(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0014】
本発明の炭素質材料は、植物由来の炭素質材料であり、BET法による比表面積が1000m
2/g〜1800m
2/gであって、水素元素の含有量が0.25質量%以下、酸素元素の含有量が1.5重量%以下である。
【0015】
[BET比表面積]
本発明の炭素質材料のBET法による比表面積(「BET比表面積」ともいう)は、1000m
2/g以上であり、1200m
2/g以上が好ましく、1300m
2/g以上がより好ましく、1400m
2/g以上がさらに好ましく、また1800m
2/g以下であり、1700m
2/g以下が好ましい。BET比表面積が1800m
2/gを超えると、重量当たりの電解質吸着量は増えるが、体積当たりの容量が低下するため、高い初期静電容量を確保することが難しくなる傾向にある。BET比表面積が1000m
2/g未満であると、電解液との反応面積が低下することにより入出力特性が低下する可能性がある。
なお、本発明において、BET比表面積は窒素吸着法により算出することができ、例えば実施例に記載の方法により算出することができる。
【0016】
[平均粒子径]
本発明の炭素質材料の平均粒子径(Dv50)は、用途等に応じて適宜決定すればよいが、各種電池デバイスの極材や導電材等として用いる場合には、好ましくは2〜30μmである。平均粒子径が2μm以上であると、微粉の増加による電極作成時のペーストの増粘を抑えることができ、電極作成効率の低下を抑制することができる。また、得られた炭素質材料を用いて電極を製造した場合には、炭素質材料の間に十分な大きさの空隙を形成することができ、電解液中の電解質の移動を妨げ難い点でも好ましい。炭素質材料の平均粒子径は、好ましくは2μm以上、より好ましくは2.1μm以上、さらに好ましくは2.5μm以上、特に好ましくは3μm以上である。一方、炭素質材料の平均粒子径が30μm以下であると、粒子の表面積が容量に帰属するため、高い静電容量を得ること、および急速な充放電を行うことが可能である。さらに、電気二重層キャパシタでは、入出力特性の向上には電極面積を大きくすることが重要であり、そのため電極調製時に集電板への活物質の塗工厚みを薄くすることが好ましく、活物質の粒子径を小さくすることにより塗工厚みを薄くすることができる。このような観点から、平均粒子径の上限としては30μm以下が好ましいが、より好ましくは19μm以下であり、さらに好ましくは17μm以下であり、特に好ましくは16μm以下、最も好ましくは15μm以下である。
【0017】
[ラマンスペクトル]
また、本発明の炭素質材料は、レーザーラマン分光法により観測されるラマンスペクトルの1360cm
−1付近のピーク強度(I
D)と1580cm
−1付近のピーク強度(I
G)の強度比(R値=I
D/I
G)が1.2以上であることが好ましい。ここで、1360cm
−1付近のピークとは、一般にDバンドと称されるラマンピークであり、グラファイト構造の乱れ・欠陥に起因するピークである。また、1580cm
−1付近のピークとは、一般にGバンドと称されるラマンピークであり、グラファイト構造に由来するピークである。ここで、1360cm
−1付近のピークは、通常、1345cm
−1〜1375cm
−1、好ましくは1350cm
−1〜1370cm
−1の範囲に観測される。また、1580cm
−1付近のピークは、通常、1565cm
−1〜1615cm
−1、好ましくは1560cm
−1〜1610cm
−1の範囲に観測される。
【0018】
これらのピークの強度比であるR値は、炭素質材料の結晶性に関係する。炭素質材料の結晶性が高すぎると、グラファイト構造の発達により炭素エッジが減少し、電解質の配位サイトが少なくなる傾向にある。そのため、低温での特性が低下したり、抵抗が高くなったりするなどの問題が生じる。また、炭素質材料の結晶性が低すぎると、非晶質が多くなり、電気抵抗が高くなる傾向にある。そのため電解質と電極材界面の電気二重層の利用効率が低下する。上記の観点から、R値は、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.21以上である。また、R値は、電解液親和性の観点から1.4以下であることが好ましい。
【0019】
[金属元素]
本発明の炭素質材料にふくまれ得る金属元素としては、例えばアルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム、またはカルシウム)、遷移金属(例えば、鉄や銅)等が挙げられる。
【0020】
本発明の一実施態様において、炭素質材料に含まれるナトリウム元素含有量は、1000ppm以下が好ましく、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、特に好ましくは100ppm以下、非常に好ましくは50ppm以下である。本発明の炭素質材料に含まれるカリウム元素含有量は、500ppm以下が好ましく、より好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下である。また、本発明の炭素質材料に含まれる鉄元素含有量は、好ましくは200ppm以下が好ましく、より好ましくは150ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは60ppm以下、非常に好ましくは40ppm以下である。前記炭素質材料に含まれるナトリウム元素含有量、カリウム元素含有量および鉄元素含有量は、いずれも通常、0ppm以上である。炭素質材料中の金属元素の含有量が上記上限値以下であると、炭素質材料を電極材料に用いた場合において、金属元素による電気化学的な特性や安全性への影響を低減することができる。なお、カリウム元素および鉄元素の含有量が低いと、他の金属元素の含有量も低い傾向にある。
【0021】
[水素元素]
本発明の炭素質材料の水素元素の含有量は、0.25質量%以下であり、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.14質量%以下である。炭素質材料中の水素元素の含有量が上記上限値以下であると、電解質との反応性が低下し、安定である。なお、炭素質材料中の水素元素の含有量の下限値は、通常0.05質量%以上である。
【0022】
[酸素元素]
本発明の炭素質材料の酸素元素の含有量は、1.5質量%以下であり、好ましくは1.4質量%以下であり、より好ましくは1.3質量%以下である。炭素質材料中の酸素元素の含有量が上記上限値以下であると、電解質との反応性が低下し、安定である。なお、炭素質材料中の酸素元素の含有量の下限値は、通常0.1質量%以上である。
【0023】
本発明の炭素質材料は、電気抵抗が非常に低いため、各種電池デバイスの極材、静電除去用材料、導電材料等として好適に用いることができる。特に、例えば電気二重層キャパシタ用の電極材料として好適であり、本発明の炭素質材料を用いることにより、長期にわたり高い静電容量およびエネルギー密度を維持することのできる電気二重層キャパシタとすることができる。
【0024】
本発明の炭素質材料は、例えば
(1)平均粒子径100〜10000μm、BET法による比表面積900〜2000m
2/gの植物由来の活性炭にアルカリ金属水酸化物を添着する工程(以下、「アルカリ金属水酸化物添着工程」ともいう)、および
(2)前記工程により得られたアルカリ金属水酸化物添着活性炭を、ハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中、500℃〜1250℃で熱処理する気相脱灰工程(以下、「気相脱灰工程」ともいう)
を含む方法によって製造することができる。このような本発明の製造方法により、低抵抗の炭素質材料を安全で、経済的に、かつ容易に製造することができる。なお、上記製造方法は、
(i)最終的に得られる炭素質材料の平均粒子径を制御するために、活性炭または炭素質材料を粉砕する粉砕工程
を含んでもよく、および/または
(ii)原料となる炭素質材料を賦活して活性炭を得る賦活工程
を含んでもよい。
【0025】
本発明の炭素質材料は植物由来であり、植物由来の炭素質前駆体(以下、「植物由来のチャー」ともいう)を主原料として得ることができる。本発明においては、炭素質材料が植物由来であることにより、アルカリ金属水酸化物を添着下後、ハロゲン化合物を含む不活性ガス下で熱処理しても、構造収縮することなく、高い比表面積を維持することができる。また、鉱物由来、合成素材由来等の炭素質材料と比較して有害不純物を低減する観点、環境保護の観点および商業的な観点等においても有利である。
【0026】
本発明において、植物由来のチャー(炭素質前駆体)の原料となる植物は特に限定されるものではなく、例えば、椰子殻、珈琲豆、茶葉、サトウキビ、果実(みかん、またはバナナ)、藁、広葉樹、針葉樹、竹、または籾殻等を挙げることができる。これらの植物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。大量に入手可能であることから、原料植物として椰子殻を用いることは商業的に有利である。
【0027】
椰子殻の原料となる椰子としては、特に限定されるものではなく、例えば、パームヤシ(アブラヤシ)、ココヤシ、サラクおよびオオミヤシ等を挙げることができる。これらの椰子から得られた椰子殻は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、食品、洗剤原料、バイオディーゼル油原料などとして利用され、大量に発生するバイオマス廃棄物であるココヤシ由来またはパームヤシ由来の椰子殻は、入手が容易であり、低価格であることから特に好ましい。
【0028】
本発明においては、これらの植物を仮焼成してチャーの形態で入手することが可能で(例えば椰子殻チャー)、これを素原料として使用することが好ましい。ここで、チャーとは、一般的には石炭を加熱した際に溶融軟化しないで生成する炭素分に富む粉末状の固体をいうが、ここでは有機物を加熱し、溶融軟化しないで生成する炭素分に富む粉末状の固体も指すこととする。植物からチャーを製造する方法は、特に限定されるものではなく、当該分野において既知の方法を用いて製造することができる。例えば、原料となる植物を不活性ガス雰囲気下、例えば300℃以上の温度で1〜20時間程度加熱処理(炭化処理)することによって製造することができる。
【0029】
[賦活工程]
本発明において用いられる植物由来の活性炭は、例えば、上記炭素質前駆体(植物由来のチャー)を賦活処理することにより得ることができる。賦活処理とは、炭素質前駆体の表面に細孔を形成し多孔質の炭素質物質に変える処理であり、これにより大きな比表面積および細孔容積を有する活性炭(以下、賦活処理された炭素質前駆体を「原料活性炭」ともいう)を得ることができる。賦活処理を行わず、炭素質前駆体をそのまま用いた場合には、比表面積や細孔容積が十分でなく、電極材料に用いた場合に、十分に高い初期容量を確保することが困難である。賦活処理は、当該分野において一般的な方法により行うことができ、主に、ガス賦活処理と薬剤賦活処理の2種類の処理方法を挙げることができる。
【0030】
ガス賦活処理としては、例えば、水蒸気、二酸化炭素、空気、酸素、燃焼ガス、またはこれらの混合ガスの存在下、炭素質前駆体を加熱する方法が知られている。また、薬剤賦活処理としては、例えば、塩化亜鉛、塩化カルシウム、リン酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの賦活剤を炭素質前駆体と混合し、不活性ガス雰囲気下で加熱する方法が知られている。本発明においては、得られる原料活性炭の比表面積を大きくすることができ、細孔容積を容易に制御し得ることから、ガス賦活処理を用いることが好ましい。
【0031】
ガス賦活処理においては、賦活ガス剤として燃焼ガスを用いることが好ましい。燃焼ガスを賦活ガス剤として用いることにより、比表面積の大きな原料活性炭を容易に得ることができる。特に、植物由来の炭素質前駆体では、細孔容積の制御も容易であり、本発明において燃焼ガスを用いて賦活処理をした植物由来の原料活性炭を用いた場合には、他の炭素質前駆体を用いた場合や他の賦活処理(特に、薬剤賦活処理)により得られた原料活性炭を用いる場合と比較して、比表面積や細孔容積が大きな炭素質材料を得やすくなる。また、ガス賦活により得られる原料活性炭は非晶質炭素を多く含み、冷却中であっても容易に酸化されるため、ガス賦活処理を行って得られる活性炭には易分解性の酸性官能基がより多く生成される。このため、活性炭に存在する酸性官能基の量を低減することにより、高い静電容量およびエネルギー密度を維持できる電極材料として好適な炭素質材料を提供するという本発明の効果をより顕著に発現させることができる。したがって、本発明においては、燃焼ガスによる賦活処理により得られた植物由来の原料活性炭を用いることがより好ましい。
【0032】
本発明において原料活性炭のBET比表面積は、900m
2/g以上が好ましく、1200m
2/g以上がより好ましく、1300m
2/g以上がさらに好ましく、1400m
2/g以上が特に好ましい。また、2000m
2/g以下が好ましく、1800m
2/g以下がより好ましく、1700m
2/g以下がさらに好ましい。原料活性炭のBET比表面積が前記範囲内にある場合、電気二重層キャパシタ用途として十分な容量を得ることができる。
【0033】
また、原料活性炭の細孔容積は、0.1mL/g以上が好ましく、0.4mL/g以上がより好ましく、1mL/g以上がさらに好ましい。また、3mL/g以下が好ましく、2.5mL/g以下がより好ましく、2mL/g以下がさらに好ましい。原料活性炭の細孔容積が、前記範囲内にある場合、電気二重層キャパシタ用途として十分な容量を得ることができる。
なお、本発明において、細孔容積は窒素吸着法により算出することができ、例えば実施例に記載の方法により算出することができる。
【0034】
原料活性炭の比表面積や細孔容積は、炭素質前駆体の賦活処理方法およびその条件等を変えることにより制御することができる。例えば、ガス賦活処理により原料活性炭を得る場合、用いるガスや加熱温度および時間等により制御することができる。ガス賦活処理において、得られる原料活性炭の比表面積や平均細孔径は、加熱温度が低いと小さくなる傾向にあり、加熱温度が高いと大きくなる傾向にある。本発明において、ガス賦活処理により原料活性炭を得る場合、その加熱温度は用いるガスの種類にもよるが、例えば500〜1000℃程度であり、500〜900℃であることが好ましい。また、加熱時間は、0.1〜10時間程度であり、1〜7時間であることが好ましい。
【0035】
また、本発明における原料活性炭の平均粒子径は、100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、300μm以上がさらに好ましい。また、活性炭の平均粒子径の上限値は10000μm以下が好ましく、8000μm以下がより好ましく、5000μm以下がさらに好ましい。原料活性炭の平均粒子径が上記範囲にあると、アルカリ金属水酸化物の添着時に粒子内への拡散が均質に進み、且つ、ハロゲン化合物を含む不活性ガス下に処理する場合に気流同伴により気散することを防ぐことができる。
なお、本発明において、平均粒子径は、例えばレーザー散乱法により測定することができる。
【0036】
[アルカリ金属水酸化物添着工程]
本発明の炭素質材料の製造方法において、アルカリ金属水酸化物添着工程は、原料となる植物由来の活性炭にアルカリ金属水酸化物を添加混合する工程である。このアルカリ金属水酸化物の添着により、後述する気相脱灰工程における熱処理やその後の熱処理工程において、比表面積が低下するのを抑制することができ、脱水素や脱酸素官能基を促進することができる。
【0037】
アルカリ金属水酸化物添着工程に用いることができるアルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどが挙げられる。経済性や操作性を考慮して、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましく、比表面積低減抑制効果の観点から、水酸化ナトリウムがより好ましい。これらのアルカリ金属水酸化物は、無水物または水和物のいずれを用いてもよく、1種のみを単独で用いても、2種以上の複数種を混合して用いてもよい。
【0038】
アルカリ金属水酸化物の使用量は、特に限定されるものではなく、用いるアルカリ金属水酸化物の種類や原料活性炭の物性および特性等に応じて適宜決定すればよい。効果をより明確に得るためには、通常原料活性炭100質量%に対し10〜400質量%の範囲で用いることが好ましい。また、経済性や得られる炭素質材料の力学的な強度を考慮して、原料活性炭100質量%に対して15〜200質量%の範囲で用いることがより好ましく、20〜100質量%の範囲で用いることがさらに好ましい。
【0039】
アルカリ金属水酸化物を添着する方法は特に制限されるものではなく、例えば、アルカリ金属水酸化物を水や、メタノール、エタノールなどのアルコール類に溶解した混合物に、原料活性炭を加えて浸漬した後、脱溶媒する方法が挙げられる。この添着工程における処理温度や処理時間は特に限定されるものではなく、用いるアルカリ金属水酸化物や溶媒の種類、溶液の濃度等に応じて適宜決定すればよい。例えば、処理温度が低すぎる場合には、アルカリ金属水酸化物と原料活性炭を混合した混合物の粘度が上昇する傾向にあり、アルカリ金属水酸化物の拡散が不十分となる結果、比表面積の低下抑制効果や脱水素および脱酸素官能基の促進効果が十分に得られない可能性がある。また、処理時間があまりに短すぎる場合にもアルカリ金属水酸化物の拡散が不十分となる結果、比表面積の低下抑制効果や脱水素および脱酸素官能基の促進効果が十分に得られない可能性がある。本発明の一実施態様において、添着工程の処理温度は、通常10℃以上であり、15〜80℃程度であることが好ましく、処理時間は、通常10〜180分程度である。
また、アルカリ金属水酸化物と原料活性炭とを固体混合した後300℃程度に加熱し、アルカリ金属水酸化物を潮解、原料活性炭に吸着する方法等も挙げられる。これらの方法により得られたアルカリ金属水酸化物が添着した活性炭(以下、「アルカリ金属水酸化物添着活性炭」ともいう)は、そのまま後述する気相脱灰工程において使用することもできる。
【0040】
[気相脱灰工程]
植物由来の炭素質材料は多量の活物質をドープすることが可能であることから、電気二重層キャパシタの電極材料として有用である。しかしながら、植物由来のチャーは多くの金属元素を含有しており、特にカリウム(例えば、椰子殻チャーでは0.3%程度)や鉄(例えば、椰子殻チャーでは鉄元素を0.1%程度)を多く含んでいる。このように多量のカリウムや鉄などの金属元素を含んだ植物由来のチャーから製造された炭素質材料は、炭素電極材として用いた場合、電気化学的な特性や安全性に好ましくない影響を与える可能性がある。したがって、炭素質材料に含まれるカリウム元素や鉄元素などの含有量は、極力低下させることが好ましい。
また、植物由来のチャーは、カリウムや鉄元素以外にも、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム、またはカルシウム)、遷移金属(例えば、銅)およびその他の元素類を含んでおり、これらの金属類の含有量も低減させることが好ましい。これらの金属を含んでいると電極への電圧印加時に不純物が電解液中に溶出し、電池性能や安全性に悪影響を及ぼす可能性が高いからである。
【0041】
本発明において、気相脱灰工程は、上記アルカリ金属水酸化物添着工程により得られたアルカリ金属水酸化物添着活性炭を、ハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中、500℃〜1250℃で熱処理するものであり、この気相脱灰によって、ナトリウム元素、カリウム元素および鉄元素などを効率よく除去することができ、特に液相脱灰と比較して、鉄元素を効率よく除去することができる。また、他のアルカリ金属、アルカリ土類金属、さらには銅やニッケルなどの遷移金属を除去することが可能である。
【0042】
気相脱灰工程に用いる不活性ガスに含まれるハロゲン化合物は、特に限定されるものではなく、例えばフッ素、塩素および/またはヨウ素を含む化合物が挙げられる。具体的にはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、臭化ヨウ素、フッ化塩素(ClF)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、塩化臭素(BrCl)など、もしくは熱分解によりこれらのハロゲン化合物を発生する化合物、またはそれらの混合物を挙げることができる。これらのハロゲン化合物は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。入手性、化合物の安定性の観点から、好ましくは塩化水素または臭化水素であり、より好ましくは塩化水素である。
【0043】
ハロゲン化合物は不活性ガスと混合して使用されることが好ましい。混合する不活性ガスは、前記処理温度において活性炭および炭素質材料と反応しないものであれば、特に限定されるものではない。例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、またはそれらの混合ガスを挙げることができ、好ましくは窒素である。
また、不活性ガスに含まれる不純物ガス、特に酸素の濃度は低ければ低いほど好ましい。通常許容される酸素濃度としては、好ましくは0〜2000ppm、より好ましくは0〜1000ppmである。
【0044】
気相脱灰工程において、ハロゲン化合物と不活性ガスとの混合比は、十分な脱灰が達成される限り限定されるものではなく、用いるハロゲン化合物や不活性ガスの種類、処理を施す活性炭の状態、処理量等に応じて適宜決定すればよい。使用する機器の腐食安定性、ハロゲン吸着の吸着平衡の観点から、不活性ガスに対するハロゲン化合物の量が0.1〜10体積%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜5体積%であり、さらに好ましくは0.5〜3体積%である。なお、塩酸溶液等で処理する液相脱灰処理では十分な乾燥処理を行う必要が生じるのに対して、乾燥処理を容易に行い得るまたは必要としない気相脱灰処理を採用することは、生産性および工業的な観点から有利である。また、本発明においては、ハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中で気相脱灰処理を行うため、金属元素の削減だけでなく、炭素構造末端の水素を削減することができ、炭素質材料としての活性部位を削減できるため有利である。
【0045】
気相脱灰の温度は、通常500℃〜1250℃であり、好ましくは550℃以上、より好ましくは600℃以上であり、好ましくは1250℃以下、より好ましくは1200℃以下であり、例えば、550℃〜1250℃であることが好ましく、より好ましくは600℃〜1200℃である。気相脱灰の温度が500℃未満では、脱灰効率が低下して、脱灰が十分でないことがあり、気相脱灰の温度が1250℃を超えるとハロゲン化合物による賦活効果を得難く、熱収縮により、BET比表面積が小さくなるため好ましくない。
また、気相脱灰の時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは5〜300分であり、より好ましくは10〜200分であり、さらに好ましくは30〜150分である。
【0046】
上記気相脱灰工程により、処理を施す活性炭に含まれている金属元素、特にナトリウム、カリウムおよび鉄などを除去することができる。したがって、気相脱灰工程後の炭素質材料におけるナトリウム含有量は、0.05質量%以下が好ましく、0.03質量%以下がより好ましい。カリウム含有量は、0.05質量%以下が好ましく、0.03質量%以下がより好ましい。また、鉄含有量は、0.02質量%以下が好ましく、0.015質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下がより好ましく、0.005質量%以下がさらに好ましい。ナトリウム含有量、カリウム含有量および鉄含有量が上記上限値以下であると、得られた炭素質材料を用いた非水系蓄電池やキャパシタにおいて、これらの金属元素由来の電解質の生成に起因するセパレータまたは電極表面への析出および短絡を引き起こしにくく、このような炭素質材料を用いることにより、安全性の高い電池やキャパシタを提供することができる。
【0047】
本発明における気相脱灰工程によって、ナトリウム、カリウム、他のアルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属などが、効率よく除去できるメカニズムは明らかではないが、以下のように考えられる。植物由来のチャーに含まれているカリウムなどの金属が、チャー中に拡散したハロゲン化合物と反応し、金属ハロゲン化物(例えば、塩化物または臭化物)となる。そして生成された金属ハロゲン化物が、加熱により揮発(散逸)することにより、カリウムおよび鉄などを脱灰できると考えられる。このような、チャー中へのハロゲン化物の拡散、反応による金属ハロゲン化物の生成メカニズムでは、気相でのハロゲン化物の高拡散により、液相脱灰と比較して効率よくカリウムや鉄を除去できるものと考えられるが、本発明は、前記の説明に限定されるものではない。
【0048】
気相脱灰に用いる装置は、アルカリ金属水酸化物添着活性炭と、不活性ガスおよびハロゲン化合物の混合ガスとを混合しながら加熱できる限り、特に限定されるものではない。例えば、流動炉を用いて、流動床等による連続式またはバッチ式の層内流通方式で行うことができる。混合ガスの供給量(流通量)も、限定されるものではなく、アルカリ金属水酸化物添着活性炭1g当たり、通常1mL/分以上、好ましくは5mL/分以上、さらに好ましくは10mL/分以上である。
【0049】
[熱処理工程]
本発明においては、ハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中での気相脱灰工程の後に、さらにハロゲン化合物非存在下、炭素質材料を加熱する熱処理工程を行うことが好ましい。気相脱灰処理における前記ハロゲン化合物との接触により、ハロゲンが得られる炭素質材料中に含まれるため、ハロゲン化合物非存在下で熱処理を行い、かかる処理により炭素質材料中に含まれているハロゲンを除去することが好ましい。具体的には、ハロゲン化合物非存在下での熱処理は、ハロゲン化合物を含まない不活性ガス雰囲気中で、通常500℃〜1250℃で熱処理することによって行うが、ハロゲン化合物非存在下での熱処理の温度は、気相脱灰工程における温度と同じか、またはそれよりも高い温度で行うことが好ましい。熱処理工程の温度は、好ましくは500℃〜1250℃であり、より好ましくは550℃〜1200℃、さらに好ましくは600℃〜1150℃、さらにより好ましくは650℃〜1100℃、特に好ましくは650℃〜1050℃であり、非常に好ましくは700℃〜1000℃である。例えば、前記ハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中での熱処理(気相脱灰工程)の後に、ハロゲン化合物の供給を遮断して熱処理を行うことにより、ハロゲン化合物非存在下での熱処理を行うことができ、これにより、炭素質材料中のハロゲンを除去することができる。また、ハロゲン化合物非存在下での熱処理の時間も特に限定されるものではないが、好ましくは5〜300分であり、より好ましくは10〜200分であり、さらに好ましくは10〜150分であり、最も好ましくは10〜100分である。
【0050】
[粉砕工程]
本発明においては必要に応じて、最終的に得られる炭素質材料の形状や粒径を所望する形状や粒径に制御するための粉砕処理を施してもよい。粉砕処理は、原料活性炭、アルカリ金属水酸化物添着活性炭、気相脱灰処理後および/またはその後の熱処理後に得られた炭素質材料のいずれに対して行ってもよい。
【0051】
粉砕に用いる粉砕機は、特に限定されるものではなく、例えばビーズミル、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル、またはロッドミルなどを単独または組み合わせて使用することができる。微粉の発生が少ないという点では、分級機能を備えたジェットミルが好ましい。一方、ボールミル、ハンマーミル、またはロッドミルなどを用いる場合は、粉砕後に分級を行うことで微粉を除くことができる。
【0052】
粉砕処理後に分級することにより、平均粒子径をより正確に調整することができる。分級として、篩による分級、湿式分級、または乾式分級を挙げることができる。湿式分級機としては、例えば重力分級、慣性分級、水力分級、または遠心分級などの原理を利用した分級機を挙げることができる。また、乾式分級機としては、沈降分級、機械的分級、または遠心分級の原理を利用した分級機を挙げることができる。
【0053】
粉砕工程において、粉砕と分級は1つの装置を用いて行うこともできる。例えば、乾式の分級機能を備えたジェットミルを用いて、粉砕と分級を行うことができる。さらに、粉砕機と分級機とが独立した装置を用いることもできる。この場合、粉砕と分級とを連続して行うこともできるが、粉砕と分級とを不連続に行うこともできる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
なお、以下に炭素質材料および活性炭の物性値の測定方法を記載するが、実施例を含めて、本明細書中に記載する物性値は、以下の方法により求めた値に基づくものである。
【0055】
[BET比表面積測定]
マイクロトラック・ベル社製窒素吸着量測定装置BELSORP−MAXを使用し、試料の窒素吸着等温線を測定するBET法により比表面積を求めた。
【0056】
[元素分析]
株式会社堀場製作所製、酸素・窒素・水素分析装置EMGA−930を用いて元素分析を行った。
当該装置の検出方法は、酸素:不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法(NDIR)、窒素:不活性ガス融解−熱伝導度法(TCD)、水素:不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法(NDIR)であり、校正は、(酸素・窒素)Niカプセル、TiH
2(H標準試料)、SS−3(N、O標準試料)で行い、前処理として250℃、約10分で水分量を測定した試料20mgをNiカプセルに取り、元素分析装置内で30秒脱ガスした後に測定した。試験は3検体で分析し、平均値を分析値とした。
【0057】
[ラマンスペクトル]
株式会社堀場製作所製、LabRAM ARAMISを用い、レーザー波長532nmの光源を用いて、ラマンスペクトルを測定した。試験は、各試料において無作為に3箇所の粒子をサンプリングし、さらにサンプリングした各粒子内から2箇所について測定した。測定条件は、波長範囲50〜2000cm
−1、積算回数1000回であり、計6箇所の平均値を計測値として算出した。Gバンド半値幅は、上記測定条件にて得られたスペクトルに対し、Dバンド(1360cm
−1付近)とGバンド(1590cm
−1付近)とのピーク分離を、ガウス関数でフィッティングして実施した後、測定した。また、R値はDバンドとGバンドの各ピークの強度比I
D/I
G(Dバンドピーク強度/Gバンドピーク強度)とした。
【0058】
[平均粒子径測定]
試料の平均粒子径(粒度分布)は、レーザー散乱法による以下の通りに測定した。試料を界面活性剤(和光純薬工業(株)製「ToritonX100」)が0.3質量%含まれた水溶液に投入し、超音波洗浄器で10分以上処理し、水溶液中に分散させた。この分散液を用いて粒度分布を測定した。粒度分布測定は、粒子径・粒度分布測定器(日機装(株)製「マイクロトラックM T3000」)を用いて行った。D50は、累積体積が50%となる粒子径であり、この値を平均粒子径として用いた。
【0059】
[金属元素の含有量測定]
ナトリウム元素の含有量、カリウム元素の含有量および鉄元素の含有量の測定方法は、以下の方法により測定した。予め所定量のナトリウム元素、カリウム元素および鉄元素を含有する炭素試料を調製し、蛍光X線分析装置を用いて、ナトリウム、カリウムKα線の強度とナトリウム元素、カリウム元素含有量との関係、および鉄Kα線の強度と鉄元素含有量との関係に関する検量線を作成した。ついで試料について蛍光X線分析におけるナトリウムKα線、カリウムKα線および鉄Kα線の強度を測定し、先に作成した検量線よりナトリウム元素含有量、カリウム元素含有量および鉄元素含有量を求めた。
蛍光X線分析は、(株)島津製作所製LAB CENTER XRF−1700を用いて、以下の条件で行った。上部照射方式用ホルダーを用い、試料測定面積を直径20mmの円周内とした。被測定試料の設置は、内径25mmのポリエチレン製容器の中に被測定試料を0.5g入れ、裏をプランクトンネットで押さえ、測定表面をポリプロピレン製フィルムで覆い測定を行った。X線源は40kV、60mAに設定した。カリウムについては、分光結晶にLiF(200)、検出器にガスフロー型比例係数管を使用し、2θが90〜140°の範囲を、走査速度8°/分で測定した。鉄については、分光結晶にLiF(200)、検出器にシンチレーションカウンターを使用し、2θが56〜60°の範囲を、走査速度8°/分で測定した。
【0060】
[製造例1]
(原料活性炭の調製)
BET比表面積500m
2/gの椰子殻由来の炭素質前駆体を、灯油燃焼ガス(H
2O、CO
2、CO、N
2=20:10:1:100の混合ガス)にスチームを供給して水蒸気分圧35%に調整した賦活ガス中、900℃で90分間水蒸気賦活し、椰子殻由来の原料活性炭を調製した。原料活性炭のBET比表面積は1500m
2/gであった。
【0061】
[実施例1]
(炭素質材料の調製)
表1に示す条件に従って、以下の通り、炭素質材料を得た。製造例1で製造した椰子殻由来の原料活性炭を破砕して平均粒子径2.360〜0.850mmの椰子殻由来原料活性炭を得た。次にこの破砕後の椰子殻由来原料活性炭100gに対して、水酸化ナトリウム20gをイオン交換水100gに溶解した水溶液を加え、1時間浸漬含浸した後、80℃熱風乾燥機にて12時間乾燥した。乾燥して得られた活性炭を、2体積%塩化水素ガスを含む窒素ガスを10L/分の流量で供給して、処理温度870℃で50分間処理した。その後、塩化水素ガスの供給のみを停止し、さらに処理温度870℃で50分間熱処理し、炭素質材料を得た。得られた炭素質材料を、ボールミルで平均粒子径8μmに粗粉砕した後、コンパクトジェットミル(コジェットシステムα−mkIII)で粉砕および分級し、平均粒子径4μmの炭素質材料(1)を得た。
【0062】
[実施例2]
気相脱灰工程における処理時間を50分に代えて150分とした以外は、実施例1と同様の手順で、平均粒子径4μmの炭素質材料(2)を得た。
【0063】
[実施例3]
気相脱灰工程における処理温度およびその後の熱処理温度を、それぞれ870℃に代えて1020℃とした以外は、実施例1の手順で、平均粒子径4μmの炭素質材料(3)を得た。
【0064】
[実施例4]
表1に示す条件に従って、以下の通り、炭素質材料を得た。製造例1で製造した椰子殻由来の原料活性炭を破砕して平均粒子径2.360〜0.850mmの椰子殻由来原料活性炭を得た。次にこの破砕後の椰子殻由来原料活性炭100gに対して、水酸化ナトリウム25gをイオン交換水100gに溶解した水溶液を加え、1時間浸漬含浸した後、80℃熱風乾燥機にて12時間乾燥した。乾燥して得られた活性炭を、2体積%塩化水素ガスを含む窒素ガスを10L/分の流量で供給して、処理温度870℃で100分間処理した。その後、塩化水素ガスの供給のみを停止し、さらに処理温度870℃で50分間熱処理し、炭素質材料を得た。得られた炭素質材料を、ボールミルで平均粒子径8μmに粗粉砕した後、コンパクトジェットミル(コジェットシステムα−mkIII)で粉砕および分級し、平均粒子径3.8μmの炭素質材料(4)を得た。
【0065】
[実施例5]
表1に示す条件に従って、以下の通り、炭素質材料を得た。製造例1で製造した椰子殻由来の原料活性炭を破砕して平均粒子径2.360〜0.850mmの椰子殻由来原料活性炭を得た。次にこの破砕後の椰子殻由来原料活性炭100gに対して、水酸化ナトリウム40gをイオン交換水100gに溶解した水溶液を加え、1時間浸漬含浸した後、80℃熱風乾燥機にて12時間乾燥した。乾燥して得られた活性炭を、2体積%塩化水素ガスを含む窒素ガスを10L/分の流量で供給して、処理温度870℃で100分間処理した。その後、塩化水素ガスの供給のみを停止し、さらに処理温度870℃で50分間熱処理し、炭素質材料を得た。得られた炭素質材料を、ボールミルで平均粒子径8μmに粗粉砕した後、コンパクトジェットミル(コジェットシステムα−mkIII)で粉砕および分級し、平均粒子径3.5μmの炭素質材料(5)を得た。
【0066】
[比較例1]
2体積%の塩化水素ガスを含む窒素ガスに代えて塩化水素ガスを含まない窒素ガスを用いた以外は、実施例1と同様の手順で、平均粒子径4μmの炭素質材料(6)を得た。
【0067】
[比較例2]
2体積%の塩化水素ガスを含む窒素ガスに代えて塩化水素ガスを含まない窒素ガスを用いた以外は、実施例3と同様の手順で、平均粒子径4μmの炭素質材料(7)を得た。
【0068】
[比較例3]
水酸化ナトリウムを添着しなかった以外は、実施例1と同様の手順で、平均粒子径4μmの炭素質材料(8)を得た。
【0069】
【表1】
【0070】
<炭素質材料の分析>
次に、炭素質材料(1)〜(8)それぞれを試料として用いて、水素元素含有量、酸素元素含有量、金属元素(ナトリウム元素、カリウム元素、鉄元素)の含有量、BET比表面積、およびR値の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
[炭素材含有膜の作製]
実施例1〜5および比較例1〜3で得られた炭素質材料(1)〜(8)それぞれに、JSR(株)のスチレンブタジエンラバー(SBR)と第一工業製薬(株)のカルボキシメチルセルロース(CMC)を、電極材料:SBR:CMC=90:3:2(質量比)になるように水と混合し、スラリーを得た。得られたスラリーを白色スライドガラスにバーコーターで塗工後、80℃熱風乾燥し、ガラスチューブオーブンを用いて減圧雰囲気下150℃で7時間乾燥して炭素材含有膜(1)〜(8)を得た。得られた炭素材含有膜(1)〜(8)の厚みはそれぞれ100μmであった。
【0073】
上記で得た炭素材含有膜(1)〜(8)を、ローレスタGP(株式会社三菱化学アナリテック製)を用いてシート抵抗を測定した。
【0074】
<分析および試験結果>
上記炭素材含有膜(1)〜(8)のシート抵抗測定結果を、表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
表3より、実施例1〜5で得られた炭素質材料(1)〜(5)を用いた場合、比較例1〜3で得られた炭素質材料(6)〜(8)を用いた場合と比較して、大幅にシート抵抗が低くなり、導電性向上が観測された。