(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体やセラミック、樹脂等の材料でなる板状の被加工物を加工する際には、例えば、回転する砥石を備えたダイサー(切削装置)やグラインダー(研削装置)等の加工装置が使用される。これらの加工装置では、加工によって発生する加工屑を装置外に飛散させないように、砥石が装着された加工ユニット等の構成要素を密閉された加工室内に収容している。
【0003】
ところで、上述のような加工装置で被加工物を加工する際には、被加工物の冷却や加工屑の排出等を目的として、純水等の加工液を加工点の近傍に供給する。供給された加工液の一部は、加工時に発生する熱等によってミスト状に変化し、加工室内の雰囲気とともに排気管等を通じて装置の外部へと排出される。
【0004】
このような加工装置では、被加工物の加工精度を維持できるように、各構成要素の温度を許容範囲内に制御する必要がある。そのため、例えば、加工液は、熱交換を利用した温度調整ユニットで所定の温度に冷却された後、加工点へと供給される(例えば、特許文献1参照)。また、高温になり易い可動部や電子部品等は、空冷又は水冷されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような冷却には、コストの点で改善の余地がある。本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷却に要するコストを低く抑えることのできる加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、加工液を供給しながら被加工物を加工する加工手段と、被加工物と該加工手段とを収容する加工室と、被加工物の加工時に発生するミスト状の該加工液を含む雰囲気を該加工室から排出する排出手段と、を備え、該排出手段は、ミスト状の該加工液を含む雰囲気が通過する排気管と、該排気管に沿って設けられた流体冷却流路と、を含み、ミスト状の該加工液の気化熱で冷却された該排気管を冷却源として、該流体冷却流路を流れる流体を冷却することを特徴とする加工装置が提供される。
【0008】
また、本発明の加工装置は、該流体を用いる冷却手段を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る加工装置では、加工室の外部へと排出されるミスト状の加工液が気化する際の気化熱を利用して流体を冷却するので、この流体を用いて対象を効率よく冷却できる。その結果、対象の冷却に要するコストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る加工装置の構成例を模式的に示す図である。なお、本実施形態では、板状の被加工物を切削するダイサー(切削装置)を例に挙げて説明するが、本発明の加工装置は、グラインダー(研削装置)等でも良い。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る加工装置2は、各構成要素を支持する基台4を備えている。基台4の上方には、基台4の上部を覆う筐体6が設けられている。筐体6の内部には、加工室が形成されており、板状の被加工物(不図示)を切削する切削ユニット(加工手段)8が収容されている。
【0013】
筐体6の前方下部には、筐体6の内部と外部とを繋ぐ開口が形成されるとともに、この開口を閉じる扉6a,6bが取り付けられている。被加工物は、開口を通じて筐体6の内部へと搬送され、加工室に収容される。
【0014】
この加工装置2で加工(切削)される被加工物は、例えば、半導体やセラミック、樹脂等の材料でなる板状の基板であり、その表面側には、ストリートと呼ばれる加工予定ラインが設定されている。加工装置2は、この加工予定ラインに沿って被加工物を加工(切削)する。
【0015】
切削ユニット8は、円環状の切削ブレード10を備えている。切削ブレード10は、概ね水平に支持されたスピンドル(不図示)の一端側に装着されている。スピンドルの他端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、切削ブレード10は、この回転駆動源から伝達される回転力によって回転する。
【0016】
切削ユニット8は、割り出し送り機構(不図示)及び昇降機構(不図示)に支持されている。切削ユニット8は、この割り出し送り機構によって、スピンドルに平行な割り出し送り方向に移動するとともに、昇降機構によって、鉛直方向に移動する。
【0017】
切削ユニット8の近傍には、チャックテーブル12が配置されている。チャックテーブル12は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル12の下方には、加工送り機構(不図示)が設けられており、チャックテーブル12は、この加工送り機構によって、割り出し送り方向に垂直な加工送り方向に移動する。
【0018】
チャックテーブル12の上面は、被加工物を吸引、保持する保持面となっている。この保持面は、チャックテーブル12の内部に形成された流路(不図示)等を通じて吸引源(不図示)に接続されている。
【0019】
筐体6の前面6cには、ユーザーインターフェースとなるタッチパネル式のモニタ14が設けられている。このモニタ14は、加工装置2の制御ユニット(不図示)に接続されている。制御ユニットは、切削ユニット8、チャックテーブル12、回転駆動源、加工送り機構、割り出し送り機構等に接続されており、モニタ14を通じて設定される加工条件等に基づいて、上述した各構成要素の動作を制御する。
【0020】
切削ブレード10の近傍には、純水等の加工液を供給するノズル9が設置されている。このノズル9は、加工液供給路16、定温化ユニット18等を介して加工液供給源20に接続されており、定温化ユニット18で所定の温度に調整された加工液を、被加工物や切削ブレード10に供給する。
【0021】
ノズル9から供給された加工液の一部は、加工点で発生する熱等によってミスト状に変化し、加工室内に拡散する。筐体6の後面6d(
図2参照)には、このミスト状の加工液を加工室内の雰囲気とともに外部へと排出する排気ユニット(排出手段)22が接続されている。
【0022】
図2は、排気ユニット22の構成例を模式的に示す図である。
図2に示すように、排気ユニット22は、上流側を筐体6の後面6dに接続された排気管24を備えている。排気管24の上流側又は下流側には、排気用のファン(不図示)が設けられており、ミスト状の加工液を含む加工室内の雰囲気11は、この排気管24を通じて外部へと排出される。
【0023】
ところで、上述したミスト状の加工液は、排気管24を通過する際に蒸発(気化)して周囲の熱を奪う。そこで、本実施形態に係る加工装置2では、このミスト状の加工液の気化熱を利用して、定温化ユニット18で加工液を冷却する。これにより、加工液の冷却に要するコストを低減できる。
【0024】
排気ユニット22は、熱媒体となる流体13を冷却する流体冷却流路26を備えている。この流体冷却流路26は、例えば、排気管24の外壁に巻き付くコイル状に形成されており、気化熱で冷却された排気管24を冷却源として流体13を冷却する。流体13としては、比熱の大きい水等の液体を用いることが望ましい。これにより、流体13による高い熱伝達効率を実現して冷却に要するコストを更に低減できる。
【0025】
また、流体冷却流路26は、熱伝導性の良いアルミニウム等の材質で形成されることが望ましい。これにより、内部の流体13を効率よく冷却できる。ただし、流体冷却流路26の材質、形状等に制限はない。流体冷却流路26は、少なくとも、上述した気化熱を利用できる態様で排気管24に沿って設けられていれば良い。
【0026】
図3は、排気管24の内部の構造を模式的に示す斜視図である。
図3に示すように、排気管24の内部には、複数のフィン24aが設けられている。このフィン24aは、流体冷却流路26の近傍に配置されており、気化熱の伝導に係る面積を増大させる。これにより、気化熱を効率よく用いて排気管24を冷却できる。なお、フィン24aの材質、形状等に制限はない。また、フィン24aを省略することもできる。
【0027】
流体冷却流路26は、
図1に示す流体流路28を介して、定温化ユニット18に接続されている。定温化ユニット18から流体流路28(往路)を通じて流体冷却流路26に供給される流体13は、流体冷却流路26で冷却された後、流体流路28(復路)を通じて定温化ユニット18に戻される。
【0028】
図4は、定温化ユニット18の一部を模式的に示す図である。
図4に示すように、本実施形態の定温化ユニット18は、冷媒15の相変化を利用して加工液17を冷却する冷却ユニット(冷却手段)30を含んでいる。この冷却ユニット30は、冷媒15を循環させる冷媒循環路32を備えている。冷媒循環路32には、気体の冷媒15を圧縮して液化させるコンプレッサー34が接続されている。
【0029】
コンプレッサー34で液化された高温の冷媒15は、冷媒循環路32を通じて第1の熱交換器36へと送られる。第1の熱交換器36は、流体流路28を介して流体冷却流路26に接続されており、気化熱によって冷却された流体13との熱交換により冷媒15を冷却する。なお、熱交換に使用された流体13は、流体流路28を通じて流体冷却流路26へと再び送られる。
【0030】
第1の熱交換器36で冷却された冷媒15は、冷媒循環路32を通じて第2の熱交換器38へと送られる。第2の熱交換器38は、加工液供給源20に接続されており、エバポレーター(不図示)等で気化、冷却された冷媒15との熱交換によって加工液17を冷却する。なお、熱交換に使用された冷媒15は、冷媒循環路32を通じてコンプレッサー34へと送られ、再び圧縮、液化される。
【0031】
第2の熱交換器38で冷却された加工液17は、例えば、室温の加工液17と混合され、任意の温度に調整される。調整された加工液17は、加工液供給路16を通じてノズル9へと送られ、被加工物の加工時に使用される。
【0032】
例えば、従来の加工装置では、第1の熱交換器36に室温の水を多量に供給することで冷媒15を冷却していた。これに対して、本実施形態に係る加工装置2では、気化熱によって冷却された流体13を使用するので、第1の熱交換器36に多量の水を供給する必要がない。つまり、本実施形態に係る加工装置2では、水の使用量を大幅に減らしてコストを低減できる。
【0033】
なお、従来の加工装置では、気温とともに水(代表的には、水道水)の温度が上昇したり、加工装置が設置されている部屋(例えば、クリーンルーム)の温度(室温)が高くなったりすると、冷却能力を維持するために水の使用量を増加させなくてはならなかった。よって、暑い季節、地域では、水の使用量が増えてコストがさらに増大するという問題があった。
【0034】
これに対して、本実施形態の加工装置2では、従来のように大量の水(水道水)を用いることなく加工液17を冷却するので、暑い季節、地域であっても、冷却に要するコストが増大することはない。つまり、本実施形態の加工装置2は、特に、暑い季節、地域での使用に向いている。
【0035】
このように、本実施形態に係る加工装置2では、加工室の外部へと排出されるミスト状の加工液が気化する際の気化熱を利用して流体13を冷却するので、この流体13を用いて加工液17(対象)を効率よく冷却できる。その結果、加工液17の冷却に要するコストを低く抑えることができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態の加工装置2では、気化熱によって冷却された流体13を加工液17の冷却に用いているが、冷却された流体13を、電子部品や他の対象を冷却する際に用いても良い。
【0037】
その他、上記実施形態に係る構成、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。