特許第6551769号(P6551769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6551769蒸着フィルム用コーティング剤、ガスバリア性フィルム、及び包装材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6551769
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】蒸着フィルム用コーティング剤、ガスバリア性フィルム、及び包装材
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/06 20060101AFI20190722BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20190722BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190722BHJP
   B65D 65/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   C09D175/06
   C09D167/00
   B32B27/00
   B65D65/00
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-519343(P2019-519343)
(86)(22)【出願日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】JP2018044880
【審査請求日】2019年4月9日
(31)【優先権主張番号】特願2017-243866(P2017-243866)
(32)【優先日】2017年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】土肥 知樹
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 浩之
(72)【発明者】
【氏名】手島 常行
(72)【発明者】
【氏名】近藤 明宏
(72)【発明者】
【氏名】武田 博之
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−011324(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/103992(WO,A1)
【文献】 特開2013−129735(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/069143(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/090900(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
B65D65/00− 65/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物(A)と、ポリエステル(B)とを含有してなる蒸着フィルム用コーティング剤であって、
前記ポリイソシアネート化合物(A)が、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)由来のエステル骨格を有し、且つ前記多価カルボン酸成分(A1)全量に対してオルト配向性芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物の少なくとも1種を10〜70モル%含有するポリイソシアネート化合物(A)であり、
前記ポリエステル(B)が、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分(B1)と多価アルコール成分(B2)との重縮合体であり前記多価アルコール成分(B2)全量に対してグリセロールを50〜100モル%含有することを特徴とする蒸着フィルム用コーティング剤。
【請求項2】
前記多価アルコール成分(A2)が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、及びネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の蒸着フィルム用コーティング剤。
【請求項3】
前記ポリエステル(A3)の数平均分子量が300〜2000の範囲である、請求項1又は2に記載の蒸着フィルム用コーティング剤。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート化合物(A)の末端イソシアネート基が、キシリレンジイソシアネート基、トリレンジイソシアネート基、又はジフェニルメタンジイソシアネート基の何れかである、請求項1〜3の何れかに記載の蒸着フィルム用コーティング剤。
【請求項5】
前記多価カルボン酸成分(B1)全量に対してオルト配向性芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物の少なくとも1種を70〜100モル%含有する請求項1〜4の何れかに記載の蒸着フィルム用コーティング剤。
【請求項6】
前記ポリエステル(B)の数平均分子量が1000〜30000の範囲である、請求項1〜5のいずれかに記載の蒸着フィルム用コーティング剤。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載のコーティング剤を蒸着フィルムにコーティングした、ガスバリア性フィルム。
【請求項8】
前記蒸着フィルムがアルミニウム蒸着フィルムである、請求項7に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項9】
請求項7又は8の何れかに記載のガスバリア性フィルムを用いた包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着フィルム用コーティング剤、及びそれを用いたガスバリア性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料等の包装材料は、内容物の保護のため水蒸気、酸素バリア等のガスバリア性が求められることが多い。包装材料にガスバリアを付与する方法はガスバリアコーティングを延伸フィルムに施す方法や、ガスバリア性の樹脂を共押し出しにより多層フィルム中の層に設けるなどの方法が広く用いられているが、中でもフィルムに蒸着層を付与する蒸着法は、ガスの種類によらずに容易にバリア機能を付与できる優れた方法である。
【0003】
蒸着法で使用する基材フィルムには延伸フィルムと未延伸フィルムとがあり、例えばアルミニウム等の金属蒸着層をガスバリア層として設けた蒸着フィルムには、延伸フィルムや未延伸フィルム共に使用されている。しかしながら、蒸着層の厚みは一般に10〜50nmと薄いためピンホールが生じやすく、ガスバリア機能が安定しないことがあった。特に基材フィルムが未延伸フィルムの場合では、延伸フィルムに比べてフィルムが伸びやすいことや、フィルム自体のガスバリア性が乏しい事により、特にガスバリア機能が不安定になりがちである。
また、シリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層をガスバリア層として設けた透明蒸着フィルムには、蒸着層が金属に比べて脆いために、未延伸フィルムは殆ど使用されておらず、より寸法安定性が高い延伸フィルムを使用することが殆どである。それでもやはり、クラック、ピンホールによりバリア性能がばらつく問題はなかなか解消できない。
【0004】
このようなガスバリア性を付与する蒸着層の問題を解消するために、蒸着層をオーバーコート層により保護することが、特に透明蒸着フィルムに対して広く行われている。
透明蒸着層へのオーバーコート技術として、例えば、特許文献1や特許文献2には、無機酸化物層いわゆる透明蒸着層上に、水溶性高分子並びに(a)1種以上の金属アルコキシド、(b)1種以上の金属アルコキシドの加水分解物、または(c)塩化錫の少なくとも1つ以上を含む水溶液、あるいは、水/アルコール混合溶液を主成分とするガスバリア被覆液を塗布してなるガスバリア被覆層を有する、透明ガスバリア積層体が記載されている。しかしながら水溶性高分子は塗工乾燥性が悪い上、反応制御が困難なゾルゲルプロセスを含むため、オーバーコート液の反応管理や再利用が困難であり、塗工方法が煩雑な問題がある。
【0005】
また、アルミニウム等の金属蒸着層は、透明蒸着層に比べると曲げへの追随性が良好なことからオーバーコート層を設ける例は少ないが、例えば特許文献3では、ピンホール等が一定割合で存在する金属蒸着層のバリア性能を高める目的で、基材層が少なくとも2層からなり、ポリプロピレンからなる樹脂組成物Aと、ノルボルネンとエチレンの共重合体からなる環状ポリオレフィン系高分子とポリオレフィンの混合物である樹脂組成物Bとを積層した構成からなる該基材層の上に、アルミ蒸着層を設けた無延伸アルミ蒸着フィルムが記載されている。本方法は耐熱性、寸法安定性がポリプロピレン単独よりも高い、環状ポリオレフィン系高分子を含むフィルム基材上に蒸着することでバリア性等の安定性を付与している。しかし本方法は、基材フィルムとして2層構成のフィルムを用いており製法が煩雑で高コスト化する問題がある。
【0006】
一方、出願人らは、ガスバリア性に優れた多層フィルムとして、2個以上の水酸基を有するポリエステルポリオール、例えばオルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとを含有してなるガスバリア性接着剤層、及びアルミ蒸着層若しくはアルミ箔を含む層を有するガスバリア性多層フィルムが、ガスバリア性に優れることを見出している。(例えば特許文献4参照)。しかしながら該ガスバリア性フィルムに使用する接着剤は反応性の2液型接着剤であるため、接着剤として混合後は早急に蒸着フィルムに塗工し第二の基材とラミネートする必要があった。即ち蒸着フィルムの蒸着層を保護するためには第二の基材が必要であることや、接着剤を適用するためにラミネート装置が必要となるなど、蒸着フィルムの蒸着層そのものを保護する目的としてはやはり工程が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−101505号公報
【特許文献2】特開2012−250470号公報
【特許文献3】特開2011−224921号公報
【特許文献4】特開2013−147014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、蒸着フィルム面への塗工が容易であり、且つ得られる塗膜は蒸着フィルムへの密着性に優れ、コーティング後の蒸着フィルムが耐ブロッキング性及びガスバリア性に優れる、蒸着フィルム用コーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)由来のエステル骨格を有し、且つ前記多価カルボン酸成分(A1)全量に対してオルト配向性芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物の少なくとも1種を10〜70モル%含有するポリイソシアネート化合物(A)と、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分(B1)と多価アルコール成分(B2)との重縮合体であり前記多価アルコール成分(B2)全量に対してグリセロールを50〜100モル%含有するポリエステル(B)とを含有する蒸着フィルム用コーティング剤が前記課題を解決することを見出した。
【0010】
特許文献4に記載の接着剤は、そのままコーティング剤として適用させた場合、強い粘着性が残存し、特にブロッキング性に問題が生じる。本発明者らは、ポリエステル成分として、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分(B1)と、グリセロールとを50〜100モル%含有する多価アルコール成分(B2)を重縮合して得られるポリエステル(B)を使用することで、耐ブロッキング性に優れることを見出し、さらに汎用の接着剤を使用してラミネートした場合であっても、コーティング塗膜と蒸着フィルム間でのはがれ等もなく密着性に優れるコーティング剤が得られることを見出した。
【0011】
即ち本発明は、ポリイソシアネート化合物(A)と、ポリエステル(B)とを含有してなる蒸着フィルム用コーティング剤であって、
前記ポリイソシアネート化合物(A)が、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)由来のエステル骨格を有し、且つ前記多価カルボン酸成分(A1)全量に対してオルト配向性芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物の少なくとも1種を10〜70モル%含有するポリイソシアネート化合物(A)であり、
ポリエステル(B)が、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分(B1)と多価アルコール成分(B2)との重縮合体であり前記多価アルコール成分(B2)全量に対してグリセロールを50〜100モル%含有する蒸着フィルム用コーティング剤を提供する。
【0012】
また本発明は前記記載のコーティング剤を蒸着フィルムにコーティングした、ガスバリア性フィルムを提供する。
【0013】
また本発明は、前記記載のガスバリア性フィルムを用いた包装材を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、溶剤で希釈可能であり蒸着フィルム面への塗工が容易である。またコーティング塗膜は蒸着フィルムへの密着性に優れるので、本発明の蒸着フィルム用コーティング剤を蒸着フィルムにコーティングしたフィルムは、ガスバリア性に優れる他、ラミネート強度にも優れる。また本発明の蒸着フィルム用コーティング剤を蒸着フィルムにコーティングしたフィルムは、特定のポリエステルを使用するので耐ブロッキング性にも優れる。
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤を金属蒸着フィルムにコーティングしたガスバリア性フィルムは、接着剤等により多層の積層体としなくても優れたガスバリア性を有するので、特に食品包装用として有用なバリア性フィルムを低コストで提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ポリイソシアネート化合物(A)と、ポリエステル(B)とを含有してなる蒸着フィルム用コーティング剤である。ポリエステル(B)は末端にカルボキシル基またはヒドロキシ基を有し、ポリイソシアネート化合物(A)が有するイソシアネート基と反応する。
【0016】
(ポリイソシアネート化合物)
本発明で使用するポリイソシアネート化合物(A)は、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)とを重縮合させた重縮合体であるポリエステル(A3)由来のエステル骨格を有し、末端にイソシアネート基を有する。ポリエステル(A3)は末端にヒドロキシ基またはカルボキシル基を有することから、末端のイソシアネート基の導入は、前記ポリエステル(A3)の末端のヒドロキシ基またはカルボキシル基にポリイソシアネート化合物を反応させることにより行う。該ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。中でも、骨格の一部に芳香族環を含有するポリイソシアネート化合物であると、ガスバリア機能をより向上させることができ好ましい。またポリエステル(A3)の数平均分子量は、300〜2000であることが好ましい。
【0017】
なお、本発明において、数平均分子量または重量平均分子量は、GPCカラムLF−804(昭和電工社製)を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにて、示差屈折率検出器(Waters社製Waters2414)により検出された保持時間より測定した。
【0018】
前記ポリエステル(A3)は、多価カルボン酸成分(A1)と、多価アルコール成分(A2)とを重縮合して用いる。
【0019】
(多価カルボン酸成分(A1))
前記多価カルボン酸成分(A1)は、前記多価カルボン酸成分(A1)全量に対してオルト配向性芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物の少なくとも1種を10〜70モル%含有することが特徴である。
カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸又はその酸無水物(以後これらの、「カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸又はその酸無水物」を「酸成分(C1)」と称する場合がある)としては、オルトフタル酸又はその無水物、ナフタレン2,3−ジカルボン酸又はその無水物、ナフタレン1,2−ジカルボン酸又はその無水物、アントラキノン2,3−ジカルボン酸又はその無水物、及び2,3−アントラセンカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。これらの化合物は、芳香環の任意の炭素原子に置換基を有していてもよい。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、フェニル基又はナフチル基等が挙げられる。
【0020】
本発明においては、発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸成分を共重合させてもよい。具体的には、脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を、不飽和結合含有多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等を、脂環族多価カルボン酸としては1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、芳香族多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸及びその無水物、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物或いはエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸を単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。中でも、有機溶剤溶解性とガスバリア性の観点からコハク酸、アジピン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタル酸、ジフェン酸が好ましい。(以後これらの、「その他のカルボン酸または酸無水物」を「酸成分(C2)」と称する場合がある)。
【0021】
前記酸成分(C1)と前記酸成分(C2)とのモル比率は、C1:C2=1:9〜7:3の範囲であり、より好ましくは3:7〜7:3の範囲である。酸成分(C1)の比率が7割を超えると得られるポリイソシアネート化合物(A)の剛直性が増加し、金属蒸着フィルムとの密着性が低下するおそれがある。一方酸成分(C1)の比率が1割未満の場合、ポリイソシアネート化合物(A)のガスバリア向上機能が損なわれるおそれがある。
【0022】
(多価アルコール成分(A2))
前記多価アルコール成分(A2)は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する。中でも、酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されることから、エチレングリコールを主成分として使用することが最も好ましい。
【0023】
本発明では前記多価アルコール成分(A2)を用いることが好ましいが、このほか、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価アルコール成分を共重合させてもよい。具体的には、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールがあげられる。
【0024】
前記多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合反応は、公知慣用の方法で行うことができる。前記ポリイソシアネート化合物(A3)の中心骨格のポリエステルポリオールの水酸基価は50〜400mgKOH/g、酸価が2mgKOH/g以下であることが好ましい。水酸基価はJIS−K0070に記載の水酸基価測定方法にて、酸価はJIS−K0070に記載の酸価測定法にて測定することができる。水酸基価が50mgKOH/gより小さい場合、分子量が大きすぎる為に粘度が高くなり、良好な塗工適性が得られないおそれがあり、逆に水酸基価が400mgKOH/gを超える場合、分子量が小さくなりすぎる為、硬化塗膜の架橋密度が高くなりすぎ、良好な接着強度が得られないおそれがある。
【0025】
(イソシアネート化)
前記ポリエステル化合物(A3)の末端にイソシアネート基を導入する方法としては、前述の通り、前記ポリエステル(A3)が有する末端のヒドロキシ基またはカルボキシル基にポリイソシアネート化合物を反応させることにより行う。この反応は特に限定はなく、公知慣用の方法で行うことができる。ただし、分子量制御、粘度調整の観点から、過剰量のイソシアネート反応成分の中にポリオール反応成分を適宜添加することでイソシアネート基を導入する方法が好ましい。
本発明で用いられるイソシアネートとしては、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよいが、反応制御の観点からジイソシアネート体が好ましい。また、骨格の一部に芳香族環、または脂肪族環を含有するとガスバリア向上機能の観点からより好ましい。たとえば、芳香族環を持つイソシアネートとしては、メタキシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、脂肪族環を持つイソシアネートとしては、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートが挙げられる。一方、その他のイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体、ビウレット体およびヌレート体等が挙げられる。
【0026】
(ブロックイソシアネート)
また、芳香族環、脂肪族環を含有しているポリイソシアネート化合物であれば、ブロック化イソシアネートであってもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えば芳香族を含有しているものであれば、フェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0027】
(ポリエステル(B))
本発明で使用するポリエステル(B)は、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分(B1)と多価アルコール成分(B2)を重縮合することにより製造される。
前記ポリエステル(B)の分子量としては、コーティング剤として十分な膜の靭性や塗工適性、溶媒溶解性が付与できるのであれば特に制限はないが、数平均分子量で1000〜50000であることが好ましく、より好ましくは、1000〜30000である。ポリエステル末端の官能基としては、アルコール末端とカルボン酸末端の両方を有していても良いが、イソシアネート系硬化剤を併用するため、アルコール末端が主体であるポリエステルポリオールであることが好ましい
【0028】
(ポリエステル(B)のガラス転移温度(Tg))
本発明で使用するポリエステル(B)のガラス転移温度(以後Tgと称する場合がある)は特に限定はないが、15℃以上であることが好ましい。Tgが15℃を下回る場合、コーティング剤そのものがコーティング操作後に粘着性を発現し、ブロッキングを生じやすくなり、コーティング後の巻き取り操作に支障が生じる場合がある。Tgは中でも18℃以上であることが好ましく、より好ましくは25℃以上である。
なお、本発明において、Tgは示差走査熱量測定装置(METTLER TOLEDO社製DSC822e)により、−50℃〜100℃の温度範囲で熱流量を検出することで測定した。
【0029】
本発明に用いるポリエステル(B)は、多価カルボン酸成分(B1)と、多価アルコール成分(B2)とを重縮合して用いる。
【0030】
(多価カルボン酸成分(B1))
多価カルボン酸成分(B1)は、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含むことに特徴を有する。また、カルボン酸全成分に対する含有率が70〜100モル%であると、バリア性の向上効果が高い上に、コーティング剤として必須の溶媒溶解性に優れることから特に好ましい。
本発明ではオルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物を用いることが好ましいが、このほか、本発明の効果を損なわない範囲において、前記酸成分(C2)を使用することができる。中でも、有機溶剤溶解性とガスバリア性の観点からコハク酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタル酸、ジフェン酸が好ましい。
【0031】
(多価アルコール成分(B2))
本発明に用いるポリエステル(B)における多価アルコール成分(B2)は、グリセロールを含有し、多価アルコール全成分に対するグリセロール含有率が50〜100モル%であることを特徴とする。グリセロール含有率が50モル%以上であると、分子構造上架橋点が増加することでポリエステル樹脂の分子運動が抑制され、樹脂のバリア機能とともに耐ブロッキング性が向上する。
グリセロールと併用する多価アルコール成分(B2)は、ガスバリア補填の性能を示すポリエステルを合成することができれば特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、及び1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分を含有することが好ましい。中でも、酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されることから、エチレングリコールを主成分として使用することが最も好ましい。
【0032】
本発明では前述の多価アルコール成分(B2)を用いることが好ましいが、このほか、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価アルコール成分を共重合させてもよい。具体的には、ジオールとしては1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールが、三価以上のアルコールとしては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール等があげられる。特に、三価のアルコールの内、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを併用したポリエステルは、分岐構造に由来して架橋密度も適度に高いことにより有機溶媒溶解性が良好な上、バリア機能も優れており、特に好ましく用いられる。
【0033】
本発明のポリエステルを得る反応に用いられる触媒としては、モノブチル酸化錫、ジブチル酸化錫等錫系触媒、テトラ−イソプロピル−チタネート、テトラ−ブチル−チタネート等のチタン系触媒、テトラ−ブチル−ジルコネート等のジルコニア系触媒等の酸触媒が挙げられる。エステル反応に対する活性が高い、テトラ−イソプロピル−チタネート、テトラ−ブチル−チタネート等の上記チタン系触媒と上記ジルコニア触媒を組み合わせて用いることが好ましい。前記触媒量は、使用する反応原料全質量に対して1〜1000ppm用いられ、より好ましくは10〜100ppmである。1ppmを下回ると触媒としての効果が得られにくく、1000ppmを上回るとイソシアネート硬化剤を用いる場合にウレタン化反応を阻害する問題が生じる場合がある。
【0034】
(コーティング剤)
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤(以下単に「コーティング剤」と称する場合がある)は、前記ポリイソシアネート化合物(A)と前記ポリエステル(B)とを含有するが、ポリイソシアネート化合物(A)の反応成分とポリエステル(B)の水酸基とが0.5/1〜5/1(当量比)となるように配合することが好ましく、バリア機能及び耐ブロッキング性の観点から、より好ましくは1/1〜1.5/1である。該範囲を超えてポリイソシアネート成分が過剰な場合、余剰なポリイソシアネート成分が残留することで耐ブロッキング性に劣る傾向にあり、一方ポリエステル(B)が多すぎると硬化塗膜が硬くなり良好な接着強度が得られないおそれがある。
【0035】
(コーティング剤に用いる溶媒)
本発明のコーティング剤は、適宜溶媒を使用してもよい。使用する溶媒は、速乾燥性や水蒸気バリア機能も補填する観点から、非水系であることが好ましく、有機溶媒が主成分であることがこのましい。具体的には、主成分であるポリエステルに対し溶解性が高く、且つ残留溶媒や即乾燥性であることがこのましい。この観点から沸点が100℃以下である有機溶剤が好ましい。好ましく用いられる有機溶媒としては、エステル系溶媒としては酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ケトン系溶媒としては、アセトン、2−ブタノン、エーテル系溶媒としてはテトラヒドロフラン、脂肪族系溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、芳香族系溶媒としてはトルエン等を例示することができる。アルコール系溶媒や水を混合する場合は、イソシアネート化合物を硬化剤として併用することから最小限にとどめることがこのましい。
【0036】
(コーティング剤への添加材)
(板状無機化合物)
本発明のコーティング剤は、板状無機化合物を含有させてもよい。
本発明に板状無機化合物が用いられる場合には、粘着性の低減によるコーティング後の巻き取り適性の向上とガスバリア性を向上させる効果を有する。
【0037】
板状無機化合物を併用した場合には形状が板状であることによりバリア性が向上する特徴がある。板状無機化合物の層間の電荷はバリア性に直接大きく影響しないが、本発明のコーティング剤に対する分散性が、イオン性無機化合物、或いは水に対して膨潤性無機化合物では大幅に劣り、添加量を増加させると本発明のコーティング剤の増粘やチキソ性となることより塗工適性が課題となる。これに対して、無電荷(非イオン性)、或いは水に対して非膨潤性の場合は、添加量を増加させても、増粘やチキソ性となり難く塗工適性が確保できる。本発明で使用される板状無機化合物としては、例えば、板状無機化合物としては、例えば、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物等)、カオリナイト−蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト−タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライト等)、雲母又はマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)、緑泥石族(クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト等)、ハイドロタルサイト、板状硫酸バリウム、ベーマイト、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらの鉱物は天然粘土鉱物であっても合成粘土鉱物であってもよい。板状無機化合物は単独又は二種以上組み合わせて使用される。これら板状無機化合物のアスペクト比、コーティング剤内での含有率、粒子径、粒径分布としては、バリア向上機能や、耐ブロッキング適性が付与できていれば特に制限はない。
【0038】
本発明で使用される板状無機化合物を、本発明のコーティング剤に分散させる方法としては、公知の分散方法が利用できる。例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントコンディショナー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、ナノミル、SCミル、ナノマイザー等を挙げることができ、更により好ましくは、高い剪断力を発生させることのできる機器として、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、二本ロール、三本ロール等が上げられる。これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(酸無水物)
本発明においては、コーティング剤層の耐酸性を向上させる目的で、公知の酸無水物を添加剤として併用することもできる。酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、コハク酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドラフタル酸無水物、テトラプロムフタル酸無水物、テトラクロルフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタリンテトラカルボン酸2無水物、5−(2,5−オキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、スチレン無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらの酸無水物の原料として非石油由来成分が含有されていると、非石油由来成分比率を高くできることから好ましい。こうした化合物の例としてコハク酸無水物が挙げられる。
【0040】
(ガス捕捉成分)
また、必要に応じて、更にガス捕捉機能を有する材料を添加してもよい。酸素捕捉機能を有する材料としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。水蒸気補足機能を有する材料としては、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、炭酸カルシウム等の材料を挙げることができる。これら以外にも遮断したい対象ガスの捕捉成分を添加することができる。
【0041】
(その他の成分)
その他、ガスバリア補助機能を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤、無機材料を用いる場合には分散剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、レベリング剤、スリップ向上剤等が例示できる。
【0042】
(蒸着フィルム)
本発明のコーティング剤は、蒸着フィルムが持つガスバリア性を大幅に向上させるために使用する。そのためコーティング剤を塗布する対象としては各種蒸着フィルムを用いる。本材料をコーティングしたフィルムは、通常の蒸着フィルムよりも更にガスバリア性に優れるため、ハイガスバリアフィルムとして使用できる。
【0043】
(蒸着層の種類)
本発明で使用するコーティング剤が塗布される蒸着フィルムの蒸着層の種類としては、ガスバリア性を付与できるものであれば特に限定されない。現在包装用に広く用いられている金属蒸着、または金属酸化物蒸着が好適に例示される。金属蒸着としては各種金属が例示できるが、特に安価で広く用いられているアルミニウムが好ましい。また、金属酸化物としては、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ケイ素(SiOx)が、汎用性が高い材料として好ましく例示される。これ以外にも各種有機化合物、無機化合物を蒸着したフィルムや、複数種の材料を蒸着したものを用いても良い。蒸着方法としては特に制限はなく物理的蒸着法である真空蒸着法や、化学的蒸着法であるCVD法が例示できる。蒸着層の厚みは蒸着層単独でも一定のガスバリア機能が発現できこれにコーティング層が設置されることでさらに高バリアフィルムとできれば特に制限はない。しかし、あまりに蒸着層が薄いとガスバリアに対する蒸着層の寄与が少なくなり本発明のコーティング剤を用いても十分なガスバリア機能が発現できなくなり、厚すぎても一定厚み以上ではバリア向上機能が少ないため、好ましくは3〜70nmさらに好ましくは5〜60nmである。また、これら蒸着フィルムには蒸着の保護として、オーバーコートやアンダーコートが予め施されていても、施されていなくても用いることができる。しかし特に、コーティング層が無い蒸着フィルムでは、本発明のコーティング剤のバリア向上機能を十分に発揮することができるため好ましく用いられる。
【0044】
(フィルムの種類)
本発明でのコーティング剤を使用するフィルムは、特に限定はなく、所望の用途に応じた熱可塑性樹脂フィルムを適宜選択することができる。例えば食品包装用としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:リニア低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:未延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、シクロオレフィンコポリマフィルム等が挙げられる。これらのフィルムには延伸処理があっても、無くても好ましく用いることができる。延伸処理をほどこしているフィルム類は寸法安定性、剛性よりコーティング操作が容易で使いやすい利点がある。また、未延伸フィルムでは逆に基材の寸法安定性、剛性、耐熱性が劣るため蒸着層が欠陥を多く持ちガスバリアが安定しないことが多いので、本発明のコーティング剤を用いることで、バリア機能の強化に大きな効果をだせる利点がある。
【0045】
(コーティングを行う部分)
本発明では、コーティング剤を蒸着面側に施す必要がある。これは、本発明のコーティング剤が蒸着のピンホールやクラック等の欠陥部分を効率よく穴埋めすることにより、極めて優れたバリア向上機能を付与するためである。コーティング剤が蒸着面の逆側のフィルム面に設置された場合はこのような補強効果を付与することはできずバリアの向上効果が限定的となる。
【0046】
本発明では、さらに高いバリア機能を付与するためにポリビニルアルコールや、エチレン・ビニールアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のガスバリア層を含有するバリア性フィルムを併用して、より高いバリア機能を付与しても良い。
【0047】
(コーティング方法)
本発明のコーティング剤のコーティング方法としては、蒸着フィルムの蒸着面にコーティングができるのであれば特に制限はない。具体的な方法としては、コールコート、グラビアコート等の各種コーティング方法を例示することができる。また、コーティングに用いる装置についても特に限定はない。
【0048】
(コーティング膜厚)
本発明のコーティング剤を塗布する膜厚は特に制限はない。しかし、本発明のコーティング剤は蒸着欠陥をふさぐことでガスバリアの補強効果を高める。そのため、コーティング膜厚は蒸着欠陥さえ塞ぐことができれば厚い必要がなく、0.1μm以上あればバリア向上効果を出すことができる。好ましい厚み範囲としては、コーティング欠陥が生じにくいことと、乾燥性とのバランスより好ましくは0.2μm〜5μmの範囲、さらに好ましくは0.3〜3μmの範囲である。
【0049】
(コーティング剤が使用される層構成)
本発明のコーティング剤が用いられる層構成としては、以下の構成が想定される。いずれも、蒸着層直上にコーティングされることにより良好なバリア機能を付与することができる。
1)アルミ等の金属蒸着延伸フィルムを用いた構成としては、
・本発明のコーティング剤/インキ/蒸着延伸フィルム/ラミネート接着剤/シーラントフィルム
2)酸化アルミニウム等の透明蒸着延伸フィルムを用いた場合、
・透明蒸着延伸フィルム/本発明のコーティング剤/インキ/ラミネート接着剤/シーラントフィルム
3)アルミ等の金属蒸着未延伸フィルムを用いた構成としては
・延伸フィルム/インキ/ラミネート接着剤/本発明のコーティング剤/金属蒸着未延伸フィルム
・コーティング/インキ/金属蒸着未延伸フィルム
4)酸化アルミニウム等の透明蒸着未延伸フィルムを用いた場合
・延伸フィルム/インキ/ラミネート接着剤/本発明のコーティング剤/透明蒸着未延伸フィルム
・本発明のコーティング剤/インキ/透明蒸着未延伸フィルム
いずれの層構成も、フィルム層が2層以下で、インキ層の印刷を施した高ガスバリアのフィルムを提供することができる。特に金属または透明蒸着未延伸フィルムを用いた場合には、単層の高バリアフィルムを提供することができる。
【0050】
(透過を遮断できるガス成分種類)
本発明のコーティング剤を利用したガスバリア用フィルムが遮断できるガスとしては、酸素、水蒸気の他、二酸化炭素、窒素、アルゴン等の不活性ガス、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール成分、フェノール、クレゾール等のフェノール類の他、低分子化合物からなる香気成分類、例えば、醤油、ソース、味噌、レモネン、メントール、サリチル酸メチル、コーヒー、ココアシャンプー、リンス、等の香り成分を例示することができる。
【0051】
本発明のコーティング材は、蒸着フィルムの水蒸気、酸素のバリア性を向上させ、且つ高いラミネート強度も有するため、ラミネート作業が必要な各種包装材料に加えて、例えば太陽電池用保護フィルム用の接着剤や表示素子用水蒸気バリア性基板のコーティング剤等の電子材料用コーティング剤、建築材料用コーティング剤、工業材料用コーティング等、水蒸気、酸素のガスバリア性の強化を所望される用途であれば好適に使用できる。
【実施例】
【0052】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明する。例中断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。なお、グリセロールを含有するポリエステルポリオールは水酸基価から計算される理論数平均分子量と上記の測定方法による数平均分子量が大きく異なるため、実測の数平均分子量を記載する。
【0053】
なお、本発明において、数平均分子量または重量平均分子量は、GPCカラムLF−804(昭和電工社製)を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにて、示差屈折率検出器(Waters社製Waters2414)により検出された保持時間より測定した。
【0054】
(製造例1)グリセロールとエチレングリコールと無水フタル酸からなるポリエステルポリオール「Gly7EG5oPA11」の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸626.7部、エチレングリコール125.3部、グリセロール248部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が10mgKOH/g以下になったところで減圧下100torrにて加熱を継続し、酸価が2mgKOH/g以下でエステル化反応を終了し、数平均分子量2300のポリエステルポリオール「Gly7EG5oPA11」を得た。
【0055】
(製造例2)グリセロールと無水フタル酸からなるポリエステルポリオール「Gly9oPA10」の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸567.6部、グリセロール330.9部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を190℃に保持した。その後、酸価が40mgKOH/gになったところで無水フタル酸101.5部を追添し、酸価が70mgKOH/gになったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量1200のポリエステルポリオール「Gly9oPA10」を得た。
【0056】
(製造例3)無水フタル酸とエチレングリコールとからなるポリエステルポリオール「EGoPA900」の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸697部、エチレングリコール303部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が10mgKOH/g以下になったところで減圧下100torrにて加熱を継続し、酸価が2mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、水酸基価から計算される理論数平均分子量900のポリエステルポリオール「EGoPA900」を得た。
【0057】
(製造例4) グリセロールとエチレングリコールと無水フタル酸からなるポリエステルポリオール「Gly1EG3oPA3.4」の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸644.1部、エチレングリコール238.2部、グリセロール117.8部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が10mgKOH/g以下になったところで減圧下100torrにて加熱を継続し、酸価が2mgKOH/g以下でエステル化反応を終了し、数平均分子量1100のポリエステルポリオール「Gly1EG3oPA3.4」を得た。
【0058】
(製造例5) 無水フタル酸とアジピン酸とエチレングリコールとからなるポリエステルポリオールEGoPA5AA5−850を中心骨格にもつイソシアネート化合物「EGoPA5AA5−850−XDI」の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸319.9部、アジピン酸315.6部、エチレングリコール364.6部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が2mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、水酸基価から計算される理論数平均分子量820のポリエステルポリオール「EGoPA5AA5−850」を得た。
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた四つ口フラスコに上記「EGoPA5AA5−850」1000部とXDI917.7部を仕込み、窒素気流下60℃で3時間反応させた。NCO%が17%以下になったところでウレタン化反応を終了し、NCO%が15.8%のポリイソシアネート化合物「EGoPA5AA5−850−XDI」を得た。
【0059】
(製造例6) 無水フタル酸とアジピン酸とエチレングリコールとからなるポリエステルポリオールEGoPA5AA5−500を中心骨格にもつイソシアネート化合物「EGoPA5AA5−500−XDI」の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸303.0部、アジピン酸298.9部、エチレングリコール398.1部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が2mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、水酸基価から計算される理論数平均分子量510のポリエステルポリオール「EGoPA5AA5−500」を得た。
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた四つ口フラスコに上記「EGoPA5AA5−500」1000部とXDI1475.9部を仕込み、窒素気流下60℃で3時間反応させた。NCO%が22%以下になったところでウレタン化反応を終了し、NCO%が19.2%のポリイソシアネート化合物「EGoPA5AA5−500−XDI」を得た。
【0060】
(製造例7) 無水フタル酸とアジピン酸とエチレングリコールとからなるポリエステルポリオールEGoPA5AA5−2000を中心骨格にもつイソシアネート化合物「EGoPA5AA5−2000−XDI」の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸333.7部、アジピン酸329.2部、エチレングリコール337.2部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が2mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、水酸基価から計算される理論数平均分子量1930のポリエステルポリオール「EGoPA5AA5−2000」を得た。
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた四つ口フラスコに上記「EGoPA5AA5−500」1000部とXDI390.4部を仕込み、窒素気流下60℃で3時間反応させた。NCO%が10%以下になったところでウレタン化反応を終了し、NCO%が8.5%のポリイソシアネート化合物「EGoPA5AA5−2000−XDI」を得た。
【0061】
(製造例8) 無水フタル酸とアジピン酸とエチレングリコールとからなるポリエステルポリオールEGoPA7AA3−850を中心骨格にもつイソシアネート化合物「EGoPA7AA3−850−XDI」の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸447.0部、アジピン酸189.0部、エチレングリコール363.9部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が2mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、水酸基価から計算される理論数平均分子量800のポリエステルポリオール「EGoPA7AA3−850」を得た。
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた四つ口フラスコに上記「EGoPA7AA3−850」1000部とXDI944.6部を仕込み、窒素気流下60℃で3時間反応させた。NCO%が16%以下になったところでウレタン化反応を終了し、NCO%が14.4%のポリイソシアネート化合物「EGoPA7AA3−850−XDI」を得た。
【0062】
(製造例9) 無水フタル酸とアジピン酸とエチレングリコールとからなるポリエステルポリオールEGoPA1AA9−850を中心骨格にもつイソシアネート化合物「EGoPA1AA9−850−XDI」の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸64.2部、アジピン酸570.0部、エチレングリコール365.8部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が2mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、水酸基価から計算される理論数平均分子量840のポリエステルポリオール「EGoPA1AA9−850」を得た。
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた四つ口フラスコに上記「EGoPA1AA9−850」1000部とXDI899.6部を仕込み、窒素気流下60℃で3時間反応させた。NCO%が14%以下になったところでウレタン化反応を終了し、NCO%が12.8%のポリイソシアネート化合物「EGoPA1AA9−850−XDI」を得た。
【0063】
(製造例10) 無水フタル酸とアジピン酸とプロピレングリコールとからなるポリエステルポリオールPGoPA5AA5−850を中心骨格にもつイソシアネート化合物「PGoPA5AA5−850−XDI」の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸293.3部、アジピン酸289.4部、プロピレングリコール417.3部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を180℃に保持した。酸価が2mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、水酸基価から計算される理論数平均分子量700のポリエステルポリオール「PGoPA5AA5−850」を得た。
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた四つ口フラスコに上記「PGoPA5AA5−850」1000部とXDI1069.4部を仕込み、窒素気流下60℃で3時間反応させた。NCO%が18%以下になったところでウレタン化反応を終了し、NCO%が15.5%のポリイソシアネート化合物「PGoPA5AA5−850−XDI」を得た。
【0064】
(製造例11) 無水フタル酸とアジピン酸とネオペンチルグリコールとからなるポリエステルポリオールNPGoPA5AA5−850を中心骨格にもつイソシアネート化合物「NPGoPA5AA5−850−XDI」の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸249.6部、アジピン酸246.2部、ネオペンチルグリコール504.2部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を200℃に保持した。酸価が2mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、水酸基価から計算される理論数平均分子量720のポリエステルポリオール「NPGoPA5AA5−850」を得た。
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた四つ口フラスコに上記「NPGoPA5AA5−850」1000部とXDI1050.6部を仕込み、窒素気流下60℃で3時間反応させた。NCO%が18%以下になったところでウレタン化反応を終了し、NCO%が15.7%のポリイソシアネート化合物「NPGoPA5AA5−850−XDI」を得た。
【0065】
(製造例12) 無水フタル酸とコハク酸とエチレングリコールとからなるポリエステルポリオールEGoPA5SuA5−850を中心骨格にもつイソシアネート化合物「EGoPA5SuA5−850−XDI」の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸342.5部、コハク酸273.0部、エチレングリコール384.5部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が2mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、水酸基価から計算される理論数平均分子量830のポリエステルポリオール「EGoPA5SuA5−850」を得た。
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた四つ口フラスコに上記「EGoPA5SuA5−850」1000部とXDI906.3部を仕込み、窒素気流下60℃で3時間反応させた。NCO%が16%以下になったところでウレタン化反応を終了し、NCO%が14.3%のポリイソシアネート化合物「EGoPA5SuA5−850−XDI」を得た。
【0066】
(製造例13) 無水フタル酸とマレイン酸とエチレングリコールとからなるポリエステルポリオールEGoPA5MA5−850を中心骨格にもつイソシアネート化合物「EGoPA5MA5−850−XDI」の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸344.2部、マレイン酸269.7部、エチレングリコール386.1部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が2mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、水酸基価から計算される理論数平均分子量810のポリエステルポリオール「EGoPA5MA5−850」を得た。
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた四つ口フラスコに上記「EGoPA5MA5−850」1000部とXDI930.5部を仕込み、窒素気流下60℃で3時間反応させた。NCO%が18%以下になったところでウレタン化反応を終了し、NCO%が15.7%のポリイソシアネート化合物「EGoPA5MA5−850−XDI」を得た。
【0067】
(製造例14) 無水フタル酸とアジピン酸とエチレングリコールとからなるポリエステルポリオールEGoPA5AA5−850を中心骨格にもつイソシアネート化合物「EGoPA5AA5−850−TDI」の製造方法
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた四つ口フラスコに上記製造例5「EGoPA5AA5−850」1000部とTDI849.6部を仕込み、窒素気流下60℃で3時間反応させた。NCO%が16%以下になったところでウレタン化反応を終了し、NCO%が14.5%のポリイソシアネート化合物「EGoPA5AA5−850−TDI」を得た。
【0068】
(製造例15) 無水フタル酸とアジピン酸とエチレングリコールとからなるポリエステルポリオールEGoPA5AA5−850を中心骨格にもつイソシアネート化合物「EGoPA5AA5−850−MDI」の製造方法
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた四つ口フラスコに上記製造例5「EGoPA5AA5−850」1000部とMDI2220.6部を仕込み、窒素気流下60℃で3時間反応させた。NCO%が20%以下になったところでウレタン化反応を終了し、NCO%が18.8%のポリイソシアネート化合物「EGoPA5AA5−850−MDI」を得た。
【0069】
(製造例16) 無水フタル酸とエチレングリコールとからなるポリエステルポリオール「EGoPA900」を中心骨格にもつイソシアネート化合物「EGoPA900−XDI」の製造方法
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた四つ口フラスコに上記製造例3「EGoPA900」1000部とXDI1207.6部を仕込み、窒素気流下60℃で3時間反応させた。NCO%が18%以下になったところでウレタン化反応を終了し、NCO%が14.9%のポリイソシアネート化合物「EGoPA900−XDI」を得た。
【0070】
製造例1〜4で得られた実施例及び比較例用のポリエステルポリオール(B)の原料モノマー組成、樹脂の数平均分子量、多価アルコール全成分に対するグリセロール含有率(モル%)、多価カルボン酸全成分に対するオルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の含有率(モル%)と、前述の方法で測定したガラス転移温度(℃)を表1に示す。
【0071】
製造例5〜16で得られた実施例及び比較例用のポリイソシアネート化合物(A)の原料モノマー組成、NCO%(分子中のイソシアネート基の重量分率)、多価カルボン酸全成分に対するオルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の含有率(モル%)を表2に、製造例11〜16で得られた実施例及び比較例用のポリイソシアネート化合物の原料モノマー組成、NCO%(分子中のイソシアネート基の重量分率)、多価カルボン酸全成分に対するオルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の含有率(モル%)を表2、3に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
表中の略語は以下の意味である。
XDI:メタキシリレンジイソシアネート
TDI:トリレンジイソシアネート
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
なお、使用したイソシアネートは以下の通りである。
・XDI: 三井化学(株)製「タケネート500」(不揮発成分100%)
・TDI: 東ソー(株)製「コロネートT−100」(不揮発成分100%)
・MDI: 東ソー(株)製「ミリオネートMT」(不揮発成分100%)
NCO%:ポリイソシアネート化合物(A)に対するイソシアネート基含有量であり、測定値である。
【0076】
(実施例及び比較例)
実施例及び比較例のコーティング剤の配合比率や使用するフィルムは、表4〜に示した。
【0077】
(コーティング剤の調製)
製造例で合成したポリエステル(B)を2-ブタノンに添加し、常温でスターラーで撹拌した。いずれのポリエステルも溶媒に完全に溶解した溶液を調整することができた。得られた溶液に、製造例で合成したポリイソシアネート化合物(A)あるいは市販のイソシアネート化合物を添加し、常温でスターラーで撹拌し均一なコーティング剤を調製した。
【0078】
ここで、市販のイソシアネート化合物は以下の通りである。
・D−110N: 三井化学(株)製「タケネートD−110N」(メタキシリレンジイソシアネートアダクト体、不揮発成分75.0%、溶媒酢酸エチル)
・KW−75: DIC(株)製「ディックドライKW−75」(トリレンジイソシアネートアダクト体、不揮発成分75.0%、溶媒酢酸エチル)
・T−1890:EVONIC社製「VESTANATT−1890/100」(イソホロンジイソシアネートイソシアヌレート体、不揮発成分100%)を酢酸エチルで希釈し不揮発成分70%に調製したもの
・タケネート500: 三井化学(株)製「タケネート500」(メタキシリレンジイソシアネート、不揮発成分100%)
【0079】
(ガスバリア性フィルムの製造方法 コーティング剤の塗工方法)
得られたコーティング剤を、蒸着フィルムの蒸着面側にバーコーター#2を用いて塗布量0.5g/m(固形分)となるように塗工し、ドライヤーで80℃の熱風により溶媒を揮発させた後、150℃設定の乾燥機中に30秒間設置し、均一なコーティング層を有するガスバリア性フィルムを得た。
基材である蒸着フィルムとしては、以下を使用した。
・アルミ蒸着PETフィルム:1510#12(東レフィルム加工(株)製)
未延伸フィルム
・LLDPEフィルム:TUX-HC#40(三井化学東セロ(株)製)
未延伸蒸着フィルム
・アルミ蒸着CPPフィルム:2203#25(東レフィルム加工(株)製)
・アルミ蒸着LLDPEフィルム:TUX-F#30(三井化学東セロ(株)製)
【0080】
(ガスバリア性フィルムの評価方法)
ガスバリア性フィルムの、酸素透過率測定、水蒸気透過率測定、ラミネート強度測定、耐ブロッキング性(塗膜乾燥特性)により評価した。
ガスバリア性フィルムは、(X)または(Y)のフィルムを使用した。
【0081】
(X)ガスバリア性フィルム
前述の「ガスバリア性フィルムの製造方法」で得たガスバリア性フィルムをそのまま使用した。
【0082】
(Y)ガスバリア性フィルムを用いた積層フィルム
第一の基材にディックドライLX−500とKW−75(いずれもDIC社製)を10/1の配合比で配合し、不揮発分が20%となるように酢酸エチルを配合して得た接着剤を、バーコーター#9を用いて塗布量2.0g/m(固形分)となるように塗工し、ドライヤーで80℃の熱風により溶媒を揮発させた。
次いで温度40℃、圧力0.4MPa、ラミネート速度40m/minにて第二の基材とドライラミネートして、積層フィルムを得た。この積層フィルムを40℃/3日間かけて硬化させ、「積層フィルム」とした。
第一の基材または第二の基材としては、前述の「ガスバリア性フィルムの製造方法」で得たガスバリア性フィルムを使用した。第一の基材として使用する場合には、接着剤の塗布面がコーティング層となるように塗工した。
ここで、使用したフィルム略称は以下の通りである。
・PETフィルム:E5100#12(東洋紡績(株)製)
延伸蒸着フィルム
・アルミ蒸着PETフィルム:1510#12(東レフィルム加工(株)製)
未延伸フィルム
・LLDPEフィルム:TUX-HC#40(三井化学東セロ(株)製)
未延伸蒸着フィルム
・アルミ蒸着CPPフィルム:2203#25(東レフィルム加工(株)製)
・アルミ蒸着LLDPEフィルム:TUX-F#30(三井化学東セロ(株)製)
【0083】
(1)酸素透過率測定方法
(X)のガスバリア性フィルム、(Y)の積層フィルム、及び参考例として未処理の蒸着フィルムを、モコン社製酸素透過率測定装置OX−TRAN2/21MHを用いてJIS−K7126(等圧法)に準じ、23℃90%RHの雰囲気下で測定した。なお、RHは湿度を示す。
【0084】
(2)水蒸気透過率測定方法
(X)のガスバリア性フィルム、(Y)の積層フィルム、及び参考例として未処理の蒸着フィルムを、Illinois社製水蒸気透過率測定装置7002を用いて、伝導度法「ISO−15106−3」に準じ、40℃90%RHの雰囲気下で測定した。
【0085】
(3)ラミネート強度測定方法
(X)のガスバリア性フィルム、(Y)の積層フィルム、及び参考例として未処理の蒸着フィルムを、塗工方向と平行に15mm幅に切断し、(株)エー・アンド・デイ製卓上型材料試験機STB−1225Lを用いて、雰囲気温度25℃、剥離速度を300mm/分に設定し、積層フィルム間を180度剥離方法で剥離した際の引っ張り強度をラミネート強度とした。ラミネート強度の単位はN/15mmとした。
【0086】
(4)耐ブロッキング性(塗膜乾燥特性)
(X)のガスバリア性フィルムを、乾燥させた直後の状態を指で触ることによる指触官能試験で比較した。粘着性が残存しない場合は○、粘着性が残存した場合は×とした。この時点で粘着性が残存した場合には乾燥後にロールに巻いた状態で取り扱えない可能性が高いことを示す。
【0087】
実施例及び比較例の結果を表4〜表12に示す。表では使用した主剤、硬化剤、溶剤の種類及び配合量を記した。これらに加えて、各種評価結果を記した。表中「−」は未測定であることを表し、配合量における数字は「部」を表し空欄は「ゼロ」を表す。
【0088】
【表4】


【0089】
【表5】
【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
【表8】

【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
【表11】

【0096】
【表12】

【0097】
表中、略語は以下の意味である。
Gly比率:Gly比率(モル%)
DC酸含有率:ジカルボン酸含有率(モル%)
測定Mn:数平均分子量(測定値)
Tg:ガラス転移温度(DSC測定値)
設計Mn :数平均分子量(設計値)
実:実施例
比:比較例
基材:基材フィルム
酸素透過率:酸素透過率 (cc/m2/day/atm@90%RH)
水蒸気透過率:水蒸気透過率 (g/m2/day)
ラミネート強度:ラミネート強度 (N/15mm) 180度剥離
硬化膜中のDC酸含有率:硬化膜中のオルト配向性芳香族ジカルボン酸比率(重量%)
Ad−cf:接着剤の凝集破壊
PE伸:LLDPEフィルム伸び
蒸着/コート:蒸着層とコート層間での剥離
「Ad−cf」および「PE伸」は、蒸着層とコート層の密着性が良好であることを示し、「蒸着/コート」は、蒸着層とコート層の密着性が良好でないことを示す。
【0098】
(参考例1〜3)
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤のガスバリア効果を明確化するため、参考例として各実施例、比較例に使用した蒸着フィルムの未処理状態(即ち本発明のコーティング前)の酸素透過率、水蒸気透過率を測定した。結果を表13に示す。
【0099】
【表13】

【0100】
以上、実施例1〜15に示された、前記多価カルボン酸成分(A1)の全量に対し、10〜70モル%のオルト配向性芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物の少なくとも1種を含有し、前記多価アルコール成分(B2)の全量に対し、50〜100モル%のグリセロールを含有するコーティング剤は、参考例のコーティング剤を塗布していない蒸着フィルムと比べ、酸素、水蒸気とも低い透過率を示しバリア機能を向上させるコーティング剤として優れた特性を示した。また、いずれの実施例においても、積層フィルムにおいて高いラミネート強度を示すとともに、優れた耐ブロッキング性(塗膜乾燥特性)を示した。
【0101】
一方、比較例1〜4では一定のバリア機能の向上は認められるが、硬化剤の化学構造に由来する硬い塗膜となったために、積層フィルムにおいてラミネート強度をほとんど示さなかった。また、同じく本発明の必須構造を持たない比較例5〜7では、ガス乾燥後に強い粘着性が残存し、ブロッキング等の問題の可能性が強く示唆された。
【要約】
多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)由来のエステル骨格を有し、且つ前記多価カルボン酸成分(A1)全量に対してオルト配向性芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物の少なくとも1種を10〜70モル%含有するポリイソシアネート化合物(A)と、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分(B1)と多価アルコール成分(B2)との重縮合体であり前記多価アルコール成分(B2)全量に対してグリセロールを50〜100モル%含有するポリエステル(B)とを含有する蒸着フィルム用コーティング剤、及びガスバリア性フィルム。