(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に記載されるように、高純度の飽和フッ素化炭化水素化合物を用いることで、ドライエッチングにおける微細加工が可能になる。そして、そのような高純度の飽和フッ素化炭化水素化合物は、蒸留処理とそれに続く各種精製処理とを組み合わせることにより効率よく製造することができる。
【0006】
しかしながら、蒸留処理における条件によっては、飽和フッ素化炭化水素化合物の一部が分解し、得られる高純度の飽和フッ素化炭化水素化合物の量が減少したり、その分解により生成するフッ化水素により蒸留装置が破損したりすることがあった。
【0007】
本発明者らが、2−フルオロブタン又は2,2−ジフルオロブタン(以下、「2−フルオロブタン等」と記載することがある。)の分解反応について検討した結果、2−フルオロブタン等の粗製物には微量の水分が含まれており、この水分の存在により2−フルオロブタン等の分解が抑制されるが、蒸留工程の後半になると、共沸により蒸留塔内の水分が減少する結果、2−フルオロブタン等の分解が起こり易くなることが分かった。
さらに、ガラス製の蒸留塔や、長年使用されて部分的に錆が生じている金属製の蒸留塔を用いて水分が少ない環境下で蒸留処理を行うと、2−フルオロブタン等がさらに分解し易くなることも分かった。
【0008】
本発明は、このような状況下に行われたものであり、2−フルオロブタン等の分解を抑制しながら、2−フルオロブタン等の粗製物の蒸留処理を行い、高純度の2−フルオロブタンを効率よく得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく、2−フルオロブタン等の粗製物の蒸留処理方法について鋭意検討した。その結果、ガラス製の蒸留塔や錆が生じている金属製の蒸留塔を用いたときに2−フルオロブタン等が分解し易くなるのは、主に、蒸留塔内部のルイス酸成分が触媒として機能するためであることが分かった。すなわち、2−フルオロブタン等がケイ素や鉄の酸化物等のルイス酸成分と接触することで、2−フルオロブタン等の分解が促進される。
さらに、本発明者は、このようなルイス酸成分が存在する蒸留塔を用いる場合であっても、粗製物に水を添加しながら蒸留処理を行うことにより、2−フルオロブタン等の分解を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明によれば、下記〔1〕〜〔3〕の2−フルオロブタンの精製方法が提供される。
〔1〕蒸留塔を用いて、2−フルオロブタン又は2,2−ジフルオロブタンの粗製物を精製する方法であって、2−フルオロブタン又は2,2−ジフルオロブタンの粗製物に水を添加しながら蒸留処理を行うことを特徴とする、2−フルオロブタン又は2,2−ジフルオロブタンの精製方法。
〔2〕水の添加速度が、単位時間当たりの2−フルオロブタン又は2,2−ジフルオロブタンの
焚き上げ量に対して0.003〜0.020倍の範囲である、〔1〕に記載の精製方法。
〔3〕蒸留塔が、ガラス製の部材を備えるものである、〔1〕または〔2〕に記載の精製方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2−フルオロブタン等の分解を抑制しながら、2−フルオロブタン等の粗製物の蒸留処理を行い、高純度の2−フルオロブタンを効率よく得る方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の2−フルオロブタン等の精製方法は、蒸留塔を用いて、2−フルオロブタン等の粗製物を精製するものであって、2−フルオロブタン等の粗製物に水を添加しながら蒸留処理を行うことを特徴とする。
【0013】
〔2−フルオロブタン等の粗製物〕
本発明に用いる2−フルオロブタン等の粗製物(以下、「粗製物」ということがある。)は、本発明の精製方法における処理対象である。
【0014】
粗製物に含まれる2−フルオロブタン等の純度は、ガスクロマトグラフィーによる面積基準で、通常99.00〜99.90面積%、好ましくは99.50〜99.90面積%である。
また、粗製物に含まれる水分量は特に限定されないが、体積基準で、通常1500〜2500ppm、好ましくは1500〜2000ppmである。
2−フルオロブタン等の純度が上記範囲内であることで、ドライエッチングガスとして適する高純度の2−フルオロブタン等を効率よく製造することができる。
本発明において、2−フルオロブタン等の純度は、水素炎イオン化検出器(FID)を検出器としたガスクロマトグラフィーを行い、ピーク面積から算出された値である。また、前記粗製物中の水分量は、FT−IRを用いて測定することができる。
【0015】
本発明に用いる粗製物の製造方法は特に限定されない。例えば、2−フルオロブタンの粗製物は、Journal of Organic Chemistry,Vol.44,3872(1979)に記載の方法(方法1)、Bulletin of the chemical society of Japan,Vol.52,3377(1979)に記載の方法(方法2)により製造することができる。
方法1は、2−ブタノールを原料として使用し、ピリジンのポリフッ化水素錯体をフッ素化剤として使用するものであり、方法2は、2−ブタノールを原料として使用し、ヘキサフルオロプロペンとジエチルアミンから調製される、N,N’−ジエチルアミノヘキサフルオロプロパンをフッ素化剤として使用するものである。
【0016】
また、2、2−ジフルオロブタンの粗製物は、特開平5−255143号公報や、特開平6−100475号公報に記載の方法により製造することができる。
これらの方法は、いずれも2−ブチンにフッ化水素を付加させるものである。
【0017】
〔精製方法〕
本発明の精製方法は、粗製物に水を添加しながら蒸留処理を行うものである。
この蒸留処理は、2−フルオロブタン等の分解を抑制しながら行われるものであり、この蒸留処理により粗製物に含まれる有機系不純物が除去される。
【0018】
本発明の精製方法においては、通常、2−フルオロブタン(沸点:24−25℃)と、ブテン類〔1−ブテン(沸点:−6.3℃)、(E)−2−ブテン(沸点:0.9℃)、(Z)−2−ブテン(沸点:3.7℃)〕とを効率的に分離するために、適度な理論段数を持つ精留塔が用いられる。理論段数は通常10段以上、50段程度であり、好ましくは20段以上である。これらブテン類は沸点が常温以下であるため、精留塔の留分抜出しライン内での気化現象により、目的とする2−フルオロブタン等との分離が見かけ上悪くなり易い。したがって、留分抜き出し配管や初留分を貯留する容器は良く冷却されていることが好ましい。
【0019】
本発明に用いる蒸留塔は特に限定されない。例えば、蒸留釜、蒸留塔カラム、コンデンサー等を備えた蒸留塔を利用することができる。なかでも本発明の効果が十分に発揮されることから、ガラス又は金属製の部材を備えた蒸留塔が好ましく用いられ、ガラス製の部材を備えたものが特に好ましく用いられる。すなわち、ガラスを構成するケイ素酸化物や、金属が腐食して生成する金属酸化物はルイス酸として機能するため、通常であれば、蒸留処理中に2−フルオロブタン等の分解が促進される。しかしながら、本発明の方法によれば、これらの蒸留塔を用いる場合であっても、2−フルオロブタン等の分解が抑制され、高純度の2−フルオロブタン等が得られる。
【0020】
蒸留装置がガラス材製のものである場合、そのガラスの種類に特に制限はなく、一般的に蒸留装置を構成する際に使用されるものを用いることができる。ガラスとしては、例えば、石英ガラス、パイレックスガラス、ソーダ石灰ガラス等が挙げられる。
【0021】
本発明の方法においては、蒸留塔に充填物が充填されていてもよい。充填物は規則充填物であってもよいし、不規則充填物であってもよい。充填物の材質は特に限定はなく、金属製、樹脂製、セラミック製等が挙げられる。
金属製の充填物を用いて蒸留処理を行う場合、通常であれば、上記と同じ理由により、蒸留処理中に2−フルオロブタン等の分解が促進される。しかしながら、本発明の方法によれば、金属製の充填物を用いる場合であっても、2−フルオロブタン等の分解が抑制され、高純度の2−フルオロブタン等が得られる。
【0022】
蒸留時の蒸留釜の加熱温度は、通常、25〜70℃、好ましくは40〜70℃である。加熱温度が高すぎると、2−フルオロブタン等が分解し易くなるおそれがある。一方、加熱温度が低すぎると、生産性が低下し、留分を十分に得ることが困難になるおそれがある。
蒸留時の圧力は、ゲージ圧で、通常、常圧から10気圧、好ましくは常圧から5気圧である。
【0023】
抜出量に対する環流量の比の値は、ガス状態に成りやすいブテン類を効率良く分離するために、30以上に設定するのが好ましい(以下、抜出量に対する環流量の比を「還流比」と言うことがある)。還流比の値が小さ過ぎるとブテン類が効率良く分離されず、高純度の2−フルオロブタンが得られ難くなる。また、初留分が多くなってしまい、精製品として得られる2−フルオロブタンの量が少なくなる。また、還流比の値が大き過ぎると抜出し1回当たりの回収までに多大な時間を要するために、長時間蒸留処理を行う必要がある。
なお、低沸点成分であるブテン等が留去されて2−フルオロブタンが所望の純度に到達した後は、生産性を上げるため、環流量を大きく変化させずに還流比の値を下げることにより、抜出し量を多くしても構わない。2−フルオロブタン等の量が少ない場合においては、精留は回分式でもよいが、2−フルオロブタン等の量が多い場合においては、蒸留塔を数本経由させる連続式を採用してもよい。
【0024】
本発明の方法においては、粗製物に水を添加しながら蒸留処理を行う。
粗製物に添加された水の分子は、おそらく、蒸留塔内のルイス酸成分と相互作用したり、2−フルオロブタン等のフッ素原子部分と相互作用したりすると考えられる。この結果、本発明の方法においては、ルイス酸成分と2−フルオロブタン等のフッ素原子部分との接触が妨げられ、ルイス酸成分が触媒として機能し難くなり、2−フルオロブタン等の分解が抑制されると考えられる。
【0025】
粗製物に水を添加する方法は特に限定されない。例えば、シリンジ、滴下漏斗、ポンプ等を用いて行うことができる。なかでも水分添加量の制御が容易であることから、ポンプを用いることが好ましい。ポンプとしては、シリンジ式、チューブ式、マグネット式、カスケード式、ギア式、ダイヤフラム式等、水を定量的に添加できるものであれば特に限定されない。
【0026】
添加する水の温度は特に限定されないが、通常、25℃から蒸留釜内と同等の温度である。水の温度があまりに低いと粗製物の温度低下を招き、2−フルオロブタン等の焚き上げ速度が低下したり、さらには蒸留塔カラム内で温度勾配が不均一となり、低沸点成分の分離が悪くなったりするおそれがある。
【0027】
粗製物に水を添加する開始時期としては、蒸留塔の塔頂部から2−フルオロブタン等の抜出しを開始する時が好ましい。
蒸留釜に粗製物を入れ、加温を開始した時と同時に水の添加を開始すると、水が過供給される状態になるため、蒸留塔塔頂部から2−フルオロブタン等を抜出した初留分には、2層分離するほどの水が含まれる。このため、分液処理等の操作が必要になり得る。
一方、水の添加を終了する時期は特に限定されないが、通常は、留分の抜出しを停止する段階である。
【0028】
粗製物に水を添加する際の添加速度としては、単位時間当たりの2−フルオロブタン等の焚き上げ量(g/分)に対して、おおよそ0.003〜0.020倍の範囲が好ましい。水の添加速度が遅すぎると(例えば0.003倍未満の場合)、2−フルオロブタン等と共沸混合物又は共沸様混合物を形成する際に必要な水分が不足し、2―フルオロブタン等の分解を招くおそれがある。一方、水の添加速度が速すぎると(例えば0.020倍を超える場合)、蒸留釜内に大量の水が存在することになり、蒸留釜内の温度が過度に低下し、2−フルオロブタン等の焚き上げ速度が低下するおそれがある。
粗製物に水を添加する際は、連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。
なお、焚き上げ量とは、蒸留釜内の粗製物を加温し、ガス化させて蒸留塔の塔頂部まで到達させるときの蒸気量である。
焚き上げ量は、流量計を備えた蒸留装置であれば、その流量計により測定することができる。
流量計を備えていない蒸留装置の場合は、留分を抜出した量(抜出し時間)と還流比から単位時間あたりの還流量を算出し、これを
焚き上げ量とすることができる。
【0029】
蒸留処理を終えた後、釜残液が2層分離している場合は、釜残液を抜出した後、分液操作によって、2−フルオロブタン等の粗製物を回収することができる。また、2−フルオロブタン等は水よりも比重が小さく、2層分離した状態では上層に位置するので、蒸留釜の中で、下層の水のみを分離、排出し、残った2−フルオロブタン等の粗製物に、新しい粗製物を継ぎ足して、再度蒸留処理を行ってもよい。
【0030】
本発明の方法により得られる精製物における2−フルオロブタン等の純度は、ガスクロマトグラフィーによる面積基準で、通常99.90%以上である。
【0031】
本発明の方法により得られる2−フルオロブタン等の精製物には、必要に応じて、公知の脱水処理等の精製処理を施してもよい。
本発明の方法により得られる2−フルオロブタン等の精製物(又は、その脱水処理物等)は、半導体製造用ドライエッチングガスとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「%」は「重量%」を表す。
【0033】
以下において採用した分析条件は下記の通りである。
・ガスクロマトグラフィー分析(GC分析)
装置:HP−7890(アジレント社製)
カラム:ジーエルサイエンス社製 Inert Cap−1、長さ60m、内径0.25mm、膜厚1.5μm
カラム温度:40℃で10分間保持、次いで、20℃/分で昇温し、その後、240℃で10分間保持
インジェクション温度:100℃
キャリヤーガス:窒素
スプリット比:100/1
検出器:FID
サンプル注入量:1μL
【0034】
[実施例1]
パイレックスガラス製の蒸留塔(カラム長:30cm)に、赤錆を帯びた充填剤(ヘリパックNo.1)を充填し、蒸留塔塔頂部のコンデンサーに−15℃の冷媒を循環させた。
一方、容量500mlのパイレックスガラス製の蒸留釜に、2−フルオロブタンの粗製物(純度:98.95面積%)252.3gを仕込み、これをオイルバスに浸して45℃に加温した。1時間全還流させて系内を安定させた後、シリンジマイクロフィーダー(フルエサイエンス製)とPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)製チューブを用いて、蒸留釜内への水の添加を開始した(添加速度は0.02g/分であり、これは、焚き上げ量(5.0〜6.7g/分)に対し、0.003〜0.004倍の範囲に相当する。)。
また、還流比30:1で留分の抜出しを始め、抜出した留分を氷水で冷却したガラスフラスコに補集した。得られた留分についてガスクロマトグラフィーでその純度を測定しながら、還流比30:1〜5:1の範囲で留分の抜出しを継続した。
その結果を第1表に示す。この蒸留で得られた留出分、および、釜残液をpH試験紙で変色を確認したところ、変色は観察されず、フッ化水素の発生は認められなかった。
【0035】
【表1】
【0036】
[実施例2]
パイレックスガラス製の蒸留塔(カラム長:60cm)に、赤錆を帯びた充填剤(ヘリパックNo.1)を充填し、蒸留塔塔頂部のコンデンサーに−15℃の冷媒を循環させた。
一方、容量500mlのパイレックスガラス製の蒸留釜に、2−フルオロブタンの粗製物(純度:82.08面積%)251.89gを仕込み、これをオイルバスに浸して50℃に加温した。1時間全還流させて系内を安定させた後、シリンジマイクロフィーダー(フルエサイエンス製)とPFA製チューブを用いて、蒸留釜内への水の添加を開始した(添加速度は0.05g/分であり、これは、焚き上げ量(3.1〜5.0g/分)に対し、0.010〜0.016倍の範囲に相当する。)。
また、還流比40:1で留分の抜出しを始め、抜出した留分を氷水で冷却したガラスフラスコに補集した。得られた留分についてガスクロマトグラフィーでその純度を測定しながら、還流比30:1〜5:1の範囲で留分の抜出しを継続した。
その結果を第2表に示す。この蒸留で得られた留出分、および、釜残液をpH試験紙で変色を確認したところ、変色は観察されず、フッ化水素の発生は認められなかった。
【0037】
【表2】
【0038】
[実施例3]
パイレックスガラス製の蒸留塔(カラム長:60cm)に、赤錆を帯びた充填剤(ヘリパックNo.1)を充填し、蒸留塔塔頂部のコンデンサーに−15℃の冷媒を循環させた。
一方、容量500mlのパイレックスガラス製の蒸留釜に、2−フルオロブタンの粗製物(純度:98.45面積%)268.5gを仕込み、これをオイルバスに浸して50℃に加温した。1時間全還流させて系内を安定させた後、シリンジマイクロフィーダー(フルエサイエンス製)とPFA製チューブを用いて、蒸留釜内への水の添加を開始した(添加速度は0.05g/分であり、これは、焚き上げ量(2.7〜3.1g/分)に対し、0.016〜0.018倍の範囲に相当する)。
また、還流比30:1で留分の抜出しを始め、抜出した留分を氷水で冷却したガラスフラスコに補集した。得られた留分についてガスクロマトグラフィーでその純度を測定しながら、還流比30:1〜5:1の範囲で留分の抜出しを継続した。
その結果を第3表に示す。この蒸留で得られた留出分、および、釜残液をpH試験紙で変色を確認したところ、変色は観察されず、フッ化水素の発生は認められなかった。
【0039】
【表3】
【0040】
[実施例4]
パイレックスガラス製の蒸留塔(カラム長:60cm)に、赤錆を帯びた充填剤(ヘリパックNo.1)を充填し、蒸留塔塔頂部のコンデンサーに−15℃の冷媒を循環させた。
一方、容量500mlのパイレックスガラス製の蒸留釜に、2,2−ジフルオロブタンの粗製物(純度:98.02面積%)2、326.9gを仕込み、これをオイルバスに浸して55℃に加温した。1時間全還流させて系内を安定させた後、シリンジマイクロフィーダー(フルエサイエンス製)とPFA製チューブを用いて、蒸留釜内への水の添加を開始した(添加速度は0.05g/分であり、これは、焚き上げ量(4.5〜6.2g/分)に対し、0.008〜0.011倍の範囲に相当する)。
また、還流比30:1で留分の抜出しを始め、抜出した留分を氷水で冷却したガラスフラスコに補集した。得られた留分についてガスクロマトグラフィーでその純度を測定しながら、還流比30:1〜5:1の範囲で留分の抜出しを継続した。
その結果を第4表に示す。この蒸留で得られた留出分、および、釜残液をpH試験紙で変色を確認したところ、変色は観察されず、フッ化水素の発生は認められなかった。
【0041】
【表4】
【0042】
[比較例1]
実施例2で使用した蒸留塔内部でアセトンを10時間還流させて、蒸留塔内部の洗浄を行った。その後、系内に乾燥窒素を流して1昼夜乾燥させた。
一方、容量500mLのパイレックスガラス製の蒸留釜に、2−フルオロブタンの粗製物(純度99.36面積%)231.3gを仕込み、これをオイルバスに浸して50℃に加温した。1時間全還流させて系内を安定させた後、還流比30:1で留分の抜出しを始め、抜出した留分を氷水で冷却したガラスフラスコに補集した。得られた留分についてガスクロマトグラフィーでその純度を測定しながら、留分の抜出しを継続したところ、第5表に示すように4番目のフラクションから2−フルオロブタンの分解が認められるようになり(GC純度の低下)、pH試験紙で確認したところ酸性を呈しており、フッ化水素の生成が認められた。また、釜残液を分析したところ、2−フルオロブタンよりも低沸点成分であるブテンが仕込み時よりも多く含有していることが分かり、蒸留中に分解していることが判明した。
【0043】
【表5】
【0044】
実施例1〜4においては、蒸留処理中の2−フルオロブタン又は2,2−ジフルオロブタンの分解が抑制され、高純度の2−フルオロブタン又は2,2−ジフルオロブタンを大量に得ることができる。
一方、比較例1においては、蒸留処理の途中から2−フルオロブタンの分解が生じるため、高純度の2−フルオロブタンはわずかな量しか得られていない。
なお、実施例1〜4においては、ガラス製の蒸留塔を用いて蒸留した場合を示したが、赤錆を帯びた充填剤を使用しても蒸留処理中の2−フルオロブタン又は2,2−ジフルオロブタンの分解が抑制されたことから示されるように、錆を帯びたステンレス製(SUS304や、SUS316など)の蒸留塔を用いる場合であっても、実施例1〜4と同様の効果を奏する。