【実施例】
【0044】
(実施例1)
<オキシ水酸化ニッケル粒子の合成>
1.0M硫酸ニッケル(II)六水和物(NiSO
4・6H
2O)水溶液25mlと、0.25M過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)水溶液18.25mlを撹拌しながら混合し、混合液を得た。
【0045】
28質量%水酸化アンモニウム水溶液6.25mlと、混合液を撹拌しながら混合し、室温で約1時間反応させると、黒色のオキシ水酸化ニッケル粒子の沈澱が生成した。次に、8000rpmで遠心分離した後、三回水洗し、オキシ水酸化ニッケル粒子を回収した。
【0046】
オキシ水酸化ニッケル粒子の合成化学反応式を以下に示す。
【0047】
NH
3+H
2O→NH
4++OH
−・・・(1)
Ni
2++OH
−→x[α−Ni(OH)
2]+y[β−Ni(OH)
2](x+y=1)・・・(2)
x[α−Ni(OH)
2]+y[β−Ni(OH)
2]+1/2S
2O
82→γ−NiOOH+SO
42−+H
+・・・(3)
<ナノパラジウム粒子の合成>
50mM塩化パラジウム(II)(PdCl
2)水溶液6mlと、ポリビニルピロリドン(PVP)19.8mgと、1.5M水酸化ナトリウム(NaOH)エチレングリコール溶液20mlを撹拌しながら混合し、70℃で6時間反応させ、ナノパラジウム粒子の分散液を得た。このとき、反応前の液は薄い黄色を呈しているが、ナノパラジウム粒子が生成すると、液は濃い茶色に変化した。
【0048】
粒径分布分析装置Photal ELSZ−1000(大塚電子社製)を用いて、ナノパラジウム粒子の個数平均粒径の測定したところ、28.9であった。
【0049】
ナノパラジウム粒子の合成化学反応式を以下に示す。
【0050】
2(CH
2OH)
2→2CH
3CHO+2H
2O・・・(4)
2CH
3CHO+Pd
2++3OH
−+H
2O→CH
3COO
−+2H
2O+Pd・・・(5)
<複合粒子の作製>
オキシ水酸化ニッケル粒子500mgと、水50mlと、ナノパラジウム粒子の分散液2mlを3時間撹拌しながら混合した。次に、8000rpmで遠心分離した後、三回水洗し、オキシ水酸化ニッケル粒子の表面にナノパラジウム粒子が付着している複合粒子を回収した。
【0051】
<複合粒子の特性>
FT−IR装置Frontier フーリエ変換近赤外/中赤外/遠赤外分光分析装置(パーキンエルマージャパン社製)を用いて、複合粒子のFT−IRスペクトルを測定した。
【0052】
図4に、複合粒子のFT−IRスペクトルを示す。
【0053】
図4から、オキシ水酸化ニッケルに起因する吸収ピーク(波数=561cm
−1)が観測されることがわかる。
【0054】
X線光電子分光装置Theta Probe Angle−Resolved Spectrometer system(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて、複合粒子のX線光電子分光スペクトルを測定した。
【0055】
図5に、複合粒子のNi
2p周辺のX線光電子分光スペクトルを示す。
【0056】
図5から、オキシ水酸化ニッケルに起因するピーク(結合エネルギー=860.0eV)が顕著に観測されることがわかる。
【0057】
図4及び
図5から、複合粒子は、Niに対するPdのモル比が0.025であった。
【0058】
図6に、複合粒子のPd
3d周辺のX線光電子分光スペクトルを示す。
【0059】
図6から、Pd
0に起因するピーク(結合エネルギー=342.1eV,347.2eV)が観測されることがわかる。
【0060】
X線回折装置X’Pert−MRD(Philip社製)を用いて、複合粒子のX線回折スペクトルを測定した。
【0061】
図7に、複合粒子のX線回折スペクトルを示す。
【0062】
図7から、オキシ水酸化ニッケルに起因するピーク(2θ=11.2°,2.6°,33.2°,52.0°)、パラジウムに起因するピーク(2θ=40.0°)が観測されることがわかる。
【0063】
<複合粒子の電子顕微鏡写真>
走査型電子顕微鏡S−4300(日立製作所社製)を用いて、複合粒子の走査型電子顕微鏡写真を撮影した。
【0064】
図8に、複合粒子の走査型電子顕微鏡写真(2000倍)を示す。
【0065】
図8から、粒径が約2〜3μmのオキシ水酸化ニッケル粒子が凝集していることがわかる。
【0066】
図9に、複合粒子の走査型電子顕微鏡写真(10000倍)を示す。
【0067】
図9から、個々のオキシ水酸化ニッケル粒子は、表面が不規則なシートフレーク状になっていることがわかる。
【0068】
<水素検知部材の作製>
<複合粒子の作製>において、複合粒子を回収せずに、水で希釈し、10質量%の複合粒子の水分散液を得た。
【0069】
複合粒子の水分散液150μlを3cm×3cmのシリカガラス基材上にドロップコートし、膜厚が50μmの水素検知膜を形成し、水素検知部材を得た。
【0070】
<水素検知部材による水素検知>
水素の含有量が4%である雰囲気(以下、水素雰囲気という)に曝される前後の水素検知部材の光の透過率を、
図10に示す光学装置を用いて測定した。光学装置は、光源4と分光器5で構成され、光源4と分光器5の間に、水素検知膜2が形成されている基材3、即ち、水素検知部材を配置して、光の透過率を測定する。
【0071】
図11に、水素検知部材の光の透過率の測定結果を示す。
【0072】
図12に、水素検知部材の水素を検知する前後の写真を示す。
【0073】
水素検知膜は、水素雰囲気に曝す前の状態では、黒色(
図12(b)参照)であるが、水素雰囲気に曝すと、白色(
図12(a)参照)に変化した。このとき、水素検知膜は、水素雰囲気に曝されてから白色に変化するのに要した時間、即ち、目視により水素を検知する時間が3分であった。また、水素検知膜は、水素雰囲気に曝すのを止めても、黒色には戻らず、白色を維持した。一方、水素検知膜は、オゾン発生装置SoecV350(マルコー社製)を用いて、オゾン出力70mg/h、風量5L/minの条件でオゾン処理すると、5秒で黒色に戻った。このため、水素検知部材を再利用することができる。
【0074】
水素検知膜と水素の化学反応式を以下に示す。
【0075】
H
2→2H
++2e
−・・・(6)
NiOOH+H
++e
−→Ni(OH)
2・・・(7)
水素と反応した後の水素検知膜とオゾンの化学反応式を以下に示す。
【0076】
Ni(OH)
2+O
3→NiOOH+O
3−+H
+・・・(8)
(比較例1)
<複合粒子及び水素検知部材の作製>
ナノパラジウム粒子の分散液の添加量を5mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、複合粒子及び水素検知部材を作製した。複合粒子は、Niに対するPdのモル比が0.08であった。
【0077】
<水素検知部材による水素検知>
水素検知膜は、ナノパラジウム粒子の量が多すぎるため、水素雰囲気に曝すと、水素分子から解離した水素原子と、水素雰囲気に含まれる酸素との燃焼反応が発生した。このとき、水素検知膜は、温度が激しく上昇したが、色が変化せず、黒色のままであった。
【0078】
(比較例2)
<複合粒子及び水素検知部材の作製>
ナノパラジウム粒子の分散液の添加量を0.1mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、複合粒子及び水素検知部材を作製した。複合粒子は、Niに対するPdのモル比が0.0015であった。
【0079】
<水素検知部材による水素検知>
水素検知膜は、ナノパラジウム粒子の量が少なすぎるため、水素雰囲気に曝すと、水素分子から解離した水素原子の量は少ない。このとき、水素検知膜は、水素雰囲気に曝してから60分後でも、色が変化せず、黒色のままであった。
【0080】
(比較例3)
<複合粒子及び水素検知部材の作製>
ナノパラジウム粒子の分散液の添加量を3.5mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、複合粒子及び水素検知部材を作製した。複合粒子は、Niに対するPdのモル比が0.05であった。
【0081】
<水素検知部材による水素検知>
水素検知膜は、ナノパラジウム粒子の量が多すぎるため、水素雰囲気に曝すと、水素分子から解離した水素原子と、水素雰囲気に含まれる酸素との燃焼反応が発生した。このとき、水素検知膜は、温度がやや上昇したが、色が変化せず、黒色のままであった。
【0082】
(実施例2)
<複合粒子及び水素検知部材の作製>
ナノパラジウム粒子の分散液の添加量を0.5mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、複合粒子及び水素検知部材を作製した。複合粒子は、Niに対するPdのモル比が0.01であった。
【0083】
<水素検知部材による水素検知>
水素検知膜は、水素を含む雰囲気に曝す前の状態では、黒色であるが、水素雰囲気に曝すと、白色に変化した。このとき、水素検知膜は、目視により水素を検知する時間が15分であった。また、水素検知膜は、水素雰囲気に曝すのを止めても、黒色には戻らず、白色を維持した。一方、水素検知膜は、オゾン発生装置SoecV350(マルコー社製)を用いて、オゾン出力70mg/h、風量5L/minの条件でオゾン処理すると、5秒で黒色に戻った。このため、水素検知膜を再利用することができる。