(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549943
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】送信装置、受信装置、及び送受信システム
(51)【国際特許分類】
H04L 7/04 20060101AFI20190711BHJP
H04L 7/08 20060101ALI20190711BHJP
H04N 21/238 20110101ALI20190711BHJP
H04N 21/438 20110101ALI20190711BHJP
【FI】
H04L7/04 100
H04L7/08
H04N21/238
H04N21/438
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-174858(P2015-174858)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-50817(P2017-50817A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年7月30日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、総務省、「次世代衛星放送システムのための周波数有効利用促進技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100185225
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 恭一
(72)【発明者】
【氏名】亀井 雅
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
【審査官】
川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−056058(JP,A)
【文献】
特開昭62−038629(JP,A)
【文献】
特開2000−031933(JP,A)
【文献】
特開2004−032549(JP,A)
【文献】
特開2004−207956(JP,A)
【文献】
特開2004−207957(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0195401(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0051273(US,A1)
【文献】
米国特許第5526297(US,A)
【文献】
米国特許第4641323(US,A)
【文献】
橋本明記 他,高度衛星デジタル放送の伝送路符号化方式,NHK技研R&D,2010年 1月,第119号,p.18〜35
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/04
H04L 7/08
H04N 21/238
H04N 21/438
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報用変調方式と同期用変調方式とを時間的に混在させた伝送信号を送信する送信装置において、フレーム(もしくはスロット)の先頭に同期信号であることを特定するユニークワードを設定するとともに、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式の複数のデータに前記ユニークワードを分割して重畳させて前記伝送信号を生成し、該伝送信号を送信することを特徴とする送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送信装置において、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式の全てのデータに、前記ユニークワードを繰り返し重畳させることを特徴とする送信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の送信装置において、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式のデータには、前記ユニークワードが一部に組み込まれた伝送TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration and Control)信号を重畳させることを特徴とする送信装置。
【請求項4】
情報用変調方式と同期用変調方式とを時間的に混在させた伝送信号を受信する受信装置において、前記伝送信号は、フレーム(もしくはスロット)の先頭に同期信号であることを特定するユニークワードが設定されるとともに、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式の複数のデータに前記ユニークワードが分割して重畳されており、前記フレーム(もしくはスロット)の先頭の同期信号と、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式の複数のデータの少なくとも一方から、前記ユニークワードを検出し、検出したユニークワードに基づいて基準信号を生成し、生成した前記基準信号を基に受信した前記伝送信号を復調することを特徴とする受信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の受信装置において、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式の複数のデータを、少なくとも前記ユニークワードの長さだけ蓄積する蓄積部を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の受信装置において、前記ユニークワードが重畳された前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式のデータを、位相基準バースト信号として利用することを特徴とする受信装置。
【請求項7】
情報用変調方式と同期用変調方式とを時間的に混在させた伝送信号を送受信する送受信システムにおいて、
送信装置側でフレーム(もしくはスロット)の先頭に同期信号であることを特定するユニークワードを設定するとともに、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式の複数のデータに前記ユニークワードを分割して重畳させて前記伝送信号を生成し、
受信装置側で前記フレーム(もしくはスロット)の先頭の同期信号と、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式の複数のデータの少なくとも一方から、前記ユニークワードを検出し、検出したユニークワードに基づいて基準信号を生成し、生成した前記基準信号を基に受信した前記伝送信号を復調する
ことを特徴とする送受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、受信装置、及び送受信システムに関し、特に、送信側で伝送信号に同期信号を設定し、受信側において、受信した同期信号を基に基準信号を生成し、生成した基準信号を基に受信信号を復調する送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
情報を重畳した変調波を伝送する無線通信システムでは、伝送効率(伝送容量)の向上とともに、伝送特性(耐雑音強度)の向上が求められる。
【0003】
伝送信号点として、16値、64値、256値など多数の信号点を有する変調方式は、伝送効率が高いため、情報伝送には望ましいが、高い雑音環境下においては、受信側での復調に大きな制限がある。一方、2値など信号点の少ない変調方式は、伝送効率は低いが、高い雑音環境下においても、受信側での正しい復調が可能となる。このため、現状の無線通信システムでは、情報伝送に向けた多数の信号点を有する変調方式(以降、「情報用変調方式」という。)と、復調性能の向上に向けた信号点の少ない(例えば、2値の信号点を有する)変調方式(以降、「同期用変調方式」という。)とを時間的に混在させることで、伝送効率の向上と伝送特性の向上の両立を図っている。
【0004】
この両方式の使用に際して、受信装置での復調のしやすさを向上するため、それぞれの方式を伝送するタイミングを規定している。例えば、衛星放送システムでは、情報用変調方式と同期用変調方式とを一定時間で交互に複数回伝送するフレーム(もしくはスロット)を規定している(非特許文献1,2)。
【0005】
一般的なフレーム(もしくはスロット)では、先頭において、ユニークワードの重畳を目的として、20〜30シンボルの同期用変調方式のデータが設定される。ここで、ユニークワードとは、送受信システムに用いられる伝送信号において、同期信号であることを意味する特定の文字列(コード)のことである。ユニークワードは、復調のための基準信号の生成に使用されるため、受信時に間違った特定が生じないよう、ある程度の内容を有する必要がある。例えば、非特許文献1では26シンボル分、非特許文献2では24シンボル分の同期用変調方式の信号がユニークワードに割り当てられている。このユニークワード以降のフレーム(もしくはスロット)は、100〜200シンボルの情報用変調方式と、数シンボルの同期用変調方式とが交互に繰り返されて、構成されている。
【0006】
図3は、従来の伝送信号の構成例である。
図3の伝送信号は、一つの変調スロットを示しており、先頭の24シンボルは、フレーム(もしくはスロット)のヘッダとしての同期信号(A)であり、BPSK(Binary Phase Shift Keying)や、π/2シフトBPSK等の同期用変調方式を用いて、ユニークワードが重畳される。
【0007】
次の136シンボルは、伝送主信号(B)であって、例えば、16APSK(Amplitude and Phase Shift Keying)や32APSK等の情報用変調方式を用いて、主たる伝送情報が分割して重畳される。
【0008】
さらに次の4シンボルは、例えば、位相基準バースト信号(D)であり、BPSKやπ/2シフトBPSK等の同期用変調方式を用いて、PN(Pseudorandom Noise :疑似ランダム雑音)符号が挿入される。この位相基準バースト信号(D)は、同期信号の一部として、基準信号の補正に利用される。
【0009】
この後は、136シンボルの伝送主信号(B)と4シンボルの位相基準バースト信号(D)が、例えば66回繰り返され、一つの変調スロットが構成される。更に、この変調スロットが複数(例えば、120スロット)集まって、1フレームが構成される。
【0010】
なお、
図3では、同期用変調方式の4シンボルを位相基準バースト信号として用いる例を説明したが、この同期用変調方式のシンボル部分に、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration and Control)情報に誤り訂正符号を付加した伝送TMCC信号を重畳させる伝送信号も用いられている(非特許文献2)。
【0011】
次に、この伝送信号を送受信するシステムについて説明する。
図4は、送信装置110と受信装置210を含む、従来の送受信システムを構成するブロック図の例である。
【0012】
図4の送信装置110は、誤り訂正付加部10,11と、フレーム(スロット)構成部20と、変調及び多重部30とを含む。誤り訂正付加部10は、情報(映像・音声)に対して誤り訂正符号を付加し、誤り訂正付加部11は、制御信号(TMCC)に対して誤り訂正符号を付加する。また、フレーム(スロット)構成部20は、誤り訂正付加部10,11の出力信号と、ユニークワードからなる同期信号と、PN符号からなる位相基準バースト信号とから、フレーム(スロット)を構成する。さらに、変調及び多重部30は、構成されたフレーム(スロット)を変調及び多重化して、伝送路300に対して送信する。
【0013】
受信側においては、周波数(チャネル)の選択、変調波の復調、誤り訂正の復号を実施することにより、受信信号の情報を抽出する。
図4の受信装置210は、復調及び分離部40と、同期検出部50と、絶対基準位相特定部51と、バースト検出部52と、相対位相特定部53と、基準信号生成部60と、誤り訂正復号部70,71とを含む。復調及び分離部40は、伝送路300を介して受信した伝送信号(変調信号)を復調し、各信号を種類ごとに分離する。同期検出部50と絶対基準位相特定部51により基準(絶対基準)となる位相を特定し、また、バースト検出部52と相対位相特定部53により同期の補正信号となる相対位相を特定し、これらを元に、基準信号生成部60は基準信号を生成する。生成された基準信号に基づいて伝送信号の正確な復調を行い、さらに、誤り訂正復号部70では伝送主信号の復号を行って情報を取り出し、誤り訂正復号部71では制御信号(TMCC)の復号を行う。
【0014】
このような伝送信号及び送受信システムは、例えば、BSデジタル放送等の衛星放送システムに利用されている。そして、衛星放送においては、近年、電力の有効利用、周波数資源の有効活用などの観点から、アレーアンテナを活用するシステムが研究開発されている。例えば、2006年に打ち上げられた技術試験衛星「ETS−VIII(きく8号)」および2008年に打ち上げられた超高速インターネット衛星「WINDS(きずな)」ではアレーアンテナを搭載し、実証実験が行われている。また、日本放送協会で検討している21GHz帯を使用する放送衛星では、アレーアンテナを用いて、降雨による電波減衰に応じて、適応的にアンテナ指向特性を変化させるための研究開発が行われている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】鈴木陽一,他、「B-3-8 位相基準バースト信号を導入した広帯域衛星伝送用変復調器の性能評価」、2011年電子情報通信学会総合大会、通信講演論文集1、2011年3月、p.289
【非特許文献2】ARIB STD−B44、「高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式」、社団法人電波産業会、平成21年7月29日策定、p.13-14
【非特許文献3】中澤進,他、「21GHz帯放送衛星用ビームフォーミングネットワークの設計」、映像情報メディア学会技術報告(ITE Technical Report)、Vol.37, No.34, BCT2013-68、2013年7月、p.5-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
衛星放送システムにおいて、アレーアンテナを使用して、適応的にアンテナ指向特性を変化させる際には、目的とする放射パターンに応じて各放射素子の振幅・位相を制御して変化させる。このようなシステムでは、振幅・位相を制御する際、伝送信号の振幅・位相に不連続性が生じるため、受信側では制御前と異なる振幅・位相を有する伝送信号を受信するために、復調の基準となる基準信号を、制御後の伝送信号に対応した新たな基準信号にシフトさせなければならない。したがって、基準信号が更新されるまでの間、受信装置において正常な受信ができなくなる可能性がある。
【0017】
従来技術では、フレーム(もしくはスロット)の先頭データのみに、同期用変調方式でユニークワードが重畳されるため、受信装置において、変調波の復調に必要となる基準信号の生成には、ユニークワードが重畳されているフレーム(もしくはスロット)の先頭データの受信が必要となる。例えば、既知の特定の文字列(ユニークワード)がBPSK等の2値信号で伝送される場合、受信された2値信号の位相及び振幅を元に、伝送信号点配置の基準軸を定める基準信号(基準位相)が生成できる。このユニークワードから生成された基準位相を、本明細書では、絶対基準位相、又は、絶対基準信号と呼ぶことがある。
【0018】
なお、前述のとおり、フレーム(もしくはスロット)内の先頭データ以外でも同期用変調方式によるデータが伝送されているが、一般にこのデータには特定の内容は重畳されておらず、例えばPN符号が送信される。したがって、伝送内容が特定できないためこれから基準信号を生成することはできない。しかし、2値などの少ない信号点のみである特性を活用することで、位相の相対的な基準(180度のずれを含む可能性があり、絶対的な基準とはならない)を得ることができ、基準信号(絶対基準信号)の相対的な補正が可能となる補強信号としてのみ使用されている。先頭データ以外の同期用変調方式によるデータから生成された位相の基準を、本明細書では、相対位相、あるいは、相対基準信号と呼ぶことがある。
【0019】
従来技術では、受信装置において、フレーム(もしくはスロット)の先頭データで伝送されるユニークワードを受信した後に正しい基準信号の生成が可能となるため、正しい基準信号が生成される前に受信したデータは破棄されてしまうことにより、受信信号の情報抽出に必要となる時間が長くなるという課題がある。
【0020】
基準信号を短時間に生成するためには、同期用変調方式で変調される同期信号(ユニークワード)を、フレーム(もしくはスロット)中にさらに多数追加挿入することが一つの方法であるが、同期用変調方式に使用するシンボル数の増加は、情報用変調方式に使用するシンボル数の減少となり、伝送効率が低下してしまう。
【0021】
従って、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、高い伝送効率を維持し、且つ、伝送信号の振幅・位相に不連続性が生じた場合であっても、基準信号を速やかに生成し、受信側において正常な受信ができなくなる時間を短縮化することが可能な、送信装置、受信装置、及び送受信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために本発明に係る送信装置は、情報用変調方式と同期用変調方式とを時間的に混在させた伝送信号を送信する送信装置において、フレーム(もしくはスロット)の先頭に同期信号であることを特定するユニークワードを設定するとともに、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式の複数のデータに前記ユニークワードを分割して重畳させて前記伝送信号を生成し、該伝送信号を送信することを特徴とする。
【0023】
また、前記送信装置は、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式の全てのデータに、前記ユニークワードを繰り返し重畳させることが望ましい。
【0024】
また、前記送信装置は、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式のデータには、前記ユニークワードが一部に組み込まれた伝送TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration and Control)信号を重畳させることが望ましい。
【0025】
上記課題を解決するために本発明に係る受信装置は、情報用変調方式と同期用変調方式とを時間的に混在させた伝送信号を受信する受信装置において、前記伝送信号は、フレーム(もしくはスロット)の先頭に同期信号であることを特定するユニークワードが設定されるとともに、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式の複数のデータに前記ユニークワードが分割して重畳されており、前記フレーム(もしくはスロット)の先頭の同期信号と、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式の複数のデータの少なくとも一方から、前記ユニークワードを検出し、検出したユニークワードに基づいて基準信号を生成し、生成した前記基準信号を基に受信した前記伝送信号を復調することを特徴とする。
【0026】
また、前記受信装置は、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式の複数のデータを、少なくとも前記ユニークワードの長さだけ蓄積する蓄積部を備えることが望ましい。
【0027】
また、前記受信装置は、前記ユニークワードが重畳された前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式のデータを、位相基準バースト信号として利用することが望ましい。
【0028】
上記課題を解決するために本発明に係る送受信システムは、情報用変調方式と同期用変調方式とを時間的に混在させた伝送信号を送受信する送受信システムにおいて、送信装置側でフレーム(もしくはスロット)の先頭に同期信号であることを特定するユニークワードを設定するとともに、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式の複数のデータに前記ユニークワードを分割して重畳させて前記伝送信号を生成し、受信装置側で前記フレーム(もしくはスロット)の先頭の同期信号と、前記フレーム(もしくはスロット)内の同期用変調方式の複数のデータの少なくとも一方から、前記ユニークワードを検出し、検出したユニークワードに基づいて基準信号を生成し、生成した前記基準信号を基に受信した前記伝送信号を復調することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明における送信装置、受信装置、及び送受信システムによれば、高い伝送効率(伝送容量)を維持し、且つ、伝送信号の振幅・位相に不連続性が生じた場合であっても、受信側において正常な受信ができなくなる時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】本発明の送受信システムを構成するブロック図の例である。
【
図4】従来の送受信システムを構成するブロック図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0032】
(実施の形態)
本発明では、送信装置により、フレーム(もしくはスロット)の先頭データに加えて、100〜200シンボルの情報用変調方式の伝送主信号の間に配置された同期用変調方式のデータを使用して、ユニークワードの重畳を行い、受信装置においてこれらユニークワードを利用して、基準信号(復調の基準となる位相)を速やかに生成する。
【0033】
図1に、本発明で用いる伝送信号の構成例を示す。ここでは、
図3に示した従来例の伝送信号と同様に、フレーム(もしくはスロット)の先頭に24シンボルの同期用変調方式で変調されたヘッダを配置し、以降、136シンボルの情報用変調方式で変調された伝送主信号と、4シンボルの同期用変調方式で変調された信号とを交互に66回繰り返す構成を例として説明する。
【0034】
図1の伝送信号は、一つの変調スロットを示しており、この変調スロットが例えば120個集まって1フレームが構成される。
図3の伝送信号と同様に、先頭の24シンボルは、フレーム(もしくはスロット)のヘッダとしての同期信号(A)であり、例えば、π/2シフトBPSK(Binary Phase Shift Keying)等の同期用変調方式を用いて変調され、同期信号を特定するためのユニークワードが重畳される。なお、このユニークワードは24シンボルに限定されるものではないが、誤った特定を生じないように一定程度の識別性を有するユニークワードにするためには、同期用変調方式で変調された20〜30シンボル程度の信号であることが望ましい。
【0035】
次の136シンボルは、伝送主信号(B)であって、例えば、16APSK(Amplitude and Phase Shift Keying)や32APSK等の情報用変調方式を用いて、主たる伝送情報(例えば、映像・音声データ等のストリーム)が符号化され、所定長さに分割されて重畳される。重畳される伝送情報は、例えば、符号化されたデータに誤り訂正(外符号付加)を行い、電力拡散を行った後、さらに誤り訂正(内符号付加)を行い、これをインターリーブ、及びマッピングを行うこと等により作成され、例えば、136シンボルずつ区切られて変調スロットに配置される。なお、情報用変調方式としては、上記の32APSK等に限られず、多数の伝送信号点配置を用いた任意の変調方式を利用することができる。また、伝送主信号(B)の長さも136シンボルに限られず、伝送信号の構造として、適宜設定することができる。
【0036】
次の4シンボルは、ユニークワードが重畳された同期用変調方式の信号(C)である。この信号(C)は、変調方式として、例えば、BPSKや、π/2シフトBPSK等の同期用変調方式が用いられ、従来の位相基準バースト信号としての機能も有する。本発明で使用される伝送信号は、先頭以外の同期用変調方式で変調された信号にも、ユニークワードが重畳される点が、従来(
図3)の伝送信号と異なっている。先頭の24シンボルで用いた同期信号を特定するためのユニークワードと同じワードを、例えば6分割して、1番目から6番目(#1〜#6)の同期用変調方式の信号(C)(4シンボルごとにブロック化された信号)に重畳させる。4シンボル×6の24シンボルで、同期信号(A)と同一のユニークワードが構成される。なお、同期用変調方式の信号(C)は、2値信号であることを利用して、相対位相の検出にも必要に応じて利用することができ、ユニークワードが重畳された位相基準バースト信号(C)ということができる。
【0037】
フレームヘッドの同期信号(A)の後は、136シンボルの伝送主信号(B)と4シンボルのユニークワードが重畳された位相基準バースト信号(C)が、例えば66回繰り返され、一つの変調スロットが構成されるが、
図1の伝送信号の例では、#1〜#66の同期用変調方式の信号(C)の中で、最大11回のユニークワードを伝送することができる。
【0038】
なお、同期用変調方式の位相基準バースト信号(C)にユニークワードを重畳させる回数は適宜設定可能であるが、ユニークワードによる同期の検出をより早く行うためには、同期用変調方式の信号(C)の全てにユニークワードを重畳させることが、最も効率的である。また、同期用変調方式のデータの長さは、4シンボルに限定されず、伝送信号の構造として、適宜設定することができる。例えば、伝送主信号(B)の間に同期用変調方式のデータが6シンボルずつのブロックで挿入されてなる伝送信号の構造では、24シンボルのユニークデータを6シンボルの4個のブロックで伝送することができる。
【0039】
このように、本発明では、20〜30シンボル分の容量を有するユニークワードを、数シンボルの同期用変調方式の信号部分(従来、情報を載せていない位相基準バースト信号部分)に、複数に分割して重畳して伝送する。これにより、情報用変調方式に対する同期用変調方式の割合を増やすことなく(すなわち、伝送効率を低下することなく)、ユニークワードを重畳した同期用変調方式のデータを短時間で繰り返し伝送することが可能となる。受信装置において、この繰り返し伝送されるユニークワードを受信することで、速やかにユニークワードを特定することができ、絶対基準信号の生成に要する時間を短縮することが可能となる。
【0040】
なお、この場合においても、同期用変調方式の信号部分(C)は、従来技術と同様、2値などの少ない信号点のみを活用することで、基準信号の相対的な補正(絶対基準信号の位相と2値信号から得られた位相の相対的な差を収束させる補正)が可能となる補強信号として使用することが可能であるため、従来技術と同等の伝送特性(耐雑音強度)が確保される。
【0041】
次に、伝送信号を送受信するシステムについて説明する。
図2は、本発明の送信装置100と受信装置200を含む、送受信システムを構成するブロック図の例である。
【0042】
図2の送信装置100は、誤り訂正付加部10,11と、フレーム(スロット)構成部20と、変調及び多重部30とを含む。本発明の送信装置100が、従来の送信装置110と異なる点は、位相基準バースト信号として、同期信号と同一のユニークワードが入力される点である。
【0043】
誤り訂正付加部10は、情報(映像・音声データ等)に対して誤り訂正符号を付加し、誤り訂正付加部11は、制御信号(TMCC:Transmission and Multiplexing Configuration and Control)に対して誤り訂正符号を付加する。なお、電力拡散やビットインターリーブ等の信号処理も必要に応じて行って良い。
【0044】
フレーム(スロット)構成部20は、誤り訂正付加部10,11の出力信号と、ユニークワードからなる同期信号と、ユニークワードからなる位相基準バースト信号とから、例えば、
図1に示す変調スロット(フレーム)を構成する。すなわち、フレーム(スロット)構成部20は、ユニークワードを所定の方法で符号化しマッピングして、先頭の24シンボルの同期信号(A)にユニークワードを重畳させるとともに、ユニークワードを、例えば4シンボルずつ6分割して、伝送主信号(B)の間の4シンボルの同期用変調方式で変調された信号(C)の1番目から6番目(#1〜#6)に重畳させる。同様に、他の位相基準バースト信号部分についても、4シンボルの信号(C)の6個を単位(#7〜#12、#13〜#18、・・・#61〜#66)として、計11回のユニークワードを重畳させる。伝送主信号(B)については、従来と同様にフレーム(もしくはスロット)内に配置して良い。
【0045】
さらに、変調及び多重部30は、構成されたフレームを変調及び多重化して、伝送路300に対して送信する。
【0046】
このようにして、
図1の構成を備えた伝送信号が送信装置100によって構成され、伝送路300に送信される。
【0047】
図2の受信装置200は、復調及び分離部40と、同期検出部50と、絶対基準位相特定部51と、バースト検出部52と、相対位相特定部53と、基準信号生成部60と、誤り訂正復号部70,71と、蓄積部80とを含む。本発明の受信装置200が、従来の受信装置210と異なる点は、蓄積部80を備え、位相基準バースト信号を蓄積して、ユニークワードを検出する点である。
【0048】
復調及び分離部40は、伝送路300を介して受信した変調信号を復調し、フレーム(スロット)ヘッダとしての同期信号、位相基準バースト信号、映像・音声等の情報、制御信号等を種類ごとに分離し、各信号の処理部に出力する。
【0049】
同期検出部50は、差動検波等の検出手段により、受信信号から同期信号(ユニークワード)を検出する。本受信装置200では、復調及び分離部40で分離されたフレーム(スロット)ヘッダのデータからだけではなく、後述の蓄積部80で蓄積された位相基準バースト信号のデータからも、ユニークワードを検出する。
【0050】
絶対基準位相特定部51は、同期検出部50で得られたユニークワードの検出時の位相状態を元に、絶対基準位相を特定し、基準信号生成部60に出力する。
【0051】
バースト検出部52は、受信した位相基準バースト信号について、差動検波等の検出手段によりバースト信号の位相状態を検出し、相対位相検出部53と蓄積部80に出力する。
【0052】
相対位相特定部53は、バースト信号検出時の位相状態に基づいて、相対位相(180度の未確定性を含む基準位相)を特定して絶対基準信号を補正するための補強信号を生成し、基準位相生成部60に出力する。
【0053】
蓄積部80は、バースト検出部52で検出された位相基準バースト信号を、ユニークワードの長さになるまで蓄積し、その後、同期検出部50に出力する。例えば、
図1の伝送信号であれば、4シンボルの位相基準バースト信号(C)を蓄積し、信号(C)の6個分(4シンボル×6=24シンボル)を蓄積する毎に、同期検出部50に出力する。
【0054】
基準信号生成部60は、絶対基準特定部51で特定された絶対基準位相を元に、さらに、相対位相特定部53からの補助的な相対位相に基づいて、復調の基準となる、すなわち、伝送信号点配置の基準軸を定める基準信号を生成する。
【0055】
この後、復調及び分離部40は、得られた基準信号に基づいて伝送信号の正確な復調を行う。また、誤り訂正復号部71では正確に復調された信号から制御信号の復号を行い、受信装置は得られた制御信号に基づいて、さらに受信方式の調整を行う。そして、正しく調整された復調及び分離部40からの信号に基づいて、誤り訂正復号部70で情報(映像・音楽等)の復号を行う。このようにして、受信信号から情報を抽出する。
【0056】
上記実施の態様では、同期用変調方式の4シンボルの位相基準バースト信号にユニークワードを重畳する例を説明したが、前述のとおり、情報用変調信号の変調データに挟まれた同期用変調方式の信号部分に、伝送TMCC信号を重畳させる伝送信号(非特許文献2)についても、本発明は適用できる。
【0057】
このような伝送信号については、伝送TMCC信号の生成過程において、その一部にユニークワードを組み込み、送信装置においては、同期用変調方式の信号部分に、ユニークワードの組み込まれた伝送TMCC信号を重畳させることができる。受信装置においては、同期用変調方式で送信された伝送TMCC信号を受信し、伝送TMCC信号から組み込まれたユニークワードを抽出して、抽出されたユニークワードに基づいて、絶対基準信号を生成することができる。
【0058】
また、単純に、同期用変調方式の信号部分の一部に伝送TMCC信号を載せ、他の部分にユニークワードを重畳させても良い。
【0059】
図1に示す伝送信号に基づいて、本発明の効果を説明する。
【0060】
本発明では、例えば、スロット先頭の24シンボルの同期用変調方式データを使用してひとつのユニークワードを伝送するとともに、4シンボルの同期用変調方式データを6個分使用してひとつのユニークワードを伝送する。
図1の伝送信号の例では、スロットには4シンボルの同期用変調方式が66個分伝送されるため、先頭以外の同期用変調方式データを利用して、ユニークワードを11回伝送することが可能となる。したがって、従来は、スロット毎に、先頭でのみ、1回のユニークワードが伝送されるが、本発明では、スロット毎に、先頭で1回、それ以降で11回、合計12回のユニークワードの伝送が可能となる。
【0061】
受信装置では、同期用変調方式で受信した信号から抽出した情報を基に24シンボルのデータを生成し、ユニークワードとの比較を行い、ユニークワードと合致するという条件を満足した場合にのみ、基準信号を更新する。本発明の伝送信号によれば、次のスロットの先頭を待つことなく、変調スロットの途中のデータによりユニークワードを検出でき、これにより、受信装置において、絶対基準信号の生成に要する時間を短縮することが可能となる。
【0062】
また、ユニークワードとの合致を条件とする際、誤検出を防止するため、前方・後方保護として、ユニークワードを連続して複数回検出することを条件とすることが一般に採用されているが、この場合であっても優れた効果を奏する。例えば、ユニークワードの4回連続検出を条件とする場合、従来手法では4スロット分((24+(136+4)×66)×4)の37,056シンボル分が必要となるが、本発明では、先頭から4回目のユニークワードを検出するまでの(24+((136+4)×6×3))の2,544シンボル分となり、検出時間を大幅に減少することが可能となる。
【0063】
このように、本発明は、同期信号の伝送に際し、伝送信号を構成するフレーム(もしくはスロット)の先頭で伝送する同期信号に加えて、フレーム(もしくはスロット)内で情報伝送に使用する主信号の間で伝送する同期信号においても、絶対基準位相の特定が可能となるユニークワードを伝送することにより、伝送システムで使用される機器の制御や切り替えなどで生じる瞬時的な信号位相の不連続性により、受信装置で発生するバーストエラーの短縮化を可能とする。
【0064】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の装置は、衛星放送システムのみならず、情報用変調方式と同期用変調方式とを時間的に混在させた伝送信号を送信する送受信システムに広く用いられる。特に、送信信号の位相が変化して、同期を再確立する頻度の高いシステムにおいて有用である。
【符号の説明】
【0066】
10,11 誤り訂正付加部
20 フレーム(スロット)構成部
30 変調及び多重部
40 復調及び分離部
50 同期検出部
51 絶対基準位相特定部
52 バースト検出部
53 相対位相特定部
60 基準信号生成部
70,71 誤り訂正復号部
80 蓄積部
100,110 送信装置
200,210 受信装置
300 伝送路