(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長手方向寸法t1が1.0〜3.0μmであり、かつ短手方向寸法t2に対する長手方向寸法t1の比(t1/t2)が2以上である粗化粒子の個数が、前記分析領域300μm2あたり、8個以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理銅箔。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の表面処理銅箔の好ましい実施形態について、詳細に説明する。
本発明に従う表面処理銅箔は、銅箔基体と、該銅箔基体の少なくとも一方の面に、粗化粒子が形成されてなる粗化処理層を少なくとも含む表面処理皮膜を有し、前記表面処理皮膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した分析領域にて、長手方向寸法t1が0.1μm以上である粗化粒子の個数をカウントするとき、長手方向寸法t1が3.0μm以下である粗化粒子の個数比率が、99.0%以上であって、かつ、前記個数比率に占める長手方向寸法t1が1.0〜3.0μmである粗化粒子の個数比率が、2.0〜20.0%であり、前記長手方向寸法t1が1.0〜3.0μmである粗化粒子に占める、短手方向寸法t2に対する長手方向寸法t1の比(t1/t2)が2以上である粗化粒子の個数比率が、20%以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明の表面処理銅箔は、銅箔基体と、該銅箔基体の少なくとも一方の面に、粗化粒子を形成してなる粗化処理層を少なくとも含む表面処理皮膜とを有する。このような表面処理皮膜の表面は、表面処理銅箔の最表面(表裏面)のうち少なくとも一方の面であり、また、銅箔基体の少なくとも一方の面に形成された粗化粒子の形成状態および粒子形状等が反映された微細な凹凸表面形状をもつ粗化面である。このような表面処理皮膜表面(以下、粗化面という。)は、例えば、銅箔基体上に形成された粗化処理層の表面であってもよいし、この粗化処理層上に直接形成されたシランカップリング剤層の表面、または、この粗化処理層上に、Niを含有する下地層、Znを含有する耐熱処理層および防錆処理層等の中間層を介して間接的に形成されたシランカップリング剤層の表面であってもよい。また、本発明の表面処理銅箔が、例えば、プリント配線板の導体回路に用いられる場合には、上記粗化面が、樹脂基材を貼着積層するための表面(貼着面)となる。
【0015】
さらに、本発明では、粗化面を真上から(該表面に対して垂直の方向から)走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することにより、粗化面における粗化粒子の形成状態を分析する。なお、本発明において、粗化粒子とは、例えば、後述する粗化処理により形成される、粒状の電析物を指すものとする。さらに粗化粒子の大きさについては、SEMにより観察した分析領域にて、粗化粒子を平面視して(例えば
図1(b)に示されるようにX−Y平面で見て)、この粗化粒子に対して外接する最小面積の長方形Pを描いたときの、長方形Pの長辺t1および短辺t2を、粗化粒子の長手方向寸法t1および短手方向寸法t2とそれぞれ定義する。なお、平面視した粗化粒子に対して外接する最小面積の長方形Pが、正方形であった場合には、長手方向寸法t1および短手方向寸法t2は同じ長さである。
【0016】
ここで、
図1(b)は、本発明の表面処理銅箔の粗化面を、真上から走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したSEM画像の一例である。また、比較のために、
図1(b)に示す本発明の表面処理銅箔と同様の方法で観察した、2種類の従来の表面処理銅箔の粗化面のSEM画像を、それぞれ
図1(a)および
図1(c)に示す。
【0017】
図1(a)に示される従来の表面処理銅箔は、粗化面における粗化粒子が、平面視で円形であり、かつ、微細で均一な粒径を有している。特許文献1〜4に記載の表面処理銅箔はこの例に相当し、このような表面処理銅箔は、粗化面の凹凸が小さいため、高周波特性は非常に優れているが、密着性、特に加熱処理後の密着性(耐熱密着性)が十分に得られない。
【0018】
一方、
図1(c)に示される従来の表面処理銅箔は、粗化面における粗化粒子が、平面視で円形であり、かつ、粗大で均一な粒径を有している。このような表面処理銅箔は、粗化面の凹凸が大きいため、密着性(常態密着性および耐熱密着性)は優れるが、高周波特性が十分に得られない。
【0019】
本発明者は、上記従来の表面処理銅箔における問題点として、高周波特性と密着性のトレードオフの関係に着目し鋭意研究を進めた結果、粗化面における粗化粒子の大きさおよび形状をあえて不均一に制御することにより、上記相反する特性である高周波特性と密着性(常態密着性および耐熱密着性)を両立できることを見出した。
【0020】
すなわち、本発明の表面処理銅箔は、例えば
図1(b)に示されるように、粗化面における粗化粒子の大きさおよび形状を不均一とし、特に、微細な粗化粒子(後述するA粒子)と、所定の大きさを有する粗化粒子(後述するB粒子)とを一定の割合で混在させると共に、所定の大きさを有する粗化粒子のうち一定の割合が細長形状の粗化粒子(後述するb1粒子)となるように制御する。このような本発明の表面処理銅箔は、粗化面における粗化粒子の大きさおよび形状が所定の関係に制御されているため、良好な高周波特性と適度な密着性(常態密着性および耐熱密着性)とを両立できる。
【0021】
本発明の表面処理銅箔は、粗化面において、微細な粗化粒子と、所定の大きさを有する粗化粒子とを一定の割合で混在させると共に、所定の大きさを有する粗化粒子のうち一定の割合が細長形状の粗化粒子になるように制御されることで、高周波特性と密着性を両立できる。このような作用効果が得られるメカニズムは必ずしも明らかではないが、微細な粗化粒子に対し、所定の大きさを有する粗化粒子を一定割合加えることで、微細粒子のみの場合(
図1(a)の場合)に比べて密着性を向上できる。さらに、所定の大きさを有する粗化粒子の一部を細長形状とすることで、粒子サイズを大きくしたことによる誘電損失の上昇を抑制し、微細粒子のみの場合に近い、優れた高周波特性が維持されるものと考えられる。
【0022】
図2は、所定の大きさを有する細長形状の粗化粒子を、Z軸方向から平面視した場合の概略図(X−Y平面図)である。また、
図3は、
図2に示される細長形状の粗化粒子の長手方向寸法t1と同じ長さの直径(t1、t2)を有する球形状の粗化粒子を、Z軸方向から平面視した場合の概略図(X−Y平面図)である。また、
図2、3の各(b)および(c)は、それぞれの破線矢印方向から電流を流した場合に、粗化粒子の表面における伝送経路を、模式的に実線で示した例である。
【0023】
図2(b)および
図3(b)の比較で分かるように、仮にX−Y平面をY軸に沿って電流が流れた場合には、細長形状の粗化粒子は、同じ長手方向寸法t1を有する球状粒子に比べて、粗化粒子の表面における伝送経路が短くなる。また、
図2(c)および
図3(c)の比較で分かるように、仮にX−Y平面をX軸に沿って電流が流れた場合には、細長形状の粗化粒子は、同じ長手方向寸法t1を有する球状粒子に比べて、電流が粗化粒子の表面を流れる確率が低くなる。
【0024】
上記のように、細長形状の粗化粒子はその長手方向が、電流に対しどの方向に配向していたとしても、同じ長手方向寸法t1を有する球形状の粗化粒子に比べて、粗化粒子の表面における伝送経路が短くなるか、そもそも電流が粗化粒子の表面を流れる頻度が少ないため、伝送損失が小さくなると考えられる。
【0025】
また、密着性の観点では、長手方向寸法t1が所定の大きさ以上の粗化粒子が一定量含まれていれば、その形状が細長形状であっても、十分な密着性が得られることがわかった。
【0026】
これらの知見に基づき、本発明者は、表面処理銅箔の粗化面において、微細な粗化粒子と、所定の大きさを有する粗化粒子とを一定の割合で混在させると共に、所定の大きさを有する粗化粒子の一部を細長形状の粗化粒子とすることで、高周波特性の悪化を抑え、密着性の向上を図ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0027】
本発明では、表面処理銅箔の粗化面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することで、粗化面における粗化粒子の形成状態を確認する。なお、本発明では、表面処理皮膜の表面をSEM観察した分析領域にて、長手方向寸法t1が0.1μm以上である粗化粒子をカウント対象として、その個数をカウントする。このように規定するのは、長手方向寸法t1が0.1μm未満である微細な粒子は、本発明の求める高周波特性と密着性との両立が可能な範囲において、ほとんど影響を及ぼさないためである。
以下、本発明の表面処理銅箔の粗化面について、粗化粒子の大きさおよび形状、並びに分析領域における粒子形状毎の粗化粒子の個数比率等について詳しく説明する。
【0028】
粗化面は、微細な粗化粒子と、所定の大きさを有する粗化粒子とで、主に構成されている。ここで、微細な粗化粒子としては、長手方向寸法t1が1.0μm未満である粗化粒子(以下、A粒子という)であり、所定の大きさを有する粗化粒子としては、長手方向寸法t1が1.0〜3.0μmである粗化粒子(以下、B粒子という)である。すなわち粗化面は、上記A粒子およびB粒子により主に構成されており、上記分析領域にて、長手方向寸法t1が0.1μm以上である粗化粒子の個数をカウントするとき、長手方向寸法t1が3.0μm以下である粗化粒子(A粒子およびB粒子の合計)の個数比率が99.0%以上であり、好ましくは、99.5%以上である。上記範囲とすることで、高周波特性を良好に制御できる。
【0029】
また、粗化面は、A粒子とB粒子とが一定の割合で混在していることを特徴とする。すなわち、上記長手方向寸法t1が3.0μm以下である粗化粒子(A粒子およびB粒子の合計)に占める、B粒子の個数比率は、2.0〜20.0%であり、好ましくは3.5〜15.0%である。上記B粒子の個数比率が、2.0%未満であると密着性の向上効果が十分に得られず、20.0%超であると伝送損失の増大の影響が大きくなる。また、より具体的には、B粒子の個数は、上記分析領域300μm
2あたり、20〜100個であることが好ましく、より好ましくは40〜80個である。
【0030】
さらに、粗化面は、B粒子の一部を細長形状の粗化粒子とする。このような細長形状の粗化粒子としては、短手方向寸法t2に対する長手方向寸法t1の比(t1/t2)が2以上である粗化粒子(以下、b1粒子という)である。すなわち、B粒子に占める、b1粒子の個数比率は20%以上であり、好ましくは30%以上である。B粒子に占めるb1粒子の個数比率が、20%以上であると密着性を確保しつつ、伝送損失への悪影響を最小限に抑制できる。一方、20%未満になると、B粒子に占める、球状粒子(
図3のような粒子)の個数比率が増すため、伝送損失が悪化する。なお、B粒子に占める、b1粒子の個数比率の上限は、例えば、80%以下である。また、より具体的には、b1粒子の個数は、上記分析領域300μm
2あたり、8個以上であることが好ましい。なお、b1粒子の短手方向寸法t2に対する長手方向寸法t1の比(t1/t2)の上限は、例えば4以下である。
【0031】
また、上述のように粗化面は、微細な粗化粒子であるA粒子と、所定の大きさを有する粗化粒子であるB粒子とで主に構成される。A粒子の個数比率は、B粒子の個数比率により相対的に決まるが、A粒子が多い場合には、伝送損失の低減は見込めるものの、十分な密着性を確保することは出来ない。したがって、上述のように、十分な密着性を得る観点から、粗化面に、A粒子とB粒子とを一定の割合で混在させる必要がある。なお、より具体的には、A粒子の個数は、上記分析領域300μm
2あたり、300〜1200個であることが好ましい。
【0032】
さらに、粗化面は、粗大な粗化粒子が一定割合以下となるように制御されている。このような粗大な粗化粒子としては、長手方向寸法t1が3.0μm超の粗化粒子(以下、C粒子という)である。すなわち、粗化面は、C粒子が一定割合以下となるように制御しており、カウント対象の粗化粒子に占める、C粒子の個数比率は、1%以下であり、好ましくは、0.5%以下である。C粒子は、密着性の向上に寄与するが、1.0%超であると、伝送損失の増大を招く。なお、より具体的には、C粒子の個数は、上記分析領域300μm
2あたり、0〜3個であることが好ましい。
【0033】
本発明の表面処理銅箔は、上記のような特徴を持つ粗化面を有することで、互いにトレードオフの関係である伝送損失の抑制と、樹脂基材との密着性(常態密着性及び耐熱密着性)の向上とを両立できる。
【0034】
また、本発明の表面処理銅箔の粗化面は、十点平均粗さRzjisの値が0.5〜2.0μmであることが好ましい。上記範囲とすることにより、伝送損失の抑制がより確実となる。
【0035】
また、本発明の表面処理銅箔は、これをプリント配線板の導体回路に用いることにより、GHz帯の高周波信号を伝送した際の伝送損失を高度に抑制でき、かつ、高温下においても表面処理銅箔と樹脂基材(樹脂層)との密着性を良好に維持でき、過酷条件における耐久性にも優れたプリント配線板を得ることができる。
【0036】
次に、本発明の表面処理銅箔の好ましい製造方法について、その一例を説明する。本発明では、銅箔基体の表面に、粗化粒子を形成する粗化処理を行うことが好ましい。
【0037】
銅箔基体は、公知のものを用いることができ、例えば電解銅箔や圧延銅箔を用いることができる。
【0038】
粗化処理は、例えば下記に示すような粗化めっき処理(1)と固定めっき処理(2)を組み合せて行うことが好ましい。
【0039】
・粗化めっき処理(1)
粗化めっき処理(1)は、銅箔基体の少なくとも一方の面上に粗化粒子を形成する処理である。具体的には硫酸銅浴で高電流密度のめっき処理を行う。このような硫酸銅浴(粗化めっき液基本浴)には、粗化粒子の脱落、即ち「粉落ち」の防止を目的としたモリブデン(Mo)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、セレン(Se)、テルル(Te)、タングステン(W)等の従来から知られている添加剤の添加が可能であり、特にモリブデン(Mo)を添加することが好ましい。本発明者は、鋭意研究を行った結果、下記の要因が表面処理銅箔の表面性状に影響を及ぼすことを見出し、適切にそれらの条件を設定することで、本発明の効果である高周波特性および密着性(常態密着性および耐熱密着性)の要求特性を高い水準で満足させることができることを発見した。
【0040】
まず、粗化めっき処理(1)の粗化めっき浴中に添加される添加剤、例えばモリブデン(Mo)を例に挙げて説明する。モリブデン(Mo)濃度は、100mg/L未満とすると、粗化粒子を微細に形成することが難しくなり、B粒子およびC粒子の個数比率が増加するため、高周波特性が悪化する傾向がある。また、モリブデン(Mo)濃度は、400mg/Lを超えると、粗化粒子が過度に微細化され易くなり、B粒子の個数比率が減少するため、耐熱密着性が悪化する傾向がある。したがって、モリブデン(Mo)濃度は、100〜400mg/Lとすることが好ましい。
【0041】
次に、粗化めっき処理(1)の電解条件等を説明する。
極間流速は、0.05m/s未満とすると、粗化粒子を微細に形成することが難しくなり、B粒子およびC粒子の個数比率が増加するため、高周波特性が悪化する傾向がある。また、極間流速は、0.14m/sを超えると、粗化粒子が過度に微細化され易くなり、B粒子の個数比率が減少するため、耐熱密着性が悪化する傾向がある。したがって、極間流速は、0.05〜0.14m/sとすることが好ましい。
【0042】
電流密度(A/dm
2)と処理時間(秒)の積(=S)は、100{(A/dm
2)・秒}未満とすると、本発明の求める十分な常態密着性を得ることが難しくなる。また、上記積Sは、300{(A/dm
2)・秒}を超えると、粗化粒子が過度に成長し、本発明の求める良好な高周波特性を得ることが難しくなる。したがって、上記積Sは、100〜300{(A/dm
2)・秒}とすることが好ましい。
【0043】
また、モリブデン(Mo)濃度に対する電流密度と処理時間の積Sの比(=S/Mo濃度)は、0.5〔{(A/dm
2)・秒}/(mg/L)〕未満とすると、粗化粒子が過度に微細化され易くなり、B粒子の個数比率が減少するため、耐熱密着性が悪化する傾向がある。また、S/Mo濃度は、2.5〔{(A/dm
2)・秒}/(mg/L)〕を超えると、粗化粒子を微細に形成することが難しくなり、B粒子およびC粒子の個数比率が増加するため、高周波特性が悪化する傾向がある。したがってS/Mo濃度は、0.5〜2.5〔{(A/dm
2)・秒}/(mg/L)〕とすることが好ましい。
【0044】
・固定めっき処理(2)
固定めっき処理(2)は、上記粗化めっき処理(1)で表面処理をした銅箔基体に平滑なかぶせめっきを行う処理である。この処理は、粗化粒子の脱落を防止するため、すなわち粗化粒子を固定化するために行う。具体的には硫酸銅浴でめっき処理を行う。本発明者は、鋭意研究を行った結果、通常固定めっきに意図的に加えることは無い塩素を添加することに加えて、下記の要因が表面処理銅箔の表面性状に影響を及ぼすことを見出し、適切にそれらの条件を設定することで、本発明の効果である高周波特性および密着性(常態密着性および耐熱密着性)の要求特性を高い水準で満足させることができることを発見した。
【0045】
まず、固定めっき処理(2)の固定めっき浴中に添加される塩素濃度について説明する。塩素(Cl)濃度は、50mg/L未満とすると、粗化粒子が球形に成長し易くなり、b1粒子の個数比率が減少するため、高周波特性が悪化する傾向がある。また、塩素(Cl)濃度は200mg/Lを超えると、想定外の電析異常を招く可能性が高くなる。したがって、塩素(Cl)濃度は、50〜200mg/Lとすることが好ましい。
【0046】
次に、固定めっき処理(2)の電解条件等を説明する。
極間流速は、0.15m/s未満とすると、正常な固定めっきを施すことが難しくなり、粉落ちが発生し易くなる。また、極間流速は、0.40m/sを超えると、粗化粒子が球形に成長し易くなり、b1粒子の個数比率が減少するため、高周波特性が悪化する傾向がある。したがって、極間流速は、0.15〜0.40m/sとすることが好ましい。
【0047】
特に、電流密度と処理時間の積(=K)は、30{(A/dm
2)・秒}未満とすると、十分な固定めっきを施すことが難しくなる。また、上記積Kは、100{(A/dm
2)・秒}を超えると、粗化粒子が過度に成長するため、本発明の求める良好な高周波特性を得ることが難しくなる。したがって、上記積Kは、30〜100{(A/dm
2)・秒}とすることが好ましい。
【0048】
また、塩素(Cl)濃度に対する電流密度と処理時間の積Kの比(=K/Cl濃度)は、0.2〔{(A/dm
2)・秒}/(mg/L)〕未満とすると、想定外の電析異常を招く可能性が高くなる。また、K/Cl濃度は、2.0〔{(A/dm
2)・秒}/(mg/L)〕を超えると、粗化粒子が球形に成長し易くなり、b1粒子の個数比率が減少するため、高周波特性が悪化する傾向がある。したがって、塩素(Cl)濃度に対する電流密度と処理時間の積Kの比(=K/Cl濃度)は、0.2〜2.0とすることが好ましい。
【0049】
さらに、粗化めっき処理(1)の電流密度と処理時間の積Sに対する固定めっき処理(2)の電流密度と処理時間の積Kの比率((K/S)×100(%))は、25%未満とすると、十分な固定めっきを施すことが難しくなり、粉落ちが発生し易くなる。上記比率[(K/S)×100]は、50%を超えると、粗化粒子が過度に成長し易くなり、本発明の求める良好な高周波特性を得ることが難しくなる。したがって、上記比率[(K/S)×100]は、25〜50%とすることが好ましい。
【0050】
以下、粗化めっき処理用めっき液の組成および電解条件の一例を示す。なお、下記条件は好ましい一例であり、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて添加剤の種類や量、電解条件を適宜変更、調整することができる。
【0051】
<粗化めっき処理(1)の条件>
硫酸銅五水和物・・・銅(原子)換算で、15〜30g/L
硫酸・・・100〜250g/L
モリブデン酸アンモニウム・・・モリブデン(原子)換算で、100〜400mg/L
極間流速・・・0.05〜0.14m/s
電流密度・・・45〜70A/dm
2
処理時間・・・2〜5秒
浴温・・・15〜30℃
【0052】
<固定めっき処理(2)の条件>
硫酸銅五水和物・・・銅(原子)換算で、50〜70g/L
硫酸・・・80〜160g/L
塩化ナトリウム・・・塩素(原子)換算で、50〜200mg/L
極間流速・・・0.15〜0.40m/s
電流密度・・・5〜15A/dm
2
処理時間・・・4〜15秒
浴温・・・50〜70℃
【0053】
さらに、本発明の表面処理銅箔は、銅箔基体の少なくとも一方の面に、粗化粒子の電析により形成される、所定の微細な凹凸表面形状をもつ粗化処理層を有し、さらに、該粗化処理層上に、直接または、Niを含有する下地層、Znを含有する耐熱処理層および防錆処理層等の中間層を介して間接的にシランカップリング剤層をさらに形成してもよい。なお、上記中間層およびシランカップリング剤層はその厚みが非常に薄いため、表面処理銅箔の粗化面における粗化粒子の粒子形状に影響を与えるものではない。表面処理銅箔の粗化面における粗化粒子の粒子形状は、該粗化面に対応する粗化処理層の表面における粗化粒子の粒子形状で実質的に決定される。
【0054】
また、シランカップリング剤層の形成方法としては、例えば、表面処理銅箔の前記粗化処理層の凹凸表面上に、直接または中間層を介して間接的にシランカップリング剤溶液を塗布した後、風乾(自然乾燥)又は加熱乾燥して形成する方法が挙げられる。塗布されたカップリング剤溶液は、溶液中の水が蒸発すれば、シランカップリング剤層が形成されることで本発明の効果が十分に発揮される。50〜180℃で加熱乾燥すると、シランカップリング剤と銅箔の反応が促進される点で好適である。
【0055】
シランカップリング剤層は、エポキシ系シラン、アミノ系シラン、ビニル系シラン、メタクリル系シラン、アクリル系シラン、スチリル系シラン、ウレイド系シラン、メルカプト系シラン、スルフィド系シラン、イソシアネート系シランのいずれか1種以上を含有することが好ましい。
【0056】
その他の実施形態として、粗化処理層とシランカップリング剤層との間に、Niを含有する下地層、Znを含有する耐熱処理層およびCrを含有する防錆処理層の中から選択される少なくとも1層の中間層を有することがさらに好ましい。
【0057】
ニッケル(Ni)を含有する下地層は、例えば銅箔基体や粗化処理層中の銅(Cu)が、樹脂基材側に拡散し銅害が発生して密着性が低下することがある場合には、粗化処理層とシランカップリング剤層との間に形成することが好ましい。Niを含有する下地層は、ニッケル(Ni)、ニッケル(Ni)−リン(P)、ニッケル(Ni)−亜鉛(Zn)の中から選択される少なくとも1種で形成することが好ましい。
【0058】
亜鉛(Zn)を含有する耐熱処理層は、耐熱性をさらに向上させる必要がある場合に形成することが好ましい。耐熱処理層は、例えば亜鉛、または亜鉛を含有する合金、即ち、亜鉛(Zn)−錫(Sn)、亜鉛(Zn)−ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)−コバルト(Co)、亜鉛(Zn)−銅(Cu)、亜鉛(Zn)−クロム(Cr)および亜鉛(Zn)−バナジウム(V)の中から選択される少なくとも1種の亜鉛を含有する合金で形成することが好ましい。
【0059】
Crを含有する防錆処理層は、耐食性をさらに向上させる必要がある場合に形成することが好ましい。防錆処理層としては、例えばクロムめっきにより形成されるクロム層、クロメート処理により形成されるクロメート層が挙げられる。
【0060】
上記の下地層、耐熱処理層及び防錆処理層は、これらの三層の全てを形成する場合には、粗化処理層上に、この順序で形成するのが好ましく、また、用途や目的とする特性に応じて、いずれか一層または二層のみを形成してもよい。
【0061】
〔表面処理銅箔の作製〕
以下に、本発明の表面処理銅箔の作製方法をまとめる。
本発明では、以下の形成工程(S1)〜(S5)に従い、表面処理銅箔を作製する。
(S1)粗化処理層の形成工程
銅箔基体上に、粗化粒子の電析により、微細な凹凸表面をもつ粗化処理層を形成する。
(S2)下地層の形成工程
粗化処理層上に、必要によりNiを含有する下地層を形成する。
(S3)耐熱処理層の形成工程
粗化処理層上または下地層上に、必要によりZnを含有する耐熱処理層を形成する。
(S4)防錆処理層の形成工程
粗化処理層上、または必要により粗化処理層上に形成した下地層および/または耐熱処理層上に、必要によりCrを含有する防錆処理層を形成する。
(S5)シランカップリング剤層の形成工程
粗化処理層上に、直接シランカップリング剤層を形成するか、または下地層、耐熱処理層および防錆処理層の少なくとも1層を形成した中間層を介して間接的にシランカップリング剤層を形成する。
【0062】
また、本発明の表面処理銅箔は、銅張積層板の製造に好適に用いられる。このような銅張積層板は、高密着性および高周波伝送特性に優れるプリント配線板の製造に好適に用いられ、優れた効果を発揮する。特に、本発明の表面処理銅箔は、高周波帯域用プリント配線板及び車載用プリント配線基板として使用される場合に好適である。
【0063】
また、銅張積層板は、本発明の表面処理銅箔を用いて、公知の方法により形成することができる。例えば、銅張積層板は、表面処理銅箔と樹脂基材(絶縁基板)とを、表面処理銅箔の粗化面(貼着面)と樹脂基材とが向かい合うように、積層貼着することにより製造される。絶縁基板としては、例えば、フレキシブル樹脂基板又はリジット樹脂基板等が挙げられる。
【0064】
また、銅張積層板を製造する場合には、シランカップリング剤層を有する表面処理銅箔と、絶縁基板とを加熱プレスによって貼り合わせることにより製造すればよい。なお、絶縁基板上にシランカップリング剤を塗布し、シランカップリング剤が塗布された絶縁基板と、最表面に防錆処理層を有する表面処理銅箔とを加熱プレスによって貼り合わせることにより作製された銅張積層板も、本発明と同等の効果を有する。
【0065】
また、プリント配線板は、上記銅張積層板を用いて、公知の方法により形成することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の一例に過ぎない。本発明は、本発明の概念および請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例】
【0067】
以下に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、以下は本発明の一例である。
【0068】
(実施例1)
実施例1では、以下の工程[1]〜[4]を行い、表面処理銅箔を得た。以下詳しく説明する。
【0069】
[1]銅箔基体の準備
粗化処理を施すための基材となる銅箔基体として、電解銅箔(厚さ18μm)を準備した。電解銅箔は下記条件により製造した。
【0070】
<電解銅箔の製造条件>
Cu :80g/L
H
2SO
4 :70g/L
塩素濃度 :25mg/L
浴温 :55℃
電流密度 :45A/dm
2
(添加剤)
・3−メルカプト1−プロパンスルホン酸ナトリウム :2mg/L
・ヒドロキシエチルセルロース :10mg/L
・低分子量膠(分子量3000) :50mg/L
【0071】
[2]粗化処理層の形成
次に、上記[1]にて準備した銅箔基体の片面に、粗化めっき処理を施した。この粗化めっき処理は、2段階の電気めっき処理により行った。粗化めっき処理(1)は、下記の粗化めっき液基本浴組成を用い、モリブデン(Mo)濃度を下記表1記載の通りとし、かつ、極間流速、電流密度、処理時間を下記表1記載の通りとした。モリブデン(Mo)濃度は、モリブデン酸ナトリウムを純水に溶解した水溶液を粗化めっき液基本浴に加えることで調整した。また、続けて行う固定めっき処理(2)は、下記固定めっき液組成を用い、塩素(Cl)濃度、極間流速、電流密度、処理時間を下記表1記載の通りとして行った。
【0072】
<粗化めっき液基本浴組成>
Cu :25g/L
H
2SO
4 :180g/L
浴温 :25℃
【0073】
<固定めっき液組成>
Cu :60g/L
H
2SO
4 :120g/L
浴温 :60℃
【0074】
【表1】
【0075】
[3]金属処理層の形成
続いて、上記[2]で形成した粗化処理層の表面に、下記の条件で、Ni、Zn、Crの順に金属めっきを施して金属処理層(中間層)を形成した。
【0076】
<Niめっき>
Ni :40g/L
H
3BO
3 :5g/L
浴温 :20℃
pH :3.6
電流密度 :0.2A/dm
2
処理時間 :10秒
【0077】
<Znめっき>
Zn :2.5g/L
NaOH :40g/L
浴温 :20℃
電流密度 :0.3A/dm
2
処理時間 :5秒
【0078】
<Crめっき>
Cr :5g/L
浴温 :30℃
pH :2.2
電流密度 :5A/dm
2
処理時間 :5秒
【0079】
[4]シランカップリング剤層の形成
最後に、上記[3]にて形成した金属処理層(特に、最表面のCrめっき層)の上に、濃度0.2質量%の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン水溶液を塗布し、100℃で乾燥させ、シランカップリング剤層を形成した。
【0080】
(実施例2〜5および比較例1〜4)
実施例2〜5および比較例1〜4は、粗化処理層の形成工程[2]において、粗化めっき処理(1)および固定めっき処理(2)の各条件を、上記表1記載の通りとした以外は、実施例1と同様の方法にて、表面処理銅箔を得た。
【0081】
[評価]
上記実施例および比較例に係る表面処理銅箔について、下記に示す特性評価を行った。各特性の評価条件は下記の通りである。結果を表2に示す。
【0082】
[粗化粒子の計測]
表面処理銅箔の粗化面における粗化粒子の計測は、粗化面を真上(粗化処理層を有する銅箔基体の表面に直交する方向)から走査型電子顕微鏡(SEM)観察することで求めた。詳細を以下に説明する。なお、走査型電子顕微鏡は、電界放出型走査電子顕微鏡(SU8020、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。
粗化面を真上から観察したSEM像に基づき、粗化粒子の長手方向寸法t1と短手方向寸法t2を測定した。なお、測定で用いたSEM像は0.1μmの粗化粒子を確認可能な倍率の画像とした。具体的には、例えば、
図4に示すように、倍率1万倍で960×720ピクセルのデジタル画像である。
図4は、実施例1で製造した表面処理銅箔の粗化面を真上から観察したSEM像である。さらに、この測定は、各表面処理銅箔につき、無作為に選択された異なる3視野にて行い、分析領域(観察視野)の合計を300μm
2とした。
分析領域300μm
2の範囲内で得られたデータを、長手方向寸法t1に応じて、以下のように区分し、それぞれに区分された粗化粒子の個数をカウントした。
・A粒子:長手方向寸法t1が0.1μm以上1.0μm未満である粗化粒子
・B粒子:長手方向寸法t1が1.0μm〜3.0μmである粗化粒子
・b1粒子:上記B粒子のうち、短手方向寸法t2に対する長手方向寸法t1の比(t1/t2)が2以上である粗化粒子
・C粒子:長手方向寸法t1が3.0μm超である粗化粒子
さらに、上記測定で求められた各区分の粗化粒子の個数に基づき、カウント対象となった粗化粒子(A粒子とB粒子とC粒子。以下、カウント対象粒子という。)の個数と、長手方向寸法t1が3.0μm以下である粗化粒子(A粒子+B粒子)の個数、およびカウント対象粒子に占めるその個数比率(%)、長手方向寸法t1が3.0μm以下である粗化粒子(A粒子+B粒子)に占めるB粒子の個数比率(%)、並びにB粒子に占めるb1粒子の個数比率(%)を、それぞれ算出した。
【0083】
[表面粗さの測定]
表面処理銅箔の粗化面において、接触式表面粗さ測定機(サーフコーダーSE1700、株式会社小坂研究所製)用いて、JIS B 0601:2001で定義される十点平均粗さRzjis(μm)を測定した。
【0084】
[高周波特性の評価]
高周波特性の評価として高周波帯域での伝送損失を測定した。詳細を以下に説明する。
表面処理銅箔の粗化面を、パナソニック株式会社製のポリフェニレンエーテル系低誘電率樹脂基材であるMEGTRON6(厚さ50〜100μm)の両面に面圧3MPa、200℃の条件で2時間プレスすることにより貼り合わせて、両面銅張積層板を作製した。得られた積層板に回路加工を行い、伝送路幅100μm、長さ40mmのマイクロストリップラインを形成させた。この伝送路に、ネットワークアナライザを用いて高周波信号を伝送し、伝送損失を測定した。特性インピーダンスは50Ωとした。
伝送損失の測定値は、絶対値が小さいほど伝送損失が少なく、高周波特性が良好であることを意味する。得られた測定値を指標にして、下記評価基準に基づき高周波特性を評価した。
◎:40GHzにおける伝送損失が−26dB以上
○:40GHzにおける伝送損失が−26dB未満から−28dB以上
×:40GHzにおける伝送損失が−28dB未満
【0085】
[常態密着性の評価]
常態密着性の評価として、剥離試験を行った。詳細を以下に説明する。
上記[高周波特性の評価]に記載の方法と同様の方法で銅張積層板を作製し、得られた銅張積層板の銅箔部分(表面処理銅箔)を10mm巾テープでマスキングした。この銅張積層板に対して塩化銅エッチングを行った後テープを除去し、10mm巾の回路配線板を作製した。東洋精機製作所社製のテンシロンテスターを用いて、この回路配線板の10mm巾の回路配線部分(銅箔部分)を90度方向に50mm/分の速度で樹脂基材から剥離した際の剥離強度を測定した。得られた測定値を指標にして、下記評価基準に基づき密着性を評価した。
<常態密着性の評価基準>
◎:剥離強度が0.5kN/m以上
×:剥離強度が0.5kN/m未満
【0086】
[耐熱密着性の評価]
常態密着性の評価として、加熱処理後の剥離試験を行った。詳細を以下に説明する。
上記[高周波特性の評価]に記載の方法と同様の方法で銅張積層板を作製し、得られた銅張積層板の銅箔部分を10mm巾テープでマスキングした。この銅張積層板に対して塩化銅エッチングを行った後テープを除去し、10mm巾の回路配線板を作製した。この回路配線板を300℃の加熱オーブンにて1時間加熱した後、常温下において東洋精機製作所社製のテンシロンテスターを用いて、回路配線板の10mm巾の回路配線部分(銅箔部分)を90度方向に50mm/分の速度で樹脂基材から剥離した際の剥離強度を測定した。得られた測定値を指標にして、下記評価基準に基づき耐熱密着性を評価した。
<耐熱密着性の評価基準>
◎:剥離強度が0.5kN/m以上
○:剥離強度が0.4kN/m以上0.5kN/m未満
×:剥離強度が0.4kN/m未満
【0087】
[総合評価]
上記の高周波特性、常態密着性および耐熱密着性のすべてを総合し、下記評価基準に基づき総合評価を行った。なお、本実施例では、総合評価でAおよびBを合格レベルとした。
<総合評価の評価基準>
A(優):全ての評価が◎である。
B(合格):全ての評価で×評価がない。
C(不合格):少なくとも1つの評価が×である。
【0088】
【表2】
【0089】
表2に示されるように、実施例1〜5の表面処理銅箔は、粗化面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した分析領域にて、長手方向寸法t1が0.1μm以上である粗化粒子の個数をカウントするとき、長手方向寸法t1が3.0μm以下である粗化粒子(A粒子およびB粒子の合計)の個数比率が99.0%以上であって、かつ、この個数比率に占める長手方向寸法t1が1.0〜3.0μmである粗化粒子(B粒子)の個数比率が2.0〜20.0%であり、さらにB粒子に占める、短手方向寸法t2に対する長手方向寸法t1の比(t1/t2)が2以上である粗化粒子(b1粒子)の個数比率が、20%以上となるように制御されているため、高周波特性に優れ、高い密着性(常態密着性および耐熱密着性)を発揮することが確認された。
【0090】
これに対し、比較例1の表面処理銅箔の粗化面では、長手方向寸法t1が3.0μm以下である粗化粒子(A粒子およびB粒子の合計)に占める、長手方向寸法t1が1.0〜3.0μmである粗化粒子(B粒子)の個数比率が2.0%未満であるため、耐熱密着性が劣ることが確認された。
【0091】
また、比較例2は、長手方向寸法t1が1.0〜3.0μmである粗化粒子(B粒子)に占める、短手方向寸法t2に対する長手方向寸法t1の比(t1/t2)が2以上である粗化粒子(b1粒子)の個数比率が20%未満であるため、高周波特性が劣ることが確認された。比較例3は、長手方向寸法t1が3.0μm以下である粗化粒子(A粒子およびB粒子の合計)に占める、長手方向寸法t1が1.0〜3.0μmである粗化粒子(B粒子)の個数比率が20.0%超であるため、高周波特性が劣ることが確認された。さらに、比較例4は、カウント対象の粗化粒子に占める、長手方向寸法t1が3.0μm以下である粗化粒子の個数比率が99.0%未満である(すなわち、長手方向寸法t1が3.0μm超である粗化粒子が1.0%以上である)ため、高周波特性が劣ることが確認された。