【文献】
KESHTOV, M. L. et al.,New functionalized polyimides,Vysokomolekulyarnye Soedineniya, Seriya A i Seriya B,ロシア,2001年,Vol.43, No.6,pp.963-969,ISSN 1023-3091
【文献】
RUSANOV, A. L. et al.,A new diamine with methyl o-substituents and the related organosoluble polyimide,Vysokomolekulyarnye Soedineniya, Seriya A i Seriya B,ロシア,2000年,Vol.42, No.11,pp.1947-1952,ISSN 1023-3091
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶配向剤から被膜を形成し、その焼成の前又は後に、上記被膜に波長300〜400nmの紫外線を含む偏光紫外線を照射することを特徴とする液晶配向膜の製造方法。
請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶配向剤から得られる被膜に、その焼成の前又は後に、上記被膜に波長300〜400nmの紫外線を含む偏光紫外線を照射して得られる液晶配向膜。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<ポリイミド前駆体及びポリイミド>
本発明の液晶配向剤は、下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有する。
【化4】
【0016】
上記式(1)において、X
1は4価の有機基である。Y
1は下記式(A)で表される2価の有機基である。R
1、R
2は水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくは、水素原子である。
【化5】
上記式(A)において、ベンゼン環の一方又は両方に(Z)mからなる置換基を有してしてもよい。ここで、Zは、炭素数1〜4のアルキルが好ましく、mは1〜4、好ましくは1又は2の整数である。
式(1)において、式(A)で表されるY
1の窒素原子への結合部位は、オルト位、メタ位、又はパラ位のいずれでもよいが、好ましくはパラ位である。
【0017】
上記式(1)中のX
1は4価の有機基である限り、特に限定されるものではないが、テトラカルボン酸誘導体に由来する4価の有機基が好ましい。
ポリイミド前駆体中、X
1は2種類以上が混在していてもよい。X
1の具体例を示すならば、下記式(X−1)〜(X−43)の構造が挙げられる。なかでも、入手性の点から、X
1は(X−1)〜(X−14)が好ましい。
【0021】
式(X−1)におけるR
5〜R
8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、又は、フェニル基である。R
5〜R
8が嵩高い構造である場合、液晶配向性を低下させる可能性があるため、水素原子、メチル基、又はエチル基がより好ましく、水素原子、又はメチル基が特に好ましい。
【0022】
上記式(1)においてY
1は、下記のジアミン化合物に由来する2価の有機基が好ましい。
【化9】
【0023】
また、本発明のポリイミド前駆体は、上記式(1)で表される構造単位の他に、下記式(10)で表される構造単位を含んでいてもよい。
【化10】
式(10)において、R
4は、上記式(1)のR
1の定義と同じである。式(10)において、X
2は4価の有機基であり、好ましい例も含めて、上記式(1)中のX
1の定義と同じである。Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、若しくは炭素数2〜10のアルキニル基である。
【0024】
上記炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロヘキシル基などが挙げられる。
上記炭素数2〜10のアルケニル基としては、上記アルキル基に存在する1つ以上のCH
2−CH
2をCH=CHに置き換えたものが挙げられる。より具体的には、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
上記炭素数2〜10のアルキニル基としては、上記アルキル基に存在する1つ以上のCH
2−CH
2をC≡Cに置き換えたものが挙げられ、より具体的には、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基などが挙げられる。
【0025】
上記炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、及び炭素数2〜10のアルキニル基は、炭素数が1〜10又は2〜10であれば置換基を有していてもよく、更には置換基によって環構造を形成してもよい。なお、置換基によって環構造を形成するとは、置換基同士又は置換基と母骨格の一部とが結合して環構造となる場合である。
この置換基の例としては、ハロゲン基、水酸基、チオール基、ニトロ基、アリール基、オルガノオキシ基、オルガノチオ基、オルガノシリル基、アシル基、エステル基、チオエステル基、リン酸エステル基、アミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などを挙げることができる。
【0026】
ポリイミド前駆体において、Z
1及びZ
2は、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基が特に好ましい。一般に、嵩高い構造を導入すると、アミノ基の反応性や液晶配向性を低下させる可能性があるためである。
上記式(10)において、Y
2は2価の有機基であり、その具体例を挙げるならば、下記式(Y−1)〜(Y−114)が挙げられる。また、ポリイミド前駆体中、Y
2は2種類以上が混在していてもよい。
【0034】
なかでも、良好な液晶配向性を得るためには、直線性の高いポリイミドを形成するジアミンを用いることが好ましい。したがって、液晶配向性の点からは、Y
2は、Y−7、Y−10、Y−11、Y−12、Y−13、Y−21、Y−22、Y−23、Y−25、Y−26、Y−27、Y−41、Y−42、Y−43、Y−44、Y−45、Y−46、Y−48、Y−61、Y−63、Y−64、Y−71、Y−72、Y−73、Y−74、Y−75、又はY−98であることが好ましい。
【0035】
また、プレチルト角を高くしたい場合は、側鎖に長鎖アルキル基、芳香族環、脂肪族環、ステロイド骨格、又はこれらを組み合わせた構造を有するジアミンを用いることが好ましい。したがって、プレチルト角の点からは、Y
2は、Y−76、Y−77、Y−78、Y−79、Y−80、Y−81、Y−82、Y−83、Y−84、Y−85、Y−86、Y−87、Y−88、Y−89、Y−90、Y−91、Y−92、Y−93、Y−94、Y−95、Y−96、又はY−97であることが好ましい。
【0036】
本発明の液晶配向剤が上記式(10)で表される構造単位を含有する場合、式(10)で表される構造単位の比率が高いと、波長300〜400nmの紫外線を含む偏光紫外線で、異方性が付与できない可能性があるため、式(10)で表される構造単位の比率は、全構造単位1モルに対して0〜70モル%が好ましく、0〜55モル%がさらに好ましい。すなわち、式(1)で表される構造の含有量は30〜100モル%が好ましく、45〜100モル%がさらに好ましい。
【0037】
<ポリアミック酸の製造方法>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、上記式(1)の構造単位において、X
1を形成するテトラカルボン酸若しくはその二無水物と、Y
1を形成するジアミン成分とを、有機溶媒の存在下で反応させて得ることができる。
上記の反応に用いる有機溶媒は、生成したポリアミック酸が溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を挙げるならば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンなどである。また、ポリイミド前駆体の溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン又は下記の式(D−1)〜式(D−3)で示される有機溶媒を用いることができる。
【0038】
【化18】
式(D−1)〜式(D−3)中、D
1は炭素数1〜3のアルキル基を示し、D
2は炭素数1〜3のアルキル基を示し、D
3は炭素数1〜4のアルキル基を示す。
これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらには、単独ではポリアミック酸を溶解させない溶媒であっても、生成したポリアミック酸が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリアミック酸を加水分解させる原因となるので、有機溶媒はなるべく脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0039】
有機溶媒中でジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを混合して反応させる方法としては、ジアミンを有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸二無水物をそのまま、又は有機溶媒に分散あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸二無水物を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液にジアミンを添加する方法、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒に交互に又は同時に添加する方法などが挙げられ、これらのいずれの方法であってもよい。
【0040】
上記のポリアミック酸合成時の温度は−20〜150℃の範囲を選択することができるが、好ましくは−5〜100℃であり、より好ましくは0〜80℃である。また、反応時間はポリアミック酸の重合が安定する時間より長い範囲で任意に選択することができるが、好ましくは30分〜24時間であり、より好ましくは1〜12時間である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、原料のジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物の濃度が低すぎると、高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると、反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜20質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加しても構わない。
ポリアミック酸の製造反応において、ジアミン成分のモル数に対する、テトラカルボン酸二無水物のモル数の比は0.8〜1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応と同様、このモル比が1.0に近いほど、生成するポリアミック酸の分子量は大きくなる。
【0041】
上記のようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで、精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられ、水、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが好ましい。
【0042】
<ポリアミック酸エステルの製造>
本発明のポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステルは、以下に示す[1]、[2]又は[3]の製法で製造することができる。
【0043】
[1]ポリアミック酸から製造する場合
ポリアミック酸エステルは、前記のように製造されたポリアミック酸をエステル化することによって製造できる。具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤とを、有機溶剤の存在下で、−20〜150℃、好ましくは0〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって製造することができる。
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジ−t−ブチルアセタール、1−メチル−3−p−トリルトリアゼン、1−エチル−3−p−トリルトリアゼン、1−プロピル−3−p−トリルトリアゼン、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジンー2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2〜6モルが好ましく、2〜4モルがより好ましい。
有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は1,3−ジメチル−イミダゾリジノンが挙げられる。また、ポリイミド前駆体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、又は前記式(D−1)〜式(D−3)で示される溶媒を用いることができる。
【0044】
これら有機溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、前記有機溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには、生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
上記の反応に用いる有機溶媒は、ポリマーの溶解性から、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。製造時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0045】
[2]テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により製造する場合
ポリアミック酸エステルは、上記式(1)の構造単位において、X
1を形成するテトラカルボン酸ジエステルジクロリドと、Y
1を形成するジアミン化合物を含有するジアミン成分とから製造することができる。
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを、塩基と有機溶剤の存在下で、−20〜150℃、好ましくは0〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって製造することができる。
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、1〜8倍モルであることが好ましく、2〜4倍モルがより好ましい。
【0046】
上記の反応に用いる有機溶媒は、モノマーおよびポリマーの溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。製造時のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの製造に用いる有機溶媒は、できるだけ脱水されていることが好ましく、反応は窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0047】
[3]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンから製造する場合
ポリアミック酸エステルは、上記式(1)の構造単位において、X
1を形成するテトラカルボン酸ジエステルと、Y
1を形成するジアミン化合物を含有するジアミン成分とを重縮合することにより製造することができる。
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを、縮合剤、塩基、及び有機溶剤の存在下で、0〜150℃、好ましくは0〜100℃において、30分〜24時間、好ましくは3〜15時間反応させることによって製造することができる。
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して2〜3倍モルが好ましく、2〜2.5倍モルがより好ましい。
【0048】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという点から、ジアミン成分に対して2〜4倍モルが好ましく、2〜3倍モルがより好ましい。
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで、反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して0.1〜10.0倍モルが好ましく、2.0〜3.0倍モルがより好ましい。
【0049】
上記3つのポリアミック酸エステルの製造方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記[1]又は上記[2]の製法が特に好ましい。
上記のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して、精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0050】
<ポリイミドの製造方法>
本発明に用いられるポリイミドは、前記ポリイミド前駆体をイミド化することにより製造することができる。
本発明のポリイミドにおいて、アミック酸基、又はアミック酸エステル基の閉環率(イミド化率)は、必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整すればよい。
ポリイミド前駆体を閉環させる方法としては、触媒を使用せずにポリイミド前駆体を加熱する熱イミド化、触媒を使用する触媒イミド化が挙げられる。
ポリイミド前駆体を熱イミド化させる場合は、ポリイミド前駆体の溶液を、100〜400℃、好ましくは120〜250℃に加熱し、イミド化反応により生成する水、又はアルコールを系外に除きながら行う方が好ましい。
【0051】
ポリイミド前駆体の触媒イミド化は、ポリアミック酸の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、−20〜250℃、好ましくは0〜180℃で攪拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミック酸基の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。
塩基性触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどを挙げることができ、中でもピリジンは、反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。
酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができる。中でも無水酢酸を用いると、反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0052】
ポリイミドの反応溶液から、ポリマー成分を回収する場合には、反応溶液を貧溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる貧溶媒としては、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセロソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させたポリマーは、濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することが好ましい。
【0053】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、液晶配向膜を作製するための塗布液であり、その主成分が、樹脂被膜を形成するための重合体と、この重合体を溶解させる有機溶媒とを含有する組成物である。重合体の分子量は、重量平均分子量で2,000〜500,000が好ましく、より好ましくは5,000〜300,000であり、さらに好ましくは、10,000〜100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000〜250,000であり、より好ましくは、2,500〜150,000であり、さらに好ましくは、5,000〜50,000である。
【0054】
本発明の液晶配向剤における重合体の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から、1質量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは10質量%以下とすることが好ましい。特に好ましい重合体の濃度は、2〜8質量%である。
上記樹脂成分は、全てが本発明の重合体であってもよく、また、本発明の重合体以外の他の重合体が混合されていてもよい。かかる他の重合体としては、ジアミン成分として、4,4’−ジアミノベンジル(DAB)以外のジアミン化合物を使用して得られるポリイミド前駆体又はポリイミドなどが挙げられる。
【0055】
本発明の液晶配向剤に含有される有機溶媒は、重合体成分が、好ましくは均一に溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を挙げるならば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。また、単独では重合体成分を均一に溶解できない溶媒であっても、重合体が析出しない範囲であれば、上記の有機溶媒に混合してもよい。
【0056】
本発明の液晶配向剤は、重合体成分を溶解させるための有機溶媒の他に、液晶配向剤を基板へ塗布する際の塗膜均一性を向上させるための溶媒を含有してもよい。かかる溶媒は、一般的に低表面張力の溶媒が用いられる。その具体例としては、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等が挙げられる。これらの溶媒は2種上を併用してもよい。
この貧溶媒は、樹脂の溶解性が低い貧溶媒となる。これらの溶媒は、液晶配向剤に含有される有機溶媒の5〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量%である。
【0057】
本発明の液晶配向剤には、上記の他、前記本発明の重合体以外の重合体、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体若しくは導電物質、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる目的のシランカップリング剤、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物、更には塗膜を焼成する際にポリイミド前駆体のイミド化を効率よく進行させる目的のイミド化促進剤等を含有せしめることができる。
官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物を含有させる場合、その量は、いずれも樹脂成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部であり、特に好ましくは1〜10質量部である。
界面活性剤を含有させる場合、その量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0058】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向膜は、本発明の液晶配向剤から得られた被膜に対し、波長300〜400nmの紫外線を含む、ほぼ直線に偏光した紫外線を照射することで得られる。通常、液晶配向剤を基板に塗布することにより被膜を形成し、これを焼成する前又は後に、その被膜面に上記の紫外線を照射することで得られる。被膜は、焼成の前又は紫外線を照射の前に乾燥することが好ましい。
【0059】
液晶配向剤を塗布する基板は、透明性の高い基板が好ましく、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板、ポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることができる。液晶駆動のためのITO電極等が形成された基板を用いることが、プロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板として、シリコンウエハー等の不透明な物でも使用できる。この場合の電極は、アルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。
本発明の液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。
【0060】
液晶配向剤の被膜の乾燥、焼成工程は、ポリイミド前駆体をポリイミド化してイミド化重合体に転換するためであり、そのための任意の温度と時間を選択することができる。通常、含有される有機溶媒を十分に除去するために、好ましくは50〜120℃で、好ましくは1〜10分乾燥させ、次いで、好ましくは150〜300℃で、好ましくは5〜120分焼成される。
焼成後の膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜200nmである。
【0061】
紫外線の照射は、前記の被膜の表面に、波長300〜400nm、好ましくは310〜380nmの紫外線を含む、一定方向に偏光した紫外線を用いて行われる。紫外線の合計照射量は、液晶配向剤に含まれる重合体の含有量や被膜の厚みによっても異なるが、1〜10,000mJ/cm
2が好ましく、100〜5,000mJ/cm
2がより好ましく、400〜5,000mJ/cm
2が特に好ましい。
【0062】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記の液晶配向膜付きの基板を得た後、既知の方法で液晶セルを作製し、該液晶セルを使用して液晶表示素子としたものである。
液晶セルの作製方法の一例として、パッシブマトリクス構造の液晶表示素子を例にとり説明する。尚、画像表示を構成する各画素部分にTFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子を設けたアクティブマトリクス構造の液晶表示素子であってもよい。
【0063】
まず、透明なガラス製の基板を準備し、一方の基板の上にコモン電極を、他方の基板の上にセグメント電極を設ける。これらの電極は、例えば、ITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようにパターニングされる。次いで、各基板の上に、コモン電極とセグメント電極を被覆するようにして絶縁膜を設ける。絶縁膜は、例えば、ゾル−ゲル法によって形成されたSiO
2−TiO
2からなる膜とすることができる。
【0064】
各基板の上には、本発明の液晶配向膜を形成する。次に、一方の基板に他方の基板を互いの配向膜面が対向するようにして重ね合わせ、周辺をシール材で接着する。シール材には、基板間隙を制御するために、通常、スペーサーが混入される。また、シール材を設けない面内部分にも、基板間隙制御用のスペーサーを散布しておくことが好ましい。シール材の一部には、外部から液晶を充填可能な開口部を設けられる。
【0065】
次に、シール材に設けた開口部を通じて、2枚の基板とシール材で包囲された空間内に液晶材料が注入される。その後、この開口部を接着剤で封止する。注入には、真空注入法を用いてもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法を用いてもよい。次に、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に、一対の偏光板を貼り付ける。以上の工程を経ることにより、液晶表示素子が得られる。この液晶表示素子は、液晶配向膜として、本発明の液晶配向膜を使用していることから、残像特性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビなどに好適に利用可能である。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
化合物の略号、及び各特性の測定方法は以下のとおりである。
NMP:N−メチル−2−ピロリドン、 BCS:ブチルセロソルブ
<ジアミン>
【化19】
【化20】
【0067】
<テトラカルボン酸二無水物>
【化21】
【0068】
[粘度]
ポリアミック酸溶液の粘度は、E型粘度計TVE−22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE−1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
【0069】
[固形分濃度測定]
ポリアミック酸溶液の固形分濃度の算出は、以下のようにして行った。持手付アルミカップNo.2(アズワン社製)に、ポリアミック酸溶液をおよそ1.1g量り取り、オーブン(DNF400、Yamato社製)で、200℃で2時間加熱した後、室温5分間放置し、アルミカップ内に残った固形分の重量を計量した。この固形分重量、及び元の溶液重量の値から固形分濃度を算出した。
【0070】
<合成例1>
テトラカルボン酸二無水物成分として、CBDAを1.95g、ジアミン成分として、DABを2.40g用い、NMP17.22g中、60℃で18時間反応させて、固形分濃度20質量%を有するポリアミック酸溶液(PAA−1)を得た。
【0071】
<合成例2〜6>
表1に示す原料及び仕様を使用した他は、合成例1と同様に実施し、固形分濃度が、いずれも20質量%を有する各種各ポリアミック酸溶液(PAA−2〜PAA−6)を得た。なお、PAA−5及びPAA−6を得る際に、2種類のジアミンは、特に時間差をおかずに添加した。
【0072】
【表1】
【0073】
(実施例1)
合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA−1)6.0gに、BCS6.0gとNMP8.0gを加え、室温で1時間攪拌し、固形分濃度が6.0質量%であるポリマー溶液を得た。このポリマー溶液は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤(A1)となる。
【0074】
(実施例2〜6)
表2に示すポリアミック酸溶液(PAA−2)〜(PAA−6)を使用し、実施例1と同様にして、いずれも、溶媒であるBCS/NMPの割合(g/g)が8.0/12.0であり、固形分濃度が6.0質量%を有する実施例2〜6の液晶配向剤(A2〜A6)を得た。
【0075】
【表2】
【0076】
[液晶セルの作製及び液晶配向性の評価1]
各実施例で得られた液晶配向剤(A1〜A6)を用いて、下記に示すような手順で、液晶セルの作製を行った。基板は、30mm×40mmの大きさで、厚さが1.1mmのガラス基板であり、ITO膜が基板の一面のみ施されている。この基板に各液晶配向剤(A1〜A6)をスピンコートした。次いで、70℃のホットプレートで90秒間乾燥し、230℃のホットプレートで、さらに10分焼成し、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。次いで、塗膜面に、偏光板を介して313nmの紫外線を23秒〜233秒照射し、液晶配向膜付き基板を得た。紫外線の照射量は、100〜1000mJ/cm
2とした。同じ操作で対向基板も作製した。
【0077】
一方の基板の液晶配向膜面に、厚さ4μmのスペーサーを散布した後、液晶配向膜上にシール剤(XN−1500T、協立化学社製)を印刷した。次いで、もう一方の基板(対向基板)を、液晶配向膜面が向き合い、配向方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を熱硬化(150℃)させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶(MLC−2041、メルク社製)を注入した後、注入口を封止して、液晶セルとした。その後、該液晶セルを120℃のオーブンにて1時間加熱した後、常温に戻した。
【0078】
上記作製した液晶セルの液晶の配向状態を、バックライトで照らしながら、二枚の偏光版に挟んだ状態で観察した。その結果を表3に示す。表3において、液晶セルをバックライトと平行にしたまま回転しながら観察したとき、液晶配向不良が観察されないものを「○」とし、光抜けや輝点などが観察されるものを「△」とした。
【0079】
【表3】
【0080】
[液晶セルの作製及び液晶配向性の評価2]
各実施例で得られた液晶配向剤(A1〜A6)を用いて、下記に示すような手順で、液晶セルの作製を行った。基板は、30mm×40mmの大きさで、厚さが1.1mmのガラス基板であり、ITO膜が基板の一面のみ施されている。この基板に各液晶配向剤(A1〜A6)をスピンコートした。次いで、70℃のホットプレートで90秒間乾燥し、塗膜面に、偏光板を介して313nmの紫外線を23秒〜233秒照射した。紫外線の照射量は、100〜1000mJ/cm
2とした。230℃のホットプレートで、さらに10分焼成し、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。同じ操作で対向基板も作製した。
【0081】
一方の基板の液晶配向膜面に、厚さ4μmのスペーサーを散布した後、液晶配向膜上にシール剤(XN−1500T、協立化学社製)を印刷した。次いで、もう一方の基板(対向基板)を、液晶配向膜面が向き合い、配向方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を熱硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶(MLC−2041、メルク社製)を注入した後、注入口を封止して、液晶セルとした。その後、該液晶セルを120℃のオーブンにて1時間加熱した後、常温に戻した。
【0082】
上記作製した液晶セルの液晶の配向状態を、バックライトで照らしながら、二枚の偏光版に挟んだ状態で観察した。その結果を表4に示す。表4において、液晶セルをバックライトと平行にしたまま回転しながら観察したとき、液晶配向不良が観察されないものを「○」とし、光抜けや輝点などが観察されるものを「△」とした。
【0083】
【表4】