特許第6551234号(P6551234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551234
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】液晶組成物および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/38 20060101AFI20190722BHJP
   C09K 19/42 20060101ALI20190722BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20190722BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20190722BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20190722BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20190722BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20190722BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20190722BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20190722BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   C09K19/38
   C09K19/42
   C09K19/54 Z
   C09K19/34
   C09K19/30
   C09K19/32
   C09K19/12
   C09K19/14
   C09K19/20
   G02F1/13 500
【請求項の数】27
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2015-543763(P2015-543763)
(86)(22)【出願日】2014年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2014075352
(87)【国際公開番号】WO2015060056
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-219395(P2013-219395)
(32)【優先日】2013年10月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】古里 好優
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−034668(JP,A)
【文献】 特開2013−001834(JP,A)
【文献】 特開2012−128372(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/092973(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/091109(WO,A1)
【文献】 特開平11−323337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00−19/60
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として、一分子中に、
(a)1つ以上の環構造、
(b)1つ以上の極性基、
および(c)1つ以上の重合性基を有するモノマー、当該モノマーのオリゴマー、当該モノマーのプレポリマー、または当該モノマーのポリマーを含有し、
前記モノマーが、式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、
さらに、第二成分として、式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物。
式(1)において、Pは、α,β−不飽和エステル、または、環状エーテルから選択される1以上の基を有する炭素数3から20の重合性基であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよく;Aは、アダマンタン、ノルアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、ノルボルネン、ノルボルナン、フタラン、クマラン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、クロマン、ベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ピリミジン、およびピリジンから選択された環由来の2価基、または、単結合であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく、Bは、アダマンタン、ノルアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、ノルボルネン、ノルボルナン、フタラン、クマラン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、クロマン、ベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ピリミジン、およびピリジンから選択された環由来の(n+m)価の基、または、単結合であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;
は、−H、−OH、−COOH、−NH、−NHR、−SH、あるいは1つ以上の−NH−を含有する炭素数3から20の複素環であり、この複素環において少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよく、ただし、AおよびBがともに単結合であるとき、Xは少なくとも1つの−NH−を含有する炭素数3から20の複素環であり、この複素環において少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよく;Rは、炭素数1から6のアルキルであり;ZおよびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、Pが環状エーテル基を有する重合性基であるとき、Zは、少なくとも1つの−CH−が、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられた炭素数1から10のアルキレンであり、Xが水素であるとき、Zは、少なくとも一つの水素が−OH、−COOHで置き換えられた炭素数1から10のアルキレンであり;Lは、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;mは、1、2、または3であり;nは、0、1、2、3または4であり;nは、1、2、または3であり;n+mは、2から5の整数である。
ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;CおよびEは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;Dは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−5−メチル−1,4−フェニレン、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、または7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルであり;LおよびLは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;aは、1、2、または3であり;bは0または1であり;そして、aとbとの和が3以下である。
【請求項2】
第一成分として、一分子中に、
(a)1つ以上の環構造、
(b)1つ以上の極性基、
および(c)1つ以上の重合性基を有するモノマー、当該モノマーのオリゴマー、当該モノマーのプレポリマー、または当該モノマーのポリマーを含有し、
前記モノマーが、式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、
さらに、第三成分として、式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物。
式(1)において、Pは、α,β−不飽和エステル、または、環状エーテルから選択される1以上の基を有する炭素数3から20の重合性基であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよく;Aは、アダマンタン、ノルアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、ノルボルネン、ノルボルナン、フタラン、クマラン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、クロマン、ベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ピリミジン、およびピリジンから選択された環由来の2価基、または、単結合であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく、Bは、アダマンタン、ノルアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、ノルボルネン、ノルボルナン、フタラン、クマラン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、クロマン、ベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ピリミジン、およびピリジンから選択された環由来の(n+m)価の基、または、単結合であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;
は、−H、−OH、−COOH、−NH、−NHR、−SH、あるいは1つ以上の−NH−を含有する炭素数3から20の複素環であり、この複素環において少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよく、ただし、AおよびBがともに単結合であるとき、Xは少なくとも1つの−NH−を含有する炭素数3から20の複素環であり、この複素環において少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよく;Rは、炭素数1から6のアルキルであり;ZおよびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、Pが環状エーテル基を有する重合性基であるとき、Zは、少なくとも1つの−CH−が、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられた炭素数1から10のアルキレンであり、Xが水素であるとき、Zは、少なくとも一つの水素が−OH、−COOHで置き換えられた炭素数1から10のアルキレンであり;Lは、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;mは、1、2、または3であり;nは、0、1、2、3または4であり;nは、1、2、または3であり;n+mは、2から5の整数である。
ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;F、G、およびIは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または3−フルオロ−1,4−フェニレンであり;LおよびLは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;cは、0、1、または2である。
【請求項3】
第二成分として、式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項に記載の液晶組成物。
ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;CおよびEは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;Dは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−5−メチル−1,4−フェニレン、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、または7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルであり;LおよびLは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;aは、1、2、または3であり;bは0または1であり;そして、aとbとの和が3以下である。
【請求項4】
第二成分が式(2−1)から式(2−19)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1または3に記載の液晶組成物。
ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項5】
第二成分として、前記式(2−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する請求項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
第二成分として、前記式(2−5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する請求項に記載の液晶組成物。
【請求項7】
第二成分として、前記式(2−7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する請求項に記載の液晶組成物。
【請求項8】
第二成分として、前記式(2−8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する請求項に記載の液晶組成物。
【請求項9】
第一成分および第一成分以外の重合可能な化合物を除く液晶組成物の重量に基づいて、第二成分の割合が10重量%から100重量%の範囲であり、第一成分および第一成分以外の重合可能な化合物を除く液晶組成物の重量を100重量部とした第一成分の割合が0.05重量部から10重量部の範囲であり、かつ、第一成分の割合と、第一成分以外の重合可能な化合物の割合の和が、0.05重量部から10重量部の範囲である、請求項1、3〜8のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項10】
第三成分として、式(3−1)から式(3−13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項2〜9のいずれか1項に記載の液晶組成物。
ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項11】
第三成分として、前記式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する請求項10に記載の液晶組成物。
【請求項12】
第三成分として、前記式(3−8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する請求項10に記載の液晶組成物。
【請求項13】
第一成分および第一成分以外の重合可能な化合物を除く液晶組成物の重量に基づいて、第二成分の割合が10重量%から80重量%の範囲であり、第三成分の割合が20重量%から90重量%の範囲であり、第一成分および第一成分以外の重合可能な化合物を除く液晶組成物の重量を100重量部とした第一成分の割合が0.05重量部から10重量部の範囲であり、かつ、重合可能な化合物の割合が0.05重量部から10重量部の範囲である、請求項3〜12のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項14】
前記式(1)において、
Pは、式(P−1)から式(P−4)で表される基から選択された基であり、
式(P−1)において、MおよびMは独立して、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルであり;
Aは、アダマンタン、ノルアダマンタン、ジアマンタン、ノルボルナン、ベンゼン、ナフタレンから選択された環由来の2価の基、または、単結合であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から6のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から6のアルキルで置き換えられてもよく、Bは、アダマンタン、ノルアダマンタン、ジアマンタン、ノルボルナン、ベンゼン、ナフタレンから選択された環由来の(n+m)価の基、または、単結合であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から6のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から6のアルキルで置き換えられてもよく;
は、−H、−OH、−COOH、−NH、−NHR、−SH、または式(X−1)から式(X−3)であり、ただし、AおよびBがともに単結合であるとき、Xは式(X−1)から式(X−3)であり;Rは炭素数1から4のアルキルであり;
は、炭素数1から4のアルキルであり;ZおよびZは独立して、単結合または炭素数1から4のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、Xが−Hで表される基であるとき、Zは−OH、−COOHを有していて;
は、単結合または炭素数1から4のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;mは、1または2であり;nは、0、1または2であり;qは、0、1、2、3または4であり;rは、0、1、2または3であり;n+mは、2から5の整数である請求項1から13のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項15】
第一成分が式(1−1)から式(1−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1から14のいずれか1項に記載の液晶組成物。
ここで、Cyはアダマンタン、ベンゼン、ナフタレン、ノルボルナン、およびビフェニルから選択された環由来のw価の基であり;Mはメチル、または水素であり;Rは、炭素数1から3のアルキルであり;Xは、−OH、−COOH、−NH、−NHR、−SHであり;Xは式(X−1)から式(X−3)であり;
は、炭素数1から4のアルキルであり;は炭素数1から4のアルキルであり;ZおよびZは独立して、単結合または炭素数1から4のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく;Zは、炭素数1から4のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、1から2個の水素が−OH、または−COOHに置換されており、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく;uは、1または2であり;vは、0、1または2であり;wは、2から5の整数であり;qは、0、1、2、3または4であり;rは、0、1または2である。
【請求項16】
前記式(1−1)から前記式(1−3)において、Xは、−OH、−COOH、−NHであり;ZおよびZは、単結合であり;Zは、炭素数1から2のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、1から2個の水素が−OH、または−COOHに置換されており、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよい、請求項15に記載の液晶組成物。
【請求項17】
第一成分が式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−1−3)、式(1−2−1)、および式(1−3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1から16のいずれか1項に記載の液晶組成物。
ここで、Xは、−OH、または、−COOHであり;Mは、水素、または、メチルであり;Rは、メチル、または、エチルであり;yは、0、1、2、3または4である。
【請求項18】
前記式(1−1−1)で表される化合物を含有する請求項17に記載の液晶組成物。
【請求項19】
前記式(1)において、
は、−H、−OH、−NH、−NHR、−SH、あるいは1つ以上の−NH−を含有する炭素数3から20の複素環であり、この複素環において少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよく、ただし、AおよびBがともに単結合であるとき、Xは少なくとも1つの−NH−を含有する炭素数3から20の複素環であり、この複素環において少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよく;
が水素であるとき、Zは、少なくとも一つの水素が−COOHで置き換えられた炭素数1から10のアルキレンである請求項1〜18のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項20】
重合開始剤をさらに含有する、請求項1から19のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項21】
重合禁止剤をさらに含有する、請求項1から20のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項22】
ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃)が−2以下である、請求項1から21のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項23】
高分子支持配向型液晶表示素子用の液晶組成物である請求項1から22のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項24】
少なくとも一方の基板に電極層を有する2つの基板から構成され、この2つの基板の間に請求項1から22のいずれか1項に記載の液晶組成物中の重合可能な化合物が重合した化合物を含む液晶材料を配置する事を特徴とする、高分子支持配向型液晶表示素子。
【請求項25】
液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である、請求項24に記載の液晶表示素子。
【請求項26】
請求項24に記載の液晶表示素子を、2つの基板間に配置した請求項1から22のいずれか1項に記載の液晶組成物を電圧印加状態で光照射して重合可能な化合物を重合させることにより製造する液晶表示素子の製造方法。
【請求項27】
請求項1から22のいずれか1項に記載の液晶組成物の液晶表示素子における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光または熱により重合する重合性化合物を含有する液晶組成物に関する。この液晶組成物を素子の基板間に封入し、この素子に電圧を印加しながら重合性化合物を重合させ、生成した重合体の効果によって液晶分子の配向を制御する液晶表示素子にも関する。
【0002】
本発明は、主としてAM(active matrix)素子などに適する液晶組成物、およびこの組成物を含有するAM素子などに関する。特に、誘電率異方性が負の液晶組成物を使用した素子に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶表示素子において、液晶分子の配向モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、FFS(fringe field switching)、VA(vertical alignment)、PSA(polymer sustained alignment)などのモードである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PMはスタティック(static)とマルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMはTFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。TFTの分類は非晶質シリコン(amorphous silicon)および多結晶シリコン(polycrystal silicon)である。後者は製造工程によって高温型と低温型とに分類される。光源に基づいた分類は、自然光を利用する反射型、バックライトを利用する透過型、そして自然光とバックライトの両方を利用する半透過型である。
【0004】
これらの素子は適切な特性を有する液晶組成物を含有する。この液晶組成物はネマチック相を有する。良好な一般的特性を有するAM素子を得るには組成物の一般的特性を向上させる。2つの一般的特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の一般的特性を市販されているAM素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は約70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は約−10℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。素子で動画を表示するためには、短い応答時間が好ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度は、より好ましい。
【0005】
【0006】
組成物の光学異方性は、素子のコントラスト比に関連する。組成物の光学異方性(Δn)と素子のセルギャップ(d)との積(Δn×d)は、コントラスト比を最大にするように設計される。適切な積の値は動作モードの種類に依存する。VAモードまたはPSAモードの素子では約0.30μmから約0.40μmの範囲、IPSモードの素子では約0.20μmから約0.30μmの範囲である。この場合、小さなセルギャップの素子には大きな光学異方性を有する組成物が好ましい。組成物における絶対値の大きな誘電率異方性は素子における低いしきい値電圧、小さな消費電力と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、絶対値の大きな誘電率異方性が好ましい。組成物における大きな比抵抗は、大きな電圧保持率に寄与し、素子における大きなコントラスト比に寄与する。したがって、初期段階において室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。長時間使用したあと、室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。紫外線および熱に対する組成物の安定性は、液晶表示素子の寿命に関連する。これらの安定性が高いとき、この素子の寿命は長い。このような特性は、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いるAM素子に好ましい。
【0007】
TNモードを有するAM素子においては正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。一方、VAモードを有するAM素子においては、負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。IPSモードおよびFFSモードを有するAM素子においては、正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。PSAモードを有するAM素子においては、正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。PSAモードを有するAM素子に関しては、負の誘電率異方性を有する液晶組成物の例が次の特許文献1から6などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−307720号公報
【特許文献2】特開2004−131704号公報
【特許文献3】特開2006−133619号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開1889894号明細書
【特許文献5】特表2010−537010号公報
【特許文献6】特表2010−537256号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Macromolecules 2004, 37, 3165-3179.
【非特許文献2】液晶便覧(丸善)2000, 351-356.
【非特許文献3】液晶便覧(丸善)2000, 411-415.
【0010】
望ましいAM素子は、使用できる温度範囲が広い、応答時間が短い、コントラスト比が大きい、しきい値電圧が低い、電圧保持率が大きい、寿命が長い、などの特性を有する。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物の望ましい特性は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、正または負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などである。
【0011】
PSAモードを有する液晶表示素子では、重合体を含有する液晶組成物が用いられる。まず、少量の重合性化合物を添加した液晶組成物を素子に注入する。次に、この素子の基板間に電圧を印加しながら、組成物に紫外線を照射する。重合性化合物は重合して、液晶−配向膜界面組成物中に重合体のネットワークを生成する。この組成物では、剛直なネットワークポリマー構造の重合体によって液晶分子の配向を制御することが可能になるので、素子の応答時間が短縮され、画像の焼き付きが改善される。このような重合体の効果は、TN、ECB、OCB、IPS、FFS、VAのようなモードを有する素子にも期待できる。
【0012】
近年のディスプレイの性能向上により、PSAモードの液晶組成物には更なる画面の耐焼き付き特性の向上が求められている。この焼き付きは、「液晶分子のプレチルト角の変化」、および「残留した重合性化合物」に起因することが知られている。「液晶分子のプレチルトの変化」は長時間の使用によりネットワークポリマー構造が変化することによって起こる。この変化を抑えるためには、剛直な構造のネットワークポリマーを形成することが重要である。「残留した重合性化合物」を抑えるためには、重合反応性の良好な重合性化合物の使用が効果的である。
【0013】
PSAモードにて、一般に用いられる重合性化合物は棒状のコア構造と2個の重合性官能基からなる分子構造である。分子構造が棒状である重合性化合物は、一般に、液晶分子を配向させる能力が高いと考えられるが、その反面、液晶組成物への溶解性が悪く、多くの量の重合性化合物を添加することができない。一方、特許文献6では、溶解性を向上させるために分子構造を非対称とした重合性化合物が開示されている。この化合物は既知の重合性化合物に比べて、溶解性の面では改善されている。しかし、この化合物は、分子の剛直性が低下しているため、プレチルト角をコントロールする能力が低下してしまっている。プレチルト角をコントロールする能力が低いと、表示ムラなどの表示不良の原因となる。
【0014】
これまで、従来の重合体を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子では、焼きつき特性や表示ムラの発生低減を充足することは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、新配向モードとしてa−PSA(adhered-polymer sustained alignment)モードを提唱し、該配向モード用の液晶組成物を発明するに至った。従来のPSAモードでは一般的に棒状のコア構造と2個の重合性官能基からなる分子構造の重合性化合物を使用するのに対し、a−PSAモードではコア構造と重合性基および極性基からなる分子構造の重合性化合物を使用する。該重合性化合物を用いた配向手法が、高い重合反応性、良好なプレチルト角付与特性を有し、尚且つ、液晶組成物への相溶性が良好であることを見出し、該配向方法をa−PSAモードと命名した。
【0016】
a−PSAモードの反応メカニズムは、以下のように推測される。重合性液晶組成物がセルに注入されると、該液晶組成物中の重合性化合物の極性基と配向膜表面のイミド基が水素結合を形成する。a−PSAモード用重合性化合物の極性基は水素結合供与基であるため、配向膜表面に強い水素結合によって吸着する。該重合性化合物が配向膜表面に強力に吸着されることにより、重合性化合物の反応点同士が近くなることで、重合反応速度が加速する。一方、従来のPSAモード用重合性化合物は水素結合供与基を有しないため、強い水素結合は望めない。なお、(メタ)アクリレート化合物の重合反応速度が水素結合供与基の存在によって加速する現象については、非特許文献1に開示されている。
【0017】
a−PSAモードが従来のPSAモードに比べて良好なプレチルト付与性を与える原因は、以下のように推定している。従来のPSAモードでは、重合性化合物由来の剛直なネットワークポリマーが液晶分子の傾斜を制御することで良好なプレチルトを発現する。一方、a−PSAモードでは重合性化合物由来の極性基を有するポリマー分子鎖が配向膜表面のイミド基と強い水素結合を形成する。該水素結合がポリマー分子鎖の剛直性を向上させることで、a−PSAモードは従来PSAモードに比べてプレチルト付与能が高くなるのである。上述のような、水素結合などの非共有結合性相互作用を利用して分子の複合化、高機能化を試みた高分子は超分子ポリマーと呼ばれ、近年、大きな注目を集め、数多くの機関で研究されている材料である(非特許文献2および3)。a−PSAモードは、超分子ポリマーをプレチルト形成に活用する新規な配向手法である。
【0018】
a−PSA(adhered-polymer sustained alignment)モード命名の所以は、配向膜表面にポリマー分子の極性基が水素結合によって密着することに特徴を有するためである。
【0019】
従来のPSAモードにて一般的に使用する重合性化合物は、対称的な分子構造を有するために液晶組成物への溶解性が低い。一方、本発明のa−PSAモードにて使用する重合性化合物は分子構造が非対称であるため、液晶組成物への溶解性は高い。先行技術の重合性化合物では、分子構造を非対称にするとポリマー分子の剛直性が失われるため、プレチルトをコントロールする能力が低下してしまうことを前述した(特許文献6)。a−PSAモードにて使用する重合性化合物では、極性基と配向膜が強い水素結合を形成することでポリマー分子に剛直性を付与するため、プレチルトコントロール能力を損なうことなく、液晶組成物への溶解性を向上させることができる。
【0020】
本発明の1つの目的は、上記のa−PSAモードのコンセプトを利用した焼きつき特性や表示ムラ特性を充足する液晶組成物である。他の目的はこの液晶組成物、およびこのような組成物を含有する液晶表示素子、光学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この手段は、第一成分として、水素結合供与体の能力を有し、配向膜表面と水素結合を形成することができる重合可能なモノマー、または当該モノマーのオリゴマー、プレポリマー、若しくはポリマーを含有する液晶組成物である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の長所は、重合性化合物の液晶組成物に対する高い溶解性である。本発明の他の長所は、高い重合反応性、良好なプレチルト角付与特性、良好なプレチルト角安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。本発明の1つの側面は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の側面は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。他の側面は、短い応答時間、良好な耐焼きつき特性、良好な表示ムラ特性、低いしきい値電圧、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶組成物または液晶表示素子をそれぞれ「組成物」または「素子」と略すことがある。「液晶表示素子」は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。重合可能な化合物を「重合性化合物」と略すことがある。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物または液晶相を有さないが組成物の成分として有用な化合物を意味する。この有用な化合物は例えば1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を「化合物(1)」と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物または2つ以上の化合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。式(P−1)で表される基の群から選択された少なくとも1つの基を「(P−1)」と略すことがある。他の式で表される基についても同様である。「少なくとも1つの“A”は、“B”で置き換えられてもよい」の表現は、“A”が1つのとき、“A”の位置は任意であり、“A”の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく自由に選択できることを意味する。
【0024】
ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。「比抵抗が大きい」は、組成物が初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有することを意味する。「電圧保持率が大きい」は、素子が初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有することを意味する。光学異方性などの特性を説明するときは、実施例に記載した測定方法で得られた値を用いる。
【0025】
水素結合供与体とは、他の分子と水素結合を形成することが可能な水素原子を有する分子を称する。水素結合供与体の一つの例は、酸素原子と共有結合した水素原子を有するエタノールである。一方、水素結合受容体とは、非共有原子対を有する分子であり、その非共有原子対が他分子の水素原子と水素結合を形成することが可能なものを言う。水素結合受容体の一つの例は、酸素原子を有するジエチルエーテルである。
【0026】
第一成分は、1つの化合物または2つ以上の化合物である。「第一成分の割合」は、第一成分および第一成分以外の重合可能な化合物を除く液晶組成物の総重量を100重量部としたときの第一成分の重量を重量部数で表したものである。「第二成分の割合」は、第一成分および第一成分以外の重合可能な化合物を除く液晶組成物の重量に基づいた第二成分の重量百分率(重量%)で表す。「第三成分の割合」は「第二成分の割合」と同様である。組成物に混合される添加物の割合は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)または重量百万分率(ppm)で表す。「第一成分以外の重合可能な化合物の割合」は、第一成分および第一成分以外の重合可能な化合物を除く液晶組成物の総重量を100重量部としたときの第一成分以外の重合可能な化合物の重量を重量部数で表したものである。本発明における液晶組成物の全量は、100重量%を越えることもある。
【0027】
成分化合物の化学式において、Mの記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つのMが表す2つの基は、同じであっても、異なってもよい。例えば、化合物(1)のMが水素であり、化合物(1−1)のMがフッ素であるケースがある。化合物(1)のMが水素であり、化合物(1−1)のMがメチルであるケースもある。このルールは、R、R、R、R、Rなどにも適用される。式(1)において、nが2のとき、2つのAが存在する。この化合物において、2つのAが表す2つの環は、同じであっても、異なってもよい。このルールは、nが2より大きいときにも適用される。このルールは、L、Bなどの記号にも適用される。
【0028】
2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向きであってもよいし、右向きであってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、非対称の二価基の環にも適用される。
【0029】
化学式として、下記に示す内容の記載があった場合には、AからBへの直線は結合を意味しており、Bにおける水素が基Aで置き換えられていて、その位置は任意であることを意味している。Xは置き換えられる基Aの数を示している。Xが0の場合は、Aは存在せず、また、置き換えられていないことを示す。

また、化学式として、下記に示す内容の記載があった場合には、直線は結合を意味しており、波線で示す内容は、置き換えられている化学式を省略していることを示し、該化学式は任意であることを示す。
【0030】
本発明者らは、焼きつき特性や表示ムラ特性を充足する新規な配向モードであるa−PSAモードを考案し、化合物(1)と液晶組成物との組み合わせが、次の理由からa−PSAモードの素子に適していることを見いだした。すなわち、(a)化合物(1)は液晶組成物への溶解性が高い;(b)化合物(1)は容易に重合し、重合体を生成する;(c)重合工程のあとに残留する化合物(1)の量が少ない;(d)重合体は液晶分子に大きなプレチルト角を与える;(e)素子の応答時間が短い;(f)素子が焼付く程度が小さい、などである。
【0031】
本発明は、下記の項などである。
項1. 第一成分として、水素結合供与体の能力を有し、配向膜表面と水素結合を形成することができる重合可能なモノマー、当該モノマーのオリゴマー、当該モノマーのプレポリマー、または当該モノマーのポリマーを含有する液晶組成物。
【0032】
項2. 第一成分として、一分子中に、
(a)1つ以上の環構造、
(b)1つ以上の極性基、
および(c)1つ以上の重合性基を有するモノマー、当該モノマーのオリゴマー、当該モノマーのプレポリマー、または、当該モノマーのポリマーを含有する項1に記載の液晶組成物。
【0033】
項3. 第一成分として、式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する項1または2に記載の液晶組成物。

式(1)において、Pは、α,β−不飽和エステル、または、環状エーテルから選択される1以上の基を有する炭素数3から20の重合性基であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよく;Aは、アダマンタン、ノルアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、ノルボルネン、ノルボルナン、フタラン、クマラン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、クロマン、ベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ピリミジン、およびピリジンから選択された環由来の2価の基、または、単結合であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく、Bは、アダマンタン、ノルアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、ノルボルネン、ノルボルナン、フタラン、クマラン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、クロマン、ベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ピリミジン、およびピリジンから選択された、環由来の(n+m)価の基または、単結合であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;
は、−H、−OH、−COOH、−NH、−NHR、−SH、あるいは1つ以上の−NH−を含有する炭素数3から20の複素環であり、この複素環において少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよく、ただし、AおよびBがともに単結合であるとき、Xは少なくとも1つの−NH−を含有する炭素数3から20の複素環であり、この複素環において少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよく;Rは、炭素数1から6のアルキルであり;ZおよびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、Pが環状エーテル基を有する重合性基であるとき、Zは、少なくとも1つの−CH−が、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられた炭素数1から10のアルキレンであり、Xが水素であるとき、Zは、少なくとも一つの水素が−OH、−COOHで置き換えられた炭素数1から10のアルキレンであり;Lは、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;mは、1、2、または3であり;nは、0、1、2、3または4であり;nは、1、2、または3であり;n+mは、2から5の整数である。
【0034】
項4. 項3に記載の式(1)において、
Pは、式(P−1)から式(P−4)で表される基から選択された基であり、

式(P−1)において、MおよびMは独立して、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルであり;
Aは、アダマンタン、ノルアダマンタン、ジアマンタン、ノルボルナン、ベンゼン、ナフタレンから選択された環由来の2価の基、または、単結合であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から6のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から6のアルキルで置き換えられてもよく、Bは、アダマンタン、ノルアダマンタン、ジアマンタン、ノルボルナン、ベンゼン、ナフタレンから選択された、環由来の(n+m)価の基、または、単結合であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から6のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から6のアルキルで置き換えられてもよく;
は、−H、−OH、−COOH、−NH、−NHR、−SH、または式(X−1)から式(X−3)であり、ただし、AおよびBがともに単結合であるとき、Xは式(X−1)から式(X−3)であり、Rは炭素数1から4のアルキルであり;

は、炭素数1から4のアルキルであり;ZおよびZは独立して、単結合または炭素数1から4のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、Xが−Hで表される基であるとき、Zは−OH、−COOHを有していて;
は、単結合または炭素数1から4のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;mは、1または2であり;nは、0、1または2であり;qは、0、1、2、3または4であり;rは、0、1、2または3であり;n+mは、2から5の整数である項1から3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0035】
項5. 第一成分が式(1−1)から式(1−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項1から4のいずれか1項に記載の液晶組成物。

ここで、Cyはアダマンタン、ベンゼン、ナフタレン、ノルボルナン、およびビフェニルから選択された、環由来のw価の基であり;Mはメチル、または水素であり;Rは、炭素数1から3のアルキルであり;Xは、−OH、−COOH、−NH、−NHR、−SHであり;Xは、項4に記載の式(X−1)から式(X−3)であり;Rは炭素数1から4のアルキルであり;
およびZは独立して、単結合または炭素数1から4のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく;Zは、炭素数1から4のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、1から2個の水素が−OH、または−COOHに置換されており、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく;uは、1または2であり;vは、0、1または2であり;wは、2から5の整数であり;qは、0、1、2、3または4であり;rは、0、1または2である。
【0036】
項6. 項5に記載の式(1−1)から式(1−3)において、Xは、−OH、−COOH、−NHであり;ZおよびZは、単結合であり;Zは、炭素数1から2のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、1から2個の水素が−OH、または−COOHに置換されており、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよい、項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0037】
項7. 第一成分が式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−1−3)、式(1−2−1)、および式(1−3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項1から6のいずれか1項に記載の液晶組成物。

ここで、Xは、−OH、または、−COOHであり;Mは、水素、または、メチルであり;Rは、メチル、または、エチルであり;yは、0、1、2、3または4である。
【0038】
項8. 項7に記載の式(1−1−1)で表される化合物を含有する項1から7のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0039】
項9. 第二成分として、式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する項1から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。

ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;CおよびEは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;Dは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−5−メチル−1,4−フェニレン、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、または7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルであり;LおよびLは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;aは、1、2、または3であり;bは0または1であり;そして、aとbとの和が3以下である。
【0040】
項10. 第二成分が式(2−1)から式(2−19)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。
【0041】
項11. 第二成分として、項10に記載の式(2−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する項1から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0042】
項12. 第二成分として、項10に記載の式(2−5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する項1から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0043】
項13. 第二成分として、項10に記載の式(2−7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する項1から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0044】
項14. 第二成分として、項10記載の式(2−8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する項1から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0045】
項15. 第一成分および第一成分以外の重合可能な化合物を除く液晶組成物の重量に基づいて、第二成分の割合が10重量%から100重量%の範囲であり、第一成分および第一成分以外の重合可能な化合物を除く液晶組成物の重量を100重要部とした第一成分の割合が0.05重量部から10重量部の範囲であり、かつ、第一成分の割合と、第一成分以外の重合可能な化合物の割合の和が、0.05重量部から10重量部の範囲である、項1から14のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0046】
項16. 第三成分として、式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項1から15のいずれか1項に記載の液晶組成物。

ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;F、G、およびIは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または3−フルオロ−1,4−フェニレンであり;LおよびLは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;cは、0、1、または2である。
【0047】
項17. 第三成分として、式(3−1)から式(3−13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から16のいずれか1項に記載の液晶組成物。

ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0048】
項18. 第三成分として、項17に記載の式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する項1から17のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0049】
項19. 第三成分として、項17に記載の式(3−8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する項1から17のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0050】
項20. 第一成分および第一成分以外の重合可能な化合物を除く液晶組成物の重量に基づいて、第二成分の割合が10重量%から80重量%の範囲であり、第三成分の割合が20重量%から90重量%の範囲であり、第一成分および第一成分以外の重合可能な化合物を除く液晶組成物の重量を100重量部とした第一成分の割合が0.05重量部から10重量部の範囲であり、かつ、重合可能な化合物の割合が0.05重量部から10重量部の範囲である、項16から19のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0051】
項21. 重合開始剤をさらに含有する、項1から20のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0052】
項22. 重合禁止剤をさらに含有する、項1から21のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0053】
項23. ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃)が−2以下である、項1から22のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0054】
項24. 少なくとも一方の基板に電極層を有する2つの基板から構成され、この2つの基板の間に項1から23のいずれか1項に記載の液晶組成物中の重合可能な化合物が重合した化合物を含む液晶材料を配置する事を特徴とする、高分子支持配向型液晶表示素子。
【0055】
項25. 液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である、項24に記載の液晶表示素子。
【0056】
項26. 項24に記載の液晶表示素子を、2つの基板間に配置した項1から23のいずれか1項に記載の液晶組成物を電圧印加状態で光照射して重合可能な化合物を重合させることにより製造する液晶表示素子の製造方法。
【0057】
項27. 項1から23のいずれか1項に記載の液晶組成物の液晶表示素子における使用。
【0058】
本発明は、次の項も含む。1)第二成分が式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2−7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である、上記の組成物。2)第二成分が式(2−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2−7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である、上記の組成物。3)第二成分が式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(2−5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2−8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である、上記の組成物。4)第三成分が式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である、上記の組成物。5)第三成分が式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である、上記の組成物。
【0059】
本発明は、次の項も含む。1)光学活性な化合物をさらに含有する上記の組成物、2)酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤などの添加物をさらに含有する上記の組成物、3)上記の組成物を含有するAM素子、4)上記の組成物を含有し、そしてTN、ECB、OCB、IPS、FFS、VA、PSA、またはa−PSAのモードを有する素子、5)上記の組成物を含有する透過型の素子、6)上記の組成物を、ネマチック相を有する組成物としての使用、7)上記の組成物に光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用。
【0060】
本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、成分化合物の具体的な例を示す。第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
【0061】
第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。本発明の組成物は組成物Aと組成物Bに分類される。組成物Aは、化合物(1)、化合物(2)、および化合物(3)から選ばれた液晶性化合物の他に、その他の液晶性化合物、添加物、不純物などをさらに含有してもよい。「その他の液晶性化合物」は、化合物(1)、化合物(2)、および化合物(3)とは異なる液晶性化合物である。このような化合物は、特性をさらに調整する目的で組成物に混合される。その他の液晶性化合物の中で、シアノ化合物は熱または紫外線に対する安定性の観点から少ない方が好ましい。シアノ化合物のさらに好ましい割合は0重量%である。添加物は、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤などである。不純物は成分化合物の合成などの工程において混入した化合物などである。この化合物が液晶性であったとしても、ここでは不純物として分類される。
【0062】
組成物Bは、実質的に化合物(1)、化合物(2)、および化合物(3)のみからなる。「実質的に」は、組成物が添加物および不純物を含有してもよいが、これらの化合物と異なる液晶性化合物を含有しないことを意味する。組成物Bは組成物Aに比較して成分の数が少ない。コストを下げるという観点から、組成物Bは組成物Aよりも好ましい。その他の液晶性化合物を混合することによって物性をさらに調整できるという観点から、組成物Aは組成物Bよりも好ましい。
【0063】
第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物の間の定性的な比較に基づいた分類であり、0(ゼロ)は、値がゼロに近いことを意味する。
【0064】
【0065】
成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(2)は、誘電率異方性の絶対値を上げ、そして下限温度を下げる。化合物(3)は、粘度を下げる、または上限温度を上げ、下限温度を下げる。
【0066】
第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の組み合わせは、第一成分+第二成分、および第一成分+第二成分+第三成分である。
【0067】
第一成分の好ましい割合は、上記第二成分および第三成分からなる液晶組成物の重量に基づいて、液晶分子を配向させるために約0.05重量部以上であり、表示不良を防ぐために約10重量部以下である。さらに好ましい割合は、約0.1重量部から約2重量部の範囲である。特に好ましい割合は、約0.15重量部から約0.8重量部の範囲である。最も好ましい割合は、約0.3重量部から約0.8重量部の範囲である。
【0068】
第二成分の好ましい割合は、上記第二成分および第三成分からなる液晶組成物の重量に基づいて、誘電率異方性の絶対値を上げるために約10重量%以上であり、下限温度を下げるために約80重量%以下である。さらに好ましい割合は約15重量%から約70重量%の範囲である。特に好ましい割合は約20重量%から約60重量%の範囲である。
【0069】
第三成分の好ましい割合は、上記第二成分および第三成分からなる液晶組成物の重量に基づいて、粘度を下げるため、または上限温度を上げるために約20重量%以上であり、誘電率異方性の絶対値を上げるために約90重量%以下である。さらに好ましい割合は約30重量%から約80重量%の範囲である。特に好ましい割合は約50重量%から約75重量%の範囲である。
【0070】
第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。本願発明の液晶組成物は、第一成分として、水素結合供与体の能力を有し、配向膜表面と水素結合を形成することができる重合可能なモノマーまたは当該モノマーのオリゴマー、プレポリマー若しくはポリマーを含有するものである。一般的に、水素結合とは、水素と、窒素・酸素・ハロゲン・硫黄など電気陰性度の大きい原子とが共有結合した水素結合供与体において、水素の電子密度が低くなったことによるクーロン力によって、非共有電子対を有する他の物質(水素結合受容体)と行う引力的相互作用を意味する。水素結合は、配向表面との密着性向上のために、結合エネルギーが5kJ/mol以上のものが好ましい。より好ましい水素結合は、ポリマーの剛直性向上のために結合エネルギーが10kJ/mol以上のものである。該成分は、単一の化合物であっても、混合物であっても良い。他の液晶組成物との相溶性向上のため、モノマーあるいは低分子量のオリゴマーであることが好ましい。
【0071】
第一成分は、より具体的には、一分子中に、(a)1つ以上の環構造、(b)1つ以上の極性基、および(c)1つ以上の重合性基を有するモノマー、当該モノマーのオリゴマー、当該モノマーのプレポリマー、または当該モノマーのポリマーである。環状の極性基である場合、(a)と(b)を含んだこととなる。環構造とは、炭素骨格を基本とした環状の有機化合物構造の総称である。環構造としては、特に限定されないが、例えば、アダマンタン、ノルアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、ノルボルネン、ノルボルナン、デカヒドロナフタレン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンなどの同素環式の脂環式環構造、ベンゼン、ナフタレン、ピレン、フェナントレンなどの同素環式の芳香族環状基、ピロール、フラン、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ジオキサン、キヌクリジン、テトラヒドロフラン、アジリジン、ジチアン、ピラゾール、トリアゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリドン、キノロン、インドール、ベンゾトリアゾール、キノリン、イソキノリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、チアジアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、フタラン、クマラン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、クロマン、テトラヒドロピランなどの複素環式の環状基、などが挙げられる。極性基とは、極性の有る原子団のことで、この基が有機化合物中に存在すると、その化合物が有機化合物中に存在すると、その化合物が極性を持つ。アミノ、カルボキシル、ヒドロキシル、メルカプト、アミド、および、エステルなど、ヘテロ元素を含む基が例示できる。重合基とは、フリーラジカルまたはイオン性鎖重合、重付加または重縮合などの重合反応に適するか、または、ポリマー主鎖上への付加または縮合といったポリマー類似反応に適する基であり、当業者には良く知られている。例えば、炭素‐炭素2重結合または炭素‐炭素3重結合を含有する連鎖重合のため基、および、環状エーテルのような開環重合に適した基が好ましく用いられる。
【0072】
式(1)に記載のPは、α,β−不飽和エステル、または、環状エーテルから選択される1以上の基を有する炭素数3から20の重合性基であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよい。α,β−不飽和エステルとは、α位とβ位の炭素の間に二重結合が存在するエステルを意味する。α,β−不飽和エステルとしては、これに限定されるものではないが、式(P−1)が例示される。環状の炭化水素の炭素が酸素で置換された構造を持つエーテルを環状エーテルと称する。環状エーテルとしては、これに限定されるものではないが、式(P−2)から(P−4)が例示される。

好ましいPは、反応性を上げるためまたは応答時間を短くするために(P−1)である。
【0073】
およびMは独立して、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルである。好ましいMまたはMは、反応性を上げるために水素またはメチルである。さらに好ましいMはメチルであり、さらに好ましいMは水素である。
【0074】
式(1)に記載のXは、−H、−OH、−COOH、−NH、−NHR、−SH、あるいは1つ以上の−NH−を含有する炭素数3から20の複素環に由来する置換基であり、この複素環において少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよい。複素環とは、環構造のうち、環を構成する原子に炭素以外の原子が含まれているものをいう。複素環としては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、ピロリジン、アゼチジン、オキセタン、アゼチジン‐2‐オン、アジリジン、トロパン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、1,2,3−トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、クロモン、1,4−ベンゾジアゼピン、インドール、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、プリン、アクリジン、フェノキサジン、および、フェノチアジン等が挙げられる。好ましいXは、配向膜表面との密着性の向上のために−H、−OH、−COOH、−NH、−NHR、−SH、式(X−1)から式(X−13)である。より好ましくは、他の液晶組成物との相溶性向上のために−H、−OH、−COOH、−NH、−NHR、−SH、式(X−1)から式(X−3)である。Rは、炭素数1から4のアルキルである。好ましいRは、配向膜表面との密着性を向上させるために炭素数1または2のアルキルである。

ただし、式(X−1)から式(X−13)において、Rは、ハロゲンまたは炭素数1から4のアルキルであり;Rは、ハロゲンまたは炭素数1から6のアルキルであり;RおよびRの夫々が複数個存在する場合、それらは同一または異なってもよく、また、それらの置換する位置は任意であって、特に制限されるものではない。好ましいRは、反応性および配向膜表面との密着性を向上させるためにフッ素または、炭素数1のアルキルであり;qは、0、1、2、3または4であり;rは、0、1、2または3であり;tは、0、1または2である。好ましいRは、反応性および配向膜表面との密着性を向上させるためにフッ素または、炭素数1のアルキルであり;好ましいq、r、およびtは、反応性を上げるために0または1である。
【0075】
式(1−1)におけるXは、−OH、−COOH、−NH、−NHR、および−SHである。好ましいXは、パネルの長期信頼性向上のために、−OH、−COOH、−NH、または−NHRである。Rは、炭素数1から4のアルキルである。好ましいRは、配向膜表面との密着性を向上させるために炭素数1または2のアルキルである。
【0076】
式(1−3)におけるXは、式(X−1)から式(X−3)である。好ましいXは、他の液晶組成物との相溶性向上のために式(X−1)または式(X−3)である。
【0077】
式(1)におけるZおよびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよい。好ましいZまたはZは、反応性を上げるために単結合または炭素数1から4のアルキレンである。さらに好ましいZまたはZは、単結合または炭素数1から2のアルキレンである。
【0078】
式(1−1)および式(1−3)におけるZおよびZは独立して、単結合または炭素数1から4のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよい。好ましいZまたはZは、反応性を上げるために単結合、炭素数1から2のアルキレン、または−OCHCH−である。
【0079】
式(1−2)におけるZは、炭素数1から4のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、1から2個の水素が−OH、または−COOHに置換されており、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよい。好ましいZは、配向膜表面との吸着性を向上させるために、炭素数1から3のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、1個の水素が−OH、または−COOHに置換されており、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよい。
【0080】
式(1)におけるAは、2価のアダマンタン、ノルアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、ノルボルネン、ノルボルナン、フタラン、クマラン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、クロマン、ベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ピリミジン、ピリジン由来の基、または、単結合であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよい。Bは、(n+m)価のアダマンタン、ノルアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、ノルボルネン、ノルボルナン、フタラン、クマラン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、クロマン、ベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ピリミジン、ピリジン由来の基、または、単結合であり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよい。また、Bは水素が(n+m)個置き換えられている。
AおよびBは、プレチルト角付与能を向上させるために剛直性の高い式(Ri−1)から式(Ri−7)が好ましい。さらに、好ましいAおよびBは、他の液晶組成物との相溶性向上のために式(Ri−1)から式(Ri−3)である。
【0081】
式(2)におけるCおよびEは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり、aが2または3である時、任意の2つのCは同じであっても、異なってもよい。好ましいCまたはEは粘度を下げるために1,4−シクロへキシレンであり、光学異方性を上げるために1,4−フェニレンである。テトラヒドロピラン−2,5−ジイルは、
【0082】
式(2)におけるDは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−5−メチル−1,4−フェニレン、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、または7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルである。好ましいDは粘度を下げるために2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、光学異方性を下げるために2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレンであり、誘電率異方性の絶対値を上げるために7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルである。
【0083】
式(3)におけるF、G、およびIは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または3−フルオロ−1,4−フェニレンであり、cが2である時、2つのFは同じであっても、異なってもよい。好ましいF、G、またはIは、粘度を下げるため、または上限温度を上げるために1,4-シクロヘキシレンであり、下限温度を下げるために1,4−フェニレンである。
【0084】
式(1)におけるmは、1、2、または3である。好ましいmは、電圧保持率を上げるために1、または2である。
【0085】
式(1)におけるnは、0、1、2、3または4であり、nは、1、2、または3である。好ましいnは、反応性を上げるために0、または1である。好ましいnは、相溶性を上げるために1、または2である。
【0086】
式(1)におけるLは、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。好ましいLは、反応性を上げるために単結合または炭素数1から4のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−で置き換えられてもよい。さらに好ましいLは、単結合である。
【0087】
式(2)および式(3)におけるL、L、L、およびLは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり、aが2または3である時、任意の2つのLは同じであっても、異なってもよく、cが2である時、2つのLは同じであっても、異なってもよい。好ましいL、L、L、またはLは、粘度を下げるために単結合であり、下限温度を下げるためにエチレンであり、誘電率異方性の絶対値を上げるためにメチレンオキシである。
【0088】
式(1−1)および式(1−2)におけるRは、炭素数1から3のアルキルである。好ましいRは、反応性を向上させるために炭素数1または2のアルキルである。
【0089】
式(1−3−1)におけるRは、炭素数1から3のアルキルである。好ましいRは、配向膜表面との密着性を向上させるために炭素数1または2のアルキルである。
【0090】
およびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいRまたはRは、紫外線または熱に対する安定性を上げるために炭素数1から12のアルキルであり、粘度を下げるため、または誘電率異方性の絶対値を上げるために炭素数1から12のアルコキシである。
【0091】
およびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいRまたはRは、粘度を下げるために、炭素数2から12のアルケニルであり、紫外線に対する安定性を上げるため、または熱に対する安定性を上げるために、炭素数1から12のアルキルである。
【0092】
好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるために、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルである。
【0093】
好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。さらに好ましいアルコキシは、粘度を下げるために、メトキシまたはエトキシである。
【0094】
好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるために、ビニル、1−プロペニル、3−ブテニル、または3−ペンテニルである。これらのアルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ペンテニル、3−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。これらのアルケニルにおいては、分岐状よりも直鎖状のアルケニルが好ましい。
【0095】
少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2−ジフルオロビニル、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル、5,5−ジフルオロ−4−ペンテニル、および6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために、2,2−ジフルオロビニルおよび4,4−ジフルオロ−3−ブテニルである。
【0096】
アルキルは環状アルキルを含まない。アルコキシは環状アルコキシを含まない。アルケニルは環状アルケニルを含まない。1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。
【0097】
式(2)におけるaは、1、2、または3である。好ましいaは粘度を下げるために1であり、上限温度を上げるために2または3である。式(2)におけるbは0または1である。好ましいbは粘度を下げるために0であり、下限温度を下げるために1である。式(3)におけるcは、0、1、または2である。好ましいcは粘度を下げるために0であり、上限温度を上げるために1または2である。
【0098】
式(1−1)および式(1−2)におけるCyはw価のアダマンタン、ベンゼン、ナフタレン、ノルボルナン、またはビフェニル由来の基である。好ましいCyは、プレチルト付与特性の向上、または他の液晶組成物との相溶性向上のために式(Ri−1)である。
【0099】
式(1−1)におけるuは、1または2である。好ましいuは、電圧保持率を上げるために1である。式(1−2)におけるvは、0、1または2である。好ましいvは、反応性を上げるために0または1である。式(1−3−1)におけるyは、0、1、2、3または4である。好ましいyは、反応性を上げるために0または1である。
【0100】
第五に、成分化合物の具体的な例を示す。下記の好ましい化合物において、Mは、水素またはメチルである。Xは、−OH、−COOHまたは−NHである。Zは、単結合、炭素数1から2のアルキレン、または−OCHCH−である。Zは、炭素数1から3のアルキレンである。Zは、炭素数1から3のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、1個の水素が−OH、または−COOHに置換されていてもよい。RおよびRは独立して、炭素数1から12の直鎖状アルキル、炭素数1から12の直鎖状アルコキシ、または炭素数2から12の直鎖状アルケニルである。Rは、炭素数1から12の直鎖状アルキルまたは炭素数1から12の直鎖状アルコキシである。Rは、炭素数1から12の直鎖状のアルキルまたは炭素数1から12の直鎖状アルケニルである。R10は、フッ素または、炭素数1のアルキルである。dは、0、1、2、3または4である。
【0101】
好ましい化合物(1)は、化合物(1−1−1)から化合物(1−3−1)である。さらに好ましい化合物(1)は、化合物(1−1−1)である。好ましい化合物(2)は、化合物(2−1−1)から化合物(2−19−1)である。さらに好ましい化合物(2)は、化合物(2−1−1)から化合物(2−10−1)、および化合物(2−12−1)から化合物(2−15−1)である。特に好ましい化合物(2)は、化合物(2−1−1)から化合物(2−8−1)、化合物(2−13−1)、および化合物(2−15−1)である。好ましい化合物(3)は、化合物(3−1−1)から化合物(3−13−1)である。さらに好ましい化合物(3)は、化合物(3−1−1)から化合物(3−8−1)、化合物(3−10−1)、および化合物(3−13−1)である。特に好ましい化合物(3)は、化合物(3−1−1)、化合物(3−3−1)、化合物(3−5−1)、化合物(3−7−1)、および化合物(3−8−1)である。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。このような添加物は、化合物(1)以外の重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、消泡剤、色素などである。
【0107】
本発明の組成物は、重合可能な化合物を含んでいるので、高分子支持配向型素子に適合している。この組成物は化合物(1)とは異なる重合可能な化合物(すなわち、その他の重合可能な化合物)をさらに含んでもよい。その他の重合可能な化合物の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンである。さらに好ましい例は、アクリレートまたはメタクリレートの誘導体である。
【0108】
化合物(1)以外のさらに含んでもよい重合可能な化合物の追加例は、化合物(4−1)から化合物(4−9)である。
【0109】
【0110】
化合物(4−1)から化合物(4−9)において、R11、R12、R13、およびR14は独立して、アクリロイルまたはメタクリロイルであり、R15およびR16は独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1から10のアルキルであり;ZおよびZ10は独立して、単結合または炭素数1から12のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、ZおよびZ10の少なくとも1つは単結合または−O−であり;Z11およびZ12は独立して、単結合または炭素数1から12のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−により置き換えられていてもよく;i、j、kは独立して、0、1、または2であり、化合物(4−1)において、iとjとの和は1以上であり、化合物(4−4)において、iとjとkとの和は1以上である。
【0111】
重合可能な化合物の好ましい割合は、液晶組成物の全重量を100重量部としたとき、その効果を得るために、約0.03重量部以上であり、表示不良を防ぐために約10重量部以下である。さらに好ましい割合は、約0.1重量部から約2重量部の範囲である。重合可能な化合物の中で、化合物(1)は液晶組成物への溶解性が高く、反応性が高い。重合可能な化合物の中で、化合物(1)の好ましい割合は、10重量部以上である。さらに好ましい割合は、50重量部以上である。特に好ましい割合は、80重量部以上である。特に好ましい割合は、100重量部である。
【0112】
重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤などの適切な開始剤存在下でUV照射などにより重合する。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光開始剤であるIrgacure651(商品名;BASF)、Irgacure184(商品名;BASF)、またはDarocure1173(商品名;BASF)がラジカル重合に対して適切である。好ましい光重合開始剤の割合は、重合可能な化合物の約0.1重量%から約5重量%の範囲であり、さらに好ましくは約1重量%から約3重量%の範囲である。液晶表示素子における2つの基板の間に、重合可能な化合物を含む液晶組成物を配置し、これらの基板の相対する電極層の間に電圧を印加しながら重合可能な化合物を重合する工程を経てもよいし、液晶表示素子における2つの基板の間に予め重合させた化合物を含む液晶組成物を配置してもよい。
【0113】
重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4-tert-ブチルカテコール、4-メトキシフェノ−ル、フェノチアジンなどである。
【0114】
光学活性な化合物は、液晶分子にらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ、という効果を有する。光学活性な化合物を添加することによって、らせんピッチを調整することができる。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性な化合物を添加してもよい。光学活性な化合物の好ましい例として、下記の化合物(Op−1)から化合物(Op−18)を挙げることができる。化合物(Op−18)において、Jは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、R24は炭素数1から10のアルキルである。光学活性な化合物の好ましい割合は約5重量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01重量%から約2重量%の範囲である。
【0115】
【0116】
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−1)および化合物(AO−2);IRGANOX 415、IRGANOX 565、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 3114、およびIRGANOX 1098(商品名;BASF)を挙げることができる。化合物(AO−1)において、R25が−CHである場合は、揮発性が大きいので、大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するときに有効である。R25が−C15である場合は、揮発性が小さいので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約600ppm以下である。さらに好ましい割合は、約100ppmから約300ppmの範囲である。
【0117】
紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。具体例として下記の化合物(AO−3)および化合物(AO−4);TINUVIN 329、TINUVIN P、TINUVIN 326、TINUVIN 234、TINUVIN 213、TINUVIN 400、TINUVIN 328、およびTINUVIN 99−2(商品名;BASF);および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を挙げることができる。立体障害のあるアミンのような光安定剤は、大きな電圧保持率を維持するために好ましい。光安定剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−5)および化合物(AO−6);TINUVIN 144、TINUVIN 765、およびTINUVIN 770DF(商品名;BASF)を挙げることができる。これらの吸収剤や安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約10000ppm以下である。さらに好ましい割合は約100ppmから約10000ppmの範囲である。
【0118】
熱安定剤も大きな電圧保持率を維持するために有効であり、好ましい例としてIRGAFOS 168(商品名;BASF)を挙げることができる。消泡剤は、泡立ちを防ぐために有効である。消泡剤の好ましい例は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどである。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために約1ppm以上であり、表示の不良を防ぐために約1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、約1ppmから約500ppmの範囲である。
【0119】
【0120】
化合物(AO−1)において、R25は炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のアルコキシ、−COOR26、または−CHCHCOOR26であり;R26は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO−2)および化合物(AO−5)において、R27は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO−5)において、KおよびLは独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;dは0、1、または2であり;R28は水素、メチルまたはO(酸素ラジカル)である。
【0121】
GH(guest host)モードの素子に適合させるためにアゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に混合される。色素の好ましい割合は、約0.01重量%から約10重量%の範囲である。
【0122】
第七に、成分化合物の合成法を説明する。これらの化合物は既知の方法によって合成できる。合成法を例示する。化合物(1)は、市販品を使用した。化合物(1−1−1)の市販品としては「三菱ガス化学株式会社製ダイヤピュレストHADA、HADM」、化合物(1−1−2)の市販品としては「東亞合成株式会社製アロニックスM−5400」、化合物(1−1−3)の市販品としては「川崎化成工業株式会社製Mc−HN」、化合物(1−2−1)の市販品としては「東亞合成株式会社製アロニックスM−5700」、および、化合物(1−3−1)の市販品としては「東京化成工業株式会社製 2,2,6,6-Tetramethyl-4-piperidyl methacrylate」が挙げられる。化合物(2−1)および化合物(2−5)は、特表平2−503441号公報に記載された方法で合成する。化合物(3−1)および化合物(3−5)は、特開昭59−176221号公報に記載された方法で合成する。化合物(4)は、特開2012−001526号公報に記載された方法で合成する。なお、化合物(5)は本発明の比較例に使用する。化合物(5)では、本発明の特徴である水素結合供与体の能力を有する極性基を有さないため、高い重合反応性と良好なプレチルト付与能が望めない。下記の化合物(5−1)および(5−4)は東京化成工業(株)製、化合物(5−2)はアルドリッチ社製、化合物(5−3)は共栄社化学(株)製の市販品を使用した。
【0123】
合成法を記載しなかった化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法にしたがって合成できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0124】
最後に、組成物の用途を説明する。大部分の組成物は、約−10℃以下の下限温度、約70℃以上の上限温度、そして約0.07から約0.20の範囲の光学異方性を有する。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、約0.08から約0.25の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
【0125】
この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VA、PSA、a−PSAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。a−PSAモードおよびPSAモードなどの高分子支持配向モードを有するAM素子への使用は特に好ましい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン−TFT素子または多結晶シリコン−TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。
【0126】
液晶表示素子の製造方法の一例は、次のとおりである。アレイ基板とカラーフィルター基板と呼ばれる2つの基板を有する素子を用意する。この基板の少なくとも一方は、電極層を有する。一方、液晶性化合物を混合して液晶組成物を調製する。この組成物に化合物(1)を添加する。必要に応じて添加物を添加してもよい。この液晶組成物(または、液晶材料)を素子に注入する。この素子に電圧を印加した状態で光照射する。化合物(1)の場合は、紫外線が好ましい。光照射によって化合物(1)を重合させる。この重合によって、重合体を含有する液晶組成物が生成する。高分子支持配向型液晶表示素子は、このような手順で製造する。
【0127】
この手順において、電圧を印加したとき、液晶分子が電場の作用によって配向する。この配向に従って化合物(1)の分子も配向する。この状態で化合物(1)が紫外線によって重合するので、この配向を維持した重合体が生成する。この重合体の効果によって、素子の応答時間が短縮される。画像の焼き付きは、液晶分子の動作不良であるから、この重合体の効果によって焼き付きも同時に改善されることになる。
【実施例】
【0128】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されない。本発明は、LC−Aの組成物とLC−Bの組成物との混合物を含む。本発明は、実施例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。合成した化合物は、プロトン核磁気共鳴分光法(H−NMR)などにより同定した。化合物の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により決定した。まず、分析方法について説明をする。
【0129】
H−NMR分析:測定には、ブルカーバイオスピン製のDRX−500を用いた。試料を、CDClなどの重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数24回などの条件で行った。内部標準としてはテトラメチルシランを用いた。NMRスペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットであることを意味する。
【0130】
HPLC分析:測定には、島津製作所製のProminence(LC−20AD;SPD−20A)を用いた。カラムはワイエムシー製のYMC−Pack ODS−A(長さ150mm、内径4.6mm、粒子径5μm)を用いた。溶出液はアセトニトリル/水(容積比:80/20)を用い、流速は1mL/分に調整した。検出器としてはUV検出器、RI検出器、CORONA検出器などを適宜用いた。UV検出器を用いた場合、検出波長は254nmとした。試料はアセトニトリルに溶解させ、この溶液(0.1重量%)の1μLを試料室に導入した。記録計としては島津製作所製のC−R7Aplusを用いた。得られたクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【0131】
HPLCより得られたクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に関連する。一般には、成分化合物の重量%および重量部数は、成分化合物の面積%と同一ではない。しかしながら、上述したカラムを用いる場合には、成分化合物の重量%および重量部数をピークの面積%から算出してよい。本発明においては、成分化合物の補正係数の間に大きな差異がないからである。
【0132】
ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトンに溶解させ、この溶液(0.1重量%)の1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC−R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【0133】
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1−M50−025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。
【0134】
組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出する。液晶性化合物はガスクロマトグラフで検出できる。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合(モル比)に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(重量百分率)は、モル比で補正することによってピークの面積比から算出できる。
【0135】
紫外可視分光分析:測定には、島津製作所製のPharmaSpec UV‐1700を用いた。検出波長は190nmから700nmとした。試料はアセトニトリルに溶解させて、0.01mmol/Lの溶液を調製し、石英セル(光路長1cm)に入れて測定した。
【0136】
DSC測定:測定には、パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いた。試料を3℃/分速度で昇降温した。試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め、融点を決定した。
【0137】
重合性化合物と他の液晶組成物の相溶性:重合性液晶組成物を所定の温度の恒温槽中に7日間放置した後の液晶相の状態を目視により観察した。
【0138】
測定試料:組成物の上限温度、粘度、光学異方性などの特性を測定するときは、組成物をそのまま試料として用いた。化合物の特性を測定するときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって測定用の試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(測定用試料の測定値)−0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、粘度、光学異方性、および誘電率異方性の値を求めた。
【0139】
母液晶の成分とその割合は下記のとおりであった。
【0140】
特性は下記の方法にしたがって測定した。それらのいくつかは、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association以下JEITAという)で審議制定されるJEITA規格(JEITA ED−2521B)に記載された方法、またはこれを修飾した方法である。
【0141】
(1)ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0142】
(2)光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0143】
(3)誘電率異方性(Δε;25℃で測定):誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε‖およびε⊥)は次のように測定した。
1)誘電率(ε‖)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0144】
(4)残留モノマー濃度(ReM;重量部);液晶組成物100重量部に対して、重合性化合物0.3重量部を添加して溶解することにより、試料を調整した。試料をセルギャップ3.5μmで垂直配向を誘起するポリイミド配向膜を塗布したITO付きセルに注入した。このセルに、15Vの電圧を印加しながら80mW/cmの紫外線を375秒間照射した。紫外線の照射には、アイグラフィックス株式会社製のアイ紫外線硬化用装置を用いた。その後、HPLCにより残留モノマー濃度を測定した。
【0145】
(5)プレチルト角(Pt;°);液晶組成物100重量部に対して、重合性化合物0.3重量部を添加して溶解することにより、試料を調整した。試料をセルギャップ3.5μmで垂直配向を誘起するポリイミド配向膜を塗布したITO付きセルに注入した。このセルのプレチルト角(クリスタルローテーション法)を測定した後、15Vの電圧を印加しながら80mW/cmの紫外線を375秒間照射した。紫外線の照射には、アイグラフィックス株式会社製のアイ紫外線硬化用装置を用いた。その後、このセルのプレチルト角を測定した。ここでは、大きい値(即ち、0°から大きくずれている)が大きなプレチルト角を意味する。
【0146】
比較例および実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。表3において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、第一成分を除く、第二成分と第三成分からなる液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。重合性化合物の割合(部)は、第一成分を除く、第二成分と第三成分からなる液晶組成物の総重量に基づいた重量部数(重量部)である。液晶組成物には、この他に不純物が含まれている。最後に、組成物の特性値をまとめた。
【0147】
【0148】
《 重合性化合物と他の液晶組成物の相溶性の比較 》
[実施例1から8、比較例1から5]
本発明の第一成分を含有していない液晶組成物であるLC−Aを調整した。この組成物の成分および特性は下記のとおりである。
【0149】
〈 LC−A 〉
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 15%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 10%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 10%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 8%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 5%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (2−16−1) 4%
4−HHB(2F,3CL)−O2 (2−16−1) 3%
3−HBB(2F,3CL)−O2 (2−17−1) 4%
2−HH−3 (3−1−1) 25%
3−HH−4 (3−1−1) 10%
3−HHB−1 (3−5−1) 3%
3−HHB−O1 (3−5) 3%
NI=77.5℃;Δn=0.089;Δε=−2.9.
【0150】
上記、液晶組成物LC−A100部に所定の量の重合性化合物(1−1−1−1)、(1−1−1−2)、(4−2−1)をそれぞれ加え、120℃で5分間加熱し、重合性液晶組成物 PLC−A−1−1からPLC−A−3−4を得た。
【0151】
【0152】
全ての液晶組成物について、相溶性評価を行った。評価結果を表4に示す。なお、溶解性評価は、ガラス瓶中の重合性液晶組成物を所定の温度にて1週間静置し、目視により結晶の析出の有無を確認した。表4中の記号において“○”は結晶が認められないもの、“×”は結晶が認められたものを示す。
【0153】
〈 表4 〉
【0154】
表4より証明される通り、既知のPSA用重合性化合物(4−2−1)を含有する重合性液晶組成物より、本発明の重合性化合物(1−1−1−1)および(1−1−1−2)を含有する重合性液晶組成物は、良好な相溶性を有することがわかる。即ち、本発明の重合性液晶組成物は、高濃度の重合性化合物の使用が可能であるために、既知の重合性化合物を用いた組成物よりも良好なプレチルト付与性を得ることが可能である。
【0155】
《 残留モノマー濃度および、プレチルト角の比較 》
[実施例9]
上記の液晶組成物LC−A 100部に対して、下記一般式1−1−1で示される重合性化合物0.3部を添加し均一溶解することで、重合性液晶組成物PLC−A−1−5を調整した。PLC−A−1−5のNI、ΔnおよびΔεの値は、LC−Aの値とほとんど違いがないことを確認した。重合性液晶組成物PLC−A−1−5の紫外露光後の残留モノマー量ReM)は0.18部であり、良好な重合反応性を有することがわかった。また、重合性液晶組成物PLC−A−1−5の紫外照射前のプレチルト角(Pt)は0.2°であるのに対して、紫外照射後のプレチルト角(Pt)は1.3°である事から、良好なプレチルト付与特性を有することがわかった。
【0156】
[実施例10から22]
実施例9と同様にして、実施例10から22、比較例6から12の残留モノマー濃度(ReM)および紫外光露光前後のプレチルト角(Pt)を測定した。
[比較例6から12]
比較例6から12の残留モノマー濃度(ReM)および紫外光露光前後のプレチルト角(Pt)を測定した。
比較例6および7にて用いた化合物(4−1−1)および(4−2−1)は既知のPSA用重合性化合物である。一方、比較例8から12に用いた化合物(5−1)から(5−4)は、1個の重合性基を有するが、本発明の特徴である水素結合供与体の能力を有する極性基を持たない重合性化合物である。なお、化合物(5−1)および(5−4)は東京化成工業株式会社製、化合物(5−2)はアルドリッチ社製、化合物(5−3)は共栄社化学株式会社製の市販品を使用した。結果を表5に示す。
【0157】
〈 表5 〉
【0158】
表5からわかるとおり、本発明の重合性化合物(1−1−1−1)、(1−1−1−2)、(1−1−2−1)、(1−1−3−1)、(1−2−1−1)、および、(1−3−1−1)を用いた重合性液晶は、既知のPSA用重合性化合物(4−1−1)および(4−2−1)を用いた重合性液晶に比べて、紫外露光による重合反応性が高く、高いプレチルト角を得ることが可能である。
【0159】
また、本発明の重合性化合物(1−1−1−1)、(1−1−1−2)、(1−1−2−1)、(1−1−3−1)、(1−2−1−1)、および、(1−3−1−1)を用いた重合性液晶は、極性基を有さない重合性化合物(5−1)から(5−4)を用いた重合性液晶よりも重合反応性とプレチルト付与特性が優れていることがわかった。
【0160】
[実施例23から34、比較例13]
本発明の第一成分を含有していない液晶組成物であるLC−BからLC−Mを調整した。この組成物の成分および特性は、下記のとおりである。
【0161】
〈 LC−B 〉
V−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1) 15%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 10%
2−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 4%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 10%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 10%
2−HHB(2F,3CL)−O2 (2−9−1) 2%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (2−9−1) 3%
4−HHB(2F,3CL)−O2 (2−9−1) 3%
5−HHB(2F,3CL)−O2 (2−9−1) 3%
2−HH−3 (3−1−1) 27%
3−HB−O2 (3−2−1) 2%
3−HHB−1 (3−5−1) 3%
3−HHB−3 (3−5−1) 5%
3−HHB−O1 (3−5−1) 3%
NI=78.3℃;Δn=0.094;Δε=−3.0.
【0162】
〈 LC−C 〉
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1) 6%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 17%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 10%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−5−1) 7%
5−HHB(2F,3F)−O2 (2−5−1) 6%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 5%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 10%
2−HH−3 (3−1−1) 20%
3−HH−4 (3−1−1) 4%
5−HB−O2 (3−2−1) 4%
3−HHB−1 (3−5−1) 4%
5−HBB(F)B−2 (3−13−1) 7%
NI=76.6℃;Δn=0.095;Δε=−3.1.
【0163】
〈 LC−D 〉
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1) 6%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 15%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 5%
3−BB(2F,3F)−O2 (2−3−1) 5%
3−H1OB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 5%
3−HH2B(2F,3F)−O2 (2−6−1) 5%
2−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 5%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 6%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 6%
2−HH−3 (3−1−1) 5%
3−HH−4 (3−1−1) 10%
1−BB−3 (3−3−1) 4%
3−HHB−1 (3−5−1) 4%
3−HHB−3 (3−5−1) 5%
3−HHB−O1 (3−5−1) 3%
5−HBB(F)B−2 (3−13−1) 6%
5−HBB(F)B−3 (3−13−1) 5%
NI=87.4℃;Δn=0.119;Δε=−3.4.
【0164】
〈 LC−E 〉
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1) 10%
3−BB(2F,3F)−O2 (2−3−1) 7%
3−H1OB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 6%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−7−1) 3%
2−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 10%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 5%
3−dhHB(2F,3F)−O2 (2−14−1) 3%
3−HH1OCro(7F,8F)−5 (2−19−1) 5%
2−HH−5 (3−1−1) 10%
3−HH−4 (3−1−1) 8%
5−HB−O2 (3−2−1) 8%
1−BB−3 (3−3−1) 7%
3−HHB−1 (3−5−1) 3%
3−HHB−O1 (3−5−1) 2%
5−HBB−2 (3−6−1) 4%
3−HHEBH−3 (3−10−1) 2%
3−HHEBH−5 (3−10−1) 2%
3−HBBH−5 (3−11−1) 3%
5−HBB(F)B−2 (3−13−1) 2%
NI=87.5℃;Δn=0.111;Δε=−2.8.
【0165】
〈 LC−F 〉
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1) 10%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 13%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 12%
3−BB(2F,3F)−O2 (2−3−1) 3%
5−H1OB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 5%
5−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−7−1) 6%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 7%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (2−9−1) 4%
2−HH−3 (3−1−1) 8%
3−HHEH−3 (3−4−1) 2%
3−HHEH−5 (3−4−1) 2%
4−HHEH−3 (3−4−1) 2%
4−HHEH−5 (3−4−1) 2%
3−HHB−1 (3−5−1) 9%
3−HHB−3 (3−5−1) 7%
3−HHB−O1 (3−5−1) 3%
3−HHEBH−3 (3−10−1) 2%
3−HHEBH−5 (3−10−1) 3%
NI=89.8℃;Δn=0.093;Δε=−4.1.
【0166】
〈 LC−G 〉
V−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1) 6%
V−HB(2F,3F)−O3 (2−1−1) 5%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 5%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−7−1) 5%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 4%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 7%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 5%
3−dhBB(2F,3F)−O2 (2−15−1) 6%
3−HH1OCro(7F,8F)−5 (2−19−1) 8%
2−HH−3 (3−1−1) 16%
3−HH−5 (3−1−1) 5%
3−HB−O1 (3−2−1) 6%
1−BB−3 (3−3−1) 5%
3−HHB−1 (3−5−1) 5%
3−HHB−O1 (3−5−1) 3%
3−HBB−2 (3−6−1) 6%
3−B(F)BB−2 (3−8−1) 3%
NI=82.5℃;Δn=0.106;Δε=−3.1.
【0167】
〈 LC−H 〉
V−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1) 10%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 5%
V2−BB(2F,3F)−O2 (2−3−1) 5%
3−H1OB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 6%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 6%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (2−9−1) 3%
3−DhHB(2F,3F)−O2 (2−12−1) 3%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 3%
3−HH1OCro(7F,8F)−5 (2−19−1) 5%
2−HH−3 (3−1−1) 19%
5−HB−O2 (3−2−1) 5%
V2−BB−1 (3−3−1) 3%
3−HHB−1 (3−5−1) 4%
3−HHB−3 (3−5−1) 7%
3−HHB−O1 (3−5−1) 4%
2−BB(F)B−3 (3−7−1) 4%
3−HB(F)BH−3 (3−12−1) 3%
5−HBB(F)B−2 (3−13−1) 5%
NI=83.8℃;Δn=0.111;Δε=−2.6.
【0168】
〈 LC−I 〉
V−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1) 14%
3−H2B(2F,3F)−O4 (2−2−1) 5%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 10%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 4%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 5%
3−HH1OCro(7F,8F)−5 (2−19−1) 7%
2−HH−3 (3−1−1) 23%
3−HH−O1 (3−1−1) 5%
3−HH−V (3−1−1) 3%
4−HHEH−3 (3−4−1) 3%
3−HHB−1 (3−5−1) 6%
3−HHB−3 (3−5−1) 6%
3−HHB−O1 (3−5−1) 3%
2−BB(F)B−5 (3−7−1) 3%
3−B(F)BB−2 (3−8−1) 3%
NI=81.3℃;Δn=0.098;Δε=−2.6.
【0169】
〈 LC−J 〉
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 20%
2−HHB(2F,3F)−O2 (2−5−1) 7%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−7−1) 10%
3−HH1OB(2F,3F)−1 (2−7−1) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 9%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (2−9−1) 5%
2−HH−5 (3−1−1) 4%
3−HH−4 (3−1−1) 15%
3−HH−V (3−1−1) 8%
3−HH−V1 (3−1−1) 4%
3−HB−O2 (3−2−1) 6%
3−HHB−3 (3−5−1) 6%
3−HB(F)HH−2 (3−9−1) 3%
NI=81.9℃;Δn=0.084;Δε=−2.8.
【0170】
〈 LC−K 〉
V−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1) 6%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 5%
3−BB(2F,3F)−O2 (2−3−1) 5%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−7−1) 5%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 4%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 7%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 5%
3−dhBB(2F,3F)−O2 (2−15−1) 6%
3−HH1OCro(7F,8F)−5 (2−19−1) 8%
2−HH−3 (3−1−1) 16%
3−HH−5 (3−1−1) 5%
3−HB−O1 (3−2−1) 6%
1−BB−3 (3−3−1) 5%
3−HHB−1 (3−5−1) 5%
3−HHB−O1 (3−5−1) 3%
3−HBB−2 (3−6−1) 6%
3−B(F)BB−2 (3−8−1) 3%
NI=84.1℃;Δn=0.112;Δε=−3.1.
【0171】
〈 LC−L 〉
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 15%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−3−1) 5%
2−HHB(2F,3F)−O2 (2−5−1) 7%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−7−1) 10%
3−HH1OB(2F,3F)−1 (2−7−1) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 9%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (2−9−1) 5%
2−HH−5 (3−1−1) 4%
3−HH−4 (3−1−1) 15%
3−HH−V (3−1−1) 8%
3−HH−V1 (3−1−1) 4%
3−HB−O2 (3−2−1) 6%
3−HHB−3 (3−5−1) 6%
3−HB(F)HH−2 (3−9−1) 3%
NI=82.0℃;Δn=0.087;Δε=−2.8.
【0172】
〈 LC−M 〉
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 17%
3−BB(2F,3F)−O2 (2−3−1) 5%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−7−1) 8%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (2−9−1) 4%
4−HHB(2F,3CL)−O2 (2−9−1) 3%
5−HHB(2F,3CL)−O2 (2−9−1) 3%
3−HBB(2F,3CL)−O2 (2−10−1) 8%
2−BB(2F,3F)B−3 (2−11−1) 4%
3−HH2B(2F,3F,6Me)−O2 (2−16−1) 3%
3−HH1OB(2F,3F,6Me)−O2(2−17−1) 3%
5−H1OCro(7F,8F)−5 (2−18−1) 3%
3−HH−V (3−1−1) 27%
V−HHB−1 (3−5−1) 7%
2−BB(F)B−3 (3−7−1) 2%
3−HHEBH−3 (3−10−1) 3%
NI=82.4℃;Δn=0,098;Δε=−2.9.
【0173】
上記で調整した液晶組成物LC−BからLC−M、重合性化合物(1−1−1−2)および(4−1−1)を使用して、実施例9と同様にして、実施例23から34、比較例13の残留モノマー濃度(ReM)および紫外光露光前後のプレチルト角(Pt)を測定した。結果を表6に示す。
【0174】
〈 表6 〉
【0175】
表6の結果より、実施例23から34は、比較例13に比べて、重合反応性、プレチルト付与特性ともに優れていることがわかる。従って、本発明によるa−PSAモード用液晶組成物は、既存PSAモード用液晶組成物に比べて、さらに優れた特性を有すると結論される。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の液晶組成物は、重合性化合物を含有し、そして高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する、または少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する。この組成物を含有する液晶表示素子は、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに広く用いることができる。