【文献】
NAIR, Vijay, NANDIALATH, Vidya, ABHILASH, Keecherikunnel G., and SURESH, Eringathodi,An efficient synthesis of indolo[3,2-a]carbazoles via the novel acid catalyzed reaction of indoles and diaryl-1,2-diones,Organic & Biomolecular Chemistry,英国,The Royal Society of Chemistry,2008年 4月 8日,6,1738-1742
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変更が可能である。尚、本明細書における電荷輸送性は、導電性と同義であり、正孔輸送性とも同義でもある。電荷輸送性物質は、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、ドーパント物質(電子受容性物質)とともに用いた場合に電荷輸送性を発揮するものでもよい。また、電荷輸送性ワニスは、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、それにより得られる固形膜が電荷輸送性を有するものでもよい。
【0021】
本実施形態の電荷輸送性ワニスは、下記式(1)で表される電荷輸送性物質と、ドーパント物質と、有機溶媒と、を含むものである。すなわち、本実施形態の電荷輸送性ワニスは、主に電荷輸送機能を担うホスト材料としての該電荷輸送性物質を、該ドーパント物質とともに、ウェットプロセスにおいて使用可能な程度に該有機溶媒に溶解せしめたものである。このうち電荷輸送性物質は、その2つの窒素原子の両方が置換されていないインドロカルバゾール誘導体からなる。このようなインドロカルバゾール誘導体からなる電荷輸送性物質を用いたウェットプロセスによることで、有機EL素子の正孔注入層といった電荷輸送性薄膜を形成する例は、新規なものである。
【0023】
上記式(1)において、Ar
1及びAr
2は、互いに独立して、Z
1で置換されてもよい炭素数6〜20のアリール基、又はZ
1で置換されてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。R
1及びR
2は、互いに独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、Z
2で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z
2で置換されてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、又はZ
2で置換されてもよい炭素数2〜20のアルキニル基を表す。Z
1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、Z
2で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z
2で置換されてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、又はZ
2で置換されてもよい炭素数2〜20のアルキニル基を表す。Z
2は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。n及びmはR
1及びR
2の数を表し、互いに独立して0〜4の整数である。
【0024】
このうち炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、4−ビフェニル基及び4−ターフェニル基等が挙げられる。
【0025】
また、炭素数2〜20のヘテロアリール基としては、2−チエニル、3−チエニル、2−フラニル、3−フラニル、2−オキサゾリル,4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル,4−チアゾリル、5−チアゾリル、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル基等が挙げられる。
【0026】
また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチル基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等が挙げられる。
【0027】
また、炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等の炭素数3〜20の環状アルキル基などが挙げられる。
【0028】
また、炭素数2〜20のアルケニル基としては、エテニル基、n−1−プロペニル基、n−2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、n−1−ブテニル基、n−2−ブテニル基、n−3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチルエテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、n−1−ペンテニル基、n−1−デセニル基、n−1−エイコセニル基等が挙げられる。
【0029】
また、炭素数2〜20のアルキニル基としては、エチニル基、n−1−プロピニル基、n−2−プロピニル基、n−1−ブチニル基、n−2−ブチニル基、n−3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、n−1−ペンチニル基、n−2−ペンチニル基、n−3−ペンチニル基、n−4−ペンチニル基、1−メチル−n−ブチニル基、2−メチル−n−ブチニル基、3−メチル−n−ブチニル基、1,1−ジメチル−n−プロピニル基、n−1−ヘキシニル、n−1−デシニル基、n−1−ペンタデシニル基、n−1−エイコシニル基等が挙げられる。
【0030】
このような電荷輸送性物質によれば、ドーパント物質とともに有機溶媒に溶解させ、大面積に成膜可能な各種ウェットプロセスを用いた場合でも電荷輸送性に優れた電荷輸送性薄膜を好適に製造できる電荷輸送性ワニスとなる。
【0031】
ここで、本実施形態に用いられる電荷輸送性物質の好ましい態様の一つとしては、有機溶媒への溶解性や電荷輸送性ワニスの低分子量性を実現できるものが挙げられる。これによれば、塗布後に広がりやすい電荷輸送性ワニスを提供でき、例えばスピンコート法に代表されるウェットプロセスによって、大面積に平坦性の高い電荷輸送性薄膜をITOやIZO等の透明電極に効率的に製造できるようになる。
【0032】
従って、上記式(1)において、n及びmの少なくとも一方が0であることが好ましく、n及びmの両方が0であることがより好ましい。上記式(1)としては、例えば下記式(2)で表されるものを用いることができる。
【0033】
【化3】
(式中、Ar
1及びAr
2は、前記と同様である。)
【0034】
他方、電荷輸送性物質の有機溶媒への溶解性を向上させる観点から、上記式(1)及び(2)のAr
1及びAr
2の少なくとも一方はアリール基であることが好ましく、更にはAr
1及びAr
2の何れもがアリール基であることがより好ましい。また、上記式(1)におけるAr
1及びAr
2の少なくとも一方がZ
1で置換されたものである場合において、得られる薄膜の電荷輸送性を向上させる観点から、かかるZ
1はハロゲン原子であることが好ましく、フッ素であることがより好ましい。
【0035】
よって、本実施形態に用いられる電荷輸送性物質の態様としては、例えば下記式(aー1)〜(a−21)で表されるものを挙げることができる。これらの電荷輸送性物質を、上記のようにドーパント物質とともに有機溶媒に溶解させることで製造した電荷輸送性ワニスを用いることにより、電荷輸送性に優れた電荷輸送性薄膜を製造することができる。これらの電荷輸送性物質は、低分子量であって有機溶媒への溶解性にも優れる。このため、該電荷輸送性ワニスを用いることで、ウェットプロセスによって大面積に平坦性の高い電荷輸送性薄膜を効率的に製造できるようになる。
【0039】
尚、本実施形態における電荷輸送性物質は、非特許文献1に記載の方法、すなわち下記スキームを利用して合成することができる。
【0040】
【化7】
(式中、Ar
1及びAr
2、n及びm、並びにR
1及びR
2は、前記と同様である。)
【0041】
上記スキームにおいて、式(3)〜(5)で表される化合物の仕込み比(式(3):式(4)及び(5))は、1:2程度を目安として適宜調節可能である。式(3)〜(5)で表される化合物は、常法によって得ることができるが、市販品を用いるようにしても構わない。
【0042】
以上説明した本実施形態に用いられる電荷輸送性物質は、有機溶媒への溶解性等を考慮すると、その分子量は、好ましくは2,000以下、より好ましくは1,000以下である。また本実施形態において、電荷輸送性物質は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0043】
更に、本発明の要旨を変更しない範囲において、他の電荷輸送性物質を併用するようにしてもよい。他の電荷輸送性物質としては、例えば、特開2002−151272号公報記載のオリゴアニリン誘導体、国際公開第2004/105446号パンフレット記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2005/043962号パンフレット記載の1,4−ジチイン環を有する化合物、国際公開第2008/032617号パンフレット記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2008/032616号パンフレット記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2013/042623号パンフレット記載のアリールジアミン化合物等が挙げられる。
【0044】
とりわけ、他の電荷輸送性物質としては、分子量200〜4,000程度のアニリン誘導体が好ましい。
【0045】
次に、本実施形態の電荷輸送性ワニスに用いられるドーパント物質について説明する。ドーパント物質としては、電荷輸送性ワニスに含まれる有機溶媒に溶解するものであれば特に限定されず、適宜選択して用いることができる。得られる電荷輸送性薄膜の透過率向上の点から鑑みると、ドーパント物質としては、アリールスルホン酸化合物が好ましく、有機溶媒への溶解性を考慮すると、その分子量は、好ましくは3,000以下、より好ましくは2,000以下、より一層好ましくは1,000以下である。ドーパント物質として好適に用い得るアリールスルホン酸化合物としては、例えば、下記式(6)や式(7)で表されるものが挙げられる。
【0047】
A
1は、O又はSを表すが、Oが好ましい。
A
2は、ナフタレン環又はアントラセン環を表すが、ナフタレン環が好ましい。
A
3は、2〜4価のパーフルオロビフェニル基を表し、lは、A
1とA
3との結合数を示し、2≦l≦4を満たす整数であるが、A
3が2価のパーフルオロビフェニル基であり、かつ、lが2であることが好ましい。
jは、A
2に結合するスルホン酸基数を表し、1≦j≦4を満たす整数であるが、2が最適である。
【0048】
A
4〜A
8は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、又は炭素数2〜20のハロゲン化アルケニル基を表すが、A
4〜A
8のうち少なくとも3つは、ハロゲン原子である。
【0049】
炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基としては、上記炭素数1〜20のアルキル基の水素原子の少なくとも1つを、ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。具体例としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
【0050】
炭素数2〜20のハロゲン化アルケニル基としては、上記炭素数2〜20のアルケニル基の水素原子の少なくとも1つを、ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。具体例としては、パーフルオロビニル基、パーフルオロプロペニル基(アリル基)、パーフルオロブテニル基等が挙げられる。その他、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基の例としては上記と同様のものが挙げられるが、ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。
【0051】
これらの中でも、A
4〜A
8は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、又は炭素数2〜10のハロゲン化アルケニル基であり、かつ、A
4〜A
8のうち少なくとも3つは、フッ素原子であることが好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のフッ化アルキル基、又は炭素数2〜5のフッ化アルケニル基であり、かつ、A
4〜A
8のうち少なくとも3つはフッ原子であることがより好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、又は炭素数1〜5のパーフルオロアルケニル基であり、かつ、A
4、A
5及びA
8がフッ素原子であることより一層好ましい。尚、パーフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子全てがフッ素原子に置換された基であり、パーフルオロアルケニル基とは、アルケニル基の水素原子全てがフッ素原子に置換された基である。
【0052】
kは、ナフタレン環に結合するスルホン酸基数を表し、1≦k≦4を満たす整数であるが、2〜4が好ましく、2が最適である。ドーパント物質として好適なアリールスルホン酸化合物の具体例としては、例えば以下のとおりである。
【0054】
ただし、ドーパント物質は上記式(b−1)〜(b−6)に限定されず、上記アリールスルホン酸化合物とともに、又は上記アリールスルホン酸化合物に代えて、他の構造を有するアリールスルホン酸化合物を用いてもよい。更には、上記アリールスルホン酸化合物とともに、又は上記アリールスルホン酸化合物に代えて、アリールスルホン酸化合物以外のドーパント物質(他のドーパント物質)を用いるようにしてもよい。
【0055】
そのような他のドーパント物質として好適なものの一例としては、ヘテロポリ酸化合物が挙げられる。ドーパント物質としてヘテロポリ酸化合物を用いることにより、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極からの高正孔受容能のみならず、アルミニウムに代表される金属陽極からの高正孔受容能を示す電荷輸送性に優れた電荷輸送性薄膜(正孔注入層や正孔輸送層等)を得ることができる。
【0056】
ヘテロポリ酸化合物とは、代表的に式(C1)で示されるKeggin型あるいは式(C2)で示されるDawson型の化学構造で示される、ヘテロ原子が分子の中心に位置する構造を有し、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の酸素酸であるイソポリ酸と、異種元素の酸素酸とが縮合してなるポリ酸である。このような異種元素の酸素酸としては、主にケイ素(Si)、リン(P)、ヒ素(As)の酸素酸が挙げられる。
【0058】
ヘテロポリ酸化合物の具体例としては、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングストモリブデン酸等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、本実施形態で使用可能なヘテロポリ酸化合物は、市販品として入手可能であり、また公知の方法により合成することもできる。
【0059】
特に、ドーパント物質が1種類のヘテロポリ酸化合物単独からなる場合、その1種類のヘテロポリ酸化合物は、リンタングステン酸又はリンモリブデン酸が好ましく、リンタングステン酸が好適である。また、ドーパント物質が2種類以上のヘテロポリ酸化合物からなる場合、その2種類以上のヘテロポリ酸化合物の1つは、リンタングステン酸又はリンモリブデン酸が好ましく、リンタングステン酸がより好ましい。尚、ヘテロポリ酸化合物は、元素分析等の定量分析において、一般式で示される構造から元素の数が多く又は少ないものであっても、それが市販品として入手し、又は公知の合成方法に従い適切に合成したものである限り、本実施形態において使用可能である。
【0060】
本実施形態において使用可能なドーパント物質は前記の例に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲において、電子受容性の他のドーパント物質を用いることができる。本実施形態の電荷輸送性ワニスに含まれるドーパント物質は、質量比で、電荷輸送性物質1に対して1.0〜70.0程度とすることができるが、好ましくは2.0〜60.0程度、より好ましくは2.5〜55.0程度、より一層好ましくは2.5〜30.0程度、さらに好ましくは2.5〜20.0程度、さらに一層好ましくは2.5〜10.0程度である。また本実施形態の電荷輸送性ワニスに含まれるドーパント物質は、1種類に限定されるものではなく、2種以上のドーパント物質を併用してもよい。
【0061】
次に、本実施形態の電荷輸送性ワニスに含まれる有機溶媒について説明する。電荷輸送性ワニスを調製する際に用いられる有機溶媒としては、電荷輸送性ワニスがウェットプロセスにおいて使用可能となる程度に、電荷輸送性物質及びドーパント物質を良好に溶解し得る高溶解性溶媒(良溶媒)を用いることができる。このような高溶解性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の有機溶媒を用いることができる。これらの溶媒は1種単独で、又は2種以上混合して用いることができ、その使用量は、ワニスに使用する溶媒全体に対して5〜100質量%とすることができる。
【0062】
尚、本実施形態において使用可能な有機溶媒は前記の例に限定されず、上記高溶解性溶媒とともに、又は上記高溶解性溶媒に代えて、高溶解性溶媒よりも極性の低い低極性溶媒(貧溶媒)を用いることもできる。低極性溶媒によれば、溶媒分子の極性が低く、高極性化合物に対する溶解性という点では劣るものの、溶媒の種類によっては、粘度の向上、表面張力の低下、揮発性の付与等によって基板に対する塗れ性の向上を図ることができ、また、各種塗布装置の噴霧あるいは塗布に適した物性を付与し、塗布装置に対する腐食性を低下させることができる場合がある。
【0063】
また、本実施形態においては、ワニスに、25℃で10〜200mPa・s、特に35〜150mPa・sの粘度を有し、常圧(大気圧)で沸点50〜300℃、特に150〜250℃の高粘度有機溶媒を少なくとも一種類含有させることで、ワニスの粘度の調整が容易になり、その結果、平坦性の高い電荷輸送性薄膜を再現性よく与えるような、用いる塗布方法に応じたワニス調整が可能となる。本実施形態に用いられる溶媒全体に対する高粘度有機溶媒の添加割合は、固体が析出しない範囲内であることが好ましく、固体が析出しない限りにおいて、添加割合は、5〜80質量%が好ましい。更に、基板に対する濡れ性の向上、溶媒の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、その他の溶媒を、ワニスに使用する溶媒全体に対して1〜90質量%、好ましくは1〜50質量%の割合で混合することもできる。
【0064】
本実施形態のワニスの粘度は、作製する電荷輸送性薄膜の厚み等や固形分濃度に応じて適宜設定されるものではあるが、通常、25℃で1〜50mPa・sである。また、本実施形態における電荷輸送性ワニスの固形分濃度は、ワニスの粘度及び表面張力等や、作製する電荷輸送性薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、通常、0.1〜10.0質量%程度であり、ワニスの塗布性を向上させることを考慮すると、好ましくは0.5〜5.0質量%、より好ましくは1.0〜3.0質量%である。
【0065】
以上で説明した電荷輸送性ワニスを基材上に塗布して焼成することで、基材上に電荷輸送性薄膜を形成させることができる。ワニスの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法等が挙げられ、塗布方法に応じてワニスの粘度及び表面張力を調節することが好ましい。
【0066】
また、本実施形態の電荷輸送性ワニスを用いる場合、焼成雰囲気は、通常、大気雰囲気である。焼成温度は、得られる電荷輸送性薄膜の用途、得られる電荷輸送性薄膜に付与する電荷輸送性の程度等を勘案して、概ね100〜260℃の範囲内で適宜設定されるものではあるが、得られる電荷輸送性薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いる場合、140〜250℃程度が好ましく、145〜240℃程度がより好ましい。尚、焼成の際、より高い均一成膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよく、加熱は、例えば、ホットプレートやオーブン等、適当な機器を用いて行えばよい。
【0067】
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子内で正孔注入層として用いる場合、5〜200nmが好ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
【0068】
本実施形態の電荷輸送性ワニスを用いて低分子系有機EL素子(以下、OLED素子という)を作製する場合の使用材料や、作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。使用する電極基板は、洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄を予め行って浄化しておくことが好ましく、例えば、陽極基板では使用直前にUVオゾン処理、酸素−プラズマ処理等の表面処理を行うことが好ましい。ただし陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理を行わなくともよい。
【0069】
図1は、本実施形態の電荷輸送性薄膜(例えば正孔注入層)を有するOLED素子の構成例を示す断面図である。本実施形態のOLED素子1は、一例であるが、ガラス基板10の表面にITO11がパターニングされたITO基板12(陽極)、正孔注入層13、正孔輸送層14、発光層15、電子注入層16及びアルミニウム薄膜17(陰極)を順次積層して構成することができる。ただし、本発明の要旨を限定しない範囲において、他の層を追加してもよい。
【0070】
かかるOLED素子1の作製方法の例は下記のとおりである。陽極となるITO基板12に、本実施形態の電荷輸送性ワニスを塗布して焼成し、このITO基板12に正孔注入層13を作製する。これを真空蒸着装置内に導入し、正孔輸送層14、発光層15、必要に応じて設けられる電子輸送層/ホールブロック層(図示せず)、電子注入層16、陰極となる例えばアルミニウム薄膜17を順次蒸着してOLED素子1とする。尚、必要に応じて、発光層15と正孔輸送層14との間に電子ブロック層を設けてよい。
【0071】
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極や、アルミニウムに代表される金属やこれらの合金等から構成される金属陽極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
【0072】
尚、金属陽極を構成するその他の金属としては、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドニウム、インジウム、スカンジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ハフニウム、タリウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、チタン、鉛、ビスマスやそれらの合金等が挙げられる。
【0073】
正孔輸送層14を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン(α−NPD)、N,N’−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン、9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ビフェニル−4−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ナフタレン−2−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(N−ナフタレン−1−イル−N−フェニルアミノ)−フェニル]−9H−フルオレン、2,2’,7,7’−テトラキス[N−ナフタレニル(フェニル)−アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、N,N’−ビス(フェナントレン−9−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、2,2’−ビス[N,N−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、2,2’−ビス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン、ジ−[4−(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)−フェニル]シクロヘキサン、2,2’,7,7’−テトラ(N,N−ジ(p−トリル))アミノ−9,9−スピロビフルオレン、N,N,N’,N’−テトラ−ナフタレン−2−イル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラ−(3−メチルフェニル)−3,3’−ジメチルベンジジン、N,N’−ジ(ナフタレニル)−N,N’−ジ(ナフタレン−2−イル)−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラ(ナフタレニル)−ベンジジン、N,N’−ジ(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン−1,4−ジアミン、N
1,N
4−ジフェニル−N
1,N
4−ジ(m−トリル)ベンゼン−1,4−ジアミン、N
2,N
2,N
6,N
6−テトラフェニルナフタレン−2,6−ジアミン、トリス(4−(キノリン−8−イル)フェニル)アミン、2,2’−ビス(3−(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)フェニル)ビフェニル、4,4’,4’’−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4’’−トリス[1−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)等のトリアリールアミン類、5,5’’−ビス−{4−[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’:5’,2’’−ターチオフェン(BMA−3T)等のオリゴチオフェン類などが挙げられる。
【0074】
発光層15を形成する材料としては、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq
3)、ビス(8−キノリノラート)亜鉛(II)(Znq
2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2,7−ビス[9,9−ジ(4−メチルフェニル)−フルオレン−2−イル]−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、2−メチル−9,10−ビス(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2−(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2,7−ビス(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2−[9,9−ジ(4−メチルフェニル)−フルオレン−2−イル]−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、2,2’−ジピレニル−9,9−スピロビフルオレン、1、3、5−トリス(ピレン−1−イル)ベンゼン、9,9−ビス[4−(ピレニル)フェニル]−9H−フルオレン、2,2’−ビ(9,10−ジフェニルアントラセン)、2,7−ジピレニル−9,9−スピロビフルオレン、1,4−ジ(ピレン−1−イル)ベンゼン、1,3−ジ(ピレン−1−イル)ベンゼン、6,13−ジ(ビフェニル−4−イル)ペンタセン、3,9−ジ(ナフタレン−2−イル)ペリレン、3,10−ジ(ナフタレン−2−イル)ペリレン、トリス[4−(ピレニル)−フェニル]アミン、10,10’−ジ(ビフェニル−4−イル)−9,9’−ビアントラセン、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’:4’,1’’:4’’,1’’’−クウォーターフェニル]−4,4’’’−ジアミン、4,4’−ジ[10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル]ビフェニル、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン、1−(7−(9,9’−ビアントラセン−10−イル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)ピレン、1−(7−(9,9’−ビアントラセン−10−イル)−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン−2−イル)ピレン、1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン)、1,3,5−トリス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−2,2’−ジメチルビフェニル、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジメチルフルオレン、2,2’,7,7’−テトラキス(カルバゾール−9−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジ(p−トリル)フルオレン、9,9−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)−フェニル]フルオレン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−スピロビフルオレン、1,4−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、ビス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−4−メチルフェニルメタン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン、4,4’’−ジ(トリフェニルシリル)−p−ターフェニル、4,4’−ジ(トリフェニルシリル)ビフェニル、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)−9H−カルバゾール、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ジトリチル−9H−カルバゾール、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ビス(9−(4−メトキシフェニル)−9H−フルオレン−9−イル)−9H−カルバゾール、2,6−ビス(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ピリジン、トリフェニル(4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル)シラン、9,9―ジメチル−N,N−ジフェニル−7−(4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル)−9H−フルオレン−2−アミン、3,5−ビス(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ピリジン、9,9−スピロビフルオレン−2−イル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、9,9’−(5−(トリフェニルシリル)−1,3−フェニレン)ビス(9H−カルバゾール)、3−(2,7−ビス(ジフェニルフォスフォリル)−9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)−9−フェニル−9H−カルバゾール、4,4,8,8,12,12−ヘキサ(p−トリル)−4H−8H−12H−12C−アザジベンゾ[cd,mn]ピレン、4,7−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)−1,10−フェナントロリン、2,2’−ビス(4−(カルバゾール−9−イル)フェニル)ビフェニル、2,8−ビス(ジフェニルフォスフォリル)ジベンゾ[b,d]チオフェン、ビス(2−メチルフェニル)ジフェニルシラン、ビス[3,5−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジフェニルシラン、3,6−ビス(カルバゾール−9−イル)−9−(2−エチル−ヘキシル)−9H−カルバゾール、3−(ジフェニルフォスフォリル)−9−(4−(ジフェニルフォスフォリル)フェニル)−9H−カルバゾール、3,6−ビス[(3,5−ジフェニル)フェニル]−9−フェニルカルバゾール等が挙げられ、発光性ドーパントと共蒸着することによって、発光層15を形成してもよい。
【0075】
発光性ドーパントとしては、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−10−(2−ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1gh]クマリン、キナクリドン、N,N’−ジメチル−キナクリドン、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)
3)、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(Ir(ppy)
2(acac))、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)
3)、9,10−ビス[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]アントラセン、9,10−ビス[フェニル(m−トリル)アミノ]アントラセン、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛、N
10,N
10,N
10’,N
10’−テトラ(p−トリル)−9,9’ −ビアントラセン−10,10’−ジアミン、N
10,N
10,N
10’,N
10’−テトラフェニル−9,9’ −ビアントラセン−10,10’−ジアミン、N
10,N
10’−ジフェニル−N
10’,N
10’−ジナフタレニル−9,9’ −ビアントラセン−10,10’−ジアミン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン、1、4−ビス[2−(3−N−エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]ビフェニル、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、ビス(3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル)イリジウム、4,4’−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジナト)テトラキス(1−ピラゾリル)ボレートイリジウム、N,N’−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−トリス(9,9−ジメチルフルオレニレン)、2,7−ビス{2−[フェニル(m−トリル)アミノ]−9,9−ジメチル−フルオレン−7−イル}−9,9−ジメチル−フルオレン、N−(4−((E)−2−(6((E)−4−(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン−2−イル)ビニル)フェニル)−N−フェニルベンゼンアミン、fac−イリジウムトリス(1−フェニル−3−メチルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C
2’)、mer−イリジウムトリス(1−フェニル−3−メチルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C
2’)、2,7−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]−9,9−スピロビフルオレン、6−メチル−2−(4−(9−(4−(6−メチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル)アントラセン−10−イル)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール、1,4−ジ[4−(N,N−ジフェニル)アミノ]スチリルベンゼン、1,4−ビス(4−(9H−カルバゾール−9−イル)スチリル)ベンゼン、(E)−6−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)−N,N−ジフェニルナフタレン−2−アミン、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジナト)(5−(ピリジン−2−イル)−1H−テトラゾレート)イリジウム、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾール)((2,4−ジフルオロベンジル)ジフェニルフォスフィネート)イリジウム、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾレート)(ベンジルジフェニルフォスフィネート)イリジウム、ビス(1−(2,4−ジフルオロベンジル)−3−メチルベンズイミダゾリウム)(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)イリジウム、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾレート)(4’,6’−ジフルオロフェニルピリジネート)イリジウム、ビス(4’,6’−ジフルオロフェニルピリジナト)(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−2−(2’−ピリジル)ピロレート)イリジウム、ビス(4’,6’−ジフルオロフェニルピリジナト)(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)イリジウム、(Z)−6−メシチル−N−(6−メシチルキノリン−2(1H)−イリデン)キノリン−2−アミン−BF
2、(E)−2−(2−(4−(ジメチルアミノ)スチリル)−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)マロノニトリル、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−ジュロリジル−9−エニル−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−4−イル−ビニル)−4H−ピラン、トリス(ジベンゾイルメタン)フェナントロリンユーロピウム、5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン、ビス(2−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−ピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス(1−フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム、ビス[1−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム、ビス[2−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム、トリス[4,4’−ジ−t−ブチル−(2,2’)−ビピリジン]ルテニウムビス(ヘキサフルオロフォスフェート)、トリス(2−フェニルキノリン)イリジウム、ビス(2−フェニルキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム、2,8−ジ−t−ブチル−5,11−ビス(4−t−ブチルフェニル)−6,12−ジフェニルテトラセン、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム、5,10,15,20−テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン白金、オスミウムビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジン)−ピラゾレート)ジメチルフェニルフォスフィン、オスミウムビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(4−t−ブチルピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)ジフェニルメチルフォスフィン、オスミウムビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾール)ジメチルフェニルフォスフィン、オスミウムビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(4−t−ブチルピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)ジメチルフェニルフォスフィン、ビス[2−(4−n−ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム、トリス[2−(4−n−ヘキシルフェニル)キノリン]イリジウム、トリス[2−フェニル−4−メチルキノリン)]イリジウム、ビス(2−フェニルキノリン)(2−(3−メチルフェニル)ピリジネート)イリジウム、ビス(2−(9,9−ジエチル−フルオレン−2−イル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)(3−(ピリジン−2−イル)−2H−クロメン−2−オネート)イリジウム、ビス(2−フェニルキノリン)(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート)イリジウム、ビス(フェニルイソキノリン)(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート)イリジウム、イリジウムビス(4−フェニルチエノ[3,2−c]ピリジナト−N,C
2’)アセチルアセトネート、(E)−2−(2−t−ブチル−6−(2−(2,6,6−トリメチル−2,4,5,6−テトラヒドロ−1H−ピローロ[3,2,1−ij]キノリン−8−イル)ビニル)−4H−ピラン−4−イリデン)マロノニトリル、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(1−イソキノリル)ピラゾレート)(メチルジフェニルフォスフィン)ルテニウム、ビス[(4−n−ヘキシルフェニル)イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム、白金オクタエチルポルフィン、ビス(2−メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)イリジウム、トリス[(4−n−ヘキシルフェニル)キソキノリン]イリジウム等が挙げられる。
【0076】
電子輸送層/ホールブロック層を形成する材料としては、8−ヒドロキシキノリノレート−リチウム、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンジントリル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)、2−(4−ビフェニル)5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、1,3−ビス[2−(2,2’−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、6,6’−ビス[5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−2−イル]−2,2’−ビピリジン、3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール、4−(ナフタレン−1−イル)−3,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール、2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,7−ビス[2−(2,2’−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]−9,9−ジメチルフルオレン、1,3−ビス[2−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン、1−メチル−2−(4−(ナフタレン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾ[4,5f][1,10]フェナントロリン、2−(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、フェニル−ジピレニルフォスフィンオキサイド、3,3’,5,5’−テトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル、1,3,5−トリス[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン、4,4’−ビス(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)ビフェニル、1,3−ビス[3,5−ジ(ピリジン−3−イル)フェニル]ベンゼン、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ジフェニルビス(4−(ピリジン−3−イル)フェニル)シラン、3,5−ジ(ピレン−1−イル)ピリジン等が挙げられる。
【0077】
電子注入層16を形成する材料としては、酸化リチウム(Li
2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al
2O
3)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化マグネシウム(MgF
2)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化ストロンチウム(SrF
2)、三酸化モリブデン(MoO
3)、アルミニウム、Li(acac)、酢酸リチウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
【0078】
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。電子ブロック層を形成する材料としては、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム等が挙げられる。
【0079】
図2(a)〜(b)に示すように、OLED素子1のITO基板12(陽極)及びアルミニウム薄膜17(陰極)に電圧を印加すると、HOMO及びLUMOに内部勾配が生じ、ITO基板12から発光層15側へ正孔がHOMOに注入され、また、アルミニウム薄膜17から発光層15側へ電子がLUMOに注入される。その結果、発光層15内で正孔及び電子が再結合し(励起分子が電子輸送材料からドーパント物質にエネルギー移動し)、これにより発光した光がITO基板12側からOLED素子1外へ出る。
【0080】
尚、本実施形態の電荷輸送性ワニスを用いた高分子系有機EL素子(以下、PLED素子という)の作製方法は、特に限定されないが、以下の方法が挙げられる。すなわち、上記OLED素子1作製において、正孔輸送層14、発光層15、電子輸送層(図示せず)、電子注入層16の真空蒸着操作を行う代わりに、正孔輸送性高分子層、発光性高分子層を順次形成することによって本実施形態の電荷輸送性ワニスによって形成される電荷輸送性薄膜を有するPLED素子を作製することができる。具体的には、陽極基板上に本実施形態の電荷輸送性ワニスを塗布して上記方法により正孔注入層を作製し、その上に正孔輸送性高分子層、発光性高分子層を順次形成し、更に陰極電極を蒸着してPLED素子とする。
【0081】
使用する陰極及び陽極材料としては、上記OLED素子作製時と同様のものが使用でき、同様の洗浄処理、表面処理を行うことができる。正孔輸送性高分子層及び発光性高分子層の形成法としては、正孔輸送性高分子材料若しくは発光性高分子材料、又はこれらにドーパント物質を加えた材料に溶媒を加えて溶解するか、均一に分散し、正孔注入層又は正孔輸送性高分子層の上に塗布した後、それぞれ焼成することで成膜する方法が挙げられる。
【0082】
正孔輸送性高分子材料としては、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(N,N’−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(N,N’−ビス{p−ブチルフェニル}−1,1’−ビフェニレン−4,4−ジアミン)]、ポリ[(9,9−ビス{1’−ペンテン−5’−イル}フルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(N,N’−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン]−エンドキャップドウィズポリシルシスキノキサン、ポリ[(9,9−ジジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(4,4’−(N−(p−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]等が挙げられる。
【0083】
発光性高分子材料としては、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)等のポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
【0084】
溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロホルム等を挙げることができ、溶解又は均一分散法としては撹拌、加熱撹拌、超音波分散等の方法が挙げられる。塗布方法としては、特に限定されるものではなく、インクジェット法、スプレー法、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り等が挙げられる。尚、塗布は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。焼成する方法としては、不活性ガス下又は真空中、オーブン又はホットプレートで加熱する方法が挙げられる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明は下記に限定されるものではない。
【0086】
ここで、使用した装置とその使用目的は下記のとおりである。
基板洗浄:長州産業(株)社製
基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
ワニスの塗布:ミカサ(株)社製
スピンコーターMS−A100
膜厚測定:(株)小坂研究所製
微細形状測定機サーフコーダET−4000
透過率測定:(株)島津製作所製
可視紫外線吸収スペクトル測定装置UV−3100PC
有機EL素子の作製:長州産業(株)社製
多機能蒸着装置システムC−E2L1G1−N
有機EL素子の輝度等の測定:(有)テック・ワールド社製
I−V−L測定システム
【0087】
[合成例1]
下記式(a−1)で表される化合物(以下、A1と略す)及び下記式(a−2)で表される化合物(以下、A2と略す)を、上記非特許文献1に記載の方法に従って合成した。
【0088】
【化11】
【0089】
<A1の合成>
インドール7.00g、ベンジル5.01g、p−トルエンスルホン酸一水和物0.92g、及びトルエン55mLを順次加え、反応系を窒素置換した。その後、この溶液を加熱還流条件下8時間撹拌した。次いで、この溶液を室温まで冷却した後、ろ過を行った。得られたろ物をカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、目的物を含むフラクションを集め、溶媒を留去した後、乾燥を行った。得られた粉末に対して1,4−ジオキサン120mLを用いて再結晶を行った。その後、ろ過、乾燥を行い、6,7−ジフェニル−5,12−ジヒドロインドロ[3,2−a]カルバゾールを4.95g(収率51%)得た。
1H NMR(300MHz,THF−d8)δ[ppm]:10.8(s,1H),9.91(s,1H),8.47(d,J=7.7Hz,1H),7.51(d,J=7.7Hz,1H),7.48(d,J=7.7Hz,1H),7.08−7.35(m,13H),6.74−6.80(m,2H).
【0090】
<A2の合成>
インドール1.17g、1,2−ビス(4−フルオロフェニル)エタン−1,2−ジオン0.98g、p−トルエンスルホン酸一水和物0.15g、及びトルエン10mLを順次加え、反応系を窒素置換した。その後、この溶液を加熱還流条件下7時間撹拌した。次いで、この溶液を室温まで冷却したした後、ろ過を行った。得られたろ物を、トルエン、テトラヒドロフラン、及び、エタノールの混合溶媒で洗浄後、乾燥を行い、6,7−ビス(4−フルオロフェニル)−5,12−ジヒドロインドロ[3,2−a]カルバゾールを0.46g(収率26%)得た。
1H NMR(300MHz,DMSO−d6)δ[ppm]:11.9(s,1H),10.8(s,1H),8.72(d,J=7.7Hz,1H),7.64(d,J=8.3Hz,1H),7.57(d,J=8.3Hz,1H),7.11−7.43(m,11H),6.87(t,J=7.7Hz,1H),6.60(d,J=7.7Hz,1H).
【0091】
<ワニスの調製>
[実施例1−1]
A1 0.073g(0.178mmol)及び下記式(b−1)で表されるアリールスルホン酸化合物(以下、B1と略す) 0.080g(0.089mmol)の混合物に対し、窒素雰囲気下で良溶媒である1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下、DMIと略す)2.5gを加え、上記混合物を溶解させた。この溶液に、シクロヘキサノール3.75g及びプロピレングリコール1.25gを加え、十分に撹拌して黄色透明溶液を得た。得られた黄色透明溶液を、孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、黄色透明の電荷輸送性ワニスを得た(固形分濃度2.0質量%)。尚、B1は、国際公開第2006/025342号の記載に基づき、合成した。
【0092】
【化12】
【0093】
[実施例1−2]
A1 0.061g(0.136mmol)及びB1 0.092g(0.102mmol)の混合物を用いた以外は、実施例1−1と同様の方法で黄色透明の電荷輸送性ワニスを得た(固形分濃度2.0質量%)。
【0094】
[実施例1−3]
A1 0.048g(0.117mmol)及びB1 0.105g(0.117mmol)の混合物を用いた以外は、実施例1−1と同様の方法で黄色透明の電荷輸送性ワニスを得た(固形分濃度2.0質量%)。
【0095】
[実施例1−4]
A1 0.048g(0.117mmol)及びB1 0.105g(0.117mmol)の混合物に対し、窒素雰囲気下でDMI2.5gを加え、上記混合物を溶解させた。この溶液に、シクロヘキサノール3.75g及びプロピレングリコール1.25gを加え、十分に撹拌した。その後、トリメトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シランとトリ(メトキシフェニル)シランの1:2(質量比)の混合溶剤を0.015g加え、更に十分に撹拌し黄色透明溶液を得た。得られた黄色透明溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、黄色透明の電荷輸送性ワニスを得た(固形分濃度2.0質量%)。
【0096】
[実施例1−5]
A1 0.046g(0.114mmol)及びリンタングステン酸(関東化学(株)製) 0.186gの混合物を用いた以外は、実施例1−1と同様の方法で黄色透明の電荷輸送性ワニスを得た(固形分濃度3.0質量%)。
【0097】
[実施例1−6]
A2 0.043g(0.097mmol)及びリンタングステン酸 0.173gの混合物に対し、窒素雰囲気下でDMI5gを加え、上記混合物を溶解した。この溶液に、シクロヘキサノール1.0g及びプロピレングリコール1.0gを加え、十分に撹拌して黄色透明溶液を得た。得られた黄色透明溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、黄色透明の電荷輸送性ワニスを得た(固形分濃度3.0質量%)。
【0098】
<電荷輸送性薄膜の作製(石英基板)、及び電荷輸送性薄膜の透明性評価>
[実施例2−1]〜[実施例2−6]
上記方法により得られたワニス([実施例1−1]〜[実施例1−6])を、スピンコーターを用いて石英基板に塗布した後、大気中50℃で5分間乾燥させ、更に230℃で15分間焼成し、石英基板上に膜厚30nmの均一な薄膜を作製した。尚、石英基板は、プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)を用い、表面上の不純物を除却してから使用した。
【0099】
その後、作製した電荷輸送性薄膜([実施例2−1]〜[実施例2−6])の透過率を測定した。透過率は、可視光領域である波長400〜800nmをスキャンすることにより得た。400〜800nmの平均透過率は、下記表1に示すとおりである。
【0100】
【表1】
【0101】
表1の結果から、[実施例2−1]〜[実施例2−6]の電荷輸送性薄膜は、可視領域において高い透過率を示すことが確かめられた。
【0102】
<OLED素子の作製、及び素子の特性評価(電気特性及び輝度特性)>
[実施例3−1]
下記方法により、
図1に示すOLED素子1を作製した。すなわち、基板として、25mm×25mm×0.7tのガラス基板10の表面に、ITO11が膜厚150nmでパターニングされたITO基板12を用いた。ITO基板12は、O
2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)を用いて表面上の不純物を除去してから使用した。
【0103】
まず[実施例1−1]のワニスを、スピンコーターを用いてITO基板12に塗布した後、50℃で5分間乾燥し、更に230℃で15分間焼成することで、ITO基板12に30nmの均一な電荷輸送性薄膜(正孔注入層13)を作製した。
【0104】
電荷輸送性薄膜を作製したITO基板12に対し、蒸着装置を用いてα−NPD(正孔輸送層14)、Alq
3(発光層15)、フッ化リチウム(LiF;電子注入層16)、及びアルミニウム薄膜17を順次積層し、OLED素子1を得た。膜厚は、それぞれ30nm、40nm、0.5nm及び100nmとし、真空度1.0×10
−5Pa、蒸着レートはLiFでは0.02nm/秒、それ以外の材料では0.2nm/秒の条件で蒸着を行った。
【0105】
尚、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、その特性の評価する上で、OLED素子1を封止基板で封止した。封止は以下の手順で行った。
【0106】
酸素濃度5ppm以下、露点−80℃以下の窒素雰囲気中で、OLED素子1を封止基板の間に収め、封止基板を接着剤により貼り合わせた。この際、補水剤としてダイニック(株)製 HD−071010W−40をOLED素子と共に封止基板内に収めた。接着剤としては、(株)MORESCO製 モレスコモイスチャーカット WB90US(P)を使用した。貼り合わせた封止基板に対し、UV光を照射(波長:365nm、照射量:6000mJ/cm
2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着剤を硬化させた。
【0107】
[実施例3−2]〜[実施例3−6]
上記[実施例1−2]〜[実施例1−6]で得られたワニスを用いた以外は、[実施例3−1]と同様の方法でOLED素子を作製した。
【0108】
作製したOLED素子([実施例3−1]〜[実施例3−6])の電流密度及び輝度に関する特性を測定した。駆動電圧5Vにおける電流密度及び輝度は、表2に示したとおりである。尚、各素子の発光面サイズの面積は、2mm×2mmである。
【0109】
【表2】
【0110】
表2の結果から、[実施例3−1]〜[実施例3−6]のOLED素子は、実用的な電圧の範囲内で充分な輝度を有する、すなわち発光することが確かめられた。以上のことから、本実施形態の電荷輸送性ワニスから得られる電荷輸送性薄膜を正孔注入層として用いることで、輝度特性に優れる有機EL素子が得られることがわかった。