(54)【発明の名称】トラフ本体のトラフ支持杭への固定方法、トラフ線路の敷設方法、トラフ本体とトラフ支持杭との固定構造、トラフ支持杭のトラフ支持部とトラフ本体の横リブを固定するトラフ本体の固定金具
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トラフ本体を前記トラフ支持部に固定した後、前記トラフ本体の開口部にトラフ蓋を載置して、前記トラフ蓋の上面に設けられた溝に、略コの字型をした金属バンドを取り付け、前記金属バンドを、前記トラフ本体の前記側板の上部外方に設けられたリブに固定し、前記トラフ蓋を前記トラフ本体に固定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトラフ本体のトラフ支持杭への固定方法。
前記支柱の先端部近傍と、前記トラフ支持部の前記側壁部とが溶接により固定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のトラフ本体のトラフ支持杭への固定方法。
前記支柱は、頭部に抜け止め部を有し、前記抜け止め部で前記トラフ支持部を固定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のトラフ本体のトラフ支持杭への固定方法。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道等の軌道に沿って、内部に電力ケーブルや信号ケーブル等が配置されるトラフが設置される場合がある。例えば、地面にトラフ支持部材を立設し、トラフ支持部材上にトラフ受け具を固定することでトラフ橋を形成し、このトラフ橋にトラフを設置することができる。
【0003】
このようなトラフ橋を構築する方法としては、例えば、一対の支持杭と、一対のリング状支持杭嵌め込み輪を有する保持杆と、ケーブルトラフ固定具とを用いた方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1では、まず、一対の支持杭を、支持杭間の間隔を定めてケーブルトラフ橋施工箇所に打ち込む。次に、打ち込んだ支持杭の上端側から、両端に一対のリング状支持杭嵌め込み輪を有する保持杆を、支持杭嵌め込み輪を支持杭に挿通させて、支持杭間に取り付ける。さらに、保持杆上にケーブルトラフ橋の幅方向に伸縮調整可能とされたケーブルトラフ固定具を取り付ける。以上によりトラフ橋が構築される。
【0005】
また、受台の両側部をトラフ橋から突出させないように設置することが可能で、作業性に優れた幅可変トラフ橋が提案されている(特許文献2)。
【0006】
特許文献2では、地面に立設される支柱上に取り付けられた複数の平板状の受台と、受台上へ取り付けられてトラフを支持する断面アングル状の支持枠とが用いられる。各支持枠は、当該支持枠の幅方向への動きを規制した状態で当該支持枠の水平部を挟み、かつ当該水平部よりも受台の中央方向へ延出して重なる一対の挟み板により保持される。一対の挟み板は、当該挟み板と受台のボルト孔へ挿通されたボルトとナットにより受台へ固定される。挟み板と受台の一方のボルト孔は幅方向に沿った長孔である。
【0007】
図15は、例えばこのようなトラフ橋を用いた、従来のトラフ線路100の一例を示す図である。トラフ線路100は、主に、支柱部材105と、トラフ受け具107と、トラフ103等から構成される。地面101には、支柱部材105が設置される。なお、支柱部材105の地面101に埋設される部位には、必要に応じて根枷が接合される。
【0008】
支柱部材105の上端は地面101より突出する。支柱部材105の上部には、トラフ受け具107が固定される。支柱部材105は、鉄道等の軌道に沿って、所定の間隔で配置され、トラフ受け具107は、軌道に沿って連続するように配置される。トラフ受け具107は、例えばレール状の部材であり、上部にトラフ103が設置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の方法では、まず、支柱部材105とトラフ受け具107とを別体で構成し、所定間隔で支柱部材105を設置する。次に、支柱部材105の上部に、トラフ受け具107を相互に接続しながら設置してトラフ橋を構築する。さらに、このトラフ橋上にトラフ103を相互に順次接続しながら載置して、さらにトラフ受け具107にトラフ103を固定する。以上により、トラフ線路100が構築される。
【0011】
しかし、従来の方法では、トラフ橋を構築するためには、トラフ受け具をトラフ設置範囲の全長にわたって配置する必要がある。このため、使用部材が大きくなり、運搬や設置の作業性が悪い。また、トラフをトラフ受け具に固定するための固定金具の取り付け性については、これまで多くは検討されていなかった。
【0012】
また、列車の線路のバラスト上などに簡易に固定して支持固定する場合には、手間と経費がかかる問題がある。例えば、バラスト上にトラフ線路の敷設する敷設方法としては、バラストを掘り起こして、トラフが安定するように、所定深さ分(トラフ蓋の固定金具の取り付け、取り外しが可能な深さ)だけトラフをバラストに埋めて敷設する方法がある。
【0013】
しかし、この方法であると、トラフの敷設に際して、トラフ底部のみでなく、トラフ側面にもバラストが必要となる。このため、バラストの必要量が増加すると同時に、バラストの掘り起し、転圧またはバラスト表面を平坦にする作業、バラストの埋戻し作業が必要になり、工事に時間とコストがかかる。
【0014】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、設置作業が容易であり、部材コストや敷設に要する時間を少なくすることが可能な
トラフ本体のトラフ支持杭への固定方法、トラフ線路の敷設方法
、トラフ本体とトラフ支持杭
との固定構造、及びトラフ支持杭のトラフ支持部とトラフ本体の横リブを固定するトラフ本体の固定金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達するために第1の発明は、支柱と、底部と前記底部の両側に設けられる側壁部とからなるトラフ支持部と、から構成されるトラフ支持杭と、底板と前記底板の両側に形成された1対の側板からなり、上部に開口部を有するトラフ本体と、を用い、前記トラフ本体は、胴体部と、前記胴体部の先後端に相互に嵌合されて連結可能な雄型嵌合部と雌型嵌合部とを有し、前記胴体部には、前記底板の両側に前記側板より外方に張り出した横リブが、前記胴体部の長手方向に渡って形成され、前記トラフ支持部の裏面が地表面に接触するか、あるいは略接触するまで前記支柱を打ち込んで前記トラフ支持杭を打設し、前記トラフ支持部に前記胴体部を載置し、前記トラフ支持部と前記トラフ本体の前記横リブとを固定金具で固定することで、前記トラフ本体を前記トラフ支持杭に固定す
るトラフ本体のトラフ支持杭への固定方法
であって、前記固定金具は、挿入部を挟んで所定距離離間して相互に対向するように折り曲げられた略L字状のばね性を有する板状部材であり、前記板状部材の先端がそれぞれ押圧部および固定部を形成するものであり、さらに前記トラフ支持部の上部から、前記固定金具の前記挿入部へ前記トラフ支持部の前記側壁部を挿入して、前記押圧部の先端で、前記横リブを上方から押圧するとともに、前記固定部の先端で前記トラフ支持部に前記固定金具を固定することを特徴とするトラフ本体のトラフ支持杭への固定方法である。
【0016】
また、第1の発明は、支柱と、底部と前記底部の両側に設けられる側壁部とからなるトラフ支持部と、から構成されるトラフ支持杭と、底板と前記底板の両側に形成された1対の側板からなり、上部に開口部を有するトラフ本体と、を用い、前記トラフ本体は、胴体部と、前記胴体部の先後端に相互に嵌合されて連結可能な雄型嵌合部と雌型嵌合部とを有し、前記胴体部には、前記底板の両側に前記側板より外方に張り出した横リブが、前記胴体部の長手方向に渡って形成され、前記トラフ支持部の裏面が地表面に接触するか、あるいは略接触するまで前記支柱を打ち込んで第1の前記トラフ支持杭を打設し、前記トラフ支持部に第1の前記トラフ本体の前記胴体部を載置し、前記トラフ支持部と第1の前記トラフ本体の前記横リブとを固定金具で固定することで、第1の前記トラフ本体を第1の前記トラフ支持杭に固定し、第2の前記トラフ支持杭を第1の前記トラフ支持杭から所定距離離間して打設し、第2の前記トラフ支持杭の前記トラフ支持部に第2の前記トラフ本体の前記胴体部を載置し、第1の前記トラフ本体と第2の前記トラフ本体のそれぞれの前記雄型嵌合部と前記雌型嵌合部のいずれかを相互に連結し、前記トラフ支持部と第2の前記トラフ本体の前記横リブとを前記固定金具で固定し、第2の前記トラフ本体を第2の前記トラフ支持杭に固定することで、複数の前記トラフ本体を連結して、相互に所定距離離間して配置される複数の前記トラフ支持杭へ固定す
るトラフ本体のトラフ支持杭への固定方法
であって、前記固定金具は、挿入部を挟んで所定距離離間して相互に対向するように折り曲げられた略L字状のばね性を有する板状部材であり、前記板状部材の先端がそれぞれ押圧部および固定部を形成するものであり、さらに前記トラフ支持部の上部から、前記固定金具の前記挿入部へ前記トラフ支持部の前記側壁部を挿入して、前記押圧部の先端で、前記横リブを上方から押圧するとともに、前記固定部の先端で前記トラフ支持部に前記固定金具を固定することを特徴とするトラフ本体のトラフ支持杭への固定方法であってもよい。
【0019】
前記トラフ本体を前記トラフ支持部に固定した後、前記トラフ本体の開口部にトラフ蓋を載置して、前記トラフ蓋の上面に設けられた溝に、略コの字型をした金属バンドを取り付け、前記金属バンドを、前記トラフ本体の前記側板の上部外方に設けられたリブに固定し、前記トラフ蓋を前記トラフ本体に固定してもよい。
【0020】
前記支柱の先端部近傍と、前記トラフ支持部の前記側壁部とが溶接により固定されてもよい。また、前記支柱は、頭部に抜け止め部を有し、前記抜け止め部で前記トラフ支持部を固定してもよい。
【0021】
第1の発明によれば、トラフ支持部と支柱とからなるトラフ支持杭を用い、トラフ本体が固定金具でトラフ支持杭に固定される。この際、トラフ支持杭のトラフ支持部同士を連結して、トラフ本体の設置範囲の全長にわたって配置する必要がない。
【0022】
また、トラフ支持杭を設置する際、トラフ支持部の底面が地面に接するまで支柱を地面に打ち込めばよい。このため、トラフ本体を例えば直接地面に設置したり、バラスト上に設置するなどの任意の場所に設置して固定することができる。この際、バラストを掘り起こすなどの作業が不要である。このため、作業が容易である。
【0023】
また、トラフ本体同士を雄型嵌合部と雌型嵌合部とによって嵌合して連結し、それぞれをトラフ支持杭で支持すれば、互いに連結したトラフ本体を支持することができる。
【0024】
また、支柱の先端部近傍に、トラフ支持部の側壁部が溶接により固定されれば、支柱を打ちこむと同時に、トラフ支持部を設置することができる。また、支柱とトラフ支持部が一体で構成されるため、部品点数を少なくすることができる。
【0025】
また、支柱とトラフ支持部を別体として、頭部に抜け止め部を有する支柱で、トラフ支持部を地面に固定することで、トラフ支持部の固定が容易である。また、大型のトラフ用のトラフ支持杭であっても、支柱とトラフ支持部とが別体であるため、一体の場合と比較して、個々の部材の重量を減らすことができる。このため、運搬や取扱いが容易である。
【0026】
また、トラフ本体の開口部にトラフ蓋を載置して、トラフ蓋とトラフ本体とを略コの字型をした金属バンドで固定することで、確実にトラフ蓋をトラフ本体に固定することができる。
【0027】
また、固定金具が、ばね性を有する板状部材からなり、固定金具の挿入部へ側壁部を挿入して、固定金具の押圧部でトラフ本体の横リブを上方から押圧するとともに、固定金具の固定部でトラフ支持部に固定金具を固定することで、トラフのトラフ支持部への固定が容易である。
【0028】
第2の発明は、第1の発明にかかるトラフ本体のトラフ支持杭への固定方法を用い、複数の前記トラフ本体の連結と、複数の前記トラフ支持杭へのそれぞれの前記トラフ本体の固定とを複数回繰り返して行うことを特徴とするトラフ線路の敷設方法である。
【0029】
第2の発明によれば、トラフ橋を形成せずに容易に低コストでトラフ線路を形成することができ、コスト低減だけでなく,工期の短縮を計ることができる。
【0030】
第3の発明は、支柱と、底部と前記底部の両側に設けられる側壁部とからなるトラフ支持部と、から構成されるトラフ支持杭と、底板と前記底板の両側に形成された1対の側板からなり、上部に開口部を有するトラフ本体と、前記トラフ支持杭と前記トラフ本体とを固定する固定金具と、を具備し、前記トラフ本体は、胴体部と、前記胴体部の先後端に設けられ、相互に嵌合されて連結可能な雄型嵌合部と雌型嵌合部とを有し、前記胴体部には、前記底板の両側に前記側板より外方に張り出した横リブが、前記胴体部の長手方向に渡って形成され、前記固定金具は、ばね性を有する板状部材からなり、挿入部を挟んで相互に対向し、
L字状に折り曲げられた先端
が押圧部および固定部を具備し、前記固定金具は、挿入部を挟んで所定距離離間して相互に対向するように折り曲げられた略L字状のばね性を有する板状部材であり、前記板状部材の先端が前記板状部材のそれぞれ押圧部および固定部を形成するものであり、前記トラフ支持杭が打設され、前記トラフ支持部の裏面が地表面に接触し、前記トラフ支持部に前記胴体部が載置され、さらに前記トラフ支持部の上部から、前記固定金具が前記トラフ支持部の側壁部に挿入され、前記押圧部の先端で、前記横リブが上方から押圧されるとともに、前記固定部の先端で前記トラフ支持部に前記固定金具が固定され、前記トラフ本体が前記トラフ支持杭に固定されることを特徴とするトラフ本体とトラフ支持杭との固定構造である。前記支柱の先端部近傍と、前記トラフ支持部の前記側壁部とが溶接により固定されてもよい。また、前記支柱は、頭部に抜け止め部を有し、前記抜け止め部で前記トラフ支持部を固定してもよい。
第4の発明は、
トラフ支持杭のトラフ支持部とトラフ本体の横リブ
の両者を
挟み込んで、前記横リブを押圧部と固定部の間に固定する
ことで、トラフ本体を支持杭に固定することが可能な固定金具であって、挿入部を挟んで所定距離離間して相互に対向するように略平行に折り曲げられたな略L字状なばね性を有する板状部材であり、折り曲げられた前記板状部材のそれぞれの先端が押圧部および固定部を形成するものであり、前記押圧部の先端位置は、前記固定部の先端位置よりも上方に位置することを特徴とする
トラフ支持杭のトラフ支持部とトラフ本体の横リブを固定するトラフ本体の固定金具である。
【0031】
第3または第4の発明によれば、簡易な構造でトラフ本体を地面上に設置して、トラフ本体とトラフ支持杭とを固定することができる。このため、コスト低減と工期の短縮を実現できる。また、
トラフ支持杭のトラフ支持部とトラフ本体の横リブの両者を
挟み込んで、前記横リブを押圧部と固定部の間に固定する固定金具を用いれば、トラフ本体の、トラフ支持杭のトラフ支持部への固定が容易である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、設置作業が容易であり、部材コストや敷設に要する時間を少なくすることが可能な
トラフ本体のトラフ支持杭への固定方法、トラフ線路の敷設方法
、トラフ本体とトラフ支持杭
との固定構造、及び
トラフ支持杭のトラフ支持部とトラフ本体の横リブを固定するトラフ本体の固定金具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、トラフ本体とトラフ支持部材の固定構造10を示す斜視図である。トラフ本体とトラフ支持部材の固定構造10は、主に、トラフ支持杭1、トラフ本体13、トラフ蓋29、固定金具35等から構成される。トラフ本体とトラフ支持部材の固定構造10は、地面47に固定されたトラフ支持杭1上に、トラフ本体13が配置され、固定金具35によって、トラフ本体13がトラフ支持杭1に固定される。
【0035】
図2は、トラフ支持杭1を示す斜視図である。トラフ支持部材であるトラフ支持杭1は、支柱3と、トラフ支持部5から構成される。トラフ支持部5は、底部7と、底部7の両側に設けられる側壁部9とからなる。図示した例では、トラフ支持部5は、一対のL型アングル部材を対向させて配置して、L型アングル部材を互いに連結部材で連結したものである。
【0036】
支柱3の先端部近傍は、トラフ支持部5の側壁部9の外面と、溶接部11により固定される。なお、支柱3の上端部は、側壁部9の上縁部よりの上方に突出する。支柱3は、例えばL字状の断面形状の部材である。
【0037】
なお、支柱3の断面形状は任意の形状でよいが、筒状の閉断面形状ではないことが望ましい。支柱3が筒形状であると、支柱3を地面に打ち込む際に、支柱3の内部に石や土が詰まり、抵抗が大きくなるため、打ちこむことが困難になるためである。なお、支柱3をより打ちこみやすくするため、支柱3の下端部は、鋭角に形成されている。
【0038】
トラフ支持部5上には、トラフ本体13が設置される。
図3は、トラフ本体13およびトラフ蓋29の斜視図である。トラフ本体13およびトラフ蓋29は、例えば樹脂製であり、プレス成型や射出成型によって成型される。トラフ本体13は、底板15と、底板15の両側に形成された1対の側板17からなり、上部に開口部19を有する。
【0039】
トラフ本体13の長手方向の両端には、それぞれ雄型嵌合部21、雌型嵌合部23が設けられる。雌型嵌合部23は、トラフ本体13の内面側に凹溝を有し、雄型嵌合部21は、トラフ本体13の外面側に、凹溝に対応した突起を有する。このため、一のトラフ本体13の雄型嵌合部21と、隣り合う他のトラフ本体13の雌型嵌合部23とを互いに嵌合させることで、トラフ本体13同士を連結することができる。
【0040】
ここで、雄型嵌合部21と雌型嵌合部23の間を、胴体部25とする。すなわち、トラフ本体13は、胴体部25と、胴体部25の先後端に設けられ、相互に嵌合されて連結可能な雄型嵌合部21と雌型嵌合部23とを有する。胴体部25には、底板15の両側に側板17より外方に張り出した横リブ27が設けられる。横リブ27は、胴体部25の長手方向に渡って形成される。
【0041】
トラフ蓋29は、トラフ本体13の上部の開口部19を塞ぐものである。トラフ蓋29の上面には、幅方向に溝31が設けられる。また、トラフ本体13の、溝31に対応する部位には、リブ33が設けられる。
【0042】
図4は、トラフ本体とトラフ支持部材の固定構造10の金属バンド45近傍の断面図である。溝31には、金属バンド45が配置される。トラフ蓋29は金属バンド45によってトラフ本体13に固定される。
【0043】
金属バンド45は、ばね性を有する金属製の帯状部の部材からなる。金属バンド45は、板状の金属板を屈曲して形成され、略コの字型の形状である。金属バンド45のそれぞれの両端部の先端は折曲げられて係止部となる。
【0044】
トラフ本体13をトラフ支持部5に固定した後、トラフ本体13の開口部19にトラフ蓋29を載置して、金属バンド45によって固定することができる。金属バンド45は、トラフ蓋29の溝31に取り付けられ、金属バンド45の両先端部の係止部が、トラフ本体13の側板17の上部外方に設けられたリブ33に固定される。以上により、トラフ蓋29をトラフ本体13に固定することができる。
【0045】
なお、トラフ支持部5の側壁部9の高さは、トラフ本体13の底面からリブ33まで高さよりも低い。このため、金属バンド45の固定の際に、金属バンド45とトラフ支持部5の側壁部9とが干渉することがない。
【0046】
トラフ本体13は、トラフ支持部5に対して、固定金具35によって固定される。
図5は、固定金具35の斜視図である。固定金具35は、ばね性を有する板状部材からなり、板状部材が折り返されて構成される。固定金具35の折り返されたそれぞれのそれぞれ先端部は、押圧部39および固定部41が形成され、押圧部39および固定部41が挿入部37を挟んで相互に対向する。すなわち、固定金具35は、挿入部37を挟んで所定距離
離間して相互に対向するように折り曲げられた略L字状のばね性を有する板状部材であり、板状部材の先端がそれぞれ押圧部39および固定部41を形成するものである。押圧部39側は、固定部41側よりも短く、押圧部39の先端位置は、固定部41の先端位置よりも上方(板状部材の折り返し部側)に位置する。
【0047】
なお、トラフ支持部5の側壁部9の高さは、トラフ本体13の底面から横リブ27までの高さよりも高く、固定金具35の高さは、側壁部9の高さに整合するように形成される。このため、トラフ本体13のトラフ支持部5への固定金具35による固定の際に、トラフ支持部5の側壁部9により、固定金具35を安定して支持することができる。
【0048】
押圧部39と固定部41のそれぞれの先端部は、同一方向に向けて屈曲する。すなわち、固定部41は、挿入部37側に向けて屈曲し、押圧部39の先端は、挿入部37
を挟んで固定部41の先端と相互に対向するように固定部41の反対側に配置される。また、固定部41側の板状部材の一部には孔43が設けられる。孔43は、固定金具35を取り外す際に使用され、ドライバ等の先端が挿入可能である。
【0049】
図6(a)は、トラフ本体とトラフ支持部材の固定構造10の固定金具35近傍の断面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のA部拡大図である。なお、以下の説明において、トラフ本体13の内部のケーブル等については、図示を省略する。
【0050】
トラフ本体13をトラフ支持部5に配置した状態で、トラフ支持部5の上部から、トラフ支持部5の側壁部9を固定金具35の挿入部37(
図5参照)へ挿入する。この状態で、固定金具35を押し込むことで、押圧部39の先端で、トラフ本体13の横リブ27を上方から押圧するとともに、固定部41の先端がトラフ支持部5の底部7側に係止されて、固定金具35によって、トラフ本体13をトラフ支持部5へ固定することができる。
【0051】
また、固定金具35は、ばね性を有することから、押圧部39および固定部41により、トラフ支持部5とトラフ本体13を強く挟み込む。このため、トラフ本体13のトラフ支持部5への固定の際に、トラフ支持部5の側壁部9に、トラフ本体13を強固に固定することができる。
【0052】
次に、トラフ本体13のトラフ支持杭1への固定方法(工程)について説明する。まず、
図7(a)に示すように、トラフ支持杭1を地面47に設置する。この際、トラフ支持部5の裏面が地表面に接触するまで支柱3の頭部を打ち込んで、トラフ支持杭1を打設する(図中矢印B)。この際、支柱3の頭部がトラフ支持部5よりも上方に突出するため、打設時にトラフ支持部5が損傷することがない。
【0053】
次に、
図7(b)に示すように、トラフ支持部5にトラフ本体13の胴体部25を載置する。なお、トラフ支持部5上には、胴体部25の一部が位置すればよい。すなわち、トラフ支持部5上に、雄型嵌合部21、雌型嵌合部23の一部がかかっていてもよい。
【0054】
次に、
図8に示すように、固定金具35によって、トラフ本体13をトラフ支持部5に固定する。すなわち、トラフ支持部5とトラフ本体13の横リブ27とを固定金具35で固定することで、トラフ本体13をトラフ支持杭1に固定することができる。この際、固定金具35は、トラフ本体13の横リブ27の形成位置であれば、いずれの位置でも固定することができる。このため、トラフ支持杭1の位置は、多少ずれていてもよい。また、トラフ本体13の位置を多少ずらして固定することも可能である。
【0055】
横リブは、トラフ本体13の雄型嵌合部21や雌型嵌合部23の形成位置には形成されないが、トラフ胴体部にトラフの耐荷重性を増加させるために形成される縦リブ28と干渉する位置を除く、すべての位置に形成されることから、トラフ本体13をトラフ支持部5に固定する際の固定金具35の設置の自由度が極めて高いことになる。
【0056】
なお、トラフ支持部5の長さは、トラフ本体13の長さよりも短い。したがって、トラフ本体13は、その一部のみをトラフ支持部5によって支持される。なお、トラフ支持部5からはみ出したトラフ本体13は、地面47に略接触するように設置される。
【0057】
略接触するように設置するとは、トラフ本体13の底板15の一部が地面やバラストに接触するが、一部が接触していない状態を言うが、これはもともとトラフを設置する地面には、多少の凹凸いわゆる不陸があるからである。
【0058】
最後に、トラフ本体13にケーブル等を収容し、トラフ蓋29をトラフ本体13上に載置する。さらに、トラフ蓋29の上方から、金属バンド45を配置して、トラフ蓋29をトラフ本体13に固定する。以上により、トラフ本体とトラフ支持部材の固定構造10の施工が完了する。
【0059】
また、トラフ本体とトラフ支持部材の固定構造10に対して、さらに、トラフ本体13を併設してもよい。この場合には、
図9(a)に示すように、まず、トラフ本体とトラフ支持部材の固定構造10を施工する。
【0060】
トラフ本体とトラフ支持部材の固定構造10は、前述したように、トラフ支持部5の裏面が地表面に接触するか、あるいは略接触するまで支柱3を打ち込んで、第1のトラフ支持杭1を打設し、トラフ支持部5に第1のトラフ本体13を載置し、トラフ支持部5と第1のトラフ本体13の横リブ27とを固定金具35で固定することで、第1のトラフ本体13を第1のトラフ支持杭1に固定することで施工される。
【0061】
次に、第2のトラフ支持杭1を第1のトラフ支持杭1から所定距離離間して打設する。例えば、トラフ本体13の長さに略対応した長さだけ互いに離して、一対のトラフ支持杭1が設置される。
【0062】
この状態から、
図9(b)に示すように、第2のトラフ支持杭1のトラフ支持部5に第2のトラフ本体13の胴体部25を載置し、第1のトラフ本体13と第2のトラフ本体13のそれぞれの雄型嵌合部21と雌型嵌合部23のいずれかを相互に連結する。さらに、第2のトラフ支持杭1のトラフ支持部5と第2のトラフ本体13の横リブ27とを固定金具35で固定することで、第2のトラフ本体13を第2のトラフ支持杭1に固定する。
【0063】
以上により、連結された複数のトラフ本体13を、相互に所定距離離間して配置される複数のトラフ支持杭1へ固定することができる。すなわち、一対のトラフ本体13同士が連結されて、それぞれがトラフ支持杭1によって支持されたトラフ本体とトラフ支持部材の固定構造10aを構築することができる。この際、前述したように、トラフ支持部5は、トラフ本体13よりも短いため、トラフ支持部5は、トラフ本体13の一部のみを支持する。
【0064】
さらに、トラフ本体とトラフ支持部材の固定構造10aに対して、トラフ本体13を併設してもよい。まず、
図10(a)に示すように、トラフ本体とトラフ支持部材の固定構造10aから所定距離離間して、トラフ支持杭1を打設する。
【0065】
この状態から、
図10(b)に示すように、当該トラフ支持杭1のトラフ支持部5にトラフ本体13の胴体部25を載置し、隣接するトラフ本体13のそれぞれの雄型嵌合部21と雌型嵌合部23とを連結する。さらに、トラフ支持杭1のトラフ支持部5とトラフ本体13の横リブ27とを固定金具35で固定することで、トラフ本体13をトラフ支持杭1に固定する。
【0066】
このように、複数のトラフ支持杭1の設置と、複数のトラフ本体13の連結と、複数のトラフ支持杭1へのそれぞれのトラフ本体13の固定とを複数回繰り返して行うことで、トラフ線路20を敷設することができる。
【0067】
なお、一つのトラフ支持杭1上に、一つのトラフ本体13を配置しなくてもよい。例えば、一つのトラフ本体13を複数個のトラフ支持杭1によって支持してもよい。また、
図11に示すように、トラフ本体13の連結部近傍において、トラフ支持杭1を設置してもよい。この場合には、トラフ支持部5の両側が、それぞれトラフ本体13の胴体部25(横リブ27の形成位置)に位置すれば、固定金具35によってトラフ本体13をトラフ支持杭1に固定することができる。
【0068】
以上、本実施の形態によれば、所定間隔で設置されるトラフ支持杭1のトラフ支持部5上に、複数のトラフ本体13を、相互に連結しながら固定することで、トラフ本体13の設置範囲の全長にわたって、トラフ橋を構築する必要がない。このため、作業が容易であり、材料の使用量も少なくて済む。
【0069】
また、トラフ支持部5が地面47に接するまで打ちこまれることで、トラフ本体13を例えばバラスト上などの任意の場所に設置して固定することができる。この際、バラストを掘り起こすなどの作業が不要である。このため、作業が容易である。
【0070】
また、トラフ支持杭1の支柱3は、鉄筋杭ではなく、所定寸法の等辺山形鋼(アングル鋼)を用いることから、杭打ち込み時に支柱3がバラストからの反発力で折れ曲がることがない。
【0071】
また、支柱3の先端部近傍に、トラフ支持部5の側壁部9が溶接部11により固定されるため、支柱3を打ちこむと同時に、トラフ支持部5を設置することができる。また、支柱3とトラフ支持部5が一体で構成されるため、部品点数を少なくすることができる。
【0072】
また、トラフ本体13の開口部19にトラフ蓋29を載置して、トラフ蓋29とトラフ本体13とを略コの字型をした金属バンド45で固定することで、確実にトラフ蓋29をトラフ本体13に固定することができる。また、トラフ蓋29の設置作業時に、金属バンド45とトラフ支持杭1とが干渉することがない。
【0073】
また、固定金具35が、ばね性を有する板状部材からなり、挿入部37を介して、押圧部39と固定部41とがそれぞれ形成される。このため、固定金具35を、トラフ支持部5の上方から、側壁部9に嵌め込むだけで、押圧部39で横リブ27を上方から押圧するとともに、固定部41でトラフ支持部5に固定金具35を固定することができる。このため、ボルトやナットなどを締結する必要もなく、作業性が良好である。
【0074】
また、トラフ本体13同士を雄型嵌合部21と雌型嵌合部23によって嵌合し、それぞれをトラフ支持杭1で支持すれば、互いに連結したトラフ本体13を支持することができる。
【0075】
また、この際、トラフ本体13の胴体部25は、トラフ本体13の先後端の雄型嵌合部21と雌型嵌合部23と異なり、所定の長さを有しているため、胴体部25の長手方向のほとんどの位置においても、トラフ本体13をトラフ支持杭1のトラフ支持部5に固定することが可能である。このため、トラフ本体13の長手方向に対するトラフ本体13の位置の調整が容易である。
【0076】
例えば、トラフ支持杭1の設置間隔は、各トラフ本体13を固定するために、基本的にはトラフ本体13の長さに対応した一定間隔とすることが望ましい。しかし、バラスト上へトラフ本体13を敷設するためには、敷設時にトラフ支持杭1の支柱3がバラストによりはじかれて多少の位置ずれが生じる場合がある。本実施形態によれば、トラフ支持杭1の敷設位置に多少のばらつきがあったとしても、トラフ支持部5へのトラフ本体13を固定することができる。
【0077】
このように、トラフ支持杭1のトラフ支持部5に、胴体部25の横リブ27が位置すれば、任意の位置で、トラフ本体13をトラフ支持杭1に固定することができることから、トラフ本体13とトラフ支持杭1との位置の自由度が高い。このため、トラフ橋を使用せず、トラフ支持杭1の敷設位置精度を気にすることなく、簡単で効率のよいトラフ線路20の敷設方法を得ることができる。
【0078】
次に、トラフ支持杭の第2の実施形態について説明する。
図12は、トラフ支持杭1aを示す斜視図である。なお、以下の説明において、トラフ支持杭1と同一の機能を奏する構成については、
図2等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0079】
トラフ支持杭1aは、トラフ支持杭1とほぼ同様の構成であるが、トラフ支持部5の形態が異なる。トラフ支持杭1aのトラフ支持部5は、一枚の板状部材が屈曲されて略コの字状に形成される。すなわち、底部7と側壁部9とが一体で構成される。
【0080】
このように、トラフ支持部5の構成は、底部7と側壁部9とが設けられれば、トラフ支持杭1のように、L字型のアングル材を対向させて、溶接等によって連結部材によって連結して形成してもよく、トラフ支持杭1aのように、一体の板材を屈曲させて形成してもよい。
【0081】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、トラフ支持部5の形態によらず、トラフ支持杭1aもトラフ支持杭1と同様に適用することができる。
【0082】
次に、トラフ支持杭の第3の実施形態について説明する。
図13は、トラフ支持杭1bを示す分解斜視図である。トラフ支持杭1bは、トラフ支持杭1aとほぼ同様の構成であるが、トラフ支持部5と支柱3とが別体である点で異なる。
【0083】
トラフ支持杭1bの支柱3の頭部(上端部)には、抜け止め部49が設けられる。抜け止め部49は、例えば板状の部材である。トラフ支持杭1bのトラフ支持部5は、一対のL型アングル材を対向させて配置し、他の板部材で所定の間隔で連結されたものである。したがって、トラフ支持部5の底部7には、L型アングル材と連結部材との間に隙間が形成される。
【0084】
抜け止め部49は、トラフ支持部5の側壁部9同士の間隔よりもサイズが小さい。また、抜け止め部49は、前述した、L型アングル材と連結部材との間に形成される底部7の隙間よりも大きい。なお、支柱3のサイズは、前述したL型アングル材と連結部材との間に形成される底部7の隙間よりも小さい。
【0085】
図14(a)、
図14(b)は、トラフ支持杭1bを設置する工程を示す図である。まず、トラフ支持部5を地面47に配置する。次に、支柱3を、前述した底部7の隙間に配置し、地面47に打ち込む(図中矢印C)。
【0086】
前述したように、支柱3のサイズは、隙間サイズよりも小さいため、支柱3はトラフ支持部5の底部7と干渉することがない。一方、抜け止め部49は、隙間サイズよりも大きいため、
図14(b)に示すように、支柱3を完全に打ちこむと、抜け止め部49が底部7と接触する。したがって、抜け止め部49でトラフ支持部5を固定することができる。
【0087】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、支柱3とトラフ支持部5とが別体であるため、例えば大型のトラフ本体13を設置するために、トラフ支持杭が大型化した場合でも、個々の部材に分けることで、一体の場合と比較して、支柱3単体の重量およびトラフ支持部5単体の重量を軽量化することができる。このため、取扱いが容易である。
【0088】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。