
各実装形態において、スライダに設置された回路基板は、回路基板の実装領域がスライダに当接してもよい。加えて、スライダ変位センサの導電性信号検知素子は、実装領域から遠ざかる方向である第1の横方向に位置するスケール領域内のスケール部材と重なり合ってもよい。さらに、圧力素子変位センサの少なくとも1つの導電性信号検知素子は、実装領域から遠ざかる方向の逆方向である横方向に位置する領域に配置されてもよい。なお、本構成において、金属製スライダは、通常のスライダ機能に加えて、一方の変位センサへの信号を他方の変位センサに対して遮蔽しつつ、他方の変位センサへの信号を一方の変位センサに対して遮蔽してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、外部電子部品の必要性やプリント回路基板への接続の必要性が最小限であり、典型的なノギス使用環境において確実に動作する、ノギスに印加される圧力のレベルを示すためのより効率的な構成が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係る圧力アクチュエータ機構に設けられた圧力素子変位センサの信号変調素子を有する、スライダ及びスケールを有する手工具式ノギスを示す分解図である。
図2】信号変調素子が設けられた図1の圧力アクチュエータ機構を示す分解図である。
図3】第2の実施形態に係る、信号変調素子が設けられた圧力アクチュエータ機構を示す図であり、図2と等尺である。
図4A】第1の実施形態に係る、信号変調素子に反応する圧力素子変位センサを示す図である。
図4B】第1の実施形態に係る、信号変調素子に反応する圧力素子変位センサを示す図である。
図5A】第2の実施形態に係る、信号変調素子に反応する圧力素子変位センサを示す図である。
図5B】第2の実施形態に係る、信号変調素子に反応する圧力素子変位センサを示す図である。
図5C】第2の実施形態に係る、信号変調素子に反応する圧力素子変位センサを示す図である。
図5D】第2の実施形態に係る、信号変調素子に反応する圧力素子変位センサを示す図である。
図6】圧力素子変位センサの各種の動作原理を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、第1の実施形態に係る圧力アクチュエータ機構182に設けられた信号変調素子250を有する、手工具式ノギス100を示す分解図である。本例において、ノギス100は、スライダ変位センサ158(例えば、磁気式又は電磁誘導式のセンサ機構)と、スケール基板125とを有する。スケール基板125は、スケールトラック126(それぞれ一部断面図として図示)を有し、長尺状のスケール部材102に沿う溝127内に配置される。なお、別の実施形態において、別の方式のスライダ変位センサ158を使用してもよい(例えば、静電容量式等)。スライダ機構170は、スライダ130に設けられた電装部160を有する。スライダ変位センサ158は、電装部160に設けられる。ノギス100の一般的な機械構造及び物理的操作は、同一出願人による特許文献5等、特定の先行技術に係る電子ノギスの機械構造及び物理的操作と同様である。スケール部材102は、剛体又は半剛体の棒であり、一般に矩形断面に含まれる各種の溝及び/又は他の特徴を有してもよい。スケール基板125は、溝127に強固に接着されてもよい。スケールトラック126は、電装部160に含まれるスライダ変位センサ158の対応する構成要素と協働する、スケール構成要素を有してもよい(図示せず)。その方法は、公知の電子ノギスで用いられる方法と同様であり、特許文献1及び特許文献5や、同一出願人による特許文献6に記述されるとおりである。
【0018】
一組のジョウ108、110は、スケール部材102の第1の端部の近傍に一体的に形成される。対応して、1組のジョウ116、118は、スライダ130に形成される。ジョウ108、116の1組の係合面(測定面)114の間に測定対象物を配置して、測定対象物の外寸を測定する。同様に、ジョウ110、118の1組の係合面122(測定面)を、測定対象物の相反する各内壁面に対して配置して、測定対象物の内寸を測定する。ある位置(ゼロ位置と称することもある)においては、各係合面114が互いに当接し、係合面122が一直線になる。このとき、ノギス100により測定される外寸及び内寸は、ゼロを指してもよい。
【0019】
寸法測定値は、デジタル表示装置144に表示されてもよい。このデジタル表示装置144は、ノギス100の電装部160のカバー140内に実装されている。電装部160はまた、押しボタンスイッチ141(例えば、「原点」スイッチ)と、圧力ステータスインジケータ142(例えば、2色又は3色のライト)と、信号処理/表示回路基板150とを有してもよい。圧力閾値設定動作は、同一出願人による同時係属中の特許文献7(発明の名称「System and Method for Setting Measurement Force Thresholds in a Force Sensing Caliper(圧力検知ノギスにおける測定力閾値の設定システム及び方法)」、出願日2012年12月5日)に詳細に記載される。特許文献7に記載のように、一実装形態において、押しボタンスイッチ141は圧力閾値を設定するのに用いられてもよく、圧力ステータスインジケータ142は圧力閾値信号を供給するのに用いられてもよい(例えば、圧力が所望の測定範囲内のとき「緑色」に点灯し、圧力が所望の測定範囲外のとき「赤色」に点灯する)。
【0020】
信号処理/表示回路基板150は、読取ヘッド信号処理/制御回路159を有してもよい。図1に示すように、信号処理/表示回路基板150の下面がスケール部材102の片側に位置するスライダ130の上面に当接するように、信号処理/表示回路基板150を取り付けてもよい。
【0021】
圧力測定機構180が有する各種の部品は、スライダ130に設置される。後でより詳細に説明するが、圧力測定機構180は、圧力検知機構を有する。本実施形態において、圧力検知機構は、第1の実施形態に係る圧力アクチュエータ機構182と、圧力素子変位センサ200とを有する。圧力素子変位センサ200は、複数の変位信号素子205の配列と、信号変調素子250と、圧力アクチュエータ素子252とを有する。後で図6を参照してより詳細に説明するが、配列された複数の変位信号素子205は、回路基板150の一以上の金属層に作製されたものであり、信号変調素子250の位置を示す電気信号を生成する。読取ヘッド信号処理/制御回路159は、圧力検知回路を有する。この圧力検知回路は、複数の変位信号素子205の配列から、圧力測定値を決定するための圧力検知信号を受信する。後で図6を参照してより詳細に説明するが、読取ヘッド信号処理/制御回路159は、複数の変位信号素子205の配列に駆動信号を供給してもよい。
【0022】
一実施形態において、信号変調素子250は、圧力アクチュエータ素子252に取り付けられた所望の材料からなる。この圧力アクチュエータ素子252は、圧力アクチュエータ機構182に機械的に連結するか、圧力アクチュエータ機構182の一部である。別の実施形態において、信号変調素子250は、圧力アクチュエータ素子252と同じ材料で構成されてもよく、部分的に圧力アクチュエータ素子252と同じ材料で構成されてもよい。圧力アクチュエータ機構182は、サムローラ(サムホイール)191と、圧力アクチュエータ本体192と、ガイドロッド/ベアリング194と、圧力アクチュエータ用コイルばね196とを有する。ユーザがサムローラ191を押圧すると、スライダ130は、スケール部材102の第1の端部に向かって移動する。すると、圧力アクチュエータ素子252及びそれに取り付けられた信号変調素子250が前進し、ノギスの測定軸方向に沿って誘導されるように、複数の変位信号素子205の配列に対して移動する。信号変調素子250は、複数の変位信号素子205の近傍に、相対的に小さな空隙を介して配置される。このため、後で図6を参照してより詳細に説明するが、複数の変位信号素子205は、信号変調素子250の測定軸方向における相対位置を検知する。なお、信号変調素子250の位置は、圧力アクチュエータ用コイルばね196の圧縮又は伸長に相当する。このため、信号変調素子250の位置により、相当する測定時の圧力が示される。
【0023】
各実装形態において、回路基板150の一以上の実装領域がスライダ130に当接してもよい。より具体的には、図1に示すように、回路基板150の実装領域157A、157Bは、それぞれ、スライダ130の実装領域137A、137Bに当接する。加えて、スライダ変位センサ158の導電性信号検知素子(図示せず)は、第1の横方向D1(実装領域157Aから遠ざかる方向)に位置するスケールトラック126のスケール部材102と重なり合ってもよい。さらに、圧力素子変位センサ200の複数の変位信号素子205の配列の少なくとも1つの導電性信号検知素子(後で図4A、4B、5A〜5Dを参照してより詳細に説明する)は、逆方向である横方向D2(実装領域157Aから遠ざかる方向)に位置する領域に配置されてもよい。なお、本構成において、金属製スライダ130は、通常のスライダ機能に加えて、スライダ変位センサ158への信号を圧力素子変位センサ200に対して遮蔽しつつ、圧力素子変位センサ200への同時信号をスライダ変位センサ158に対して遮蔽してもよい。
【0024】
各実装形態において、圧力アクチュエータ用コイルばね196は、単一のばねでもよいし、後で図2を参照してより詳細に説明するように、独立した複数の圧力アクチュエータ用コイルばね部材196A、196Bからなるものであってもよい。図1に示すように、圧力アクチュエータ用コイルばね196は、ガイドロッド/ベアリング194に通される。ガイドロッド/ベアリング194は、スライダ130のガイドロッド/ベアリング穴195に挿入される。ユーザがサムローラ191を押圧すると、スライダ130は、スケール部材102の第1の端部に向かって移動する。すると、圧力アクチュエータ用コイルばね196(あるいは、図2のばね部材196A)が圧縮する。後でより詳細に説明するが、圧力アクチュエータ用コイルばね196(あるいは、ばね部材196A、196B)を用いることで、スライダ130の可動位置の範囲全域に亘って、圧力の増加又は減少が緩やかになる。重要な点としては、これにより、測定プロセス中に、所望の加圧量を付与するためにユーザが加圧量をコントロールしようとするとき、より確実に加圧量をコントロールすることができるとともに、より「直感的な判断」をすることが可能となる。
【0025】
図2は、図1の圧力アクチュエータ機構182を示す分解図である。図2に示すように、一実装形態において、圧力アクチュエータ用コイルばね196の2つのばね部材196A、196Bは、ガイドロッド/ベアリング194により連結されてもよい。別の実施形態において、ばね部材196A、196Bは、2つの独立したばねであってもよい。圧力アクチュエータ用コイルばねの2つの圧力アクチュエータ用コイルばね部材196A、196Bは、ガイドロッド/ベアリング194に通され、ガイドロッド/ベアリング194に固定された仕切り片196C(例えば、C型クリップリング)に当接する。本構成において、ユーザがサムローラ191を押圧すると、スライダ130は、スケール部材102の第1の端部に向かって移動する。すると、図1の圧力アクチュエータ用コイルばね196の動作と同様に、圧力アクチュエータ用コイルばね部材196Aが圧縮する(例えば、測定対象物の外寸測定の際)。一方、ユーザがサムローラ191を逆方向に押圧すると(すなわち、スライダ130の進行方向を、スケール部材102の他端部に向かう方向に変更すると)、ばね部材196Bが圧縮する(例えば、測定対象物の内寸測定の際)。このように、ばね部材196A、196Bを用いることで、双方向測定構成が実現される。
【0026】
一構成例において、ノギス100の一般的な動作は以下の通りである。最初ノギスはゼロセット位置Zero-setにある。ゼロセット位置Zero-setにあるとき、ノギスは通常、双方向測定範囲の中央に位置する。このとき、圧力アクチュエータ用コイルばね部材196A、196Bは略均等に付勢され、信号変調素子250は複数の変位信号素子205の配列の範囲の略中央に位置する(後で図6を参照してより詳細に説明する)。ユーザがサムローラ191を押圧すると、ばね部材196Aが圧縮する。すると、限界位置L-extmeasに到達し得る。限界位置L-extmeasは、外側測定力限度(例えば、測定対象物の外寸測定時)に対応してもよい。例えば、ばね部材196Aが圧縮すると、密着高さに到達することがあり、その場合、印加圧力が増加しても信号変調素子250がこれ以上撓まなくなる。これにより、有意な圧力測定ができなくなる。限界位置L-extmeasは、信号変調素子250が変位信号素子205の検知範囲の第1の端部に到達する場合に対応してもよい。限界位置L-extmeasは、外側測定力限度と検知範囲の第1の端部とのうち、何れか一方と対応してもよいし、両方と対応してもよい。
【0027】
同様に、ユーザがサムローラ191を逆方向に押圧すると、限界位置L-intmeas に到達し得る。限界位置L-intmeasは、内側測定限度(例えば、測定対象物の内寸測定時)に対応してもよい。限界位置L-intmeasは、信号変調素子250が変位信号素子205の検知範囲の第2の端部に到達する場合に対応してもよい。限界位置L-intmeasは、内側測定限度と検知範囲の第2の端部とのうち、何れか一方と対応してもよいし、両方と対応してもよい。複数の変位信号素子205の配列の検知範囲の上限及び下限は、得られる検知信号が所望の線形性を有する範囲の上限及び下限により定められてもよいし、別の基準に基づいて定められてもよい。ばね部材196A、196Bの圧縮/伸長範囲は、密着高さにほぼ到達して圧力に対する応答性が相対的に低くなる範囲や、検知信号の非線形性が許容できないレベルとなる範囲を排除するのが望ましい。
【0028】
具体的な一実装例において、信号変調素子250が限界位置L-extmeas又はL-intmeasに相当する位置に到達すると、配列された複数の変位信号素子205は、信号変調素子250の位置を検知する。すると、読取ヘッド信号処理/制御回路159は、圧力ステータスインジケータ(ライト)142を「赤色」すなわち「範囲外」に点灯してもよい。一般に、通常動作中、読取ヘッド信号処理/制御回路159は、信号変調素子250の位置を検知し、この位置を圧力測定値に変換するよう構成されてもよい。各実装形態において、得られた圧力測定値を、様々な形式でユーザに提示してもよい(例えば、圧力測定値をディスプレイに表示する、圧力上限値及び下限値に到達したことを他の各種のインジケータにより示す、等)。
【0029】
なお、図2の双方向測定構成は2つの圧力アクチュエータ用コイルばね部材196A、196Bにより実現されると説明したが、特許文献7に詳細に記載されるように、他の構成により実現してもよい。例えば、別の実施形態においては、両端部が取り外し不可能に取り付けられた単一の圧力アクチュエータ用コイルばねを使用してもよい。この構成によれば、一つのばねを引いたり押したりすることで、必要となる圧力が発生する。一具体例によれば、測定対象物の外寸を測定する際、3〜5Nの範囲の圧力が掛かると、この種のばねは2〜4mm圧縮することがある。測定対象物の内寸を測定する際、3〜5Nの範囲の圧力が掛かると、この種のばねは2〜4mm伸長することがある。一般に、このような実施形態及び/又は図2の実施形態に関して、具体的な実装形態において、特定の人間工学的特性を付与するには、ばね定数が0.25N/mm〜6N/mmであるばねを用いるのが望ましいと実験的に判明している。なお、ノギス使用時には、一般に、印加圧力をコントロールしながら、手指を何本か使ってノギススケールを把持し(これにより手の大部分がノギスに対して固定され)、同時に1本の指でスライダを包み込み、手に対して親指を動かして圧力アクチュエータをスライダに対して調整すればよい。このため、親指が手の親指以外の部分に対して不自由なく移動する量が制限される。一般に、下限である0.25N/mmにおいて、親指が手の親指以外の部分に対して不自由なく快適に移動する範囲内で、加圧量が有意に変動し得る。一方、上限である6N/mmにおいては、親指を少し動かしただけでは印加圧力は少ししか変化せず、測定力によって撓んだり変形したりするおそれのある測定対象物に対してでも、容易且つ安定して印加圧力をコントロールするのに感度が高すぎるとユーザが感じることはない。。言い換えれば、このばね定数範囲であれば、ユーザが直感的に測定することができて望ましいと、実験的に判明している。別の実施形態において、信号変調素子250及び複数の変位信号素子205の配列も、ばねの設計に応じて設計すればよい。なお、別の実施形態において、レバー、ギヤ又は他の公知の機械要素を用いて指の変位と圧力との関係を変更し、他のばね定数(例えば、0.05〜20N/mmの範囲)を用いてもよい。別の実施形態において、別の種のばね(例えば、弾性ポリマー材)を用いて、圧力アクチュエータ用のばねとしてもよい。
【0030】
図3は、第2の実施形態に係る圧力アクチュエータ機構382と、圧力アクチュエータ機構382に取り付けられた圧力素子変位センサ300の信号変調素子350とを示す分解図である。なお、圧力アクチュエータ機構382、圧力素子変位センサ300及び関連するノギス100'における各種の部品は、図1、2の圧力アクチュエータ機構182、圧力素子変位センサ200及び関連するノギス100において同様の参照符号が付与された部品と同様であってもよく、特に断りのない限り、同様に機能すると理解されたい。図3に示すように、圧力測定機構380は、圧力素子変位センサ300と、圧力アクチュエータ機構382とを有してもよい。図3に示すように、圧力測定機構380の各種の部品は、ノギス100'のスライダ130'に取り付けられる。
【0031】
圧力素子変位センサ300は、複数の変位信号素子305の配列と、信号変調素子350と、圧力アクチュエータ素子352と、移動制限ピン398とを有する。圧力アクチュエータ素子352は、内壁面352A、352Bを有する。内壁面352A、352Bは、移動制限ピン398に接触可能であり、接触時に、圧力アクチュエータ素子352の移動の限界となる。後で図6を参照してより詳細に説明するが、複数の変位信号素子305の配列は、スライダ130'上にある回路基板150'の一以上の金属層に作製されたものであり、信号変調素子350の位置を示す電気信号を生成する。圧力検知回路(例えば、読取ヘッド信号処理/制御回路159の一部)は、複数の変位信号素子305の配列から、圧力測定値を決定するための圧力検知信号を受信する。
【0032】
信号変調素子350は、圧力アクチュエータ素子352に取り付けられる。圧力アクチュエータ素子352は、圧力アクチュエータ機構382に機械的に連結するか、圧力アクチュエータ機構382の一部である。圧力アクチュエータ機構382は、サムローラ391と、圧力アクチュエータ本体392と、平行四辺形ばね式サスペンション396とを有する。コイルばね196を用いる図1、2の実装形態との一番の違いは、この平行四辺形ばね式サスペンション396である。図3の構成において、ユーザがサムローラ391を押圧すると、スライダ130'は、ノギス100'のスケール部材の第1の端部に向かって移動する。すると、圧力アクチュエータ素子352及びそれに取り付けられた信号変調素子350が前進し、複数の変位信号素子305の配列に対して移動する。後で図6を参照してより詳細に説明するが、配列された複数の変位信号素子305は、このときの信号変調素子350の位置を検知する。
【0033】
平行四辺形ばね式サスペンション396の動作を説明する。ユーザがサムローラ391を押圧すると、スライダ130'は、ノギス100'のスケール部材の第1の端部に向かって移動する。すると、平行四辺形ばね式サスペンション396は、前方に屈曲する(例えば、測定対象物の外寸測定の際)。ユーザがサムローラ391を逆方向に押圧すると(すなわち、スライダ130'の進行方向を、ノギス100'のスケール部材の他端部に向かう方向に変更すると)、平行四辺形ばね式サスペンション396は、後方に屈曲する(例えば、測定対象物の内寸測定の際)。一実装形態において、移動制限ピン398が圧力アクチュエータ素子352の内壁面352A、352Bに接触すると、移動の限界となる。この移動の限界は、図2を参照して上述した限界位置L-extmeas、L-intmeasと同様に機能してもよい。このように、平行四辺形ばね式サスペンション396を用いることで、ガイドベアリング等を用いる必要もなく、双方向測定構成を実現できる。
【0034】
図1、2を参照して上述したコイルばね196を用いたときと同様に、平行四辺形ばね式サスペンション396を用いることで、より広いスライダ130の可動位置範囲の全域に亘って、圧力の増加又は減少がより緩やかになる。重要な点としては、これにより、測定プロセス中に、所望の加圧量を付与するためにユーザが加圧量をコントロールしようとするとき、より確実に加圧量をコントロールすることができるとともに、より直感的な判断をすることが可能となる。加えて、平行四辺形ばね式サスペンション396を用いることで、必要となる部品点数を削減可能であり、スライダ130'とのより一体的な感覚を得ることができる。
【0035】
図4A、4Bは、第1の実施形態に係る、信号変調素子に反応する圧力素子変位センサ400を示す図である。図4Aに示すように、圧力素子変位センサ400は、複数の変位信号素子405の配列と、信号変調素子450とを有する。後で詳細に説明するが、一実装形態において、複数の変位信号素子405の配列は、複数の共平面(コプラナー)電磁誘導式コイルを有してもよい。共平面電磁誘導式コイルは、プリント回路基板(例えば、スライダ機構170のプリント回路基板150)の金属層に作製される。一実装形態において、プリント回路基板は、少なくとも2層の金属層を有してもよい。図4Aに示すように、第1の層すなわち上層に、一連のノードN1〜N4と圧力検知/駆動回路(例えば、読取ヘッド信号処理/制御回路159に含まれてもよい)とを接続する複数の配線を設けてもよい。
【0036】
図4Aに示すように、ノードN1は信号線SL1と接続し、信号線SL1は検知信号SEN1を供給してもよい。ノードN2は信号線SL2と接続し、信号線SL2は検知信号SEN2を供給してもよい。ノードN3A、N3Bは互いに接続し、コモンノードN3と称することもある。コモンノードN3は信号線SL3と接続し、信号線SL3は駆動信号DRVを受信してもよい。ノードN4は信号線SL4と接続し、信号線SL4はグラウンドGNDと接続する。
【0037】
信号変調素子450は、変位信号素子405の近傍に生じる電界を増強又は妨害するために、複数の変位信号素子405の配列の下方の範囲RG内を移動可能な所望の材料(例えば、非鉄導体、フェライト材等)で構成すればよい。範囲RGは、第1の端部E1及び第2の端部E2を有してもよい。後で図6を参照してより詳細に説明するが、信号変調素子450が範囲RGの第1の端部E1に接近するとき、信号変調素子450は主に検知信号SEN1に影響を及ぼすことができる。一方、信号変調素子450が範囲RGの第2の端部E2に接近するとき、信号変調素子450は主に検知信号SEN2に影響を及ぼすことができる。これも後で図6を参照してより詳細に説明するが、検知信号SEN1と検知信号SEN2との差異を用いて、隣の複数の変位信号素子405の配列の下方に位置する信号変調素子450の位置を測定してもよい。差異を用いることで、線形性やコモンモードエラーからのロバスト性が向上する。
【0038】
図4Bに示すように、プリント回路基板の第2の金属層すなわち下層の金属層に、複数の変位信号素子405の配列(例えば、複数のプリント共平面電磁誘導式コイル)を設けてもよい。複数の変位信号素子405の配列は、第1の信号検知素子410と、第2の信号検知素子420と、信号駆動素子430A、430B(まとめて信号駆動素子430と称する)とを有する。第1の信号検知素子410の一端は、ノードN1と接続する(すなわち、検知信号SEN1を供給する)。一方、第1の信号検知素子410の他端は、ノードN4と接続する(すなわち、グラウンドGNDと接続する)。第2の信号検知素子420の一端は、ノードN2と接続する(すなわち、検知信号SEN2を供給する)。一方、第2の信号検知素子420の他端は、ノードN4と接続する(すなわち、グラウンドGNDと接続する)。信号駆動素子430Aの一端は、ノードN3Aと接続する(すなわち、駆動信号DRVを受信する)。一方、信号駆動素子430Aの他端は、ノードN4と接続する(すなわち、グラウンドGNDと接続する)。信号駆動素子430Bの一端は、ノードN3Bと接続する(すなわち、駆動信号DRVを受信する)。一方、信号駆動素子430Bの他端は、ノードN4と接続する(すなわち、グラウンドGNDと接続する)。複数の変位信号素子405の配列及び信号変調素子450の動作は、後で図6を参照してより詳細に説明する。
【0039】
図5A〜5Dは、第2の実施形態に係る、信号変調素子に反応する圧力素子変位センサ500を示す図である。図5Aに示すように、圧力素子変位センサ500は、複数の変位信号素子505の配列と、信号変調素子550とを有する。なお、複数の変位信号素子505の配列の具体的な態様は、図4A、4Bの複数の変位信号素子405の配列の態様と同様であってもよく、特に断りのない限り、同様に動作してもよい。図5A〜5Dの実装として、一実装形態において、複数の変位信号素子505の配列は、プリント回路基板(例えば、スライダ機構170のプリント回路基板150)の4層の金属層に作製される。図5Aに示すように、第1の金属層すなわち上層の金属層に、一連のノードN1〜N4と圧力検知/駆動回路(例えば、読取ヘッド信号処理/制御回路159に含まれてもよい)とを接続する複数の配線を設けてもよい。
【0040】
図5Aに示すように、図4Aの構成と同様の構成として、ノードN1、N2、N3、N4は、信号SEN1、SEN2、DRV、GNDに関する信号線SL1、SL2、SL3、SL4とそれぞれ接続する。ノードN3は、互いに接続したノードN3A、N3Bの結合ノードである。図5Aに示すように、信号変調素子550は、複数の変位信号素子505の配列の下方の範囲RG内を移動可能である。後で図6を参照してより詳細に説明するが、検知信号SEN1と検知信号SEN2との差異に基づき、信号変調素子550の位置を測定してもよい。
【0041】
図5B、5C、5Dは、プリント回路基板の第2、第3及び第4の金属層に作製され得る複数の変位信号素子505の配列の各部品をそれぞれ示す。図5B、5Cに示すように、第1の信号検知素子部510A、510Bは、それぞれ、プリント回路基板の第2及び第3の金属層に作製された平面コイル部であってもよい。信号検知素子部510A、510Bの一端は、それぞれ、各層を貫通して延在するコモンノードN1Xと接続する。信号検知素子部510Aの他端は、ノードN1と接続する(すなわち、検知信号SEN1を供給する)。信号検知素子部510Bの他端は、ノードN4と接続する(すなわち、グラウンドGNDと接続する)。
【0042】
図5B、5Cに示すように、第2の信号検知素子部520A、520Bは、それぞれ、プリント回路基板の第2及び第3の金属層に作製された平面コイル部であってもよい。信号検知素子部520A、520Bの一端は、それぞれ、各層を貫通して延在するコモンノードN2Xと接続する。信号検知素子部520Aの他端は、ノードN2と接続する(すなわち、検知信号SEN2を供給する)。信号検知素子部520Bの他端は、ノードN4と接続する(すなわち、グラウンドGNDと接続する)。
【0043】
図5Dに示すように、一組の信号駆動素子530A、530Bは、プリント回路基板の第4の金属層に作製された平面コイルであってもよい。各実装形態において、プリント回路基板の第4の金属層は、動作中に信号変調素子550の最も近くに位置する層であってもよい。また、最も厚い金属層に信号駆動素子530A、530Bを作製することが望ましいこともある。これにより、抵抗が減少し、信号駆動素子530A、530Bを駆動するのに必要な電力もまた減少する。信号駆動素子530Aの一端は、ノードN3Aと接続する(すなわち、駆動信号DRVを受信する)。一方、信号駆動素子530Aの他端は、ノードN4と接続する(すなわち、グラウンドGNDと接続する)。同様に、信号駆動素子530Bの一端は、ノードN3Bと接続する(すなわち、駆動信号DRVを受信する)。一方、信号駆動素子530Bの他端は、ノードN4と接続する(すなわち、グラウンドGNDと接続する)。複数の変位信号素子505の配列及び信号変調素子550の動作は、後で図6を参照してより詳細に説明する。
【0044】
図6は、圧力素子変位センサ600の各種の動作原理を示す回路図であり、図1〜5Dの圧力素子変位センサ200〜500の動作原理を示してもよい。図6に示すように、一実装形態において、圧力素子変位センサ600は、複数の変位信号素子605の配列と、信号変調素子650とを有してもよい。複数の変位信号素子605の配列は、第1及び第2の信号検知素子610、620と、信号駆動素子630A、630Bとを有してもよい。具体的な一実装例において、第1及び第2の信号検知素子610、620と、信号駆動素子630A、630Bとは、すべて、プリント回路基板(例えば、スライダ機構170のプリント回路基板150)にプリントされた平面らせんコイルであってもよい。各実装形態において、信号検知素子及び信号駆動素子は、プリント回路基板の同一の金属層に作製されてもよいし、異なる金属層に作製されてもよい。例えば、2層の金属層を有するプリント回路基板において、信号検知素子及び信号駆動素子は、すべて、同一の金属層に作製されてもよい(例えば、図4A、4Bの構成に示す)。別の例としては、4層の金属層を有するプリント回路基板において、信号検知素子及び信号駆動素子は、異なる金属層に作製されてもよい(例えば、図5A〜5Dの構成に示す)。信号変調素子650は、コア(例えば、アルミニウムや銅等の非鉄導体や、フェライト材等)から成ってもよい。図1、2を参照して上述したように、信号変調素子650は、プリント回路基板平面に平行な直線に沿って機械的に変位してもよい。この変位量は、対象物測定時にユーザが印加した測定力量と相関する。
【0045】
具体的な一実装例において、信号駆動素子630A、630Bを、特定の波形パターン(例えば、パルス固有回路が発する正弦波、準正弦波等)で駆動してもよい(例えば、ノードN3への駆動信号DRVにより)。信号駆動素子630A、630Bを駆動することで、それぞれ、第1及び第2の信号検知素子610、620の電圧を誘起してもよい。具体的な一実装例において、信号変調素子650の渦電流は、それぞれ、信号変調素子650の線形位置に応じて、信号駆動素子630A、630Bと第1及び第2の信号検知素子610、620との誘導結合に影響を及ぼすことがある。従って、特定の実装形態において、第1及び第2の信号検知素子610、620を、可変インダクタンス素子と称してもよい。このとき、インダクタンスは、信号変調素子650の位置に依存する。
【0046】
具体例として、信号変調素子650が範囲の第1の端部に位置する(信号変調素子650が主に信号駆動素子630Aと第1の信号検知素子610との間に位置する)場合、信号変調素子650は、主にその誘導結合に影響を及ぼす。反対に、信号変調素子650が範囲の第2の端部に位置する(信号変調素子650が主に信号駆動素子630Bと第2の信号検知素子620との間に位置する)場合、信号変調素子650は、主にその誘導結合に影響を及ぼす。誘導結合が影響を受けることにより、検知信号SEN1、SEN2の大きさにも影響が及ぶ。このように、検知信号SEN1、SEN2(すなわち、ノードN1、N2で測定される)の差によって、信号変調素子650の位置を示して、対象物を測定する際にユーザが印加した測定力量を示してもよい。なお、誘導結合を利用する構成の具体的な利点であるが、一般に、混入物質(切削油、水、他の液体、塵埃、強磁性粒子等)に対して反応しにくいようにセンサを構成することができる。加えて、本開示の構成によれば、ノギスの測定力を測定するのに用いられうる他のセンサ構成に比べて、使用電力をより少なくすることができ、より安価に製造することができる。
【0047】
一実装形態において、信号駆動素子630A、630Bは、共通電源(例えば、ノードN3への駆動信号DRV)及び共通グラウンド(例えば、ノードN4)を共用する、左右対称の2つの隣り合う共平面コイルからなってもよい。このような実装形態において、電流は、それぞれ、信号駆動素子630A、630B中を逆方向(すなわち、それぞれ左回り、右回り)に流れてもよい。これにより、総インダクタンスが最大となる。信号駆動素子630A、630Bを左右対称に作製することで、検知信号SEN1、SEN2もまた相対的に対称となる。信号駆動素子630A、630Bは、プリント回路基板の最も厚い金属層に作製してもよい。これにより、抵抗が最小となり、信号駆動素子630A、630Bを駆動するのに必要な電力もまた最小となる。一実装形態において、信号駆動素子630A、630Bは、動作中に信号変調素子650の最も近くに位置する金属層に作製されてもよい。
【0048】
各実装形態において、複数の変位信号素子605の配列は、ノギス100の関連する部分(例えば、親指を当てる部分)内の利用可能な領域によって決まる設置面積内に納まるように作製すればよい。具体的な一実装例において、その寸法は比較的小さい(例えば、12mm×6mm)こともある。図4A、4B、5A〜5Dに示す構成は、その寸法に収まるようなサイズに製造すればよい。
【0049】
各実装形態において、信号変調素子650の幅は、複数の変位信号素子605の配列の幅よりわずかに大きくすればよい。これにより、発生し得る各種のズレが調整される。加えて、信号変調素子650の長さは、複数の変位信号素子605の配列の合計長さの略半分とすればよい。これにより、応答信号(例えば、検知信号SEN1、SEN2の差異により決まる)の範囲及び線形性が最大となる。具体的な一実装例において、複数の変位信号素子605の配列の全体の寸法を略12mm×6mmとする。この場合、信号変調素子650は、6mm×6mmよりわずかに大きく形成すればよい。加えて、信号変調素子650の移動範囲は、おおよそ、−3mm位置(すなわち、信号変調素子650が主に第1の信号検知素子610と信号駆動素子630Aとの間に位置する)〜+3mm位置(すなわち、信号変調素子650が主に第2の信号検知素子620と信号駆動素子630Bとの間に位置する)とすればよい。
【0050】
信号変調素子650は、各種の材料(例えば、非鉄導体、フェライト材等)により製造してもよい。鉄鋼材を用いることで、誘導結合が増加することがある。一方、特定の実装形態においては、鉄鋼材を用いることで、検知信号SEN1、SEN2の差の大きさに関して全体的な効果が低下する(検知信号SEN1、SEN2の差が小さくなる)と実験的に判明している。従って、特定の実装形態においては、非鉄導体(例えば、アルミニウム、銅等)を用いることが望ましい場合もある。非鉄導体を用いることで、誘導結合が減少するものの、検知信号SEN1、SEN2の差は大きくなる。具体的な一実装例において、コアの厚みは、伝導率及び駆動周波数に応じて、表皮厚みの数倍とすればよい。
【0051】
各実装形態において、圧力素子変位センサ600は、主要なスライダ変位センサ(例えば、スライダ変位センサ158)にスライダ駆動信号を供給する同一の駆動回路(例えば、読取ヘッド信号処理/制御回路159の一部)から圧力駆動信号DRVを受信してもよい。一実装形態において、スライダ駆動信号及び圧力駆動信号は、駆動回路用の異なるクロックサイクルで供給すればよい。これにより、各信号が互いに干渉するのが防止される。なお、本開示の構成によれば、通常、複数の変位信号素子605の配列及びスライダ変位センサ158の必要部品及び関連する制御回路を、すべて、単一の回路基板(例えば、回路基板150)に収めることが可能となる。
【0052】
図6の実装形態によれば、第1及び第2の信号検知素子610、620は、別々の信号を供給する。なお、これに対して、別の実装形態では、第1及び第2の信号検知素子610、620は、単一のコイルとして一体化され、単一の出力としてもよい。さらに別の実装形態では、単一の導電性信号検知素子が、駆動素子及び検知素子として機能してもよい。この信号検知素子の複素インピーダンスが変化することで、変位信号を供給してもよい。
【0053】
上記各実施形態を組み合わせて、さらに別の実施形態を提供することができる。本明細書に記載した全ての特許文献の開示を参照することにより、本発明の一部を構成する。必要に応じて、各特許文献の構想を採用して本実施形態の各態様を変更することができる。これにより、さらに別の実施形態を提供することができる。
【0054】
上記説明に照らして本実施形態を多様に変更することが可能である。一般に、特許請求の範囲において使用する語句は、特許請求の範囲を、明細書及び特許請求の範囲に開示される具体的な実施形態に限定するものであると解釈されるべきでない。むしろ、考え得る全ての実施形態に加えて、特許請求の範囲の均等物の全範囲をも含むと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0055】
100…ノギス
102…スケール部材
130…スライダ
150…回路基板
158…スライダ変位センサ
159…制御回路
180…圧力測定機構
182…圧力アクチュエータ機構
200…圧力素子変位センサ
205…変位信号素子
250…信号変調素子
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6