特許第6552097号(P6552097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552097飲食品の苦味改善剤、飲食品の苦味改善方法、及び飲食用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552097
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】飲食品の苦味改善剤、飲食品の苦味改善方法、及び飲食用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20190722BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20190722BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20190722BHJP
【FI】
   A23L27/00 C
   A23L27/10 C
   A23L33/10
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-157386(P2015-157386)
(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公開番号】特開2017-35011(P2017-35011A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】栗田 郁子
(72)【発明者】
【氏名】柳江 高次
(72)【発明者】
【氏名】梅原 将洋
(72)【発明者】
【氏名】齋 政彦
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−212700(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0132440(US,A1)
【文献】 特開2014−224050(JP,A)
【文献】 特開2014−224049(JP,A)
【文献】 Mitel GNPD Tablet Supplement, 掲載時期:2014年8月
【文献】 食品と科学, 2006, vol.48, no.7, p.95
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
CAplus/REGISTRY/BIOSIS/FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピセアタンノールを有効成分とすることを特徴とする飲食品の苦味改善剤。
【請求項2】
前記飲食品が、カフェイン含有飲食品、ビタミンB1含有飲食品、カカオフラバノール含有飲食品、又は酵素処理ルチン含有飲食品である請求項1記載の苦味改善剤。
【請求項3】
前記飲食品がカフェイン含有飲食品であって、そのカフェイン含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.00167〜1.67質量部となるように使用される、請求項2記載の苦味改善剤。
【請求項4】
前記飲食品がビタミンB1含有飲食品であって、そのビタミンB1含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.001〜0.75質量部となるようにして使用される、請求項2記載の苦味改善剤。
【請求項5】
前記飲食品がカカオフラバノール含有飲食品であって、そのカカオフラバノール含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.0005〜0.2質量部となるようにして使用される、請求項2記載の苦味改善剤。
【請求項6】
前記飲食品が酵素処理ルチン含有飲食品であって、その酵素処理ルチン含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.003〜0.3質量部となるようにして使用される、請求項2記載の苦味改善剤。
【請求項7】
苦味を有する飲食品に、該飲食品の苦味を改善するのに有効な量でピセアタンノールを添加することを特徴とする飲食品の苦味改善方法。
【請求項8】
前記飲食品が、カフェイン含有飲食品、ビタミンB1含有飲食品、カカオフラバノール含有飲食品、又は酵素処理ルチン含有飲食品である請求項7記載の苦味改善方法。
【請求項9】
前記飲食品がカフェイン含有飲食品であって、そのカフェイン含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.00167〜1.67質量部となるようにピセアタンノールを添加する請求項8記載の苦味改善方法。
【請求項10】
前記飲食品がビタミンB1含有飲食品であって、そのビタミンB1含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.001〜0.75質量部となるようにピセアタンノールを添加する請求項8記載の苦味改善方法。
【請求項11】
前記飲食品がカカオフラバノール含有飲食品であって、そのカカオフラバノール含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.0005〜0.2質量部となるようにピセアタンノールを添加する請求項8記載の苦味改善方法。
【請求項12】
前記飲食品が酵素処理ルチン含有飲食品であって、その酵素処理ルチン含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.003〜0.3質量部となるようにピセアタンノールを添加する請求項8記載の苦味改善方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カフェイン、ビタミンB類、カカオフラバノール、酵素処理ルチンなど、苦味を呈する成分を含有する飲食品の苦味を改善する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーやお茶などに含まれているカフェインには、中枢神経を興奮させて眠気を覚ましたり、疲労感を解消したり、脂肪燃焼を助けたりする等の作用効果が知られている。カフェインは、コーヒーやお茶などの飲食品から摂取することができ、あるいは所定量のカフェインを含有するように調製された加工食品、健康食品、健康ドリンク、サプリメントなども開発されている。
【0003】
ビタミンB類は、酵素の働きを助ける補酵素であり、生体の生理機能や物質代謝に必要である。例えば、ビタミンB1の欠乏は筋肉痛、むくみ、脚気などを引き起こし、ビタミンB2の欠乏は口内炎、目の疲れ、角膜炎などを引き起こし、ビタミンB6の欠乏は皮膚炎、口角炎、貧血などを引き起こし、ビタミンB12の欠乏は貧血などを引き起こし、ナイアシンの欠乏は皮膚炎などを引き起こす。ビタミンB類は、日々の食事から摂取することができ、あるいは所定量のビタミンB類を含有するように調製された加工食品、健康食品、健康ドリンク、サプリメント、医療食なども開発されている。
【0004】
ココアやビターチョコレートなどに含まれているカカオフラバノールには、抗酸化、抗菌、血圧上昇抑制、血中コレステロール調整、排便調整、創傷治癒促進、血管硬化抑制等の作用効果が知られている。カカオフラバノールは、ココアやビターチョコレートなどの飲食品から摂取することができ、あるいは所定量のカカオフラバノールを含有するように調製された加工食品、健康食品、健康ドリンク、サプリメント、医療食なども開発されている。
【0005】
そばなどに含まれているルチンには、抗酸化、抗炎症、血流改善、抗アレルギー等の作用効果が知られている。生体への吸収率を高めた酵素処理ルチンなども開発され、その酵素処理ルチンを所定量で含有するように調製された加工食品、健康食品、健康ドリンク、サプリメントなども開発されている。
【0006】
ところで、カフェイン、ビタミンB類、カカオフラバノール、酵素処理ルチンなどは、いずれも苦味を呈する成分であり、これらを含有する飲食品の苦味を改善する技術が望まれている。
【0007】
例えば、下記特許文献1には、柑橘類に含まれる苦み物質ナリンジンが、カフェイン特有の後味に残る嫌な苦みをマスキングすることが記載されている。また下記特許文献2には、発酵セルロースが、ビタミンB1特有の風味を抑制することが記載されている。また下記特許文献3には、カカオ由来原料を含むチョコレート等飲食品にGABAを添加することによって、苦味や酸味などの好ましくない味質を改善し、嗜好性を高めることができることが記載されている。また下記特許文献4には、水抽出したコンドロイチン硫酸によって酵素処理ルチンの苦味を効果的にマスキングできることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−149967号公報
【特許文献2】特開2011−250716号公報
【特許文献3】特開2007−6853号公報
【特許文献4】国際公開WO2010/113315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、上記引用文献1〜4のように、苦味を呈する各種の成分に対して個々に有効な苦味の抑制のための技術は知られていたが、利用するものの利便性のためには、苦味を呈する様々な成分に対してより包括的に有効な苦味の抑制のための技術が望まれていた。
【0010】
上記従来技術にかんがみ、本発明の目的は、カフェイン、ビタミンB類、カカオフラバノール、酵素処理ルチンなど、苦味を呈する様々な成分に対して有効で、それらを含有する飲食品の苦味を抑制して、風味の良い飲食品を提供することができる、飲食品の苦味改善剤、飲食品の苦味改善方法、及び飲食用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が鋭意研究したところ、ピセアタンノールに、カフェイン、ビタミンB1、カカオフラバノール、酵素処理ルチンなどによる苦味を抑制する作用効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の飲食品の苦味改善剤は、ピセアタンノールを有効成分とすることを特徴とする。
【0013】
本発明の飲食品の苦味改善剤においては、前記飲食品が、カフェイン含有飲食品、ビタミンB1含有飲食品、カカオフラバノール含有飲食品、又は酵素処理ルチン含有飲食品であることが好ましい。
【0014】
また、前記飲食品がカフェイン含有飲食品であって、そのカフェイン含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.00167〜1.67質量部となるように使用されることが好ましい。
【0015】
また、前記飲食品がビタミンB1含有飲食品であって、そのビタミンB1含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.001〜0.75質量部となるようにして使用されることが好ましい。
【0016】
また、前記飲食品がカカオフラバノール含有飲食品であって、そのカカオフラバノール含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.0005〜0.2質量部となるようにして使用されることが好ましい。
【0017】
また、前記飲食品が酵素処理ルチン含有飲食品であって、その酵素処理ルチン含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.003〜0.3質量部となるようにして使用されることが好ましい。
【0018】
また、本発明の飲食品の苦味改善方法は、苦味を有する飲食品に、該飲食品の苦味を改善するのに有効な量でピセアタンノールを添加することを特徴とする。
【0019】
本発明の飲食品の苦味改善方法においては、前記飲食品が、カフェイン含有飲食品、ビタミンB1含有飲食品、カカオフラバノール含有飲食品、又は酵素処理ルチン含有飲食品であることが好ましい。
【0020】
また、前記飲食品がカフェイン含有飲食品であって、そのカフェイン含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.00167〜1.67質量部となるようにピセアタンノールを添加することが好ましい。
【0021】
また、前記飲食品がビタミンB1含有飲食品であって、そのビタミンB1含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.001〜0.75質量部となるようにピセアタンノールを添加することが好ましい。
【0022】
また、前記飲食品がカカオフラバノール含有飲食品であって、そのカカオフラバノール含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.0005〜0.2質量部となるようにピセアタンノールを添加することが好ましい。
【0023】
また、前記飲食品が酵素処理ルチン含有飲食品であって、その酵素処理ルチン含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.003〜0.3質量部となるようにピセアタンノールを添加することが好ましい。
【0024】
更に、本発明の飲食用組成物は、カフェイン、ビタミンB1、カカオフラバノール、及び酵素処理ルチンからなる群から選ばれた1種又は2種以上と、ピセアタンノールとを含有することを特徴とする。
【0025】
本発明の飲食用組成物は、カフェインを含有し、そのカフェイン含量1質量部に対してピセアタンノールを0.00167〜1.67質量部含有することが好ましい。
【0026】
また、ビタミンB1を含有し、そのビタミンB1含量1質量部に対してピセアタンノールを0.001〜0.75質量部含有することが好ましい。
【0027】
また、カカオフラバノールを含有し、そのカカオフラバノール含量1質量部に対してピセアタンノールを0.0005〜0.2質量部含有することが好ましい。
【0028】
更に、酵素処理ルチンを含有し、その酵素処理ルチン含量1質量部に対してピセアタンノールを0.003〜0.3質量部含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、カフェイン、ビタミンB1、カカオフラバノール、酵素処理ルチンなど、苦味を呈する様々な成分について、ピセアタンノールによりそれらの苦味を抑制することができるので、それらを含有する飲食品であっても、風味の良い飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、飲食品に、その苦味を改善するためのピセアタンノールを含有せしめるものである。
【0031】
本発明が適用される飲食品は、特にその種類等に制限はなく、例えば、液体飲料、粉末飲料、ゲル状飲食品、粉末菓子、顆粒状菓子、タブレット菓子、キャンデー菓子、クッキー菓子、ビスケット菓子、ケーキ菓子、チョコレート菓子等が挙げられる。ゲル状飲食品としては、ゼリー、ゼリー飲料、ババロア、ムース、プリン、グミキャンディーなどが挙げられる。
【0032】
また、本発明は、上記飲食品の調製や加工等の際に、その原料の一部として添加するものとして用いられる食品添加材等に適用してもよい。
【0033】
ピセアタンノールは、ポリフェノールの一種であって、下式(1)で示される構造を有している。
【0034】
【化1】
【0035】
なお、式(1)は、2個のフェニル基がトランス型のアルケン基で連結した構造の、トランス型ピセアタンノールを表しているが、本発明において、ピセアタンノールは、式(1)において、2個のフェニル基がシス型のアルケン基で連結した構造の、シス型ピセアタンノールをも含む概念である。
【0036】
ピセアタンノールとしては、化学合成法や発酵法で調製されたものを用いてもよく、植物等の天然物由来のものであってもよい。例えば、パッションフルーツの種子や、ブドウやブルーベリーの皮には、ピセアタンノールが豊富に含まれているので、そのような植物由来の抽出物を利用することもできる。
【0037】
以下には、一例として、ピセアタンノールを含有するパッションフルーツの種子由来の抽出物について説明する。
【0038】
パッションフルーツとしては、パッシフローラ(Passiflora)属に属し、その実が食用である、例えば、Passiflora edulis、Passiflora alata、Passiflora amethystine、Passiflora antioquiensis、Passiflora biflora、Passiflora buonapartea、Passiflora capsularis、Passiflora cearensis、Passiflora coccinea、Passiflora cochinchinesis、Passiflora filamentosa、Passiflora herbertiana、Passiflora laurifolia、Passiflora ligularis、Passiflora lunata、Passiflora lutea、Passiflora maliformis、Passiflora mixta、Passiflora mucronata、Passiflora mollissima、Passiflora nibiba、Passiflora organensis、Passiflora pallida、Passiflora parahypensis、Passiflora pedeta、Passiflora pinnatistipula、Passiflora popenovii、Passiflora quadrangularis、Passiflora riparia、Passiflora rubra、Passiflora serrate、Passiflora tiliaefolia、Passiflora tripartite、Passiflora villosa、Passiflora warmingiiなどが挙げられる。このうちPassiflora edulisは、別名クダモノトケイソウとよばれ、その実は甘酸っぱく果物として実をそのまま食したり、その果汁をジュースにして飲んだり、ゼリー、ケーキ等の飲食品に配合して、風味付けに用いられたりされている。パッションフルーツの種子は硬いが小粒で、ジュース等にする場合には果実から取り除かれることもあるが、ジャムやピューレ等では種を含む果肉がそのまま用いられている。このような食経験からも裏付けられるように、パッションフルーツの種子は、安全性には問題がないものである。
【0039】
ピセアタンノールを抽出する方法としては、国際公開WO2010/113315号、特開2009−102298号、特開2009−102299号等に記載された方法を採用することができる。例えば、種子をそのまま、あるいは乾燥、細断、破砕、磨砕等の処理を施したうえで、種々の抽出溶媒を用いて抽出する方法が挙げられる。抽出温度は適宜設定することができる。また、ピセアタンノールの抽出効率をよくするため、種子に対して、酸分解、アルカリ分解等の化学的処理や、酵素分解等の生化学的処理を施してから、抽出を行ってもよい。
【0040】
抽出溶媒としては、極性溶媒が好ましく、例えば、水(熱水)、エタノール等の炭素数5以下の低級アルコール、酢酸エチル等の炭素数5以下の低級アルキルエステル、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、クロロアセトン等のケトン系溶媒、グリセリン等のトリオール化合物、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のジオール化合物等が挙げられる。これらの一種又は二種以上の混合溶媒を用いてもよく、これらの溶媒を種子に順次接触させて抽出を行ってもよい。これらの中でも、含水エタノール等の含水アルコール系溶媒、含水アセトン等の含水ケトン系溶媒、又は含水1,3−ブチレングリコールは、ピセアタンノールを効率よく抽出することができるので好ましい。
【0041】
ピセアタンノールの抽出処理は、種子を複数の抽出溶媒で段階的に抽出を行ってもよい。これにより、ピセアタンノールを高濃度で含有する抽出物を収率よく製造できる。
【0042】
ピセアタンノールの抽出処理は、超音波振動又は振とうによって抽出溶媒を攪拌しながら行うことが好ましい。これによれば、ピセアタンノールの抽出効率を高めることができる。
【0043】
上記のような抽出溶媒で抽出して得られるパッションフルーツの種子からの抽出物中には、抽出の条件によっても異なるが、通常乾燥分中0.5μg〜30mg/100mg、より典型的には3μg〜10mg/100mgの濃度でピセアタンノールが含まれる。ここで、本明細書において「乾燥分中」とは、現物から一般成分測定法によって測定される水分量を除いた乾物に換算した場合の濃度を意味する。
【0044】
上記のようにして得られた抽出物を、そのまま、濃縮して、又は溶媒の一部を除去して、液体のまま用いてもよく、そのまま又はデキストリン等の賦形剤を添加したうえ、凍結乾燥又は噴霧乾燥により粉末化して用いることもできる。抽出物に含まれる不溶物は、抽出物に残存せしめてもよく、適宜、濾過等で除いてもよい。除去した不溶物にはピセアタンノールが残存している場合もあるので、これをさらに粉砕し、微細粒子状等にして、もとの抽出物に戻して、ピセアタンノールを含有する植物由来の抽出物としてもよい。
【0045】
なお、パッションフルーツの種子以外の植物の場合においても、同様の操作でピセアタンノールを抽出できる。
【0046】
上記のようにして得られたパッションフルーツの種子の抽出物など、ピセアタンノールを含む抽出物を本発明に使用する場合、その抽出物のピセアタンノールの濃度は、乾燥分中0.05質量%以上であることが好ましく、0.05〜25質量%がより好ましい。抽出物のピセアタンノールの濃度が0.05質量%未満であると、飲食品のピセアタンノール含有量を高めるには抽出物をより多く添加する必要が生じるので、飲食品に抽出物の風味が強く出てしまうことがある。
【0047】
上記のようにして得られたパッションフルーツの種子の抽出物など、ピセアタンノールを含む抽出物を本発明に使用する場合、その抽出物を、イオン交換・サイズ排除カラムクロマト、HPLC、ゲルろ過、膜分離などにより、ピセアタンノールを指標にして、分画、精製して用いることもできる。その場合、ピセアタンノールの精製度は、その抽出物のピセアタンノールの濃度が、乾燥分中10〜100質量%であることが好ましく、60〜100質量%であることがより好ましい。これによれば、飲食品に抽出物から持ち込まれるピセアタンノール以外の成分の量を抑えることができ、飲食品に抽出物の風味が強く出てしまうことを防ぐことができる。
【0048】
飲食品に、その苦味を改善するためのピセアタンノールを含有せしめる態様については、特に制限はなく、例えば、上記のようにして得られたパッションフルーツの種子の抽出物など、ピセアタンノールを含む抽出物や、あるいは化学合成法や発酵法などによって調製されたピセアタンノールやピセアタンノール含有組成物を、飲食品の調製や加工等の際に、その原料の一部として添加することなどが挙げられる。
【0049】
飲食品の苦味を改善するのに有効量でピセアタンノールを含有せしめたかどうかは、ピセアタンノールを含有せしめたほうが、ピセアタンノールを含有せしめない場合に比べて苦味が抑制しているかどうかを官能評価することなどによって、適宜判断することができる。そのような官能評価によって、適宜ピセアタンノールの量を適宜調整すればよい。
【0050】
例えば飲食品中のピセアタンノールの含有量は、飲食品の種類や苦味を呈する成分の種類によっても多少異なる場合があり、一概には言えないが、飲食品の乾燥分中にピセアタンノールを0.001〜10質量%含有していることが好ましく、0.002〜5質量%含有していることがより好ましく、0.005〜5質量%含有していることが特に好ましい。含有量が10質量%を超えると、ピセアタンノール自体の苦味、渋味、臭い等が強く出てしまうことがある。
【0051】
また、上記飲食品の調製や加工等の際に、その原料の一部として添加するものとして用いられる食品添加材等の形態にして、ピセアタンノールを飲食品に含有せしめるようなときには、その形態中のピセアタンノールの含有量は、上記飲食品の種類や苦味を呈する成分の種類によっても多少異なる場合があり、一概には言えないが、食品添加材等の形態の乾燥分中にピセアタンノールを0.01〜65質量%含有していることが好ましく、0.03〜45質量%含有していることがより好ましく、0.1〜35質量%含有していることが更により好ましく、0.5〜25質量%含有していることが特に好ましい。
【0052】
ただし、より有効に飲食品の苦味を改善するためには、飲食品の種類や苦味を呈する成分の種類によって、飲食品中のピセアタンノールの含有量を、多少調整することが、より好ましい。
【0053】
以下には、飲食品が、カフェイン含有飲食品、ビタミンB1含有飲食品、カカオフラバノール含有飲食品、又は酵素処理ルチン含有飲食品である場合について説明する。
【0054】
(1)カフェイン含有飲食品
例えば、飲食品がカフェイン含有飲食品の場合、そのカフェイン含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.00167〜1.67質量部であることが好ましく、0.00667〜0.67質量部であることがより好ましい。ピセアタンノール含量が上記範囲未満であるとカフェインの苦味を改善する効果に乏しく、上記範囲を超えるとピセアタンノール自体の苦味、渋味、臭い等が強く出てしまうことがある。
【0055】
この場合、飲食品中のカフェインの含有量は、飲食品の種類や苦味を呈する成分の種類によっても多少異なる場合があり、一概には言えないが、飲食品の乾燥分中にカフェインを0.05〜20質量%含有していることが好ましく、0.2〜15質量%含有していることがより好ましく、0.5〜10質量%含有していることが特に好ましい。含有量が20質量%を超えると、カフェインの苦味を改善するために必要とされるピセアタンノールの量が多くなるので、ピセアタンノール自体の苦味、渋味、臭い等が強く出てしまうことがある。
【0056】
飲食品中のカフェインの含有量の調整は、化学合成法により合成された合成カフェイン、天然物から抽出した抽出カフェイン、カフェイン含有量が高いコーヒーやお茶などの飲食品の濃縮物、抽出物、精製物などを使用して、適宜行うことができる。
【0057】
また、食品添加材等の形態にして、ピセアタンノールとともにカフェインを飲食品に含有せしめるようなときには、その形態中のピセアタンノールとカフェインの含有量は、上記飲食品の種類や苦味を呈する成分の種類によっても多少異なる場合があり、一概には言えないが、食品添加材等の形態の乾燥分中にピセアタンノールを0.01〜62.5質量%、カフェインを0.5〜99.8質量%含有していることが好ましく、ピセアタンノールを0.03〜40.1質量%、カフェインを5〜99.3質量%含有していることがより好ましい。
【0058】
(2)ビタミンB1含有飲食品
例えば、飲食品がビタミンB1含有飲食品の場合、そのビタミンB1含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.001〜0.75質量部であることが好ましく、0.05〜0.5質量部であることがより好ましい。ピセアタンノール含量が上記範囲未満であるとビタミンB1の苦味を改善する効果に乏しく、上記範囲を超えるとピセアタンノール自体の苦味、渋味、臭い等が強く出てしまうことがある。
【0059】
この場合、飲食品中のビタミンB1の含有量は、飲食品の種類や苦味を呈する成分の種類によっても多少異なる場合があり、一概には言えないが、飲食品の乾燥分中にビタミンB1を0.005〜50質量%含有していることが好ましく、0.01〜40質量%含有していることがより好ましく、0.05〜25質量%含有していることが特に好ましい。含有量が50質量%を超えると、ビタミンB1の苦味を改善するために必要とされるピセアタンノールの量が多くなるので、ピセアタンノール自体の苦味、渋味、臭い等が強く出てしまうことがある。
【0060】
飲食品中のビタミンB1の含有量の調整は、化学合成法により合成された合成ビタミンB1、天然物から抽出した抽出ビタミンB1、ビタミンB1含有量が高い大豆やごまなどの飲食品の濃縮物、抽出物、精製物などを使用して、適宜行うことができる。
【0061】
また、食品添加材等の形態にして、ピセアタンノールとともにビタミンB1を飲食品に含有せしめるようなときには、その形態中のピセアタンノールとビタミンB1の含有量は、上記飲食品の種類や苦味を呈する成分の種類によっても多少異なる場合があり、一概には言えないが、食品添加材等の形態の乾燥分中にピセアタンノールを0.01〜42.9質量%、ビタミンB1を0.05〜99.9質量%含有していることが好ましく、ピセアタンノールを0.03〜33.3質量%、ビタミンB1を0.5〜95.2質量%含有していることがより好ましい。
【0062】
(3)カカオフラバノール含有飲食品
例えば、飲食品がカカオフラバノール含有飲食品の場合、そのカカオフラバノール含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.0005〜0.2質量部であることが好ましく、0.1〜0.2質量部であることがより好ましい。ピセアタンノール含量が上記範囲未満であるとカカオフラバノールの苦味を改善する効果に乏しく、上記範囲を超えるとピセアタンノール自体の苦味、渋味、臭い等が強く出てしまうことがある。
【0063】
この場合、飲食品中のカカオフラバノールの含有量は、飲食品の種類や苦味を呈する成分の種類によっても多少異なる場合があり、一概には言えないが、飲食品の乾燥分中にカカオフラバノールを0.1〜30質量%含有していることが好ましく、0.2〜20質量%含有していることがより好ましく、0.5〜10質量%含有していることが特に好ましい。含有量が30質量%を超えると、カカオフラバノールの苦味を改善するために必要とされるピセアタンノールの量が多くなるので、ピセアタンノール自体の苦味、渋味、臭い等が強く出てしまうことがある。
【0064】
飲食品中のカカオフラバノールの含有量の調整は、カカオ豆から抽出した抽出カカオフラバノール、カカオフラバノール含有量が高いココアやビターチョコレートなどの飲食品の濃縮物、抽出物、精製物などを使用して、適宜行うことができる。
【0065】
また、食品添加材等の形態にして、ピセアタンノールとともにカカオフラバノールを飲食品に含有せしめるようなときには、その形態中のピセアタンノールとカカオフラバノールの含有量は、上記飲食品の種類や苦味を呈する成分の種類によっても多少異なる場合があり、一概には言えないが、食品添加材等の形態の乾燥分中にピセアタンノールを0.01〜16.7質量%、カカオフラバノールを1〜99.9質量%含有していることが好ましく、ピセアタンノールを0.5〜16.7質量%、カカオフラバノールを5〜90.9質量%含有していることがより好ましい。
【0066】
なお、本明細書において、カカオフラバノールとは、カカオ豆に含まれるフラバノールをいう。このカカオフラバノールは、カカオマス、脱脂カカオマス、ココアパウダー、カカオシェル、カカオニブ等の各種カカオ原料から、公知の方法で分離することができる。具体的にはカカオ原料を粉砕し、必要であれば脱脂処理やアルカリ処理を施してから、水、含水エタノール、エタノール等の極性溶媒で抽出することで、その抽出物の主要成分としてカカオフラバノールを得ることができる。このようなカカオフラバノールは、典型的にはエピカテキンの1〜10量体を主成分とする。更に、公知の分離分画手段で処理して、特定又は一部のフラバノール化合物の含有量が高められたカカオフラバノールを得ることもできる。
【0067】
カカオフラバノールは、カカオマス、脱脂カカオマス、ココアパウダー、カカオシェル、カカオニブ等の各種カカオ原料、これらの粉砕物等の加工品、又はそれらを水、熱水、あるいはアルコールなどの溶媒を用いて抽出した抽出液に含有しているままのカカオフラバノールを利用することもできる。また、この抽出液を、更に凍結乾燥や噴霧乾燥など方法により乾燥処理し、乾燥粉末として用いてもよい。
【0068】
カカオフラバノールは、Journal of AOAC International Vol.96, No.4, 705-11 (2011)記載の方法により、エピカテキンを標品として測定することができる。
【0069】
(4)酵素処理ルチン含有飲食品
例えば、飲食品が酵素処理ルチン含有飲食品の場合、その酵素処理ルチン含量1質量部に対してピセアタンノール含量が0.003〜0.3質量部であることが好ましく、0.01〜0.3質量部であることがより好ましい。ピセアタンノール含量が上記範囲未満であると酵素処理ルチンの苦味を改善する効果に乏しく、上記範囲を超えるとピセアタンノール自体の苦味、渋味、臭い等が強く出てしまうことがある。
【0070】
この場合、飲食品中の酵素処理ルチンの含有量は、飲食品の種類や苦味を呈する成分の種類によっても多少異なる場合があり、一概には言えないが、飲食品の乾燥分中に酵素処理ルチンを0.1〜20質量%含有していることが好ましく、0.2〜10質量%含有していることがより好ましく、0.2〜5質量%含有していることが特に好ましい。含有量が20質量%を超えると、酵素処理ルチンの苦味を改善するために必要とされるピセアタンノールの量が多くなるので、ピセアタンノール自体の苦味、渋味、臭い等が強く出てしまうことがある。
【0071】
飲食品中の酵素処理ルチンの含有量の調整は、市販の酵素処理ルチンなどを使用して、適宜行うことができる。
【0072】
また、食品添加材等の形態にして、ピセアタンノールとともに酵素処理ルチンを飲食品に含有せしめるようなときには、その形態中のピセアタンノールと酵素処理ルチンの含有量は、上記飲食品の種類や苦味を呈する成分の種類によっても多少異なる場合があり、一概には言えないが、食品添加材等の形態の乾燥分中にピセアタンノールを0.01〜23.1質量%、酵素処理ルチンを1〜99.7質量%含有していることが好ましく、ピセアタンノールを0.02〜23.1質量%、酵素処理ルチンを2〜99.0質量%含有していることがより好ましい。
【0073】
なお、酵素処理ルチンとは、酵素処理によりルチンのアグリコンであるケルセチンに糖転移させてルチンの水溶性を高めたものであり、一般にα−グルコシルイソクエルシトリンを主成分とする。その調製方法は、特に限定されないが、例えば、特公昭54−32073号公報に記載されているように、ルチンとその類縁物であるイソクエルシトリンを含有するルチン含有組成物、例えばソバ抽出物などを、澱粉質などのグルコース供与体を含有する溶液中で糖転移酵素を作用させることにより、ルチンやイソクエルシトリンにグルコース供与体からグルコース残基を等モル以上転移させ、次いで、アミラーゼを作用させることにより、α-グルコシルイソクエルシトリンを主成分とする酵素処理ルチンを得ることができる。α-グルコシルイソクエルシトリンは、多孔性合成吸着剤に接触させて、その吸着性の違いを利用することにより、更に精製することも可能である。本発明に用いる酵素処理ルチンは、典型的には主成分たるα-グルコシルイソクエルシトリンの含量が、乾燥分中に1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが最も好ましい。
【0074】
酵素処理ルチンは、その量をHPLC法により測定し、イソクエルシトリン換算して算出することができる。
【0075】
なお、上記には、苦味を呈する成分がカフェイン、ビタミンB1、カカオフラバノール、又は酵素処理ルチンである場合について、個々の苦味物質に対するピセアタンノールの割合の観点から好ましい範囲を説明したが、上記のうち2種以上の苦味物質を含有し、添加し、又は配合した飲食品についても、ピセアタンノールは各苦味物質に対する上記の各範囲において、各苦味物質に対して複合的に苦味改善効果を発揮できる。
【0076】
飲食品には、本発明による作用効果を損なわない範囲で、適宜必要な他の原料を更に含有させることができる。
【0077】
他の原料としては、例えば、果汁、甘味料、酸味料、ビタミンB1以外のビタミン類、アミノ酸、ミネラル、たんぱく質、増粘剤、香料、色素等が挙げられる。
【0078】
果汁の種類としては、特に限定されるものではなく、パッションフルーツ果汁、レモン果汁、メロン果汁、ユズ果汁、オレンジ果汁、グレープフルーツ果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、ブドウ果汁、パイナップル果汁等が挙げられる。
【0079】
果汁の形態は、果実の搾汁液に酵素処理等を施し、固形成分を除去して清澄化した透明果汁、果実に由来する混濁成分や不溶性成分等の固形成分を含有する混濁果汁のいずれも好ましく用いることができる。なお、本発明において、透明果汁及び混濁果汁には、果実の搾汁液を濃縮又は希釈していないストレート果汁、搾汁液を濃縮した濃縮果汁、濃縮果汁をさらに希釈した還元果汁が含まれる。
【0080】
果汁の添加量は、飲食品の種類によって異なるが、例えば、飲食品の種類が、液体飲料、粉末飲料、ゲル状飲食品の場合、飲食時における果汁の含有量が、ストレート果汁換算で0.5〜20質量%となるように添加することが好ましく、1〜10質量%がより好ましい。果汁の添加量が上記範囲であれば、果汁の風味をしっかりと感じることができ、清涼感のある飲食品とすることができる。なお、飲食品が、水等の液体原料で希釈して飲食するタイプの場合は、希釈後の状態が、「飲食時」に該当する。
【0081】
甘味料としては、例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、オリゴ糖、トレハロース、キシリトール、はちみつ、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、スクラロース、エリスリトール等が挙げられる。これらの甘味料は単独又は2種類以上を使用できる。
【0082】
酸味料としては、特に限定は無く、従来公知のものを用いることができる。例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、アスコルビン酸、グルコン酸、リン酸及びそれらの塩等が挙げられる。これらの酸味料は単独又は2種類以上を使用できる。
【0083】
ビタミンB1以外のビタミン類としては、特に限定は無く、従来公知のものを用いることができる。例えば、ビタミンA、ビタミンB1以外のビタミンB類、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK、ビタミンP、コリン、イノシトール、パラアミノ安息香酸(PABA)等が挙げられる。これらのビタミン類は単独又は2種類以上を使用できる。
【0084】
アミノ酸としては、特に限定は無く、従来公知のものを用いることができる。例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等が挙げられる。これらのアミノ酸は単独又は2種類以上を使用できる。
【0085】
ミネラルとしては、特に限定は無く、従来公知のものを用いることができる。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム等が挙げられる。これらのミネラルは単独又は2種類以上を使用できる。
【0086】
タンパク質としては、特に限定は無く、従来公知のものを用いることができる。例えば、乳由来のたんぱく質であるホエイたんぱく質分離物(WPI)、ホエイたんぱく質濃縮物(WPC)、大豆由来のたんぱく質である、分離大豆たんぱく質(SPI)、あるいはそれらの加水分解物等が挙げられる。これらを単独又は2種類以上を使用できる。
【0087】
増粘剤としては、特に限定は無く、従来公知のものを用いることができる。例えば、ペクチン、ゼラチン、寒天、カラギーナン、アラビアガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、タマリンドシードガム等が挙げられる。
【実施例】
【0088】
以下の試験例1〜4では、被検化合物とピセアタンノールとを各濃度で水に溶解し、3名のパネラーにより、表1に示す基準で、ピセアタンノールを添加しない場合と比べた風味の変化を評価した。
【0089】
【表1】
【0090】
(試験例1)
表2に示す濃度の組み合わせで、カフェインとピセアタンノールとを水に溶解し、ピセアタンノールを添加しない場合と比べた風味の変化を評価した。
【0091】
【表2】
【0092】
表2に示すように、カフェインに対して所定量でピセアタンノールを添加することにより、カフェインの苦味を抑制する効果が認められた。特にカフェイン1mgに対してピセアタンノールを0.00167mg以上添加すると、抑制効果が高かった。なお、カフェイン1mgに対してピセアタンノールを2.5mg添加するなど、ピセアタンノールを添加し過ぎると(100mL中にピセアタンノール75mg)、ピセアタンノール自体の苦味を感じるようになった。
【0093】
(試験例2)
表3に示す濃度の組み合わせで、ビタミンB1とピセアタンノールとを水に溶解し、ピセアタンノールを添加しない場合と比べた風味の変化を評価した。
【0094】
【表3】
【0095】
表3に示すように、ビタミンB1に対して所定量でピセアタンノールを添加することにより、ビタミンB1の苦味を抑制する効果が認められた。特にビタミンB1の1mgに対してピセアタンノールを0.001mg以上添加すると、抑制効果が高かった。なお、ビタミンB1の1mgに対してピセアタンノールを1.25mg添加するなど、ピセアタンノールを添加し過ぎると(100mL中にピセアタンノール50mg)、ピセアタンノール自体の苦味を感じるようになった。
【0096】
(試験例3)
表4に示す濃度の組み合わせで、カカオフラバノールとピセアタンノールとを水に溶解し、ピセアタンノールを添加しない場合と比べた風味の変化を評価した。
【0097】
【表4】
【0098】
表4に示すように、カカオフラバノールに対して所定量でピセアタンノールを添加することにより、カカオフラバノールの苦味を抑制する効果が認められた。特にカカオフラバノール1mgに対してピセアタンノールを0.0005mg以上添加すると、抑制効果が高かった。なお、カカオフラバノール1mgに対してピセアタンノールを0.5mg添加するなど、ピセアタンノールを添加し過ぎると(100mL中にピセアタンノール50mg)、ピセアタンノール自体の苦味を感じるようになった。
【0099】
(試験例4)
表5に示す濃度の組み合わせで、酵素処理ルチンとピセアタンノールとを水に溶解し、ピセアタンノールを添加しない場合と比べた風味の変化を評価した。
【0100】
【表5】
【0101】
表5に示すように、酵素処理ルチンに対して所定量でピセアタンノールを添加することにより、酵素処理ルチンの苦味を抑制する効果が認められた。特に酵素処理ルチン1mgに対してピセアタンノールを0.003mg以上添加すると、抑制効果が高かった。なお、酵素処理ルチン1mgに対してピセアタンノールを0.5mg添加するなど、ピセアタンノールを添加し過ぎると(100mL中にピセアタンノール50mg)、ピセアタンノール自体の苦味を感じるようになった。