(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、チャンバに供給されるガスの流量は、流量制御器によって設定流量に制御される。上述したCOR処理のように、二種以上のガスを用いて膜から反応生成物を生成し、当該反応生成物を昇華させて除去するエッチングにおいても、チャンバに供給されるガスの流量は、流量制御器によって設定流量に制御される。このようなエッチングにおいて、流量制御器の流量制御の精度は、被加工物の膜のエッチング結果に影響を与える。したがって、流量制御器は、ガスが設定流量でチャンバに供給されるよう較正される。
【0006】
流量制御器の較正手法として、ビルドアップ法が知られている。ビルドアップ法では、その流量が流量制御器によって調整されたガスがチャンバに供給されている状態で、チャンバの圧力上昇レートが求められる。求められた圧力上昇レートから、チャンバに供給されたガスの流量の測定値が取得される。この測定値を用いて、流量制御器が較正される。
【0007】
上述した二種以上のガスのうち第1のガスの流量を制御する流量制御器の較正が行われると、チャンバを画成する壁面及びチャンバ内のステージの表面には、当該第1のガスを構成する粒子(例えば分子)が付着する。第1のガスを構成する粒子が壁面及びステージに付着した状態で、上述した二種以上のガスを用いたエッチングが複数の被加工物に対して順次実行されると、最初に処理される被加工物の膜のエッチングの結果と後に処理される被加工物のエッチングの結果に差が生じる。したがって、流量制御器の較正後に順次処理される被加工物の膜のエッチングの結果の差を低減させることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様においては、処理システムを用いて被加工物の膜をエッチングする方法が提供される。処理システムは、第1の処理装置及び第2の処理装置を有する。第1の処理装置は第1のチャンバ本体、ステージ、ガス供給部、排気装置、及び、バルブを有する。第1のチャンバ本体は、その内部空間を第1のチャンバとして提供する。ステージは、第1のチャンバ内に設けられている。ガス供給部は、第1のチャンバに第1のガス及び第2のガスを供給するよう構成されている。ガス供給部は、第1のガスの流量を制御する流量制御器を有する。第1のガス及び第2のガスは被加工物の膜と反応して反応生成物を形成する。排気装置は、第1のチャンバを排気するよう構成されている。バルブは、第1のチャンバと排気装置との間で接続されている。第2の処理装置は、第2のチャンバを提供する第2のチャンバ本体、及び、第2のチャンバ内で被加工物を加熱するためのヒータを有する。
【0009】
一態様に係る方法は、(i)流量制御器を較正する工程であり、バルブが閉じられ、且つ、その流量が流量制御器によって調整された第1のガスが第1のチャンバに供給されている状態における第1のチャンバの圧力の上昇レートから、第1のガスの流量の測定値が取得され、該測定値を用いて流量制御器が較正される、該工程と、(ii)第1のチャンバに第2のガスを供給する工程と、(iii)第1のチャンバを排気する工程と、(iv)ステージ上に物体が載置されていない状態で第1のチャンバに第1のガス及び第2のガスを含む混合ガスを供給する工程と、(v)被加工物がステージ上に載置されている状態で第1のチャンバに第1のガス及び第2のガスを含む混合ガスを供給することにより、被加工物の膜から反応生成物を形成する工程と、(vi)反応生成物を有する被加工物が第2のチャンバに収容された状態で、反応生成物を有する被加工物を加熱することにより、反応生成物を除去する工程と、を含む。
【0010】
一態様に係る方法では、第1のガス用の流量制御器が較正された後に、第1のチャンバに第2のガスが供給される。これにより、第1のチャンバ本体の壁面及びステージの表面に付着している第1のガスを構成する粒子の量が低減される。その後に、第1のガス及び第2のガスを含む混合ガスが第1のチャンバに供給されることにより、第1のチャンバ本体の壁面及びステージの表面の状態が、膜から反応生成物を形成する処理の実行時の定常的な状態になる。その結果、被加工物の膜から反応生成物を形成する工程及び反応生成物を除去する工程を含むエッチングによって、複数の被加工物が順次に処理されても、当該複数の被加工物の膜のエッチング結果の差が低減される。また、第1のガスを構成する粒子の量が事前に低減されているので、上述した定常的な状態が短時間で形成される。
【0011】
一実施形態では、膜はシリコン酸化膜であり、第1のガスはHF(フッ化水素)ガスであり、第2のガスはNH
3(アンモニア)ガスである。別の実施形態では、膜はシリコン酸化膜であり、第1のガスはHFガスであり、第2のガスはエタノールを含む。更に別の実施形態では、膜はシリコン膜であり、第1のガスはF
2(フッ素)ガスであり、第2のガスはNH
3ガスである。
【0012】
一実施形態において、ガス供給部は、更に不活性ガスを供給可能であるように構成されている。第2のガスを供給する工程において、第1のチャンバに不活性ガスが更に供給される。一実施形態において、不活性ガスは、窒素ガス及び希ガスのうち少なくとも一方を含む。
【0013】
一実施形態の反応生成物を形成する工程において、第1のチャンバ本体の温度は、ステージの温度より高い温度に設定される。第2のガスを供給する工程において、ステージの温度は、反応生成物を形成する工程におけるステージの温度と同一の温度に設定され、第1のチャンバ本体の温度は、反応生成物を形成する工程における第1のチャンバ本体の温度と同一になるように設定される。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、流量制御器の較正後に順次処理される被加工物の膜のエッチング結果の差を低減させることが必要である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0017】
図1は、一実施形態に係る膜をエッチングする方法を示す流れ図である。
図1に示す方法は、処理システムを用いて被加工物の膜をエッチングするために実行される。被加工物W(
図5の(a)を参照)は、例えば、下地層UL及び膜EFを有する。膜EFは下地層UL上に設けられている。膜EFは、シリコン含有膜であり得る。一例において膜EFは、シリコン酸化膜である。シリコン酸化膜は、限定されるものではないが、シリコン層の表面を含む一部が酸化することにより形成された自然酸化膜であり得る。別の一例において、膜EFは、シリコン膜であり得る。シリコン膜は、多結晶シリコン膜、単結晶シリコン膜、又は、アモルファスシリコン膜であり得る。
【0018】
方法MTでは、膜EFから反応生成物RP(
図5の(b)を参照)を形成するために用いられる混合ガスのうち第1のガスの流量を制御する流量制御器の較正が行われる。次いで、第1のガスが供給された第1のチャンバのコンディショニング処理が行われる。次いで、膜EFのエッチングが行われる。この方法MTの実施には、処理システムが用いられる。
【0019】
図2は、
図1に示す方法の実施において利用可能な処理システムの例を示す図である。
図2に示す処理システム1は、台2a、2b,2c,2d、容器4a,4b,4c,4d、ローダーモジュールLM、アライナAN、ロードロックモジュールLL1,LL2、搬送モジュールTM、プロセスモジュールPM1,PM2,PM3,PM4を備えている。なお、処理システム1の台の個数、容器の個数、ロードロックモジュールの個数は、1個以上の任意の個数であり得る。
【0020】
台2a、2b,2c,2dは、ローダーモジュールLMの一縁に沿って配列されている。容器4a,4b,4c,4dはそれぞれ、台2a、2b,2c,2d上に配置されている。容器4a,4b,4c,4dは、その内部に被加工物Wを収容するように構成されている。容器4a,4b,4c,4dの各々は、FOUP(Front−Opening Unified Pod)と称される容器であり得る。
【0021】
ローダーモジュールLMは、その内部にチャンバLCを提供している。チャンバLCの圧力は、大気圧に設定される。ローダーモジュールLMは、搬送装置TU1を備えている。搬送装置TU1は、例えば多関節ロボットである。搬送装置TU1は、容器4a,4b,4c,4dの各々とアライナANとの間、アライナANとロードロックモジュールLL1,LL2の各々との間、容器4a,4b,4c,4dの各々とロードロックモジュールLL1,LL2の各々との間で、チャンバLCを介して、被加工物Wを搬送するように構成されている。アライナANは、ローダーモジュールLMに接続されている。アライナANは、その内部において被加工物Wの位置を較正する。
【0022】
ロードロックモジュールLL1,LL2は、ローダーモジュールLMと搬送モジュールTMの間に設けられている。ロードロックモジュールLL1,LL2の各々は、予備減圧室を提供している。ロードロックモジュールLL1,LL2の各々の予備減圧室とチャンバLCとの間にはゲートバルブが設けられている。
【0023】
搬送モジュールTMは、その内部にチャンバTCを提供している。チャンバTCは、減圧可能に構成されている。チャンバTCとロードロックモジュールLL1,LL2の各々の間にはゲートバルブが設けられている。搬送モジュールTMは、搬送装置TU2を有している。搬送装置TU2は、例えば多関節ロボットである。搬送装置TU2は、ロードロックモジュールLL1,LL2の各々とプロセスモジュールPM1,PM2,PM3,PM4の各々の間、プロセスモジュールPM1,PM2,PM3,PM4のうち任意の二つのプロセスモジュールの間で、チャンバTCを介して、被加工物Wを搬送するように構成されている。
【0024】
プロセスモジュールPM1,PM2,PM3,PM4の各々は、専用の基板処理を実行する装置である。プロセスモジュールPM1,PM2,PM3,PM4の各々のチャンバは、ゲートバルブを介してチャンバTCに接続されている。なお、処理システム1におけるプロセスモジュールの個数は、二以上の任意の個数であり得る。一例において、プロセスモジュールPM1は、第1の処理装置として用いられ、プロセスモジュールPM4は第2の処理装置として用いられる。
【0025】
処理システム1は、制御部MCを更に備え得る。制御部MCは、方法MTの実行において、処理システム1の各部を制御するように構成されている。制御部MCは、プロセッサ(例えばCPU)、及び、メモリといった記憶装置、制御信号の入出力インタフェイスを備えたコンピュータ装置であり得る。記憶装置には、制御プログラム及びレシピデータが記憶されている。プロセッサが制御プログラム及びレシピデータに従って動作することにより、処理システム1の各部に制御信号が送出される。このような制御部MCの動作により、方法MTが実行され得る。
【0026】
図3は、
図2に示す処理システムで採用可能な第1の処理装置の例を示す図である。
図3に示す第1の処理装置10は、第1のチャンバ本体12を備えている。第1のチャンバ本体12は、その内部空間を第1のチャンバ12cとして提供している。
【0027】
第1のチャンバ12c内には、ステージ14が設けられている。ステージ14上には、被加工物Wが略水平な状態で載置される。ステージ14は、その上に載置された被加工物Wを支持するよう構成されている。ステージ14は、平面視において略円形をなしている。ステージ14は、第1のチャンバ本体12の底部に固定されている。ステージ14は、温度調整機構14aを有する。温度調整機構14aは、一例では、ステージ14の内部に形成された流路を含む。第1のチャンバ本体12の外部には、熱交換媒体の供給器が設けられている。ステージ14の内部の流路には、当該供給器から熱交換媒体(例えば、冷媒)が供給される。ステージ14の内部の流路に供給された熱交換媒体は、供給器に戻される。即ち、供給器とステージ14の内部の流路との間では熱交換媒体が循環される。熱交換媒体がステージ14の内部の流路に供給されることにより、ステージ14の温度が調整される。
【0028】
第1の処理装置10は、圧力センサ19を更に備えている。圧力センサ19は、例えばキャパシタンスマノメータである。圧力センサ19は、第1のチャンバ12cの圧力を測定するように構成されている。
【0029】
第1のチャンバ本体12は、一例において、第1部材16及び第2部材18を含んでいる。第1部材16は、第1のチャンバ12cの側方及び下方において延在している。第1部材16は、側壁部16a及び底部16bを含んでいる。側壁部16aは、略円筒形状を有している。底部16bは、側壁部16aの下端に連続している。側壁部16aには、通路12pが形成されている。被加工物Wは、第1のチャンバ本体12の外部から第1のチャンバ12cに搬入されるとき、及び、第1のチャンバ12cから第1のチャンバ本体12の外部に搬出されるときに、通路12pを通過する。この通路12pの開放及び閉鎖のために、ゲートバルブ20が側壁部16aに沿って設けられている。ゲートバルブ20が通路12pを開放すると、第1のチャンバ12cと搬送モジュールTMのチャンバTCが互いに連通する。一方、ゲートバルブ20が通路12pを閉鎖すると、第1のチャンバ12cが搬送モジュールTMのチャンバTCから隔離される。
【0030】
第1部材16は、その上端に開口を提供している。第2部材18は、第1部材16の上端の開口を閉じるように、第1部材16上に設けられている。第1のチャンバ本体12の壁部内には、ヒータ12hが設けられている。ヒータ12hは、例えば抵抗加熱ヒータである。ヒータ12hは、第1のチャンバ本体12を加熱する。
【0031】
第2部材18は、蓋部22及びシャワーヘッド24を含んでいる。蓋部22は、第2部材18の外側部分を構成している。シャワーヘッド24は、蓋部22の内側に設けられている。シャワーヘッド24は、ステージ14の上方に設けられている。シャワーヘッド24は、本体26及びシャワープレート28を含んでいる。本体26は、側壁26a及び上壁26bを含んでいる。側壁26aは略筒状をなしており、上壁26bは側壁26aの上端に連続しており、側壁26aの上端を閉じている。
【0032】
シャワープレート28は、本体26の下端側、且つ、本体26の内側に設けられている。本体26の上壁26bとシャワープレート28の間には、シャワープレート28と平行にプレート30が設けられている。本体26とシャワープレート28の間の空間は、第1の空間24a及び第2の空間24bを含む。第1の空間24aは、本体26の上壁26bとプレート30との間の空間である。第2の空間24bは、プレート30とシャワープレート28との間の空間である。
【0033】
第1の処理装置10は、ガス供給部40を更に備えている。シャワーヘッド24の第1の空間24aには、ガス供給部40の第1のガス供給配管41が接続されている。第1の空間24aには、複数のガス通路32が接続している。複数のガス通路32は、プレート30からシャワープレート28まで延在している。複数のガス通路32は、シャワープレート28に形成された複数の第1のガス吐出孔28aにそれぞれ繋がっている。第1のガス供給配管41から第1の空間24aに供給されたガスは、複数のガス通路32及び複数の第1のガス吐出孔28aを介して第1のチャンバ12cへ吐出される。
【0034】
シャワーヘッド24の第2の空間24bには、ガス供給部40の第2のガス供給配管42が接続されている。第2の空間24bには、シャワープレート28に形成された複数の第2のガス吐出孔28bが繋がっている。第2のガス供給配管42から第2の空間24bに供給されたガスは、複数の第2のガス吐出孔28bから第1のチャンバ12cに吐出される。
【0035】
ガス供給部40は、第1のチャンバ12cに第1のガス及び第2のガスを供給するよう構成されている。一実施形態において、ガス供給部40は、第1のチャンバ12cに更に不活性ガスを供給可能であるように構成されている。ガス供給部40は、第1のガス供給配管41及び第2のガス供給配管42に加えて、複数の流量制御器44a〜44dを含んでいる。複数の流量制御器44a〜44dの各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。流量制御器44a〜44dの各々は、その入力に供給されたガスの流量を設定流量に調整して、流量が調整されたガスをその出力から出力する。
【0036】
流量制御器44aの入力は、ガスソース46aに接続されている。ガスソース46aは、第1のガスのソースである。流量制御器44aの出力は、第1のガス供給配管41に接続されている。第1のガスは、膜EFがシリコン酸化膜である場合には、HF(フッ化水素)ガスである。膜EFがシリコン膜である場合には、第1のガスは、F
2(フッ素)ガスである。
【0037】
流量制御器44bの入力は、ガスソース46bに接続されている。ガスソース46bは、第2のガスのソースである。流量制御器44bの出力は、第2のガス供給配管42に接続されている。第2のガスは、膜EFがシリコン酸化膜である場合には、NH
3(アンモニア)ガス又はエタノールから構成されたガスである。膜EFがシリコン膜である場合には、第2のガスは、NH
3(アンモニア)ガスである。
【0038】
流量制御器44cの入力は、ガスソース46cに接続されている。流量制御器44cの出力は、第1のガス供給配管41に接続されている。流量制御器44dの入力は、ガスソース46dに接続されている。流量制御器44dの出力は、第2のガス供給配管42に接続されている。ガスソース46c及びガスソース46dの各々は不活性ガスのソースである。ガスソース46cは、Arガス、Heガス、Neガス、Krガスといった希ガスのソースである。ガスソース46dは、N
2(窒素)ガスのソースである。
【0039】
第1の処理装置10は、バルブ36及び排気装置38を更に備えている。第1のチャンバ本体12の底部には、排気口12eが設けられている。排気口12eは、第1のチャンバ12cに連通している。排気装置38は、バルブ36を介して、排気口12eに接続されている。バルブ36は、例えば自動圧力制御弁である。排気装置38は、ドライポンプ、ターボ分子ポンプといった真空ポンプを含んでいる。
【0040】
第1のチャンバ12cに被加工物Wが収容されている状態で、第1のガス及び第2のガスを含む混合ガスが第1のチャンバ12cに供給されると、第1のガス及び第2のガスが膜EFと反応して、膜EFから反応生成物RP(
図5の(b)参照)が形成される。反応生成物RPは、第2の処理装置において除去される。
【0041】
図4は、
図2に示す処理システムで採用可能な第2の処理装置の例を示す図である。
図4に示す第2の処理装置60は、第2のチャンバ本体62を備えている。第2のチャンバ本体62は、その内部空間を第2のチャンバ62cとして提供している。第2のチャンバ62c内には、ステージ64が設けられている。ステージ64は、その上に載置される被加工物Wを支持するように構成されている。ステージ64内にはヒータ66が設けられている。ヒータ66は、例えば抵抗発熱ヒータである。
【0042】
第2のチャンバ本体62の側壁には、通路62pが形成されている。被加工物Wは、第2のチャンバ本体62の外部から第2のチャンバ62cに搬入されるとき、及び、第2のチャンバ62cから第2のチャンバ本体62の外部に搬出されるときに、通路62pを通過する。この通路62pの開放及び閉鎖のために、ゲートバルブ68が第2のチャンバ本体62の側壁に沿って設けられている。ゲートバルブ68が通路62pを開放すると、第2のチャンバ62cと搬送モジュールTMのチャンバTCが互いに連通する。一方、ゲートバルブ68が通路12pを閉鎖すると、第2のチャンバ62cが搬送モジュールTMのチャンバTCから隔離される。
【0043】
第2の処理装置60は、ガス供給部70を更に備えている。ガス供給部70は、流量制御器72を備えている。流量制御器72は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。流量制御器72は、その入力に供給されたガスの流量を設定流量に調整して、流量が調整されたガスをその出力から出力する。流量制御器72の入力には、ガスソース74が接続されている。ガスソース74は、不活性ガスのソース、例えばN
2(窒素)ガスのソースである。流量制御器72の出力は、配管76を介して、第2のチャンバ62cに接続されている。第2の処理装置60は、開閉弁80及び排気装置82を更に備えている。排気装置82は、ドライポンプ又はターボ分子ポンプといった真空ポンプを含んでおり、開閉弁80を介して第2のチャンバ62cに接続されている。
【0044】
上述した反応生成物を有する被加工物Wは、第1のチャンバ12cからチャンバTCを介して第2のチャンバ62cに搬送される。第2のチャンバ62c内において、被加工物Wはステージ64上に載置される。そして、ヒータ66によってステージ64が加熱され、被加工物Wが加熱される。被加工物Wが加熱されると、反応生成物が昇華して、排気される。これにより、膜EFがエッチングされる。
【0045】
再び
図1を参照する。以下、
図1を参照しつつ、方法MTについて詳細に説明する。以下の説明では、
図5の(a)、
図5の(b)、及び、
図5の(c)も参照する。
図5の(a)、
図5の(b)、及び、
図5の(c)は、
図1に示す方法の各工程を説明するための図である。なお、以下の説明では、第1の処理装置10及び第2の処理装置60を有する処理システム1を用いて実施される場合を例にとって、方法MTを説明する。しかしながら、方法MTは、第1のガス及び第2のガスを含む混合ガスをそのチャンバに供給可能な別の処理装置、及び、反応生成物を有する被加工物を加熱可能な別の処理装置を有する別の処理システムを用いて実施されてもよい。
【0046】
図1に示すように、方法MTは、工程ST1で開始する。工程ST1では、流量制御器44aが較正される。工程ST1の実行中には、ステージ14上には物体は載置されない。流量制御器44aの較正は、ビルドアップ法に基づく。具体的に、工程ST1では、その流量が流量制御器44aによって調整された第1のガスが、第1のチャンバ12cに供給される。また、バルブ36が開かれ、排気装置38によって第1のチャンバ12cが減圧される。第1のチャンバ12cの圧力が安定すると、バルブ36が閉じられる。バルブ36が閉じられた後、第1のチャンバ12cの圧力の上昇レート、即ち、第1のチャンバ12cの圧力の上昇速度が求められる。なお、第1のチャンバ12cの圧力の上昇レートは、圧力センサ19によって測定された圧力を用いて求められる。
【0047】
工程ST1では、第1のチャンバ12cの圧力の上昇レートから第1のガスの流量の測定値が取得される。第1のガスの流量の測定値は、式(1)によって求められる。式(1)において、Qは第1のガスの流量の測定値であり、ΔP/Δtは第1のチャンバ12cの圧力の上昇レートであり、Vは第1のチャンバ12cの既知の容積であり、Cは、22.4/Rであり、Rは気体定数であり、Tは第1のチャンバ12cの温度である。第1のチャンバ12cの温度は温度センサによって測定され得る。
Q=(ΔP/Δt)×V×C(=22.4/R)/T(温度) …(1)
【0048】
工程ST1では、求められた第1のガスの流量の測定値を用いて流量制御器44aが較正される。工程ST1の実行中には、第1のガスを構成する粒子が第1のチャンバ本体12の壁面、及び、ステージ14の表面等に付着する。
【0049】
方法MTでは、次いで、第1の処理装置10のコンディショニング処理CPが実行される。コンディショニング処理CPは、ステージ14上に物体が載置されていない状態で実行される。コンディショニング処理CPは、工程ST2〜工程ST6を含む。
【0050】
工程ST2では、第2のガスが、ガス供給部40から第1のチャンバ12cに供給される。工程ST2の実行中、バルブ36が開かれ、排気装置38によって第1のチャンバ12c内のガスが排気される。工程ST2では、第1のガスを構成する粒子と第2のガスを構成する粒子との反応により形成された粒子が排気される。これにより、第1のチャンバ本体12の壁面及びステージ14の表面に付着している第1のガスを構成する粒子の量が低減される。続く工程ST3では、第1のチャンバ12cにガスが供給されていない状態で、排気装置38を用いて第1のチャンバ12cの排気が実行される。
【0051】
続く工程ST4では、ガス供給部40から第1のガス及び第2のガスを含む混合ガスが第1のチャンバ12c内に供給される。この混合ガスは、不活性ガスを含んでいてもよい。不活性ガスは、窒素ガス及び希ガスのうち少なくとも一方を含む。工程ST4の実行中には、バルブ36が開かれ、排気装置38によって第1のチャンバ12cが減圧される。
【0052】
一実施形態の工程ST4では、第1のガスの流量は、後述の工程ST8における第1のガスの流量と同一の流量に設定され、第2のガスの流量は、工程ST8における第2のガスの流量と同一の流量に設定される。不活性ガスが供給される場合には、不活性ガスの流量も工程ST8における不活性ガスの流量と同一の流量に設定される。一実施形態の工程ST4では、第1のチャンバ本体12の温度は工程ST8における第1のチャンバ本体12の温度と同一の温度に設定され、ステージ14の温度は工程ST8におけるステージ14の温度と同一の温度に設定される。第1のチャンバ本体12の温度はヒータ12hによって調整される。ステージ14の温度は、温度調整機構14aによって調整される。一実施形態の工程ST4では、第1のチャンバ12cの圧力は、工程ST8における第1のチャンバ12cの圧力と同一の圧力に設定される。
【0053】
続く工程ST5では、第1のチャンバ12cのパージが実行される。工程ST5では、不活性ガス、例えばガスソース46cからの希ガス及びガスソース46dからの窒素ガスが第1のチャンバ12cに供給される。工程ST5では、バルブ36が開かれ、排気装置38によって第1のチャンバ12c内のガスが排気される。続く工程ST6では、第1のチャンバ12cにガスが供給されていない状態で、排気装置38を用いて第1のチャンバ12cの排気が実行される。
【0054】
方法MTでは、コンディショニング処理CPの実行後、被加工物Wの膜EFのエッチングEPが実行される。このエッチングEPの実行前に、工程ST7が実行され、第1のチャンバ12cに被加工物Wが搬入される。
図5の(a)に示すように、被加工物Wはステージ14上に載置される。
【0055】
ステージ14上に被加工物Wが載置されると、エッチングEPが実行される。
図1に示すように、エッチングEPは、工程ST8〜工程ST10を含む。工程ST8では、第1のガス及び第2のガスを含む混合ガスが、ガス供給部40から第1のチャンバ12cに供給される。この混合ガスは、不活性ガスを含んでいてもよい。不活性ガスは、窒素ガス及び希ガスのうち少なくとも一方を含む。工程ST8の実行中には、バルブ36が開かれ、排気装置38によって第1のチャンバ12cが減圧される。一実施形態の工程ST8では、第1のチャンバ本体12の温度は、ステージ14の温度より高い温度に設定される。例えば、第1のチャンバ本体12の温度は、60℃以上、100℃以下の温度に設定され、ステージ14の温度は、10℃以上、90℃以下の温度に設定される。第1のチャンバ本体12の温度はヒータ12hによって調整される。ステージ14の温度は、温度調整機構14aによって調整される。
【0056】
工程ST8では、混合ガスに含まれる第1のガス及び第2のガスが膜EFと反応して、
図5の(b)に示すように、膜EFから反応生成物RPが形成される。膜EFがシリコン酸化膜であり、第1のガスがHFガスであり、第2のガスがNH
3ガスである場合には、膜EFの酸化シリコンからフルオロケイ酸アンモニウムが反応生成物として形成される。膜EFがシリコン酸化膜であり、第1のガスがHFガスであり、第2のガスがエタノールから構成されている場合には、膜EFの酸化シリコンからSiF
4、SiO
2、Si(OH)
4、H
2SiO
3などが反応生成物として形成される。また、膜EFがシリコン膜であり、第1のガスがF
2ガスであり、第2のガスがNH
3ガスである場合には、膜EFのシリコンからSiF
4が反応生成物として形成される。
【0057】
続く工程ST9では、反応生成物RPを有する被加工物Wが、第1のチャンバ12cから第2のチャンバ62cに、チャンバTCを介して搬送される。即ち、減圧された空間のみを介して、被加工物Wが第1のチャンバ12cから第2のチャンバ62cに搬送される。第2のチャンバ62c内では、被加工物Wはステージ64上に載置される。
【0058】
続く工程ST10では、第2のチャンバ62c内で被加工物Wが加熱される。具体的には、ヒータ66によりステージ64が加熱されて、被加工物Wが加熱される。ステージ64及び被加工物Wの温度は、例えば、175℃以上、200℃以下の温度に設定される。工程ST10の実行中には、第2のチャンバ62cに不活性ガスが供給され、第2のチャンバ62c内のガスが排気される。工程ST10では、反応生成物RPが昇華して、排気される。これにより、
図5の(c)に示すように、膜EFがエッチングされる。
【0059】
方法MTでは、次いで、別の被加工物Wを処理するか否かが判定される。別の被加工物Wを処理する場合には、別の被加工物Wに対して工程ST7〜工程ST10が再び実行される。一方、別の被加工物Wを処理しない場合には、方法MTは終了する。
【0060】
方法でMTは、工程ST1において第1のガス用の流量制御器44aが較正された後、第1のチャンバ12cに第2のガスが供給される。これにより、第1のチャンバ本体12の壁面及びステージ14の表面に付着している第1のガスを構成する粒子の量が低減される。その後に、第1のガス及び第2のガスを含む混合ガスが第1のチャンバ12cに供給されることにより、第1のチャンバ本体12の壁面及びステージ14の表面の状態が、膜から反応生成物を形成する処理(工程ST8)の実行時の定常的な状態になる。その結果、工程ST8及び工程ST10を含むエッチングEPによって、複数の被加工物Wが順次に処理されても、複数の被加工物Wの膜EFのエッチング結果の差が低減される。
【0061】
以下、方法MTに関して行った評価実験について説明する。評価実験では、工程ST1〜工程ST6を実行し、次いで、シリコン酸化膜を有する五つのサンプルに対して、順次、工程ST8〜工程ST10のエッチングを実行した。そして、五つのサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量、即ち、シリコン酸化膜の膜厚の減少量を求めた。以下、評価実験における諸条件を示す。なお、第1のガスとしてはHFガスを用い、第2のガスとしてはNH
3ガスを用い、不活性ガスとしてはArガスとN
2ガスを用いた。
【0062】
<評価実験の諸条件>
・工程ST2
NH
3ガスの流量:20sccm
第1のチャンバ12cの圧力:25Pa
第1のチャンバ本体12の温度:60℃
ステージ14の温度:31.5℃
実行時間:10秒
・工程ST3
実行時間:5秒
・工程ST4
HFガスの流量:20sccm
NH
3ガスの流量:20sccm
Arガスの流量:150sccm
N
2ガスの流量:125sccm
第1のチャンバ12cの圧力:13.3Pa
第1のチャンバ本体12の温度:60℃
ステージ14の温度:31.5℃
実行時間:100秒
・工程ST5
Arガスの流量:200sccm
NH
3ガスの流量:20sccm
バキュームパージによる第1のチャンバ12cの圧力:1Pa
第1のチャンバ本体12の温度:60℃
ステージ14の温度:31.5℃
実行時間:5秒
・工程ST6
実行時間:5秒
・工程ST8
HFガスの流量:20sccm
NH
3ガスの流量:20sccm
Arガスの流量:150sccm
N
2ガスの流量:125sccm
第1のチャンバ12cの圧力:13.3Pa
第1のチャンバ本体12の温度:60℃
ステージ14の温度:31.5℃
実行時間:22秒
・工程ST9
N
2ガスの流量:800sccm
第2のチャンバ62cの圧力:133.3Pa
ステージ64の温度:170℃
実行時間:55秒
【0063】
また、比較のために、第1〜第3の比較実験を行った。第1の比較実験では、流量制御器44aの較正は行わず、第1工程において不活性ガスを第1のチャンバ12cに供給し、第2工程ST2において混合ガスを第1のチャンバ12cに供給し、第3工程において第1のチャンバ12cのパージを実行し、第4工程ST4において第1のチャンバ12cの排気を実行し、しかる後に、シリコン酸化膜を有する五つのサンプルに対して、順次、上述の評価実験の工程ST8〜工程ST10の条件と同一の条件で、工程ST8〜工程ST10のエッチングを実行した。そして、五つのサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量を求めた。以下、第1の比較実験の諸条件を示す。
【0064】
<第1の比較実験の諸条件>
・第1工程
Arガスの流量:270sccm
N
2ガスの流量:100sccm
バキュームパージによる第1のチャンバ12cの圧力:1.5Pa
第1のチャンバ本体12の温度:60℃
ステージ14の温度:31.5℃
実行時間:90秒
・第2工程
HFガスの流量:20sccm
NH
3ガスの流量:20sccm
Arガスの流量:250sccm
第1のチャンバ12cの圧力:30Pa
第1のチャンバ本体12の温度:60℃
ステージ14の温度:31.5℃
実行時間:100秒
・第3工程
Arガスの流量:200sccm
NH
3ガスの流量:20sccm
第1のチャンバ12cの圧力:3.5Pa
第1のチャンバ本体12の温度:60℃
ステージ14の温度:31.5℃
実行時間:10秒
・第4工程
実行時間:10秒
【0065】
第2の比較実験では、上述の評価実験の工程ST1と同じく流量制御器44aの較正を行い、次いで、シリコン酸化膜を有する五つのサンプルに対して、順次、上述の評価実験の工程ST8〜工程ST10の条件と同一の条件で、工程ST8〜工程ST10のエッチングを実行した。そして、五つのサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量を求めた。
【0066】
第3の比較実験では、上述の評価実験の工程ST1と同じく流量制御器44aの較正を行い、第1の比較実験の第1工程〜第4工程の条件と同条件の四つの工程を順次実行し、しかる後に、シリコン酸化膜を有する五つのサンプルに対して、順次、上述の評価実験の工程ST8〜工程ST10の条件と同一の条件で、工程ST8〜工程ST10のエッチングを実行した。そして、五つのサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量を求めた。
【0067】
図6は、実験の結果を示すグラフである。
図6のグラフにおいて、横軸は、サンプル番号を示している。即ち、
図6のグラフにおいて、横軸は、評価実験及び第1〜第3の比較実験の各々において順に処理されたサンプルの番号を示している。最初に処理されたサンプルの番号は「1」であり、最後に処理されたサンプルの番号は「5」である。縦軸は、エッチング量を示している。第1の比較実験では、流量制御器44aの較正を行わずに、上述の第1工程〜第4工程を含むコンディショニング処理を行ったので、
図6に示すように、五つのサンプルのエッチング量の差は比較的小さかった。第2の比較実験では、流量制御器44aの較正を行った後にコンディショニング処理を行わなかったので、サンプル番号の増加に伴い、エッチング量が増加し、数個のサンプルに対する工程ST8〜工程ST10の実行後に、エッチング量が安定した。即ち、第2の比較実験では、五つのサンプルのエッチング量の差は比較的大きくなった。第3の比較実験では、流量制御器44aの較正を行った後に、上述の第1工程〜第4工程を含むコンディショニング処理を行ったが、サンプル番号の増加に伴い、エッチング量が増加し、数個のサンプルに対する工程ST8〜工程ST10の実行後に、エッチング量が安定した。即ち、第3の比較実験では、五つのサンプルのエッチング量の差は比較的大きくなった。一方、評価実験では、五つのサンプルのエッチング量の差が相当に小さかった。したがって、方法MTの有効性が確認された。