(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551879
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】検知センサ
(51)【国際特許分類】
G01V 3/08 20060101AFI20190722BHJP
H03D 3/10 20060101ALI20190722BHJP
G01R 23/12 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
G01V3/08 A
H03D3/10
G01R23/12
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-64418(P2015-64418)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-183910(P2016-183910A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寧
【審査官】
安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−094762(JP,A)
【文献】
特開平11−205116(JP,A)
【文献】
特開平04−271606(JP,A)
【文献】
特開平01−202158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00−15/00
G01R 23/12
H03D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放された2つの入力端に接続される第1のインダクタを有し、夫々の入力端で勾配を有する波形の外部信号を検知する検知回路と、
前記第1のインダクタを一次側として磁気結合する第2のインダクタを有し、当該第2のインダクタの中間タップに一端が接続される遅延回路を構成する第3のインダクタが接続されると共に、前記第2のインダクタの各両端子に各々にダイオードのアノードが接続され、当該各々のダイオードのカソードと前記第3のインダクタの他の端子とが各々インピーダンス特性を有する素子を介して接続され、前記ダイオードの他の端子から前記入力端で検出した検知信号を出力する出力回路とを備えることを特徴とする検知センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の検知センサにおいて、
前記インピーダンス特性を有する素子が、コンデンサと抵抗との並列回路を構成していることを特徴とする検知センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の検知センサにおいて、
前記検知信号を出力する各端子間にローパスフィルタとしての抵抗成分及び容量成分を接続していることを特徴とする検知センサ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の検知センサにおいて、
前記検知回路が検知した前記外部信号の歪みに応じて、前記第2のインダクタにおける中間タップの比率が決定されていることを特徴とする検知センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数変調信号を検波する検波回路を利用した検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
周波数変調(以下、FMという)信号を検波するFM検波回路として、いくつかの方式が一般的に知られている。
図5は従来技術におけるFM検波回路を示す図である。FM検波回路は、周波数の変位を電圧の変位に変換することで変調された信号を復調するものである。
図5(A)は2同調検波回路の回路図、
図5(B)はフォスターシーレ検波回路の回路図、
図5(C)は比検波回路の回路図である。各回路は古くから知られているものであり、FMラジオの受信機やFM無線機等で一般的に利用されている。
【0003】
また、上記にようなFM検波回路を利用した検知装置が特許文献1に開示されている。特許文献1に示す技術は、窓ガラス、ガラス扉等のガラス部に取付けられ、透明導電体1よりなる人体検出部と、人体検出部がその共振回路に接続され、人体検出部に人体が接近した際、その発振周波数を変化させる発振回路8と、発振回路8から出力される周波数信号を検波するFM検波回路23と、FM検波回路23から出力される信号に基づき、人体の接近の有無を判定し、人体の検知信号を出力する判定回路26と、を備えて構成されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−94762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
図5(A)に示す2同調検波回路は、2つの共振回路を用意して適正に並べる必要があり、構造が複雑化してしまう。また、
図5(B)、(C)に示すフォスターシーレ回路及び比検波回路は、一次側の入力回路と二次側の出力回路とがキャパシタを介して電気的に接続されているため、検波回路の後段側に発生する不要な高周波雑音を前段側に伝達してしまい、回路全体の性能を低下させてしまうという課題を有する。
【0006】
また、特許文献1に示す技術は、人体の接近による周波数の変調を検知するものであるが、具体的なFM検波回路の構成などは開示されておらず、上記のような課題を解決できるものではない。
【0007】
本発明は、従来にないFM検波回路を用いて周波数の変調を高品質に検知する検知センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る検知センサは、開放された2つの入力端に接続される第1のインダクタを有し、夫々の入力端で勾配を有する波形の外部信号を検知する検知回路と、前記第1のインダクタを一次側として磁気結合する第2のインダクタを有し、当該第2のインダクタの中間タップに一端が接続される遅延回路を構成する第3のインダクタが接続されると共に、前記第2のインダクタの各両端子に各々順方向にダイオードが接続され、当該各々のダイオードの他の端子と前記第3のインダクタの他の端子とが各々インピーダンス特性を有する素子を介して接続され、前記ダイオードの他の端子から前記入力端で検出した検知信号を出力する出力回路とを備えるものである。
【0009】
このように、本発明に係る検知センサにおいては、開放された2つの入力端に接続される第1のインダクタを有し、夫々の入力端で外部信号を検知する検知回路と、第1のインダクタを1次側として磁気結合する第2のインダクタを有し、当該第2のインダクタの中間タップに一端が接続される遅延回路を構成する第3のインダクタが接続されると共に、第2のインダクタの各両端子に各々順方向にダイオードが接続され、当該各々のダイオードの他の端子と第3のインダクタの他の端子とが各々インピーダンス特性を有する素子を介して接続され、ダイオードの他の端子から入力端で検出した検知信号を出力する出力回路とを備えるため、従来のFM検波回路のように一次側と二次側とを接続するキャパシタを通して共振回路により中心周波数を求めるような構成を有する必要がなく、構成を簡素化することができると共に、後段の回路からの不要な高周波の影響を防止して高品質に検知することができるという効果を奏する。
【0010】
本発明に係る検知センサは、前記インピーダンス特性を有する素子が、コンデンサと抵抗との並列回路を構成しているものである。
【0011】
このように、本発明に係る検知センサにおいては、前記インピーダンス特性を有する素子が、コンデンサと抵抗との並列回路を構成しているため、積分回路が形成されて確実に信号検知することができるという効果を奏する。
【0012】
本発明に係る検知センサは、前記検知信号を出力する各端子間にローパスフィルタとしての抵抗成分及び容量成分を接続しているものである。
【0013】
このように、本発明に係る検知センサにおいては、検知信号を出力する各端子間にローパスフィルタとしての抵抗成分及び容量成分を接続しているため、出力信号を平滑化して高品質な復調信号を得ることができるという効果を奏する。
【0014】
本発明に係る検知センサは、前記検知回路が検知した前記外部信号の歪みに応じて、前記第2のインダクタにおける中間タップの比率が決定されているものである。
【0015】
このように、本発明に係る検知センサにおいては、検知回路が検知した外部信号の歪みに応じて、第2のインダクタにおける中間タップの比率が決定されているため、実際には歪みが生じている場合が多い外部信号が補正されて高品質な検波が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係る検知センサの機能ブロック図である。
【
図2】フォスター・シーレFM検波回路の回路図である。
【
図3】第1の実施形態に係る検知センサの回路構成を示す図である。
【
図4】入力された信号と第3インダクタにより遅延された信号の信号波形図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0018】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る検知センサについて、
図1ないし
図4を用いて説明する。本実施形態に係る検知センサは、例えば人の有無を検知するような人感センサとして用いられるものであり、発振された信号の周波数変調を検波して検知対象物を検知するものである。すなわち、特定の周波数でFM信号を検波して信号を復調するものではなく、周波数が変調したことを検知することを目的とする。そのため、本実施形態においては、特にFM検波回路の構成において従来にはない技術を用いる。
【0019】
図1は、本実施形態に係る検知センサの機能ブロック図である。本実施形態に係る検知センサ1は、所定周波数の信号を発振する発振回路2と、検知対象物により変調したFM信号を検波するFM検波回路3と、検波した信号を増幅する増幅回路4とを備える。また、FM検波回路3は、FM信号を検知する検知回路100と検知した信号の復調信号を出力する出力回路200とを備える。発振回路2が発振する信号は、微分値の変化を検知できるような勾配を有する信号であり、例えばサイン波とする。発振回路2から発振された信号は検知回路100で検知され、検知対象物の有無による周波数の変調が出力回路200から出力されることで、検知対象物の有無を検知することが可能となる。
【0020】
FM検波回路としては、上記に示したような回路が従来から知られており、その一例を
図2に示す。
図2は、フォスター・シーレFM検波回路の回路図である。この方式の原理は、共振周波数を中心に誘導性、容量性の2種類の特性の違いにより検波するものである。
図2の回路図において、C2とL2が共振回路を形成しており、C
0を通して中心の周波数を求めている。しかしながら、このような方法では、L3のインダクタが大きい値のため高周波がスルーする現象が発生し、前段側の回路が後段側の回路からの不要な高周波の影響を受けやすくなる。そこで、本実施形態においては、
図3のような回路構成とすることで、後段側の回路からの不要な高周波の影響をなくし、高感度に検知対象物の有無を検知する。
【0021】
図3は、本実施形態に係る検知センサの回路構成を示す図である。
図3において、検知センサ1は、開放された2つの入力端11a,11bに接続される第1インダクタ12を有しており、夫々の入力端11a,11bで発振回路2から発振された勾配を有する波形の外部信号を検知する検知回路100を備える。
【0022】
また、第1インダクタ12を一次側として磁気結合する第2インダクタ21を有し、この第2インダクタ21の中間タップ22に一端が接続される遅延回路を構成する第3インダクタ23が接続されると共に、第2インダクタ21の各両端子21a,21bに各々順方向にダイオード24a,24bが接続され、各々のダイオード24a,24bの他の端子25a,25bと第3インダクタ23の他の端子26とが各々インピーダンス特性を有する素子27a,27b,28a,28bを介して接続され、ダイオード24aの他の端子25aから入力端11a,11bで検出した検知信号を出力する出力回路200を備える。また、検知信号を出力する各端子25a,25b間にローパスフィルタとしての容量成分29を接続している。
【0023】
図3に示す回路図から明らかなように、本実施形態に係る検知センサ1は、検知回路100と出力回路200との間で磁気結合しているだけで、
図2に示すように電気的な接続は一切ない。すなわち、後段側の回路からの不要な高周波の影響をなくすことが可能となる。また、
図2のような従来から知られているFM検波回路は、特定の周波数の信号を高品質に検波することを目的としているのに対して、本実施形態に係る検知センサ1は、検知対象物の有無、すなわち周波数の変化が検出できればよいため、広範囲の周波数帯を検知対象とすることで共振回路を構成する必要がなく、構造を簡素化することができると共に、品質を高めることができる。
【0024】
FM信号の具体的な検波方法について説明する。本実施形態に係る検知センサ1は従来から知られているFM検波回路とは原理が大きく異なり、遅延回路としての第3インダクタ23を利用する。
図4は、
図3の回路図における入力信号(1)、検波信号(2)、検波信号(3)、出力波形(4)−1、(4)−2のそれぞれの波形を示す図である。
図4(A)は、信号の位相が進む方向に変化した場合の波形の一例を示しており、
図4(B)は、信号の位相が遅れる方向に変化した場合の波形の一例を示している。
図4において、点線で示す部分が周波数が変化して位相が変わる部分である。なお、出力波形(4)−1は、キャパシタC
1,C
2を有していない場合の出力波形を示し、出力波形(4)−2は、キャパシタC
1,C
2で積分した場合の出力波形の一例を示している。
【0025】
図からわかる通り、位相が進む場合には出力波形がマイナス側に向かった変化が現れ、位相が遅れる場合には出力波形がプラス側に向かう変化が現れる。そして検知された位相の変化を積分することで、周波数偏移に相当する電圧を出力することができる。
【0026】
なお、第2インダクタ21の中間タップ22の比率は、検知回路100で検知される外部からの入力信号の歪みに応じて調整することが可能である。すなわち、例えば、発振回路2から発振されるサイン波に歪みが生じている場合であっても、中間タップ22の比率を調整することで(上記歪みの逆の歪みを生じさせることで)、歪みのないきれいなサイン波を入力信号とすることができ、高品質なセンサを実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1 検知センサ
2 発振回路
3 FM検波回路
4 増幅回路
11a,11b 入力端
12 第1インダクタ
21 第2インダクタ
21a,21b 端子
22 中間タップ
23 第3インダクタ
24a,24b ダイオード
25a,25b 端子
26 他の端子
27a,27b,28a,27b 素子
29 コンデンサ
100 検知回路
200 出力回路