(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記微細凹凸構造層の微細凹凸構造は、平均高さが80〜500nmの凸部または平均深さが80〜500nmの凹部を有し、凸部間または凹部間の平均間隔が20〜400nmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
前記微細凹凸構造層の微細凹凸構造は、平均高さが80〜500nmの凸部または平均深さが80〜500nmの凹部を有し、凸部間または凹部間の平均間隔が20〜400nmである、請求項5または6に記載の積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書における「透明」とは、少なくとも波長400〜1170nmの光を透過することを意味する。
また、本明細書における「導電」とは、表面抵抗が1×10
3Ω/□以下であることを意味する。
また、本明細書における「活性エネルギー線」とは、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。
また、本明細書における「(メタ)アクリル系樹脂」は、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂の総称であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
図1においては、各層を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層ごとに縮尺を異ならせてある。
また、
図2、4〜6、8において、
図1と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する場合がある。
【0015】
「積層フィルム」
<<第1の態様>>
本発明の第1の態様の積層フィルムは、タッチパネル装置に用いられる。
図1は、本発明の第1の態様の積層フィルム10の一例を示す断面図である。
この例の積層フィルム10は、基材11と、基材11の第1の面に設けられた屈折率調整層12と、屈折率調整層12の基材11とは反対側の面に設けられた透明導電層13と、基材11の第2の面(すなわち、第1の面とは反対側の面)に設けられた微細凹凸構造層14とを備えている。
【0016】
<基材>
基材11は、透明樹脂材料からなることが好ましい。透明樹脂材料としては、例えばポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂などが挙げられる。特に、耐熱性、耐衝撃性に優れることから、基材11としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材を用いることが好ましい。
【0017】
基材11の厚さは、2〜200μmが好ましい。基材11の厚さが2μm未満であると基材11の機械的強度が不足し、フィルム形状の基材11をロール状にして連続的に屈折率調整層12、透明導電層13、微細凹凸構造層14を形成する操作が困難になる場合がある。
【0018】
<屈折率調整層>
屈折率調整層12は、基材11の第1の面に設けられている。
図1に示す屈折率調整層12は、基材11側から順に、高屈折率層12aと低屈折率層12bとをそれぞれ1層ずつ備えた積層構造である。
高屈折率層12aは基材11よりも屈折率が高い層であり、低屈折率層12bは高屈折率層12aよりも屈折率が低い層である。
【0019】
後述する透明導電層13は基材11と比較して屈折率が高い場合が多いが、基材11と透明導電層13との間に屈折率調整層12を設けることで透明導電層13と基材11との間での光の反射を抑制でき、透過率の高いタッチパネル装置が得られる。また、屈折率調整層12を適切に設定することで、積層フィルム10をタッチパネル装置に用いたときに、透過する光の色が変化してしまうことを抑制できる。
【0020】
反射光または透過光の波長分散や色づきは、JIS Z 8729またはISO 11664−4に準拠し、分光光度計等を用いて反射光または透過光のスペクトルを測定し、得られた測定結果からL
*a
*b
*表色系(Lab色空間)の値を求めることにより、規定することができる。L
*a
*b
*表色系は、色の明度(L
*=0は黒、L
*=100は白の拡散色で、白の反射色はさらに高い)、赤/マゼンタと緑の間の位置(a
*、負の値は緑寄りで、正の値はマゼンタ寄り)、黄色と青の間の位置(b
*、負の値は青寄り、正の値は黄色寄り)に対応している。つまり、L
*a
*b
*の原点(L
*=0、a
*=0、b
*=0)からの距離、すなわち色差(E
*)が小さいほど、色づきが小さいことになる。
【0021】
積層フィルム10をタッチパネル装置に用いる場合、可視光の波長領域において、下記式(1)より求められる、L
*a
*b
*表色系で示されるa
*およびb
*の値の絶対値が、それぞれ2.5以下であることが好ましい。a
*およびb
*の値がそれぞれ2.5以下であれば、タッチパネル装置を透過した光の色づきを十分に抑制することができる。
E
*={(L
*)
2+(a
*)
2+(b
*)
2}
1/2 ・・・(1)
【0022】
上述のa
*およびb
*の値をそれぞれ2.5以下とするには、
図1に示すように、屈折率調整層12を屈折率の異なる複数の層から構成することが好ましく、基材11側から透明導電層13側に向かって、高屈折率層12a、低屈折率層12bの順に積層することがより好ましい。
【0023】
高屈折率層12aは、具体的には屈折率が1.6以上となるように構成されることが好ましく、低屈折率層12bは屈折率が1.45以下となるように構成されることが好ましい。また、高屈折率層12aおよび低屈折率層12bは、それぞれ層の厚さが20〜80nmとなるように構成されることが好ましい。
このような構成とすることで、タッチパネル装置から透過した光の色づきを十分に抑制することが可能となる。
【0024】
高屈折率層12aおよび低屈折率層12bを形成する材料としては、無機物、有機物、無機物と有機物との混合物などが挙げられる。無機物としては、NaF、Na
3AlF
6、LiF、MgF
2、CaF
2、SiO
2、LaF
3、CeF
3、Al
2O
3、TiO
2、Ta
2O
5、ZrO
2、ZnO、ZnS、SiO
x(xは1.5以上2未満)などが挙げられる。一方、有機物としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマーなどが挙げられる。特に、有機物として、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用することが好ましい。
【0025】
<透明導電層>
透明導電層13は、屈折率調整層12の基材11とは反対側の面に設けられている。
透明導電層13は、透明導電性材料を含む層である。
透明導電性材料としては、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物(金属酸化物);導電性高分子とドーパントとを含む導電性高分子組成物などが挙げられる。
金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよく、例えば酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ(ATO)などが好ましく用いられる。
導電性高分子としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン(PEDOT)などが挙げられる。一方、ドーパントとしてはポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリスチレンスルホン酸の共重合体などが挙げられる。PEDOTとPSSの組み合わせは、透明導電層13に高い透明性と高い導電性を付与できる。
【0026】
透明導電層13の厚さは特に制限されないが、透明導電層13を表面抵抗が1×10
3Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚さが10nm以上であることが好ましく、より好ましくは15〜35nmであり、特に好ましくは20〜30nmである。透明導電層13の厚さが10nm以上であれば表面の電気抵抗が高くなる傾向にあり、35nm以下であれば透明性を良好に維持できる。
【0027】
<微細凹凸構造層>
微細凹凸構造層14は、後述する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸構造を表面に有する。微細凹凸構造層14は、微細凹凸構造を有する側の表面とは反対側の表面が基材11側を向くように、基材11の第2の面に設けられている。
なお、微細凹凸構造を有する側の表面を「微細凹凸構造層の表面」とし、微細凹凸構造を有する側の表面とは反対側の表面を「微細凹凸構造層の裏面」とする。
【0028】
微細凹凸構造層14の微細凹凸構造は、略円錐形状、角錐形状等の凸部(突起)14aと、該凸部14a間に存在する凹部14bとが複数並んだ、いわゆるモスアイ構造である。凸部14a間または凹部14b間の平均間隔が可視光線の波長以下、すなわち400nm以下であるモスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率に連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
【0029】
微細凹凸構造層14の微細凹凸構造を構成する凸部14a間または凹部14b間の平均間隔は、可視光線の波長以下、すなわち400nm以下であり、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。凸部14a間または凹部14b間の平均間隔は、凸部14aの形成のしやすさの点から、20nm以上が好ましい。
凸部14a間または凹部14b間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する凸部14a間の間隔(凸部14aの中心から隣接する凸部14aの中心までの距離)Pを50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0030】
凸部14aの平均高さまたは凹部14bの平均深さは、80〜500nmが好ましく、120〜400nmがより好ましく、150〜300nmが特に好ましい。凸部14aの平均高さまたは凹部14bの平均深さが80nm以上であれば反射率が十分に低くなり、かつ反射率の波長依存性が少なくなり、500nm以下であれば凸部14aの耐擦傷性が良好となる。
凸部14aの平均高さまたは凹部14bの平均深さは、電子顕微鏡観察によって倍率30000倍で観察したときにおける、凸部14aの最頂部と、凸部14a間に存在する凹部14bの最低部との間の垂直距離Hを50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0031】
凸部14aのアスペクト比(凸部14aの平均高さ/凸部14a間の平均間隔)または凹部14bのアスペクト比(凹部14bの平均深さ/凹部14b間の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。凸部14aまたは凹部14bのアスペクト比が0.8以上であれば反射率が十分に低くなり、5.0以下であれば凸部14aの耐擦傷性が良好となる。
【0032】
凸部14aまたは凹部14bの形状は、高さ方向と直交する方向の凸部14a断面積が最頂部から深さ方向に連続的に増加する形状、すなわち、凸部14aの高さまたは凹部14bの深さ方向の断面形状が、三角形、台形、釣鐘型等の形状が好ましい。
【0033】
<積層フィルムの製造方法>
図1に示す積層フィルム10は、例えば以下のようにして製造できる。
まず、基材11の第2の面に微細凹凸構造層14を形成する。次いで、基材11の第1の面に屈折率調整層12および透明導電層13を順次形成する。
【0034】
(微細凹凸構造層の形成)
微細凹凸構造層14は、例えば
図2に示す製造装置を用いて、下記のようにして基材11の第2の面上に形成される。
まず、表面に微細凹凸構造を有するロール状モールド40と、ロール状モールド40の表面に沿って移動する基材11との間に、タンク42から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物44を供給する。
ロール状モールド40と、空気圧シリンダ46によってニップ圧が調整されたニップロール48との間で、基材11および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物44をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物44を、基材11とロール状モールド40との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド40の微細凹凸構造の凹部内に充填する。
【0035】
ロール状モールド40の下方に設置された活性エネルギー線照射装置50から、基材11を通して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物44に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物44を硬化させることによって、ロール状モールド40の表面の微細凹凸構造が転写された微細凹凸構造を表面に有する微細凹凸構造層14を形成する。
剥離ロール52により、表面に微細凹凸構造層14が形成された基材11を剥離する。
活性エネルギー線照射装置50としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が好ましく、この場合の光照射エネルギー量は、積算光量100〜10000mJ/cm
2が好ましい。
【0036】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合性化合物および重合開始剤を含む。
重合性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物を含んでいてもよい。
【0037】
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよく、単官能でも多官能でもよい。
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーなどが挙げられる。
オリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマーなどが挙げられる。
非反応性のポリマーとしては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン、セルロース系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物などが挙げられる。
【0038】
重合開始剤としては、ラジカルやカチオンを発生させる、カルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン、ベンゾインエーテル、アシルフォスフィンオキシド、アミノカルボニル化合物、ハロゲン化物等の一般に市販されている重合開始剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。重合開始剤の含有量が0.1質量部未満では重合が進行しにくく、10質量部を超えると微細凹凸構造層が着色したり、機械強度が低下したりすることがある。
【0039】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、帯電防止剤、離型剤、防汚性を向上させるためのフッ素化合物等の添加剤、微粒子、少量の溶剤を含んでいてもよい。
【0040】
(屈折率調整層の形成)
第2の面に微細凹凸構造層14が形成された基材11の第1の面に高屈折率層12aを形成し、ついで高屈折率層12a上に低屈折率層12bを形成することで屈折率調整層12を形成する。
高屈折率層12aおよび低屈折率層12bは、上述した材料を用い、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、塗工法などにより形成できる。
【0041】
(透明導電層の形成)
透明導電層13が上述した金属酸化物を含む場合は、屈折率調整層12の基材11とは反対側の面に、金属酸化物の薄膜を形成し、該薄膜を透明導電層13とする。金属酸化物の薄膜の形成方法としては公知の方法を採用でき、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスなどが挙げられ、必要とする透明導電層13の厚さに応じて適宜の方法を採用することができる。
【0042】
透明導電層13が上述した導電性高分子組成物を含む場合は、屈折率調整層12の基材11とは反対側の面に、導電性高分子組成物を含有する塗料を塗布して透明導電層13を形成する。
透明導電層13の形成に用いられる塗料には、透明導電層13の屈折率を調整したり、屈折率調整層12との密着性を高めたりする目的で、バインダー樹脂が含まれていることが好ましい。バインダー樹脂の含有量は固形分換算で、導電性高分子とドーパントの合計固形分質量の0.03〜0.3倍とすることが好ましい。バインダー樹脂の含有量によって透明導電層13の屈折率が変化しやすく、バインダー樹脂の含有量が多くなるほど屈折率が高くなる傾向にある。バインダー樹脂の含有量が上記範囲内であれば、透明導電層13の屈折率、導電性、基材11との密着性等のバランスが良好となる。
【0043】
バインダー樹脂としては、導電性高分子(例えばPEDOT)やドーパント(例えばPSS)が水分散性の材料であることから、水分散体もしくは水溶性の樹脂が好ましい。具体的には、エステル基を有する樹脂やグリシジル基を有する樹脂が好ましく、これらの樹脂のモノマー、オリゴマー、ポリマーを組み合わせることができる。
エステル基を有する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート水分散体、ポリエチレンナフタレート水分散体、ポリブチレンテレフタレート水分散体、ポリブチレンナフタレート水分散体などが挙げられる。
グリシジル基を有する樹脂としては、エピクロルヒドリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0044】
透明導電層13の形成に用いられる塗料には、溶媒や添加剤が含まれていてもよい。
溶媒としては、水、または水とアルコールの混合液が好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコールなどが挙げられる。これらは単独で用いても、併用してもよい。
添加剤としては、二次ドーパント、安定な分散や基材への濡れ性を高めるための界面活性剤、レベリング剤、有機溶媒などが挙げられる。
導電性高分子およびドーパントと、必要に応じてバインダー樹脂や添加剤とを溶媒に分散させる方法としては、例えばディスクミル法、ボールミル法、超音波分散法などの公知の方法を適用することができる。
【0045】
透明導電層13の形成に用いられる塗料の粘度は、塗料の塗布方法や、透明導電層13の厚さに応じて調製することが好ましい。
塗布方法としては、例えばグラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などの公知の塗布方法を採用することができる。
【0046】
<ロール状モールドの製造方法>
微細凹凸構造層14の形成に用いるロール状モールドとしては特に限定されず、リソグラフィ法やレーザー加工によって微細凹凸構造を設けたモールド、陽極酸化アルミナを表面に有するモールドなどが挙げられるが、安価に大面積化することを考えると、陽極酸化アルミナを表面に有するモールドが好ましい。陽極酸化アルミナを表面に有するモールドは、大面積化が可能であり、作製が簡便である。
【0047】
陽極酸化アルミナは、アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト)であり、表面に複数の細孔(凹部)を有する。
表面に陽極酸化アルミナを有するモールドは、例えば下記工程(a)〜(e)を経て製造できる。
(a)ロール状のアルミニウムを電解液中、定電圧下で陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜の少なくとも一部を除去し、陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)ロール状のアルミニウムを電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)酸化皮膜の一部を除去し、細孔の径を拡大させる工程。
(e)前記工程(c)と工程(d)を繰り返し行う工程。
【0048】
(工程(a))
図3に示すように、ロール状のアルミニウム54を陽極酸化すると、細孔56を有する酸化皮膜58が形成される。
アルミニウムの純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりすることがある。
電解液としては、硫酸、シュウ酸、リン酸等が挙げられる。
【0049】
シュウ酸を電解液として用いる場合:
シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
化成電圧が30〜60Vの時、周期(間隔)が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0050】
硫酸を電解液として用いる場合:
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
化成電圧が25〜30Vの時、周期(間隔)が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がよりに好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0051】
(工程(b))
図3に示すように、酸化皮膜58を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点60にすることで細孔の規則性を向上することができる。
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
【0052】
(工程(c))
図3に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム54を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔56を有する酸化皮膜58が形成される。
陽極酸化は、(a)工程と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0053】
(工程(d))
図3に示すように、細孔56の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
【0054】
(工程(e))
図3に示すように、工程(c)の陽極酸化と、工程(d)の細孔径拡大処理を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔56を有する陽極酸化アルミナが形成され、表面に陽極酸化アルミナを有するモールド(ロール状モールド40)が得られる。
繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を有する陽極酸化アルミナを用いて製造された微細凹凸構造層14の反射率低減効果は不十分である。
【0055】
陽極酸化アルミナの表面は、微細凹凸構造層14との分離が容易になるように、離型剤で処理されていてもよい。処理方法としては、例えば、シリコーン樹脂またはフッ素含有ポリマーをコーティングする方法、フッ素含有化合物を蒸着する方法、フッ素含有シランカップリング剤またはフッ素含有シリコーン系シランカップリング剤をコーティングする方法等が挙げられる。
【0056】
細孔56の形状としては、略円錐形状、角錐形状、円柱形状等が挙げられ、円錐形状、角錐形状等のように、深さ方向と直交する方向の細孔断面積が最表面から深さ方向に連続的に減少する形状が好ましい。
【0057】
細孔56間の平均間隔は、可視光線の波長以下、すなわち400nm以下である。細孔56間の平均間隔は、20nm以上が好ましい。
細孔56間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する細孔56間の間隔(細孔56の中心から隣接する細孔56の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0058】
細孔56の平均深さは、80〜500nmが好ましく、120〜400nmがより好ましく、150〜300nmが特に好ましい。
細孔56の平均深さは、電子顕微鏡観察によって倍率30000倍で観察したときにおける、細孔56の最底部と、細孔56間に存在する凸部の最頂部との間の垂直距離を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0059】
細孔56のアスペクト比(細孔56の平均深さ/細孔56間の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。
図3に示すような細孔56を転写して形成された微細凹凸構造層14の表面は、いわゆるモスアイ構造となる。
【0060】
<作用効果>
以上説明した本発明の第1の態様の積層フィルム10は、微細凹凸構造層14の裏面が基材11側を向くように基材11の第2の面に設けられている。詳しくは後述するが、この積層フィルム10をタッチパネル装置に用いる際には、微細凹凸構造層14の表面が画像表示装置の画像が表示される側を向く。すなわち、積層フィルム10の微細凹凸構造層14の表面が、後述する画像表示装置の画像表示装置本体(表示素子)側を向くように、画像表示装置本体と空気を介してタッチパネル装置を対向配置する。よって、タッチパネル装置の表面が押圧され、タッチパネル装置と画像表示装置本体とが接触したときの接触面積を小さくできる。その結果、タッチパネル装置と画像表示装置本体との間でのブロッキングやニュートンリングの発生を抑制できる。
【0061】
ところで、タッチパネル装置と画像表示装置本体との間には空気層が存在するため、タッチパネル装置と空気層との間で光が反射してしまい、画像表示装置の視認性が低下する場合がある。
しかし、本発明の第1の態様の積層フィルム10の微細凹凸構造層14の表面には凸部14a間または凹部14b間の平均間隔が可視光の波長以下の微細凹凸構造が形成されているので、反射防止性に優れる。上述したように、本発明の第1の態様の積層フィルム10を備えるタッチパネル装置は、微細凹凸構造層14の表面が画像表示装置本体側を向くように配置されるので、タッチパネル装置と空気層との間での光の反射が抑制され、画像表示装置の視認性が大きく向上し、鮮明な画像を得ることができる。
しかも、本発明の第1の態様の積層フィルム10は屈折率調整層12を備えるので、タッチパネル装置を透過する光の色が変化しにくく、色づきが小さく、ヘイズが上昇しにくい。
【0062】
<他の実施形態>
本発明の第1の態様の積層フィルムは、上述したものに限定されない。
図1に示す積層フィルム10の屈折率調整層12は、高屈折率層12aおよび低屈折率層12bをそれぞれ1層ずつ備える2層の積層構造であるが、屈折率調整層12は単層構造であってもよいし、高屈折率層12aと低屈折率層12bとが交互に積層された3層以上の積層構造であってもよい。
【0063】
また、例えば
図4に示すように、基材11の第2の面(微細凹凸構造層14が設けられる側の表面)には、微細凹凸構造層14との密着性を高める観点から、表面改質層15が設けられていてもよい。
表面改質層15は、微細凹凸構造層14を構成する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の組成に応じて適宜調製された材料を基材11の第2の面に塗布することで形成される。また、基材11の第2の面にスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理を施すことで、表面改質層15を形成してもよい。
なお、微細凹凸構造層14が基材11と密着する場合は、表面改質層15を設ける必要はない。
【0064】
また、基材11の第1の面(屈折率調整層12および透明導電層13が設けられる側の表面)にも、必要に応じて表面改質層が設けられていてもよい。基材11の第1の面に表面改質層が設けられている場合には、該表面改質層上に屈折率調整層12および透明導電層13を順次設ける。なお、表面改質層が屈折率調整の役割を有する場合には、該表面改質層を屈折率調整層12としてもよい。
【0065】
さらに、積層フィルム10は、
図5の示すように、基材11と屈折率調整層12との間にハードコート層16を有していてもよい。
屈折率調整層12や透明導電層13は、屈曲等の曲げに弱い場合が多いが、ハードコート層16を設けることで基材11の剛性を高めることができ、屈折率調整層12や透明導電層13の耐久性を向上させることができる。さらに、ハードコート層16を設けることにより、透明導電層13を形成する際の熱などにより、基材11の表面が変質したり、ブリードアウト等により積層フィルム10のヘイズが上昇したりすることをより抑制することができる。
基材11の第1面に表面改質層が設けられている場合には、該表面改質層上にハードコート層16を設ける。
【0066】
ハードコート層16を形成する材料としては、従来公知の材料を用いることができ、例えば電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。また、上述した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いてハードコート層16を形成してもよい。また、ハードコート層16の強度や耐候性をさらに向上させる観点では、アルコキシシラン系組成物やオルガノアルコキシシランと、コロイダルシリカとを主成分とし、硬化触媒や溶媒を配合してなる組成物を基材11の一方の表面に塗布し、これを乾燥してハードコート層16を形成することが好ましい。このような組成物としては、例えば信越化学工業株式会社製の「KP−851」、「X−12−2206」;東芝シリコーン株式会社製の「トスガード510」;株式会社日本ダクロシャムロック製の「ソルガードNP−720」、「ソルガードNP−730」などを用いることができる。組成物の塗布方法としては、スプレー、浸漬、フロー、ロールコーティング、ダイスコーティング、グラビアコーティング等の公知の方法が挙げられる。
なお、例えば高屈折率層12aをハードコート層16と同様の材料から構成すれば、基材11の表面が変質したり、ブリードアウト等により積層フィルム10のヘイズが上昇したりすることをより抑制することができる。
【0067】
また、ハードコート層16および屈折率調整層12は、独立した別々の層としてではなく、それぞれの機能を複合する形で設けられていてもよい。例えば、屈折率が比較的低いハードコート層を屈折率調整層の一部として設けてもよいし、基材11と透明導電層13との中間の屈折率を有するハードコート層を設け、屈折率調整層の機能を併せ持たせてもよい。さらに、ハードコート層16を比較的屈折率の高い層とし、屈折率調整層12を屈折率の低い層としてもよい。
【0068】
<<第2の態様>>
本発明の第2の態様の積層フィルムは、タッチパネル装置に用いられる。
図6は、本発明の第2の態様の積層フィルム20の一例を示す断面図である。
この例の積層フィルム20は、第1の透明導電フィルム10aと、第2の透明導電フィルム10bと、透明接着層23と、保護フィルム24とを備えている。
【0069】
<第1の透明導電フィルム>
第1の透明導電フィルム10aは、第1の基材11と、第1の基材11の第1の面に設けられた屈折率調整層12と、屈折率調整層12の第1の基材11とは反対側の面に設けられた第1の透明導電層13と、第1の基材11の第2の面に設けられた微細凹凸構造層14とを備える。
図6に示す屈折率調整層12は、第1の基材11側から順に、高屈折率層12aと低屈折率層12bとをそれぞれ1層ずつ備えた積層構造である。
【0070】
第1の基材11は第1の態様の積層フィルムの基材に相当し、屈折率調整層12は第1の態様の積層フィルムの屈折率調整層に相当し、第1の透明導電層13は第1の態様の積層フィルムの透明導電層に相当し、微細凹凸構造層14は第1の態様の積層フィルムの微細凹凸構造層に相当する。すなわち、第1の基材11と、屈折率調整層12と、第1の透明導電層13と、微細凹凸構造層14とで第1の態様の積層フィルムを形成している。
微細凹凸構造層14は、表面に凸部間または凹部間の平均間隔が400nm以下の微細凹凸構造を有し、該微細凹凸構造を有する側の表面とは反対側の表面が第1の基材11側を向くように、第1の基材11の第2の面に設けられている。
【0071】
<第2の透明導電フィルム>
第2の透明導電フィルム10bは、第2の基材21と、第2の透明導電層22とを備える。
第2の基材21は、第1の透明導電層13と第2の透明導電層22とを絶縁するものである。
第2の基材21としては、第1の透明導電層13および第2の透明導電層22とを絶縁できる材質であれば特に制限されないが、透明樹脂材料からなることが好ましい。透明樹脂材料としては、第1の態様の積層フィルムの基材の説明において先に例示した透明樹脂材料が挙げられる。
なお、第1の基材11および第2の基材21が透明樹脂材料からなることが好ましい。このような構成とすることで、ガラス基材を用いた場合と比較して軽く強度の高い画像表示装置が得られる。
【0072】
第2の透明導電層22は、第1の透明導電層13と対となるものであり、一般的には、第1の透明導電層13と交差するようにストライプ状の電極パターンが形成されている。
【0073】
<透明接着層>
透明接着層23は、第1の透明導電層13と第2の基材21とが向き合うように、第1の透明導電フィルム10aと第2の透明導電フィルム10bとを接着するものである。
透明接着層23を構成する材料としては、第1の透明導電フィルム10aと第2の透明導電フィルム10bとを接着固定できるものであれば、従来公知のものを用いることができるが、接着剤や透明樹脂材料など光を透過する材料が好ましい。このような材料の具体例としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合(EVA)系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。
また、透明接着層23としては、接着シートを用いてもよい。
【0074】
<保護フィルム>
保護フィルム24は、第1の透明導電フィルム10aの微細凹凸構造層14の微細凹凸構造を保護する、剥離可能なフィルムであり、微細凹凸構造層14の微細凹凸構造を有する側の表面に積層される。
保護フィルム24としては、微細凹凸構造層14から剥離した後に、微細凹凸構造層14上に糊残り等しにくいものが好ましい。保護フィルム24は、通常、フィルム基材上に粘着層が積層した積層構造である。
フィルム基材としては、例えばポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セロハン、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリブテン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、アセチルセルロースなどが挙げられる。
粘着層を構成する材料としては、透明接着層23の説明において先に例示した各種接着剤などが挙げられる。
また、保護フィルム24としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えばサンエー化研社製のポリオレフィン系フィルム「PAC−4−50(商品名)」、「PETベースマスキングSAT116タイプ(商品名)」、スミロン社製の「EC−2035(商品名)」などが挙げられる。
【0075】
<積層フィルムの製造方法>
図6に示す積層フィルム20は、例えば以下のようにして製造できる。
まず、第1の透明導電フィルム10aの微細凹凸構造層14の微細凹凸構造を有する側の表面に、剥離可能な保護フィルム24を積層する。次いで、第1の透明導電層13と第2の基材21とが向き合うように、透明接着層23を介して第1の透明導電フィルム10aと第2の透明導電フィルム10bとを積層し、圧力を印加する。少なくとも第1の透明導電フィルム10aと第2の透明導電フィルム10bとが積層したものを「フィルム積層体」ともいう。
【0076】
第1の透明導電フィルム10aは、第1の態様の積層フィルムと同様の方法により製造できる。
第2の透明導電フィルム10bは、第2の基材21上に第2の透明導電層22を形成することで製造される。第2の基材21上に第2の透明導電層22を形成する方法としては、第1の態様の積層フィルムの製造において、屈折率調整層上に透明導電層を形成する方法と同様の方法が挙げられる。
【0077】
(透明導電フィルムの積層)
第1の透明導電フィルム10aと第2の透明導電フィルム10bとを積層するには、まず、第1の透明導電フィルム10aの第1の透明導電層13上に透明接着層23を構成する材料を塗布し、透明接着層23を形成する。次いで、第1の透明導電層13と第2の基材21とが向き合うように、透明接着層23上に透明導電フィルム10bを積層する。そして、第1の透明導電フィルム10aと第2の透明導電フィルム10bとを接着固定する。
なお、透明接着層23として接着シートを用いる場合は、接着シートを第1の透明導電フィルム10aと第2の透明導電フィルム10bとの間に配置することで、両者を積層してもよい。
【0078】
(圧力の印加)
第1の透明導電フィルム10aと第2の透明導電フィルム10bとを接着固定しただけでは、透明接着層23と第1の透明導電層および第2の基材との間に気泡が残りやすい。そこで、第1の透明導電フィルム10aと第2の透明導電フィルム10bとを接着固定した後、フィルム積層体を耐熱耐圧密閉容器内に配置し、圧力を印加して加圧脱泡処理を行い、透明接着層23と第1の透明導電層および第2の基材との間の気泡を除去する。
印加する圧力は0.1〜1MPaであることが好ましく、0.2〜0.6MPaであることがより好ましい。印加する圧力を0.1MPa以上とすることで、気泡を十分に除去することができる。また、印加する圧力を1MPa以下とすることで、特別な圧力容器等を用いることなく、より簡便に圧力を印加することが可能となる。
【0079】
(気泡の確認)
圧力を印加した後に、透明接着層23と第1の透明導電層13および第2の基材21との間に気泡が残存しているかどうか、検査を行う。円相当直径が20μm以上の気泡が残っている場合は、再度圧力を印加して加圧脱泡処理を行う。
【0080】
<作用効果>
以上説明した本発明の第2の態様の積層フィルム20は、微細凹凸構造層14の裏面が第1の基材11側を向くように第1の基材11の第2の面に設けられている。詳しくは後述するが、この積層フィルム20をタッチパネル装置に用いる際には、微細凹凸構造層14の表面が画像表示装置の画像が表示される側を向く。すなわち、積層フィルム20の微細凹凸構造層14の表面が、後述する画像表示装置の画像表示装置本体(表示素子)側を向くように、画像表示装置本体と空気を介してタッチパネル装置を対向配置する。よって、タッチパネル装置の表面が押圧され、タッチパネル装置と画像表示装置本体とが接触したときの接触面積を小さくできる。その結果、タッチパネル装置と画像表示装置本体との間でのブロッキングやニュートンリングの発生を抑制できる。
【0081】
また、本発明の第2の態様の積層フィルム10の微細凹凸構造層14の表面には凸部間または凹部間の平均間隔が可視光の波長以下の微細凹凸構造が形成されているので、反射防止性に優れる。上述したように、本発明の第2の態様の積層フィルム20を備えるタッチパネル装置は、微細凹凸構造層14の表面が画像表示装置本体側を向くように配置されるので、タッチパネル装置と空気層との間での光の反射が抑制され、画像表示装置の視認性が大きく向上し、鮮明な画像を得ることができる。
しかも、本発明の第2の態様の積層フィルム20は屈折率調整層12を備えるので、タッチパネル装置を透過する光の色が変化しにくく、色づきが小さく、ヘイズが上昇しにくい。
【0082】
ところで、本発明の第2の態様の積層フィルム20を製造するにあたっては、上述したように、まず、第1の透明導電フィルム10aの微細凹凸構造層14の微細凹凸構造を有する側の表面に、剥離可能な保護フィルム24を積層する。次いで、第1の透明導電層13と第2の基材21とが向き合うように、透明接着層23を介して第1の透明導電フィルム10aと第2の透明導電フィルム10bとを積層し、フィルム積層体に圧力を印加して加圧脱泡処理する。これにより、透明導電フィルム間(具体的には、透明接着層23と第1の透明導電層13および第2の基材21との間)に存在する気泡を除去できる。
【0083】
微細凹凸構造層を有さない積層フィルムの場合、保護フィルムを配置した状態で加圧脱泡処理を行うと、保護フィルムとフィルム積層体との間に気泡が発生する場合があった。
保護フィルムとフィルム積層体との間に気泡が発生してしまうと、フィルム積層体を構成する透明導電フィルム間の気泡が確実に除去できているかの検査が困難となる。そのため、フィルム積層体から一旦保護フィルムを除去して透明導電フィルム間の気泡の有無を確認した後に、後の工程中でフィルム積層体の表面に傷がつくことを防止するため、再度保護フィルムを配置しなければならなかった。
このように保護フィルムを張り替える回数が増えると、製造工程が煩雑になり、またフィルム積層体の表面に埃が付着したり、傷がついたりする可能性が高くなってしまう。さらに、タッチパネル装置を製造する過程で使用する保護フィルムが多くなるため、製造コストもかさんでしまう。
【0084】
本発明者らが鋭意検討した結果、驚くべきことにタッチパネル装置の最外層、すなわち第1の透明導電フィルムの第1の基材の第2の面に微細凹凸構造層を設けた場合、該微細凹凸構造層に保護フィルムを配置した後に加圧脱泡処理を行っても、保護フィルムとフィルム積層体との間(具体的には、保護フィルムと微細凹凸構造層との間)に気泡が発生しにくいことを見出した。
ここで、
図7A、7Bを参照しながら、気泡の発生のメカニズムについて説明する。
【0085】
図7Aは、表面に微細凹凸構造を有するフィルム71上に保護フィルム24を配置し、加圧処理する工程を模式的に示す断面図である。一方、
図7Bは、表面が平坦なフィルム72上に保護フィルム24を配置し、加圧処理する工程を模式的に示す断面図である。
なお、説明の便宜上、空気を粒子状に表し、極端に拡大している。また、符号73は加圧前の空気であり、符号74は高圧力状態の空気である。
【0086】
図7Bに示すように、表面が平坦なフィルム72上に保護フィルム24を配置した状態で、例えば50℃の環境下で約0.5MPa(5atm)の圧力を印加すると、わずかではあるが高圧力状態の空気74が保護フィルム24を透過し、表面が平坦なフィルム72と保護フィルム24との間に高圧力状態の空気74が介在する状態となる。その後、圧力の印加を終了し、周囲を減圧すると、表面が平坦なフィルム72と保護フィルム24との間に介在する高圧力状態の空気74が取り残された状態となり、気泡が発生してしまう場合がある。
【0087】
一方、
図7Aに示すように、表面に微細凹凸構造を有するフィルム71上に保護フィルム24を配置した状態で、例えば50℃の環境下で約0.5MPa(5atm)の圧力を印加すると、わずかではあるが高圧力状態の空気74が保護フィルム24を透過し、表面に微細凹凸構造を有するフィルム71と保護フィルム24との間に高圧力状態の空気74が介在する状態となる。表面に微細凹凸構造を有するフィルム71と保護フィルム24との間に高圧力状態の空気74が介在する状態となるまでは、表面が平坦なフィルム72の場合と変わりがない。
しかしながら、表面に微細凹凸構造を有するフィルム71の場合、微細凹凸構造の微細な凸部間を通じて、高圧力状態の空気74が自由に出入りできる状態にあるために、減圧した際に高圧力状態の空気74が表面に微細凹凸構造を有するフィルム71と保護フィルム24との間に取り残されにくい。そのために、表面に微細凹凸構造を有するフィルム71の場合、圧力の印加を終了し周囲を減圧しても、保護フィルム24と表面に微細凹凸構造を有するフィルム71との間に気泡が発生しにくい。
【0088】
なお、高圧環境下においてガスバリア性の高いフィルムや、硬度が非常に高いフィルムを保護フィルムとして用いることで、高気圧状態の空気が保護フィルムを透過することを抑制したり、高気圧状態の空気が膨らんで気泡となることを抑制したりすることも可能であると考えられる。
しかしながら、このような特殊なフィルムは概して高価であり、一般的に保護フィルムとして用いられるものではない。
対して、微細凹凸構造層を有するフィルムを用いれば、一般的に用いられるような保護フィルムを用いた場合であっても、気泡の発生を抑制することが可能となる。
なお、本発明において「気泡の発生を抑制する」とは、円相当直径が20μm以上の気泡が存在しないことを意味する。
【0089】
このように、本発明の第2の積層フィルムにおいては、微細凹凸構造層の表面に保護フィルムを配置し、圧力を印加して透明導電フィルム間の気泡を除去する処理(加圧脱泡処理)を行った場合であっても、保護フィルムと微細凹凸構造層との間に気泡が発生しにくい。従って、保護フィルムを剥離することなく、透明導電フィルム間(具体的には、透明接着層と第1の透明導電層および第2の基材との間)の気泡の有無を確認できるので、保護フィルムを張り替えるなどの追加の工程を行わずに、透明導電フィルム間の気泡が除去されているかを検査することができる。よって、タッチパネル装置に用いられる積層フィルムをより簡便、かつ効率的に製造することができる。
【0090】
本発明の第2の積層フィルムは、透明接着層と第1の透明導電層および第2の基材との間に、直径20μm以上の気泡が存在せず、かつ微細凹凸構造層と保護フィルムとの間にも直径が20μm以上の気泡が存在しない。
【0091】
<他の実施形態>
本発明の第2の態様の積層フィルムは、上述したものに限定されない。
例えば、
図6に示す第1の透明導電フィルム10aの屈折率調整層12は、高屈折率層12aおよび低屈折率層12bをそれぞれ1層ずつ備える2層の積層構造であるが、屈折率調整層12は単層構造であってもよいし、高屈折率層12aと低屈折率層12bとが交互に積層された3層以上の積層構造であってもよい。
また、
図6に示す第1の透明導電フィルム10aを、例えば
図4または
図5に示す積層フィルム10と同じ構成にしてもよい。
【0092】
「タッチパネル装置および画像表示装置」
本発明のタッチパネル装置は、画像表示装置に用いられる。
図8に本発明のタッチパネル装置30と、該タッチパネル装置30を備えた画像表示装置1の一実施形態例を示す。
【0093】
<タッチパネル装置>
図8に示すタッチパネル装置30は、第1の透明導電フィルム10aと、第2の透明導電フィルム10bと、透明接着層23と、第3の基材25とを備える。
図8に示すように、タッチパネル装置30は、微細凹凸構造層14の表面が画像表示装置本体31側(すなわち、画像表示装置の画像が表示される側)を向くように、画像表示装置本体31と空気を介して対向配置され、画像表示装置1を形成している。
【0094】
第1の透明導電フィルム10aは第2の態様の積層フィルムの第1の透明導電フィルムに相当し、第2の透明導電フィルム10bは第2の態様の積層フィルムの第2の透明導電フィルムに相当し、透明接着層23は第2の態様の積層フィルムの第2の透明接着層に相当する。
微細凹凸構造層14は、表面に凸部間または凹部間の平均間隔が400nm以下の微細凹凸構造を有し、該微細凹凸構造を有する側の表面とは反対側の表面が第1の基材11側を向くように、第1の基材11の第2の面に設けられている。
また、
図8に示す屈折率調整層12は、第1の基材11側から順に、高屈折率層12aと低屈折率層12bとをそれぞれ1層ずつ備えた積層構造である。
【0095】
第3の基材25は、タッチパネル装置30および画像表示装置1の表面を保護するものであり、第2の透明導電層22の第2の基材21とは反対側の面に設けられる。
第3の基材25は、硬度が高い材料で構成されることが好ましい。
なお、第1の基材11、第2の基材21、および第3の基材25の全てが透明樹脂材料からなることが好ましい。このような構成とすることで、ガラス基材を用いた場合と比較して軽く強度の高い画像表示装置1が得られる。
【0096】
<画像表示装置本体>
画像表示装置本体31としては、フラットディスプレイパネル(液晶パネル、有機ELディスプレイパネル等)などの表示素子が挙げられる。
【0097】
<タッチパネル装置および画像表示装置の製造方法>
図8に示すタッチパネル装置30および画像表示装置1は、例えば以下のようにして製造できる。
まず、第1の透明導電フィルム10aの微細凹凸構造層14の微細凹凸構造を有する側の表面に、剥離可能な保護フィルムを積層する。次いで、第1の透明導電層13と第2の基材21とが向き合うように、透明接着層23を介して第1の透明導電フィルム10aと第2の透明導電フィルム10bとを積層する。さらに、第2の透明導電層22の第2の基材21とは反対側の面に第3の基材25を積層した後、圧力を印加する。
【0098】
第1の透明導電フィルム10aは第1の態様の積層フィルムと同様の方法により製造でき、第2の透明導電フィルム10bは、第2の態様の積層フィルムの第2の透明導電フィルムと同様の方法により製造できる。
タッチパネル装置30の製造に用いる保護フィルムとしては、第2の態様の積層フィルムの説明において、先に例示した保護フィルムが挙げられる。
また、第1の透明導電フィルム10aと第2の透明導電フィルム10bとは、第2の態様の積層フィルムにおいて、先に説明した透明導電フィルムの積層と同様の方法により、積層すればよい。
【0099】
第3の基材25は、接着剤などを介して第2の透明導電層22上に積層してもよいし、第2の透明導電層22上に透明樹脂材料を供給し、これを硬化させることで第3の基材25を第2の透明導電層22上に直接形成してもよい。
【0100】
圧力を印加する方法は、第2の態様の積層フィルムにおいて、先に説明した圧力の印加方法と同様である。
圧力を印加した後は、透明接着層23と第1の透明導電層および第2の基材との間や、第2の透明導電層22と第3の基材25との間に気泡が残存しているかどうか、検査を行う。円相当直径が20μm以上の気泡が残っている場合は、再度圧力を印加して加圧脱泡処理を行う。
【0101】
気泡が残っていない場合は、保護フィルムを微細凹凸構造層14から剥離して、
図8に示すタッチパネル装置30を得る。
このようにして得られたタッチパネル装置30を、微細凹凸構造層14の表面が画像表示装置本体31側を向くように、画像表示装置本体31と空気を介して対向配置し、画像表示装置1を得る。
【0102】
<作用効果>
以上説明した本実施形態のタッチパネル装置30は、微細凹凸構造層14の表面が画像表示装置本体31側(すなわち、画像表示装置の画像が表示される側)を向くように、画像表示装置本体31と空気を介して対向配置され、画像表示装置1を形成している。よって、タッチパネル装置30の表面(第3の基材25側の表面)が押圧され、タッチパネル装置30と画像表示装置本体31とが接触したときの接触面積を小さくできる。その結果、タッチパネル装置30と画像表示装置本体31との間でのブロッキングやニュートンリングの発生を抑制できる。
【0103】
また、上述したように、微細凹凸構造層14の表面には凸部間または凹部間の平均間隔が可視光線の波長以下の微細凹凸構造が形成されているので、反射防止性に優れる。タッチパネル装置30は、微細凹凸構造層14の表面が画像表示装置本体31側を向くように配置されるので、タッチパネル装置30と空気層との間での光の反射が抑制され、画像表示装置1の視認性が大きく向上し、鮮明な画像を得ることができる。
しかも、本実施形態のタッチパネル装置30は屈折率調整層12を備えるので、タッチパネル装置30を透過する光の色が変化しにくく、色づきが小さく、ヘイズが上昇しにくい。
【0104】
また、タッチパネル装置30を製造するにあたっては、上述したように、まず、第1の透明導電フィルム10aの微細凹凸構造層14の微細凹凸構造を有する側の表面に、剥離可能な保護フィルムを積層する。次いで、第1の透明導電層13と第2の基材21とが向き合うように、透明接着層23を介して第1の透明導電フィルム10aと第2の透明導電フィルム10bとを積層し、さらに第2の透明導電層22上に第3の基材25を積層した後、フィルム積層体に圧力を印加して加圧脱泡処理する。これにより、透明導電フィルム間(具体的には、透明接着層23と第1の透明導電層13および第2の基材21との間)や、第2の透明導電層22と第3の基材25との間に存在する気泡を除去できる。
【0105】
本実施形態のタッチパネル装置においては、微細凹凸構造層の表面に保護フィルムを配置し、圧力を印加して透明導電フィルム間の気泡を除去する処理を行った場合であっても、保護フィルムと微細凹凸構造層との間に気泡が発生しにくい。気泡が発生しにくい理由は、第2の態様の積層フィルムにおいて説明した通りである。
従って、保護フィルムを剥離することなく、透明導電フィルム間や、第2の透明導電層22と第3の基材25との間の気泡の有無を確認できるので、保護フィルムを張り替えるなどの追加の工程を行わずに、透明導電フィルム間や、第2の透明導電層22と第3の基材25との間の気泡が除去されているかを検査することができる。よって、タッチパネル装置をより簡便、かつ効率的に製造することができる。
【0106】
本実施形態のタッチパネル装置および画像表示装置は、透明接着層と第1の透明導電層および第2の基材との間に、直径20μm以上の気泡が存在しない。また、第2の透明導電層と第3の基材との間にも直径が20μm以上の気泡が存在しない。
【0107】
<他の実施形態>
本実施形態のタッチパネル装置および画像表示装置は、上述したものに限定されない。
例えば、
図8に示す第1の透明導電フィルム10aの屈折率調整層12は、高屈折率層12aおよび低屈折率層12bをそれぞれ1層ずつ備える2層の積層構造であるが、屈折率調整層12は単層構造であってもよいし、高屈折率層12aと低屈折率層12bとが交互に積層された3層以上の積層構造であってもよい。
また、
図8に示す第1の透明導電フィルム10aを、例えば
図4または
図5に示す積層フィルム10と同じ構成にしてもよい。
また、第3の基材25はなくてもよい。
【0108】
「モバイル機器」
本発明のモバイル機器は、本発明の画像表示装置を備える。
本発明のモバイル機器は、タッチパネル装置と画像表示装置本体との間でのブロッキングやニュートンリングの発生を抑制できる。また、画像表示装置の視認性が大きく向上し、鮮明な画像を得ることができる。しかも、タッチパネル装置30を透過する光の色が変化しにくく、色づきが小さく、ヘイズが上昇しにくい。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0110】
<陽極酸化アルミナの細孔の測定>
陽極酸化アルミナの一部を削り、断面にプラチナを1分間蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM−7400F」)を用いて、加速電圧3.00kVの条件にて、断面を観察し、細孔間の間隔、細孔の深さを測定した。各測定は、それぞれ50点について行い、平均値を求めた。
【0111】
<微細凹凸構造層の凸部の測定>
微細凹凸構造層の破断面にプラチナを10分間蒸着し、陽極酸化アルミナと同様に断面を観察し、凸部間の間隔、凸部の高さを測定した。各測定は、それぞれ50点について行い、平均値を求めた。
【0112】
<透過率の測定>
積層フィルムの透過率は、JIS K 7136:2000(ISO 14782:1999)に準拠し、ヘイズメーター(スガ試験機株式会社製)を用い、微細凹凸構造側を光源側として測定した。
【0113】
<ヘイズの測定>
積層フィルムのヘイズは、JIS K 7136:2000(ISO 14782:1999)に準拠し、ヘイズメーター(スガ試験機株式会社製)を用い、微細凹凸構造側を光源側として測定した。
【0114】
<色差の測定>
積層フィルムの透過光の可視光の波長領域内について、分光光度計UV−2450(株式会社島津製作所製)を用いて透過光のスペクトルを測定し、測定結果からJIS Z 8729(ISO 11664−4)に準拠して、a
*およびb
*の値を求めた。
【0115】
<ロール状モールドの製造>
純度99.99%のアルミニウムからなるロールを、過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨した。
工程(a):
該ロールについて、0.5Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で6時間陽極酸化を行った。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたロールを、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に6時間浸漬して、酸化皮膜の少なくとも一部を除去した。
工程(c):
該ロールについて、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で45秒間陽極酸化を行った。
工程(d):
酸化皮膜が形成されたロールを、32℃の5質量%リン酸に8分間浸漬して酸化皮膜の一部を除去し、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
前記工程(c)および工程(d)を合計で5回繰り返し、平均間隔:100nm、平均深さ:150nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール状モールドaを得た。
得られたロール状モールドaを、オプツールDSX(ダイキン工業社製)の0.1質量%希釈溶液に浸漬し、一晩風乾して、酸化皮膜表面のフッ素化処理を行った。
【0116】
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製>
コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比1:2:4の縮合反応混合物の45質量部、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)の45質量部、
ラジカル重合性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、「X−22−1602」)の10質量部、
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティーケミカルズ株式会社製、「イルガキュア184」)の3質量部、
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティーケミカルズ株式会社製、「イルガキュア819」)の0.2質量部、
を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを得た。
【0117】
<高屈折率層用の樹脂組成物の調製>
高屈折率微粒子分散液としてZrO
2微粒子のメチルエチルケトン分散液(住友大阪セメント株式会社製、「MZ−230X」、固形分濃度30質量%)の11.0質量部、
ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬株式会社製、「KAYARAD−PET−30」)の1.6質量部、
メチルイソブチルケトンの87.3質量部、
2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(BASF社製、「イルガキュア127」)の0.1質量部
を混合し、高屈折率層用の樹脂組成物(高屈折率層用組成物)を得た。
【0118】
<低屈折率層用の樹脂組成物の調製>
ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬株式会社製、「KAYARAD−PET−30」)の0.6質量部、
フッ素モノマー(共栄社化学株式会社製、「LINC−3A」)の2.2質量部、
メチルイソブチルケトンの97.0質量部、
2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(BASF社製、「イルガキュア127」)の0.2質量部
を混合し、低屈折率層用の樹脂組成物(低屈折率層用組成物)を得た。
【0119】
「実施例1」
<微細凹凸構造層の形成>
フッ素化処理を施したロール状モールドaを
図2に示す製造装置に設置し、タンク42に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを供給し、基材11としてPET基材を用い、以下に示すようにして基材11上に微細凹凸構造層14を形成した。
まず、表面に微細凹凸構造を有するロール状モールド40と、ロール状モールド40の表面に沿って移動する基材11との間に、タンク42から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物44を供給した。
ロール状モールド40と、空気圧シリンダ46によってニップ圧が調整されたニップロール48との間で、基材11および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物44をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物44を、基材11とロール状モールド40との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド40の微細凹凸構造の凹部内に充填した。
ロール状モールド40の下方に設置された活性エネルギー線照射装置50から、基材11を通して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物44に積算光量3200mJ/cm
2の紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物44を硬化させることによって、ロール状モールド40の表面の微細凹凸構造が転写された微細凹凸構造を表面に有する微細凹凸構造層14を形成した。
剥離ロール52により、第2の面に微細凹凸構造層14が形成された基材11を剥離した。
微細凹凸構造層14の凸部間の平均間隔は100nmであり、凸部の平均高さは150nmであった。
【0120】
<屈折率調整層の形成>
微細凹凸構造層14が形成された基材11のもう一方の面(第1の面)に、高屈折率層用組成物をバーコーターにて塗布し、70℃で1分間乾燥して、溶剤を除去して塗膜を形成した。その塗膜に紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン株式会社製、「Hバルブ」)を用いて、照射量150mJ/cm
2で紫外線照射を行い、乾燥硬化後の膜厚6.0μmの硬化樹脂層を形成し、ハードコート層の機能を兼ねる高屈折率層を形成した。
次いで、高屈折率層上に、バーコーターを用いて低屈折率層用組成物を塗布し、塗膜を形成した。その塗膜を60℃で1分乾燥して溶剤を除去した後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン株式会社製、「Hバルブ」)を用いて、照射量100mJ/cm
2で紫外線照射を行い、乾燥硬化後の膜厚45nmの低屈折率層を形成した。形成された高屈折率層および低屈折率層を併せて、屈折率調整層とした。
なお、高屈折率層の屈折率は1.65であり、低屈折率層の屈折率1.46であった。
【0121】
<透明導電層の形成>
屈折率調整層の基材とは反対側の面に、スパッタリング法にて厚さ25nmのITOからなる金属酸化物の薄膜を形成し、これを透明導電層とした。このようにして、
図1に示すような、基材11としてPET基材の第1の面に高屈折率層12aおよび低屈折率層12bからなる屈折率調整層12と、ITOの透明導電層13が設けられ、第2の面に微細凹凸構造層14が設けられた積層フィルム10を得た。
【0122】
<ITO膜のエッチングによるパターン化>
得られた積層フィルム10の微細凹凸構造層14の微細凹凸構造を有する側の表面に保護フィルムを積層した。ついで、透明導電層13にストライプ状にパターン化されたフォトレジストを塗布し、乾燥硬化させた後、25℃、5%の塩酸(塩化水素水溶液)に1分間浸漬して、ITO膜のエッチングを行った。その後、フォトレジストを除去した。
【0123】
<透明導電体層のアニール処理による結晶化>
ITO膜をパターン化した後、140℃で90分間の加熱処理を行い、ITO膜の結晶化を行った。
このようにして、パターン化された電極を有する積層フィルム10を得た。
得られた積層フィルム10について、光の透過率、ヘイズおよび色差を測定した。その結果を表1に示す。
【0124】
<加圧脱泡処理>
保護フィルムが積層された積層フィルム10と、ガラス基板との間に光学用透明粘着シート(三菱樹脂株式会社製、「クリアフィット」)を配置し、オートクレーブ内に配置し、接着固定した。その後、圧力0.5MPa、温度50℃の環境下に10分間配置し、積層フィルム10とガラス基板とを加圧脱泡処理した。
得られた積層フィルム10とガラス基板との積層体を目視で観察したところ、保護フィルムと積層フィルム10の間に気泡は確認されなかった。また、顕微鏡視で同様に観察したところ、円相当直径が20μm以上の気泡は観察されなかった。その結果を表1に示す。また、積層フィルム10とガラス基板との間にも円相当直径が20μm以上の気泡は確認されなかった。
また、得られた積層フィルム10とガラス基板との積層体から保護フィルムを剥離し、これを微細凹凸構造層14が液晶表面側を向くように液晶表面と密着させ、ガラス基板側から外観を目視にて観察したところ、ニュートンリングおよびブロッキングは確認されなかった。また、積層フィルム10と液晶表面が密着した状態で液晶を点灯した際に、鮮明な画像が得られた。
【0125】
「比較例1」
微細凹凸構造層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして屈折率調整層および透明導電層を形成し、ITO膜のエッチングによるパターン化を行い、透明導電体層のアニール処理による結晶化を行い、PET基材の第1の面に屈折率調整層および透明導電層が設けられ、パターン化された電極を有する積層フィルムを得た。なお、保護フィルムは、PET基材の第2の面に積層した。
得られた積層フィルムについて、光の透過率、ヘイズおよび色差を測定した。その結果を表1に示す。
【0126】
また、得られた積層フィルムについて、実施例1と同様にしてガラス基板を積層し、加圧脱泡処理を行い、保護フィルムと積層フィルムの間の気泡(直径20μm以上)の有無について確認した。結果を表1に示す。
さらに、得られた積層フィルムとガラス基板との積層体から保護フィルムを剥離し、これをPET基材の第2の面が液晶表面側を向くように液晶表面と密着させ、ガラス基板から外観を目視にて観察したところ、ニュートンリングが確認された。また、積層フィルムと液晶表面が密着した状態で液晶を点灯したときの画像は不鮮明であった。
【0127】
「比較例2」
屈折率調整層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして微細凹凸構造層および透明導電層を形成し、ITO膜のエッチングによるパターン化を行い、透明導電体層のアニール処理による結晶化を行い、PET基材の第2の面に微細凹凸構造層が設けられ、PET基材の第1の面に透明導電層が設けられ、パターン化された電極を有する積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムについて、光の透過率、ヘイズおよび色差を測定した。その結果を表1に示す。
【0128】
また、得られた積層フィルムについて、実施例1と同様にしてガラス基板を積層し、加圧脱泡処理を行い、保護フィルムと積層フィルムの間の気泡(直径20μm以上)の有無について確認した。結果を表1に示す。
さらに、得られた積層フィルムとガラス基板との積層体から保護フィルムを剥離し、これをPET基材の第2の面が液晶表面側を向くように液晶表面と密着させ、ガラス基板から外観を目視にて観察したところ、ニュートンリングおよびブロッキングは確認されなかった。しかし、積層フィルムと液晶表面が密着した状態で液晶を点灯したときの画像は不鮮明であった。
【0129】
【表1】
【0130】
表1の結果から明らかなように、実施例1の積層フィルムは、耐ブロッキング性および耐ニュートンリング性に優れていた。また、積層フィルムと液晶表面が密着した状態で液晶を点灯した際に、鮮明な画像が得られた。また、実施例1の積層フィルムは透過率が高く、a
*およびb
*の値がそれぞれ2.5以下であり、タッチパネル装置を透過した光の色づきを十分に抑制することができた。また、ヘイズが低かった。しかも、加圧脱泡処理後の保護フィルムと積層フィルムとの間に、直径が20μm以上の気泡が存在していなかった。
一方、微細凹凸構造層を有さない比較例1の積層フィルムは、ニュートンリングが確認された。また、積層フィルムと液晶表面が密着した状態で液晶を点灯したときの画像は不鮮明であった。また、比較例1の積層フィルムは透過率が低かった。また、加圧脱泡処理後の保護フィルムと積層フィルムとの間に、直径が20μm以上の気泡が存在していた。
屈折率調整層を有さない比較例2の積層フィルムは、b
*の値が3.0であり、タッチパネル装置を透過した光の色づきを十分に抑制することができなかった。また、ニュートンリングおよびブロッキングは確認されなかったが、ヘイズが高かったためか、積層フィルムと液晶表面が密着した状態で液晶を点灯したときの画像は不鮮明であった。