特許第6552380号(P6552380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552380
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20190722BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
   H01L21/302 101R
   H01L21/302 101C
   H01L21/68 N
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-212141(P2015-212141)
(22)【出願日】2015年10月28日
(65)【公開番号】特開2017-84976(P2017-84976A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 智行
(72)【発明者】
【氏名】横川 賢悦
(72)【発明者】
【氏名】高妻 豊
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−522883(JP,A)
【文献】 特開2008−235311(JP,A)
【文献】 特開2006−5143(JP,A)
【文献】 特開平11−54445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対するプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、
前記プラズマ処理を制御する制御部と、
前記試料が載置される載置台が配置されている処理室と、
前記試料を加熱する加熱部と、
前記処理室に不活性ガスを供給する第1のガス供給部と、
前記載置台の流路を通じて、前記試料の裏面へ熱伝導ガスを供給する第2のガス供給部と、
前記載置台に有するリフトピンの高さを変えるように駆動するピン駆動部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ピン駆動部を通じて前記リフトピンにより前記試料を前記載置台の上面から第1の高さの位置に持ち上げた第1の状態にし、
前記第1の状態において、
前記加熱部により前記試料を加熱し、
前記第1のガス供給部により前記処理室に前記不活性ガスを供給し、
前記第2のガス供給部により前記載置台の前記流路を通じて前記試料の裏面に前記熱伝導ガスを供給して、前記試料と前記載置台との隙間に前記熱伝導ガスを流し、
前記第1の状態における、前記試料の表面の前記不活性ガスの圧力と、前記試料の裏面の前記熱伝導ガスの圧力とをバランスさせる、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
試料に対するプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、
前記プラズマ処理を制御する制御部と、
前記試料が載置される載置台が配置されている処理室と、
前記載置台を冷却する冷却部と、
前記処理室に不活性ガスを供給する第1のガス供給部と、
前記載置台の流路を通じて、前記試料の裏面へ熱伝導ガスを供給する第2のガス供給部と、
前記載置台に有するリフトピンの高さを変えるように駆動するピン駆動部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ピン駆動部を通じて前記リフトピンにより前記試料を前記載置台の上面から第2の高さの位置に持ち上げた第2の状態にし、
前記第2の状態において、
前記冷却部により前記載置台を冷却し、
前記第1のガス供給部により前記処理室に前記不活性ガスを供給し、
前記第2のガス供給部により前記載置台の前記流路を通じて前記試料の裏面に前記熱伝導ガスを供給して、前記試料と前記載置台との隙間に前記熱伝導ガスを流し、
前記第2の状態における、前記試料の表面の前記不活性ガスの圧力と、前記試料の裏面の前記熱伝導ガスの圧力とをバランスさせる、
プラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、
前記載置台を冷却する冷却部を備え、
前記制御部は、前記第1の状態の後、前記ピン駆動部を通じて前記リフトピンにより前記試料を前記載置台の上面から第2の高さの位置に持ち上げた第2の状態にし、
前記第2の状態において、
前記冷却部により前記載置台を冷却し、
前記第1のガス供給部により前記処理室に前記不活性ガスを供給し、
前記第2のガス供給部により前記載置台の前記流路を通じて前記試料の裏面に前記熱伝導ガスを供給して、前記試料と前記載置台との隙間に前記熱伝導ガスを流し、
前記第2の状態における、前記試料の表面の前記不活性ガスの圧力と、前記試料の裏面の前記熱伝導ガスの圧力とをバランスさせ、
前記第1の状態と前記第2の状態とを含むプロセスを複数回繰り返す、
プラズマ処理装置。
【請求項4】
試料に対するプラズマ処理を行うプラズマ処理装置におけるプラズマ処理方法であって、
前記プラズマ処理装置は、
前記プラズマ処理を制御する制御部と、
前記試料が載置される載置台が配置されている処理室と、
前記試料を加熱する加熱部と、
前記処理室に不活性ガスを供給する第1のガス供給部と、
前記載置台の流路を通じて、前記試料の裏面へ熱伝導ガスを供給する第2のガス供給部と、
前記載置台に有するリフトピンの高さを変えるように駆動するピン駆動部と、
を備え、
前記制御部により実行するステップとして、
前記ピン駆動部を通じて前記リフトピンにより前記試料を前記載置台の上面から第1の高さの位置に持ち上げた第1の状態にするステップと、
前記第1の状態において、
前記加熱部により前記試料を加熱するステップと、
前記第1のガス供給部により前記処理室に前記不活性ガスを供給するステップと、
前記第2のガス供給部により前記載置台の前記流路を通じて前記試料の裏面に前記熱伝導ガスを供給して、前記試料と前記載置台との隙間に前記熱伝導ガスを流すステップと、
を有し、
前記第1の状態における、前記試料の表面の前記不活性ガスの圧力と、前記試料の裏面の前記熱伝導ガスの圧力とをバランスさせる、
プラズマ処理方法。
【請求項5】
試料に対するプラズマ処理を行うプラズマ処理装置におけるプラズマ処理方法であって、
前記プラズマ処理装置は、
前記プラズマ処理を制御する制御部と、
前記試料が載置される載置台が配置されている処理室と、
前記載置台を冷却する冷却部と、
前記処理室に不活性ガスを供給する第1のガス供給部と、
前記載置台の流路を通じて、前記試料の裏面へ熱伝導ガスを供給する第2のガス供給部と、
前記載置台に有するリフトピンの高さを変えるように駆動するピン駆動部と、
を備え、
前記制御部により実行するステップとして、
前記ピン駆動部を通じて前記リフトピンにより前記試料を前記載置台の上面から第2の高さの位置に持ち上げた第2の状態にするステップと、
前記第2の状態において、
前記冷却部により前記載置台を冷却するステップと、
前記第1のガス供給部により前記処理室に前記不活性ガスを供給するステップと、
前記第2のガス供給部により前記載置台の前記流路を通じて前記試料の裏面に前記熱伝導ガスを供給して、前記試料と前記載置台との隙間に前記熱伝導ガスを流すステップと、
を有し、
前記第2の状態における、前記試料の表面の前記不活性ガスの圧力と、前記試料の裏面の前記熱伝導ガスの圧力とをバランスさせる、
プラズマ処理方法。
【請求項6】
請求項4記載のプラズマ処理方法において、
前記プラズマ処理装置は、前記載置台を冷却する冷却部を備え、
前記制御部により実行するステップとして、
前記第1の状態の工程の後、前記ピン駆動部を通じて前記リフトピンにより前記試料を前記載置台の上面から第2の高さの位置に持ち上げた第2の状態にするステップと、
前記第2の状態において、
前記冷却部により前記載置台を冷却するステップと、
前記第1のガス供給部により前記処理室に前記不活性ガスを供給するステップと、
前記第2のガス供給部により前記載置台の前記流路を通じて前記試料の裏面に前記熱伝導ガスを供給して、前記試料と前記載置台との隙間に前記熱伝導ガスを流すステップと、
を有し、
前記第2の状態における、前記試料の表面の前記不活性ガスの圧力と、前記試料の裏面の前記熱伝導ガスの圧力とをバランスさせ、
前記第1の状態と前記第2の状態とを含むプロセスを複数回繰り返す、
プラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理技術に関する。また、本発明は、処理室内に載置された試料に対するプラズマエッチング技術、加熱や冷却と共に反応層の形成や脱離を行う微細加工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体構造の微細化等に伴い、従来のプラズマエッチング装置で行われている異方的エッチングだけでなく、等方的かつ高選択性を持つエッチングが必要である。等方的とは、方向に依存しない性質、高選択性とは、素材や膜種の選択性の高さを指している。従来、等方的エッチングについては、ウェットエッチングで実現されているが、微細化等によってフォトレジストのパターン倒れ等の問題が発生する。そこで、ドライエッチングで等方的エッチングを実現するプラズマ処理装置が開発されている。ドライエッチングは、プラズマを発生させて生成されたイオンやラジカルによって試料をエッチングする方式である。ラジカルは、不対電子を持つ原子や分子、あるいはイオンを指す。
【0003】
このプラズマ処理装置におけるプラズマ処理方法としては、プラズマにより生成されたラジカルを試料表面に付着及び堆積させて反応層を形成し、その後、試料を加熱して反応層を揮発及び脱離させてエッチングする方法がある。このラジカルと試料との反応は化学反応であるため、等方的かつ高選択性を持ち、また、試料表面だけで反応が行われるため、微小量のエッチングが可能である。
【0004】
実際のエッチング処理では、例えば、ラジカルによる反応層の形成と、加熱による反応層の脱離とが、所定のエッチング量となるまで、数回から数十回繰り返される。加熱手段及び冷却手段としては、ヒータや温調器が挙げられる。
【0005】
プラズマ処理に関する先行技術例として、特開2014−195009号公報(特許文献1)が挙げられる。特許文献1には、プラズマ処理装置として、試料と台との磨耗を防ぐため、所定温度の台と試料とで熱伝達が行われ、その後、台に対する試料の静電吸着が行われ、プラズマ処理が開始される旨が記載されている。また、特許文献1には、試料と台との隙間に熱伝達用のガスが供給される旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−195009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のドライエッチングで等方的エッチングを実現するためのプラズマ処理装置では、加熱を伴う反応層の脱離の工程や、室温または低温での反応層の形成の工程等を含むプロセスが行われる場合がある。プラズマ処理装置は、処理に合わせて、加熱や冷却により、載置台及び試料の温度を制御する。この場合に、試料と載置台との温度差、熱膨張率の違いにより、試料と載置台との間に摩擦が生じる場合がある。その摩擦により、試料の磨耗や損傷、微小異物の発生による品質低下、載置台の性能低下、等を招く恐れがある。
【0008】
また、上記プラズマ処理装置では、載置台に対する試料の搬入、載置、静電吸着、搬出等が繰り返される場合がある。この場合、試料が載置台上の所定位置からずれる可能性が高くなる。試料の位置ずれが生じると、試料と載置台との間で摩擦が生じて上記のように磨耗等を招く恐れがある。また、試料の位置ずれが生じると、載置台の周りのずれ止め部と繰り返し接触する可能性もある。これにより、試料に致命的なダメージを与える恐れや異物発生原因となる恐れがある。
【0009】
一方、従来のプラズマ処理装置で、プラズマ処理時に試料を高温に加熱するプロセスを行う場合に、以下のような方式もある。この方式では、試料と載置台との摩擦を防ぐため、載置台に載置された試料の加熱の際、時間軸で段階的に温度を変化させ、試料と載置台との温度差が十分小さくなった段階で、載置台に対する試料の静電吸着を行う。しかし、このような方式を、加熱や冷却を繰り返すプロセスに適用した場合でも、上記摩擦による磨耗等を無くすことは難しい。また、温度差を十分小さくするために時間がかかるので、加熱や冷却を繰り返す場合には処理効率の観点でも課題がある。
【0010】
また、従来のプラズマ処理装置で、載置台と試料との熱伝導を促進するために、処理室内の試料及び載置台に対して熱伝導ガスを流す方式もある。しかし、そのガスによる試料の周りの圧力等の状態によっては、載置台から試料が浮き上がる等して位置ずれや摩擦が生じる恐れがある。また、その摩擦によって微小異物が発生した場合、その微小異物がガスにより流されて、試料等に付着し、品質を低下させる恐れがある。
【0011】
上記エッチング等を行うプラズマ処理技術では、試料の載置や静電吸着、載置台上の試料に対する加熱や冷却、熱伝導ガスの供給等を行う。しかし、その制御の際に、温度や圧力等の状態を好適に調整することについては、十分に検討されておらず、改善余地がある。
【0012】
本発明の目的は、プラズマ処理技術に関して、試料と載置台との摩擦や位置ずれ等を防止または低減でき、処理の品質や効率を高めることができ、等方的で高選択性を持つエッチング等を実現できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のうち代表的な実施の形態は、プラズマ処理装置、等であって、以下に示す構成を有することを特徴とする。
【0014】
一実施の形態のプラズマ処理装置は、試料に対するプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、前記プラズマ処理を制御する制御部と、前記試料が載置される載置台が配置されている処理室と、前記試料を加熱する加熱部と、前記処理室に不活性ガスを供給する第1のガス供給部と、前記載置台の流路を通じて、前記試料の裏面へ熱伝導ガスを供給する第2のガス供給部と、前記載置台に有するリフトピンの高さを変えるように駆動するピン駆動部と、を備え、前記制御部は、前記ピン駆動部を通じて前記リフトピンにより前記試料を前記載置台の上面から第1の高さの位置に持ち上げた第1の状態にし、前記第1の状態において、前記加熱部により前記試料を加熱し、前記第1のガス供給部により前記処理室に前記不活性ガスを供給し、前記第2のガス供給部により前記載置台の前記流路を通じて前記試料の裏面に前記熱伝導ガスを供給して、前記試料と前記載置台との隙間に前記熱伝導ガスを流し、前記第1の状態における、前記試料の表面の前記不活性ガスの圧力と、前記試料の裏面の前記熱伝導ガスの圧力とをバランスさせる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のうち代表的な実施の形態によれば、プラズマ処理技術に関して、試料と載置台との摩擦や位置ずれ等を防止または低減でき、処理の品質や効率を高めることができ、等方的で高選択性を持つエッチング等を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態のプラズマ処理装置の構成を示す図である。
図2】実施の形態のプラズマ処理装置における、主に処理室の載置台の構成を示す図である。
図3】実施の形態における、加熱脱離工程での載置台の断面構成を示す図である。
図4】実施の形態における、第1冷却工程での載置台の断面構成を示す図である。
図5】実施の形態における、第2冷却工程での載置台の断面構成を示す図である。
図6】実施の形態における、載置台の上面の形状の例を示す図である。
図7】実施の形態のプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法における、プラズマ処理のシーケンスに対応するタイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0018】
図1図7を用いて、実施の形態のプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法について説明する。実施の形態のプラズマ処理方法は、実施の形態のプラズマ処理装置で実行されるステップを有する方法である。
【0019】
[プラズマ処理装置]
図1は、本発明の実施の形態のプラズマ処理装置の構成を示す。図1では、主に真空容器11の断面構成と、真空容器11に接続されている各部を含む機能ブロック構成とを示す。説明上の方向として(X,Y,Z)を示す。Z方向は鉛直方向を示し、載置台20及び試料10の形状における中心軸に対応する。X方向及びY方向は、水平面を構成する直交する2つの方向を示し、載置台20及び試料10の円形における半径方向に対応する。
【0020】
実施の形態のプラズマ処理装置は、所定のプラズマエッチング処理を行う機能を持つプラズマエッチング装置である。実施の形態のプラズマ処理方法は、そのプラズマエッチング処理を行う方法である。このプラズマエッチング処理は、プラズマにより生成されるラジカル等に基づいて、載置台20上の試料10に対して反応層の形成及び脱離を伴うドライエッチングを行う処理である。このプラズマエッチング処理は、載置台20上の試料10に対する加熱を伴う脱離の工程や、室温または低温での反応層の形成の工程を含むプロセスを繰り返し行う処理である。
【0021】
実施の形態のプラズマ処理装置は、真空容器11、供給室12、処理室13、整流板14、コイル15、ランプ16、温調器17、温度計18、載置台20、リフトピン30、第1のガス供給部101、第2のガス供給部102、ピン駆動部103、電極駆動部104、制御部110、等を備える。制御部110は、モニタ部111、制御処理部112、駆動制御部113、設定部114を有する。プラズマ処理装置は、その他、図示しないが、搬送部、排気部、電源部、等を備える。
【0022】
載置台20に載置される試料10は、例えば、円板形状を持つウエハであって、Si結晶から成る半導体基板である。プラズマエッチング処理の例は、このウエハの主面の所定領域に、反応層の形成や脱離を繰り返して、所定の素子を形成する処理である。
【0023】
真空容器11は、その内部が、整流板14によって供給室12と処理室13とに分かれて構成され、Z方向で上に供給室12、その下に処理室13が配置されている。真空容器11には、第1のガス供給部101等が接続されている。
【0024】
供給室12には、処理に応じたガスが供給される。第1のガス供給部101は、ガスラインを通じて、処理室12に、処理に応じた所定のガスを供給する。所定のガスは、処理ガスや不活性ガスがある。
【0025】
供給室12の外周には、コイル15が配置されている。コイル15は、制御部110からの駆動制御に基づいて、供給室12内に、誘導結合によってプラズマを形成するための電界や磁界を発生させる。供給室12では、コイル15による電界や磁界に基づいて、ガスから誘導結合によってプラズマを形成し、そのプラズマによりラジカル等を生成する。
【0026】
供給室12で生成されたラジカルは、整流板14の孔を通じて、Z方向で、処理室13内に供給される。整流板14は、処理室13内で必要なラジカルを通過させ、それ以外の物質を通過させないようにし、流れを均一にする働きを持つ。実施の形態のプラズマ処理では、処理室13内の試料10の表面にラジカルを化学反応させる。そのため、このような整流板14を含む真空容器11の構成を適用する。他のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置とする場合には、他の構成の真空容器11を適用可能である。
【0027】
供給室12の内部には、ランプ16が配置されている。ランプ16は、処理室13内の試料10を載置台20と共に非接触で加熱する加熱部である。ランプ16は、載置台20及び試料10よりもZ方向で上方に配置されている。ランプ16は、試料10の表面を略均一に加熱できるように、X方向及びY方向に延在するように配置されている。ランプ16は、制御部110と接続されている。ランプ16は、制御部110からの駆動制御に基づいて、加熱のオン/オフや温度等が調整される。実施の形態のプラズマ処理では、ランプ16を用いた加熱により試料10の温度を上昇させる。これにより、ラジカルとの化学反応で試料10の表面に形成された反応層を、揮発及び脱離させて取り除く。加熱部としては、ランプ16に限らず適用可能である。
【0028】
真空容器11の外、図1では供給室12のZ方向の上面には、温度計18が配置されている。温度計18は、試料10の温度状態をモニタするために設けられている。温度計18は、処理室13内の試料10の温度を非接触で計測する。温度計18は、例えば赤外線温度計で構成され、試料10の表面の円形領域における温度分布状態を、サーモグラフィとして計測することができる。温度計18は、計測した温度の情報を、配線を通じて制御部110に出力する。
【0029】
処理室13では、供給室12から供給されたラジカルを用いて、載置台20上の試料10に対して、加熱や冷却を伴う処理が行われる。処理室13内では、供給室12からのラジカルが、載置台20上の試料10の表面に対して、Z方向で略均一に供給される。
【0030】
第1のガス供給部101は、供給室12内でプラズマを形成する際には、ガスとして処理ガスを供給室12に供給する。また、第1のガス供給部101は、処理室13内で加熱や冷却を伴う処理を行う際には、供給室12を通じて処理室13に、ガスとして不活性ガスを供給する。
【0031】
処理室13内におけるZ方向の下部には、載置台20が配置されている。載置台20は、試料10が載置されるステージである。載置台20は、概略的に円柱または円板の形状を有する。載置台20のZ方向の上面には、試料10が載置される。図1では、載置台20の上面から出たリフトピン30の上に、試料10が載置されている状態を示す。載置台20の上面からリフトピン30が出ていない状態の場合には、載置台20の上面に試料10の裏面が接するようにして載置される。
【0032】
載置台20の内部には、後述の図3等に示すリフトピン30や、後述の図2等に示す静電吸着用の電極24が設けられている。また、載置台20の内部には、後述の図2等に示す空洞21が形成されている。また、載置台20の上面には、後述の図2等に示す溝25が形成されている。
【0033】
処理室13の載置台20には、温調器17、第2のガス供給部102、ピン駆動部103、電極駆動部104等が接続されている。
【0034】
温調器17は、温度調整部、言い換えると冷却部であり、載置台20を冷却して温度を調整する。温調器17は、ガスラインを通じて載置台30の内部の空洞と接続されている。温調器17は、制御部110からの駆動制御に基づいて、冷却のオン/オフや温度等が調整される。
【0035】
載置台20のリフトピン30は、ピン駆動部103と接続されている。ピン駆動部103は、リフトピン30を、Z方向で上下に移動させるように駆動する。これにより、リフトピン30は、Z方向の上端の位置が可変であり、載置台20の上面からZ方向で上に出る部分の高さが可変である。即ち、リフトピン30の上端に載置される試料10のZ方向位置及び高さが可変である。載置台20の上面を基準位置として、その基準位置からのZ方向の高さが調整可能である。
【0036】
リフトピン30は、搬送の補助として、搬送部により搬送された試料10を受け取り、また、試料10を搬送部に受け渡す機能を有する。その際、リフトピン30は、載置台20の上面からZ方向で所定の位置及び高さの状態にされる。試料10は、載置台20及びリフトピン30の位置に対して所定の位置に載置される。即ち、試料10であるウエハの円板の中心軸が載置台20の円柱の中心軸に一致する位置で、試料10が載置される。図1の一点鎖線は、真空容器11、載置台20、試料10等の中心軸を示している。
【0037】
リフトピン30は、ピン駆動部103からの駆動に基づいて、プラズマ処理中、所定の工程やそのタイミングに合わせて、Z方向の位置及び高さが可変に制御される。リフトピン30は、その先端により試料10を裏面から支持し、載置台20の上面からZ方向で上方の位置に試料10を持ち上げた状態にすることができる。また、それにより、載置台20の上面と試料10の裏面との間には、Z方向での高さを持つ隙間が形成される。即ち、リフトピン30の高さの制御を通じて、試料10の高さ、及び隙間の高さが調整可能である。
【0038】
電極駆動部104は、制御部110からの駆動制御に基づいて、載置台20の内部の電極に電圧を印加するように駆動する。これにより、電極に静電気力を発生させて、載置台20上に試料10を固定する静電吸着を行うことができる。
【0039】
第2のガス供給部102は、所定の熱伝導ガスを、ガスライン及び載置台20の内部の流路を通じて、試料10の裏面に対して供給する。所定の熱伝導ガスは、載置台20と試料10との熱伝導を促進するためのガスである。第2のガス供給部102は、載置台20とガスラインで接続されており、載置台20の内部にも流路となるガスラインが形成されている。載置台20の内部のガスラインは、載置台20の上面の中心位置に設けられた溝につながっており、その位置で開口している。
【0040】
第2のガス供給部102は、加熱や冷却を伴う工程の際に、リフトピン30により載置台20と試料10との隙間が形成された状態で、熱伝導ガスを載置台20の流路に供給する。これにより、その熱伝導ガスは、載置台20の上面の溝から出て、更に、載置台20と試料10との隙間を、半径方向であるX方向やY方向に流れ、試料10の円周から外側へ流れ出る。第2のガス供給部102は、制御部110からの駆動制御に基づいて、その熱伝導ガスの供給のオン/オフや、温度や流量等を調整する。
【0041】
各ガスラインの途中には、バルブや流量調節器が設けられている。第1のガス供給部101及び第2のガス供給部102は、バルブや流量調節器を制御する。バルブの開閉の制御により、各ガスの供給のオン/オフの切り替え、充填や排気が可能である。流量調節器の制御により、ガスの流量の調節が可能である。
【0042】
第1のガス供給部101及び第2のガス供給部102は、自身が制御するガスの温度、圧力及び流量等の状態をモニタしてモニタ値を外部に出力する機能を有する。制御部110は、第1のガス供給部101及び第2のガス供給部102から、各ガスの状態のモニタ値を入力する。
【0043】
制御部110は、各部の状態をモニタして各部を駆動制御することにより、プラズマ処理を制御する。制御部110は、各部から温度、圧力、及び流量等のモニタ値を取得し、モニタ値及び処理条件等に応じて制御量を決定し、制御量に応じて各部に駆動制御の指示を与える。制御部110は、第1のガス供給部101を駆動制御し、処理ガスや不活性ガスの供給のオン/オフや流量等を調整する。制御部110は、第2のガス供給部102を駆動制御し、熱伝導ガスの供給のオン/オフや流量等を調整する。制御部110は、ピン駆動部103を駆動制御し、リフトピン30の高さを調整し、これにより試料10及び隙間の高さを調整する。制御部110は、電極駆動部104を駆動制御し、静電吸着を制御する。制御部110は、ランプ16や温調器17を駆動制御し、載置台20及び試料10の温度を調整する。
【0044】
制御部110は、温度計18から試料10の温度のモニタ値を取得し、その温度に基づいてプラズマ処理のシーケンスを切り替える。例えば、制御部110は、試料10が所定の温度に達した場合、静電吸着を開始させる。制御部110は、そのタイミングに合わせて、電極駆動部104等の各部を制御する。
【0045】
モニタ部111は、第1のガス供給部101や第2のガス供給部102から、各ガスの温度、圧力及び流量のモニタ値を入力する。モニタ部111は、温度計18から、試料10の温度のモニタ値を入力する。モニタ部111は、その他、各部から、現在の状態を表すモニタ値を入力する。
【0046】
制御処理部112は、プラズマ処理に関する制御処理を行う。この制御処理は、各ガスの制御、リフトピン30の制御、電極の制御等を含む。制御処理部112は、モニタ部111のモニタ値に基づいて、各制御の制御値を決定する。
【0047】
駆動制御部113は、制御処理部112の制御値に基づいて、第1のガス供給部101から電極駆動部104までを含む各部の駆動制御のための指示を決定し、工程等のタイミングに合わせて、各部にその指示を送信する。
【0048】
設定部114は、ユーザ設定操作等に基づいて、プラズマ処理装置で実行させるプラズマ処理の処理条件等が予め設定される。
【0049】
搬送部は、搬送ロボット等で構成され、制御部110からの駆動制御に基づいて、試料10を搬送し、処理室13内の載置台20上にリフトピン30を介して試料10を受け渡し、また、リフトピン30を介して載置台20上から試料10を受け取る。排気部は、排気管等を含み、第1のガス供給部101による制御に従い、真空容器11内を排気する。電源部は、電極駆動部104等に電力を供給する。
【0050】
[処理室及び載置台]
図2は、実施の形態のプラズマ処理装置における、主に処理室13の内部構成として、載置台20の付近の断面構成を示す。図2では、載置台20の上面に試料10が載置された状態を示し、リフトピン30については省略して図3で後述する。
【0051】
載置台20は、空洞21、金属板22、誘電体膜23、電極24、溝25、ずれ止め部29、及び図3のリフトピン30、等を有する。
【0052】
載置台20は、金属板22と、金属板22のZ方向の上面に形成された誘電体膜23とを有する。載置台20は、概略的に円柱または円板の形状を持つ。図2では、金属板22は、Z方向で下部の円板部と上部の円板部とで構成されている。上部の円板部は、第1の径を持ち、下部の円板部は、第2の径を持つ。上部の円板部及び誘電体膜23の径は、試料10の径と概略同じである。
【0053】
金属板22の内部には、空洞21が形成されている。空洞21は、熱交換媒体である冷媒を流す流路となる。空洞21は、Z方向から見て中心軸に対し軸対称形状を持つ。空洞21は、ガスラインを通じて温調器17と接続されている。
【0054】
温調器17は、載置台20の空洞21に対して所定の温度及び流量で冷媒を供給する。これにより、載置台20の空洞21による流路に冷媒を流して循環させ、載置台20を冷却して温度を調整する。載置台20の冷却に伴い、載置台20上に載置されている試料10も、熱交換を通じて冷却される。
【0055】
金属板22の上面には、所定の膜厚で誘電体膜23が形成されている。誘電体膜23は、ALやY等の誘電体材料から成る。誘電体膜23の上面には、試料10が載置される。
【0056】
誘電体膜23の内部には、静電吸着用の電極24が設けられている。電極24は、載置台20内の電気的配線を通じて電極駆動部104と接続されている。電極24は、静電気力により試料10を誘電体膜23上に静電吸着させるための電極である。電極24は、中心軸に対し軸対称形状を持つ。電極駆動部104は、静電吸着を行う工程の際、直流電源に基づいて、直流電力を電極24に供給して、電極24に電圧を印加する。
【0057】
電極24は、例えば双極型であり、中心軸に対し内周側に配置されるリング状の第1電極と、外周側に配置されるリング状の第2電極との対で構成される。静電吸着の際、電極駆動部104からの電圧により、例えば第1電極が正電位、第2電極が負電位にされ、第1電極と第2電極との電位差が形成される。これにより、静電気力が生じ、試料10が誘電体膜23上に静電吸着される。電極24は、この型や形状に限らず適用可能である。
【0058】
誘電体膜23の上面には、所定の形状を持つ凹部である溝25が形成されている。溝25は、熱伝導ガスの流路を構成する要素である。この溝25は、Z方向から見た誘電体膜23の円形領域において、中心軸に対し軸対称形状で形成されている。この溝25は、例えば後述の図6のように、同心の複数のリングの形状で形成されている。
【0059】
実施の形態では、溝25は、中心軸の位置にある円形の溝25aと、内周にある第1のリングの溝25b、及び外周にある第2のリングの溝25cと、を有する。溝25bと溝25cは、図示しないが半径方向でも連通しており、例えば溝25cに供給されたガスは溝25bにも流れるようになっている。溝25は、載置台20の内部のガスラインを通じて、第2のガス供給部102と接続されている。
【0060】
溝25は、誘電体膜23の上面に試料10が載置された状態の場合には、上面が閉じられて空洞を形成する。溝25は、リフトピン30により載置台20と試料10との隙間が形成された状態の場合には、その隙間と連通する。溝25には、第2のガス供給部102から、熱伝導ガスが供給される。熱伝導ガスは、試料10と載置台20との熱伝導の効率を高めるためのガスであり、例えばHeガスである。
【0061】
第2のガス供給部102は、第1ガス制御部201、第2ガス制御部202を含む。中心の溝25aは、第1ガス制御部201と接続されている。内周の溝25b及び外周の溝25cは、第2ガス制御部201と接続されている。第2のガス供給部102は、載置台20を通じて溝25に熱伝導ガスを供給し、その溝25やその上の隙間に充填される熱伝導ガスの圧力が所定値となるように流量を所定値に制御する。圧力と流量は所定の関係を持つ。
【0062】
中心の溝25aは、リフトピン30を上げて試料10と載置台20との隙間が形成された状態の時に、その隙間に熱伝導ガスを供給するための要素として設けられている。第1ガス制御部201は、加熱や冷却を伴う所定の工程の際に、溝25aに対して熱伝導ガスを供給する。第1ガス制御部201は、加熱を伴う工程の際には、第1の熱伝導ガスを供給し、冷却を伴う工程の際には、第2の熱伝導ガスを供給する。
【0063】
溝25b及び溝25cは、リフトピン30を下げて試料10と載置台20との隙間が無い状態の時に、冷却効率のために熱伝導ガスを供給するための要素として設けられている。第2ガス制御部202は、静電吸着等を行う所定の工程の際に、溝25b及び溝25cに対して第3の熱伝導ガスを供給する。
【0064】
載置台20の上部における半径方向の外側には、ずれ止め部29が配置されている。なお、ずれ止め部29が無い装置の場合もある。ずれ止め部29は、試料10の半径方向の位置ずれを止める部分である。ずれ止め部29は、試料10の径よりも大きい径を持ち、例えば円筒形状の物体で構成される。試料10が所定の位置、即ち中心軸に合わせた位置に載置されている状態では、試料10の円周の端部と、ずれ止め部29との間に余裕距離を有し、両者は接触しない。試料10の位置ずれ量が所定値に達すると、試料10の円周の端部が、ずれ止め部29に接触する。実施の形態では、載置台20と試料10との位置ずれを抑止する機構を有し、試料10の端部とずれ止め部29との接触が防止される。
【0065】
[リフトピン(1)]
図3は、処理室13内の載置台20における、リフトピン30を含む機構に関する断面構成を示す。図3では、後述の加熱脱離工程に対応した第1の状態を示す。図3では、リフトピン30を上げることで載置台20と試料10との隙間40が形成されている状態を示す。図3では、電極24等を省略して示す。
【0066】
リフトピン30のZ方向の基準位置を、載置台20の上面s3の位置とする。リフトピン30の高さをHで表す。リフトピン30の先端が載置台20の上面s3の基準位置にある状態のリフトピン30の高さHが0である。リフトピン30の先端が載置台20の上面s3から出ている場合、その出ている部分の長さがリフトピン30の高さHである。同様に、試料10の高さも、Hで表すことができる。
【0067】
リフトピン30の高さの状態に応じて、Z方向において、載置台20の上面s3と、試料10の裏面s2との間に、Z方向における隙間40が形成される。その隙間40のZ方向の高さも、Hで表すことができる。
【0068】
リフトピン30が基準位置の高さH=0にある場合、図2や後述の図5のように、載置台20に載置された試料10は、載置台20の上面s3と試料10の裏面s2とが接した状態となる。加熱脱離工程の際には、ピン駆動部103により、リフトピン30をZ方向で上方に移動させ、リフトピン30の高さHを、0よりも大きい所定の第1の高さH1の状態にする。これにより、試料10及び隙間40の高さも第1の高さH1となる。
【0069】
ピン駆動部103は、制御部110からの駆動制御に基づいて、リフトピン30をZ方向で上下に移動させる駆動を行う。これにより、リフトピン30の先端の位置を変えて、リフトピン30、試料10及び隙間40の高さHを変えることができる。
【0070】
リフトピン30は、複数のピンで構成されている。複数のピンは、載置台20をZ方向で上から見た円形領域内で、後述の図6のように、中心軸に対し軸対称の位置に配置されている。リフトピン30の位置や数や形状は、試料10の支持の安定性が確保されるように軸対称であればよく、上記に限らず各種が可能である。
【0071】
載置台20には、リフトピン30の複数のピンの位置に対応して、Z方向に延在する複数の貫通穴が設けられている。複数の貫通穴に複数のピンが貫通されている。複数のピンは、Z方向の下端が、載置台20の下側で、ピン固定板31に固定されている。ピン固定板31は、円板形状を持つ。ピン固定板31は、ピン駆動部103と接続されている。ピン駆動部103は、モータ等の駆動により、ピン固定板31をZ方向で上下に所定範囲内で移動させる。ピン固定板31のZ方向の移動に伴い、複数のピンもZ方向で一体的に移動する。よって、リフトピン30の先端のZ方向の位置及び高さを、一定に揃えながら、所定範囲内で変えることができる。即ち、試料10及び隙間40の高さを、0から最大値までの所定範囲内で変えることができる。リフトピン30の機構は、上記に限らず適用可能である。
【0072】
なお、従来技術のリフトピンは、搬送補助に使用されている。一方、実施の形態では、リフトピン30は、搬送補助だけでなく、加熱や冷却を伴う工程の際の熱伝導ガス供給制御に関連して、試料10と載置台20との隙間40の高さを好適に調整する目的で使用されている。
【0073】
[リフトピン(2)]
図4は、図3と同様に、リフトピン30を含む機構に関する断面構成を示す。図4では、後述の第1冷却工程に対応した第2の状態を示す。図4では、リフトピン30を上げることで載置台20と試料10との隙間40が形成されている状態を示す。図4では、リフトピン30の高さは、図3の状態の第1の高さH1よりも低い第2の高さH2となっている。
【0074】
[リフトピン(3)]
図5は、図3と同様に、リフトピン30を含む機構に関する断面構成を示す。図5では、後述の第2冷却工程に対応した第3の状態を示す。図5では、リフトピン30を下げて基準位置とすることで載置台20と試料10との隙間40が形成されない状態を示す。図5では、リフトピン30の高さはH=0となっている。なお、この状態では、隙間40は無いが、前述の溝25により形成される空洞は存在する。説明上、隙間40と溝25とを区別する。
【0075】
[熱伝導ガス供給(1)]
図3を用いて、第1の熱伝導ガスの供給制御について説明する。プラズマ処理装置は、後述の加熱脱離工程の際、ピン駆動部103によりリフトピン30の高さを第1の高さH1として、載置台20から試料10を持ち上げて隙間40が有る第1の状態にし、ランプ16により試料10を加熱する。その際、プラズマ処理装置は、第1のガス供給部101から供給室12を通じて処理室13に不活性ガスを供給する。同時に、プラズマ処理装置は、第2のガス供給部102の第1ガス制御部201から第1の熱伝導ガスを載置台20の溝25aへ供給して隙間40に流す。その際、プラズマ処理装置は、試料10の表面s1にかかる不活性ガスと、試料10の裏面s2にかかる第1の熱伝導ガスとにおける圧力及び流量をバランスさせる。
【0076】
第1ガス制御部201は、中心の溝25aへ、所定の温度及び流量の第1の熱伝導ガスを供給する。これにより、溝25aを通じて、載置台20の上面s3と試料10の裏面s2との隙間40に第1の熱伝導ガスが供給され、その隙間40で中心軸から円周へ向けて半径方向に第1の熱伝導ガスの流れが形成される。溝25aから上へ出た第1の熱伝導ガスは、隙間40を半径方向に流れ、載置台20及び試料10の円周から外側へ流れ出る。
【0077】
第1ガス制御部201は、溝25aへ第1の熱伝導ガスを供給する際、試料10の裏面s2における第1の熱伝導ガスの圧力及び流量が所定値になるように制御する。この圧力を第2の圧力P2、この流量を第2の流量F2とする。
【0078】
一方、同時に、第1のガス供給部101からは、処理室13内の試料10の表面s1に対して不活性ガスを供給する。第1のガス供給部101は、試料10の表面s1における不活性ガスの圧力及び流量が所定値になるように制御する。この圧力を第1の圧力P1、この流量を第1の流量F1とする。
【0079】
制御部110は、加熱脱離工程の際、不活性ガスの第1の圧力P1と第1の熱伝導ガスの第2の圧力P2とをバランスさせるように制御する。このバランスは、第1の圧力P1と第2の圧力P2とを略一致させること(P1≒P2)、あるいは、第1の圧力P1よりも第2の圧力P2をやや小さくすることである。後者の条件は、差分値を所定値以下とすることである(0≦(P1−P2)≦[所定値])。この条件は、試料10の重さも考慮して規定される。P1<P2にすると、試料10がZ方向で上に遊離する可能性があるので、P1≧P2とする。
【0080】
加熱時にはランプ16によって試料10が加熱されるので、加熱効率を考慮すると、載置台20と試料10との間での熱伝導が小さい方がよい。そのため、この加熱の工程では、隙間40の高さHを、相対的に高い第1の高さH1としている。また、同じ理由で、この加熱の工程では、後述の冷却の工程と比較して、不活性ガス及び第1の熱伝導ガスの圧力を相対的に小さくしている。
【0081】
また、リフトピン30によって試料10の裏面s2が載置台20の上面s3と接しない状態にされるため、加熱に伴う試料10と載置台20との摩擦が防止され、微小異物の発生等が防止される。
【0082】
また、隙間40に所定の流量及び方向で第1の熱伝導ガスを流すことにより、試料10の加熱によって表面s1から揮発及び脱離した反応生成物等が、隙間40に回り込んで試料10の裏面s2や載置台20の上面s3等に付着してしまうことも防止される。
【0083】
[熱伝導ガス供給(2)]
図4を用いて、第2の熱伝導ガスの供給制御について説明する。プラズマ処理装置は、後述の第1冷却工程の際、ピン駆動部103によりリフトピン30の高さを第2の高さH2として、載置台20から試料10を持ち上げて隙間40が有る第2の状態にし、温調器17を用いて試料10を冷却する。その際、プラズマ処理装置は、第1のガス供給部101から供給室12を通じて処理室13に不活性ガスを供給する。同時に、プラズマ処理装置は、第2のガス供給部102の第1ガス制御部201から第2の熱伝導ガスを載置台20の溝25aへ供給して隙間40に流す。その際、プラズマ処理装置は、試料10の表面s1にかかる不活性ガスと、試料10の裏面s2にかかる第2の熱伝導ガスとにおける圧力及び流量をバランスさせる。
【0084】
第1ガス制御部201は、中心の溝25aへ、所定の温度及び流量の第2の熱伝導ガスを供給する。これにより、溝25aを通じて、載置台20の上面s3と試料10の裏面s2との隙間40に第2の熱伝導ガスが供給され、その隙間40で中心軸から円周へ向けて流れが形成される。
【0085】
第1ガス制御部201は、溝25aへ第2の熱伝導ガスを供給する際、試料10の裏面s2における第2の熱伝導ガスの圧力及び流量が所定値になるように制御する。この圧力を第4の圧力P4、この流量を第4の流量F4とする。
【0086】
一方、同時に、第1のガス供給部101からは、処理室13内の試料10の表面s1に対して不活性ガスを供給する。第1のガス供給部101は、試料10の表面s1における不活性ガスの圧力及び流量が所定値になるように制御する。この圧力を第3の圧力P3、この流量を第3の流量F3とする。
【0087】
制御部110は、第1冷却工程の際、不活性ガスの第3の圧力P3と第2の熱伝導ガスの第4の圧力P4とをバランスさせるように制御する。このバランスは、第3の圧力P3と第4の圧力P4とを略一致させること(P3≒P4)、あるいは、第3の圧力P3よりも第4の圧力P4をやや小さくすることである(0≦(P3−P4)≦[所定値])。
【0088】
プラズマ処理装置は、プラズマ処理の際、加熱や冷却の工程に合わせて、リフトピン30、試料10、及び隙間40の高さを、複数の段階で変えるように制御する。これにより、試料10の裏面s2と載置台20の上面s3との距離を、複数の段階で変えて、熱伝導の効率を調整する。これにより、加熱効率や冷却効率をそれぞれ高める。
【0089】
実施の形態では、制御部10は、加熱脱離工程の際のリフトピン30の第1の高さH1よりも、第1冷却工程の際のリフトピン30の第2の高さH2を低くする(H1>H2)。H1>H2とする条件の理由としては、加熱脱離工程では、試料10を相対的に高い位置にして、ランプ16に近付くようにして、加熱効率を高める。第1冷却工程では、試料10を相対的に低い位置にして、ランプ16から離れて載置台20に近付けるようにして、冷却効率を高める。
【0090】
また、制御部10は、加熱脱離工程の際の第2の圧力P2よりも、第1冷却工程の際の第4の圧力P4を大きくし(P2<P4)、かつ、加熱脱離工程の際の第1の圧力P1よりも、第1冷却工程の際の第3の圧力P3を大きくする(P1<P3)。これにより、加熱効率や冷却効率をそれぞれ高める。この圧力の条件の理由として、加熱脱離工程では第1の圧力P1を相対的に小さくし、試料10の表面s1からの物質の揮発及び脱離の効率を高める。
【0091】
[熱伝導ガス供給(3)]
図5を用いて、第3の熱伝導ガスの供給制御について説明する。プラズマ処理装置の制御部110は、加熱脱離工程や第1冷却工程を経た後、試料10の温度が規定値以下になった場合、試料10を載置台20の上面s1に固定させる静電吸着を開始させる。プラズマ処理装置は、その静電吸着を、冷却を伴う第2冷却工程として行う。第1冷却工程の冷却と第2冷却工程の冷却は異なる。
【0092】
プラズマ処理装置は、後述の第2冷却工程の際、ピン駆動部103によりリフトピン30の高さをH=0として、隙間40が無い第3の状態にし、温調器17を用いて試料10を冷却する。その際、プラズマ処理装置は、第2のガス供給部102の第2ガス制御部202から第3の熱伝導ガスを載置台20の溝25b及び溝25cへ供給し、溝25b及び溝25cによる空洞に流す。
【0093】
第2ガス制御部202は、内周の溝25b及び外周の溝25bへ、所定の温度及び流量の第3の熱伝導ガスを冷媒として供給する。これにより、溝25b及び溝25bと試料10の裏面s2とで形成される空洞に、第3の熱伝導ガスが充填され、循環して流れる。試料10の裏面s2は、複数の箇所で、その空洞の第3の熱伝導ガスに接している。これにより、空洞の第3の熱伝導ガスを介して、試料10と載置台20との熱伝導が促進され、冷却効率を高めることができる。
【0094】
なお、第1ガス制御部201から溝25aに供給する第1の熱伝導ガスや第2の熱伝導ガスと、第2ガス制御部202から溝25b及び溝25cに供給する第3の熱伝導ガスとでは、異なる目的に対応した異なる圧力及び流量を持つ。第1の熱伝導ガスや第2の熱伝導ガスは、円周で開口している隙間40に流す必要があり、また、中心軸から円周へ向かう流れを形成する必要がある。そのため、第1の熱伝導ガスや第2の熱伝導ガスは、相対的に大きな流量にされる。
【0095】
[熱伝導ガス供給(4)]
図6は、図2等に対応した、載置台20の誘電体膜23の上面における溝25等の形状の例を示す。矢印は、前述の第1の熱伝導ガスや第2の熱伝導ガスの流れの方向を示す。中心軸の溝25aに、相対的に大きな流量で熱伝導ガスが供給され、溝25aから円周の全体に向けて広がるように熱伝導ガスが流れる。
【0096】
また、図6の例では、破線で示す円周上に、4本のリフトピン30が配置されている。
【0097】
[プラズマ処理シーケンス]
図7は、実施の形態のプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法における、詳しいプラズマ処理のシーケンスに対応するタイミングチャートを示す。このプラズマ処理は、反応層の形成及び脱離を伴うプラズマエッチング処理であり、加熱及び冷却を繰り返す処理である。図5で横軸は時間を示し、縦方向には順に、(a)載置台温度、(b)試料温度、(c)第1電極電圧、(d)第2電極電圧、(e)処理室圧力、(f)第1及び第2の熱伝導ガス流量、(g)第3の熱伝導ガス流量、(h)試料及びピン高さ、を示す。
【0098】
(a)の載置台20の温度をTsとする。(b)の試料10の温度をTwとする。(c)の電極24のうちの第1電極の電圧をV1とする。(d)の電極24のうちの第2電極の電圧をV2とする。(e)の処理室13の圧力は、最初、所定の圧力P0である。(f)の第1及び第2の熱伝導ガス流量は、第1ガス制御部201から溝25aに供給する第1の熱伝導ガスや第2の熱伝導ガスの流量を示す。(g)の第3の熱伝導ガス流量は、第2流量制御部202から溝25b及び溝25bに供給する第3の熱伝導ガスの流量を示す。(h)の試料及びピン高さは、載置台20の上面s2を基準位置とした、Z方向におけるリフトピン30、試料10、及び隙間40の高さHを示す。
【0099】
時間軸で時点t1〜t9を示す。時点t1は、処理室12に試料10が搬入される時点を示す。時点t2は、第1サイクル601の開始及び第1ステップS1の開始の時点を示す。第1サイクル601は、第1ステップS1から第4ステップS4までを含む。第1ステップS1は、表面吸着工程である。第2ステップS2は、加熱脱離工程であり、加熱を伴い、反応層の揮発及び脱離を行う工程である。第3ステップS3は、第1冷却工程であり、試料10の冷却を行う工程である。第4ステップS4は、第2冷却工程であり、冷却を伴い、静電吸着を行う工程である。
【0100】
時点t3は第2ステップS2の開始時点、時点t4は第3ステップS3の開始時点、時点t5は第3ステップS3の終了時点である。時点t6は第4ステップS4の開始時点、時点t7は第4ステップS4の終了時点である。第1サイクル601の次には、図示しないが、第1サイクル601と略同様内容を持つ、第2サイクル、第3サイクル等が繰り返される。その後、最終サイクルである第Nサイクル602がある。即ち、第1ステップS1から第4ステップS4を含むサイクルが、N回繰り返される。時点t8は第Nサイクルの開始時点、時点t9は第Nサイクルの終了時点及び試料10の搬出の時点を示す。
【0101】
まず、搬送部により、処理室13内に試料10が搬送される。その試料10は、載置台20の上面s3に載置される。その際、所定の高さH0にされたリフトピン30を用いて、試料10が受け渡しされる。リフトピン30は一旦高さがH=0にされ、載置台20の上面s3と試料10の裏面s2とが接する状態となる。
【0102】
時点t1で、載置台20の温度Tsは所定の温度T0である。この温度Tsは基本的に一定値に維持されるように制御される。温度Tsは、実際には加熱や冷却に伴って変動するが、図示を省略する。
【0103】
その後、時点t1で、電極駆動部104から電極24に電圧を印加して静電吸着を行うことにより、試料10を載置台20の上面s3に固定する。この際、時点t1から時点t3の期間では、電極24における前述の第1電極に電圧V1が印加され、第2電極に電圧V2が印加される。
【0104】
上記静電吸着と共に、時点t1以降、試料10と載置台20との間には、第2のガス供給部102から、熱伝導ガスが供給される。前述の溝25による空洞に、熱伝導ガスが充填される。また、時点t1から時点t3では、第2ガス制御部202により、第3の熱伝導ガスの流量が制御される。具体的には、その制御として、流量が所定の流量Fxと0との間で一定周期で変動するように制御される。これにより、試料10は、載置台20の温度に近付くように調整される。時点t2で試料10が載置台20の温度Ts=T0になった後、S1で示す表面吸着工程が開始される。
【0105】
S1の表面吸着工程では、第1のガス供給部101から供給室12に処理ガスが供給され、コイル15の磁場を用いて処理ガスに基づいてプラズマが形成され、プラズマからラジカルが生成される。このラジカルが処理室13内へ供給され、試料10の表面s1に付着し、試料10と反応して、試料10の表面s1に反応層を形成する。リフトピン30の高さはH=0のままである。
【0106】
詳しくは、S1で、処理室12内の圧力は、所定の圧力Pxにされる。試料10の表面にかかる圧力もPxである。図7中の期間G1は、S1に対応して、処理ガスが供給される期間を示す。第1の熱伝導ガス等の流量は0である。第3の熱伝導ガスの流量は、流量Fxと0とで変動する。
【0107】
次に、時点t3で、S2で示す加熱脱離工程が開始される。S2では、ランプ16により試料10を加熱し、試料10の表面s1にできている反応層の反応生成物を揮発及び脱離させる。このランプ16での加熱時に、試料10を載置台20に固定したままとする場合には、載置台20によって冷却の作用を受ける。そのため、前述のように、加熱効率の低下、試料10と載置台20との熱膨張率の違いによる摩擦、摩擦による微小異物の発生、等の課題がある。
【0108】
そこで、実施の形態では、この際、リフトピン30の制御により、試料10を持ち上げて、試料10と載置台20との隙間40を形成する。これにより、試料10と載置台20との摩擦等が抑止される。
【0109】
しかし、この隙間40に、試料10の表面s1から揮発及び脱離した反応生成物が回り込み、試料10の裏面s2や載置台20の上面s3に付着して、載置台10の吸着や冷却等の性能の低下を招く恐れもある。
【0110】
そこで、実施の形態では、更に、前述の載置台20の中心軸の溝25aへ熱伝導ガスを供給し、隙間40に半径方向で外側へ向かう熱伝導ガスの流れを形成する。これにより、上記のような反応生成物の回り込み等も防止される。
【0111】
また、この際、制御部110は、第1のガス供給部101から供給室12を介して処理室13へ不活性ガスを供給及び充填し、試料10の表面s1にかかる圧力と、裏面s2の隙間40に流れる熱伝導ガスの圧力とをバランスさせる。これにより、試料10の位置がX方向及びY方向でずれることや、Z方向で上に遊離すること等が防止される。また、ずれ止め部29に試料10の端部が繰り返し接触することも防止される。
【0112】
ただし、処理室13の試料10の表面s1に対して充填される不活性ガスの圧力が高すぎると、表面s1から反応生成物が揮発及び脱離しにくくなる。よって、制御部110は、試料10の表面s1の不活性ガスの圧力を所定値以下とし、その圧力と、試料10の裏面s2の熱伝導ガスの圧力とを、適切に調整してバランスさせる。
【0113】
S2で、詳しくは、試料10の温度Twは、加熱により、例えば温度T1となる。処理室13の試料10の表面s1に対する圧力は、第1の圧力P1にされる。この時、流量としては、第1の圧力P1に関係付けられる第1の流量F1にされる。図7中の期間G2は、S2及びS3に対応して、処理室13に不活性ガスが供給される期間を示す。第1の熱伝導ガスの流量は、第2の流量F2にされる。この時、圧力としては、第2の流量F2に関係付けられる第2の圧力P2にされる。また、時点t3から時点t6の期間では、第3の熱伝導ガスの流量の制御はオフにされ、流量は0である。
【0114】
また、S2の期間では、リフトピン30、試料10及び隙間40の高さHが、所定の第1の高さH1にされる。第1の高さH1は、後述のS3の時の第2の高さH2よりも大きい。試料10は、Z方向で載置台20から離され、ランプ16に近付く位置となる。これにより、加熱効率が高くなる。
【0115】
次に、S3で示す第1冷却工程に移る。S2で反応生成物を揮発させるために加熱された試料10は高温の温度T1となっている。この高温の試料10をそのまま載置台20の上面s3に載置、静電吸着させて冷却を行う場合、膨張していた試料10が縮み、載置台20との摩擦が比較的大きく発生する。
【0116】
そのため、S3の第1冷却工程では、リフトピン30により試料10を所定の第2の高さH2の位置に持ち上げた状態で、基準の温度T2以下になるまで、試料10の冷却を実行する。試料10の冷却は、温調器17からの載置台20の冷却、及び第2の熱伝導ガスによる熱伝導を通じて行われる。
【0117】
また、真空状態の処理室13内での熱伝導の効率を改善するために、試料10の裏面s2に熱伝導ガスが流される。即ち、第2のガス供給部102から、冷媒に対応する第2の熱伝導ガスが溝25aへ供給される。第2の熱伝導ガスは、第2の高さH2の隙間40で中心軸から半径方向へ流れ円周から流れ出る。S3では、第2の熱伝導ガスの流量は、第4の流量F4にされ、それに対応する圧力が第4の圧力P4である。
【0118】
また、試料10の裏面s2に熱伝導ガスを流すだけでは、S2の加熱脱離工程の時と同様に、試料10の位置ずれ等が発生する恐れがある。そのため、S3でも、第1のガス供給部101により処理室13に所定の不活性ガスを供給及び充填する。S3で処理室13内の試料10の表面s1の圧力は、第3の圧力P3にされ、それに対応して流量が第3の流量F3にされる。制御部110は、試料10の表面s1にかかる第3の圧力P3と、裏面s2にかかる第4の圧力P4とをバランスさせる。これにより、S3でも、試料10の位置ずれ等が防止される。
【0119】
また、S3の第1冷却工程では、できるだけ冷却効率を高めるために、S2の加熱脱離工程よりも、高い圧力で不活性ガスを充填し(P1<P3)、その圧力に合わせて、試料10の裏面s2に流す第2の熱伝導ガスの圧力及び流量を増加させる(P2<P4,F2<F4)。これにより、隙間40の第2の熱伝導ガスを介して載置台20と試料10との熱伝導が促進される。
【0120】
また、S3では、冷却効率を高めるために、リフトピン30の高さHを、S2の時の第1の高さH1よりも小さい第2の高さH2とし(H1>H2)、試料10を載置台20の上面s1により近付けた状態とする。これにより、温調器17から空洞21の冷媒を通じて冷却されている載置台20と、試料10との間での熱伝導が促進される。
【0121】
次に、制御部110は、モニタ値に基づいて、試料10の温度が、基準の温度T2以下になった場合、即ち時点t5で温度T2になったタイミングで、S3の第1冷却工程からS4の第2冷却工程へ遷移させる。即ち、制御部110は、S3の不活性ガス及び熱伝導ガスの供給を停止し、処理室13の圧力を減少させる。基準の温度T2は、摩擦力が許容範囲内になる規定値を示す。これにより、処理室13の圧力は、第3の圧力P3から圧力P0に下がる。試料10の裏面の圧力は、第4の圧力P4から0に下がる。
【0122】
処理室13の圧力が高いまま、試料10を載置台20の上面に吸着させようとする場合、試料10と載置台20の間のガスによって試料が10の位置ずれ等を生じる恐れがある。よって、制御部110は、上記ガス供給の停止、圧力減少の制御を行う。
【0123】
制御部110は、処理室13の圧力が規定値まで下がった時点で、S4で示す第2冷却工程を実行する。S4では、ピン駆動部103によりリフトピン30の高さHを0にして隙間40を無くす。そして、電極駆動部104から電極24に電圧を印加して、試料10を載置台20に静電吸着する。そして、第2のガス供給部102の第2ガス制御部202から、所定の流量及び温度の第3の熱伝導ガスを、溝25b及び溝25cによる空洞へ供給及び充填する。これにより、第3の熱伝導ガスを介して載置台20及び試料10が冷却される。S4では、第3の熱伝導ガスの流量の制御として、S1の時と同様に、流量が所定の流量Fxと0とで変動するように制御される。
【0124】
S4では、高さHが0であり、試料10の裏面s2と載置台20の上面s3とが接した状態で冷却が行われる。その試料10はS3で熱膨張による載置台20との摩擦が問題無くなる温度まで冷却済みである。そのため、S4の冷却では、摩擦による位置ずれ等の問題は生じない。
【0125】
上記S4の終了により第1サイクル601が終了し、次に第2サイクルが同様に実行される。このプラズマ処理のシーケンスでは、1つのサイクルを、所定のエッチング量となるまで、数回から十数回程度繰り返す。そして、最終の第Nサイクル602におけるS4の第2冷却工程では、試料10の温度Twが、搬送部により搬出可能な所定の温度T3まで下がった時点t9で、搬送部により試料10を搬出する。これにより、プラズマ処理が終了する。
【0126】
実施の形態のプラズマ処理方法では、上記プラズマ処理のシーケンスの通り、試料10と載置台20との摩擦、試料10の位置ずれ、微小異物の発生、等を防止することができる。
【0127】
[効果等]
以上説明したように、実施の形態のプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法によれば、試料10と載置台20との摩擦や位置ずれ等を防止または低減でき、処理の品質や効率を高めることができ、等方的で高選択性を持つエッチング等を実現できる。
【0128】
実施の形態のプラズマ処理装置は、加熱を伴う工程であるS2の加熱脱離工程と、冷却を伴う工程であるS3の第1冷却工程とを含むプロセスを繰り返すプラズマエッチング処理を行う。その際、プラズマ処理装置は、処理効率を高めるため、即ち熱伝導ガスを用いた熱伝導を促進するため、特有のガス供給制御を行う。即ち、プラズマ処理装置は、リフトピン30の高さを制御して、載置台20と試料との隙間40を意図的に形成し、その隙間40に中心軸から円周へ向かうように熱伝導ガスを流す。同時に、プラズマ処理装置は、試料10の表面s1に対しても不活性ガスを流す。そして、プラズマ処理装置は、試料10の表面s1のガスの圧力と裏面s2のガスの圧力とをバランスさせる。
【0129】
これにより、試料10と載置台20との熱伝導を促進しながら、試料10と載置台20との摩擦や位置ずれ等も防止できる。また、摩擦による試料10の磨耗、微小異物の発生、ずれ止め部29との接触によるダメージ等を防止できる。また、ガスで微小異物が流されて試料10へ付着することによる品質低下や、載置台20の性能低下等を防止できる。
【0130】
実施の形態のプラズマ処理装置等の変形例として、以下が挙げられる。真空容器11の構成としては、供給室12と処理室13とが1つの室に統合された構成でもよい。また、第1のガス供給部101から、不活性ガスを、直接、処理室13内に導入する構成としてもよい。
【0131】
プラズマ処理方法としては、図7のプラズマ処理のシーケンスの一部の工程を省略した形態も可能である。例えば、S3やS4のような冷却を伴う工程を省略したプラズマ処理のシーケンスも可能である。例えば、S2のような加熱を伴う工程を省略したプラズマ処理のシーケンスも可能である。
【0132】
変形例として、プラズマ処理装置は、S2の加熱脱離工程の期間内で、リフトピン30の高さを複数段階で変えるように調整してもよい。例えば、前述の第1の高さH1について、更に、高さH1a、高さH1b、等の複数段階が設けられる。例えば、H1a>H1bである。最初、ランプ16に近付けた位置H1aとし、次にランプ16から離した位置H1bにする。
【0133】
同様に、変形例として、プラズマ処理装置は、S3の第1冷却工程の期間内で、リフトピン30の高さを複数段階で変えるように調整してもよい。例えば、前述の第2の高さH2について、更に、高さH2a、高さH2b、等の複数段階が設けられる。例えば、H2a<H2bである。最初、載置台20に近付けた位置H2aとし、次に載置台20から離した位置H2bにする。
【0134】
以上、本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。実施の形態では、誘導結合によるプラズマ生成手段を適用したが、これに限らず、容量結合型や、マイクロ波電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)等のプラズマ生成手段も適用可能である。
【0135】
[付記]
実施の形態のプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法として、以下が可能である。
【0136】
(1) プラズマ処理装置は、S2の加熱脱離工程の際、リフトピンを第1の高さとした第1の状態にし、第1の状態において、加熱部により試料を加熱し、第1のガス供給部により処理室に不活性ガスを供給し、第2のガス供給部により載置台の流路を通じて試料の裏面に熱伝導ガスを供給して、試料と載置台との隙間に熱伝導ガスを流し、第1の状態における、試料の表面の不活性ガスの圧力と、試料の裏面の熱伝導ガスの圧力とをバランスさせる(P1≒P2)。
【0137】
(2) プラズマ処理装置は、S3の第1冷却工程の際、リフトピンを第2の高さとした第2の状態にし、第2の状態において、冷却部により載置台を冷却し、第1のガス供給部により処理室に不活性ガスを供給し、第2のガス供給部により載置台の流路を通じて試料の裏面に熱伝導ガスを供給して、試料と載置台との隙間に熱伝導ガスを流し、第2の状態における、試料の表面の不活性ガスの圧力と、試料の裏面の熱伝導ガスの圧力とをバランスさせる(P3≒P4)。
【0138】
(3) プラズマ処理装置は、更に、上記(1)の第1の状態の動作の後、上記(2)の第2の状態の動作を行い、第1の状態の動作と第2の状態の動作とを含むプロセスを複数回繰り返す。
【0139】
(4) 上記(1)〜(3)のプラズマ処理装置は、更に、静電吸着を行う。上記(1)のプラズマ処理装置の制御部は、第1の状態の後、ピン駆動部を通じてリフトピンにより試料の裏面を載置台の上面に接する状態として、電極駆動部により電極に電圧を印加して、試料を載置台に静電吸着させる。同様に、上記(2)のプラズマ処理装置の制御部は、第2の状態の後、試料を載置台に静電吸着させる。
【0140】
(5) 上記(3)のプラズマ処理装置の制御部は、更に、第1の状態の時の試料の表面の不活性ガスの圧力よりも、第2の状態の時の試料の表面の不活性ガスの圧力を大きくし、かつ、第1の状態の時の試料の裏面の熱伝導ガスの圧力よりも、第2の状態の工程の時の試料の裏面の熱伝導ガスの圧力を大きくする(P1<P3,P2<P4)。
【0141】
(6) 上記(1)〜(3)のプラズマ処理装置の制御部は、更に、第1の状態の工程または第2の状態の工程またはその両方の工程の際、リフトピンの高さ、即ち試料の高さ及び隙間の高さを、複数の段階で変化させる。例えば、上記(3)のプラズマ処理装置は、第1の状態の時にはリフトピンの高さを第1の高さとし、第2の状態の時にはリフトピンの高さを第1の高さよりも低い第2の高さにする(H1>H2)。
【0142】
(7) 上記(1)〜(3)のプラズマ処理装置は、更に、第1のガス供給部により処理室の試料の表面に不活性ガスを一様に供給し、第2のガス供給部により載置台の流路を通じて試料の裏面の中心軸の位置に熱伝導ガスを供給し、隙間において、中心軸の位置から半径方向へ熱伝導ガスが流れて試料の円周から外側へ流れ出るようにする。
【0143】
(8) 上記(1)のプラズマ処理装置は、更に、載置台の上面において、中心軸の位置に、流路につながる第1の溝が設けられており、第1の溝よりも外周の位置に第2の溝が設けられている。制御部は、第1の状態の工程の前または後またはその両方の時に、ピン駆動部を通じてリフトピンにより試料の裏面を前記載置台の上面に接する状態として、第2のガス供給部により第2の溝へ冷媒となる第3の熱伝導ガスを供給する。同様に、上記(2)のプラズマ処理装置の制御部は、第2の状態の工程の前または後またはその両方の時に、第3の熱伝導ガスを供給する。
【0144】
(9) 上記(3)のプラズマ処理装置の制御部は、更に、第2の状態の工程の後、試料の温度が規定値になった時点で、電極駆動部を通じて電極に電圧を印加して試料を載置台に静電吸着させる。
【符号の説明】
【0145】
10…試料、11…真空容器、12…供給室、13…処理室、14…整流板、15…コイル、16…ランプ、17…温調器、18…温度計、20…載置台、21…空洞、22…金属板、23…誘電体膜、24…電極、25…溝、30…リフトピン、40…隙間、101…第1のガス供給部、102…第2のガス供給部、103…ピン駆動部、104…電極駆動部、110…制御部、111…モニタ部、112…制御処理部、113…駆動制御部、114…設定部、201…第1ガス制御部、202…第2ガス制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7