(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3の工程において、前記発光素子上の前記蛍光体層の上面よりも、前記発光素子間の前記蛍光体層の上面が低い前記蛍光体層を形成する請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
前記第3の工程において、前記蛍光体含有組成物として、蛍光体及び樹脂を、質量比で2〜40:5〜20で含み、さらに溶剤を含有する蛍光体含有組成物を用いる請求項1〜12のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の実施形態1に係る第1の工程を示す側面図である。
【
図2A】本発明の実施形態1に係る第2の工程を示す側面図である。
【
図3A】本発明の実施形態1に係る第3の工程を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る第3の工程を示す側面図である。
【
図5A】本発明の実施形態1に係る第4の工程を示す側面図である。
【
図5B】本発明の実施形態1に係る第4の工程を示す側面図である。
【
図6】本発明の実施形態2について示す側面図である。
【
図7A】本発明の実施形態3に係る発光装置の製造方法について示す側面図である。
【
図7B】本発明の実施形態3に係る発光装置の製造方法について示す部分拡大図である。
【
図8】本発明の実施形態3に係る発光装置の製造方法の変形例について示す側面図である。
【
図9A】本発明の実施形態3に係る発光装置の製造方法の変形例について示す側面図である。
【
図9B】本発明の実施形態3に係る発光装置の製造方法の変形例について示す側面図である。
【0009】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する発光装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限りは以下のものに限定しない。特に、構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。また、一実施形態、実施例において説明する内容は、他の実施形態、実施例にも適用可能である。
【0010】
<実施形態1>
(第1の工程)
図1は、本発明の実施形態1に係る第1の工程を示す側面図である。
図1Bは、
図1Aの平面図である。第1の工程では、まず、複数の発光素子11を配置するための基材10を準備する。
基材10は、複数の発光素子11を配置し得るものであれば、材料、厚み、大きさ、形状等は特に限定されない。基材10は、可撓性であることが特に好ましい。これにより、後述のように基材10を湾曲させやすいため、蛍光体層が形成された発光素子(発光装置)を容易に個片化することができる。なお、以降、複数の発光素子に蛍光体層が形成された状態の個片化前のものを、蛍光体層が形成された発光素子(発光装置)と記載し、それぞれ個片化されたものを、発光装置と記載することがある。また、基材10は、発光素子11が配置される面側に、発光素子11を固定し得る粘着性を有していることが好ましい。基材10が粘着性を有さない場合は、発光素子11を仮固定するために基材10上に接着剤を配置してもよい。例えば、接着剤としてアクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤を上面に塗布した基材10を用いることができる。
【0011】
また、基材10上に配置するための複数の発光素子11を準備する。発光素子11の大きさ、形状、高さは特に限定されないが、すべて同じ大きさ、形状、高さであると好ましく、特に平面視で矩形状であると好ましい。発光素子11は、同一面上に正負の電極を有する構造である場合には、電極を有する面を基材10側に配置することにより、電極上に蛍光体層が形成されることを防ぐことができ好ましい。
【0012】
次に、基材10上に複数の発光素子11を配置する。複数の発光素子11は、全て略同じ間隔(第1の間隔とする)を空けて配置する。第1の間隔は特に限定されないが、所望の蛍光体層の側面の厚みや蛍光体層の切り代を考慮して設定することが好ましい。例えば、第1の間隔は、量産性を向上させる観点から、約20μm〜2000μm程度、特に約50μm〜1000μm程度であると好ましい。なお、複数の発光素子11が全て略同じ間隔で配置されることが好ましいが、例えば、約10〜100μm程度の間隔の差があってもよい。
また、前述のように、同一面上に正負の電極を有する発光素子11を用いる場合は、電極を有する面を基材10側に配置することが好ましい。これにより、発光素子11の主な光出射面上に蛍光体層を形成しやすい。なお、これに限らず、対向する面上に正負の電極をそれぞれ有する発光素子を用いてもよいし、電極を有する面と反対側の面を基材側に配置してもよい。
【0013】
複数の発光素子11を基材10上に配置する方法としては、チップソーター、チップマウンター、ダイボンド装置又はこれらに類する装置を用い、発光素子11を1つずつ基材10上に配置する方法、別の基材に第1の間隔で配置された複数の発光素子11を基材10上に一括に転写する方法等、適宜選択することができる。複数の発光素子を基材上に一括に転写する方法では、基材が発光素子を固定する力が、別の基材が発光素子を固定する力よりも大きいことが好ましい。
【0014】
(第2の工程)
図2Aは、本発明の実施形態1に係る第2の工程を示す側面図である。
図2Bは、
図2Aの平面図である。実施形態1の第2の工程では、第1の工程で基材10上に配置された複数の発光素子11のうち、最も外側に配置される発光素子の外側に、第1の間隔をあけてマスク12を配置する。マスク12は、基材10の上面と接するように配置する。なお、最も外側に配置される発光素子とは、第1の工程で配置された複数の発光素子11のうち、他の発光素子によって囲まれていない側面を有する発光素子のことである。
【0015】
従来、量産性の観点から、基材等の上面に複数の発光素子を比較的密度が高くなるように配置し、スプレー法で蛍光体層を形成する際、最も外側に配置される発光素子の、他の発光素子に囲まれない側面上に形成される蛍光体層が、他の側面上に形成される蛍光体層に比べて厚く形成されるという問題があった。これは、他の発光素子に囲まれない側面には、スプレー噴霧される蛍光体含有組成物が付着しやすいが、比較的近い位置で対向する発光素子の側面どうしの間には、蛍光体含有組成物が入り込みにくいことによる。しかし、最も外側に配置される発光素子の外側に、第1の間隔をあけてマスクを配置し、側面の外側に他の発光素子が配置されるのと似た状態をつくることで、基材上の複数の発光素子の全側面に、略均一な厚みの蛍光体層を形成することができる。これにより、配光ムラや色ムラの少ない発光装置を提供することができる。なお、本発明において均一な厚みとは、僅かな厚みの差があってもよく、基準となる蛍光体層の厚みに対して90%〜110%程度の厚みであれば、均一な厚みとする。具体的には、蛍光体層の厚みの差が、例えば30μm以下であれば、均一な厚みとする。
【0016】
最も外側に配置される発光素子11と対向するマスク12の側面は、発光素子11の側面と略同じ形状及び角度で配置されると好ましい。すなわち、発光素子11の側面がテーパー形状である場合は、マスク12の側面も同様のテーパー形状とし、基材10の上面側において発光素子11から第1の間隔を空けて配置されることが好ましい。
【0017】
マスク12の幅は、発光素子11と略同じ幅であると好ましい。また、マスク12は、発光素子11と略同じ高さであることが好ましい。これにより、最も外側に配置される各発光素子の、他の発光素子に囲まれない側面を、他の発光素子で囲まれた発光素子の側面と略同じ状態にすることができる。すなわち、均一な厚みの蛍光体層をより高い精度で形成することが可能となる。
【0018】
マスク12は複数の発光素子11を一体的に取り囲む1つの開口を有する枠状であってもよいし、
図2Cに示されるように、複数のマスク22を組み合わせることで、複数の発光素子11を一体的に取り囲む枠状のマスクのように配置してもよい。これにより、最も外側に配置される発光素子の配置が異なる場合でも、マスクの形状を自在に変更することができる。
【0019】
(第3の工程)
図3Aは、本発明の実施形態1に係る第3の工程を示す側面図である。
図3Bは、
図3Aの平面図である。
図4は、本発明の実施形態1に係る第3の工程を示す側面図である。実施形態1の第3の工程では、発光素子11及びマスク12に蛍光体含有組成物をスプレーし、発光素子11の表面を被覆する蛍光体層13を形成する。蛍光体層13は、発光素子11からの出射光を所望の波長に変換するための部材であり、発光素子上にスプレー噴霧した蛍光体含有組成物を硬化することで形成される。ここで、発光素子11の表面とは、主に発光素子11の上面及び側面を意味する。なお、蛍光体層13は、発光素子11の上面及び側面の一部被覆していなくてもよいし、発光素子11の上面及び側面以外(例えば、発光素子11の下面)を被覆していてもよい。
【0020】
蛍光体含有組成物は、蛍光体、樹脂を含み、スプレー法を用いるために、さらに溶剤を含むものが好ましい。蛍光体含有組成物には、充填剤、光拡散剤、着色剤等が含有されていてもよい。
【0021】
発光素子の側面の蛍光体層13の厚みは、上述の第1の間隔の1/2程度未満であることが好ましい。具体的には、第1の間隔を約800〜1000μm程度とする場合、約400μm程度以下とすることが好ましく、約200μm程度以下、約100μm程度以下がより好ましい。このような厚みとすることで、蛍光体層13を、発光素子11上から発光素子11間における凹凸(より詳細には、発光素子11の上面、側面、発光素子11間の基材10上からなる凹凸)に追従して均一な厚みで形成することができる。すなわち、蛍光体層13は、発光素子11の上面に形成される蛍光体層13の上面よりも、発光素子11間の基材10上に形成される蛍光体層13の上面が低くなるように形成される。また、後述する第4の工程において、蛍光体層13を切断しやすく、蛍光体層が13形成された発光素子(発光装置)を個片化しやすい。
【0022】
このような厚みの蛍光体層13を形成するには、スプレー法によるスプレー噴霧を均一に繰り返し、所望の厚みが得られるまで蛍光体含有組成物を積層することが好ましい。なお、蛍光体含有組成物を1〜数回程度スプレー塗布した後、仮硬化することが好ましい。仮硬化とは、蛍光体含有組成物に含まれる樹脂が完全に架橋反応を起こす硬化温度よりも低い所定温度で所定時間加熱することで、溶剤を蒸発させ、蛍光体含有組成物を蛍光体層として不完全に硬化させ、成形することをいう。仮硬化の条件は、蛍光体含有組成物の組成に応じて適宜調整することができる。これにより、蛍光体層13を所望の厚み及び形状に形成することができる。
【0023】
スプレー法は、ドライ及びウェット方式のいずれをも用いることができる。スプレー法は、特に、オン/オフを断続的に切り替えながら間欠的にスプレーを噴射するパルス式を利用することが好ましい。パルス式によるスプレー法は、例えば、パルススプレー装置40を利用して行うことができる。
【0024】
パルススプレー装置40は、スラリーSLである蛍光体含有組成物を貯蔵するシリンジ41、42と、シリンジ41、42どうしを連結する配管43と、スラリーSLを射出するスプレーノズル44とを主に備えることができる。シリンジ41、42には、エアAを送り込むためのエアコンプレッサが接続される。これにより、シリンジ41、42内部に、圧縮気体41b、42bが所定圧に保たれる。
シリンジ41、42内部には、スラリーSLと圧縮気体41b、42bとの間にプランジャー41a、42aが設けられる。プランジャー41a、42aは、スラリーSLと圧縮気体41b、42bとを隔てるため、圧縮気体41b、42bのスラリーSLへの溶解を低減することができる。
スプレーノズル44には、液体通路としての配管43が接続される。スプレーノズル44には、エアAを送り込むためのエアコンプレッサが接続される。
【0025】
スプレーを行う際、予め、スラリーSLをシリンジ41、42に投入する。そして、スプレーノズル44の吐出弁を閉じた状態で、エアコンプレッサからシリンジ41に所定の圧力でエアを送り込む。このエアの送入により、シリンジ41内部に充填されたスラリーSLが加圧され、流通路である配管43を介して、シリンジ4に向けて圧送される。その後、同様に、シリンジ42に所定の圧力でエアを送り込むと、シリンジ4内部に充填されたスラリーSLが加圧され、流通路である配管43を介して、シリンジ41に向けて圧送される。これを繰り返すことにより、スラリーSLがシリンジ41、42間を移動しながら攪拌される。これにより、スラリーSLに含まれる比重の大きい粒子の沈降を抑止することができ、粒子がスラリーSL中で分散した状態を保持することができる。次に、スプレーノズル44の吐出弁を開け、エアコンプレッサからスプレーノズル44に所定の圧力で間欠的にエアを送り込む。これにより、スプレーノズル44の先端から、エアとともにスラリーSLである蛍光体含有組成物が間欠的に噴射され、発光素子11の上面にスプレーSPされる。その際、蛍光体層を均等に形成できるように、スプレーノズル44を移動させながらスラリーを塗布する。例えば、
図3Bに示されるように、発光素子11及びマスク12が配置された基材10の端部から端部へ直線状に、位置と移動方向を変更しながら移動させることができる。
【0026】
パルススプレー方式は、連続スプレー方式に比べて、ノズルからのスラリーSLの噴出速度を低減することなく、エアAの風速を低減することができる。このため、塗布面にスラリーSLを良好に供給することができ、かつ、塗布されたスラリーSLがエア流によって乱されない。その結果、発光素子11と蛍光体層13との密着性を良好にすることができる。
【0027】
また、パルススプレー方式では、単位時間当たりの噴射量を低減することができる。このため、少量のスラリーSLをスプレー噴霧させながら、低速でスプレーノズルを移動させることができる。その結果、凹凸形状を有する塗布面であっても、非常に薄い均一な厚みの蛍光体層13を形成することができる。
【0028】
(第4の工程)
図5Aは、本発明の実施形態1に係る第4の工程を示す側面図である。実施形態1の第4の工程では、第3の工程後、複数の発光素子11が配置された基材10を湾曲させることで、蛍光体層13が形成された発光素子を個片化する。ここで、湾曲とは、基材10を基材の平面方向及び/又は上下方向に撓らせることである。なお、第4の工程の前に、蛍光体層13を硬化しておくことが好ましい。硬化として、仮硬化と本硬化とを行うことができる。仮硬化は、樹脂が架橋反応する温度よりも低い所定温度で所定時間加熱することにより、樹脂を不完全に硬化させることをいうものである。本硬化とは、樹脂が架橋反応する温度以上(硬化温度以上)の所定温度で所定時間加熱することにより、樹脂を架橋反応により硬化させることをいう。本硬化により、蛍光体含有組成物に含有される溶剤は略完全に蒸発する。なお、第4の工程の前に仮硬化を行い、第4の工程後に本硬化を行ってもよい。
【0029】
第3の工程において、蛍光体層13は、比較的薄い均一な厚みで、複数の発光素子11上及びそれらの間の基材10上に追従して凹凸に形成される。このような蛍光体層13は、基材10を湾曲させることで蛍光体層13にかかる引張力(
図5B中、矢印n)によって、発光素子11間で容易に切り離すことができる。より詳細には、基材10の湾曲によって蛍光体層13に引張力(
図5B中、矢印n)が加わると、特に、他の部材との密着力が小さい部分の蛍光体層13が引き伸ばされる。例えば、発光素子11の表面に形成された蛍光体層13及び基材10上に形成された蛍光体層13は、それぞれ発光素子11、基材10と密着しており(
図5B中、矢印m)引き伸ばされにくいが、その境界付近の蛍光体層13(すなわち、発光素子11の側面上を被覆する蛍光体層13と基材10上を被覆する蛍光体層13との境界付近の蛍光体層13)は引き伸ばされやすい。そして、蛍光体層13は、その薄く引き伸ばされた部分で切り離され、発光素子11の上面から側面下部までが蛍光体層13で被覆された発光素子(発光装置)に、それぞれ個片化することができる。なお、蛍光体層13の粘着性や厚みによって、蛍光体含有組成物に含有される蛍光体と樹脂の比率、蛍光体の粒径や形状、樹脂の硬度、密着性、強度、伸びなどを考慮し、仮硬化後の蛍光体層13の状態を調整することで、所望の位置で蛍光体層13を切断することが可能である。このように蛍光体層13を切断することで、ダイシング等の切断方法に比べて発光素子11どうしを密に配置することができ、発光素子(発光装置)を量産性よく形成することができる。
【0030】
基材10を湾曲させる方法としては、基材10の裏側からヘラ等の治具で扱く、発光素子11をピン等で基材10の裏側から突き上げる等、適宜所望の方法を選択することができる。基材10を平面方向に引っ張り、その引張力によって蛍光体層を切り離してもよい。これらの方法を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
以上のように、基材10を湾曲させて蛍光体層13を切断することで、ダイシング等の切断方法を用いずに、蛍光体層13が形成された発光素子(発光装置)ごとに個片化することができる。すなわち、ダイシング等で蛍光体層13を切断する場合のように発光素子11間の蛍光体層13が切り代として除去されることなく、発光素子11間の蛍光体層13が千切れることで個片化される。そのため、発光素子(発光装置)の側面の蛍光体層13の厚さは、第3の工程で形成された蛍光体層13の厚みに依存する。したがって、第3の工程において、発光素子11の側面に形成する蛍光体層13の厚みを均一に形成する必要がある。本実施形態では、最も外側に配置される発光素子の、他の発光素子に囲まれない側面の外側にマスク12を配置することで、上記を達成することができる。その他、発光素子(発光装置)の個片化は、当該分野で公知の方法、例えば、ブレード、レーザ照射等を用いて行ってもよい。
【0032】
<実施形態2>
図6は、本発明の実施形態2に係る発光装置の製造方法について示す側面図である。実施形態2では、第1の工程において、マスクと同様の役割を果たす側壁を有する基材20を用いることで、第1の工程と第2の工程とを同時に行う(すなわち、第1の工程で実施形態1におけるマスクが一体となったような基材を用いることで、第2の工程を省略することができる)。詳細には、複数の発光素子11を一体的に収容でき、最も外側に配置される発光素子を第1の間隔で取り囲む側壁を有する1つの凹部を備える基材20を利用する。このような基材20を用いると、上述の効果に加え、製造工程をさらに簡素化でき、製造コスト及び時間を低減させることができる。この場合も、基材の側壁の高さは、基材上に配置される発光素子の高さと同じに設定することが好ましい。なお、上記以外は、実施形態1と略同様の方法を用いることができる。
【0033】
<実施形態3>
図7Aは、本発明の実施形態3に係る発光装置の製造方法について示す側面図である。
図7Bは、本発明の実施形態3に係る発光装置の製造方法について示す部分拡大図である。実施形態3では、マスク12を、少なくとも発光素子11に面する内側面側が基材10と離間するように配置する。具体的には、実施形態3では、基材10上にスペーサ30を介してマスク12を配置しており、スペーサ30を、発光素子11に面するマスク12の内側面よりも外側に配置することで、基材10とマスク12の間に空隙Sを設ける。これにより、第3の工程において、発光素子11及び基材10を被覆する蛍光体層13が、マスク12上まで連続的に形成される場合でも、第4の工程において、発光素子11の側面下端まで蛍光体層に被覆された、色むらの少ない発光装置に個片化しやすくなる。
より詳細には、第4の工程において、例えば前述のように、複数の発光素子11が配置された基材10を湾曲させることで個々の発光装置に個片化する場合、基材10を湾曲させる前に、マスク12を除去することがある。その際、
図7Bに示されるように、スペーサ30によって基材10とマスク12の間に空隙Sがあると、その空隙S付近に設けられた蛍光体層13が優先的に延伸し、千切れやすくなる。したがって、複数配列された発光素子11のうち、最も外側に配置された発光素子11の側面の蛍光体層13が、マスク12を除去する際に一緒に剥がれたり、側面の下端よりも上側で千切れたりすることを防ぐことができ、歩留まりよく発光装置を個片化することができる。
【0034】
このように、基材10とマスク12の間にスペーサ30を設けることで、マスクを直接基材上に配置する場合に比べ、マスク12と基材10の接触面積を少なくすることが可能である。これにより、発光素子11を固定しておくことが可能な粘着性を有する基材10を用いたり、マスク12上まで連続的に蛍光体層13が形成されたりしても、マスク12を除去しやすい。また、マスク12とともにスペーサも除去する場合は、マスク及びスペーサを除去しやすい。例えば、実施形態3では、
図7Aに示されるように、基材10とスペーサ30の接触面積よりも、マスク12と基材の離間領域の面積の方が大きくなるように、スペーサ30を配置することができる。
【0035】
前述のように、マスク12の上面は、発光素子11の上面と同一面上にあることが好ましいため、スペーサ30の厚み、すなわち空隙Sは、発光素子11の高さ(厚み)よりも小さいことが好ましい。マスク12の厚みにもよるが、スペーサ30の厚み(空隙S)は、10μm〜200μm、より好ましくは、50μm〜100μmとすることができる。また、スペーサ30は、発光素子11に面するマスク12の内側面から、少なくとも蛍光体層13の厚み分よりも外側に配置することが好ましい。これにより、蛍光体層13を形成した際に、蛍光体層13とスペーサ30との間に空隙Sを設けやすく、第4の工程において、該空隙S付近で蛍光体層13が切断されやすくなる。例えば、スペーサ30は、発光素子11に面するマスク12の内側面から、0.2mm〜20mm、より好ましくは1mm〜10mm外側に配置することができる。
【0036】
スペーサ30は、基材10とマスク12の間であって、マスク12の内側面よりも外側に配置されていれば、形状は特に限定されず、例えば、複数の発光素子11を一体的に取り囲む1つの開口を有する枠状のものを用いることができる。
【0037】
以上のように、基材10及びマスク12と別体のスペーサ30を配置する場合、例えば、発光素子11を基材10上に配置する際に、基材10が動かないように基材10上に配置する基材保持部材を、スペーサ30として用いてもよい。または、基材10の下に配置される基材保持部材(具体的には、上面に粘着性を有し、該上面上に基材10を配置することで基材10を固定する基材保持部材)において、配置される基材上の発光素子よりも外側に延伸する部分を凸形状とすることで、スペーサ30として用いてもよい。これにより、発光素子11を基材10上に安定的に配置しつつ、工程数を増やすことなく、色むらの少ない発光装置を形成することできる。なお、基材保持部材とスペーサ30の両方を配置してもよい。
【0038】
図8は、本発明の実施形態3に係る発光装置の製造方法の変形例について示す側面図である。
図8に示される変形例は、マスク下面と基材10との離間距離が、発光素子11配置側(内側)から外側に向かって大きくなるマスク12aと、発光素子11の上面よりも高い(発光素子の厚みよりも厚い)スペーサ30aと、を用いる点で、
図7A及び
図7Bに示される発光装置の製造方法と異なる。例えば、
図8に示される変形例では、基材10上に発光素子11の上面よりも高いスペーサ30aを配置し、そのスペーサ30a上に、段差を有するマスク12aを配置することができる。具体的には、スペーサ30aの高さから発光素子11の高さを引いた高さの段差を有するマスク12aを準備し、該マスク12aを上段の下面とスペーサ30aの上面とが接するように、スペーサ30a上に配置する。これにより、スペーサ30aの高さを高く設定しつつ、発光素子11側のマスクの上面を発光素子11の上面と同一面上に配置することができる。特に、基材保持部材をスペーサとして用いるような場合、スペーサ(基材保持部材)は、基材が動かないように確実に保持させるために、ある程度の厚みを有するものを用いることが好ましい。例えば、厚み0.5mm〜2.0mmのスペーサ(基材保持部材)を用いることで、基材が動かないように保持させやすくなる。したがって、このように段差を有するマスクを用いることで、発光素子11の上面よりも高いスペーサ30aで基材を確実に保持しつつ、最も外側に配列された発光素子11の側面の蛍光体層13を、他の側面の蛍光体層13と均一な厚みで、且つ、側面の下端まで被覆するように設けることができる。
【0039】
図9Aは、本発明の実施形態3に係る発光装置の製造方法の変形例について示す側面図であり、スペーサ30bがマスク12bと一体に形成されたものを用いる形態について示すものである。
図9Bは、本発明の実施形態3に係る発光装置の製造方法の変形例について示す側面図であり、スペーサ30bが基材10と一体に形成されたものを用いる形態について示すものである。これにより、スペーサを配置する工程を省略することができ、少ない工程数で効率的に色むらの少ない発光装置を形成することができる。
【0040】
以上のようなスペーサ、スペーサが一体に形成されたマスク又は基材は、基材の粘着性によって基材上に保持(仮固定)させてもよいし、接着剤を用いて基材上に保持させてもよい。また、スペーサとマスクとは、それぞれに凹部又は凸部を設けて嵌合させることで保持させてもよい。なお、保持させずに配置するだけでもかまわない。
【0041】
なお、実施形態3にかかる発光装置のマスクの内側面側の下面は、基材に接触しない程度に設定されている。また、マスクの上面は、発光素子の上面と略同じ高さとなるように設定されている。
【0042】
以下に、本発明の実施形態に係る発光装置の構成部材について説明する。
【0043】
(基材)
基材の材料としては、例えば、樹脂、金属、セラミック、誘電体、パルプ、ガラス、紙又はこれらの複合材料等が挙げられる。可撓性を有する基材であると、第3の工程で湾曲させやすく、蛍光体層13が形成された発光素子(発光装置)ごとに個片化しやすいため好ましい。特に、シート状、フィルム状の樹脂が好適に用いられる。樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ガラスエポキシ樹脂、PET等が挙げられる。
なお、実施形態2のように、最も外側に配置される発光素子を第1の間隔で取り囲む側壁を有する1つの凹部を備える基材は、平板状の上記材料に折り曲げ加工等で側壁を形成したものを用いることができる。また、実施形態では、基材は蛍光体層が形成された発光素子から除去したが、蛍光体層と同様に切断することで発光素子(発光装置)に保持させてもよい。
【0044】
(発光素子)
発光素子としては、LEDやLDなどの半導体発光素子を用いることができる。発光素子は、種々の半導体で構成される素子構造と正負の電極とを有していればよく、形状や大きさ等は特に限定されない。また、発光色は用途に応じて任意の波長のものを選択することができる。特に、紫外〜可視域の発光が可能な窒化物半導体(In
xAl
yGa
1-x-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)の発光素子が好ましい。その他、緑色〜赤色発光のガリウム砒素系、ガリウム燐系半導体の発光素子でもよい。
なお、正負の電極が発光素子の同一面側に設けられると、蛍光体層を形成しやすく好ましいが、対向する面上に正負の電極をそれぞれ有する対向電極構造でもよい。
【0045】
また、発光素子は基板を有していてもよい。基板は、透光性であることが好ましいが、これに限定されない。基板の材料としては、サファイア、スピネル、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、シリコン、炭化珪素、ガリウム砒素、ガリウム燐、インジウム燐、硫化亜鉛、酸化亜鉛、セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0046】
(接着剤)
接着剤は、発光素子11を基材10上に固定するためのものであり、種類や材料は特に限定されない。絶縁性の接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂やガラス等を挙げることができる。導電性の接着剤としては、例えば、Au、Ag、Bi、Cu、In、Pb、Sn、Znから選択された少なくとも一種を含む金属ペーストや共晶材、カーボンペースト、ろう材等が挙げられる。その他、有機溶剤や異方性導電部材等を用いてもよい。溶剤は、特に、300℃程度以下で揮発又は昇華するものが好ましく、250℃程度以下で揮発又は昇華するものがより好ましい。これにより、その後の工程における加熱によって接着剤を除去でき、洗浄除去工程を行わずに、発光素子(発光装置)を基材から剥離し、個片化することができる。
【0047】
(マスク)
マスク12の形態としては、基材10とは別途成形したもの、レジストのように基材10上10に形成するもの、基材10と一体のもの等が挙げられる。別途成形するマスクの場合、材料はコストの低減の観点から、洗浄等により繰り返して使用が可能なもの、又はリサイクルが可能なものが好ましい。あるいは、製造工程で使用される溶剤に対する耐溶剤性を有し、耐熱性等を有するものが好ましい。例えば、金属、樹脂等が挙げられる。なかでも、金属、特に、SUS、アルミニウム等からなるものが好ましい。
複数の発光素子を一体的に取り囲む1つの開口を有する枠状のマスクを用いる場合、開口は、適宜所望の方法で形成することができる。例えば、平板状のマスク材料を準備し、打ち抜き、レーザ照射等で加工することで、所望の開口を有するマスクを形成することができる。
【0048】
(蛍光体含有組成物)
蛍光体含有組成物は、上述のように、少なくとも蛍光体、樹脂、溶剤を含有する。
蛍光体は、例えば、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LAG)、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO−Al
2O
3−SiO
2)系蛍光体、ユウロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)
2SiO
4)系蛍光体、βサイアロン蛍光体、CASN系又はSCASN系蛍光体等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体(K
2SiF
6:Mn)、硫化物系蛍光体などが挙げられる。波長変換部材は、例えば、いわゆるナノクリスタル、量子ドットと称される発光物質でもよい。これらの材料としては、半導体材料を用いることができ、半導体材料としては、例えばII−VI族、III−V族、IV−VI族半導体、具体的には、CdSe、コアシェル型のCdS
xSe
1-x/ZnS、GaP等のナノサイズの高分散粒子が挙げられる。
【0049】
蛍光体は、粒子状の蛍光体を用いることが好ましい。粒子の形状は、破砕状、球状、中空及び多孔質等のいずれでもよい。蛍光体の粒径は特に限定されず、例えば、粒径が数μm以上、5μm以上、10μm以上、12μm以上であるものが好ましい。また、粒径が3μm以下、25μm以下、20μm以下であるものが好ましい。ここでの粒径は、平均粒径とすることができる。平均粒径は、例えば、F.S.S.S.No(Fisher Sub Sieve Sizer’s No)における空気透過法で得られる粒径を指す。
【0050】
樹脂は、透光性であるものが好ましく、例えば、発光素子から出射される光の60%以上、70%以上、80%以上又は90%以上を透過させるものがより好ましい。樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、これらの変性樹脂又はこれらの樹脂を1種以上含むハイブリッド樹脂等などが挙げられる。具体的には、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂(シリコーン変性エポキシ樹脂等)、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂(エポキシ変性シリコーン樹脂等)、ハイブリッドシリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、変性ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンテレフタレート樹脂、ポリフタルアミド(PPA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ABS樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、PBT樹脂、ユリア樹脂、BTレジン、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。特に、耐熱性の観点から、変性エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂、液晶ポリマーが好ましい。
【0051】
溶剤としては、特に限定されるものではなく、樹脂を溶解し得るものであればよい。例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の直鎖炭化水素、トルエン等の芳香族炭化水素、アセトン等のケトン系溶媒、イソプロピルアルコール等のアルコール、炭酸ジメチルなどのエステル系の溶媒など又はこれらと同等の溶解性を発揮する代替溶媒等の有機溶剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでもエステル系の溶媒を含むもの、特に、炭酸エステル系の溶媒を含むものが好ましい。
【0052】
充填剤、光拡散剤、着色剤としては、ガラスファイバー、ワラストナイトなどの繊維状フィラー、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、カーボン等の無機フィラー、シリカ、酸化チタン、窒化チタン、酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸化マグネシウム、ガラス、蛍光体の結晶又は焼結体、蛍光体と無機物の結合材との焼結体等が挙げられる。
【0053】
蛍光体含有組成物は、蛍光体及び樹脂を、質量比で2〜40:5〜20で含有するものを用いることができる。蛍光体含有組成物の粘度は、0.01〜1000mPa・s程度に調整することが好ましく、0.1〜100mPa・s程度又は0.1〜10mPa・s程度がより好ましい。これにより、スプレー法に適用しやすく、塗布量を制御しやすい蛍光体含有組成物とすることができ、蛍光体層を均一な厚みで形成することができる。粘度は、上述の蛍光体及び樹脂に対して、溶剤の質量を調整することにより、適宜調整することができる。溶媒の量は、例えば、蛍光体及び樹脂の合計質量と同等〜約4倍程度の範囲で調整することが好ましい。
【0054】
以下に、本発明の実施形態1に係る発光装置の製造方法の実施例について示す。
【0055】
<実施例>
実施例では、まず、発光素子11を配置するための基材10を準備する。基材10は、例えば、ポリイミドと粘着剤からなる厚み約20〜100μm程度のシート状であり、可撓性を有する。また、複数の発光素子11を準備する。本実施例では、100個の発光素子11を配置する。各発光素子11の大きさは、例えば、平面視で約1000μm×1000μmの正方形であり、高さは約150μmである。
第1の工程において、複数の発光素子11を、基材10上に行列状に規則的に配置する。複数の発光素子11は、例えば、それぞれ約200μm間隔(第1の間隔)で配置することができる。
【0056】
次に、第2の工程において、複数の発光素子11を配置した基材10上に、発光素子11を収容するようにマスク12を配置する。
マスク12は、例えば、SUSからなり、複数の発光素子11の最も外側に配置する発光素子11から約200μmの間隔(第1の間隔)を空けて配置可能な、複数の発光素子11を一体的に取り囲む1つの開口を有する枠状のものを用いることができる。例えば、平面視で約30mm×30mmで、約12.2mm×12.2mmの開口を有するマスク12を用いることができる。マスク12の高さは、発光素子11と同じ高さであり、例えば約150μmである。
【0057】
続いて、第3の工程において、スプレー法により発光素子11の表面に蛍光体層を形成するために、蛍光体含有組成物を準備する。
蛍光体含有組成物は、例えば、蛍光体として粒径約8〜10μmのYAG系蛍光体、樹脂としてフェニル系のシリコーン樹脂、溶剤としてファインソルブE(炭酸エステル系溶剤、三協化学株式会社製)を、質量比で、蛍光体:樹脂=23:2で含有し、スラリー状に混合することができる。スラリーの粘度は、例えば、溶剤により約2.4mPa・s程度に調整することができる。
【0058】
このスラリー(蛍光体含有組成物)を、パルススプレー装置40に充填し、スプレー塗布を実施する。スプレー塗布は、蛍光体含有組成物に所望の厚みが得られるまで、数回〜数十回程度実施する。1回〜数回スプレー塗布する毎に前述の仮硬化を実施してもよい。その後、塗布された蛍光体含有組成物を、約150℃にて約4時間程度硬化することができる。これより、発光素子11の上面、側面、基材上に渡ってそれらの凹凸に追従する厚み約30μmの蛍光体層13を形成することができる。
【0059】
その後、第4の工程において、基材10を湾曲させる。実施例では、ヘラを用いて基材10を裏側から扱くことで基材10を湾曲させる。これにより、蛍光体層13が下記発光素子11の側面下端で切断され、上面及び側面に蛍光体層13が形成された発光素子(発光装置)を得ることができる。なお、マスク12は、第3の工程後、第4の工程の前に除去してもよい。
【0060】
以上のような製造方法によれば、複数の発光素子を基材上に高い密度で配置した場合でも、最も外側に配置された発光素子の、他の発光素子に囲まれない側面を被覆する蛍光体層の厚みを、他の側面及び他の発光素子の側面を被覆する蛍光体層の厚みと略同じに形成することができる。すなわち、全ての発光素子の側面に均一な厚みの蛍光体層を形成することができるので、量産性を確保しつつ、色ムラ及び/又は配光ムラの少ない発光装置を提供することができる。