(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のカバー部材と前記天面部材と前記底面部材とに囲繞される空間の熱容量が、上方で相対的に小さく、下方で相対的に大きくなるように、断熱板が配置されている請求項6に記載の基板保持具。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図7を用いて説明する。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
まず、
図1〜
図3を用いて、基板処理装置の全体的な構成について説明する。
図1に示すように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO
2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の内側空間である筒中空部には、処理室201が形成されている。処理室201は、基板としてのウエハ200を、後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能となるように構成されている。
【0012】
処理室201内には、ノズル(第1のノズル)249a,ノズル(第2のノズル)249bが、反応管203の下部側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料からなる。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bがそれぞれ接続されている。このように、反応管203には、2本のノズル249a,249bと、2本のガス供給管232a,232bとが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することが可能となっている。
【0013】
但し、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。例えば、反応管203の下方に、反応管203を支持する上端と下端が開口した円筒形状の金属製マニホールドを設け、各ノズルを、マニホールドの側壁を貫通するように設けてもよい。この場合、マニホールドに、後述する排気管231をさらに設けてもよい。このように、処理炉202の炉口部を金属製とし、この金属製の炉口部にノズル等を取り付けてもよい。
【0014】
ガス供給管232a,232bには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232c,232dがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232dには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC241c,241dおよび開閉弁であるバルブ243c,243dがそれぞれ設けられている。
【0015】
ガス供給管232a,232bの先端部には、ノズル249a,249bがそれぞれ接続されている。ノズル249a,249bは、
図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、処理室201内に搬入されたウエハ200の端部(周縁部)の側方にウエハ200の表面(平坦面)と略垂直になるように設けられている。ノズル249a,249bは、L字型のロングノズルとしてそれぞれ構成されており、それらの各水平部は反応管203の下部側壁を貫通するように設けられており、それらの各垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、ウエハ200に向けてそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、例えば反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0016】
このように、本実施形態では、反応管203の内壁と、積載された複数のウエハ200の端部と、で定義される円環状の縦長の空間内に配置したノズル249a,249bを経由してガスを搬送している。そして、ノズル249a,249bにそれぞれ開口されたガス供給孔250a,250bから、ウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させている。そして、反応管203内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、すなわち、水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される薄膜の膜厚均一性を向上させることが可能となる。ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れる。
【0017】
ガス供給管232aからは、所定元素を有する原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。原料ガスとして、例えば、所定元素としてのチタン(Ti)を含む四塩化チタン(TiCl
4)ガスが用いられる。
【0018】
ガス供給管232bからは、反応ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。反応ガスとして、例えば窒化ガスが用いられ、窒化ガスとして、窒素(N)含有ガス、例えばアンモニア(NH
3)ガスが用いられる。
【0019】
ガス供給管232c,232dからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N
2)ガスが、それぞれMFC241c,241d、バルブ243c,243d、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。
【0020】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、原料ガス供給系が構成される。ノズル249aを原料ガス供給系に含めて考えてもよい。原料ガス供給系を原料供給系と称することもできる。
【0021】
主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、反応ガス供給系が構成される。ノズル249bを反応ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0022】
主に、ガス供給管232c,232d、MFC241c,241d、バルブ243c,243dにより、不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス供給系を、パージガス供給系、希釈ガス供給系、或いは、キャリアガス供給系と称することもできる。
【0023】
原料ガスと反応ガスとをまとめて、基板を処理するガスである処理ガスと称することもでき、原料ガス供給系と反応ガス供給系とをまとめて、処理ガス供給系と称することもできる。不活性ガスを処理ガスに含めて考えてもよく、不活性ガス供給系を処理ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0024】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231の排気口は、後述の、基板保持具300の基板保持領域360よりも下方、すなわち、断熱板保持領域370の配置される高さ内、より具体的には例えば、断熱板保持領域370に設置されたカバー350の下端の下方に配置されていることが好ましいが、これに限らずどのような位置に設けられていてもよい。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0025】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。すなわち、ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0026】
基板保持具(基板支持具)300は、ボート217を含んで構成されている。基板保持具300について、詳細は後述する。ボート217は、複数枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に保持する(支持する)ように所定の間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やカーボンやSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が水平姿勢で多段に保持されている(支持されている)。この構成により、ヒータ207によって加熱された処理室内の熱や、加熱された処理ガスの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。
【0027】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、ノズル249a,249bと同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0028】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0029】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0030】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241d、バルブ243a〜243d、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0031】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、MFC241a〜241dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243dの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0032】
コントローラ121は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123を用意し、この外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態のコントローラ121を構成することができる。但し、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置123を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置123を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0033】
次に、
図4〜
図6を用いて、基板保持具300についてさらに説明する。まず、
図4を用いて、基板保持具300の概略構成について説明する。
図4に示すように、基板保持具300は、ボート217とカバー350とを含んで構成されている。ボート217は、基板としてのウエハ200を保持する基板保持領域360と、基板保持領域360よりも下方に設けられ、断熱板218を保持する断熱板保持領域370とを有する。基板保持領域360が、ヒータ207により加熱される。断熱板保持領域370に保持された断熱板218により、ヒータ207によって加熱された処理室内の熱や、加熱された処理ガスの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。
【0034】
ボート217は、天面部材310と底面部材313との間に、天面部材310と底面部材313の周方向に沿って複数本の支柱311が設けられた構造を有する。以下、ボート217の周方向を、単に周方向と呼ぶこともある。各支柱311の内周側に、上下方向に並んで複数の保持溝312が形成されており、保持溝312にウエハ200や断熱板218の縁部を挿入することで、ウエハ200や断熱板218が保持される。ボート217の天面部材310、支柱311、底面部材313は、例えば石英で形成されている。
【0035】
支柱311の上部に画定された基板保持領域360では、保持されるウエハ200の枚数や厚さや配列ピッチに合わせて、保持溝312が形成されている。基板保持領域360に保持されるウエハ200の枚数は、例えば25〜200枚である。支柱311の、基板保持領域360よりも下方部分に画定された断熱板保持領域370では、保持される断熱板218の枚数や厚さや配列ピッチに合わせて、保持溝312が形成されている。断熱板保持領域370に保持される断熱板218の枚数は、例えば1〜50枚である。ただし、ここでいう「保持される断熱板218の枚数」とは、断熱板保持領域370に保持可能な断熱板218の最大の枚数のことであり、後述のように、本実施形態では、断熱板保持領域370の最上部には断熱板218を配置しない断熱板218の配置態様とすることができる。例えば、ウエハ200の厚さは、断熱板218の厚さよりも薄く、ウエハ200の配列ピッチは、断熱板218の配列ピッチよりも狭い。
【0036】
基板保持領域360と断熱板保持領域370との間に、必要に応じて、基板保持領域360と断熱板保持領域370とを区分する仕切り板314を設けることができる。仕切り板314は、ボート217と一体形成されていても良いし、ウエハ200や断熱板218と同様に、支柱311に形成された保持溝312に縁部を挿入して保持するように構成されていても良い。仕切り板314は、例えば、ボート217の支柱311等と同一の耐熱性材料、例えば石英で形成されている。仕切り板314を、ボート217の構成部材に含めて考えてもよい。
【0037】
カバー350は、断熱板保持領域370を囲繞するように構成されており、側面部材320と、天面部材330と、底面部材340とを含んで構成されている。カバー350は、例えば、ボート217の支柱311等と同一の耐熱性材料、例えば石英やSiCなどで形成されている。側面部材320は、カバー350の主要部をなし、断熱板保持領域370の外周を筒状に取り囲む。天面部材330および底面部材340は、それぞれ、側面部材320が形成する筒形状の天面部分と底面部分とを塞いでいる。
図4に示す例では、仕切り板314が、カバー350の天面部材330として用いられている。
【0038】
断熱板保持領域370において、断熱板218は、主として、側面部材320と天面部材330と底面部材340とに囲繞された空間351の内部、すなわち、カバー350内の空間351に配置される。断熱板218は、例えば、仕切り板314や側面部材320と同一の耐熱部材である石英やSiC等で形成されていればよいが、これに限らず仕切り板314や側面部材320とは異なる耐熱性材料、例えばカーボンで形成されている。
図4に示す例では、断熱板218が、カバー350の底面部材340として用いられている。断熱板218を、基板保持具300の構成部材に含めて考えてもよい。
【0039】
側面部材320の下端は、断熱板保持領域370の下端よりも(ボート217の底面部材313よりも)上方に配置されている。つまり、断熱板保持領域370のうち、側面部材320の下端よりも下方の最下部は、カバー350で覆われていない。必要に応じて、断熱板保持領域370の、側面部材320の下端よりも下方に、断熱板218を配置することもできる。
【0040】
次に、
図5および
図6を用いて、カバー350をボート217に設置する方法について説明する。
図5に示すように、ボート217の支柱311は、本例では支柱311a〜311cの3本が設けられている。周方向に隣接して配置されている支柱311同士の間隔(あるいは、周方向に隣接して配置されている支柱311間に形成される開口315の広さ)は、中心角の大きさで示すことができる。本例において、周方向に最も離れて隣接する支柱311aと支柱311cとは、180°離れており、支柱311aと支柱311cとの間に、最も広い開口315aが形成されている。支柱311aと支柱311b、および、支柱311bと支柱311cは、それぞれ、90°ずつ離れており、支柱311aと支柱311bとの間、および、支柱311bと支柱311cとの間に形成されている開口315b、315cは、それぞれ、支柱311aと支柱311cとの間に形成された開口315aよりも狭い。
【0041】
断熱板218等の保持溝312に保持される部材は、最も広い開口315aを介して、ボート217に着脱される。断熱板218等の部材を容易に着脱させる観点からは、隣接する支柱311間に形成される最も広い開口315の広さは、180°以上であることが好ましい。
【0042】
カバー350を設置する際には、まず、断熱板保持領域370の(仕切り板314の下方の)所定高さの保持溝312に、側面部材320を係止するための係止板325を挿入する。例えば、上方と下方の2枚の係止板325が挿入される。
【0043】
各係止板325には、側面部材320を係止するための係止部として、例えば、嵌合凹部326が設けられており、嵌合凹部326に、側面部材320に形成された後述の嵌合凸部322を嵌合させる。嵌合凹部326は、係止板325を貫通しない凹部として形成されていてもよいし、係止板325を貫通する貫通孔として形成されていてもよい(つまり、嵌合凹部326として、貫通孔も含めて捉えることができる)。係止板325として、例えば、断熱板218に嵌合凹部326を形成したものが用いられる。
【0044】
図6に示すように、側面部材320は、断熱板保持領域370の周方向に沿って並んだ複数の、本例では3つのカバー部材320a〜320cが組み合わされて構成されている。本例のカバー部材320a〜320cは、それぞれ、支柱311間の開口315a〜315cを覆うように設けられている。
【0045】
各カバー部材320a〜320cには、それぞれ、係止板325に対応する高さで、係止板325の嵌合凹部326に対応する周方向位置に、内周側に突出した係止部321が形成されている。各係止部321には、下方に突出した嵌合凸部322が形成されており、嵌合凸部322を嵌合凹部326と嵌合させることにより、カバー部材320a〜320cが係止板325に係止される。このようにして、側面部材320が、ボート217に取り付けられる。
【0046】
側面部材320に覆われる高さ範囲内に配置される断熱板218は、最も広い開口315a、すなわち、断熱板218の着脱に用いられる開口315aを覆うカバー部材320aを取り付ける前に、ボート217に挿入しておく。例えば、カバー部材320a以外の他のカバー部材320bおよび320cを取り付け、所望の枚数や配置で断熱板218を挿入し、最後に、カバー部材320aを取り付ける。
【0047】
側面部材320を構成するすべてのカバー部材320a〜320cが、ボート217に取り付けられた状態で、仕切り板314が、カバー350の天面部材330として機能する。また、側面部材320に覆われる高さ範囲内で最も下方に配置された断熱板218(あるいは係止板325)が、カバー350の底面部材340を構成する。このようにして、カバー350がボート217に設置される。
【0048】
カバー部材320a〜320cは、着脱可能に取り付けられている。例えば断熱性の調整等を行う場合は、カバー部材320aを取り外すことで、開口315aから断熱板218の出し入れを行うことができる。
【0049】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成するシーケンス例について、
図7を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0050】
図7に示す成膜シーケンスでは、
ウエハ200に対し原料ガスとしてTiCl
4ガスを供給するステップ1と、
ウエハ200に対し反応ガスとしてNH
3ガスを供給するステップ2と、
を交互に所定回数(1回以上)行うことで、ウエハ200上に、窒化チタン膜(TiN膜)を形成する。
【0051】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合、すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
【0052】
従って、本明細書において「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書において「ウエハ上に所定の層(または膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)上に所定の層(または膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち、積層体としてのウエハの最表面の上に所定の層(または膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
【0053】
また、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明において、「ウエハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
【0054】
(ウエハチャージおよびボートロード)
断熱板218を所定配置で保持させ、カバー350を設置した基板保持具300を準備する。再び
図4を用いて、断熱板218の配置態様の一例について説明する。カバー350内の空間351を含めた断熱板保持領域370には、好ましくは、上方が相対的に疎に、下方が相対的に密になるように、断熱板218を配置しておく。つまり、カバー350内の空間351を含めた断熱板保持領域370の熱容量が、好ましくは、上方で相対的に小さく、下方で相対的に大きくなるように、断熱板218を配置しておく。断熱板218の具体的な配置の仕方は、特に制限されないが、例えば、カバー350内の空間351の所定高さから上方には断熱板218を配置せず、所定高さから下方には(例えば一定ピッチで)断熱板218を配置することで、このような断熱板218の分布(熱容量の分布)とすることができる。なお、断熱板218の配置は、成膜条件等に応じて、良好な結果が得られるように、適宜調整することができる。
【0055】
このように準備された基板保持具300のボート217に、処理すべき複数枚のウエハ200が装填(ウエハチャージ)される。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を保持した基板保持具300は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0056】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内のウエハ200が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。また、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0057】
(TiN膜形成工程)
その後、次の2つのステップ、すなわち、ステップ1,2を順次実行する。
【0058】
[ステップ1]
(TiCl
4ガス供給)
ステップ1では、処理室201内のウエハ200に対し、TiCl
4ガスを供給する。
【0059】
ここでは、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内にTiCl
4ガスを流す。TiCl
4ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してTiCl
4ガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243cを開き、ガス供給管232c内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、MFC241cにより流量調整され、TiCl
4ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0060】
また、ノズル249b内へのTiCl
4ガスの侵入を防止するため、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0061】
ウエハ200に対して TiCl
4ガスを供給することにより、ウエハ200の最表面上に、Ti含有層が形成される。
【0062】
(残留ガス除去)
Ti含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、TiCl
4ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはTi含有層の形成に寄与した後のTiCl
4ガスを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243c,243dは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。N
2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留するガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0063】
このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップ2において悪影響が生じることはない。処理室201内に供給するN
2ガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、反応管203(処理室201)の容積と同程度の量のN
2ガスを供給することで、ステップ2において悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。N
2ガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
【0064】
ステップ1における処理条件としては、
ウエハ温度:250℃〜550℃(好ましくは350℃〜550℃)
処理室内圧力:50Pa〜5000Pa
<TiCl
4ガス供給時>
TiCl
4ガス(原料ガス)の供給流量:100sccm〜500sccm
N
2ガス(キャリアガス)の供給流量:500sccm〜5000sccm
TiCl
4ガスおよびN
2ガスの供給時間:2秒〜20秒
<残留ガス除去時>
N
2ガス(パージガス)の供給流量:1000sccm〜10000sccm
N
2ガスの供給時間:2秒〜10秒
が例示される。
【0065】
[ステップ2]
(NH
3ガス供給)
ステップ1が終了した後、ステップ2では、処理室201内のウエハ200に対し、NH
3ガスを供給する。
【0066】
ここでは、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内にNH
3ガスを流す。NH
3ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してNH
3ガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243dを開き、ガス供給管232d内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、MFC241dにより流量調整され、NH
3ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0067】
また、ノズル249a内へのNH
3ガスの侵入を防止するため、バルブ243cを開き、ガス供給管232c内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0068】
最表面上にTi含有層が形成されたウエハ200に対して NH
3ガスを供給することにより、Ti含有層が窒化されて(改質されて)、窒化チタン(TiN)層が形成される。
【0069】
(残留ガス除去)
TiN層が形成された後、バルブ243bを閉じ、NH
3ガスの供給を停止する。そして、ステップ1と同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくはTiN層の形成に寄与した後のNH
3ガス、反応副生成物を処理室201内から排除する。このとき、処理室201内に残留するガス等を完全に排除しなくてもよい点は、ステップ1と同様である。
【0070】
ステップ2における処理条件としては、
ウエハ温度:250℃〜550℃(好ましくは350℃〜550℃)
処理室内圧力:50Pa〜5000Pa
<NH
3ガス供給時>
NH
3ガス(反応ガス)の供給流量:1000sccm〜10000sccm
N
2ガス(キャリアガス)の供給流量:500sccm〜5000sccm
NH
3ガスおよびN
2ガスの供給時間:2秒〜20秒
<残留ガス除去時>
N
2ガス(パージガス)の供給流量:1000sccm〜10000sccm
N
2ガスの供給時間:2秒〜10秒
が例示される。
【0071】
なお、ステップ1,2で用いられる不活性ガスとしては、N
2ガスの他、例えば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0072】
(所定回数実施)
上述したステップ1,2を交互に行うサイクルを1回以上(所定回数)行うことにより、ウエハ200上に、所定膜厚のTiN膜を形成することができる。
【0073】
(パージおよび大気圧復帰)
バルブ243c,243dを開き、ガス供給管232c,232dのそれぞれからN
2ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。N
2ガスはパージガスとして作用する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0074】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、反応管203の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、反応管203の下端から反応管203の外部に搬出される(ボートアンロード)。処理済のウエハ200は、ボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0075】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、カバー部材が着脱可能に取り付けられていることにより、カバー内の断熱板保持領域に保持される断熱板の出し入れを容易に行うことができる。これにより、カバー内に配置される断熱板の配置態様を変更することが容易になり、断熱板保持領域の断熱性を制御することが容易になる。断熱板保持領域の断熱性を制御することにより、基板保持領域の温度制御性等を向上させることができる。具体的には、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0076】
(a)カバー350は、断熱板保持領域370の周方向に沿って並んだ複数のカバー部材320a〜320cが組み合わされて構成されており、カバー部材320a〜320cは、着脱可能に取り付けられている。カバー部材320a〜320cのうち、特に、少なくとも、断熱板218の着脱に用いられる開口315aを覆うカバー部材320aが着脱可能となっていることにより、カバー350内への断熱板218の出し入れを容易に行うことができる。これにより、カバー350内に配置される断熱板218の配置態様を変更することが容易になり、断熱板保持領域370の断熱性を制御することが容易になる。断熱板保持領域370の断熱性を制御することにより、基板保持領域360の温度制御性等を向上させることができる(後述の実施例参照)。
【0077】
(b)また、カバー部材320a〜320cの各々が着脱可能となっていることにより、カバー350を分解しやすく、基板保持具300のメンテナンスを行うことが容易になる。
【0078】
(c)カバー部材320a〜320cを断熱板保持領域370に係止するための部材として、断熱板保持領域370に保持された係止板325を用いることができる。係止板325として、例えば断熱板218を用いることができる。断熱板218を係止板325として用いることにより、カバー部材320a〜320cの係止部材として別の部材を新たに準備する必要がない。また、係止板325に断熱機能を持たせることができる。
【0079】
(d)カバー350は、側面部材320(カバー部材320a〜320c)と、天面部材330と、底面部材340とが組み合わされて構成されており、側面部材320(カバー部材320a〜320c)と天面部材330と底面部材340とに囲繞された空間、つまりカバー350に覆われた空間351が形成されている。
【0080】
基板処理工程のステップ1,2において、ウエハ200の保持された基板保持領域360には、原料ガスや反応ガス等の処理ガスが供給される。一方、断熱板保持領域370の上部の、カバー350に覆われた空間351には、処理ガスが流れ込まない。これにより、基板保持領域360に効率的に処理ガスを流すことができ、断熱板保持領域370での処理ガスの不要な流れを抑制することができる。
【0081】
(e)断熱板保持領域370の上部は、成膜を行う基板保持領域360に近いため、高温となる。もしカバー350がなければ、断熱板保持領域370の上部に配置された断熱板218等の部材の表面が、高温の処理ガスに曝されて、不要な成膜が生じてしまう。カバー350が配置されていることで、カバー350内の部材への不要な成膜を抑制することができる。
【0082】
(f)カバー350の下端、すなわち、側面部材320(カバー部材320a〜320c)の下端が、断熱板保持領域370の下端よりも上方に配置されている。つまり、断熱板保持領域370のうち、側面部材320(カバー部材320a〜320c)の下端よりも下方の最下部は、カバー350で覆われていない。
【0083】
基板処理に用いられた処理ガスは、排気管231の排気口から排気される。断熱板保持領域370の最下部がカバー350で覆われていない構造により、排気される処理ガスが、断熱板保持領域370の最下部を通ることができるので、排気がすばやく行われる。
【0084】
なお、断熱性をより高めたい場合は、側面部材320(カバー部材320a〜320c)の下端よりも下方に、断熱板218を配置してもよい。断熱板218が配置されていても、排気される処理ガスの流れを過剰に妨げることはない。
【0085】
(g)底面部材340がカバー350の底面を塞いでいることにより、カバー350の下方に回り込んだ処理ガスが巻き上げられてカバー350内の空間351に入り込み、上方の高温部に達して成膜が生じることが抑制される。底面部材340は、側面部材320(カバー部材320a〜320c)の最下部に配置されていなくともよいが、成膜が生じない程度の低温となった下方に配置されていることが好ましい。
【0086】
(h)カバー350の天面部材330として、基板保持領域360と断熱板保持領域370との間に配置された仕切り板314を用いることができる。これにより、カバー350の天面部材330として別の部材を新たに準備する必要がない。
【0087】
(i)カバー350の底面部材340として、断熱板保持領域370に保持された断熱板218を用いることができる。これにより、カバー350の底面部材340として別の部材を新たに準備する必要がない。
【0088】
(j)断熱板保持領域370の上部は、成膜を行う基板保持領域360に近いため、断熱板保持領域の上部に断熱板が配置されていた場合には、断熱板保持領域370と基板保持領域360との境界における熱容量が大きくなり、基板保持領域360の最下部が他の基板保持領域よりも高くなってしまい、基板が配置された領域によって膜質にばらつきが生じてしまう。このため、カバー350内の断熱板218は、上方が相対的に疎に、下方が相対的に密になるように配置されている。つまり、カバー350内の空間351の熱容量が、好ましくは、上方で相対的に小さく、下方で相対的に大きくなるように、断熱板218が配置されている。これにより、断熱板保持領域370において、基板保持領域360に隣接する最上部の熱容量を低下させつつ、充分な断熱性を確保することができる。基板保持領域360に隣接する断熱板保持領域370の最上部の熱容量を低下させることにより、断熱板保持領域370に隣接する基板保持領域360の下部における温度制御性等を向上させることができる(後述の実施例参照)。
【0089】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0090】
図8を用いて、他の実施形態について説明する。上述の実施形態では、側面部材320を3つのカバー部材320a〜320cで構成し、カバー部材320a〜320cの各々が着脱可能に取り付けられている例について説明した。これに対し、本実施形態では、側面部材320が2つのカバー部材320d,320eで構成されており、一方のカバー部材320dは、着脱可能に取り付けられており、他方のカバー部材320eは、ボート217に固定されている。
【0091】
断熱板218等の部材の出し入れに用いられる開口を覆うカバー部材320dが、着脱可能に取り付けられており、上述の実施形態と同様に、カバー部材320dを取り外すことで、この開口から断熱板218の出し入れを行うことができる。
【0092】
その他のカバー部材であるカバー部材320eは、例えば、仕切り板314と支柱311とに溶接されることにより、ボート217に固定されている。このように、複数組み合わされて構成されるカバー部材のうち、少なくとも1つが着脱可能に取り付けられていることにより、断熱板の出し入れを容易に行うことができる。
【0093】
側面部材320を構成する複数のカバー部材の個数は、少ないことが好ましい。つまり、2つであることが最も好ましい。カバー部材の個数が少ない程、隣接するカバー部材同士の間に形成される隙間が減少し、このような隙間からカバー350内の空間に処理ガスが入り込むことが抑制できるからである。ただし、1つのみのカバー部材で側面部材320を構成すると、カバー部材の取り外しが面倒になる。そのため、側面部材320は、複数のカバー部材で構成することが好ましい。なお、カバー部材が仕切り板314等と溶接された構造は、処理ガスが入り込む隙間を封じるという観点で好ましい。
【0094】
また、上述の実施形態では、着脱されるカバー部材320a〜320cを、カバー350内に配置される係止板325で係止し、係止板として例えば断熱板218を利用する例について説明した。これに対し、本実施形態は、着脱されるカバー部材320dを、カバー350の天面部材330である仕切り板314で係止する構造、つまり、係止板として天面部材330あるいは仕切り板314を利用する例となっている。このように、側面部材320を構成するカバー部材は、種々の構造で係止することができる。
【0095】
さらに他の実施形態について説明する。カバー350の側面部材320の外周面と、反応管203の内周面との間のギャップ(以下、これを単にギャップと呼ぶ)は、例えば8mm〜10mmが好ましいが、好適なギャップは、成膜条件等によって異なり得る。
【0096】
本実施形態では、ギャップの異なる、つまり、径の異なる複数のカバー部材を、同一径ごとに1つの組(セット)として複数組用意しておくことで、ギャップを調整可能とする。つまり、ギャップが8mmとなるように径を大きく構成されるカバー部材を組み合わせて構成される側面部材320と、ギャップが10mmとなるように径を小さく構成されるカバー部材を組み合わせて構成される側面部材320といったように、ギャップが異なるように、径の異なるカバー部材が複数セット用意されている。なお、カバー部材を組み合わせて構成される側面部材320の径を変えることでカバー部材と天面部材等との間に生じる隙間を調整可能なように、カバー部材に鍔状の部位を追加してもよいし、天面部材との隙間が生じないように前記カバー部材の厚みを径ごとに異なるように構成してもよい。カバー部材をすべて着脱可能な構造とすることで、このように、複数セットのカバー部材を取り替えて用いるような態様も可能となる。
【0097】
実施形態について、その他、例えば以下のような変更等も可能である。
【0098】
必要に応じて、仕切り板314を省略することもできる。この場合、カバー350の天面部材330として、例えば断熱板218を用いることができる。
【0099】
係止板325として、嵌合凹部326を形成した断熱板218を用いる例について説明したが、必要に応じ、例えば石英やSiC、またはカーボンのいずれかで構成された断熱板218に対し石英製の係止板325を用いる等、断熱板218と異なる耐熱性材料の係止板325を用いるようにしてもよい。
【0100】
カバー部材の係止部に掛かる重量(カバー部材の自重)が軽減されるように、カバー部材に、カバー部材の下端からボート217の底面部材313の上面に達するような脚部を設けてもよい。
【0101】
なお、カバー部材を係止するための嵌合凹部・凸部の形状(嵌合部形状)は、円形が特に好ましい。角のある矩形等の形状では、角部に熱が溜りやすいからである。
【0102】
上述の実施形態では、基板処理工程の一例として、TiN膜を形成する例について説明したが、実施形態による基板保持具は、他の膜を形成する基板処理工程に用いることもできる。例えば、Ti以外の他の金属元素を含む金属膜や、Si等の半導体元素を含む半導体膜や、その他、各種絶縁膜等を形成する基板処理工程に用いることができる。
【0103】
また、上述の実施形態では、基板処理工程の一例として、原料ガスと反応ガスとを交互に供給して膜を形成する例について説明したが、実施形態による基板保持具は、その他の態様の成膜工程、例えば、原料ガスと反応ガスとを同時に供給して膜を形成する基板処理工程に用いることもできる。
【0104】
これらの各種薄膜の形成に用いられるプロセスレシピ(基板処理の処理手順や処理条件等が記載されたプログラム)は、基板処理の内容(形成する薄膜の膜種、組成比、膜質、膜厚、処理手順、処理条件等)に応じて、それぞれ個別に用意する(複数用意する)ことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理の内容に応じて、複数のレシピの中から、適正なレシピを適宜選択することが好ましい。具体的には、基板処理の内容に応じて個別に用意された複数のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体(外部記憶装置123)を介して、基板処理装置が備える記憶装置121c内に予め格納(インストール)しておくことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理装置が備えるCPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なレシピを適宜選択することが好ましい。このように構成することで、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの操作負担(処理手順や処理条件等の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、基板処理を迅速に開始できるようになる。
【0105】
上述のプロセスレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0106】
上述の各種実施形態は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【実施例】
【0107】
以下、
図9を用いて、実施形態による基板保持具で得られる温度制御性の向上についての検討結果について説明する。実施例として、断熱板保持領域の最上部には、つまり基板保持領域の直下の領域には断熱板を配置せずに所定の容積を有する空間を設け、当該空間の周囲をカバーによって囲繞し、カバーよりも下方に断熱板を配置した基板保持具を用いて温度制御を行った。また、比較例として、断熱板保持領域を囲繞するカバーを設けずに断熱板保持領域の最上部にも、つまり基板保持領域の直下の領域にも断熱板を配置し、断熱板保持領域に均等に断熱板を設けた基板保持具を用いて温度制御を行った。
図9(a)および
図9(b)に、実施例と比較例における温度安定性についてのデータと、温度設定値とを示す。横軸は時間を任意単位で表し、縦軸は温度を任意単位で表す。
【0108】
図9(a)に示す例では、断熱板保持領域に隣接する基板保持領域の下部について温度センサ(カスケードTC)で測定される温度が、昇温開始から設定値到達付近にくるまで、比較例と実施例とで、ほぼ同じ時間で温度が設定値付近で安定するように(ほぼ同じ温度リカバリになるように)、制御を行っている。
【0109】
比較例では、設定値到達後、温度がさらに上昇してオーバーシュートしており、制御不能状態となっている。この温度制御不能状態の大きな要因としては、カスケードTC周辺温度がほぼ設定値付近に到達しても、熱容量の大きい断熱板保持領域の温度が遅れて上昇してくることで、断熱板保持領域から基板保持領域への温度煽りが生じていることが考えられる。
【0110】
一方、実施例では、断熱板保持領域に隣接する基板保持領域の下部についてカスケードTCで測定された温度が設定値付近に到達後、ほぼオーバーシュートも無く、設定値に制御可能となっている。これは、比較例と比較して断熱板保持領域の最上部の熱容量が小さく、断熱板保持領域の温度上昇が過度に遅れることが無いため、前述したような断熱板保持領域から基板保持領域への温度煽り影響が少ないと考えられる。
【0111】
図9(b)に示す例では、比較例において、断熱板保持領域による温度煽りの影響を考慮して、実施例よりも温度リカバリが遅くなるように、与える熱量を抑制した制御を行っている。
【0112】
比較例では、与える熱量は抑えているが、それに伴い断熱板保持領域の温度上昇も遅くなって、温度煽りの影響がより長く持続してしまい、温度が安定するまでに要する時間がさらに掛かっている。
【0113】
一方、実施例では、
図9(a)に示した例と同様に、良好な温度制御が行われている。このように、断熱板保持領域の最上部では断熱板を取り除いて熱容量を小さくすることにより、断熱板保持領域に隣接する基板保持領域の下部における温度制御性の改善や、温度が安定するまでに要する時間の短縮化を図ることができる。また、このように断熱板保持領域の最上部で断熱板を取り除いても、断熱板保持領域を覆うカバーにより、断熱板が取り除かれて生じた空隙に処理ガスが流れ込むことを抑制することができ、処理ガスを基板保持領域に効率的に流すことができる。
【0114】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0115】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
基板を保持する基板保持領域と、
前記基板保持領域よりも下方に設けられ、断熱板を保持する断熱板保持領域と、
前記断熱板保持領域を囲繞するカバーと
を有し、
前記カバーは、前記断熱板保持領域の周方向に沿って並んだ複数のカバー部材が組み合わされて構成され、前記複数のカバー部材のうち少なくとも1つのカバー部材は、着脱可能に取り付けられている基板保持具が提供される。
【0116】
(付記2)
付記1に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記複数のカバー部材の個数は、少なくとも4つ以下の部材で構成されており、好ましくは、2つである。
【0117】
(付記3)
付記1に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記複数のカバー部材の各々は、着脱可能に取り付けられている。
【0118】
(付記4)
付記3に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記複数のカバー部材として、径の異なる複数のセットが用意されている。
【0119】
(付記5)
付記1に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記カバー部材は、前記断熱板保持領域に保持された係止板に係止されている。
【0120】
(付記6)
付記5に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記断熱板保持領域に保持された断熱板が、前記係止板として用いられる。
【0121】
(付記7)
付記5に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記基板保持領域と前記断熱板保持領域とを区分する仕切り板が、前記係止板として用いられる。
【0122】
(付記8)
付記5に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記カバー部材は、前記係止板に嵌合されている。
【0123】
(付記9)
付記5に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記カバー部材は、嵌合凸部を有し、前記係止板は、嵌合凹部を有する。
【0124】
(付記10)
付記1に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記カバーは、前記複数のカバー部材にさらに天面部材と底面部材とが組み合わされて構成されている。
【0125】
(付記11)
付記10に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記カバー部材の下端が、前記断熱板保持領域の下端よりも上方に配置されている。
【0126】
(付記12)
付記10に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記カバー部材の下端と、前記断熱板保持領域の下端との間に、断熱板が配置されている。
【0127】
(付記13)
付記10に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記基板保持領域と前記断熱板保持領域とを区分する仕切り板が、前記天面部材として用いられる。
【0128】
(付記14)
付記10に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記断熱板保持領域に保持された断熱板が、前記底面部材として用いられる。
【0129】
(付記15)
付記10に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記複数のカバー部材と前記天面部材と前記底面部材とに囲繞される空間の熱容量が、上方で相対的に小さく、下方で相対的に大きくなるように、断熱板が配置されている。
【0130】
(付記16)
付記10に記載の基板保持具であって、好ましくは、
前記複数のカバー部材と前記天面部材と前記底面部材とに囲繞される空間の内部に、上方が相対的に疎に、下方が相対的に密になるように、断熱板が配置されている。
【0131】
(付記17)
本発明の他の態様によれば、
基板を保持する基板保持領域と、
前記基板保持領域よりも下方に設けられ、断熱板を保持する断熱板保持領域と、
前記断熱板保持領域を囲繞するカバーと
を有し、
前記カバーは、前記断熱板保持領域の周方向に沿って並んだ複数のカバー部材が組み合わされて構成され、前記複数のカバー部材のうち少なくとも1つのカバー部材は、着脱可能に取り付けられている基板保持具
によって、基板を保持する基板保持方法が提供される。
【0132】
(付記18)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理する処理室を形成する処理容器と、
基板保持具であって、
前記基板を保持する基板保持領域と、
前記基板保持領域よりも下方に設けられ、断熱板を保持する断熱板保持領域と、
前記断熱板保持領域を囲繞するカバーと
を有し、
前記カバーは、前記断熱板保持領域の周方向に沿って並んだ複数のカバー部材が組み合わされて構成され、前記複数のカバー部材のうち少なくとも1つのカバー部材は、着脱可能に取り付けられている基板保持具と、
前記処理室内に前記基板を処理する処理ガスを供給する処理ガス供給系と、
前記基板保持領域を加熱するヒータと
を有する基板処理装置が提供される。この場合、好ましくは、さらに、前記処理室内の雰囲気を排気し、排気口が前記基板保持領域よりも下方に配置された排気管を有する。
【0133】
(付記19)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を保持する基板保持領域と、
前記基板保持領域よりも下方に設けられ、断熱板を保持する断熱板保持領域と、
前記断熱板保持領域を囲繞するカバーと
を有し、
前記カバーは、前記断熱板保持領域の周方向に沿って並んだ複数のカバー部材が組み合わされて構成され、前記複数のカバー部材のうち少なくとも1つのカバー部材は、着脱可能に取り付けられている基板保持具を、前記基板保持具に基板が保持された状態で、処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内で前記基板を処理する工程と、
前記処理後の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0134】
(付記20)
付記19に記載の方法であって、好ましくは、
前記基板保持具は、前記複数のカバー部材と前記天面部材と前記底面部材とに囲繞される空間の熱容量が、上方で相対的に小さく、下方で相対的に大きくなるように、断熱板が配置されている。
【0135】
(付記21)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を保持する基板保持領域と、
前記基板保持領域よりも下方に設けられ、断熱板を保持する断熱板保持領域と、
前記断熱板保持領域を囲繞するカバーと
を有し、
前記カバーは、前記断熱板保持領域の周方向に沿って並んだ複数のカバー部材が組み合わされて構成され、前記複数のカバー部材のうち少なくとも1つのカバー部材は、着脱可能に取り付けられている基板保持具を、前記基板保持具に基板が保持された状態で、処理室内に搬入する手順と、
前記処理室内で前記基板を処理する手順と、
前記処理後の前記基板を前記処理室内から搬出する手順と、
をコンピュータに実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。