【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の記載によって限定されるものではない。なお、本実施例及び比較例における「%」は特に断りのない限り「質量%」を示す。
【0027】
実施例及び比較例に使用した高分子凝集剤を表1に示す。表中の数値は各高分子凝集剤中のカチオン性モノマー構造単位、アニオン性モノマー構造単位、ノニオン性モノマー構造単位の含有率を質量%で示したものである。
【0028】
【表1】
AAm:アクリルアミド
DME:ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩
DMC:ジメチルアミノエチルメタアクリレート塩化メチル4級塩
MBAA:メチレンビスアクリルアミド
AA:アクリル酸(塩)
【0029】
(実施例1)
チタン、マグネシウム及びカルシウムを含む塗料系金属含有汚泥に水酸化カルシウムを添加してpH11.8に調整した。調整後の汚泥のTSは、財団法人日本下水道協会編「下水試験方法上巻1997年度版」p116に従い測定したところ、5.38%であった。また、pH調整後の汚泥のチタン含有量はJIS H 1632−1:2014に記載のICP発光分光分析法で測定したところ、0.05質量%であった。前記汚泥300mLを500mLビーカーに取り、両性高分子凝集剤A(水溶液濃度0.3質量%)を25mL(汚泥への添加率250ppm)添加し、スパチュラを用いて200rpmで30秒撹拌してフロックを形成した。目視により平均フロック径を測定することでフロック径とした。50メッシュのナイロン製の濾布でフロックが形成した汚泥を濾過し、濾液の濁度を目視で評価した。濾液の濁度は以下の基準で判断した。
【0030】
−:濾液がほとんど透き通っており、浮遊物はほぼ見られない(SS量目安:50ppm未満)。
+:濾液に一部濁りが見られ、浮遊物がわずかに存在する(SS量目安:50ppm以上100ppm未満)。
++:濾液に部分的に濁りが見られ、浮遊物がところどころ存在する(SS量目安:100ppm以上200ppm未満)。
+++:濾液に多数の濁りが見られ、浮遊物が全体的に存在する(SS量目安:200ppm以上500ppm未満)。
++++:濾液に全体的に多数の濁りが見られ、浮遊物が全体的に存在し、一部粗大な大きさで存在する(SS量目安:500ppm以上1000ppm未満)。
【0031】
濾過後、濾布上に残ったフロックを0.1MPaの圧力で1分間プレス脱水して脱水ケーキを得、脱水ケーキの含水率を測定した。含水率の測定は、財団法人日本下水道協会編「下水試験方法上巻1997年度版」p296〜297に従い測定した。
【0032】
(実施例2)
両性高分子凝集剤Aを両性高分子凝集剤Bに替えたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0033】
(実施例3)
両性高分子凝集剤Aを両性高分子凝集剤Cに替えたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0034】
(実施例4)
水酸化カルシウムによる汚泥のpH調整をpH10.3にしたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0035】
(実施例5)
水酸化カルシウムによる汚泥のpH調整をpH12.5にしたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0036】
(実施例6)
両性高分子凝集剤Aの汚泥への添加率を200ppmにしたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0037】
(実施例7)
両性高分子凝集剤Aの汚泥への添加率を400ppmにしたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0038】
(比較例1)
両性高分子凝集剤Aを両性高分子凝集剤Dに替えたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0039】
(比較例2)
両性高分子凝集剤Aを両性高分子凝集剤Dに替えたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0040】
(比較例3)
水酸化カルシウムによる汚泥のpH調整をpH9.2にしたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0041】
(比較例4)
水酸化カルシウムによる汚泥のpH調整をpH13.8にしたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0042】
(比較例5)
両性高分子凝集剤Aをカチオン性高分子凝集剤Fに替えたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0043】
(比較例6)
両性高分子凝集剤Aをアニオン性高分子凝集剤G(水溶液濃度0.1質量%)を75mL(汚泥への添加率250ppm)添加することに替えた以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0044】
実施例及び比較例における各試験結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
(実施例8)
チタン、マグネシウム及びカルシウムを含む塗料系金属含有汚泥に対し、水酸化カルシウムを添加してpH10.9に調整した。調整後の汚泥のTSは、4.59%であった。また、チタンの含有量はJIS H 1632−1:2014に記載のICP発光分光分析法で測定したところ、0.65質量%であった。前記汚泥300mLを500mLビーカーに取り、両性高分子凝集剤A(水溶液濃度0.3%)を35mL(汚泥への添加率350ppm)添加し、スパチュラを用いて200rpmで30秒撹拌した。フロック径の測定、濾液の濁度の判定、脱水ケーキの作製及び含水率の測定は実施例1と同様に行った。
【0047】
(実施例9)
両性高分子凝集剤Aを両性高分子凝集剤Bに替えたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0048】
(実施例10)
両性高分子凝集剤Aを両性高分子凝集剤Cに替えたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0049】
(実施例11)
水酸化カルシウムによる汚泥のpH調整をpH10.0にしたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0050】
(実施例12)
水酸化カルシウムによる汚泥のpH調整をpH13.0にしたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0051】
(実施例13)
両性高分子凝集剤Aの添加率を200ppmにしたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0052】
(実施例14)
両性高分子凝集剤Aの添加率を450ppmにしたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0053】
(比較例7)
両性高分子凝集剤Aを両性高分子凝集剤Dに替えたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0054】
(比較例8)
両性高分子凝集剤Aを両性高分子凝集剤Eに替えたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0055】
(比較例9)
水酸化カルシウムによる汚泥のpH調整をpH9.5にしたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0056】
(比較例10)
水酸化カルシウムによる汚泥のpH調整をpH14.0にしたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0057】
(比較例11)
両性高分子凝集剤Aをカチオン性高分子凝集剤Fに替えたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0058】
(比較例12)
両性高分子凝集剤Aをアニオン性高分子凝集剤G(水溶液濃度0.1質量%)を117mL(汚泥への添加率350ppm)添加することに替えたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。
【0059】
実施例及び比較例における各試験結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
表2と表3の通り、本発明の処理方法に従えば、実施例1〜7及び実施例8〜14の通り、フロック径は大きくなり、含水率が低下する。これに対し、比較例3、4、9及び10の通りpH調整後の汚泥のpHが10〜13を外れると、フロック径が小さく、含水率が高くなる。
【0062】
また、比較例1、2、7及び8の通り、両性高分子凝集剤中のカチオン性モノマー構造単位が異なると、含水率が低下しなくなる。
カチオン性高分子凝集剤のみあるいはアニオン性高分子凝集剤のみで処理をした場合にもフロックが形成されにくく、含水率が低下しない。