【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。
なお、特に記載がない場合には、統計解析はスチューデントの両側t検定により行われた。
【0030】
[実施例1]C1qtnf3
−/
−マウスの作製
発明者らは以前に、2つのRAモデルであるHTLV−I TgマウスとIL−1Ra KOマウスのDNAマイクロアレイを用いる網羅的遺伝子発現解析に基づいて、C1qtnf3を自己免疫関連遺伝子の候補として特定した。qPCR技術を用いてRAモデルマウス(HTLV−I Tgマウス及びIL−1Ra KOマウス)の関節局所におけるC1qtnf3の発現の亢進を確認した(
図1A)。C1qtnf3の発現は、HTLV−I TgマウスIl及びIL−1Ra
−/
−マウスの他に、K/BxNマウスの関節において非常に亢進されることが報告されている(参考文献22)。C1qtnf3
−/
−マウスを作製し、CIAの発症におけるCTRP3の影響を調べた。
【0031】
C1qtnf3遺伝子を含むゲノムDNAをC57BL/6胚に由来するEGR−101ES細胞から単離した(参考文献14)。ターゲティングベクターは、loxP配列に挟み込まれたホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)1プロモーター下のネオマイシン耐性遺伝子(Ned)を含む1.7KbのDNA断片でC1qドメインをコードするC1qtnf3遺伝子のエクソン4を含む170bpのゲノム断片を置き換えることによって構築された。ターゲティングされたESクローンのネガティブ選択のためにMC1プロモーター下のジフテリア毒素(DT)A遺伝子をターゲティングベクターの3’末端にライゲーションした。そのターゲティングベクターを電気穿孔法によりES細胞に導入し、G418耐性クローンを選択した(ナカライテスク株式会社、日本)。PCRとサザンブロッティング(
図1C)により相同組換えESクローンをスクリーニングした。PCRには次のプライマーを使用した:5’−GCAGTAACAATGGCAACAGCAG−3’(配列番号3)、5’−GCTCGGTACCCATCAAGCTTAT−3(配列番号4)。また、5’プローブは次のプライマーで増幅したDNA断片を使用した:5’−TGAAGAAAGGGCTTGGGCATCTTT−3’ (配列番号5)、5’−AAGAAACCTGCTCCCAGCTCCAA−3’ (配列番号6)。 3’プローブとしては、次のプライマーで増幅したDNA断片を使用した:5’−GATATGAAGGATGTTGAAGTCGGG−3’ (配列番号7)、5’−TCTATGCAAATGCATCCTTTGAGG−3’ (配列番号8)。ターゲティングされたESクローンの核型分析の後に凝集法によりキメラマウスを作製した(参考文献15)。次のPCRプライマーを使用してC1qtnf3欠損マウスの遺伝型解析を実施した:プライマー1、5’‐GATGCAGAGCAATATCACACAG‐3’(配列番号9);プライマー2、5’‐GTTGATTCTTGCATCTCACCTG‐3’(配列番号10);プライマー3、5’‐GCTCGGTACCCATCAAGCTTAT‐3’(配列番号11)。プライマー1と2は野生型アレル(336bp)を検出するために使用され、プライマー1と3は変異体アレル(195bp)を検出するために使用された。また、C1qtnf3転写物の欠如をRT−PCRにより確認した(
図1D)。C1qtnf3
−/−マウスは稔性があり、予想されるメンデル比で産まれ、1年齢の前には明確な異常を示さなかった。
【0032】
CTRP3が軟骨形成前駆細胞と軟骨細胞の増殖をインビトロで促進することが報告されており(参考文献10、23)、CTRP3が軟骨形成に関係することが示唆されている。また、下顎頭軟骨の発生における関与も示唆されている(参考文献23)。しかしながら、C1qtnf3
−/−マウスにおいて明確な骨格異常は検出されなかった。また、C1qtnf3
−/−マウスは稔性があり、予想されるメンデル比で産まれ、明らかな骨格変形は全く無かった。アディポネクチンなどの他のCTRPファミリーメンバーも軟骨形成の調節に関与しているので(参考文献24)、CTRP3欠損の効果が他のCTRPファミリーメンバーによって補償されている可能性はある。
【0033】
[実施例2]C1qtnf3
−/−マウスにおけるコラーゲン誘導性関節炎(CIA)の発症率及び重症度
1.コラーゲン誘導性関節炎(CIA)の誘導
自己免疫性関節炎の発生におけるCTRP3の役割を評価するために、C1qtnf3
−/−マウスを用いてCIAを実施した。
完全フロイントアジュバント(CFA)で乳化した100μlの2mg/mlのII型コラーゲン(IIC)(シグマ社、米国)を用いてメスの野生型マウス又はC1qtnf3
−/−マウスに免疫した。CFAは不完全フロイントアジュバント(サーモ・サイエンティフィック社、米国)と1.65mg/mlの加熱殺菌した結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(H37Ra;Difco社、米国)から成り、0日目に尾の基部近くの3か所に皮内注射された。21日目にマウスに同量のIIC/CFAを以前の注射部位の近くの皮内にブースター注射した。
【0034】
2.コラーゲン誘導性関節炎(CIA)の発生の臨床スコアによる評価
肉眼による評価により関節炎の発生を判定した。それぞれの足における関節炎の発生を次のように等級付けした:0=変化無し;1=軽度の腫脹;2=明確な関節の腫脹;3=重度の関節の腫脹と強直性変化(個々のマウスについて最大で12ポイント)(参考文献19、20)。CIAの発症率をカイ二乗検定により評価した。
図2Aに示されているように、野生型マウスと比較してC1qtnf3
−/−マウスにおける関節炎の発生率が上昇し、C1qtnf3
−/−マウスの関節炎の臨床スコアが顕著に増加した(
図2B)。臨床スコアはマン・ホイットニーのU検定により評価した。
【0035】
3.コラーゲン誘導性関節炎(CIA)の発生の病理組織診断による評価
エーテル麻酔下でマウスを殺処理し、病理組織診断のために後肢の足首の関節を取り出し、固定し、脱灰化し、パラフィン包埋した。距骨全体の2〜3μm厚の連続切片を矢状に作製し、光学顕微鏡法による検査のためにH&Eで染色した。踵骨と足首の関節の前方と後方の滑膜組織を含んで病変を病理組織学的に評価した。各関節を0〜3の尺度で等級付けした。その等級付けでは0=正常、1=わずかな炎症細胞浸潤を有する肥厚化と滑膜表層の増殖、2=第1等級の変化と滑膜下層組織における肉芽腫病変、および3=第2等級の変化とパンヌス形成と骨破壊である。足首の関節の関節炎インデックスを各マウスの距骨、および脛骨と踵骨を含む周りの骨の等級の平均から推定した(参考文献20)。
【0036】
最初のIIC/CFA免疫後42日目における野生型マウスの足首の関節の組織に軽度の病理的変化が認められた。対照的に、C1qtnf3
−/−マウスの足首の関節の組織学的調査により、滑膜表層細胞の増殖、炎症性細胞の浸潤、およびパンヌス形成を伴う骨破壊を含む、野生型マウスと比較して重症の変化が認められた(
図2Cおよび2D)。
【0037】
CIAがC1qtnf3
−/−マウスにおいて大いに増悪化されることが示された。これらの結果より、CTRP3がCIAの発症を抑制することが示された。
【0038】
[実施例3]CTRP3のRAにおける役割の解析
1.補体系における役割
CTRP3は補体C1qドメインを有するので、補体系がCTRP3機能に関与する可能性を調査した。最初のIIC/CFA免疫後7日目におけるマウスから血漿を採取し、ELISAにより補体活性産物C3aおよびC5aのレベルを測定した。血漿中のC3aとC5aレベルを、捕捉抗体被覆プレートとC3aまたはC5aに対する検出抗体(BDファーミンジェン社、米国)を使用するサンドイッチELISAにより、メスのマウス(8〜10週齢)に由来する10mMのEDTAでキレートした血漿を使用して測定した。その結果、C1qtnf3
−/−マウスにおけるC3aとC5aのレベルはC1qtnf3
+/+マウスにおけるものと同様であることを示した(
図3Aおよび3B)。
【0039】
さらに、インビトロ補体活性化アッセイにより、CTRP3の補体活性化への影響を調べた。
プレート(Nunc社、デンマーク)を古典的経路(CP)、レクチン経路(LP)および副経路(AP)の補体活性化のアッセイのためにそれぞれOVA/抗OVA免疫複合体(OVA:シグマ社、米国、および抗OVA Ab:ミリポア社、ドイツ)、50μg/mlのマンナン類(シグマ社、米国)、または200μg/mlのLPS(シグマ社、米国)で被覆した(参考文献16、17、18)。オスのマウスから血清を得て、CP活性とLP活性のアッセイのためにはGVB
++緩衝液で希釈し、AP活性のためにはGVB/Mg
2+EGTA緩衝液で希釈した。希釈したマウス血清(10%)をプレート上に37℃で1時間保温し、冷20mM EDTA/PBSにより反応を停止させた。マウスC3に対するラットモノクローナル抗体(Abcam社、英国)によりC3bの沈着を検出した。その結果、CTRP3欠損はインビトロでは補体活性化に影響しないことを発見した(
図3C)。
【0040】
CTRPファミリーの1つであるアディポネクチンはC1qの活性化による補体古典的経路の調節(参考文献25)、および補体H因子との共同作業による副経路の調節(参考文献26)に関与することが報告されている。よって、補体系の調節におけるCTRPファミリーメンバーの関与も示唆される。しかし、C1qtnf3
−/−マウスにおいて補体系の異常は検出されなかった。このことは、CTRP3が補体系の調節に関与していないことを示唆する。また、C3aとC5aのレベル及びインビトロ補体活性化アッセイの結果は、CTRP3が補体調節因子ではないことを示している。
【0041】
2.サイトカイン産生における役割
野生型マウス又はC1qtnf3
−/−マウスへの最初のIIC/CFA免疫後42日目における関節局所でのサイトカインの発現を調査した。足首の関節におけるTNF−α、IL−1b、IL−6及びIL−10のメッセンジャーRNA発現を定法に従い半定量的PCRにより測定した。その結果、関節炎を生じた関節局所におけるTNF−α、IL−1b、IL−6及びIL−10の発現量は、野生型マウスよりもC1qtnf3
−/−マウスにおいて増加することが示された(
図3D)。
【0042】
これらのサイトカインは、滑膜細胞から放出されることが知られているので、CTRP3欠損が滑膜細胞からの炎症性サイトカイン産生に影響するか調査した。初代滑膜細胞を野生型マウス又はC1qtnf3
−/−マウスの膝頭と足首の滑膜から回収し、10%FBSと1%ペニシリン‐ストレプトマイシンを含むDMEM培地(Gibco社)中で培養した。96ウェルプレート上で1ng/mlのヒト組換えCTRP3(アディポバイオサイエンス社、米国)が存在しない、または存在する状態で1×10
4個の細胞をIL−1α(0、1、5および10pg/ml)で24時間刺激した。次に、24時間後の培養上清中のIL−6レベルをマウスIL−6 ELISA MAX(商標)Standard(バイオレジェンド社、米国)を用いて測定した。
【0043】
その結果、C1qtnf3
−/−マウスの滑膜細胞に由来するIL−6は野生型マウスのものと同様であり、外来性のCTRP3は滑膜細胞からのIL−6の放出を抑制しないことが示された(
図3E)。
【0044】
これらの観察結果より、滑膜細胞ではなく、関節に浸潤した免疫細胞がC1qtnf3
−/−マウスにおける炎症の抑制の原因であることが示唆される。
CTRP3がヒト単球における炎症性サイトカインの放出を抑制することが報告されている(参考文献12)。しかし、CTRP3は関節炎の関節の滑膜細胞のサイトカイン産生を抑制しなかった。
【0045】
3.IICに対する免疫応答における役割
滑膜表層と関節周囲領域へのT細胞とB細胞の浸潤はRA患者ならびにRAモデルにおいて共通して観察される。そこで、最初のIIC/CFA免疫後42日目の野生型マウス又はC1qtnf3
−/−マウスの所属リンパ節から採取したリンパ節細胞の細胞組成をフローサイトメトリー解析で調べた。定法に従い、細胞をパシフィックブルー複合体化モノクローナル抗体、FITC複合体化モノクローナル抗体、およびAPC複合体化モノクローナル抗体(mAb)で染色した(参考文献21)。マウスCD3とB220に対するハムスターmAb(145−2C11)またはラットmAb(RA3−6B2)をバイオレジェンド社(米国)から、CD11cに対するハムスターmAb(HL3)をBDファーミンジェン社(米国)から購入し、標準的な技術に従って細胞を染色し、FACS Canto IIサイトメーターとCellQuestソフトウェア(ベクトンディッキンソン社、米国)かFlowJoソフトウェア(ツリー・スター社、米国)により分析した。
【0046】
最初のIIC/CFA免疫後42日目において、C1qtnf3
−/−マウスのリンパ節(LN)では野生型マウスのリンパ節よりもT細胞及びB細胞が増加する。しかし、その細胞集団はC1qtnf3
−/−マウスと野生型マウスの間で同等であることを見いだした(
図4−1Aおよび
図4−1B)。
【0047】
続いて、IIC特異的リンパ節(LN)細胞の増殖応答について調べた。
IIC免疫後7日目の野生型マウス又はC1qtnf3
−/−マウスの関節炎発症部位の所属リンパ節からLN細胞を回収した。100または200μg/mlの変性IICが存在しない、または存在する状態でLN細胞を72時間培養し、続いて[
3H]チミジン(0.25μCi/ml)(アマーシャム社、英国)を6時間取り込ませた。次に、細胞をマイクロ96セル・ハーベスター(スカトロン社、ノルウェー)で回収し、放射活性をマイクロ・ベータ(ファルマシア・バイオテック社、米国)で測定した。72時間後の増殖アッセイの培養上清中のIFN‐γレベルをマウスIFN−ガンマ DuoSet(R&Dシステムズ社、米国)で測定した。
【0048】
その結果、復帰T細胞増殖応答はC1qtnf3
−/−マウスと野生型マウスの間で同等であることを見い出した(
図4−1C)。IIC再刺激後のIFN−γ産生もC1qtnf3
−/−LN細胞培養物と野生型LN細胞培養物の間で同等であった(
図4−1D)。これらの結果より、C1qtnf3
−/−マウスにおけるT細胞プライミングは正常であることが示唆される。
【0049】
次に、C1qtnf3
−/−マウスにおけるIIC特異的IgGの産生を調べた。最初のIIC/CFA免疫後42日目に血清を採取し、IIC特異的IgGレベルをELISA法により測定した。ELISA法は、20μg/mlのIICで被覆したプレートとアルカリホスファターゼ複合体化ポリクローナルウサギ抗マウスIgG抗体(Zymed社、米国)を使用して、IIC/CFA免疫後42日目のマウスに由来する血清におけるIIC特異的IgGレベルを測定した。
【0050】
その結果、C1qtnf3
−/−マウスの血清中のIIC特異的IgGレベルは野生型マウスのものよりも有意に高いことが示された(
図4−2E)。
【0051】
次に、B細胞増殖に対するCTRP3の効果をインビトロで調査した。脾臓B細胞を抗マウスB220ミクロビーズにより、製造業者(ミルテニーバイオテク社、ドイツ)の指示に従って精製した。B220
+細胞を抗マウスIgM F(ab)’
2断片(0、1、5および10μg/ml)(ジャクソン・イムノリサーチ社、米国)と共に72時間培養し、続いて[
3H]チミジン(0.25μCi/ml)(アマーシャム社、英国)を6時間取り込ませた。次に、回収した細胞における放射活性を測定した。
【0052】
C1qtnf3
−/−マウスの血清中のIIC特異的IgGレベルは野生型マウスのものよりも有意に高かった。IICに対する抗体産生がCIAの誘導後にC1qtnf3
−/−マウスにおいて顕著に増大することが示された。しかし、抗IgMにより誘導されるB細胞増殖はC1qtnf3
−/−B細胞と野生型B細胞の間で同等であり、CTRP3はインビトロではB細胞増殖を抑制しなかった(
図4−F)。
【0053】
IICに対する抗体産生は関節炎の発生に重要であるため、C1qtnf3の欠損はC1qtnf3
−/−マウスにおけるCIA発症の原因であることが示唆される。しかし、B細胞増殖応答は抗IgMによる刺激後に正常であったので、B細胞に固有の機能も正常であった。また、C1qtnf3
−/−マウスのT細胞におけるIICに対するリコール増殖応答には全く異常が検出されなかった。
【0054】
さらに、C1qtnf3が好中球において発現するので好中球活性化に対するCTRP3の効果を調べた(
図4−2G)。骨髄に由来する好中球をC5aで刺激し、培養上清におけるIL−1βレベルをELISAにより測定した。好中球を抗マウスLy−6Gミクロビーズ(ミルテニーバイオテク社、ドイツ)により骨髄から精製した。好中球をC5a(0、0.1および1μg/ml)(R&Dシステムズ社、米国)と共に1時間培養した。次に、上清中のIL−1βレベルをマウスIL−1β ELISA MAX(商標)Standard(バイオレジェンド社、米国)により測定した。
【0055】
その結果、C1qtnf3
−/−好中球のIL−1β産生は野生型マウスのものと類似しており、CTRP3はインビトロでは好中球からのIL−1βの放出を抑制しないことが示された(
図4−2G)。補体成分C5aによる好中球活性化後のサイトカイン産生は正常であり、CTRP3産生細胞の1つである好中球はC1qtnf3
−/−マウスの関節における炎症の増加の原因ではないと考えられた。
【0056】
以上の観察結果より、CTRP3は抗体産生を調節することにより自己免疫性関節炎の発生において重要な役割を果たすことが示唆される。C1qtnf3
−/−マウスに見られるT細胞とB細胞の過剰増殖がC1qtnf3
−/−マウスにおける抗体産生の上昇と関節炎の悪化の原因であると考えられる。
【0057】
[実施例4]CTRP3の多発性硬化症における役割
関節リウマチと同様に多発性硬化症も自己免疫疾患の1つであるため、多発性硬化症の誘導モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis;EAE)を誘導したマウスを用いて、多発性硬化症におけるCTRP3の影響を評価した。
完全フロイントアジュバント(CFA)で乳化した、ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白質(MOG)の一部分であるMOG
35−55 ペプチド (MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK) (配列番号12)(Scrun Japan社製)600μgを用いてメスの野生型マウス又はC1qtnf3
−/−マウスに免疫した。CFAは不完全フロイントアジュバント(サーモ・サイエンティフィック社、米国)と5mg/mlの加熱殺菌した結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(H37Ra;Difco社、米国)から成り、0日目に四肢近くの4か所に皮内注射された。21日目にマウスに同量のエマルジョンを以前の注射部位の近くの皮内にブースター注射した。
【0058】
肉眼による評価によりEAEの発症を判定した。重症度は以下の通りに等級付けした:0=変化無し;0.5=尾の軽度の麻痺;1=尾の麻痺;2=後ろ足の軽度の麻痺;2.5=後ろ足(片足)の麻痺;3=両後ろ足の麻痺;3.5=両後ろ足の麻痺および前足の握力の低下;4=全身の麻痺。等級が0.5以上のときにEAEを発症したと判断した。EAEの発症率をカイ二乗検定により評価した(Nature protocols. 2006;1(4):1810-9)。
図5Aに示されているように、野生型マウスと比較してC1qtnf3
−/−マウスにおけるEAEの発症率が上昇し、C1qtnf3
−/−マウスの重症度が顕著に増加した(
図5B)。臨床スコアはマン・ホイットニーのU検定により評価した。
これらの結果から、EAE発症においてCTRP3は抑制的に機能していることが示された。
【0059】
[実施例5]CTRP3の関節炎に対する効果
DBA/1Jマウス(メス、6〜8週齢、n=6)を、フロインド完全アジュバント(ディフコ社、USA)と共にエマルジョンとした、2mg/mLのニワトリII型コラーゲン(シグマ社、USA)(IIC/CFA)を100μl用いて、0日目に尾の基部近くの3か所に皮内注射して免疫した。21日目に、マウスに同量のIIC/CFAを以前の注射部位の近くの皮内にブースター注射した。28日目からそれぞれのマウスに、左膝関節の関節腔に30μLの組換えヒトCTRP3(300ng/日、Avisceraバイオサイエンス社、USA)(配列番号1)を、右膝関節の関節腔に対照としてPBS、を1日1回注射した。
【0060】
DBA/1Jマウスの関節炎の進行を、以下の基準に従って評価した。
・関節炎の評価基準(臨床スコア)
0:変化なし。
1:紅斑及び軽微な腫脹が足根関節に認められた。
2:紅斑及び軽微な腫脹が足根関節から足指に広がっていた。
3:紅斑及び中等度の腫脹が中足骨関節から広がっていた。
4:紅斑及び重度の腫脹が足首、足及び足指に広がっていたか、又は、四肢に強直があった。
【0061】
関節炎の評価スコアが1以上であったときに関節炎が発症したと判定した。関節炎の発生率を
図6Aに、関節炎の評価スコアの平均値及び標準誤差を
図6Bに示した。関節炎の発生率はカイ二乗検定、臨床スコアはマン・ホイットニーのU検定を用いて統計解析を行った。CTRP3の投与によって、関節炎の発生率及び臨床スコアが減少した。
CTRP3が自己免疫性関節炎の発生を軽減することが明確に示された。CTRP3がRAなどの自己免疫疾患の治療のための医薬として有用であることを示している。
【0062】
実施例5以外の実験では、8〜10週齢の同性のC57BL/6バックグランドマウスを使用した。マウスは、東京大学医科学研究所システム疾患モデル研究センターと東京理科大学生命医科学研究所の実験動物施設内で特定病原体除去条件の下に飼育された。全ての実験は動物実験委員会により承認され、動物実験倫理指針と遺伝子操作実験安全指針に従って実施された。
【0063】
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【0064】
2013年11月15日に出願された米国仮特許出願61/904,540の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
本発明に係る例示的実施形態についての以上の記載は例示および説明の目的でされたものであり、網羅的であることあるいは発明を開示されている形態そのものに限定することを意図するものではない。明らかなことではあるが、多くの改変あるいは変更が当業者には自明である。上記実施形態は発明の原理及び実用的応用を最もうまく説明し、想定される特定の用途に適するような種々の実施形態や種々の改変と共に他の当業者が発明を理解できるようにするために選択され、記載された。本発明に係る範囲の範囲は以下の請求項およびその均等物によって規定されることが意図されている。