(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野においては、カテーテルが種々の治療や検査に多用されている。例えば、心機能低下時の治療として、大動脈内にバルーンカテーテルを挿入し、心臓の拍動に合わせてバルーンを膨張および収縮させて心機能の補助を行う大動脈内バルーンポンピング法(IABP法)が行われている。
【0003】
このIABP法に用いられる大動脈内バルーンカテーテルとしては、外管と外管の内部に位置する内管とで形成された二重管構造を有するカテーテルが一般的に用いられている。
【0004】
このような二重管構造のカテーテルでは、内管の遠位端開口から血液を取り込み、その近位端開口に血圧測定装置を取り付けて、血圧の変動を検出している。ところが、近年では、患者への負荷を低減する観点からカテーテルの外径が小さくなり、そのために血圧導入孔を構成する内管の内径も小さくなり、正確な血圧測定が困難になってきている。血圧測定をタイミング良く正確に測定できないと、IABPなどの処置が良好に行えないおそれがある。
【0005】
そこで、カテーテルの遠位端部に圧力センサ(電気信号変換方式)を取り付け、カテーテル遠位端の血圧を電気信号として検出するカテーテルが提案されている(たとえば特許文献1)。
【0006】
しかしながら、圧力信号を電気信号としてカテーテルを通して取り出す方式では、電気ノイズが発生するおそれがある。また、圧力センサを囲む媒体の伝導性が変化することなどにより、圧力センサのドリフト補正が必要であるなどの課題も有している。
【0007】
そこで、たとえば特許文献2に示すように、光学式圧力センサをカテーテルに用いる試みがなされている。しかしながら、光学式圧力センサをカテーテルの遠位端部に埋め込んで固定してしまうと、カテーテルの内部に光ファイバを通す必要が生じることから、カテーテルの外径を大きくする必要がある。また、光学式圧力センサをカテーテルに確実に埋め込むための構造が複雑になりがちであることから、カテーテルの強度や耐久性を確保することが困難となるおそれもある。
【0008】
センサをカテーテルの遠位端部に埋め込むことなく、血圧測定を行う方法としては、たとえば特許文献3に示すように、線材の遠位端部に圧力センサを取り付けたものを、血圧測定が必要なときに、カテーテルの内部(例えば、二重管構造を有するカテーテルの内管)に挿入して、測定を行う方法が挙げられる。特許文献3に示すバルーンカテーテルでは、圧力センサ素子が線材の最遠位端部に取り付けられて、血圧測定の際には、その圧力センサ素子がバルーンカテーテルの遠位端から突出するように、バルーンカテーテルに線材が挿入される。しかしながら、このようなバルーンカテーテルでは、バルーンカテーテルの遠位端から突出した圧力センサ素子が血管等に衝突するおそれがあり、その衝突によって、血管等が傷つけられたり、圧力センサ素子が損傷したりするおそれがある。また、バルーンカテーテルの遠位端から突出した圧力センサ素子の周囲に血栓が生じやすくなって、その血栓が圧力センサ素子による血圧測定に悪影響を及ぼすおそれもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、カテーテルを用いて処置を行う体内の特定部位の圧力を正確に検出することができ、しかもカテーテルの外径を大きくしたり、構造を複雑にしたりすることなく、安全性や耐久性に優れたバルーンカテーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係るバルーンカテーテルは、
膨張および収縮が可能なバルーン部と、
前記バルーン部の内部に圧力流体を導入および導出する圧力流体導通路と、前記圧力流体導通路とは連通せずに前記バルーン部の遠位端に遠位端開口を持つワイヤ挿通孔とが形成してあるカテーテル管と、を有するバルーンカテーテルであって、
前記ワイヤ挿通孔内に、挿入用ワイヤが着脱自在に挿入してあり、
前記挿入用ワイヤが、
遠位端側に開口部を有し、前記開口部から入り込む流体の圧力を検出する光学式圧力センサが取り付けられる中空ワイヤと
前記中空ワイヤの内部に取り付けられ、前記光学式圧力センサからの光信号を伝達する光ファイバと、を有し、
前記ワイヤ挿通孔内に前記挿入用ワイヤを挿入して装着したときに、前記挿入用ワイヤの最遠位端が、前記遠位端開口から近位端方向に向けて所定距離で前記ワイヤ挿通孔の内部に位置することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るバルーンカテーテルでは、ワイヤ挿通孔からカテーテルを体内に導入するためのガイドワイヤが取り去られた後に、その挿通孔に光学式圧力センサが取り付けられた挿入用ワイヤを挿入することができる。挿入用ワイヤをバルーンカテーテルのワイヤ挿通孔に挿入することで、バルーンカテーテルの剛性が高くなり、バルーンカテーテルが血流により押戻されるおそれが減少し、キンク(折れ)も有効に防止できる。また、バルーンカテーテルのカテーテル管には、光学式圧力センサを埋め込む必要がないので、センサを埋め込むために構造を複雑にする必要がなく、バルーンカテーテルの耐久性を良好なものにしやすくなる。
【0013】
さらに、ワイヤ挿通孔内に挿入用ワイヤを挿入して装着したときに、挿入用ワイヤの最遠位端が、遠位端開口から近位端方向に向けて所定距離で前記ワイヤ挿通孔の内部に位置する。その結果、血栓などの影響を受けることなく、しかも電気ノイズに影響されることなく、光学式圧力センサにより血圧などを正確に測定することが可能である。そのうえ、光学式圧力センサと血管等との衝突が防止されるため、血管等が傷つけられたり、センサが損傷したりするおそれが小さく、バルーンカテーテルとして安全性が高いものとなる。
【0014】
好ましくは、前記カテーテル管は、
バルーン部の内部に圧力流体を導入および導出するように、バルーン部の後端部に先端部が接続された外管と、
前記バルーン部の先端部が接続され、前記バルーン部および外管の内部を軸方向に延在する内管と、を有し、
前記ワイヤ挿通孔が前記内管の内部に長手方向に沿って形成してあり、
前記圧力流体導通路が、前記外管と内管との間の隙間に形成してある。
【0015】
このように構成することで、ワイヤ挿通孔と圧力流体導通路とを容易に形成することができる。また、内管の内部に形成してあるワイヤ挿通孔には、挿入用ワイヤを容易に挿入することができる。
【0016】
好ましくは、前記カテーテル管の近位端には、ハンドル部が連結してあり、
前記挿入用ワイヤの近位端には、コネクタが連結してあり、
前記ハンドル部のワイヤ挿入口に、前記コネクタのポート接続部が着脱自在に装着される。
【0017】
このように構成することで、ワイヤ挿通孔の内部に挿入用ワイヤを着脱自在に挿入することが容易になり、しかも、挿入用ワイヤの最遠位端を、遠位端開口から近位端方向に向けて所定距離でワイヤ挿通孔の内部に位置させることが容易になる。
【0018】
好ましくは、前記コネクタは、フロントコネクタと、バックコネクタと、これらを連結するケーブルとを有し、
前記フロントコネクタは、前記ポート接続部と、前記ワイヤ挿通孔と前記中空ワイヤとの間の隙間に液体を流入させる分岐ポートと、前記中空ワイヤの内部に装着してある光ファイバの近位端部を前記ケーブル内の光ファイバに連結するためのフェルールとを有する。
【0019】
分岐ポートから生理食塩水や抗血液凝固薬液などの液体を導入することで、その液体がカテーテルのワイヤ挿通孔内に位置する光学式圧力センサの周囲にまで到達し、センサの周囲で血栓などが生じることを抑制することができ、血圧などを正確に検出することができる。
【0020】
好ましくは、前記バックコネクタは、前記ケーブル内の光ファイバの近位端部に連結してある端フェルールと、前記端フェルールを保持するバックコネクタ本体と、前記バックコネクタ本体の遠位端部を囲むように保持するカバー部材と、前記カバー部材の遠位端部に連結されて前記ケーブルの外周を囲む応力緩和部材とを有する。
【0021】
カバー部材がバックコネクタ本体の遠位端部を囲むように保持することで、操作者は、カバー部材あるいは応力緩和部材を片手で把持して、バックコネクタ本体の近位端を、機器側接続部に着脱自在に接続することが容易になる。
【0022】
好ましくは、前記バックコネクタ本体の近位端には、スタイレット側電気接続端子が装着してあり、
前記スタイレット側電気接続端子は、前記バックコネクタ本体の前記端フェルールが着脱自在に連結される受け側フェルールが固定してある機器側接続部に装着してある機器側電気接続端子に着脱自在に接続可能になっている。
【0023】
このように構成することで、バックコネクタ本体の近位端を、機器側接続部に接続することのみで、端フェルールと受け側フェルールとの接続が成されると同時に、スタイレット側電気接続端子と機器側電気接続端子との接続が成される。
【0024】
好ましくは、前記カバー部材の内部には、前記スタイレット側電気接続端子に接続してあるメモリ素子が装着してあり、
前記メモリ素子には、前記スタイレットまたは前記スタイレットが使用されるカテーテルに関連するデータが記憶してあり、
前記スタイレット側電気接続端子を通して前記データを読み取り可能になっている。
【0025】
このように構成することで、機器側接続部では、光ファイバを通して血圧データを受け取ることができると共に、スタイレット側電気接続端子を通してスタイレットまたはスタイレットが使用されるカテーテルに関連するデータを受け取ることができる。そのため、現在使用されているカテーテルに関するデータが正確に機器側に伝達され、正確なデータに基づき、カテーテルの制御を行うことができる。
【0026】
本発明の医療用スタイレットが用いられるカテーテルは、好ましくは、大動脈内バルーンポンピング(IABP)法に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示す医療用スタイレット60は、たとえば
図8に示す本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテル20と共に用いられる。まず、
図8に示すバルーンカテーテル20について説明する。
【0029】
図8に示すバルーンカテーテル20は、大動脈内バルーンポンピング法に用いるバルーンカテーテルであり、心臓の拍動に合わせて膨張および収縮するバルーン部22を有する。バルーン部22は、膜厚50〜150μm程度の薄膜で構成される。薄膜の材質は、特に限定されないが、抗血栓性および耐屈曲疲労特性に優れた材質であることが好ましく、たとえばポリウレタンなどにより構成される。
【0030】
バルーン部22の外径および長さは、心機能の補助効果に大きく影響するバルーン部22の内容積と、動脈血管の内径などに応じて決定される。バルーン部22の内容積は、特に限定されないが、20〜50ccであり、バルーン部22の外径は、膨張時で12〜18mmが好ましく、長さは、150〜250mmが好ましい。
【0031】
このバルーン部22の遠位端部22aには、遠位端開口23が形成してある遠位端チップ部25が熱融着ないしは接着などの手段で取り付けてある。この遠位端チップ部25の内周側には、内管30の遠位端部が熱融着ないしは接着などの手段で取り付けてある。
【0032】
バルーン部22の近位端部22bには、外管24の遠位端部が接続してある。この外管24の内部に形成された圧力流体導通路29を通じて、バルーン部22の内部に、圧力流体が導入および導出され、バルーン部22が膨張および収縮するようになっている。バルーン部22と外管24との接続は、熱融着あるいは接着剤による接着により行われる。
【0033】
内管30は、バルーン部22および外管24の内部を軸方向に延在し、後述するハンドル部42のワイヤ挿入口44に連通するようになっており、その内部には、バルーン部22の内部および外管24内に形成された圧力流体導通路29とは連通しないワイヤ挿通孔としてのルーメン31が形成してある。
【0034】
バルーン部22内に位置する内管30は、バルーンカテーテル20を動脈内に挿入する際に、収縮した状態のバルーン部22が巻きつけられ、ルーメン31は、バルーン部22を都合良く動脈内に差し込むために用いるガイドワイヤを挿通する管腔としても用いられる。本実施形態では、これらの外管24と内管30とがカテーテル管を構成している。
【0035】
外管24の近位端部には、患者の体外に設置されるハンドル部42が連結してある。ハンドル部42は、外管24と別体に成形され、熱融着あるいは接着などの手段で固着される。ハンドル部42には、外管24内の圧力流体導通路29およびバルーン部22内に圧力流体を導入または導出するための圧力流体導入出口46が形成される第1通路47と、内管30内に連通するワイヤ挿入口44が形成される第2通路45とが形成してある。
【0036】
圧力流体導入出口46は、たとえば図示省略してある駆動装置の圧力流体コネクタチューブに接続され、この駆動装置により、流体圧がバルーン部内に導入または導出されるようになっている。導入される流体としては、特に限定されないが、駆動装置の駆動に応じて素早くバルーン部が拡張または収縮するように、粘性の小さいヘリウムガスなどが用いられる。また、駆動装置(IABP駆動装置)としては、特に限定されず、例えば特公平2−39265号公報やWO2011/114779号公報に示すような装置が用いられる。
【0037】
本実施形態のハンドル部42では、圧力流体導入出口46が形成された第1通路47を外管24の軸心方向に沿ってストレート状に配置し、ワイヤ挿入口44が形成される第2通路45を、第1通路47の軸心に対して所定の傾きを以て配置するように構成してある。
【0038】
しかも本実施形態のハンドル部42では、第2通路45内に、内管30の端部を保持し、この内管30を、外管24の内壁に接するように偏心させて配置させるための第1内管端部保持具48と第2内管端部保持具50とが装着してある。ハンドル部42に形成される圧力流体導入出口46に連通する第1通路47を外管24の軸心方向に沿ってストレート状に配置してあるので、ワイヤ挿入口を外管の軸心方向に沿ってストレート状に配置した従来例に比較し、圧力流体の流路抵抗を低減することが可能になると共に、バルーン部における拡張・収縮の応答性が向上する。
【0039】
ワイヤ挿入口44が形成してある第2内管端部保持具50の取付ポート52に対して、
図1に示す医療用スタイレット60のフロントコネクタ70のポート接続部72が着脱自在に装着される。医療用スタイレット60の挿入用ワイヤ80は、内管30のルーメン31の内部に挿入可能になっていて、第2内管端部保持具50の取付ポート52とフロントコネクタ70のポート接続部72とが着脱自在であることから、挿入用ワイヤ80はルーメン31に着脱自在に挿入できる。なお、取付ポート52に対してポート接続部72を着脱自在に装着させる方法は、常法に従えばよく、例えば、螺合などの手段を採用すればよい。
【0040】
以下、医療用スタイレット60について詳細に説明する。
図1に示すように、医療用スタイレット60は、挿入用ワイヤ80と、挿入用ワイヤ80の近位端部が取り付けられるコネクタ65とを有する。
【0041】
図2および
図3に示すように、挿入用ワイヤ80は、中空ワイヤ82と、その中空ワイヤ82の遠位端に差し込まれて取り付けられている遠位端ワイヤ81を有する。遠位端ワイヤ81は、遠位端に向けてテーパ状に細くなっており、その最も遠位端には、遠位端付近のワイヤ81の外径よりも大きな径を持つ球状体81aが一体成形してある。この球状体81aをワイヤ81の遠位端に設けることで、挿入用ワイヤ80の遠位端を、
図8に示す内管30のルーメン31内に差し込みやすくなり、挿入用ワイヤ80の遠位端部で内管30を傷つけるおそれが小さくなる。
【0042】
球状体81aの外径は、テーパ状のワイヤ81における最も大きな外径と同程度以下のサイズが好ましく、中空ワイヤ82の外径よりも小さいことが好ましい。遠位端ワイヤ81の長さ(中空ワイヤ82から飛び出している部分の長さ)L0は、特に限定されないが、好ましくは5〜50mmである。中空ワイヤ82の外径は、特に限定されないが、たとえば0.3〜0.7mmである。中空ワイヤ82の内径は、光学式圧力センサ84および光ファイバ88が挿入可能な内径であれば良い。また、挿入用ワイヤ80の全長も、特に限定されないが、好ましくは50〜800mmである。
【0043】
遠位端ワイヤ81の近位端部81bは、
図3に示すように、中空ワイヤ82の取付遠位端部82aの内部に接合してある。これらの接合は、レーザ溶接、その他の溶接、あるいは接着剤による接合などでも良い。中空ワイヤ82の取付遠位端部82aの近くには、少なくとも1つ、好ましくは一対、または複数の開口部82bが設けてあり、開口部82bを通して、中空ワイヤ82の内部と外部とが連通可能になっている。
【0044】
本実施形態では、遠位端ワイヤ81の近位端部は、開口部82bの近位端側縁部まで到達し、開口部82bに少しせり出しているが、必ずしも開口部82bまで到達しなくても良い。ただし、この遠位端ワイヤ81の近位端部は、開口部82bを完全には塞がないようになっており、好ましくは開口部82bの開口面積を狭めないように、中空ワイヤ82の取付遠位端部82aの内部に接合してある。
【0045】
開口部82bの近位端側縁部では、開口部82bから入り込む流体の圧力を検出する光学式圧力センサ84が中空ワイヤ82の内部に取り付けてある。光学式圧力センサ84の近位端には、光ファイバ88の遠位端が接合してある。
図4に示すように、光ファイバ88の遠位端88aは、光学式圧力センサ84の基板本体84aの近位端側に形成してある凹部84b内に入り込み、接着剤87などにより基板本体84aに接合してある。
【0046】
基板本体84aは、たとえばガラスで構成してあり、その先端(遠位端)には、ダイヤフラム85が装着してあり、その背後に光の共振部を構成するように、空洞86が形成してある。ダイヤフラム85に圧力が加わることで、光ファイバ88を通して伝達する光の行路差などが変化し、ダイヤフラム85に加わる圧力を検出することができる。光学式圧力センサ84としては、特に限定されず、たとえば特表2008−524606号公報、特開2000−35369号公報、特表2014−507666号公報などに記載されたものを用いることができる。
【0047】
本実施形態では、圧力検出センサ84の圧力検出部であるダイヤフラム85が、中空ワイヤ82の開口部82bにおける近位端縁部に位置し、開口部82bを通して伝達する血液の血圧を正確に測定することが可能になっている。光学式圧力センサ84の近位端に接続してある光ファイバ88の外周には、たとえばポリイミド樹脂などによりコーティング層88bが形成してある。
【0048】
光学式圧力センサ84の近くに位置する光ファイバ88の遠位端近傍は、隔壁リング83により中空ワイヤ82の内部に固定される。隔壁リング83を中空ワイヤ82の内部で所定位置に固定するために、
図2および
図3に示すように、中空ワイヤ82の開口部82bから所定位置に、接着用孔82cが1つ以上形成してある。その接着用孔82cを通して、接着剤を注入することで、隔壁リング83を中空ワイヤ82の内部で開口部82bから近位端側に所定位置に固定することが容易になり、開口部82bと光学式圧力センサ84との位置決めも同時に行うことができる。光学式圧力センサ84で検出された圧力は、光ファイバ88を通して光信号として送信することができる。
【0049】
本実施形態では、遠位端ワイヤ81と中空ワイヤ82とは、たとえば、ステンレス鋼やニッケル・チタン合金などの金属で構成してあり、これらは同一の材質で構成しても良く、あるいは異なる材質で構成しても良い。
図4に示すように、中空ワイヤ82の外周には、たとえばPTFEなどのフッ素樹脂からなるコーティング層82dを施しても良い。
【0050】
図1に示すように、コネクタ65は、挿入用ワイヤ80の近位端部が取り付けられたフロントコネクタ70と、バックコネクタ100と、これらを連結するケーブル90とを有する。フロントコネクタ70は、
図8に示すように、カテーテルとしてのバルーンカテーテル20のルーメン31に挿入用ワイヤ80を通すための取付ポート52に連結されるポート接続部72を有する。ポート接続部72は、フロントコネクタ70のフロントコネクタ本体71の遠位端部に形成してあり、さらに、フロントコネクタ本体71には、分岐ポート73が形成してある。なお、フロントコネクタ70と挿入用ワイヤ80との接続は、着脱自在な接続としても良いし、着脱不可に固定しても良いが、フロントコネクタ70および挿入用ワイヤ80内の光ファイバ88の導通を長期間確実に保つ観点からは、着脱不可に固定して接続することが好ましい。
【0051】
図5に示すように、ポート接続部72の内部には、略同芯状に、フラッシュ用ノズル72aが取り付けてある。フラッシュ用ノズル72aの内部は、分岐ポート73の内部に連通してある。分岐ポート73から導入される生理食塩水や抗血液凝固薬液などの液体は、
図8に示すフラッシュ用ノズル72aの先端からワイヤ挿入口44内部に導入され、そこから内管30のルーメン31を通して挿入用ワイヤ80の外側を流れ、内管30の遠位端開口23まで導かれるようになっている。
【0052】
図5に示すように、フロントコネクタ本体71の近位端には、連結ポート74が形成してあり、連結ポート74には、フェルール保持部75が連結してある。
図6および
図7に示すように、フェルール保持部75の内部には、挿入用ワイヤ80の中空ワイヤ82の内部に装着してある光ファイバ88の近位端部をケーブル90内の光ファイバ88Aに連結するための一対のフェルール76,77がスリーブ78の内部で突き合わされて配置してある。また、この一対のフェルール76,77およびスリーブ78の外周側には、たとえばステンレス鋼などの金属で構成してあるパイプ78aが被せてあり、このパイプ78aの内部は、光学部品シール用接着剤などのシール材78bで封止されている。なお、フェルール76,77は、異なる光ファイバ88,88Aの端部同士を相互に光信号の伝達可能に接続することを容易にするために用いられるが、必ずしも用いる必要はなく、例えば、光ファイバ88,88Aの端部同士を融着などの手段により直接接続してもよい。
【0053】
図6に示すように、フェルール77の近位端は、栓部材79の遠位端に取り付けてあり、栓部材79の近位端側筒部79aは、ケーブル90内で光ファイバ88Aの周囲に光ファイバ88Aを支持および保護する目的で設けられたアラミド繊維93とかしめリングを用いたかしめ等の手段によって接続され、さらに、その外側から、ケーブル90を構成するチューブ本体91の遠位端91aともかしめリングを用いたかしめ等の手段によって接続される。フェルール保持部75の収容筒部75bの内部には、一対のフェルール76,77およびスリーブ78が内部に封止されたパイプ78aをさらに封止するように、たとえば紫外線硬化型接着剤の硬化物などで構成される充填物75gが充填される。
【0054】
フェルール保持部75の近位端には、その内面の周方向に延在する凸部75fが設けられていて、その凸部75fが存在することにより、栓部材79の近位端側筒部79aとケーブル90との接続部分がフェルール保持部75の近位端側から抜けることが防止されて、フェルール保持部75とケーブル90との接続が確実なものとされている。また、フェルール保持部75の遠位端には、挿入筒部75cと、その外周に位置する外周筒部75dとが形成してあり、これらの間の隙間に、
図5に示す連結ポート74が入り込むことによって、フロントコネクタ本体71とフェルール保持部75とが連結されている。なお、フロントコネクタ本体71とフェルール保持部75との連結は、フェルール保持部75の収容筒部75b内での光ファイバ88,88Aの接続および収容筒部75b内への充填物75gの充填が完了した後に行うことが望ましい。また、フロントコネクタ本体71とフェルール保持部75との連結に、螺合や接着などの手段を用いてもよい。フェルール保持部75の挿入筒部75cおよび収容筒部75bの内部では、一対のフェルール76,77およびスリーブ78が配置されるが、その周囲は、シール材78bおよび充填物75gで満たされているために、分岐ポート73から流入される液体は、挿入筒部75cおよび収容筒部75bの内部に入り込むことはなく、その遠位端側に配置されるフラッシュ用ノズル72aから、
図8に示すハンドル部42のワイヤ挿入口44に吐出されるようになっている。したがって、一対のフェルール76,77を用いて接続された光ファイバ88,88Aの接続部は、ポート接続部72と分岐ポート73との間を流れる液体と接触することがないので、光ファイバ88,88Aは、その液体の影響を受けることなく、確実な接続が確保される。
【0055】
図1に示すように、ケーブル90の両端の外周には、応力緩和部材としてのストレインリリーフ92および94が装着してある。一方のストレインリリーフ92は、フロントコネクタ70のフェルール保持部75の近位端に連結してあり、ケーブル90の遠位端を覆う。他方のストレインリリーフ94は、バックコネクタ100のカバー部材106の遠位端に連結してあり、ケーブル90の近位端を覆う。
【0056】
図5および
図6に示すように、ケーブル90を構成する可撓性チューブ91の内部には、光ファイバ88Aが通してあり、光ファイバ88Aの近位端は、
図11に示すように、バックコネクタ100のカバー部材106により保持してあるバックコネクタ本体104の端フェルール102に連結してある。
【0057】
図10および
図11に示すように、カバー部材106の遠位端側外周には、その他の部分よりも外径が小さくなっている把持部106aが形成してあり、操作者の指で摘みやすくなっている。把持部106aの内部には、ストレインリリーフ94の近位端94aが位置し、カバー部材106の遠位端がストレインリリーフ94の近位端94aの外周に係合して、たとえば嵌合や接着剤などの手段により固定してある。
【0058】
カバー部材106は、たとえば合成樹脂などにより形成され、特に把持部106aでは、操作者が指で摘みやすくするために柔軟性を持たせても良い。カバー部材106の近位端には、バックコネクタ本体104の遠位端104aが固定してある。バックコネクタ本体104の近位端底面(
図10参照)には、一対のスタイレット側電気接続端子110が装着してある。
【0059】
図11に示すように、スタイレット側電気接続端子110は、機器側電気接続端子210に着脱自在に接続可能になっている。機器側電気接続端子210は、バックコネクタ本体104の端フェルール102の近位端102aが着脱自在に連結される受け側フェルール202が固定してある機器側接続部204の基板211に装着してある。
【0060】
機器側接続部204は、たとえば雌型ソケット200として構成される。バックコネクタ本体104の近位端は、雄型ソケットを構成する。そのため、雌型ソケット200にバックコネクタ100のバックコネクタ本体104の近位端を差し込むことで、端フェルール102と受け側フェルール202との光接続が可能になり、同時に、スタイレット側電気接続端子110と機器側電気接続端子210との電気的接続が可能になる。
【0061】
機器側接続部204の内部では、受け側フェルール202に光ファイバ88Bが接続してあり、機器側電気接続端子210に基板211の電気配線が接続してある。機器側接続部204を含む雌型ソケット200は、図示省略してあるIABP駆動装置、または血圧測定表示装置などに組み込まれている。
【0062】
雌型ソケット200の光ファイバ88Bに伝達された光信号は、
図3および
図4に示す光学式圧力センサ84により検出された圧力信号を含む。その光信号は、図示省略してあるIABP駆動装置、または血圧測定表示装置などにより、血圧信号に変換され、血圧データとして、IABP駆動装置の駆動信号に利用される。具体的には、圧力センサで測定された血圧変動データに基づき、心臓の拍動に応じてポンプ装置を制御し、0.4〜2秒の短周期で、
図8に示すバルーン部22を膨張および収縮させるようになっている。あるいは、その血圧データは、リアルタイムで、表示することも可能である。
【0063】
図11に示すように、カバー部材106の近位端側内周には、凹部106bが形成してあり、その凹部106b内に、バックコネクタ本体104の底面部に固定してあるメモリ素子としてのICチップ112を配置してある。ICチップ112は、バックコネクタ本体104の背面を通して、スタイレット側電気接続端子に接続してある。ICチップ112には、たとえば医療用スタイレット60または医療用スタイレット60が連結されるカテーテル(バルーンカテーテル20)に関連するデータなどを記憶することができ、電気接続端子110および210を通して、そのデータを読み取り可能になっている。また、電気接続端子110および210を通して、ICチップ112の内部に保存してあるデータを書き換えることも可能である。
【0064】
ICチップ112に保存することができるデータとしては、特に限定されないが、光学式圧力センサ84の個体差を補償するためのデータ、バルーン部の拡張外径および容量と製品番号に関するデータ、あるいはバルーンカテーテルのタイプなどがある。バルーンカテーテルのタイプとしては、ショートバルーンタイプ、ロングバルーンタイプ、その他の特殊形状タイプなどがある。
【0065】
図示省略してあるIABP駆動装置では、ICチップ112に記憶してあるデータに基づき、駆動装置からバルーンカテーテルに送られる圧力流体の流量調整を自動的に行うこともできる。すなわち、バルーン部の容量が小さい場合には、バルーンカテーテルに送られる圧力流体の流量も小さくなる。
【0066】
また、使用済みのバルーンカテーテルと共に用いられた医療用スタイレット60のICチップ112に書き込まれるデータとしては、特に限定されないが、たとえばバルーンカテーテルを実際に駆動した駆動装置の識別番号などが例示される。その場合には、
図8に示すバルーンカテーテル20および医療用スタイレット60を駆動装置から取り外した後においても、そのバルーンカテーテル20が用いられた駆動装置を容易に特定することができる。
【0067】
そのため、そのICチップ112のデータを読み取り、さらに、そのデータから特定される駆動装置のデータを組み合わせることで、臨床研究やトラブル対応時に、使用されたバルーンカテーテル20の駆動状態を、後で正確に把握することが容易になり、駆動状態の解析に要する時間を短縮することができる。
【0068】
なお、ICチップ112のメモリ容量に余裕があるときには、ICチップ112に書き込まれるデータは、たとえばバルーンカテーテル20を実際に駆動した駆動装置の駆動状態の全てのデータ、あるいはその一部のデータであっても良い。駆動状態に関するデータとしては、たとえば駆動期間中における心電図、血圧、駆動圧などの波形データや、駆動期間中のイベントデータなどである。
【0069】
このようなデータをICチップ112から読み取ることにより、臨床研究やトラブル対応時に、使用されたバルーンカテーテル20の駆動状態を、後で正確に把握することが容易になり、駆動状態の解析に要する時間を短縮することができる。
【0070】
図11に示すように、本実施形態では、カバー部材106がバックコネクタ本体104の遠位端部を囲むように保持することで、操作者は、カバー部材106あるいはストレインリリーフ94を片手で把持して、バックコネクタ本体104の近位端を、雌型ソケット200の機器側接続部204に着脱自在に接続することが容易になる。しかも、バックコネクタ本体104の近位端を、機器側接続部204に接続することのみで、端フェルール102と受け側フェルール202との接続が成されると同時に、スタイレット側接続端子110と機器側接続端子210との接続が成される。
【0071】
図1に示す医療用スタイレット60は、
図8に示すバルーンカテーテル20と共に用いられる。バルーンカテーテル20は、それを体内に導入するためのルーメン31に、図示しないガイドワイヤを通して体内の所定位置に搬送される。
【0072】
その後、ルーメン31からガイドワイヤが取り去られた後に、
図8に示すように、医療用スタイレット60におけるフロントコネクタ70のポート接続部72が、バルーンカテーテル20のハンドル部42の取付ポート52に取り付けられる。その結果、内管30のルーメン31に遠位端ワイヤ81側から挿入用ワイヤ80を挿入することができる。
【0073】
図2および
図3に示すように、遠位端ワイヤ81は、中空ワイヤ82の遠位端部に取り付けられ、中空ワイヤ82とは異なる材質や特性や形状で成形することができ、たとえば柔軟性に優れ、
図8に示すルーメン31の内部を都合良く案内されて目的とする位置に容易に到達することができる。
【0074】
また、医療用スタイレット60の挿入用ワイヤをバルーンカテーテル20のルーメン31に挿入することで、バルーンカテーテル20の剛性が高くなり、バルーンカテーテル20のバルーン部22が血流により押戻されるおそれが減少し、キンク(折れ)も有効に防止できる。
【0075】
さらに、本実施形態では、
図3に示すように、光学式圧力センサ84が、遠位端ワイヤ81の後側に設けられるために、
図8および
図9に示すように、開口部82bの近位端縁部の位置(光学式圧力センサ84の位置と略同じ)を、カテーテル20の遠位端開口23から近位端に向けて所定距離L2で内管30の内側に位置させることができる。その結果、血栓などの影響を受けることなく、光学式圧力センサ84により血圧などを正確に測定することが可能である。
【0076】
そして、本実施形態では、
図8および
図9に示すように、ワイヤ挿通孔としての内管30のルーメン31に医療用スタイレット60の挿入用ワイヤ80を挿入して装着したとき、すなわち、医療用スタイレット60のフロントコネクタ70のポート接続部72がバルーンカテーテル20のハンドル部42における第2内管端部保持具50の取付ポート52に取り付けられたとき、遠位端ワイヤ81の遠位端81a(すなわち、挿入用ワイヤ80の最遠位端)の位置は、バルーンカテーテル20の遠位端開口23より外部に飛び出さないようにされていて、遠位端81aは遠位端開口23より近位端に向けて所定距離L1の位置にある。所定距離L1は、バルーンの駆動などによる振動があっても遠位端81aが遠位端開口23から突出することを防止し、かつ、光学式圧力センサ84によって、より正確な圧力を測定する観点から、好ましくは、30〜250mmである。また、所定距離L2は、好ましくは、31mm以上である。
【0077】
本実施形態では、
図8に示す分岐ポート73から生理食塩水や抗血液凝固薬液などの液体を導入することで、その液体がバルーンカテーテル20のルーメン31内に位置する光学式圧力センサ84の周囲にまで到達し、センサ84の周囲で血栓などが生じることを抑制することができ、血圧などを正確に検出することができる。
【0078】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0079】
たとえば本発明のバルーンカテーテルは、上述した実施形態に限定されない。たとえば上述した実施形態では、外管24と内管30とでカテーテル管を構成してあるが、2つ以上のルーメンが長手方向に沿って形成してある多ルーメンチューブを用いてカテーテル管を構成しても良い。多ルーメンの内の1つが、ワイヤ挿通孔となるルーメンであってもよい。
【0080】
また、コネクタ65としては、その他の構造のコネクタであっても良い。さらに、本発明のバルーンカテーテルは、IABP法に用いられるバルーンカテーテル以外のバルーンカテーテルとして用いても良い。