(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記実走行データ取得装置が、実走行データをリアルタイムで前記試験管理装置に送信し、前記試験管理装置が、受信した実走行データが示す走行状態の一部又は全部を前記試験装置で再現させることを特徴とする請求項1記載の車両試験システム。
前記試験管理装置が、前記試験結果データ及び前記実走行データ、又は、異なる前記試験結果データを同期させて比較可能に出力することを特徴とする請求項1、2又は3記載の車両試験システム。
前記試験管理装置が、前記撮像データと、前記試験結果データ又は前記実走行データの少なくともいずれか一方との時間を同期させて同一画面上に表示することを特徴とする請求項5記載の車両試験システム。
路上を走行している車両の内外の走行状態に係るデータである実走行データを取得する実走行データ取得装置からデータを受け付け可能に構成された試験管理装置であって、
設定された試験条件に従って、前記実走行データが示す走行状態の一部又は全部を試験装置で再現するとともに、前記試験装置で行われた運転試験の試験結果を示すデータである試験結果データを受け付けて、該試験結果データと、前記実走行データ取得装置が前記実走行データとして取得した排ガスデータ又は電力収支とを比較可能に出力することを特徴とする試験管理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、実走行データ及び試験装置から得られる試験結果データ、又は、試験結果データ同士を容易に比較することができる車両試験システム等を提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る車両試験システムは、路上を走行している車両の内外状態に係るデータである実走行データを取得する実走行データ取得装置と、設定された試験条件に従って、車両又はその一部の運転又は動作試験を行う試験装置と、前記試験装置において、前記実走行データが示す走行状態の一部又は全部を再現させる試験管理装置とを具備し、前記試験管理装置が、前記試験装置が行った試験結果を示すデータである試験結果データを受け付けて、該試験結果データ及び前記実走行データを比較可能に出力することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、試験管理装置が試験結果データ及び実走行データ、又は、試験条件データ同士を比較可能に出力するので、これらのデータを容易に比較して、実走行が試験装置で再現できているか否かを検討したり、試験装置で試験が不具合なく行われているかを確認したりすることができる。また、データを比較することで、今までになかった新たな知見を得ることもできる。
【0010】
また、実走行データと試験結果データとを比較することで、実測値と試験値との傾向の違いを明らかにしたり、実側値と試験値との間にどの程度のずれが生じているかを容易に把握することができる。
【0011】
本発明に係る車両試験システムの具体的な一態様としては、前記実走行データ取得装置が、実走行データをリアルタイムで前記試験管理装置に送信し、前記試験管理装置が、受信した実走行データが示す走行状態の一部又は全部を前記試験装置で再現させるものを挙げることができる。
【0012】
このようなものであれば、実走行と平行して試験装置で試験を行うことができるので、実走行で起こった不具合をすぐに試験装置で再現することができ、試験装置から得られた試験結果データと実走行データとを比較して、迅速に不具合の解析を行うことができる。
【0013】
本発明に係る車両試験システムの別の具体的な一態様としては、試験管理装置が、前記試験結果データ及び前記実走行データ、又は、異なる前記試験結果データを同期させて比較可能に出力するものを挙げることができる。
【0014】
このようなものであれば、試験結果データ及び実走行データ、又は、異なる試験結果データの時間を同期させているので、より容易に両者を比較することができる。
【0015】
ところで、実走行データや試験装置で行われた試験結果を示す試験結果データにおいて明らかに異常が生じている場合や、実走行データと試験結果データとを比較して、これらの間に何らかの齟齬がある場合、その異常や齟齬等の不具合の原因が、走行時の天候、路面状態(坂道や水溜り等)、路上の障害物等の走行環境や、急発進や急ブレーキ等の運転状況等の一目で判断できるものであることも少なくない。
【0016】
そこで、本発明に係る車両試験システムでは、前記実走行データ取得装置が、走行状態を撮像した撮像データを取得するものであり、前記試験管理装置が、前記撮像データと、前記試験結果データ又は前記実走行データの少なくともいずれか一方とを同一画面上に表示することを特徴とする。
【0017】
このようなものであれば、撮像データと試験結果データ又は実走行データの少なくともいずれか一方とが同一画面上に表示されているので、撮像データによって実走行時の走行環境や運転状況等を知ることができ、試験結果データまたは実走行データに不具合が生じた場合、実走行時の走行環境や運転状況から一目で判断できる原因の不具合を容易に解明することができる。
また、走行環境や運転状況等の走行情報を得ながら、データを分析することができるので、データの分析をより容易に行うことができる。
【0018】
上述の車両試験システムの具体的な位置態様としては、前記実走行データ取得装置が、前記撮像データを撮像した場所を示す地図データをさらに取得するものであり、前記試験管理装置が、前記撮像データ又は前記地図データの少なくともいずれか一方と、前記試験結果データ又は前記実走行データの少なくともいずれか一方とを同一画面上に表示するものを挙げることができる。
【0019】
このようなものであれば、地図データと、試験結果データ又は実走行データの少なくともいずれか一方とを同一画面上に表示する場合、走行する地形や走行する地域の特性(例えば事故多発地域や渋滞発生地域)等を踏まえて試験結果データ又は実走行データを解析することができるので、より詳細にデータを解析することができる。
【0020】
また、本発明に係る車両試験システムの具体的な一態様としては、前記撮像データと、前記試験結果データ又は前記実走行データの少なくともいずれか一方との時間を同期させて同一画面上に表示するものを挙げることができる。
【0021】
このようなものであれば、撮像データと、試験結果データ又は実走行データの少なくともいずれか一方との時間を同期させるので、実走行データ及び/又は試験結果データに不具合が生じた正にその時の撮像データが同一画面上に表示される。そのため、ユーザはより容易に不具合の解明を行うことができる。
【0022】
本発明の試験管理装置は、路上を走行している車両の内外の走行状態に係るデータである実走行データを取得する実走行データ取得装置からデータを受け付け可能に構成された試験管理装置であって、設定された試験条件に従って、前記実走行データが示す走行状態の一部又は全部を前記試験装置で再現するとともに、前記試験装置で行われた運転試験の試験結果を示すデータである試験結果データを受け付けて、該試験結果データ及び前記実走行データ、又は、異なる前記試験結果データを比較可能に出力することを特徴とする。
【0023】
本発明の試験管理装置の具体的な一態様としては、前記実走行データ取得装置が、走行状態を撮像した撮像データを取得するものであり、前記撮像データと、前記試験結果データ又は前記実走行データの少なくともいずれか一方とを同一画面上に表示するものを挙げることができる。
【0024】
本発明の試験管理プログラムは、路上を走行している車両の内外の走行状態に係るデータである実走行データを受け付け可能に構成された試験管理プログラムであって、設定された試験条件に従って、前記実走行データが示す走行状態の一部又は全部を再現する試験装置で行われた運転試験の試験結果を示すデータである試験結果データを受け付けて、該試験結果データ及び前記実走行データを比較可能に出力することを特徴とする。
【0025】
本発明の試験管理プログラムの具体的な一態様としては、路上を走行している車両の内外の走行状態を撮像した撮像データをさらに受け付けて、前記撮像データと、前記試験結果データ又は前記実走行データの少なくともいずれか一方とを同一画面上に表示するものを挙げることができる。
【0026】
本発明の車両試験方法は、路上を走行している車両の内外状態に係るデータである実走行データを、実走行データ取得装置が取得して、設定された試験条件に従って、車両又はその一部の運転又は動作試験を行う試験装置において、前記実走行データが示す走行状態の一部又は全部を試験管理装置が再現し、前記試験管理装置が、前記試験装置が行った試験結果を示すデータである試験結果データを受け付けて、該試験結果データ及び前記実走行データを比較可能に出力することを特徴とする。
【0027】
本発明の車両試験方法の具体的な一態様としては、前記実走行データ取得装置が、走行状態を撮像した撮像データを取得して、前記撮像データと、前記試験結果データ又は前記実走行データの少なくともいずれか一方とを同一画面上に表示するものを挙げることができる。
【発明の効果】
【0028】
このように構成した本発明によれば、実走行データ及び試験装置から得られる試験結果データ、又は、試験結果データ同士を容易に比較することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0031】
本実施形態に係る車両試験システム1は、路上を走行する車両の内外状態に係るデータである実走行データを取得する実走行データ取得装置2と、車両及びその一部を試験するための試験ベンチ3と、試験ベンチ3での試験条件を設定したり、試験管理を行ったりする試験管理装置4とを具備し、車両の新規開発や不具合の是正等に用いられる統合的なものである。
【0033】
実走行データ取得装置2は、例えば車両に搭載されるものである。ここでいう実走行データとは、車両の内外状態を示すものであり、そのうちの車両内状態としては、以下のようなものを挙げることができる。
(1)シフトレバー、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル、ウィンカー等の操作状態。
(2)エンジン回転数、車両速度、車両加速度、ホイール回転数、トルク、エンジンオイル温度、吸気温度、排ガス量、排ガス成分、排ガス温度、触媒温度、燃費、冷却水量、冷却水温、シャフトアングル、タイヤ温度等の走行状態、電力収支、バッテリ状態。
(3)OBDI信号(すなわち、異常情報、車両情報等)、CAN信号(すなわち、車両情報、ECU情報、TCU情報等)
また、車両外状態としては以下のようなものを挙げることができる。
(4)気候(外気温、外気圧、晴雨、風速等)、路面温度、路面状態(WET、DRY、ICE、アスファルト、砂利等)、外部映像、車内映像、路面の勾配、位置、走行風等。
なお、ハイブリッド車や電気自動車における車両内状態としては、以下のようなものを挙げることができる。
(5)充電残容量(SOC)、バッテリからモータに流れる電流及び/又は電圧、バッテリ温度、モータ温度、インバータ温度、バッテリ電力、モータのトルク及び/又は回転数等。
【0034】
上述した車両内外状態を測定するため、ここでは例えば2種類の実走行データ取得装置2が設けられている。
【0035】
その1つは、路上走行中の車両から排ガスを取り入れて、その成分や量を測定したり、燃費を算出したりする車両搭載型排ガス分析装置2aである。このものは、
図1に示すように、車両のテールパイプから排ガスの一部を取り入れるホース21と、該ホース21を介して取り込んだ排ガスを分析し、排ガスに含まれるCO、CO
2、H
2O、NO
X、THC、PM等の量(または濃度)を測定する分析装置本体22とを具備したものである。
【0036】
もう1つは、車両に取り付けられた運行計測装置2bである。この運行計測装置2bには、図示しないGPS受信機、撮像機、車両情報取得機、Gセンサなどが設けられていて、GPS受信機からは車両の位置、撮像機からはフロントガラスやリアガラスから見た外部映像及びその外部映像から検知できる各種情報(例えば、晴雨、路面状態等)、車両情報取得機からは車両に付属する各種センサ等からの種々の情報(例えば、エンジン回転数、車両速度、車両加速度、ホイール回転数、トルク、エンジンオイル温度、吸気温度、外気温、外気圧、風速等)、車両からのOBD信号、パワーアナライザーからの電力収支、HCUからのバッテリ状態、Gセンサからの車両加速度などを検出できるようにしてある。その他、車両内外状態を検出する種々のセンサを設けてもよい。
【0037】
試験ベンチ3は、例えば室内に設置されるものであり、ここでは、例えば、シャシ試験装置3a、駆動系試験装置3b、エンジン試験装置3c等の複数種類の試験装置を具備している。
【0038】
シャシ試験装置3aは、完成車両を試験するためのものであり、車両が搭載されるシャシダイナモメータ32と、シャシダイナモメータ32上で車両を運転する自動運転ロボット31(自動アクチュエータ)と、車両を模擬走行させるための所定形式の試験条件データを受け付け、その試験条件データが示す試験条件にしたがって前記シャシダイナモ及び自動運転ロボット31を制御する自動運転装置33とを具備してなる。なお、この実施形態でのシャシ試験装置3aは、図示しない温調機器や気圧制御機器、車速ファンをも具備しており、前記自動運転装置33からの指令によって外気温や外気圧、車両走行時の風速等を調整できるようにしてある。
【0039】
駆動系試験装置3bは、車両の駆動系部品(例えば、クラッチ、トルクコンバータ、トランスミッション、動力伝達系など)を試験するものであり、エンジンを模擬する例えば仮想エンジンダイナモメータ34と、所定形式の試験条件データを受け付け、その試験条件データが示す試験条件にしたがって前記仮想エンジンダイナモメータ34を制御するコントローラ35とを具備してなる。そして、前記仮想エンジンダイナモメータ34に前記駆動系部品を接続することによって、これら駆動系部品に模擬的な負荷や振動等を作用させることができるようにしてある。
【0040】
エンジン試験装置3cは、エンジン36を試験するためのものであり、エンジン36に接続される部品を模擬するエンジンダイナモメータ37と、エンジン36のスロットルを駆動するスロットルアクチュエータ38と、所定形式の試験条件データを受け付け、その試験条件データが示す試験条件にしたがって前記エンジンダイナモメータ37及びスロットルアクチュエータ38を制御するEGコントローラ39とを具備してなる。なお、上述したスロットルアクチュエータ38は、例えば電子制御方式のものを用いることができる。
【0041】
さらにこの実施形態での試験ベンチ3には、排ガス分析計30(30a、30b)が設けてある。この排ガス分析計30は、排ガスに含まれるCO、CO
2、H
2O、NO
X、THC、PM等の量(または濃度)を測定できるものであり、ここでは、前記シャシダイナモメータ32に搭載された車両からの排ガス及びエンジンダイナモメータ37に接続されたエンジン36からの排ガスを測定できるようにしてある。
【0042】
前記試験管理装置4は、各試験装置3a、3b、3cに対して対応する試験条件データを送信し、試験装置3a(3b、3c)の動作の内容、時期等を管理するもので、ここでは前記排ガス分析計30の動作タイミングをも試験装置3a(3b、3c)の動作に同期させるべく管理することができるようにしてある。
【0043】
さらに、本実施形態では、この試験管理装置4が、前記実走行データ取得装置2から前記実走行データを取得し、該実走行データが示す走行状態の一部又は全部を再現/模擬するために必要な試験条件を示す試験条件データを前記実走行データから生成する試験条件データ生成装置としての機能を担うようにしてある。
【0044】
ここで、試験条件とは、例えば以下のようなものが挙げられる。
・走行パターン解析
・故障モードの再現
・自動運転システムによるドライバの再現
・シャシ試験装置3a又は駆動系試験装置3bにおける路上負荷の再現
・新車開発における先取り評価
・環境ベンチ、温調装置における車両状態の再現
・実路で測定できない状態を試験装置3a、3b、3cで測定
(例えば、車載搭載型の排ガス分析装置は、高地での測定ができないが、低温低圧ベンチで実路状態を再現することにより、排ガスデータの測定が可能となる。)
・エンジン試験装置3cにおけるCAT(触媒)温度調整
・エンジン試験装置3cにおけるLLC(冷却水)温度調整
・エンジン試験装置3cにおけるオイル温度調整
・エンジン試験装置3cにおける吸入空気温度調整
【0045】
次に、この試験管理装置4をより詳細に説明する。
【0046】
この試験管理装置4は、
図2に示すように、CPU、メモリ48、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信ポートなどからなるコンピュータ本体4aと、このコンピュータ本体に接続されたキーボード、マウスなどの入力手段及びディスプレイとからなるものである。
【0047】
そして前記メモリ48に所定のプログラムをインストールすることによって、この試験管理装置4が、実走行データ受付部41、試験条件データ生成部44、試験装置特定部42、模擬優先順位設定部43、スケジュール設定部45、試験結果データ受付部46、表示出力部47等としての機能を担う。
【0049】
実走行データ受付部41は、実走行データ取得装置2で取得された実走行データを受け付け、メモリ48の所定領域に格納するものである。また、この実施形態では、該実走行データは、路上を試験走行中の車両に搭載された実走行データ取得装置2からインターネットや専用回線を介した無線によって、専用のサーバに送られ、専用サーバから実走行データ受付部41へとリアルタイムで送られてくる。ここで、リアルタイムとは、専用サーバからデータが逐次送られてくる状態をいい、専用サーバから実走行データ受付部41へとデータが送られるタイミングに多少の遅れが生じたような状態もリアルタイムで送られている状態であると定義している。なお、場合によっては、実走行データをリアルタイムで送信するのではなく、USBやハードディスクなどの持ち運び可能な記録媒体に格納し、実走行データ受付部41で受け付けるようにしてもよい。
【0050】
試験装置特定部42は、試験に用いる1又は複数の試験装置3a、3b、3c(前記排ガス分析計も含む。)を例えばオペレータによる選択入力を受け付けることにより特定するものである。ここで、試験装置3a、3b、3cによって試験する対象が異なるので、それぞれの試験装置3a、3b、3cにおいて試験を行う場合に必要となる試験条件データが異なる。そのため、各試験装置3a、3b、3c及び排ガス分析計30は、それぞれの識別子が、対応する試験条件データの種類や形式などと紐づけてメモリ48に登録されており、試験装置3a、3b、3c(又は排ガス分析計30)の選択入力時には、その登録してある試験装置3a、3b、3c(及び排ガス分析計30)を示すシンボルが画面に表示され、所望のシンボルを選択すればよいように構成されている。なお、新しい試験装置を試験条件データの種類や形式とともに登録したり、既登録の試験装置を削除したりすることもできるようにしてある。
【0051】
模擬優先順位設定部43は、実走行データの内容のうち、いずれの内容を優先して模擬するかをオペレータの入力等によって特定するものである。例えば、シャシ試験装置3aの場合、シャシダイナモメータ32による負荷は路上での負荷を厳密に再現できるとは限らないから、実走行データの内容のうち、例えば、アクセル開度か、車速か、エンジン回転数か、あるいは、タイヤ速度か、ローラ速度か、タイヤの軸(トルク)か、いずれかを優先させて再現する必要がある。そのうちのどれを優先させるのかは、開発や不具合是正の目的によって異なるところ、いずれを優先するのかをオペレータによって決めさせる必要がある。また、試験装置や試験内容によっては、オペレータの判断は不要で、自動的に優先順位が決まる場合があるが、その場合は、この模擬優先順位設定部43が、その優先順位を自動設定する。
【0052】
試験条件データ生成部44は、実走行データが示す走行態様を模擬するために必要な試験条件データを生成するものであって、各試験装置3a、3b、3cの形式に対応した試験条件データを生成するものである。
本実施形態では、試験装置特定部42で特定された試験装置3a(3b、3c)に応じた試験条件データを生成するとともに、模擬優先順位設定部43で優先した内容に基づいて試験条件データを生成する。具体的には、試験装置特定部42において、シャシ試験装置3aが特定されると、試験条件データ生成部44は、シャシ試験装置3aに紐付けられた試験条件データの種類や形式等をメモリ48から取得する。
そして、模擬優先順位設定部43において、シャシ試験装置3aに紐付けられた試験条件データの種類のうち、例えば車速が特定されると、試験条件データ生成部44は、この内容を受け付けて車速が優先された試験条件データを生成するべく、メモリ48から必要な実走行データを取得した後、試験条件データを生成して、シャシ試験装置3aの自動運転装置33に送信する。このとき、試験条件データ生成部44は、メモリ48から取得したシャシ試験装置3aの形式に合わせて試験条件データを生成する。
【0053】
スケジュール設定部45は、試験開始から試験終了までのタイムスケジュールを設定するものであって、本実施形態では、試験装置特定部42から試験装置データを受信するとともに、試験条件データ生成部44が生成した試験条件データを受信して、試験開始から試験終了までのタイムスケジュールを設定するものである。そして、設定したスケジュールデータを試験装置特定部42で特定された試験装置3a(3b、3c)に送信する。
これは、例えばシャシ試験装置3aにおいて実走行時と同じ気温や湿度を再現したい場合、試験開始時にシャシ試験装置3aが設けられた室内の気温や湿度が所定の値となるように設定しておく必要がある。そこで、スケジュール設定部45は、再現させたい項目、例えば、室内温度や気圧などをスケジュールに組み込む。
【0054】
試験結果データ受付部46は、各試験装置3a、3b、3cから送信されてくる試験結果を示すデータである試験結果データを受け付けるものである。試験結果データとは、各試験装置3a、3b、3cにおいて得られる例えばエンジン回転数、ホイール回転数、トルク、エンジンオイル温度、吸気温度、排ガス量、排ガス成分、排ガス温度、触媒温度、燃費、冷却水温、シャフトトルク、タイヤ温度等のデータであり、これらのデータは適宜試験装置3a、3b、3cに設けたセンサ等で検出されたものである。受け付けられた試験結果データは、メモリ48の所定領域に格納される。なお、試験結果データと実走行データとの時間を同期させることもできる。
【0055】
表示出力部47は、メモリ48から所定の実走行データ又は試験結果データを取得するとともに、これをディスプレイ等に表示するものである。
【0056】
図3は表示出力部47がディスプレイに表示した画像の一例である。
図3に示すように、この画像G1上には、所定時間におけるシャシ試験装置3aの試験状態を表示する試験状態表示部L1と、時間経過とともに蓄積された情報をグラフ形式で表示するグラフ表示部L2とが設けられている。このグラフにおいて、試験状態表示部L1には、エンジンスピード、車速、トルク、ブレーキ状態やシフトレバー状態等を示す表示部等が設けられている。また、グラフ表示部L2には、車速、スロットル、ブレーキ、ギアの時間経過に伴う変化を示すグラフが表示されるとともに、排ガス分析計30から取得した時間経過に伴う排ガス(CO、CO2、NO、NOx等)の変化を示すグラフが表示されている。
なお、試験状態表示部L1とグラフ表示部L2に表示される内容としては、排ガスデータ、勾配、車速、トルク、回転数、EG状態、各種温度等が表示される。
【0057】
また、表示出力部47は、メモリ48から所定の実走行データ及び試験結果データを取得するとともに、これらのデータの時間を同期させて比較可能に出力するものでもある。
【0058】
この一例を、
図4に示す。
図4は、表示出力部47がディスプレイに表示した画像の一例である。この画像G2に示すように、画面上には、画面左側に実走行時に分析装置本体22によって分析された排ガス濃度を示す分析装置本体22dataと記載された表L3とシャシ試験装置3aにおける試験時に排ガス分析計30aによって分析された排ガス濃度を示す排ガス分析計30dataと記載された表L4が表示されている。ここで、表L3と表L4は、走行開始からの走行時間が同期されたものである。
【0059】
また、画面右側に車速を示すグラフL5とCO、CO2濃度を示すグラフL6が表示されている。グラフL5において、目標車速と記載されているのが実走行時の車速であり、模擬車速と記載されているのがシャシ試験装置3aにおける試験時の車速である。また、スロットル、トルクについてはシャシ試験装置3aで試験された試験結果が表示されている。ここで、目標車速、模擬車速、スロットル、トルクについては走行開始からの走行時間が同期されたものが表示されている。なお、グラフL6において、表示されている排ガス(CO、CO2、NO、NOx等)はシャシ試験装置3aにおける試験時に得られたものである。
【0060】
さらに、この実施形態では、メモリ48から実走行データ及び/又は試験結果データを取得するとともに、外部画像にかかる撮像データ及び/又は車両走行位置にかかる地図データを取得して、これらのデータに時間を同期させて同画面に同時に表示することもできるようにしてある。
【0061】
この一例を、
図5、
図6に示す。
図5、
図6は、表示出力部47がディスプレイに表示した画像の一例である。この画像G3やG4に示すように、画面上には実走行時の撮像データM1と、該撮像データM1を撮像した場所を示す地図データM2と、実走行時の時間、場所の緯度経度、走行速度を表示する情報表示部M4と、実走行時の速度の時間変化を示すグラフM3とが1つの画面G2上にまとめて表示されている。なお、画像G4に示すように、地図データM2には、車が走行した軌跡が表示される。また、グラフM3には走行データの他に排ガスデータが表示されることもある。ここで、グラフM3には、実走行時の実走行データ(排ガスデータ)及び/又は試験装置における試験結果データ(排ガスデータ)を個別に又は同時に表示可能である。
【0062】
なお、上記一例では、実走行時の撮像データM1として、車内又は車外に設置された撮像装置が撮像した車窓が挙げられているが、この撮像データM1としては、車内に設置された撮像装置が撮像したドライバーの状態、つまり、撮像装置を車内の天井や足元等に設置して撮像したドライバーの表情や、ステアリングの角度、ウィンカー、シフトレバー、アクセル、ブレーキ等のドライバーの操作状態等であってもよい。
【0063】
ここで、撮像データM1と、情報表示部M4に表示される実走行時の時間、場所の緯度経度、走行速度等の情報と、グラフM3とは、走行開始からの走行時間が同期されたデータが表示されている。
【0064】
上述した試験管理装置4の動作について以下説明する。
【0065】
まず、実走行データ取得部から送信された実走行データを、実走行データ受付部41が受け付けて、メモリ48の所定領域に格納する。
【0066】
次に試験管理装置4のディスプレイに表示された試験装置特定画面においてオペレータが試験する試験装置3a、3b、3cを特定する。なお、説明上、ここではシャシ試験装置3aが特定されたとする。なお、特定する試験装置は、一つだけではなく複数あってもよい。
試験装置特定部42は、この入力信号を受け付けて特定された試験装置を示す特定試験装置データを試験条件データ生成部44及びスケジュール設定部45に送信する。このとき、シャシ試験装置3aの識別子が対応する試験条件データの種類や形式に紐付けられてメモリ48に登録されているので、特定されたシャシ試験装置3aの試験条件データの種類や形式も試験条件データ生成部44及びスケジュール設定部45に送信する。
【0067】
また、試験管理装置4のディスプレイに表示された優先順位設定画面においてオペレータが優先する試験内容を選択する。
模擬優先順位設定部43は、この入力信号を受け付けて選択された優先する試験内容を示す優先データを試験条件データ生成部44に送信する。
【0068】
試験条件データ生成部44は、試験装置特定部42から送信された特定試験装置データ及び模擬優先順位設定部43から送信された優先データを受け付けて、メモリ48から所定の実走行データを取得し、この実走行データに基づいて試験条件データを生成する。
そして、試験条件データ生成部44は、生成した試験条件データを所定の形式に変換してシャシ試験装置3aへ送信する。
【0069】
また、スケジュール設定部45も、試験装置特定部42から送信された特定試験装置データ及び試験条件データ生成部44が生成した試験条件データに基づいて、その試験装置に応じたスケジュールを設定し、このスケジュール情報をシャシ試験装置3aへ送信する。
【0070】
シャシ試験装置3aは、試験条件データ生成部44が生成した試験条件データ及びスケジュール設定部45が設定したスケジュール情報に基づいて試験を行い、この試験結果を示す試験結果データを試験結果データ受付部46に送信する。
【0071】
試験結果データ受付部46は、試験結果データを受け付けてメモリ48の所定領域に格納する。
【0072】
そして、表示出力部47が試験結果データをディスプレイに表示するとともに、入力方式選択画面でオペレータが選択した入力方式に基づいて、試験結果データ及び実走行データ、又は、試験結果データ同士の時間を同期させて比較可能に出力したり、外部画像または車両走行位置にかかる撮像データと試験結果データ及び/又は実走行データの時間を同期させて同一画面上に出力したりする。
【0073】
このように構成した本実施形態によれば、以下のような格別の効果を有する。
【0074】
表示出力部47が、試験結果データ及び実走行データ、又は、試験条件データ同士を比較可能に出力するので、これらのデータを容易に比較して、実走行が試験装置3a、3b、3cで再現できているか否かを検討したり、試験装置3a、3b、3cで試験が不具合なく行われているかを確認したりすることができる。また、データを比較することで、今までになかった新たな知見を得ることもできる。加えて、実走行データと試験結果データとの間にずれが生じている場合、どの程度のずれがあるのかを容易に把握することができる。
【0075】
また、表示出力部47が、試験結果データ及び実走行データ、又は、試験結果データ同士の時間を同期させて比較可能に出力するので、より容易に両者を比較することができる。
【0076】
1つの試験管理装置4が複数種の試験装置3a、3b、3cで試験を行うための試験条件データを生成するので、試験管理装置4のみを統制するだけで、複数種の試験装置3a、3b、3cを統合的に管理・動作させることができる。そのため、新車両の開発や車両の不具合の是正等を目的とした様々な試験を円滑に実施することができる。
また、試験管理装置4が、実走行データから試験条件データを生成するので、より実際の走行状態に則した状態を再現して、試験の精度を高めることができる。
【0077】
実走行データがリアルタイムで試験管理装置4に送信されるので、試験管理装置4もほぼリアルタイムで試験条件データを生成することができ、実走行とほぼ平行して試験装置3a、3b、3cで試験を行うことができるので、実走行で起こった不具合をすぐに試験装置3a、3b、3cで再現することができ、迅速に不具合の解析を行うことができる。
【0078】
試験管理装置4が、指定された試験装置において走行状態を再現するために必要な実走行データを選択し、該選択された実走行データから試験条件データを生成する。具体的には、各試験装置及び排ガス分析計のそれぞれの識別子が、対応する試験条件データの種類や形式などと紐づけてメモリ48に登録されているので、試験装置特定部42で試験装置を特定するだけで、試験条件データ生成部44は、その特定された試験装置に紐付けられた試験条件データの種類や形式をメモリ48から取得することができる。
そのため、試験条件データ生成部44は、取得した試験条件データの種類に応じた実走行データのみをメモリ48から取得して、試験条件データを生成することができ、不必要なデータを処理する時間を短縮して試験装置毎に応じた試験条件データを円滑に生成することができる。
【0079】
また、試験管理装置4が、実走行データの内容のうち優先して模擬する実走行データを特定する模擬優先順位設定部43を具備し、模擬優先順位設定部43において特定された実走行データから試験条件データを生成するので、模擬優先順位設定部43によってユーザが所望する内容に則した試験条件データを生成することができる。そのため、例えば故障再現モードや特定の走行パターン再現モード等の様々なバリエーションの試験を行うことができ、使い勝手のよいシステムを提供することができる。
【0080】
加えて、表示出力部47が、撮像データと試験結果データ又は実走行データの少なくともいずれか一方とを同一画面上に表示しているので、撮像データによって実走行時の走行環境や運転状況等を知ることができ、試験結果データまたは実走行データに不具合が生じた場合、実走行時の走行環境や運転状況から不具合の原因を容易に解明することができる。
また、走行環境や運転状況等の走行情報を得ながら、データを分析することができるので、データの分析をより容易に行うことができる。
【0081】
撮像データと、試験結果データ又は実走行データの少なくともいずれか一方との時間を同期させて同一画面上に表示するので、実走行データ及び/又は試験結果データに不具合が生じた正にその時の撮像データが同一画面上に表示される。そのため、ユーザはより容易に走行環境が原因となる不具合を解明することができる。
また、車両試験システムは、新たに開発された車両、車体やエンジン等を改良した車両、又は車種が異なる車両を試験する際に、予め生成された試験条件データを用いることで、新たに実走行データを取得せずとも、試験の良否の確認、排ガスやエンジン等の測定、路上走行を行う前の事前確認等を容易に行うことができる。
【0082】
その他、本発明は前記各実施形態に限られない。
【0083】
例えば、上述した実施形態では、試験ベンチとして、シャシ試験装置、駆動系試験装置、エンジン試験装置が挙げられていたが、この他にブレーキダイナモ、タイヤ試験機、2軸、3軸駆動系試験装置等を用いることもできる。
【0084】
また、実走行データ取得装置が取得する実走行データは、車内外から得られる情報であれば上述したものに限られない。
【0085】
上述した表示出力部が同期するのは時間に限られず、単位やデータを取得する時間間隔、位置情報等を同期したものであってもよい。この一例としては例えば、実走行データ受付部が実走行データを受け付ける際に、時間データを割り付けるのではなく、同じく実走行データとして送信される位置情報に割り付けてメモリに格納するように構成する。
このように構成すれば、表示出力部がメモリから実走行データを取得するとともに外部画像又は車両走行位置にかかる実走行データを取得して、これらのデータの位置情報を同期させて同画面に表示することができる。
【0086】
また、表示出力部が、複数のデータを比較可能に表示したものであっても構わない。
【0087】
この一例としては、例えば、
図7に示すように、実走行において車載型の排ガス分析計で分析した排ガスデータC1(図中では、実走行データと記載している)と、シャシ試験装置において車外型の排ガス分析計で分析した排ガスデータC2(試験結果データ1と記載している)と、同じくシャシ試験装置において車外に設置する車載型の排ガス分析計で分析した排ガスデータC3(試験結果データ2と記載している)とを3つ比較可能に画面上に表示するものが挙げられる。
このように構成すれば、同じ車載型の排ガス分析計を用いて、実走行で排ガス分析を行ったときの排ガスデータとシャシ試験装置で排ガス分析を行ったときの排ガスデータC1とC2とを比較することで、実走行と試験装置との測定値の違いを明らかにすることができる。また、同じシャシ試験装置を用いて、車載型の排ガス分析装置において排ガス分析を行った場合の排ガスデータC2と、車外型の排ガス分析装置において排ガス分析を行った場合の排ガスデータC3を比較することで、車外型の排ガス分析計と車載型の排ガス分析計との測定値の違いを明らかにすることができ、多種多様な観点から分析を行うことが可能となる。
なお、
図7では表形式で表示してあるが例えばグラフ等を用いて表示したものであっても構わないし、排ガスデータのうちの2つが表示されたものであっても構わない。また、排ガスデータを比較可能にデータとして出力するものであってもよい。
【0088】
なお、撮像データを表示する場合には、実走行における例えば車速や排ガス等の実走行データと実走行時の撮像データとを表示してもよいし、試験装置における例えば車速や排ガス等の試験結果データと実走行時の撮像データとを表示してもよいし、実走行データ及び試験装置データと撮像データとを表示するように構成してもよい。
【0089】
加えて、
図8に示すように、実走行時の撮像データと実走行データとの時間を同期させた画像と、試験結果データを示す画像とを同一画面上に2つ表示するように構成しても構わない。
【0090】
また、上述した画面G2では、排ガス濃度及び車速における実走行データ及びシャシ試験装置における試験結果データを比較可能に表示するものであるが、表示内容が排ガス濃度や車速に限られたものではなく、例えばブレーキやトルクやエンジン回転数等であっても構わない。また、その表示形式もグラフや表等適宜変更することができる。さらに、試験装置はシャシ試験装置に限られない。加えて、比較表示するものが実走行データ及び試験結果データに限られず、異なる試験装置を用いて得られた試験結果データ同士であっても構わない。
なお、本発明において異なる試験装置とは、試験装置そのものが異なる場合に加えて、同じ試験装置において、排ガス分析計の種類を異ならせた場合も含むものである。
【0091】
なお、上記実施形態では撮像データ及び地図データを同一画面上に表示するものであったが、このいずれかを画像上に表示するものであってもよい。
【0092】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。