(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
<電子写真感光体>
電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を有する。導電性支持体と感光層の間に下引き層を有していてもよい。前記感光層がポリビニルアセタール樹脂を含有し、前記ポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量が50,000以下であり、アセチル基を3〜6mol%含有する。電子写真感光体としては、電荷発生層(電荷発生材料を含む層)と電荷輸送層(電荷輸送材料を含む層)を含む積層型感光層を有する積層型感光体、あるいは電荷発生材料と電荷輸送材料等を同一の感光層中に含む単層型感光体が挙げられる。単層型の場合には感光層に結着樹脂、電荷発生材料、正孔輸送材料、及び電子輸送材料を同一層内に含有することが好ましい。負帯電用としては、積層型感光体が好ましく、正帯電用としては単層型感光体が好ましい。感光層の膜厚は、感光層の成膜性の観点からは、45μm以下が好ましく、高解像度の観点からは40μm以下がより好ましい。長寿命の観点からは、15μm以上が好ましく、画像安定性の観点からは、20μm以上がより好ましい。
【0026】
[導電性支持体]
導電性支持体について特に制限は無いが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。導電性支持体の形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状などの
ものが用いられる。更には、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性などの制御や欠陥被覆のために、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものを用いても良い。
【0027】
また、導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いても良い。陽極酸化被膜を施した場合には、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。支持体表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法を用いたり、粗面化処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでも良い。また、安価化のためには、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。
【0028】
[下引き層]
導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。下引き層としては、樹脂単独、あるいは、樹脂に金属酸化物等の粒子や有機顔料等を分散したもの等が用いられる。下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1 種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウ
ム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。このように、一種類の粒子のみを用いても良いし複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理が施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
【0029】
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径として1nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましくは、10nm以上50nm以下である。
下引き層は、金属酸化物粒子を結着樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられる結着樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できるが、中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示すので好ましい。
【0030】
また、積層型感光体を構成する電荷発生層に相当する層を単層型感光体の下引き層とすることもできる。この場合は、フタロシアニン顔料、アゾ顔料やペリレン顔料を結着樹脂中に分散して塗布したもの等が好適に用いられる。この場合、接着性や電気特性が優れる。結着樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂類が好ましく用いられ、電気特性の観点から、ポリビニルブチラール樹脂が特に好ましい。
【0031】
結着樹脂に対する粒子や顔料等の分散剤の添加比は任意に選べるが、10質量%以上、500質量% 以下の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性から0.1μmから25μmが好ましい。また下引き層には、公知の酸化防止剤等を添加しても良い。下引き層として、構成の異なる層をいくつか設けることも可能である。
【0032】
[ポリビニルアセタール樹脂]
ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマー
ル樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられるが、分散性の観点から、下記構造式で表される構造単位を含むことが好ましい。
【0034】
Rは、水素原子、アルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の直鎖のアルキル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、イソブチル基等の分岐のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等の環状アルキル基、クロロメチル基、フッ化メチル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。機械的特性と感光層形成用塗布液に対する溶解性を勘案すれば、アルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜4が更に好ましい。この中でも合成の観点から、直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。置換基を有していてもよいアリール基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0035】
ポリビニルアセタール樹脂は、アセチル基を3〜10mol%含有する。アセチル基の含有量は、感光層の成膜性、電気特性の観点から、8mol%以下が好ましく、フタロシアニンの分散性、塗布液の保存安定性の観点から、3.5mol%以上が好ましい。アセチル基を適正量含有することにより、アセチル基が電荷発生材料と相互作用して電荷発生材料同士の凝集を抑制していると考えられる。例えば、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、1H−NMR測定により組成解析を行うことにより、アセチル基含有量を測定できる。
【0036】
ポリビニルアセタール樹脂は、フタロシアニンの分散性を考慮して、水酸基を含有することが好ましい。水酸基の含有量は、50mol%以下が好ましく、40mol%以下がより好ましく、30mol%以下がさらに好ましい。例えば、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、1H−NMR測定により組成解析を行うことにより、水酸基含有量を測定できる。
【0037】
ポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量は、50,000以下であり、結着樹脂との相溶性の観点から、30,000以下が好ましい。結晶安定性や分散性の観点から、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、7,000以上が更に好ましい。例えば、テトラヒドロフランに溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー法[GPC法]で測定することにより数平均分子量を測定できる。
【0038】
前記ポリビニルアセタール樹脂と感光層に用いる結着樹脂との配合割合は、前記結着樹脂100質量部に対して、電荷発生材料の結晶安定性や分散性の観点から0.1質量部以上含有することが好ましく、0.5質量部以上含有することがより好ましく、1.0質量部以上サンユウすることが更に好ましい。一方、結着樹脂とポリビニルアセタール樹脂との相溶性の観点から、前記結着樹脂100質量部に対して、前記ポリビニルアセタール樹
脂を30質量部以下含有することが好ましく、20質量部以下含有することがより好ましく、10質量部以下含有することが更に好ましい。
【0039】
[結着樹脂]
結着樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、およびその共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリエステルポリカーボネート、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂などが挙げられる。これら樹脂の中でも感光体としての光減衰特性、機械強度の面から、ポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂が好ましい。具体的な構造としては、電気特性、分散性の観点から、下記式(P)で表される単位構造を有する樹脂が用いられることが好ましい。
【0041】
(式(P)中、Xは単結合、又は連結基を示し、Y
1〜Y
8は各々独立に水素原子、又はアルキル基を示す。)
式(P)中、Xは単結合又は以下の構造で表される基であることが好ましい。「単結合」とは、「X」なる原子がなく、式(P)中の左右2つのベンゼン環を、単に単結合で結合した状態をいう。
【0042】
前記構造中、Ra及びRbは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基を示し、Ra及びRbは互いに結合して炭素数5〜12の環状アルキル構造を形成しても良い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、エチルヘキシル基、ターシャリーブチル基等の分岐状アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられる。この中でも、電気特性の観点から、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、トリル基、アニシル基等が挙げられる。Y
1〜Y
8のアルキル基としては、Ra及びRbとして挙げたものが適用できる。
【0043】
前記結着樹脂に好適な繰り返し構造単位の具体例を以下に示す。これら具体例は例示のために示したものであり、本発明の趣旨に反しない限りはいかなる公知の結着樹脂を混合して用いてもよい。
【0045】
結着樹脂の粘度平均分子量は、機械的強度の観点から、通常20,000以上、好ましくは30,000以上、より好ましくは40,000以上、更に好ましくは50,000以上、また、感光層形成のための塗布液作成の観点から、通常150,000以下、好ましくは120,000以下、より好ましくは100,000以下である。
【0046】
[電荷発生材料]
電荷発生物質としては、例えば、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料;フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料などの有機顔料;などの各種光導電材料が使用できる。特に有機顔料が好ましく、更にはフタロシアニン顔料及びアゾ顔料が特に好ましい。なお、電荷発生物質は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0047】
この中でも、電気特性の観点から、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に最大回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンを用いることが好ましい。置換基を有するチタニルフタロシアニンなどの、各種チタニルフタロシアニン誘導体を含有する組成物であってもよい。該オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°〜9.7°に、明瞭な回折ピークを有することが好ましく、電子写真感光体特性に面から、9.6°、24.1°、27.2°、又は9.5°、9.7°、24.1°、27.2°に主たる回折ピークを有することが好ましく、分散時の安定性の面からは26.2°付近にはピークを有さないことが好ましい。上述したオキシチタニウムフタロシアニンのなかでも、7.3°、9.6°、11.6°、14.2°、18.0°、24.1°及び27.2°、又は7.3°、9.5°、9.7°、11.6°、14.2°、18.0°、24.2°及び27.2°に主たる回折ピークを有することがより好ましい。
【0048】
これらの結晶型は主として、アモルファス、又は低結晶性オキシチタニウムフタロシア
ニンから結晶変換することによって製造される。これらの結晶型は準安定型の結晶型であり、製造方法の違いにより様々な結晶型、粒子形状を示し、電荷発生能力、帯電性、暗減衰などの電子写真感光体としての特性も製造方法に依存していることが知られている。
結晶変換に用いることが出来る溶媒としては、水と相溶性のある溶媒、水と非相溶の溶媒のいずれでも可能である。水と相溶性のある溶媒の好適な例としてはテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテルが挙げられる。また、水と非相溶の溶媒の好適な例としては、トルエン、ナフタレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロトルエン、o−ジクロロトルエン、ジクロロフルオロベンゼン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、ニトロベンゼン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、アセトフェノン等の置換芳香族系溶媒が挙げられ、中でも環状エーテル、クロロトルエン、ハロゲン化炭化水素溶媒、芳香族炭化水素系溶媒が得られた結晶の電子写真特性が良好でありこの好ましく、テトラヒドロフラン、o−ジクロロベンゼン、1,2−ジクロロトルエン、ジクロロフルオロベンゼン、トルエン、ナフタレンが、得られた結晶の分散時の安定性という点でより好ましい。結晶変換後得られた結晶は、乾燥工程を行なうことになるが、乾燥方法は送風乾燥、加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の公知の方法で乾燥することが可能である。
【0049】
結着樹脂と前記オキシチタニウムフタロシアニンとの配合比(質量)は、電荷発生効率の観点から、感光層中の結着樹脂100質量部に対して前記オキシチタニウムフタロシアニンが通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、また、分散性の観点から、通常20質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下の範囲である。前記オキシチタニウムフタロシアニンの粒子径は、通常1μm以下であり、分散性の観点から好ましくは0.5μm以下で使用される。
【0050】
[正孔輸送材料]
正孔輸送材料としては、電荷発生材料としてD型チタニルフタロシアニンを用いた場合に低残留電位を達成する観点から、正孔輸送材料のB3LYP/6−31G(d,p)を用いた構造最適化計算によるHOMOのエネルギーレベルE_homoは、E_homo>−4.67(eV)が好ましく、E_homo>−4.63(eV)がより好ましい。HOMOのエネルギーレベルが高いほど、露光後電位が低く優れた電子写真感光体が得られるためである。一方、E_homoが高すぎると、耐ガス性の低下、ゴーストの発生等の不具合が出るため、通常E_homo<−4.20(eV)であり、E_homo<−4.30(eV)が好ましい。B3LYP/6−31G(d,p)を用いた構造最適化計算
後に得られた安定構造におけるHF/6−31G(d,p)計算による分極率αの計算値
αcalは、αcal>80(Å
3)であることが好ましい。αcalの値が大きい電荷輸送物質を含む電荷輸送膜は高い電荷移動度を示し、該電荷輸送膜を用いることにより、帯電性、感度などに優れた電子写真感光体が得られるからである。一方、αcalが大きすぎると電荷輸送物質の溶解性が低下することから、通常αcal<200(Å
3)であり、αcal<150(Å
3)であることが好ましい。
【0051】
正孔輸送材料の構造としては例えば、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖、もしくは側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。正孔輸送材料として好適な構造の一般式の例を以下に示す。
【0055】
前記正孔輸送材料の中でも、残留電位の観点から、HTM34、35、36、37、39、40、41、42、43、44構造の化合物が好ましい。
感光層を構成する結着樹脂と前記正孔輸送材料との配合割合は任意であるが、通常は結着樹脂100質量部に対して正孔輸送材料を20質量部以上の比率で配合する。中でも、残留電位低減の観点からは、結着樹脂100質量部に対して正孔輸送材料を30質量部以上の割合で配合することが好ましく、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点からは、正孔輸送材料を40質量部以上の割合で配合することがより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点からは、結着樹脂100質量部に対して正孔輸送材料を200質量部以下の割合で配合することが好ましく、正孔輸送材料と結着樹脂との相溶性の観点からは、正孔輸送材料を150質量部以下の割合で配合することがより好ましい。
【0056】
[電子輸送材料]
感光層には電子輸送材料として下記式(1)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0058】
(式(1)中、R
1〜R
4はそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基表
し、R
1とR
2同士、またはR
3とR
4同士は互いに結合して環状構造を形成してもよい。Xは分子量120以上250以下の有機残基を表す。)
R
1〜R
4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基を表す。置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、ヘキシル基等の直鎖アルキル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、tert−アミル基等の分岐アルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等の環状アルキル基が挙げられる。これらの中でも原料の汎用性の面から炭素数1〜15のアルキル基が好ましく、製造時の取り扱い性からは、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜5のアルキル基が更に好ましい。また、電子輸送能力の面から直鎖アルキル基、分岐アルキル基が好ましく、中でもメチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基がより好ましく、塗布液に用いる有機溶剤への溶解性の面から、tert−ブチル基、tert−アミル基が更に好ましい。
【0059】
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基の例としては、エテニル基等の直鎖アルケニル基、2−メチル−1−プロペニル基等の分岐アルケニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基等が挙げられる。これらの中でも、感光体の光減衰特性の面から、炭素数1〜10の直鎖アルケニル基が好ましい。
前記置換基R
1〜R
4は、R
1とR
2同士、またはR
3とR
4同士は互いに結合して環状構造を形成してもよい。電子移動度の観点から、R
1とR
2が共にアルケニル基である場合、お互いに結合して芳香環を形成することが好ましく、R
1とR
2が共にエテニル基で、お互いに結合し、ベンゼン環構造を有することがより好ましい。
【0060】
前記式(1)中、Xは分子量120以上250以下の有機残基を表し、感光体の光減衰特性の観点から、Xが下記式(2)〜(5)で表されるいずれかの有機残基であることが好ましい。
【0062】
(式(2)中、R
5〜R
7はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0064】
式(3)中、R
8〜R
11はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0066】
(式(4)中、R
12は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子を表す。)
【0068】
(式(5)中、R
13及びR
14はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素原子6〜12のアリール基を表す。)
R
5〜R
14における、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ヘキシル基等の直鎖アルキル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、tert−アミル基等の分岐アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられる。電子輸送能力の面から、メチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基がより好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、電子輸送能力の面から、塩素が好ましい。炭素原子6〜12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、等が挙げられ、感光層の膜物性の観点から、フェニル基、ナフチル基好ましく、より好ましくはフェニル基である。Xは、前記式(2)〜(5)の中でも、繰り返し画像形成した際の画質安定性の観点から、式(2)又は式(3)であることが好ましく、式(3)であることがより好ましい。
【0069】
また、式(1)で表される化合物を単独で用いてもよいし、構造の異なる式(1)で表される化合物を併用してもよく、その他の電子輸送材料と併用することもできる。
以下に本発明に好適な電子輸送材料の構造を例示する。以下の構造は本発明をより具体的にするために例示するものであり、本発明の概念を逸脱しない限りは以下の構造に限定されるものではない。
【0071】
感光層中の結着樹脂と電子輸送材料との割合は、結着樹脂100質量部に対して、電子輸送材料を通常5質量部以上で使用する。残留電位低減の観点から10質量部以上が好ましく、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から20質量部以上がより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点から、電荷輸送材料を通常100質量部以下で使用する。電子輸送材料と結着樹脂との相溶性の観点から、80質量部以下が好ましく、より好ましくは60質量部以下であり、更に好ましくは50質量部以下である。
【0072】
感光層を構成する結着樹脂と上記電荷輸送材料(電子輸送材料及び/ 又は正孔輸送材
料)との配合割合は任意であるが、通常は結着樹脂100質量部に対して電荷輸送材料を20質量部以上の比率で配合する。中でも、残留電位低減の観点からは、結着樹脂100質量部に対して電荷輸送材料を30質量部以上の割合で配合することが好ましく、更に繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点からは、電荷輸送材料を40質量部以上の割合で配合することがより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点からは、結着樹脂100質量部に対して電荷輸送材料を200質量部以下の割合で配合することが好ましく、更に電荷輸送材料と結着樹脂との相溶性の観点からは、電荷輸送材料を150質量部以下の割合で配合することがより好ましく、更に好ましくは125質量部以下、特に好ましくは100質量部以下である。なお、複数の電荷輸送材料を用いる場合は、それらの電荷輸送材料の合計が上記範囲内になるようにする。
【0073】
[その他の添加物]
感光層又を構成する各層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させる目的で、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤、ターフェニル、ベンジルナフチルエーテル等の可塑剤、紫外線吸収剤、シアノ化合物等の電子吸引性化合物、シリコーンオイル等のレベリング剤、アゾ化合物等の可視光遮光剤等の添加物を含有させても良い。また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂等からなる粒子や、フィラーを含有させることができる。
【0074】
この中でも、フィラーを含有することにより、電荷発生材料の分散を良好に保つことができる。フィラーとしては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化インジウムのような金属酸化物粒子が挙げられ、これらの中でも、電子写真感光体の感光層とした時の電気特性の観点から、シリカ又はアルミナであることが好ましく、分散性の観点から、シリカであることが好ましい。フィラーの平均一次粒子径は、通常0.001μm以上であり、凝集抑制の観点からの観点から、0.003μm以上が好ましく、0.005μm以上がより好ましい。また、通常1μm以下、塗布液安定性の観点から、0.5μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましい。
【0075】
フィラーの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、通常0.5質量部以上であり、分散安定性の観点から、1.0質量部以上であることが好ましい。一方、電気特性の観点から、通常15質量部以下であり、10質量部以下が好ましい。
シリカとしては、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコン等の有機物による処理を施されていても良い。表面処理を施す場合、シラン処理剤、シランカップリング剤で処理を施すことが好ましく、その中でもシラン処理剤での処理が好ましい。シラン処理剤、シランカップリング剤の例[シラン処理剤]としては、ジメチルシリル[ジメチルジクロロシラン]、トリメチルシリル[ヘキサメチルジシラザン]、ジメチルポリシロキ
サン[反応性ジメチルシリコーンオイル]、ジメチルシロキサン、アルキリシリル、メタ
クリルシリル、アルキルシリル、ビニルシラン、スチリルシラン、エポキシシラン、アクリルシラン、イソシアヌレートシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシア
ネートシラン等が挙げられる。
【0076】
シリカの平均一次粒子径[d]は、BET法により測定した比表面積、及び粒子を構成
する物質の密度(真比重)を用い、下記式(I)に従い算出する。
d=6/ρs[ρ:密度(真比重) s:BET法により比表面積]・・・(I)
例えばBET法により測定された比表面積が110m
2/gであるシリカ粒子の場合、シリカの構成成分である二酸化珪素の真比重=2.2g/cm
3を用いて計算し、平均一次粒子径は24.8nmとなる。前記計算式により算出された粒子の平均一次粒子径は通常200nm以下であるが、感光層形成時の塗布性の観点から、好ましくは100nm以下であり、電子写真感光体の光減衰特性の観点から、より好ましくは50nm以下であり、更に好ましくは40nm以下である。また、通常1nm以上であるが、凝集抑制の観点から、好ましくは3nm以上であり、電子写真感光体の光減衰特性の観点から、より好ましくは5nm以上である。
【0077】
<各層の形成方法>
感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を、導電性支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。
【0078】
塗布液の作製に用いられる溶媒又は分散媒に特に制限は無いが、分散性の観点から有機溶媒が好ましい。具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。また、これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の組み合わせ及び種類で併用してもよい。分散性、保存性の観点からテトラヒドロフランを含有することが好ましい。その場合のテトラヒドロフランの含有量は、溶媒全体100質量部に対して通常10質量部以上であり、分散性の観点から30質量部以上、70質量部以上である。塗布性の観点からは、90質量部以下が好ましい。
【0079】
溶媒又は分散媒の使用量は特に制限されないが、各層の目的や選択した溶媒・分散媒の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が所望の範囲となるように適宜調整するのが好ましい。
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行っても良い。
【0080】
<画像形成装置、カートリッジ>
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す
図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
【0081】
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、
図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。オゾン発生が低減できることから、帯電装置2は正に帯電させる装置であることが好ましい。
【0082】
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行うことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行うことで電子写真感光体の除電を行う工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。小型化、省エネの観点から除電工程を有さないことが好ましい。
【0083】
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行うことができる構成としたり、オフセット印刷を行う構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真 感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を示して本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下に示した実施例に限定されるものではなく任意に変形して実施することができる。また、以下の実施例、及び比較例中の「部」の記載は、特に指定しない限り「質量部」を示す。
【0085】
<結着樹脂の粘度平均分子量の測定方法>
まず、結着樹脂の粘度平均分子量の測定方法について説明する。測定対象である結着樹脂をジクロロメタンに溶解し、濃度Cが6.00g/Lの溶液を調製する。溶媒(ジクロロメタン)の流下時間t0が136.16秒のウベローデ型毛細管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間tを測定する。以下の式に従って粘度平均分子量Mvを算出する。
【0086】
a=0.438×ηsp+1 ηsp=(t/t0)−1
b=100×ηsp/C C=6.00
η=b/a
Mv=3207×η1.205
【0087】
<電子写真感光体の作成>
[実施例1]
CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が9.6°、24.1°、27.2゜に強い回折ピークを有する
図2に示すオキシチタニウムフタロシアニン(以下CGM−1とする)10質量部を1,2−ジメトキシエタン150質量部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行ない顔料分散液を作製した。こうして得られた160質量部の顔料分散液を、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名#6000C)の5質量%1,2−ジメトキシエタン溶液100質量部と適量の1,2−ジメトキシエタンに加え、最終的に固形分濃度4.0質量%の下引き用分散液を作製した。
【0088】
この下引き用分散液に表面が切削された外径30mm、長さ244mm、肉厚0.75mmのアルミニウム合金よりなるシリンダーを浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように下引き層を形成した。
次に、前記オキシチタニウムフタロシアニン(CGM−1)をトルエンと共にサンドグラインドミルにより分散し、固形分濃度3.5質量%の分散液を得た。次にシリカ粒子[日本アエロジル(株)製 商品名:AEROSIL R972 一次粒子径=16nm 比表面積=110m2/g]をテトラヒドロフランと共に分散し、固形分濃度4.0質量%の分散液を得た。次に、下記物性を有するポリビニルアセタールAをテトラヒドロフランに溶解し、固形分濃度10質量%溶解液を得た。
【0089】
一方、以下構造式(HTM−1)で示される正孔輸送材料と、以下構造式(ETM−1)で示される電子輸送材料、以下構造式(P−1)で示されるポリカーボネート樹脂[粘度平均分子量:Mv=39,600]をテトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒に溶解し、レベリング剤として結着樹脂100質量部に対して、0.05質量部を加え、この溶液に前記オキシチタニウムフタロシアニン分散液、シリカ粒子分散液、及びポリビニルアセタール溶解液をホモジナイザーにより均一になるように混合し、固形分濃度24%[テトラヒドロフラン/トルエン=8/2(質量比)]の単層型感光層用塗布液を調整した。このように調製した単層型感光層用塗布液を、上述の下引き層上に、乾燥後の膜厚が30μmになるように塗布し、単層型の電子写真感光体A[経変前]を得た。各材料の組成比は表−1に示す。
【0090】
また得られた単層型感光層用塗布液を、塗布液中の溶媒が揮発しないように密閉容器に入れ、温度55℃、相対湿度10%の条件下96時間保管し、単層型感光層用塗布液の経変処理を行った。そして得られた経変後の塗布液を用い、経変前の感光体作成した時と同じ操作を行うことにより、膜厚30μmの感光層を有する単層型電子写真感光体A[経変後]を得た。
【0091】
ポリビニルアセタールA
数平均分子量:11,200
アセチル基:4.8mol%
アセタール化度:72.3mol%
水酸基:22.9mol%
【0092】
【化18】
【0093】
[実施例2、3]
実施例1で用いた材料に以下構造式(AD−1)で示される化合物を追加で使用した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの単層型感光体を得た。
【0094】
【化19】
【0095】
[実施例4]
実施例1で用いた材料のうちシリカ粒子を用いなかった以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの単層型感光体Dを得た。
[実施例5]
実施例1で用いたシリカ粒子を異なるシリカ粒子[日本アエロジル(株)製 商品名:AEROSIL RY200 一次粒子径=16nm 比表面積=100m
2/g]に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの単層型感光体Eを得た。
【0096】
[実施例6]
実施例1で用いたシリカ粒子を異なるシリカ粒子[日本アエロジル(株)製 商品名:
AEROSIL RX300 一次粒子径=7nm 比表面積=210m
2/g]に変更した以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの単層型感光体Fを得た。
【0097】
[実施例7]
実施例3で用いた正孔輸送材料を以下構造式(HTM−2)で示される正孔輸送材料変更した以外は、実施例3と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの単層型感光体Gを得た。
【0098】
【化20】
【0099】
[実施例8]
実施例3で用いた正孔輸送材料を以下構造式(HTM−3)で示される正孔輸送材料変更した以外は、実施例3と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの単層型感光体Hを得た。
【0100】
【化21】
【0101】
[実施例9]
実施例3で用いた正孔輸送材料を以下構造式(HTM−4)で示される正孔輸送材料変更した以外は、実施例3と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの単層型感光体Iを得た。
【0102】
【化22】
【0103】
[実施例10]
実施例3で用いた正孔輸送材料を以下構造式(HTM−5)で示される正孔輸送材料変更した以外は、実施例3と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの単層型感光体Jを得た。
【0104】
【化23】
【0105】
[実施例11]
実施例8で用いた結着樹脂を以下構造式(P−2)で示されるポリカーボネート樹脂[粘度平均分子量:Mv=40,200 o/p=84.3/15.7(mol比)]に変更した以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの単層型感光体Kを得た。
【0106】
【化24】
【0107】
[実施例12]
実施例8で用いた結着樹脂を以下構造式(P−3)で示されるポリカーボネート樹脂[粘度平均分子量:Mv=40,700 q/r=49/51(mol比)]に変更した以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの単層型感光体Lを得た。
【0108】
【化25】
【0109】
[実施例13]
実施例11で用いた電子輸送材料を前記式(ETM−1)と以下構造式(ETM−2)を有するに電子輸送材料を混合使用することに変更した以外は、実施例11と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの単層型感光体Mを得た。
【0110】
【化26】
【0111】
[実施例14]
実施例11で用いたポリビニルアセタール樹脂を以下物性のポリビニルアセタールBに変更した以外は、実施例11と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの単層型感光体Nを得た。
ポリビニルアセタールB
数平均分子量:10,800
アセチル基:5.6mol%
アセタール化度:69.8mol%
水酸基:24.6mol%
【0112】
[実施例15]
実施例11で用いたポリビニルアセタールを以下物性のポリビニルアセタールCに変更した以外は、実施例11と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの単層型感光体Oを得た。
【0113】
ポリビニルアセタールC
数平均分子量:12,400
アセチル基:4.2mol%
アセタール化度:73.7mol%
水酸基:22.1mol%
【0114】
[比較例1]
実施例1で用いたポリビニルアセタールを以下物性のポリビニルアセタールRAに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で正帯電単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの正帯電単層型感光体RAを得た。
【0115】
ポリビニルアセタールRA
数平均分子量:20,400
アセチル基:0.6mol%
アセタール化度:74.3mol%
水酸基:25.1mol%
【0116】
[比較例2]
実施例1で用いたポリビニルアセタールを以下物性のポリビニルアセタールRBに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で正帯電単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの正帯電単層型感光体RBを得た。
【0117】
ポリビニルアセタールRB
数平均分子量:120,300
アセチル基:0.7mol%
アセタール化度:65.1mol%
水酸基:34.2mol%
【0118】
[比較例3]
比較例1で用いたシリカ粒子を用いず、前記構造式(AD−1)で示される化合物を追加で使用した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で正帯電単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの正帯電単層型感光体RCを得た。
【0119】
[比較例4]
比較例1で用いたシリカ粒子を用いない以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で正帯電単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの正帯電単層型感光体RDを得た。
【0120】
[比較例5]
実施例1で用いた材料に前記構造式(AD−1)有する化合物を追加で使用した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、表−1に記載の組成比で正帯電単層型感光層用塗布液を調整し、膜厚30μmの正帯電単層型感光体REを得た。
【0121】
<電気特性試験>
電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(電子写真学会編、「続電子写真技術の基礎と応用」、コロナ社1996年発行、404頁〜405頁) を使
用し、上記感光体ドラムを一定回転数100rpmで回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行なった。
【0122】
その際、温度25℃、湿度50%の条件下、感光体の初期表面電位が+700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを露光し、表面電位が+350Vとなる時の照射エネルギー(半減露光エネルギー)を半減露光量E1/2として測定した(単位:μJ/cm
2)。そして、各実施例の調液直後の塗布液を用いた作成した感光体と、経変処理[温度55℃ 相対湿度10% 96時間保管]を施した後の塗布液を用いて作成した感光体を測定することにより得られるそれぞれの半減露光量E1/2の値を用い、下記式(X)で計算することにより、塗布液の経時変化に対する耐久性の評価を行い、その結果を表−2に示した。
【0123】
半減露光量変化率(%)
=([E1/2(経変後)]/[E1/2(経変前)]−1)*100
・・・・・式(X)
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】