特許第6551683号(P6551683)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6551683Sn−Zn−O系酸化物焼結体とその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551683
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】Sn−Zn−O系酸化物焼結体とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/453 20060101AFI20190722BHJP
   C04B 35/457 20060101ALI20190722BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   C04B35/453
   C04B35/457
   C23C14/34 A
【請求項の数】2
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-48907(P2016-48907)
(22)【出願日】2016年3月11日
(65)【公開番号】特開2017-160103(P2017-160103A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】安東 勲雄
(72)【発明者】
【氏名】小沢 誠
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 茂
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−038027(JP,A)
【文献】 特開平01−212263(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/168224(WO,A1)
【文献】 特開2012−66968(JP,A)
【文献】 特開2007−277075(JP,A)
【文献】 特開2007−314364(JP,A)
【文献】 特開2012−180247(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0334039(US,A1)
【文献】 特開2013−177676(JP,A)
【文献】 特開2008−192604(JP,A)
【文献】 特開2013−036073(JP,A)
【文献】 特開2010−037161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZnおよびSnを主成分とし、ZnO相およびSnO2相の少なくとも一方とZn2SnO4相を含有するSn−Zn−O系酸化物焼結体において、
Snを、原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有し、
Si、Ti、Ge、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種を第1添加元素Mとし、かつ、Nb、Ta、WおよびMoから選ばれた少なくとも1種を第2添加元素Xとした場合、
第1添加元素Mを、全金属元素の総量に対する原子数比M/(Sn+Zn+M+X)として0.001以上0.04以下の割合で含有し、
第2添加元素Xを、全金属元素の総量に対する原子数比X/(Sn+Zn+M+X)として0.0001以上0.1以下の割合で含有し、かつ、
上記ZnO相、SnO2相、Zn2SnO4相と異なる化合物相を更に含んでいると共に、当該化合物相が、SiO2、TiO2、GeO2、Bi23、CeO2、Al23、Ga23、および、Zn2SiO4、ZnSiO3、Zn2TiO4、Ti0.5Sn0.52、Zn2GeO4、ZnBi1219、Zn0.5Ce0.51.75、ZnAl24、ZnGa24から選ばれる酸化物で構成され
相対密度が90%以上かつ比抵抗が1Ω・cm以下であることを特徴とするSn−Zn−O系酸化物焼結体。
【請求項2】
請求項1に記載のSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法において、
ZnO粉末とSnO2粉末、Si、Ti、Ge、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種の第1添加元素Mを含有する酸化物粉末、Nb、Ta、WおよびMoから選ばれた少なくとも1種の第2添加元素Xを含有する酸化物粉末を、純水、有機バインダー、分散剤と混合して得られるスラリーを乾燥しかつ造粒して造粒粉末を製造する造粒粉末製造工程と、
上記造粒粉末を加圧成形して成形体を得る成形体製造工程と、
焼成炉内の酸素濃度が70体積%以上の雰囲気において、1200℃以上1450℃以下かつ10時間以上30時間以内の条件で上記成形体を焼成する焼結工程と、
上記焼成工程と同一の酸素濃度雰囲気において、引き続き得られた焼結体を800℃以上1100℃以下かつ1時間以上10時間以下の条件で保持する焼結後保持工程、
を具備することを特徴とするSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、液晶表面素子、タッチパネル等に適用される透明導電膜を直流スパッタリング、高周波スパッタリングといったスパッタリング法で製造する際にスパッタリングターゲットとして使用されるSn−Zn−O系酸化物焼結体に係り、特に、焼結体を研削加工する際の砥石の目詰まりを抑制して加工中における焼結体の破損を防止でき、かつ、スパッタリング成膜中におけるスパッタリングターゲットの破損やクラックの発生等も防止できる高密度で低抵抗のSn−Zn−O系酸化物焼結体とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高い導電性と可視光領域での高い透過率とを有する透明導電膜は、太陽電池、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンスおよび無機エレクトロルミネッセンス等の表面素子や、タッチパネル用電極等に利用される他、自動車窓や建築用の熱線反射膜、帯電防止膜、冷凍ショーケース等の各種の防曇用透明発熱体としても利用されている。
【0003】
透明導電膜としては、アンチモンやフッ素をドーパントとして含む酸化錫(SnO2)、アルミニウムやガリウムをドーパントとして含む酸化亜鉛(ZnO)、および、錫をドーパントとして含む酸化インジウム(In23)等が知られている。特に、錫をドーパントとして含む酸化インジウム(In23)膜、すなわち、In−Sn−O系の膜はITO(Indium tin oxide)膜と称され、低抵抗の膜が容易に得られることから広く用いられている。
【0004】
上記透明導電膜の製造方法としては、直流スパッタリング、高周波スパッタリングといったスパッタリング法が良く用いられている。スパッタリング法は、蒸気圧の低い材料の成膜や精密な膜厚制御を必要とする際に有効な手法であり、操作が非常に簡便であるため、工業的に広範に利用されている。
【0005】
このスパッタリング法は、薄膜の原料としてスパッタリングターゲットを用いる。スパッタリングターゲットは、成膜したい薄膜を構成している金属元素を含む個体であり、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等の焼結体や、場合によっては単結晶が使用される。スパッタリング法では、一般にその内部に基板とスパッタリングターゲットを配置できるようになった真空チャンバーを有する装置を用い、基板とスパッタリングターゲットを配置した後、真空チャンバーを高真空にし、その後アルゴン等の希ガスを導入し、真空チャンバー内を約10Pa以下のガス圧とする。そして、基板を陽極とし、スパッタリングターゲットを陰極とし、両者の間にグロー放電を起こしてアルゴンプラズマを発生させ、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のスパッタリングターゲットに衝突させ、これによってはじきとばされるターゲットの成分粒子を基板上に堆積させて膜を形成するものである。
【0006】
そして、上記透明導電膜を製造するため、従来、ITO等の酸化インジウム系の材料が広範囲に用いられている。しかし、インジウム金属は、地球上で希少金属であることと毒性を有しているため環境や人体に対し悪影響が懸念されており、非インジウム系の材料が求められている。
【0007】
上記非インジウム系の材料としては、上述したようにアルミニウムやガリウムをドーパントとして含む酸化亜鉛(ZnO)系材料、および、アンチモンやフッ素をドーパントとして含む酸化錫(SnO2)系材料が知られている。そして、上記酸化亜鉛(ZnO)系材料の透明導電膜はスパッタリング法で工業的に製造されているが、耐薬品性(耐アルカリ性、耐酸性)に乏しい等の欠点を有する。他方、酸化錫(SnO2)系材料の透明導電膜は耐薬品性に優れているものの、高密度で耐久性があり加工効率に優れた酸化錫系焼結体ターゲットを製造し難いため、上記透明導電膜をスパッタリング法で製造することに困難が伴う欠点を有していた。
【0008】
そこで、これ等の欠点を改善する材料として、酸化亜鉛と酸化錫を主成分とする焼結体が提案されている。例えば、特許文献1には、SnO2相とZn2SnO4相とからなり、当該Zn2SnO4相の平均結晶粒径が1〜10μmの範囲である焼結体が記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、平均結晶粒径が4.5μm以下で、CuKα線を使用したX線回折によるZn2SnO4相における(222)面、(400)面の積分強度をI(222)、I(400)としたとき、I(222)/[I(222)+I(400)]で表される配向度が標準(0.44)よりも大きい0.52以上とした焼結体が記載されている。更に、特許文献2には、上記特性を備えた焼結体を製造する方法として、当該焼結体製造工程を、焼成炉内に酸素を含む雰囲気中において800℃〜1400℃の条件で成形体を焼成する工程と、最高焼成温度での保持が終了してから焼成炉内をArガス等の不活性雰囲気にして冷却する工程とで構成する方法も記載されている。
【0010】
しかし、これ等の方法では、ZnおよびSnを主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体において、機械的強度に耐える焼結体強度は得られるものの、得られた焼結体を研削加工する際に砥石が目詰まりして加工効率が低下してしまう課題が存在した。更に、十分な密度や導電性を得ることも難しく、量産現場でのスパッタリング成膜に必要とされる特性としては満足いくものではなかった。すなわち、常圧焼結法において、焼結体の高密度化や導電性および加工性能という点に至っては課題が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−037161号公報(請求項13、参照)
【特許文献2】特開2013−036073号公報(請求項1、3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような要請に着目してなされたもので、ZnおよびSnを主成分とし、機械的強度に加えて加工性能に優れ(すなわち、加工効率が高く)、高密度で低抵抗のSn−Zn−O系酸化物焼結体とその製造方法を提供することを課題とする。
【0013】
ZnおよびSnを主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度かつ低抵抗といった両特性を備えることが困難な材料で、組成を変化させても高密度かつ導電性に優れた酸化物焼結体を作製することは困難である。焼結体密度において、配合比により多少の密度の上下はあるものの、導電性については、1×106Ω・cm以上と非常に高い比抵抗値を示し導電性に乏しい。
【0014】
ZnおよびSnを主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体の作製においては、1100℃あたりからZn2SnO4という化合物が生成し始め、1450℃近辺からZnの揮発が著しくなる。Sn−Zn−O系酸化物焼結体の密度を上げるために高温で焼成するとZnの揮発が進むため、粒界拡散や粒同士の結合が弱まり、高密度の酸化物焼結体を得ることができない。
【0015】
また、導電性については、Zn2SnO4、ZnO、SnO2が導電性に乏しい物質であることから、配合比を調整して化合物相やZnO、SnO2の量を調整したとしても、導電性を大幅に改善することはできない。その結果、ZnおよびSnを主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体は、量産現場でのスパッタリング成膜に必要とされる特性である焼結体の高密度および高導電性を得ることができない。
【0016】
一方、焼結体の加工効率(すなわち、加工性能)については、Sn−Zn−O系酸化物焼結体は靱性が高いため、研削加工の際に砥石が目詰まりを起こし易く、加工性能に劣る(加工効率が低い)という問題があった。
【0017】
すなわち、本発明の課題とするところは、Znの揮発を抑制しつつ粒界拡散を促進させ、粒同士の結合を強めた酸化物焼結体に、導電性を改善させる手段を施しかつ適切な化合物組織を形成することで、上述したように緻密で導電性に優れ、加工効率の高いZnおよびSnを主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そこで、上記課題を解決するため、本発明者等は、焼結体の密度と導電性の両特性を両立する製造条件を探索すると共に、Zn2SnO4という化合物生成を開始する1100℃からZnの揮発が顕著になる1450℃の温度領域で、高密度および高導電性に優れたZnおよびSnを主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法について検討を行った。その結果、Snを原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有する条件の下、Si、Ti、Ge、Bi、Ce、Al、Gaから選ばれる少なくとも1種(すなわち第1添加元素M)をドーパントとして添加することで、相対密度が90%の酸化物焼結体を得ることができた。しかし、密度は向上したものの、導電性は改善されなかったため、導電性改善のため、更に、Nb、Ta、W、Moのいずれかの添加元素(すなわち第2添加元素X)を加えることで、高密度を維持したまま、導電性に優れた酸化物焼結体の製造が可能となった。尚、上記Sn−Zn−O系酸化物焼結体において、焼結体中のSnが低濃度の場合、ウルツ鉱型結晶構造のZnO相とスピネル型結晶構造のZn2SnO4相が主成分となり、Snが高濃度の場合、スピネル型結晶構造のZn2SnO4相とルチル型結晶構造のSnO2相が主成分となる。
【0019】
更に、加工効率に優れる酸化物焼結体の構造等について探求したところ、Sn−Zn−O系酸化物焼結体中に、Si、Ti、Ge、Bi、Ce、Al、Gaから選ばれる少なくとも1種の元素(すなわち第1添加元素M)を成分として含有し、上記ZnO相、SnO2相、Zn2SnO4相とは異なる化合物相を生成させた場合、焼結体の研削加工の際に砥石の目詰まりを起こし難くなることが発見され、これにより焼結体の加工効率が向上することを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見により完成されたものである。
【0020】
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
ZnおよびSnを主成分とし、ZnO相およびSnO2相の少なくとも一方とZn2SnO4相を含有するSn−Zn−O系酸化物焼結体において、
Snを、原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有し、
Si、Ti、Ge、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種を第1添加元素Mとし、かつ、Nb、Ta、WおよびMoから選ばれた少なくとも1種を第2添加元素Xとした場合、
第1添加元素Mを、全金属元素の総量に対する原子数比M/(Sn+Zn+M+X)として0.001以上0.04以下の割合で含有し、
第2添加元素Xを、全金属元素の総量に対する原子数比X/(Sn+Zn+M+X)として0.0001以上0.1以下の割合で含有し、かつ、
上記ZnO相、SnO2相、Zn2SnO4相と異なる化合物相を更に含んでいると共に、当該化合物相が、SiO2、TiO2、GeO2、Bi23、CeO2、Al23、Ga23、および、Zn2SiO4、ZnSiO3、Zn2TiO4、Ti0.5Sn0.52、Zn2GeO4、ZnBi1219、Zn0.5Ce0.51.75、ZnAl24、ZnGa24から選ばれる酸化物で構成され、
相対密度が90%以上かつ比抵抗が1Ω・cm以下であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る第2の発明は、
第1の発明に記載のSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法において、
ZnO粉末とSnO2粉末、Si、Ti、Ge、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種の第1添加元素Mを含有する酸化物粉末、Nb、Ta、WおよびMoから選ばれた少なくとも1種の第2添加元素Xを含有する酸化物粉末を、純水、有機バインダー、分散剤と混合して得られるスラリーを乾燥しかつ造粒して造粒粉末を製造する造粒粉末製造工程と、
上記造粒粉末を加圧成形して成形体を得る成形体製造工程と、
焼成炉内の酸素濃度が70体積%以上の雰囲気において、1200℃以上1450℃以下かつ10時間以上30時間以内の条件で上記成形体を焼成する焼結工程と、
上記焼成工程と同一の酸素濃度雰囲気において、引き続き得られた焼結体を800℃以上1100℃以下かつ1時間以上10時間以下の条件で保持する焼結後保持工程、
を具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、Snを、原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有する条件、第1添加元素M(Si、Ti、Ge、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種)を、全金属元素の総量に対する原子数比M/(Sn+Zn+M+X)として0.001以上0.04以下の割合で含有する条件、第2添加元素X(Nb、Ta、WおよびMoから選ばれた少なくとも1種)を、全金属元素の総量に対する原子数比X/(Sn+Zn+M+X)として0.0001以上0.1以下の割合で含有する条件、および、ZnO相、SnO2相、Zn2SnO4相と異なる化合物相を更に含むと共に、当該化合物相が、SiO2、TiO2、GeO2、Bi23、CeO2、Al23、Ga23、および、Zn2SiO4、ZnSiO3、Zn2TiO4、Ti0.5Sn0.52、Zn2GeO4、ZnBi1219、Zn0.5Ce0.51.75、ZnAl24、ZnGa24から選ばれる酸化物で構成される条件を具備させることにより、SnとZnのどのような配合比においても常圧焼結法により量産性に優れた高密度かつ低抵抗でかつ加工効率に優れたSn−Zn−O系酸化物焼結体を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0024】
まず、Snを原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含み、Si、Ti、Ge、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種の第1添加元素Mを全金属元素の総量に対する原子数比M/(Sn+Zn+M+X)として0.001以上0.04以下の割合で含み、かつ、Nb、Ta、WおよびMoから選ばれた少なくとも1種の第2添加元素Xを全金属元素の総量に対する原子数比X/(Sn+Zn+M+X)として0.0001以上0.1以下の割合で含有する原料粉末を調製し、該原料粉末を造粒して得た造粒粉末を成形して成形体を製造すると共に、酸素濃度が70体積%以上の焼成炉内雰囲気において、1200℃以上1450℃以下かつ10時間以上30時間以内の条件で上記成形体を焼成し(焼結工程)、焼成工程と同一の酸素濃度雰囲気において引き続き得られた焼結体を800℃以上1100℃以下かつ1時間以上10時間以下の条件で保持した(焼結後保持工程)後、冷却することで、加工性能に優れ、相対密度が90%以上かつ比抵抗が1Ω・cm以下である本発明に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造することが可能となる。
【0025】
以下、本発明に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法について説明する。
【0026】
[添加元素]
Snを原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有する条件の下、第1添加元素Mおよび第2添加元素Xを要件としているのは、第1添加元素Mだけの場合、密度は向上するものの低抵抗の特性を得られない。他方、第2添加元素Xだけの場合は、低抵抗になるものの高密度が得られない。
【0027】
すなわち、第1添加元素Mおよび第2添加元素Xを加えることで、高密度かつ低抵抗のSn−Zn−O系酸化物焼結体を得ることが可能となる。
【0028】
(第1添加元素M)
酸化物焼結体の緻密化には、Si、Ti、Ge、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種の第1添加元素Mを添加することで、高密度化の効果を得ることが可能となる。上記焼結工程において、第1添加元素Mが粒界拡散を促進し、粒同士のネック成長を手助けして粒同士の結合を強固とし、緻密化に寄与していると思われる。更に、上記焼結後保持工程で、第1添加元素Mを含有しかつ上述したZnO相、SnO2相、Zn2SnO4相と異なる化合物(以下、M含有化合物と略称する場合がある)相が生成されるため、当該化合物相により切削加工時における砥石の目詰まりが抑制されて加工性能の改善が図れる効果もある。
【0029】
ここで、第1添加元素をMとし、第1添加元素Mの全金属元素の総量に対する原子数比M/(Sn+Zn+M+X)を0.001以上0.04以下とする。上記原子数比M/(Sn+Zn+M+X)が0.001未満の場合、上記焼結後保持工程を行っても、M含有化合物が生成されず、加工性能の改善効果が表れないからである(比較例9参照)。一方、上記原子数比M/(Sn+Zn+M+X)が0.04を超えた場合、後述する第2添加元素Xを添加しても酸化物焼結体の導電性は高まらない(比較例10参照)。
【0030】
尚、第1添加元素Mを含有しかつZnO相、SnO2相、Zn2SnO4相と異なる上記M含有化合物自体は脆いため、酸化物焼結体の靱性を適度に低減して砥石の目詰まりを抑制する効果がある。第1添加元素Mを含有するこのような化合物としては、SiO2、TiO2GeO2、Bi23、CeO2、Al23、Ga23、および、Zn2SiO4、ZnSiO3、Zn2TiO4、Ti0.5Sn0.52Zn2GeO4、ZnBi1219、Zn0.5Ce0.51.75、ZnAl24、ZnGa24等の酸化物がある。
【0031】
ところで、第1添加元素Mを加えただけでは、酸化物焼結体の密度は向上するものの、導電性は改善されない。
【0032】
(第2添加元素)
Snを原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有する条件の下、上記第1添加元素Mを加えたSn−Zn−O系酸化物焼結体は上述したように密度は向上するものの導電性に課題が残る。
【0033】
そこで、Nb、Ta、WおよびMoから選ばれた少なくとも1種の第2添加元素Xを添加する。第2添加元素Xの添加により酸化物焼結体の高密度を維持したまま、導電性が改善される。尚、第2添加元素Xは、Nb、Ta、W、Mo等5価以上の元素である。
【0034】
添加する量は、第2添加元素Xの全金属元素の総量に対する原子数比X/(Sn+Zn+M+X)を0.0001以上0.1以下にすることを要する。上記原子数比X/(Sn+Zn+M+X)が0.0001未満の場合、導電性は高まらない(比較例7参照)。一方、上記原子数比X/(Sn+Zn+M+X)が0.1を超えた場合、別の化合物相、例えば、Nb25、Ta25、WO3、MoO3、ZnTa26、ZnWO4、ZnMoO4等の化合物相を生成するため導電性を悪化させることになる(比較例8参照)。
【0035】
このように適正な量の第1添加元素Mと第2添加元素Xを添加すると共に、M含有化合物を生成させることにより、高密度で導電性に優れ、加工効率の高い(加工性能に優れた)Sn−Zn−O系酸化物焼結体を得ることが可能となる。
【0036】
[成形体の焼成条件]
(炉内雰囲気)
焼結炉内における酸素濃度が70体積%以上の雰囲気中において、成形体を焼成することが好ましい。これは、ZnO、SnO2やZn2SnO4化合物の拡散を促進させ、焼結性を向上させると共に導電性を向上させる効果があるためである。高温域では、ZnOやZn2SnO4の揮発を抑制する効果もある。
【0037】
一方、焼結炉内における酸素濃度が70体積%未満の場合、ZnO、SnO2やZn2SnO4化合物の拡散が衰退する。更に、高温域では、Zn成分の揮発が促進し緻密な焼結体を作製することができない(比較例3参照)。
【0038】
(焼結工程の温度)
1200℃以上1450℃以下とすることが好ましい。焼結温度が1200℃未満の場合(比較例4参照)、温度が低過ぎて、ZnO、SnO2、Zn2SnO4化合物における焼結の粒界拡散が進まない。一方、1450℃を超えた場合(比較例5参照)、粒界拡散が促進されて焼結は進むが、たとえ、酸素濃度が70体積%以上の炉内で焼成しても、Zn成分の揮発を抑制することができず、焼結体内部に空孔を大きく残してしまうことになる。
【0039】
(焼結工程の保持時間)
10時間以上30時間以内とすることが好ましい。10時間を下回ると、焼結が不完全なため、歪や反りの大きい焼結体になると共に、粒界拡散が進まず、焼結が進まない。この結果、緻密な焼結体を作製することができない。一方、30時間を上回る場合、特に時間の効果が得られないため、作業効率の悪化やコスト高の結果を招く。
【0040】
(焼結後保持工程の温度)
焼結工程後に得られた焼結体を保持する温度条件は800℃以上1100℃以下とすることが好ましい。800℃未満の場合、温度が低過ぎてM含有化合物(第1添加元素Mを含有しかつZnO、SnO2、Zn2SnO4と異なる化合物)を生成しない。一方、1100℃を超えた場合、添加された第1添加元素Mの全てが酸化物焼結体中のZnO相、SnO2相、Zn2SnO4相に固溶されたままとなってM含有化合物を生成しない。
【0041】
(焼結後保持工程の保持時間)
焼結工程後に得られた焼結体を保持する時間は10時間以上30時間以内とすることが好ましい。10時間未満になると上記M含有化合物の生成が不十分となり、砥石の目詰まりは抑制されず加工効率は高まらない。一方、30時間を超える場合、酸化物焼結体の結晶粒径が大きくなって脆くなり、機械強度が低下して加工中に割れが発生する。
【0042】
上述した条件で得られたZnOおよびSnO2を主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体は高密度化に加えて導電性も改善されていることから、DCスパッタリングでの成膜が可能となる。また、特別な製造方法を用いていないため、円筒形ターゲットにも応用が可能である。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例について比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明に係る技術的範囲が下記実施例の記載内容に限定されることはなく、本発明に適合する範囲で変更を加えて実施することも当然のことながら可能である。
【0044】
[実施例1]
平均粒径10μm以下のSnO2粉と、平均粒径10μm以下のZnO粉と、第1添加元素Mとして平均粒径20μm以下のBi23粉、および、第2添加元素Xとして平均粒径20μm以下のTa25粉を用意した。
【0045】
SnとZnの原子数比Sn/(Sn+Zn)が0.5となるようにSnO2粉とZnO粉を調合し、第1添加元素Mの原子数比Bi/(Sn+Zn+Bi+Ta)が0.01、第2添加元素Xの原子数比Ta/(Sn+Zn+Bi+Ta)が0.001となるように、Bi23粉とTa25粉を調合した。
【0046】
そして、調合された原料粉末と純水、有機バインダー、分散剤を原料粉末濃度が60質量%となるように混合タンクにて混合した。
【0047】
次に、硬質ZrO2ボールが投入されたビーズミル装置(アシザワ・ファインテック株式会社製、LMZ型)を用いて、原料粉末の平均粒径が1μm以下となるまで湿式粉砕を行った後、10時間以上混合撹拌してスラリーを得た。尚、原料粉末の平均粒径の測定にはレーザー回折式粒度分布測定装置(島津制作所製、SALD-2200)を用いた。
【0048】
次に、得られたスラリーをスプレードライヤー装置(大川原化工機株式会社製、ODL-20型)にて噴霧および乾燥し造粒粉を得た。
【0049】
次に、得られた造粒粉末をゴム型へ充填し、冷間静水圧プレスで294MPa(3ton/cm2)の圧力をかけて成形し、得られた直径約250mmの成形体を常圧焼成炉に投入し、700℃まで焼結炉内に空気(酸素濃度21体積%)を導入した。焼成炉内の温度が700℃になったことを確認した後、「焼結工程」として、酸素濃度が80体積%となるように酸素を導入し、1400℃まで昇温させ、かつ、1400℃で15時間保持した。
【0050】
次に、「焼結後保持工程」として、酸素濃度80体積%のままに1000℃まで降温させ、かつ、1000℃で15時間保持した。
【0051】
保持時間が終了した後は酸素導入を止め、冷却を行い、実施例1に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0052】
次に、平面研削盤(日立ビアメカニクス社製GHL)を用いて、実施例1に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を直径200mm、厚み5mmに研削加工した。研削砥石はレジンボンド、粒度#140のダイヤモンドホイールを用いた。切り込み量0.015mm、テーブル速度25m/minの条件で研削した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。
【0053】
この加工体の密度をアルキメデス法で測定したところ、相対密度は97.9%であった。また、比抵抗を4探針法で測定したところ、0.09Ω・cmであった。
【0054】
次に、この加工体の一部を乳鉢で粉砕して粉末にし、X線回折装置(PANalytical社製X’Pert-PRO)を用いて分析した結果、SnO2、Zn2SnO4の他に、上記M含有化合物であるBi23を生成していることが確認された。この結果を表1に示す。
【0055】
[実施例2]
SnとZnの原子数比Sn/(Sn+Zn)が0.1となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0056】
この酸化物焼結体を実施例1と同様にして研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。相対密度は96.4%であり、比抵抗値は0.23Ω・cmであった。
【0057】
また、実施例1と同様にX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23を生成していた。結果を表1に示す。
【0058】
[実施例3]
SnとZnの原子数比Sn/(Sn+Zn)が0.9となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0059】
この酸化物焼結体を実施例1と同様にして研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。相対密度は95.2%であり、比抵抗値は0.33Ω・cmであった。
【0060】
また、実施例1と同様にX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23を生成していた。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例4]
第2添加元素Xの原子数比Ta/(Sn+Zn+Bi+Ta)が0.0001となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0062】
この酸化物焼結体を実施例1と同様にして研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。相対密度は97.5%であり、比抵抗値は0.21Ω・cmであった。
【0063】
また、実施例1と同様にX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23を生成していた。結果を表1に示す。
【0064】
[実施例5]
酸素濃度を100体積%としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0065】
この酸化物焼結体を実施例1と同様にして研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。相対密度は98.8%であり、比抵抗値は0.022Ω・cmであった。
【0066】
また、実施例1と同様にX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23を生成していた。結果を表1に示す。
【0067】
[実施例6]
第2添加元素Xの原子数比Ta/(Sn+Zn+Bi+Ta)が0.1となる割合で調合し、「焼結工程」の保持時間を10時間、酸素濃度を70体積%とし、「焼結後保持工程」の保持時間を10時間、酸素濃度を70体積%としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例6に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0068】
この酸化物焼結体を実施例1と同様にして研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。相対密度は95.3%であり、比抵抗値は0.15Ω・cmであった。
【0069】
また、実施例1と同様にX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23を生成していた。結果を表1に示す。
【0070】
[実施例7]
第1添加元素Mの原子数比Bi/(Sn+Zn+Bi+Ta)が0.001となる割合で調合し、焼結温度を1450℃とし、「焼結後保持工程」の温度を1100℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0071】
この酸化物焼結体を実施例1と同様にして研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。相対密度は97.1%であり、比抵抗値は0.060Ω・cmであった。
【0072】
また、実施例1と同様にX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23を生成していた。結果を表1に示す。
【0073】
[実施例8]
第1添加元素Mの原子数比Bi/(Sn+Zn+Bi+Ta)が0.04となる割合で調合し、焼結温度を1200℃とし、「焼結後保持工程」の温度を800℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例8に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0074】
この酸化物焼結体を実施例1と同様にして研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。相対密度は96.2%であり、比抵抗値は0.17Ω・cmであった。
【0075】
また、実施例1と同様にX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23を生成していた。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
[実施例9〜11、参考例12、実施例13〜15]
第1添加元素Mとして、SiO2粉(実施例9)、TiO2粉(実施例10)、GeO2粉(実施例11)、In23粉(参考例12)、CeO2粉(実施例13)、Al23粉(実施例14)、Ga23粉(実施例15)を用い、第1添加元素Mの原子数比M/(Sn+Zn+M+Ta)を0.04とし、第2添加元素Xとして、実施例1と同じTa25粉を用い、第2添加元素Xの原子数比Ta/(Sn+Zn+M+Ta)が0.1となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例9〜11、参考例12、実施例13〜15に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0078】
そして、実施例1と同様に、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。
【0079】
また、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度と比抵抗値は、それぞれ95.1%、0.10Ω・cm(実施例9)、94.2%、0.26Ω・cm(実施例10)、96.8%、0.031Ω・cm(実施例11)、97.2%、0・090Ω・cm(参考例12)、98.3%、0.11Ω・cm(実施例13)、92.2%、0.45Ω・cm(実施例14)、96.1%、0.16Ω・cm(実施例15)であった。
【0080】
更に、実施例1と同様に各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体をX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるSiO2(実施例9)、TiO2(実施例10)、GeO2(実施例11)、In23参考例12)、CeO2(実施例13)、Al23(実施例14)、および、Ga23(実施例15)をそれぞれ生成していた。結果を表2に示す。
【0081】
[実施例16〜18、参考例19、実施例20〜22]
第1添加元素Mとして、SiO2粉(実施例16)、TiO2粉(実施例17)、GeO2粉(実施例18)、In23粉(参考例19)、CeO2粉(実施例20)、Al23粉(実施例21)、Ga23粉(実施例22)を用い、第1添加元素Mの原子数比M/(Sn+Zn+M+Ta)を0.001とし、第2添加元素Xとして、実施例1と同じTa25粉を用い、第2添加元素Xの原子数比Ta/(Sn+Zn+M+Ta)が0.1となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例16〜18、参考例19、実施例20〜22に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0082】
そして、実施例1と同様に、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。
【0083】
また、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度と比抵抗値は、それぞれ91.8%、0.022Ω・cm(実施例16)、94.4%、0.25Ω・cm(実施例17)、95.3%、0.016Ω・cm(実施例18)、93.3%、0・061Ω・cm(参考例19)、96.6%、0.053Ω・cm(実施例20)、94.8%、0.079Ω・cm(実施例21)、95.8%、0.052Ω・cm(実施例22)であった。
【0084】
更に、実施例1と同様にして各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体をX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるSiO2(実施例16)、TiO2(実施例17)、GeO2(実施例18)、In23参考例19)、CeO2(実施例20)、Al23(実施例21)、および、Ga23(実施例22)をそれぞれ生成していた。結果を表2に示す。
【0085】
[実施例23〜25、参考例26、実施例27〜29]
第1添加元素Mとして、SiO2粉(実施例23)、TiO2粉(実施例24)、GeO2粉(実施例25)、In23粉(参考例26)、CeO2粉(実施例27)、Al23粉(実施例28)、Ga23粉(実施例29)を用い、第1添加元素Mの原子数比M/(Sn+Zn+M+Ta)を0.04とし、第2添加元素Xとして、実施例1と同じTa25粉を用い、第2添加元素Xの原子数比Ta/(Sn+Zn+M+Ta)が0.0001となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例23〜25、参考例26、実施例27〜29に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0086】
そして、実施例1と同様に、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。
【0087】
また、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度と比抵抗値は、それぞれ96.6%、0.31Ω・cm(実施例23)、95.5%、0.098Ω・cm(実施例24)、97.7%、0.0096Ω・cm(実施例25)、97.2%、0・022Ω・cm(参考例26)、98.5%、0.0081Ω・cm(実施例27)、95.2%、0.023Ω・cm(実施例28)、96.0%、0.014Ω・cm(実施例29)であった。
【0088】
更に、実施例1と同様にして各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体をX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるSiO2(実施例23)、TiO2(実施例24)、GeO2(実施例25)、In23参考例26)、CeO2(実施例27)、Al23(実施例28)、および、Ga23(実施例29)をそれぞれ生成していた。結果を表2に示す。
【0089】
[実施例30〜32、参考例33、実施例34〜36]
第1添加元素Mとして、SiO2粉(実施例30)、TiO2粉(実施例31)、GeO2粉(実施例32)、In23粉(参考例33)、CeO2粉(実施例34)、Al23粉(実施例35)、Ga23粉(実施例36)を用い、第1添加元素Mの原子数比M/(Sn+Zn+M+Ta)を0.001とし、第2添加元素Xとして、実施例1と同じTa25粉を用い、第2添加元素Xの原子数比Ta/(Sn+Zn+M+Ta)が0.0001となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例30〜32、参考例33、実施例34〜36に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0090】
そして、実施例1と同様に、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。
【0091】
また、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度と比抵抗値は、それぞれ96.3%、0.19Ω・cm(実施例30)、95.5%、0.041Ω・cm(実施例31)、96.9%、0.0077Ω・cm(実施例32)、94.4%、0・019Ω・cm(参考例33)、96.0%、0.055Ω・cm(実施例34)、97.6%、0.014Ω・cm(実施例35)、92.2%、0.0077Ω・cm(実施例36)であった。
【0092】
更に、実施例1と同様にして各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体をX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるSiO2(実施例30)、TiO2(実施例31)、GeO2(実施例32)、In23参考例33)、CeO2(実施例34)、Al23(実施例35)、および、Ga23(実施例36)をそれぞれ生成していた。結果を表2に示す
【0093】
【表2】
【0094】
[実施例37〜39]
第1添加元素Mとして、実施例1と同じBi23粉を用い、第1添加元素Mの原子数比Bi/(Sn+Zn+Bi+X)を0.04とし、第2添加元素Xとして、Nb25粉(実施例37)、WO3粉(実施例38)、MoO3粉(実施例39)を用い、第2添加元素Xの原子数比X/(Sn+Zn+Bi+X)が0.1となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例37〜39に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0095】
そして、実施例1と同様に、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。
【0096】
また、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度と比抵抗値は、それぞれ95.4%、0.13Ω・cm(実施例37)、95.2%、0.088Ω・cm(実施例38)、93.3%、0.33Ω・cm(実施例39)であった。
【0097】
更に、実施例1と同様にして各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体をX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23を生成していた。結果を表3に示す。
【0098】
[実施例40〜42]
第1添加元素Mとして、実施例1と同じBi23粉を用い、第1添加元素Mの原子数比Bi/(Sn+Zn+Bi+X)を0.001とし、第2添加元素Xとして、Nb25粉(実施例40)、WO3粉(実施例41)、MoO3粉(実施例42)を用い、第2添加元素Xの原子数比X/(Sn+Zn+Bi+X)が0.1となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例40〜42に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0099】
そして、実施例1と同様に、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。
【0100】
また、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度と比抵抗値は、それぞれ96.5%、0.068Ω・cm(実施例40)、94.7%、0.17Ω・cm(実施例41)、96.5%、0.096Ω・cm(実施例42)であった。
【0101】
更に、実施例1と同様にして各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体をX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23を生成していた。結果を表3に示す。
【0102】
[実施例43〜45]
第1添加元素Mとして、実施例1と同じBi23粉を用い、第1添加元素Mの原子数比Bi/(Sn+Zn+Bi+X)を0.04とし、第2添加元素Xとして、Nb25粉(実施例43)、WO3粉(実施例44)、MoO3粉(実施例45)を用い、第2添加元素Xの原子数比X/(Sn+Zn+Bi+X)が0.0001となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例43〜45に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0103】
そして、実施例1と同様に、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。
【0104】
また、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度と比抵抗値は、それぞれ97.3%、0.25Ω・cm(実施例43)、94.4%、0.28Ω・cm(実施例44)、92.8%、0.76Ω・cm(実施例45)であった。
【0105】
更に、実施例1と同様にして各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体をX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23を生成していた。結果を表3に示す。
【0106】
[実施例46〜48]
第1添加元素Mとして、実施例1と同じBi23粉を用い、第1添加元素Mの原子数比Bi/(Sn+Zn+Bi+X)を0.001とし、第2添加元素Xとして、Nb25粉(実施例46)、WO3粉(実施例47)、MoO3粉(実施例48)を用い、第2添加元素Xの原子数比X/(Sn+Zn+Bi+X)が0.0001となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例46〜48に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0107】
そして、実施例1と同様に、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。
【0108】
また、各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度と比抵抗値は、それぞれ97.7%、0.041Ω・cm(実施例46)、91.6%、0.085Ω・cm(実施例47)、92.9%、0.036Ω・cm(実施例48)であった。
【0109】
更に、実施例1と同様にして各実施例に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体をX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23を生成していた。結果を表3に示す。
【0110】
【表3】
【0111】
[比較例1]
SnとZnの原子数比Sn/(Sn+Zn)が0.05となる割合で調合したこと以外は実施例1同様にして比較例1に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0112】
そして、実施例1と同様にして比較例1に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。また、実施例1と同様にしてX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23の生成が認められた。
【0113】
しかし、相対密度と比抵抗値を測定したところ、相対密度は87.0%、比抵抗値は600Ω・cmであり、相対密度90%以上かつ比抵抗1Ω・cm以下の特性を達成できないことが確認された。結果を表4に示す。
【0114】
[比較例2]
SnとZnの原子数比Sn/(Sn+Zn)が0.95となる割合で調合したこと以外は実施例1同様にして、比較例2に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0115】
そして、実施例1と同様にして比較例2に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。また、実施例1と同様にしてX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23の生成が認められた。
【0116】
しかし、相対密度と比抵抗値を測定したところ、相対密度は85.0%、比抵抗値は1000Ω・cmであり、相対密度90%以上かつ比抵抗1Ω・cm以下の特性を達成できないことが確認された。結果を表4に示す。
【0117】
[比較例3]
1400℃での焼結時に、炉内酸素濃度を68体積%としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0118】
そして、実施例1と同様にして比較例3に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。また、実施例1と同様にしてX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23の生成が認められた。
【0119】
しかし、相対密度と比抵抗値を測定したところ、相対密度は86.5%、比抵抗値は47000Ω・cmであり、相対密度90%以上かつ比抵抗1Ω・cm以下の特性を達成できないことが確認された。結果を表4に示す。
【0120】
[比較例4]
「焼結工程」の焼結温度を1170℃とし、「焼結後保持工程」の保持温度を700℃としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例4に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0121】
そして、実施例1と同様にして比較例4に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりを発生していた。また、実施例1と同様にしてX線回折分析したところ、上記M含有化合物は検出されなかった。
【0122】
更に、相対密度と比抵抗値を測定したところ、相対密度は81.4%、比抵抗値は94000Ω・cmであり、相対密度90%以上かつ比抵抗1Ω・cm以下の特性を達成できないことが確認された。結果を表4に示す。
【0123】
[比較例5]
「焼結工程」の焼結温度を1500℃とし、「焼結後保持工程」の保持温度を1200℃としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例5に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0124】
そして、実施例1と同様にして比較例5に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりを発生していた。また、実施例1と同様にしてX線回折分析したところ、上記M含有化合物は検出されなかった。
【0125】
更に、相対密度と比抵抗値を測定したところ、相対密度は86.9%、比抵抗値は12Ω・cmであり、相対密度90%以上かつ比抵抗1Ω・cm以下の特性を達成できないことが確認された。結果を表4に示す。
【0126】
[比較例6]
「焼結工程」の後に「焼結後保持工程」を実施しないで冷却したこと以外は実施例1と同様にして、比較例6に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。1100℃から800℃までの降温に要した時間は7時間であった。
【0127】
そして、実施例1と同様にして比較例6に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりを発生していた。また、実施例1と同様にしてX線回折分析したところ、上記M含有化合物は検出されなかった。
【0128】
更に、相対密度と比抵抗値を測定したところ、相対密度は82.0%、比抵抗値は730000Ω・cmであり、相対密度90%以上かつ比抵抗1Ω・cm以下の特性を達成できないことが確認された。結果を表4に示す。
【0129】
[比較例7]
第2添加元素Xの原子数比Ta/(Sn+Zn+Bi+Ta)が0.00009となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、比較例7に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0130】
そして、実施例1と同様にして比較例7に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。また、実施例1と同様にしてX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23の生成が認められた。
【0131】
しかし、相対密度と比抵抗値を測定したところ、相対密度は93.5%、比抵抗値は260Ω・cmであり、相対密度90%以上の特性は達成できたが、比抵抗1Ω・cm以下の特性を達成できないことが確認された。結果を表4に示す。
【0132】
[比較例8]
第2添加元素Xの原子数比Ta/(Sn+Zn+Bi+Ta)が0.15となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、比較例8に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0133】
そして、実施例1と同様にして比較例8に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。また、実施例1と同様にしてX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23の生成が認められた。
【0134】
しかし、相対密度と比抵抗値を測定したところ、相対密度は92.2%、比抵抗値は110Ω・cmであり、相対密度90%以上の特性は達成できたが、比抵抗1Ω・cm以下の特性を達成できないことが確認された。結果を表4に示す。
【0135】
[比較例9]
第1添加元素Mの原子数比Bi/(Sn+Zn+Bi+Ta)が0.0009となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、比較例9に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0136】
そして、実施例1と同様にして比較例9に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりを発生していた。また、実施例1と同様にしてX線回折分析したところ、上記M含有化合物は検出されなかった。
【0137】
更に、相対密度と比抵抗値を測定したところ、相対密度は85.0%、比抵抗値は0・89Ω・cmであり、比抵抗1Ω・cm以下の特性は達成できたが、相対密度90%以上の特性を達成できないことが確認された。結果を表4に示す。
【0138】
[比較例10]
第1添加元素Mの原子数比Bi/(Sn+Zn+Bi+Ta)が0.05となる割合で調合したこと以外は実施例1と同様にして、比較例10に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0139】
そして、実施例1と同様にして比較例10に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を研削加工した結果、砥石の目詰まりは発生しなかった。また、実施例1と同様にしてX線回折分析したところ、上記M含有化合物であるBi23の生成が認められた。
【0140】
しかし、相対密度と比抵抗値を測定したところ、相対密度は96.9%、比抵抗値は5500Ω・cmであり、相対密度90%以上の特性は達成できたが、比抵抗1Ω・cm以下の特性を達成できないことが確認された。結果を表4に示す。
【0141】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、機械的強度と優れた加工性能を備え、加えて高密度かつ低抵抗といった特性を備えているため、太陽電池やタッチパネル等の透明電極を形成するためのスパッタリングターゲットとして利用される産業上の利用可能性を有している。