(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、薄肉構造の絶縁電線・ケーブルを経済的に製造するのに好適な樹脂組成物である。
以下に、樹脂組成物の最良な形態について説明する。
【0011】
<<樹脂組成物>>
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として、少なくともメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンとブロックポリプロピレンを含有するポリオレフィン樹脂を含有する樹脂組成物であって、該ポリオレフィン樹脂中の該メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンの含有量が、65質量%以上である。
【0012】
<ポリオレフィン樹脂>
本発明で使用するポリオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸もしくエステル、ビニルアルコール、酢酸ビニル、塩化ビニルのようにエチレン性不飽和基を有するモノマーを単独もしくは共重合して得られる樹脂であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体や、スチレン系、ブタジエン系などの熱可塑性ラストマー、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴムなどの合成ゴムが挙げられ、酸変性されていてもよい。ここで、酸変性は、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体によるものが好ましい。
【0013】
ポリエチレンは、エチレンの単独重合またはα−オレフィンとの共重合体であって、酸変性体も含むが、密度、形状、分子量により、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)などに分類されている。また、製造する際に、使用する触媒により、チーグラー・ナッタ触媒を使用するチーグラ触媒ポリエチレン、メタロセン触媒を使用するメタロセン触媒ポリエチレンに分類される。
なお、ポリオレフィンにおける「低密度」とは、比重が0.94以下を意味する。
【0014】
ポリプロピレンは、ホモポリプロピレン(h−PP)、エチレンとの共重合体であるランダムポリポロレン(r−PP)、ブロックポリプロピレン(br−PP)が代表的である。
【0015】
本発明では、ポリオレフィン樹脂として、少なくとも、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンとブロックポリプロピレンを使用する。
【0016】
(メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン)
メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(Me−LLDPE)とは、メタロセン触媒にて重合された狭分子量分布のエチレン−α―オレフィン共重合体である。例えば、エチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体が挙げられ、α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンおよび1−ドデセンなどが用いられる。
ここで、メタロセン触媒は、金属中心に結合もしくは配位された1つまたは複数のシクロペンタジエニル基(環)を含む有機金属触媒である。シクロペンタジエニル基(環)はハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アミド基、アルコキシ基などの置換基で置換されていてもよく、また、インデニル、テトラヒドロインデニルもしくはフルオレニルなどの飽和または不飽和の多環式ペンタジエニル基を形成してもよい。触媒はシクロペンタジエニル型でない他の配位子も含んでよい。金属中心は元素の周期律表の第IV族またはランタニド系列が挙げられる。
【0017】
本発明では、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンは、メルトフローレート(MFR)が0.1〜20であるものが好ましく、0.5〜8であるものがより好ましく、1〜4であるものがさらに好ましい。
メルトフローレート(MFR)は、メルトインデクサを使用して測定することができる。
【0018】
メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンとしては、例えば、プライムポリマー社製のエボリューSP2040(商品名)、宇部丸善ポリエチレン社製のユメリット0540F(商品名)、日本ポリエチレン社製のハーモレックスNH464A(商品名)が挙げられる。
【0019】
ポリオレフィン樹脂中に含有するメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、65質量%以上、すなわち65質量%以上100質量%未満であり、65質量%以上90質量%以下が好ましく、77質量%以上82質量%以下がより好ましい。
【0020】
(ブロックポリプロピレン)
本発明では、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンとともにブロックポリプロピレン(br−PP)を使用する。
ブロックポリプロピレンは、エチレン−プロピレンブロック共重合体であって、プロピレン以外の成分が1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の含有量で、プロピレン成分の中に独立して存在する海島構造を有するものである。海島構造は、例えば、ホモポリプロピレンポリマーの「海」の中にエチレン−プロピレン重合体の「島」が浮かぶ構造であり、この「島」は、ホモポリエチレンポリマーの周辺をエチレン−プロピレン重合体で取り囲まれたものであっても構わない。なお、ブロックポリプロピレンは、上記のように、ホモポリプロピレン連鎖とエチレン−プロピレン共重合体連鎖が、必ずしも化学的に結合されているものではない。
【0021】
本発明では、ブロックポリプロピレンは、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が130〜180℃が好ましく、155〜165℃がさらに好ましい。
示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が、上記のような範囲であることにより、成形装置への負荷の低減、樹脂組成物混練時の分散性が改善される。
上記融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えば、島津製作所社製のDSC−50で測定することができる。
【0022】
また、230℃において荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(MFR)は0.1〜50g/分が好ましく、0.5〜5g/分がさらに好ましい。
メルトフローレート(MFR)が、上記のような範囲であることにより、成形装置への負荷の低減、樹脂組成物の流動性、樹脂組成物混練時の分散性が改善される。
上記メルトフローレート(MFR)は、メルトインデクサー(例えば、東洋精機社製のメルトインデクサーG−01)を使用し、
230℃において荷重2.16kgfの条件および方法で測定することができる。
【0023】
ブロックポリプロピレンとしては、例えば、プライムポリマー社製のプライムポリプロ E150GK(商品名)、E253G(商品名)、サンアロマー社製PB270A(商品名)が挙げられる。
【0024】
ポリオレフィン樹脂中に含有するブロックポリプロピレンの含有量は、0質量%を超え35質量%以下であり、3質量%以上35質量%以下が好ましく、8質量%以上13質量%以下がより好ましい。
【0025】
メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンとともにブロックポリプロピレンを使用することで、押出成形における樹脂組成物の押出速度(線速)の高速化が可能となり、電線・ケーブルの被覆材料などの成型品では、高速押出しても、外観にツヤがあり滑らかであり、外観異常が生じない。
このような効果は、ポリプロピレンであって、ホモポリプロピレンやランダムプロピレンでは得ることができず、ブロックポリプロピレンを含有する本発明に特有である。
【0026】
(メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンおよびブロックポリプロピレン以外のポリオレフィン)
本発明では、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンおよびブロックポリプロピレンとともに、これら以外のポリオレフィンを併用することが好ましい。
このようなポリオレフィンとしては、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン以外のポリエチレン(ホモポリエチレンや、エチレン−α−オレフィンとの共重合体の高密度ポリエチレン、チーグラ触媒ポリエチレン、非直鎖状ポリエチレンなど)、ホモプロピレン、ランダムプロピレン)、エチレンとα−オレフィン以外のモノマー(ブタジエン、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸もしくエステル、ビニルアルコール、酢酸ビニル、塩化ビニルなど)との共重合体や、前述の熱可塑性ラストマー、合成ゴムおよびこれらの酸変性体が挙げられる。
【0027】
本発明では、酸変性のポリエチレンが好ましく、酸変性の低密度ポリエチレンがより好ましく、酸変性の直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。ここで、酸変性は、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体によるものが好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸などが挙げられる。ポリオレフィンの酸変性は、例えば、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸もしくはその誘導体を有機パーオキサイドの存在下で、加熱・混練することにより行うことができる。
【0028】
酸変性のポリオレフィンとしては、例えば、日本ポリエチレン社製のアドテックスL6100Mを含む「アドテックス」(商品名)、三井化学社製の「アドマー」(商品名)、三菱化学社製の「モディック」(商品名)、クロンプトン社製の「ポリボンド」(商品名)が挙げられる。
【0029】
ポリオレフィン樹脂中の、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンおよびブロックポリプロピレン以外のポリオレフィンの含有量は、0質量%以上35質量%未満が好ましく、0質量%を超え35質量%未満がより好ましく、5質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。
【0030】
本発明では、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンおよびブロックポリプロピレンとともに、これら以外のポリオレフィンを併用することで、引張特性や耐低温特性の向上の効果が高まる。
【0031】
<ポリオレフィン樹脂以外の樹脂>
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂を含有しても構わない。このような樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタンなどが挙げられる。
ただし、本発明では、樹脂成分としては、ポリオレフィン樹脂のみが好ましい。
【0032】
<添加剤>
本発明の樹脂組成物は、電線、ケーブルなどにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、難燃剤、酸化防止剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、分散剤、架橋剤、可塑剤、充填剤、顔料などを本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じ適宜配合することができる。
【0033】
(難燃剤)
難燃剤としては、水酸化金属を含む金属水和物やハロゲン系難燃剤などが挙げられる。
金属水和物としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられ、樹脂組成物中の樹脂成分との相溶性向上、樹脂組成物の機械特性向上などの点から、脂肪酸やシランカップリング剤で表面処理されたものでも良い。
【0034】
ハロゲン系難燃剤としては、塩素化パラフィン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスペンタブロモベンゼンなどが挙げられ、これら以外に、三酸化アンチモン、硼酸亜鉛、錫酸亜鉛などの難燃助剤の添加も可能である。
【0035】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、トリス〔(3,5−ジ−t−ブチル−4−ビドロキシベンジル)イソシアルレート、〕、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンなどのフェノール系酸化防止剤を挙げることができる。
【0036】
また、ジラウリル 3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル 3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル 3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等のチオエーテル系酸化防止剤や、2−メルカプトベンツイミダゾール、2−メルカプトメチルベンツイミダゾール、4−メルカプトメチルベンツイミダゾール、5−メルカプトメチルベンツイミダゾールやこれらの亜鉛塩などイオウ系酸化防止剤などを併用することで、所望の耐熱性を得ることも可能である。
【0037】
<<樹脂組成物の製造方法>>
本発明の樹脂組成物は、上述のポリオレフィン樹脂、さらに必要に応じて、これ以外の樹脂、難燃剤や充填剤をそれぞれの所望の量調合し、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等のバッチ式混練機あるいは二軸押出機などの通常用いられる混練装置で溶融混練することにより得ることができる。
【0038】
<<成形品、電線・ケーブルおよびその製造方法>>
本発明の樹脂組成物は、各種の成形品、なかでも電線・ケーブルの被覆材料として好ましく適用される。
電線・ケーブルを含む成型品は、本発明の樹脂組成物を押出機により押出成形して、所望の形状に成形して、製造されたものが好ましい。電線・ケーブルの場合、導体、芯線、導体束またはファイバ心線等(導体等ということがある)や、被覆層の周囲に本発明の樹脂組成物を押出被覆して、電線・ケーブルを製造することができる。
本発明の電線・ケーブルにおける導体径や導体の材質、被覆層の厚さなどは特に制限はなく、用途に応じて適宜定められる。
また、導体と被覆層、被覆層と被覆層の間に中間層や遮蔽層を設けるなどの多層構造をとってもよい。
【0039】
本発明の樹脂組成物を押出成形する際の条件は、本発明の樹脂組成物を押出すことができれば特に限定されないが、押出機(押出成形機)への負荷を低減でき、しかも形状維持性をも確保できる点で、押出温度(ヘッド部)が170〜280℃が好ましく、200〜230℃がより好ましい。
また、押出成形の他の条件として、通常の条件を、適宜に設定でき、特に制限はない。押出速度(押出線速)は、制限するものではないが、特に、本発明では、高速押出に対して優れており、生産性が向上する。
押出機のスクリュー構成は、上述のように、特に限定されず、通常のフルフライトスクリュー、ダブルフライトスクリュー、先端ダブルフライトスクリュー、マドックスクリュー等を使用できる。
【0040】
導体の形状や材質は、一般に電線・ケーブルで用いられている形状、材質(銅、アルミニウムなど)であればどのような導体でもよい。
また、被覆層の厚みは、特に制限がない。本発明の樹脂組成物を使用した場合、被覆層の厚みを薄くしても耐摩耗性に優れる利点がある。
【0041】
本発明では、押出成形後、被覆層を架橋することが好ましく、特に、電子線架橋することが好ましい。
電子線架橋は、通常の方法、及び条件で行うことができ、制限するものではない。電子線の照射条件は、照射量が50〜350kGyが好ましい。
【実施例】
【0042】
本発明を以下の
参考例、実施例および比較例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
(
参考例1、4、実施例2、3および比較例1〜4)
参考例1、4、実施例2、3および比較例1〜4の樹脂組成物を形成する材料の構成を下記表1に示した。
使用した材料の詳細は下記のとおりである。
【0044】
<使用材料>
A.ポリエチレン樹脂
(1)高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)
C150 (商品名 宇部丸善ポリエチレン社製)
(2)メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(Me−LLDPE)
エボリューSP2040 (商品名 プライムポリマー社製)
MFR(190℃ 2.16kgf):3.8g/10分
(3)マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン(MaH−LLDPE)
アドテックスL6100M (商品名 日本ポリエチレン社製)
【0045】
B.ポリプロピレン樹脂
(4)ホモポリプロピレン(h−PP)
プライムポリプロ E−200GP (商品名 プライムポリマー社製)
(5)ランダムポリプロピレン(r−PP)
PB222A (商品名 サンアロマー社製)
(6)ブロックポリプロピレン(br−PP)
プライムポリプロ E150GK (商品名 プライムポリマー社製)
示差走査熱量計で測定した融点:160℃
230℃において荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート:0.6g/分
【0046】
[樹脂組成物ペレットの製造]
下記表1に示す配合処方に従い、1.7リットルのバンバリーミキサーを用いて170℃で溶融混合し、混合物を排出し、押出機を通して造粒して、
参考例1、4、実施例2、3および比較例1〜4の樹脂組成物ペレットを得た。
【0047】
[絶縁電線の製作]
上記で得られた各樹脂組成物ペレットを、温度を130〜200℃に設定した押出機を用いて、導体上に押出被覆した後、被覆層を電子線で架橋し、それぞれ、以下の(i)および(ii)の2種の絶縁電線を作製した。
なお、電子線による架橋は、加速電圧1000keVにて、200kGyの条件で行った。
【0048】
(i)断面積が3.0mm
2の銅からなる導体上に0.4mmの厚さで押出被覆した絶縁電線
(ii)断面積が30mm
2の銅からなる導体上に0.8mmの厚さで押出被覆した絶縁電線
【0049】
[評価]
(樹脂組成物の押出性)
前記(i)の絶縁電線を作製する際の樹脂組成物の押出性を得られた絶縁電線の外観に基づき、以下の基準で評価した。
なお、評価は、樹脂組成物の押出速度(押出線速)が、10m/分、100m/分および200m/分のいずれに対しても行った。
【0050】
評価基準
押出速度:10m/分
◎:電線外観が平滑でツヤがある状態
○:電線外観がツヤ消しの状態
△:若干のザラツキが見られる電線外観
×:メルトフラクチャーにより電線の外観にザラツキや凹凸が観測される
【0051】
(樹脂組成物の耐テープ摩耗性)
前記(ii)の絶縁電線を使用し、自動車用電線規格JASO D618に規定されている方法に基づいて実施した。摩耗テープはアルミナ180番を使用し、追加荷重は1.9kgとし、以下の基準で評価した。
【0052】
評価基準
○:導体が露出するまでのテープの移動距離が3430mm以上
×:導体が露出するまでのテープの移動距離が3430mm未満
【0053】
(樹脂組成物の低温特性)
前記(i)の絶縁電線を切断し、導体を取り除いた絶縁被覆材のみの長さ38mmの管状試験片にて実施した。JIS C3005 4.22項に規定されている方法に準拠した試験を行い、冷却媒体の温度が−30℃の状態で打撃を与え、試験後の管状片を目視で確認し、以下の基準で評価した。
【0054】
評価基準
◎:管状片に異常が全く見られない
○:管状片の打撃部に白化が見られる
△:ピンホールやクラックが発生した
×:管状片が2つ以上に分かれた
【0055】
(引張特性)
前記(i)の絶縁電線を150mmの長さに切り出し、導体を取り除いて絶縁被覆材のみの管状試験片をし、テンシロン引張試験機を用い、23±5℃の室温にて、標線間隔50mm、引張速度200mm/分で試験を実施し、引張強さおよび引張伸びを測定した。このうち、絶縁被覆材の引張伸びを以下の基準で評価した。
【0056】
評価基準
○:引張伸びが150%以上
×:引張伸びが150%未満
【0057】
得られた結果を下記表1にまとめて示す。
【0058】
【表1】
【0059】
上記表1から、以下のことがわかる。
比較例1と2と比較すると、ポリエチレン樹脂に、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンを使用せず、高圧法低密度ポリエチレンを使用した比較例1では、耐テープ摩耗性に劣る。これは、高圧法低密度ポリエチレンでは、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンと異なり、分子量分布が広いため、低分子量成分が働くことで押出成形性は良好であるが、逆に樹脂の強靭さに欠けることから、耐テープ摩耗性が未達となったものと思われる。
しかしながら、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンを使用した比較例2では、耐テープ摩耗性が改善されるものの、樹脂組成物の押出性において、押出速度が、100m/min、
200m/minと高速になるに従い、押出性が悪化する。
比較例3、4と実施例2とを比較すると、この高速押出性は、ホモポリプロピレンやランダムポリプロピレンをブレンドしても改善されない。
これに対し、本発明の実施例をみると、比較例の場合と対照的に、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンとブロックポリプロピレンをブレンドした
実施例2、3では、耐テープ摩耗性と高速押出性がともに優れている。しかも、ホモポリプロピレンのように、ブレンドすることにより、引張特性を悪化させず、引張特性および低温特性にも優れ、電線として十分な特性を得られていることがわかる。
なお、ホモポリプロピレンは、ポリエチレン樹脂との相溶性が悪く、引張特性を悪化させているものと思われる。