特許第6553311号(P6553311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553311
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20190722BHJP
   C08K 13/04 20060101ALI20190722BHJP
   C08G 59/30 20060101ALI20190722BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20190722BHJP
   C09D 5/25 20060101ALI20190722BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20190722BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20190722BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190722BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20190722BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20190722BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   C08L63/00 C
   C08K13/04
   C08G59/30
   C08G59/32
   C09D5/25
   C09D7/40
   C09D163/00
   C09J11/06
   C09J163/00
   C09K3/10 L
   H01L21/312 A
   H01L23/30 C
   H05K1/03 610L
【請求項の数】9
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2018-561367(P2018-561367)
(86)(22)【出願日】2018年1月9日
(86)【国際出願番号】JP2018000202
(87)【国際公開番号】WO2018131570
(87)【国際公開日】20180719
【審査請求日】2019年2月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-2215(P2017-2215)
(32)【優先日】2017年1月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 矩章
(72)【発明者】
【氏名】針▲崎▼ 良太
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝政
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−505945(JP,A)
【文献】 特表2004−527602(JP,A)
【文献】 特表2003−519705(JP,A)
【文献】 特開2012−001668(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/041325(WO,A1)
【文献】 特開2017−019983(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/010401(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/086368(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08G 59/30
C08G 59/32
C09D 5/25
C09D 7/40
C09D 163/00
C09J 11/08
C09J 163/00
C09K 3/10
H01L 21/312
H01L 23/29
H01L 23/31
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1−iia):
【化1】
(式中、Xiiは、飽和炭化水素環若しくは不飽和炭化水素環、又は飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2〜6個縮合した構造を有する環、から2個の水素原子を除いて得られる2価の基、あるいは式(2−iia):
【化2】
(式中、Yは、結合手、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、−SO−、又は−SO−を示す。)で表される2価の基を示し、
は同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
は同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキレン基を示し、この基は、ケイ素原子に直接結合した炭素原子を除く一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
は同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
mは0〜6の整数を示し、
nは0〜3の整数を示す。)
で表されるエポキシ樹脂、
式(1−iiia):
【化3】
(式中、Xiiiは、飽和炭化水素環若しくは不飽和炭化水素環、又は飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2〜6個縮合した構造を有する環、から3個の水素原子を除いて得られる3価の基、又は式(2−iiia):
【化4】
(式中、Yは、前記に同じ。)で表される3価の基を示し、
、R、R、m、及びnは前記に同じ。)
で表されるエポキシ樹脂、並びに
式(1−iva):
【化5】
(式中、Xivは、飽和炭化水素環若しくは不飽和炭化水素環、又は飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2〜6個縮合した構造を有する環、から4個の水素原子を除いて得られる4価の基、又は式(2):
【化6】
(式中、Yは前記に同じ。)で表される4価の基を示し、
、R、R、m、及びnは前記に同じ。)
で表されるエポキシ樹脂
からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂と有機微粒子とを含有し、
前記有機微粒子が、ポリオレフィン系樹脂微粒子である、
通信機器における、半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、層間絶縁膜、接着層、カバーレイフィルム、電磁波シールドフィルム、プリント基板材料又は複合材料のための、
エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記飽和炭化水素環が炭素数4〜8の飽和炭化水素環であり、
前記不飽和炭化水素環が炭素数4〜8の不飽和炭化水素環である、
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂が、
式(1−IIa):
【化7】
(式中、R、R、及びXiiは前記に同じ。)で表されるエポキシ樹脂、
式(1−IIb):
【化8】
(式中、R、R、R、Xii、及びnは前記に同じ。)で表されるエポキシ樹脂、並びに
式(1−IIIa):
【化9】
(式中、R、R、R、Xiii、及びnは前記に同じ。)で表されるエポキシ樹脂
からなる群より選択される、少なくとも1種である、
請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
式(1−IIa)で表されるエポキシ樹脂が、
iiが、1,4−フェニレン基又は式(2−iia’):
【化10】
(式中、Yは前記に同じ。)で表される基であり、Rが同一又は異なって炭素数1〜3のアルキル基であり、Rが同一又は異なって炭素数2〜6のアルキレン基、(*)−(CH−O−CH−、(*)−(CH−O−CH−、(*)−(CH−O−(CH−、又は(*)−(CH−O−(CH−である(ただし、(*)はRのケイ素原子に結合する側を示す)、エポキシ樹脂であり、
式(1−IIb)で表されるエポキシ樹脂が、
iiが1,4−フェニレン基又は式(2−iia’):
【化11】
(式中、Yは前記に同じ。)で表される基であり、Rが同一又は異なって炭素数1〜3のアルキル基であり、nが共に0であり、Rが同一又は異なって炭素数2〜6のアルキレン基である、エポキシ樹脂であり、
式(1−IIIa)で表されるエポキシ樹脂が、
iii
【化12】
若しくは
【化13】
又は式(2−iiia’):
【化14】
(式中、Yは前記に同じ。)で表される基であり、Rが同一又は異なって炭素数1〜3のアルキル基であり、nが共に0であり、Rが同一又は異なって炭素数2〜6のアルキレン基である、エポキシ樹脂である、
請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
有機微粒子が、体積平均粒子径が50μm以下のポリオレフィン系樹脂微粒子である、請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
有機微粒子が、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリオレフィン、及び変性ポリオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂微粒子である、請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
有機微粒子の形状が球状である、請求項1〜6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
有機微粒子が、式(1)で表されるエポキシ樹脂100質量部に対して、20〜400質量部含まれる、請求項1〜7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、その製造方法、及び該組成物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器の高性能化に伴い、伝送速度の高速化・高周波化が進んでおり、プリント基板及び半導体封止材に使用する材料の高周波領域での低誘電化が強く求められている。当該分野においては、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が基板材料や封止材として広く用いられており、例えば特許文献1にはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及び硬化剤を含む組成物が低誘電特性を示すことが記載されている。
【0003】
さらに、基板材料の軽量化および高周波化の両要求に対応するために、エポキシ樹脂のさらなる改質が求められている。例えば、非特許文献1には、改質成分としてNBR(アクリロニトリル/ブタジエンゴム)等のエラストマー粒子が配合され、エポキシ樹脂組成物の硬化物の特性が改善されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−240654号公報
【特許文献2】英国特許第1123960号明細書
【特許文献3】国際公開第2015/093281号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】植野富和:“エポキシ樹脂のエラストマー変性について”(粒子状架橋エラストマーによる改質効果),第23回公開技術講座,エポキシ樹脂技術協会,pp.79-88, 1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のエポキシ樹脂組成物では、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂用いることで、エポキシ樹脂組成物の硬化物の誘電特性を改善しているが、未だ十分とはいえない。また、非特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物は機械強度が向上している一方で、NBR中に含まれるアクリロニトリルの電気特性が悪く、組成物及びその硬化物の誘電特性を悪化させることが課題となっている。
本発明は、硬化した際に、優れた電気特性(特に、低誘電正接)、金属への高い接着強度が達成できるエポキシ樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、ケイ素原子を含む特定のエポキシ樹脂と有機微粒子とを含有するエポキシ樹脂組成物が、優れた低誘電特性を有することを見出した。この知見に基づいてさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
式(1):
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、X環は
飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環、あるいは
飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2〜6個縮合又は2個連結した構造を有する環であり、
Xa、RXb、RXc、及びRXdは、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルケニル基、ハロゲン原子、又は式(3):
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、Rは同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
は、炭素数1〜18のアルキレン基を示し、この基は、ケイ素原子に直接結合した炭素原子を除く一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
は同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
mは0〜6の整数を示し、
nは0〜3の整数を示す。)で表される基を示し、
但し、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、少なくとも1つは式(3)で表される基であり、
X環を構成する炭化水素環を構成する炭素原子であって且つRXa、RXb、RXc、及びRXdが結合していない炭素原子に結合した水素原子が、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルケニル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
で表されるエポキシ樹脂と有機微粒子とを含有するエポキシ樹脂組成物。
項2.
前記飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2個連結した構造を有する環が、
式(2):
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、X環及びX環は、同一又は異なって、飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環を示し、Yは、結合手、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、−SO−、又は−SO−を示す。)で表される環である、項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
項3.
前記飽和炭化水素環が炭素数4〜8の飽和炭化水素環であり、
前記不飽和炭化水素環が炭素数4〜8の不飽和炭化水素環である、
項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
項4.
式(1−iia):
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、Xiiは、飽和炭化水素環若しくは不飽和炭化水素環、又は飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2〜6個縮合した構造を有する環、から2個の水素原子を除いて得られる2価の基、あるいは式(2−iia):
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、Yは、結合手、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、−SO−、又は−SO−を示す。)で表される2価の基を示し、
は同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
は同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキレン基を示し、この基は、ケイ素原子に直接結合した炭素原子を除く一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
は同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
mは0〜6の整数を示し、nは0〜3の整数を示す。)
で表されるエポキシ樹脂、並びに
式(1−iiia):
【0019】
【化6】
【0020】
(式中、Xiiiは、飽和炭化水素環若しくは不飽和炭化水素環、又は飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2〜6個縮合した構造を有する環、から3個の水素原子を除いて得られる3価の基、又は式(2−iiia):
【0021】
【化7】
【0022】
(式中、Yは、前記に同じ。)で表される3価の基を示し、
、R、R、m、及びnは前記に同じ。)
で表されるエポキシ樹脂
からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂と有機微粒子とを含有する、項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
項5.
有機微粒子が、体積平均粒子径が50μm以下の有機微粒子である、項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
項6.
有機微粒子が、ポリオレフィン系樹脂微粒子である、項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
項7.
有機微粒子の形状が球状である、項1〜6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
項8.
有機微粒子が、式(1)で表されるエポキシ樹脂100質量部に対して、20〜400質量部含まれる、項1〜7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
項9.
項1〜8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
項10.
項1〜8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物又は項9に記載の硬化物が用いられている半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、層間絶縁膜、接着層、カバーレイフィルム、電磁波シールドフィルム、プリント基板材料又は複合材料。
項11.
半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、層間絶縁膜、接着層、カバーレイフィルム、電磁波シールドフィルム、プリント基板材料又は複合材料の用途に用いられる項1〜8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物又は項9に記載の硬化物。
項12.
半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、層間絶縁膜、接着層、カバーレイフィルム、電磁波シールドフィルム、プリント基板材料又は複合材料を製造するための項1〜8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物又は項9に記載の硬化物の使用。
【発明の効果】
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、式(1)で表されるエポキシ樹脂及び有機微粒子を含有するため、その硬化物は優れた電気特性、金属への高い接着強度を有している。そのため、本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、半導体封止材、液状封止材、ポッティング材、シール材、プリント基板材料、層間絶縁膜、接着層、カバーレイフィルム、電磁波シールドフィルム、複合材料等の広範な用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0025】
本発明に包含されるエポキシ樹脂組成物は、式(1):
【0026】
【化8】
【0027】
で表されるエポキシ樹脂及び有機微粒子を含有する。
【0028】
式(1)において、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルケニル基、ハロゲン原子、又は式(3):
【0029】
【化9】
【0030】
で表される基(以下「式(3)の基」ということがある)を示す。なお、以下、低級アルキル基、低級アルコキシ基、及び低級アルケニル基をまとめて、「低級炭素置換基」ということがある。本発明においては、低級炭素置換基の中でも、低級アルキル基又は低級アルコキシ基がより好ましい。
【0031】
但し、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、少なくとも1つは式(3)の基である。言い換えれば、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、3つが水素原子若しくはハロゲン原子又は低級炭素置換基で1つが式(3)の基であるか、2つが水素原子若しくはハロゲン原子又は低級炭素置換基で2つが式(3)の基であるか、1つが水素原子若しくはハロゲン原子又は低級炭素置換基で3つが式(3)の基であるか、あるいは全てが式(3)の基である。より具体的には、例えば、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、(i)RXa、RXb及びRXcが水素原子若しくはハロゲン原子又は低級炭素置換基でRXdが式(3)の基であるか、(ii)RXa及びRXbが水素原子若しくはハロゲン原子又は低級炭素置換基でRXc及びRXdが式(3)の基であるか、(iii)RXaが水素原子若しくはハロゲン原子又は低級炭素置換基でRXb、RXc、及びRXdが式(3)の基であるか、あるいは(iv)RXa、RXb、RXc、及びRXdの全てが式(3)の基であり得る。なお、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、式(3)の基でないものは、水素原子又は低級炭素置換基であることが、より好ましい。
【0032】
式(1)において、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、同一又は異なってよく、従って、(i)RXa、RXb及びRXcが水素原子若しくはハロゲン原子又は低級炭素置換基でRXdが式(3)の基である場合は、RXa、RXb及びRXcが同一又は異なってよい。(ii)RXa及びRXbが水素原子若しくはハロゲン原子又は低級炭素置換基でRXc及びRXdが式(3)の基である場合は、RXa及びRXbが同一又は異なってよく、RXc及びRXdも同一又は異なってよい。(iii)RXaが水素原子若しくはハロゲン原子又は低級炭素置換基でRXb、RXc、及びRXdが式(3)の基である場合は、RXb、RXc、及びRXdが同一又は異なってよい。(iv)RXa、RXb、RXc、及びRXdの全てが式(3)の基である場合は、RXa、RXb、RXc、及びRXdが同一又は異なってよい。なお、これらいずれの場合においても、式(3)の基が同一であることが好ましい。
【0033】
また、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、2又は3個がハロゲン原子又は低級炭素置換基である場合には、これらのハロゲン原子又は低級炭素置換基も同一又は異なってよい。この場合においては、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、2又は3個が、同一の低級炭素置換基であることがさらに好ましい。
【0034】
本明細書において、低級炭素置換基とは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は低級アルケニル基をいう。ここでの低級とは、炭素数1〜6(1、2、3、4、5、又は6)を意味する。低級炭素置換基のうち、好ましくは低級アルキル基又は低級アルコキシ基である。低級アルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が好ましく例示できる。低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等が好ましく例示できる。
【0035】
また、本明細書において、ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子であり、より好ましくはフッ素原子又は臭素原子である。
【0036】
式(1)において、X環は飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環、あるいは飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2〜6個縮合又は2個連結した構造を有する環を表す。 本明細書において、飽和炭化水素環としては、例えば炭素数4〜8(4、5、6、7、又は8)の飽和炭化水素環が好ましく、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等が特に好ましい。また、本明細書において、不飽和炭化水素環としては、例えば炭素数4〜8(4、5、6、7、又は8)の不飽和炭化水素環が好ましく、ベンゼン環等が特に好ましい。また、本明細書において、飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2〜6個縮合した構造を有する環としては、飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2、3、又は4個縮合した環が好ましく、2又は3個縮合した環がより好ましい。より具体的には、例えば、デカヒドロナフタレン環、アダマンタン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ピレン環、トリフェニレン環、テトラリン環、1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロナフタレン環、ノルボルネン環等が挙げられる。
【0037】
なお、本明細書では、飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環、あるいは飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2〜6個縮合した構造を有する環を、まとめて「炭化水素環」と呼ぶことがある。
【0038】
飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2個連結した構造を有する環としては、式(2):
【0039】
【化10】
【0040】
で表される環が好ましい。
【0041】
式(2)において、X環及びX環は、同一又は異なって、飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環を示す。すなわち、X環及びX環は、両方とも飽和炭化水素環であるか、両方とも不飽和炭化水素環であるか、一方が飽和炭化水素環でもう一方が不飽和炭化水素環である。X環及びX環が、両方とも飽和炭化水素環であるか、両方とも不飽和炭化水素環であることが好ましい。例えば、X環及びX環は、両方がベンゼン環、両方がシクロヘキサン環、又は一方がベンゼン環でもう一方がシクロヘキサン環、であることが好ましく、両方がベンゼン環であることがより好ましい。
【0042】
また、Yは、結合手、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、−SO−、又は−SO−を示す。ここでの炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等が例示できる。また、置換基である炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が例示できる。好ましい炭素数1〜4のアルキル基で置換された炭素数1〜6のアルキレン基としては、−CH(CH)−、−C(CH−、−CHCH(CH)CH−、−CHC(CHCH−等が例示できる。Yは好ましくは、結合手、酸素原子、メチレン基、ジメチルメチレン基、−S−、−SO−であり、より好ましくは、結合手、ジメチルメチレン基、酸素原子、−SO−である。
【0043】
式(2)で表わされる環はRXa、RXb、RXc、及びRXdで置換されている。式(1)中のX環が式(2)であって、RXa〜RXdの3つが水素原子若しくはハロゲン原子又は低級炭素置換基で1つが式(3)の基である場合、X環及びX環のいずれが式(3)の基で置換されていてもよい。また、この場合、式(2)で表わされる環は0、1、2、又は3つのハロゲン原子又は低級炭素置換基で置換されるところ、ハロゲン原子又は低級炭素置換基の(X環の置換数:X環の置換数)は(1:0)、(0:1)、(2:0)、(1:1)、(0:2)、(3:0)、(2:1)、(1:2)、又は(0:3)であり得る。RXa〜RXdの2つが水素原子若しくはハロゲン原子又は低級炭素置換基で2つが式(3)の基である場合、X環及びX環のいずれかが2つの式(3)の基で置換されていてもよく、X環及びX環が1つずつ式(3)の基で置換されていてもよく、X環及びX環が1つずつ式(3)の基で置換されていることが好ましい。この場合、式(2)で表わされる環は0、1、又は2つのハロゲン原子又は低級炭素置換基で置換されるところ、ハロゲン原子又は低級炭素置換基の(X環の置換数:X環の置換数)は(1:0)、(0:1)、(2:0)、(1:1)、又は(0:2)であり得る。RXa〜RXdの1つが水素原子若しくはハロゲン原子又は低級炭素置換基で3つが式(3)の基である場合、X環及びX環のいずれかが3つの式(3)の基で置換されていてもよく、X環が2つX環が1つの式(3)の基で置換されていてもよく、X環が1つX環が2つの式(3)の基で置換されていてもよく、X環が2つX環が1つの式(3)の基で置換されている又はX環が1つX環が2つの式(3)の基で置換されていることが好ましい。この場合、式(2)で表わされる環は0又は1つのハロゲン原子又は低級炭素置換基で置換されるところ、ハロゲン原子又は低級炭素置換基の(X環の置換数:X環の置換数)は(1:0)、又は(0:1)であり得る。RXa〜RXdの全てが式(3)の基である場合、X環及びX環のいずれかが4つの式(3)の基で置換されていてもよく、X環が3つX環が1つの式(3)の基で置換されていてもよく、X環が1つX環が3つの式(3)の基で置換されていてもよく、X環が2つX環が2つの式(3)の基で置換されていてもよく、X環が2つX環が2つの式(3)の基で置換されていることが好ましい。
【0044】
式(1)の一部である基である、式(1’):
【0045】
【化11】
【0046】
(式(1’)中、X環は前記に同じ。)
で示される4価の基として、特に好ましくは以下の式で表される基が挙げられる。すなわち、
【0047】
【化12】
【0048】
又は
【0049】
【化13】
【0050】
又は
【0051】
【化14】
【0052】
(式(2)中、Yは前記に同じ。)
で表される基である。
【0053】
式(3)において、Rは同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子(好ましくは酸素原子)で置換されていてもよい。当該一部の炭素原子は、ケイ素原子に直接結合していない炭素原子であることが好ましい。また、当該置換されていてもよい一部の炭素原子は、1又は複数(例えば2、3、4、5、又は6)個の炭素原子であり、好ましくは1個の炭素原子である。なお、合成の簡便さの観点等から同一ケイ素原子に結合したRは同一であることが好ましい。また、式(1)において存在する全てのRが同一であることがより好ましい。
【0054】
で示される炭素数1〜18のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2,2,4−トリメチルペンチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0055】
で示される炭素数2〜9のアルケニル基としては、直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のアルケニル基である。
【0056】
で示されるシクロアルキル基としては、3〜8員環のシクロアルキル基が挙げられ、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0057】
で示されるアリール基としては、単環又は二環のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。好ましくは、フェニル基である。
【0058】
で示されるアラルキル基としては、アリール基(特にフェニル基)で置換された炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、例えば、ベンジル基、α−フェネチル基、β−フェネチル基、β−メチルフェネチル基等が挙げられる。
【0059】
は、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0060】
式(3)において、Rは、炭素数1〜18のアルキレン基を示す。当該アルキレン基は、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基であり、好ましくは直鎖状のアルキレン基である。例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジメチレン基(−CHCH−)、トリメチレン基(−CHCHCH−)、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基等が挙げられる。例えば、炭素数2〜18のアルキレン基、好ましくは炭素数2〜10のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数2〜6のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数2〜5のアルキレン基である。
【0061】
炭素数1〜18のアルキレン基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子(好ましくは酸素原子)で置換されていてもよい。当該一部の炭素原子は、ケイ素原子及び3〜8員環又はエポキシ環のいずれにも直接結合していない炭素原子であることが好ましい。また、当該置換されていてもよい一部の炭素原子は、1又は複数(例えば2、3、4、5、又は6)個の炭素原子であり、好ましくは1個の炭素原子である。
【0062】
当該基としては、Rのケイ素原子に結合する側を(*)とした場合に、例えば、(*)−炭素数2〜9のアルキレン−O−炭素数1〜8のアルキレン−、好ましくは(*)−炭素数2〜4のアルキレン−O−炭素数1〜3のアルキレン−、より好ましくは(*)−炭素数2〜4のアルキレン−O−炭素数1〜2のアルキレン−、特に好ましくは(*)−炭素数3のアルキレン−O−メチレン−が挙げられる。
【0063】
具体的には、例えば、(*)−(CH−O−CH−、(*)−(CH−O−CH−、(*)−(CH−O−(CH−、(*)−(CH−O−(CH−などが挙げられ、これらの中でも(*)−(CH−O−CH−が好ましい。
【0064】
式(3)において、mは0〜6の整数(すなわち0、1、2、3、4、5、又は6)を示す。また、nは0〜3の整数(すなわち、0、1、2、又は3)を示す。ここで、式(3)のRが結合している基(ケイ素原子に結合していない側)を式(4)で示す(以下、「式(4)の基」ということがある)と、以下のようになる。
【0065】
【化15】
【0066】
式(4)の基について、mが1〜6の整数である場合を具体的に構造式で記載すると、
m=1の場合は
【0067】
【化16】
【0068】
m=2の場合は
【0069】
【化17】
【0070】
m=3の場合は
【0071】
【化18】
【0072】
m=4の場合は
【0073】
【化19】
【0074】
m=5の場合は
【0075】
【化20】
【0076】
m=6の場合は
【0077】
【化21】
【0078】
と示される。
【0079】
式(4)の基は、mが0の場合には、エポキシ環のみが残り、nが0〜3の整数であるため、以下のいずれかの基を示す。
【0080】
【化22】
【0081】
式(3)において、R及びRは、3〜8員環又はエポキシ環に結合する。なお、nは3〜8員環又はエポキシ環に結合するRの数を示している。
【0082】
式(3)において、Rは同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよい。当該一部の炭素原子は、3〜8員環又はエポキシ環に直接結合していない炭素原子であることが好ましい。また、当該置換されていてもよい一部の炭素原子は、1又は複数(例えば2、3、4、5、又は6)個の炭素原子であり、好ましくは1個の炭素原子である。
【0083】
で示される炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基はそれぞれ、上記Rで示される対応する置換基と同様のものが挙げられる。
【0084】
として、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0085】
中でも好ましい式(3)の基の例として、R、R、R、m、及びnは前記に同じであって、且つ、Rが全て同一であり、Rが(複数存在する場合には)全て同一である基が挙げられる。当該基は、式(1)で表されるエポキシ樹脂には1、2、3又は4存在し、それぞれの基が同一又は異なってよく、同一であることが好ましい。
【0086】
また式(4)の基として、特に好ましい具体例としては、Rは前記に同じであり、mが0、1、2、3又は4を示し、nが0、1又は2を示す基が挙げられ、なかでもより好ましくは、以下の基(いずれもRは前記に同じ)が挙げられる。
【0087】
【化23】
【0088】
式(4)の基は、式(1)で表されるエポキシ樹脂には1,2、3又は4存在するが、それぞれの基が同一又は異なってよく、同一であることが好ましい。
【0089】
また、X環を構成する炭化水素環を構成する炭素原子であって且つRXa、RXb、RXc、及びRXdが結合していない炭素原子に結合した水素原子は、低級炭素置換基又はハロゲン原子(好ましくは低級炭素置換基)で置換されていてもよい。つまり、X環が飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環、あるいは飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2〜6個縮合した構造を有する環である場合は、これらの環を構成する炭素原子であって且つRXa、RXb、RXc、及びRXdが結合していない炭素原子に結合した水素原子は、低級炭素置換基又はハロゲン原子(好ましくは低級炭素置換基)で置換されていてもよく、またX環が飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2個連結した構造を有する環である場合は、これら連結された飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環を構成する炭素原子であって且つRXa、RXb、RXc、及びRXdが結合していない炭素原子に結合した水素原子は、低級炭素置換基又はハロゲン原子(好ましくは低級炭素置換基)で置換されていてもよい。なお、X環が式(2)で表される環である場合をより具体的に説明すると、X環及びX環を構成する炭素原子であって且つRXa、RXb、RXc、及びRXdが結合していない炭素原子に結合した水素原子は、低級炭素置換基又はハロゲン原子(好ましくは低級炭素置換基)で置換されていてもよい、といえる。
【0090】
本明細書においては、X環を構成する炭化水素環を構成する炭素原子であって且つRXa、RXb、RXc、及びRXdが結合していない炭素原子を「RXa−d非結合炭素原子」ということがある。
【0091】
Xa−d非結合炭素原子に結合した水素原子が置換されていてもよい低級炭素置換基又はハロゲン原子は、1つのRXa−d非結合炭素原子に1つだけ結合することが好ましい。つまり、RXa−d非結合炭素原子に結合した水素原子が置換される場合においては、RXa−d非結合炭素原子に結合した水素原子のうち1つの水素原子だけが低級炭素置換基又はハロゲン原子で置換されることが好ましい。また、当該置換の数(すなわち低級炭素置換基及びハロゲン原子の合計)は、RXa−d非結合炭素原子の数より少ないことが好ましい。当該置換の数は、より具体的には1〜6(1、2、3、4、5、又は6)が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜2がさらに好ましい。また、特にX環が式(2)で表される環である場合には、置換される水素原子はYが結合していない炭素原子に結合した水素原子であることが好ましい。
【0092】
Xa、RXb、RXc、及びRXdのうち少なくとも1つが低級炭素置換基であって、且つRXa−d非結合炭素原子に低級炭素置換基が少なくとも1つ結合する場合、全ての低級炭素置換基が同一であることが好ましい。つまり、RXa、RXb、RXc、及びRXd中に低級炭素置換基が存在し、且つRXa−d非結合炭素原子に結合する低級炭素置換基が存在する場合、全ての低級炭素置換基が同一であることが好ましい。また、特に制限はされないが、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち少なくとも1つがハロゲン原子であって、且つRXa−d非結合炭素原子にハロゲン原子が少なくとも1つ結合する場合、全てのハロゲン原子が同一であることが好ましい。つまり、RXa、RXb、RXc、及びRXd中にハロゲン原子が存在し、且つRXa−d非結合炭素原子に結合するハロゲン原子が存在する場合、全てのハロゲン原子が同一であることが好ましい。
【0093】
さらに具体的に説明すると、例えば、上記式(1’)で表される4価の基が
【0094】
【化24】
【0095】
である場合、式(1)で表されるエポキシ樹脂として、式(1−X1)
【0096】
【化25】
【0097】
(式(1−X1)中、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、前記に同じであり、RXg1及びRXg2は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は低級アルケニル基を示す。)で表されるエポキシ樹脂を好ましく例示できる。式(1−X1)において、RXa、RXb、RXc、RXd、RXg1及びRXg2が、それぞれ、ベンゼン環上の異なる炭素原子に結合していることがより好ましい。式(1−X1)で表されるエポキシ樹脂の中でも、RXg1及びRXg2が水素原子であるものが好ましい。
【0098】
式(1−X1)で表されるエポキシ樹脂の中でも、さらに好ましいものとして式(1−X1a):
【0099】
【化26】
【0100】
(式(1−X1a)中、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、前記に同じであり、RXg1及びRXg2は、前記に同じ。)で表されるエポキシ樹脂や、式(1−X1b):
【0101】
【化27】
【0102】
(式1−X1b中、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、前記に同じであり、RXg1及びRXg2は、前記に同じ。)で表されるエポキシ樹脂が、例示できる。
【0103】
式(1−X1a)で表されるエポキシ樹脂の中でも、例えば、RXa及びRXbが水素原子でRXc及びRXdが式(3)の基であり、RXg1及びRXg2が水素原子である場合や、RXa及びRXcが水素原子でRXb及びRXdが式(3)の基であり、RXg1及びRXg2が水素原子である場合がより好ましい。
【0104】
また、式(1−X1b)で表されるエポキシ樹脂の中でも、例えば、RXaが水素原子でRXb、RXc及びRXdが式(3)の基であり、RXg1及びRXg2が水素原子である場合がより好ましい。
【0105】
また、上記式(1’)で表される4価の基が
【0106】
【化28】
【0107】
(式(2)中、Yは前記に同じ。)
で表される基である場合、式(1)で表されるエポキシ樹脂として、式(1−X2)
【0108】
【化29】
【0109】
(式(1−X2)中、Yは前記に同じであり、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、前記に同じであり、RX11、RX12、及びRX13並びにRX21、RX22、及びRX23は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は低級アルケニル基を示す。)で表されるエポキシ樹脂も好ましく例示できる。式(1−X2)において、RXa、RXc、RX11、RX12、及びRX13が、それぞれ異なる炭素原子に結合していることが好ましく、また、RXb、RXd、RX21、RX22、及びRX23が、それぞれ異なる炭素原子に結合していることがより好ましい。また、RXa、RXb、RXc、RXd、RX11、RX12、RX13、RX21、RX22、及びRX23は、いずれもYが結合した炭素原子には結合しない。
【0110】
式(1−X2)で表されるエポキシ樹脂の中でも、さらに好ましいものとして式(1−X2a):
【0111】
【化30】
【0112】
(式(1−X2a)中、Yは前記に同じであり、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、前記に同じであり、RX11、RX12、及びRX13並びにRX21、RX22、及びRX23は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は低級アルケニル基を示す。)で表されるエポキシ樹脂や、式(1−X2b):
【0113】
【化31】
【0114】
(式(1−X2b)中、Yは前記に同じであり、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、前記に同じであり、RX11、RX12、及びRX13並びにRX21、RX22、及びRX23は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は低級アルケニル基を示す。)で表されるエポキシ樹脂や、式(1−X2c):
【0115】
【化32】
【0116】
(式(1−X2c)中、Yは前記に同じであり、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、前記に同じであり、RX11、RX12、及びRX13並びにRX21、RX22、及びRX23は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は低級アルケニル基を示す。)で表されるエポキシ樹脂が、例示出来る。
【0117】
式(1−X2a)で表されるエポキシ樹脂の中でも、例えば、RXa、RXb、RXc、及びRXdが式(3)の基であり、RX11及びRX21が低級炭素置換基であり、RX12、RX13、RX22、及びRX23が水素原子である場合が好ましい。中でも、Yが炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基(特に−C(CH−)であり、RXa、RXb、RXc、及びRXdが式(3)の基であり、RX11及びRX21が低級アルコキシ基であり、RX12、RX13、RX22、及びRX23が水素原子である場合が特に好ましい。これらの場合において、RXa、RXb、RXc、及びRXdの式(3)の基が全て同一であり、RX11及びRX21の低級炭素置換基が同一である場合が、より好ましい。
【0118】
また、式(1−X2b)で表されるエポキシ樹脂の中でも、例えば、RXa及びRXbが水素原子でRXc及びRXdが式(3)の基であり、RX11、RX12、RX13、RX21、RX22、及びRX23は水素原子の場合が好ましい。この場合において、RXc及びRXdの式(3)の基が同一である場合が、より好ましい。
【0119】
また、式(1−X2c)で表されるエポキシ樹脂の中でも、例えば、RXaが水素原子でRXb、RXc及びRXdが式(3)の基であり、RX11、RX12、RX13、RX21、RX22、及びRX23は水素原子の場合が好ましい。この場合において、RXb、RXc及びRXdの式(3)の基が同一である場合が、より好ましい。
【0120】
本明細書において、式(1)におけるX環、RXa、RXb、RXc、及びRXd、並びに式(3)の基におけるR、R、R、m、及びnに関する説明は、式(4)の基についての説明も含め、いずれも任意に組み合わせることができ、その組み合わせにより示されるいずれのエポキシ樹脂も本発明に用いることができる。
【0121】
式(1)において、(iia)RXa−d非結合炭素原子に結合した水素原子が置換されておらず、且つ、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、RXa及びRXbが水素原子でRXc及びRXdが式(3)の基であるか、(iiia)RXa−d非結合炭素原子に結合した水素原子が置換されておらず、且つ、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、RXaが水素原子でRXb、RXc、及びRXdが式(3)の基であるか、あるいは(iva)RXa−d非結合炭素原子に結合した水素原子が置換されておらず、且つ、RXa、RXb、RXc、及びRXdの全てが式(3)の基であり得る。
【0122】
(iia)の場合、式(1)で示されるエポキシ樹脂は、次の式(1−iia):
【0123】
【化33】
【0124】
〔式中、Xiiは、炭化水素環から2個の水素原子を除いて得られる2価の基、又は式(2−iia):
【0125】
【化34】
【0126】
(式中、Yは、前記に同じ。)で表される2価の基を示し、
、R、R、m、及びnは前記に同じ。〕
で表されるエポキシ樹脂を好ましく包含する。なお、R、R、R、m、及びnは、いずれも、それぞれ同一又は異なっていてよく、同一であることが好ましい。
【0127】
iiで示される2価の基として、好ましくはシクロヘキサン−1,4−ジイル基、1,4−フェニレン基が挙げられ、より好ましくは1,4−フェニレン基である。
【0128】
式(2−iia)で表される2価の基のうち好ましくは、式(2−iia’):
【0129】
【化35】
【0130】
(式中、Yは前記に同じ。)
で表される基である。
【0131】
式(2−iia’)において、Yが結合手、ジメチルメチレン基、酸素原子、又は−SO−である基が特に好ましい。
【0132】
iiとして、中でも好ましくはシクロヘキサン−1,4−ジイル基、1,4−フェニレン基、式(2−iia’)が挙げられ、より好ましくは1,4−フェニレン基である。
【0133】
例えば、式(1−iia)において、mは同一で0、1、2、3、又は4(特に好ましくは、mは同一で0又は4)、nは同一で0(すなわち、Rにより環は置換されていない)を、Xiiは炭化水素環(特に好ましくはベンゼン環)から2個の水素原子を除いて得られる2価の基を、Rは同一で炭素数1〜3のアルキル基を、Rは同一でケイ素原子及び3〜6員環又はエポキシ環のいずれにも直接結合していない1個の炭素原子が酸素原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を、それぞれ示すことで表されるエポキシ樹脂を、より好ましく本発明に用いることができる。
【0134】
(iiia)の場合、式(1)で示されるエポキシ樹脂は、次の式(1−iiia):
【0135】
【化36】
【0136】
〔式中、Xiiiは、炭化水素環から3個の水素原子を除いて得られる3価の基、又は式(2−iiia):
【0137】
【化37】
【0138】
(式中、Yは、前記に同じ。)で表される3価の基を示し、R、R、R、m、及びnは前記に同じ。〕
で表されるエポキシ樹脂を好ましく包含する。なお、R、R、R、m、及びnは、いずれも、それぞれ同一又は異なっていてよく、同一であることが好ましい。
【0139】
iiiで示される3価の基として、好ましくは以下の基:
【0140】
【化38】
【0141】
が挙げられる。
【0142】
式(2−iiia)で表される3価の基のうち好ましくは、式(2−iiia’):
【0143】
【化39】
【0144】
(式中、Yは前記に同じ。)
で表される基である。
【0145】
式(2−iiia’)において、Yが結合手、ジメチルメチレン基、酸素原子、又は−SO−である基が特に好ましい。
【0146】
例えば、式(1−iiia)において、mは同一で0、1、2、3、又は4(特に好ましくは、mは同一で0又は4)、nは同一で0(すなわち、Rにより環は置換されていない)を、Xiiiは炭化水素環(特に好ましくはベンゼン環)から3個の水素原子を除いて得られる3価の基を、Rは同一で炭素数1〜3のアルキル基を、Rは同一でケイ素原子及び3〜6員環又はエポキシ環のいずれにも直接結合していない1個の炭素原子が酸素原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を、それぞれ示すことで表されるエポキシ樹脂を、より好ましく本発明に用いることができる。
【0147】
(iva)の場合、式(1)で示されるエポキシ樹脂は、次の式(1−iva):
【0148】
【化40】
【0149】
〔式中、Xivは、前記(1’)で示される4価の基であって、且つX環においてRXa−d非結合炭素原子に結合した水素原子が置換されていない基を示し、R、R、R、m、及びnは前記に同じ。〕
で表されるエポキシ樹脂を包含する。なお、R、R、R、m、及びnは、いずれも、それぞれ同一又は異なっていてよく、同一であることが好ましい。
【0150】
ivで示される4価の基として、好ましくは以下の基:
【0151】
【化41】
【0152】
が挙げられる。
【0153】
ivで示される4価の基として、式(2)で表される4価の基であってRXa−d非結合炭素原子に結合した水素原子が置換されていない基のうち、好ましくは、式(2−iva’):
【0154】
【化42】
【0155】
(式中、Yは前記に同じ。)
で表される基が挙げられる。
【0156】
式(2−iva’)において、Yが結合手、ジメチルメチレン基、酸素原子、又は−SO−である基が特に好ましい。
【0157】
例えば、式(1−iva)において、mは同一で0、1、2、3、又は4(特に好ましくは、mは同一で0又は4)、nは同一で0(すなわち、Rにより環は置換されていない)を、Xivは炭化水素環(特に好ましくはベンゼン環)から4個の水素原子を除いて得られる4価の基を、Rは同一で炭素数1〜3のアルキル基を、Rは同一でケイ素原子及び3〜6員環又はエポキシ環のいずれにも直接結合していない1個の炭素原子が酸素原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を、それぞれ示すことで表されるエポキシ樹脂を、より好ましく本発明に用いることができる。
【0158】
式(1)で表されるエポキシ樹脂のうち、さらに好ましいものとして、具体的には、例えば、式(1−IIa):
【0159】
【化43】
【0160】
(式中、R、R、及びXiiは前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。
【0161】
式(1−IIa)で表される化合物の中でも、Xiiが、1,4−フェニレン基又は式(2−iia’)で表される基(好ましくは1,4−フェニレン基)であり、Rが同一又は異なって(好ましくは同一で)炭素数1〜3のアルキル基(特にメチル基)であり、Rが同一又は異なって(好ましくは同一で)炭素数2〜6のアルキレン基、(*)−(CH−O−CH−、(*)−(CH−O−CH−、(*)−(CH−O−(CH−、又は(*)−(CH−O−(CH−である化合物が好ましい。なお、上記同様、(*)はRのケイ素原子に結合する側を示す。
上記式(1−IIa)で表されるエポキシ樹脂のうち、さらに好ましいものとして、式(1−IIa1):
【0162】
【化44】
【0163】
(式中、R及びXiiは前記に同じ。)
又は式(1−IIa2):
【0164】
【化45】
【0165】
(式中、R及びXiiは前記に同じ。)
で表されるエポキシ樹脂が例示できる。なお、Rは同一又は異なっていてよく、同一であることが好ましい。
【0166】
式(1−IIa1)又は(1−IIa2)において、Rは、同一又は異なって(好ましくは同一で)炭素数1〜3のアルキル基(特にメチル基)であり、Xiiは、1,4−フェニレン基又は式(2−iia’)で表される基であるものがより好ましい。
【0167】
また、式(1)で表されるエポキシ樹脂のうち、より好ましいものとして、例えば、式(1−IIb):
【0168】
【化46】
【0169】
(式中、R、R、R、Xii、及びnは前記に同じ。)
で表されるエポキシ樹脂を挙げることもできる。なお、R、R、R、及びnは、いずれも、それぞれ同一又は異なっていてよく、同一であることが好ましい。
式(1−IIb)において、Xiiが1,4−フェニレン基又は式(2−iia’)で表される基(好ましくは1,4−フェニレン基)であり、Rが同一又は異なって(好ましくは同一で)炭素数1〜3のアルキル基(特にメチル基)であり、nが共に0(すなわち環はRで置換されていない)であり、Rが同一又は異なって(好ましくは同一で)炭素数2〜6のアルキレン基(好ましくはジメチレン基:−(CH−)であるものがより好ましい。
【0170】
また、式(1)で表されるエポキシ樹脂のうち、より好ましいものとして、さらに例えば、式(1−IIIa):
【0171】
【化47】
【0172】
(式中、R、R、R、Xiii、及びnは前記に同じ。)
で表されるエポキシ樹脂を挙げることもできる。なお、R、R、R、及びnは、いずれも、それぞれ同一又は異なっていてよく、同一であることが好ましい。
式(1−IIIa)において、Xiii
【0173】
【化48】
【0174】
若しくは
【0175】
【化49】
【0176】
又は式(2−iiia’)で表される基であり、Rが同一又は異なって(好ましくは同一で)炭素数1〜3のアルキル基(特にメチル基)であり、nが共に0(すなわち環はRで置換されていない)であり、Rが同一又は異なって(好ましくは同一で)炭素数2〜6のアルキレン基(好ましくはジメチレン基:−(CH−)であるものがより好ましい。
【0177】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、式(1)で表されるエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0178】
式(1)で表されるエポキシ樹脂は、公知の方法に基づいて又は準じて、例えば特許文献2(英国特許第1123960号公報)等の記載に基づいて又は準じて、製造することができる。また例えば、次の反応式で表される反応により式(1−iia)で示されるエポキシ樹脂を製造することができる。
【0179】
【化50】
【0180】
(式中、R2Aは、炭素数2〜18のアルケニル基であり、この基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよい。R、R、R、及びXiiは前記に同じ。)
【0181】
2Aで示される炭素数2〜18のアルケニル基としては、直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基であり、直鎖状が好ましい。具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノルボルネニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基であり、より好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、さらに好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基であり、特に好ましくはビニル基、アリル基又はブテニル基である。なお、当該アルケニル基は、α−アルケニル基であることが好ましい。
【0182】
これらの炭素数2〜18のアルケニル基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子(好ましくは酸素原子)で置換されていてもよい。当該一部の炭素原子は、エポキシ環に直接結合していない炭素原子であることが好ましい。また、当該置換されてもよい一部の炭素原子は、1又は複数(例えば2、3、4、5、又は6)個の炭素原子であり、好ましくは1個の炭素原子である。当該基としては、例えば、炭素数2〜9アルケニル−O−炭素数1〜8アルキレン−、好ましくは炭素数2〜4アルケニル−O−炭素数1〜3アルキレン−、より好ましくは炭素数2〜4アルケニル−O−炭素数1〜2アルキレン−、特に好ましくは炭素数3アルケニル−O−CH−が挙げられる。具体的には、例えば、CH=CH−O−CH−、CH=CH−CH−O−CH−、CH=CH−CH−O−(CH−、CH=CH−(CH−O−(CH−などが挙げられ、これらの中でもCH=CH−CH−O−CH−(アリルオキシメチル基)が好ましい。
【0183】
式(1−iia)で表されるエポキシ樹脂は、式(5−iia)で表される化合物と式(6)で表される化合物をヒドロシリル化反応させて製造することができる。ヒドロシリル化反応は、通常、触媒の存在下、溶媒の存在下又は非存在下で実施することができる。また、式(5−iia)で表される化合物にかえて、式(5−iiia):
【0184】
【化51】
【0185】
(式中、R及びXiiiは前記に同じ。)
又は式(5−iva):
【0186】
【化52】
【0187】
(式中、R及びXiiiは前記に同じ。)
又は式(5−ia):
【0188】
【化53】
【0189】
(式中、Xは炭化水素環から1個の水素原子を除いて得られる1価の基を示し、Rは前記に同じ。)
で表される化合物を用いることにより、上記式(1−iiia)又は(1−iva)で表されるエポキシ樹脂や1個の式(3)の基が炭化水素環に結合した構造を有するエポキシ樹脂を製造することもできる。また、これらの化合物の構造において、X〜Xivが、それぞれ、X環から1個の水素原子を除いて得られる1価の基、X環から2個の水素原子を除いて得られる2価の基、X環から3個の水素原子を除いて得られる3価の基、又はX環から4個の水素原子を除いて得られる4価の基、に置換された構造の化合物を用いることで、式(1)で示される種々の化合物を製造することができる。
【0190】
ヒドロシリル化反応に用いられる触媒は、公知の触媒でよく、例えば、白金カーボン、塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体等の白金系触媒;トリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム等のロジウム系触媒;ビス(シクロオクタジエニル)ジクロロイリジウム等のイリジウム系触媒が挙げられる。上記の触媒は溶媒和物(例えば、水和物、アルコール和物等)の形態であってもよく、また使用にあたり触媒をアルコール(例えば、エタノール等)に溶解して溶液の形態で用いることもできる。なお触媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0191】
触媒の使用量は、触媒としての有効量でよく、例えば、上記式(5−ia)、(5−iia)、(5−iiia)、又は(5−iva)で表される化合物と式(6)で表される化合物との合計量100質量部に対して 0.00001〜20質
量部、好ましくは0.0005〜5質量部である。
【0192】
前記ヒドロシリル化反応は溶媒を用いなくても進行するが、溶媒を用いることにより穏和な条件で反応を行うことができる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0193】
式(6)で表される化合物の使用量は、例えば、式(5−ia)、(5−iia)、(5−iiia)、又は(5−iva)で表される化合物中のSi−H基1モルに対して、通常、0.5〜2モル、好ましくは0.6〜1.5モル、より好ましくは0.8〜1.2モルである。
【0194】
反応温度は、通常0℃〜150℃、好ましくは10℃〜120℃であり、反応時間は、通常1時間〜24時間程度である。
【0195】
反応終了後、反応液から溶媒を留去するなど、公知の単離手法を用いることにより、式(1)で表されるエポキシ樹脂を得ることができる。
【0196】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いる有機微粒子としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ブタジエンゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリルゴム、ポリスチレン、スチレン系共重合体(例えばスチレン−ブタジエンゴム)、シリコーン変性樹脂およびこれら樹脂が酸変性されたものや水素添加されたもの等の樹脂からなる有機微粒子が挙げられる。
【0197】
これら有機微粒子は1種又は2種以上の素材からなる微粒子を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。つまり、1つの粒子中にこれらの素材が1種又は2種以上含まれていてもよく、また、異なる素材からなる微粒子を単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0198】
また、1つの粒子の素材(樹脂種)および構造としては、単独の樹脂からなる有機微粒子、2種以上の樹脂からなる有機微粒子などが挙げられる。2種以上の樹脂からなる有機微粒子の場合、例えばコアシェル型構造を有していてもよい。コアシェル型構造を有する粒子としては、例えば、上記の素材の1種又は2種以上が組み合わされてコアとなり、コア素材とは異なる1種又は2種以上の素材がコア周辺を被覆した構造を有する粒子が好ましく挙げられ、具体的には例えばメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン型(MBS型)コアシェル型粒子(ブタジエン−スチレン系共重合体(コア成分)に、メチルメタクリレートなどをシェル成分としてグラフト重合させたもの)が挙げられる。このようなコアシェル型粒子は市販品を利用することもできる。
【0199】
これらの中でも、接着性の観点からは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、スチレン系共重合体、シリコーン変性樹脂が好ましい。
【0200】
また、低誘電特性の観点からは、ポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ブタジエンゴム、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリルゴム、ポリスチレン、スチレン系共重合体、シリコーン変性樹脂が好ましい。
【0201】
なお、これらは、酸変性及び/又は水素添加されていてもよい。
【0202】
これらのなかでも接着性および低誘電特性を両方有する観点から、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系共重合体、及びシリコーン変性樹脂並びにこれらが酸変性及び/又は水素添加された有機微粒子が好ましく、より好ましくはポリオレフィン系樹脂及びスチレン系共重合体並びにこれらが酸変性及び/又は水素添加された有機微粒子である。
【0203】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリオレフィン、変性ポリオレフィン等が挙げられる。
【0204】
ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを好ましく用いることができる。低密度ポリエチレンは、旧JIS K6748:1995において定義される、密度0.910以上〜0.930未満のポリエチレンであることが好ましい。高密度ポリエチレンは、旧JIS K6748:1995において定義される、密度0.942以上のポリエチレンであることが好ましい。
【0205】
共重合ポリオレフィン、変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂としては、オレフィンと他のモノマーとの共重合体、酸変性したポリオレフィン、酸変性した共重合ポリオレフィン等が好ましく挙げられる。オレフィンとしては、α−オレフィンや環状オレフィンが好ましく、具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、テトラシクロドデセン等が挙げられる。中でもエチレン、プロピレンが好ましい。なお、これらオレフィンを単独で又は2種以上組み合わせて重合させたものも、本発明においてポリオレフィンとして好ましく用いることができる。
【0206】
オレフィンと共重合する他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸系カルボキシル基含有モノマー、ビニル基含有モノマーなどのエチレン性不飽和モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、酸変性基含有モノマー、およびその金属塩を含んだモノマーなどが挙げられる。
【0207】
エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0208】
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルヘキソエート、グリシジルベンゾエートなどが挙げられる。
【0209】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0210】
酸変性基含有モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸エステルなどが挙げられる。
【0211】
また、これらのポリオレフィン系樹脂として、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体のケン物であるエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物や、エチレン−ビニルアルコール共重合体なども好ましく包含される。
【0212】
ポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリエチレン(例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン又はプロピレンとエポキシ基含有モノマーとの共重合体、エチレン又はプロピレンと酸変性基含有モノマーとの共重合体、エチレン又はプロピレンとエチレン性不飽和モノマーとの共重合体、エチレン又はプロピレンとテトラシクロドデセンとの共重合体が好ましく用いられ、エチレン又はプロピレンとエポキシ基含有モノマーとの共重合体、エチレン又はプロピレンと酸変性基含有モノマーとの共重合体、及びエチレン又はプロピレンとエチレン性不飽和モノマーとの共重合体が中でも好ましく用いられる。より具体的には、例えばエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、プロピレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、プロピレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体、プロピレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、プロピレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物などが好適に用いられる。
【0213】
また、ポリオレフィン系樹脂として、酸変性ポリオレフィンも好ましく用いることができ、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリオレフィン等を酸変性したものを好ましく用いることができる。
【0214】
酸変性ポリオレフィンとしては、カルボキシル基や酸無水物基などの酸変性基がグラフト化されたポリオレフィン又は共重合ポリオレフィンが好ましい。ここでのポリオレフィン又は共重合ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。プロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンと他のα−オレフィンとを共重合したものである。また、プロピレン−α−オレフィン共重合体には、他のモノマーも共重合させてもよい。
【0215】
酸変性ポリオレフィンとして、特に好適な例として、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンを挙げることができる。
【0216】
酸変性ポリオレフィンの製造方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリオレフィン又は共重合ポリオレフィンのラジカルグラフト化反応により製造することができる。より具体的には、主鎖となるポリマーにおいてラジカル種を生成し、そのラジカル種を重合開始点として不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物をグラフト重合させる方法が挙げられる。
【0217】
ここでの不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、アクリル酸、ブタン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、ペンテン酸、ドデセン酸、リノール酸、アンゲリカ酸、けい皮酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、ハイミック酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水ハイミック酸、アクリル酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物等が挙げられる。
【0218】
ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物を使用することが好ましい。より具体的には、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシフタレート、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレ-ト等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0219】
また、スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−エチレンプロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレンブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレンプロピレン−スチレン共重合体等が挙げられる。
【0220】
本発明のエポキシ樹脂組成物に含有される有機微粒子は、体積平均粒子径が50μm以下であることが好ましく、0.05〜50μmであることがより好ましく、0.1〜40μmであることがさらに好ましく、0.2〜30μmであることがよりさらに好ましい。
【0221】
本発明のエポキシ樹脂組成物に含有される有機微粒子の形状は、球状であることが好ましい。ここでいう球状は、有機微粒子の最長となる径と最短となる径の比率(最長径/最短径)が0.98〜1.02となるものをいう。
【0222】
なお、有機微粒子の体積平均粒子径は、電気的検知帯法(細孔電気抵抗法)により求められる値である。例えば、電気検知式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製 コールターマルチサイザー)を用いて求めることができる。
【0223】
本発明に用いる有機微粒子の製造方法は、例えば、有機樹脂を高せん断微粉化装置を用いて機械的に粉砕する方法、有機樹脂を良溶媒に溶解し、必要に応じて貧溶媒を加え、冷却により粒子を析出させたり、溶媒を蒸発させたりして粒子を得る方法、また有機樹脂を分散剤および水と混合することにより分散させた有機樹脂の粒子を得る方法などが例示できる。なかでも、有機樹脂を分散剤および水と混合することにより分散させた有機樹脂の粒子を得る方法が好適であり、この方法であれば球状の粒子を好ましく得ることができる。ここでの分散剤としては、界面活性剤を用いることができ、例えばエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体等を好ましく用いることができる。
【0224】
有機微粒子の配合量は、エポキシ樹脂組成物(有機微粒子含む)の全質量に対し、有機微粒子の配合割合は、好ましくは1〜70質量%であり、より好ましくは10〜65質量%であり、さらに好ましくは20〜60質量%であり、特に好ましくは25〜55質量%である。
【0225】
また、本発明に係るエポキシ樹脂組成物において、有機微粒子は、式(1)で表されるエポキシ樹脂100質量部に対して、20〜400質量部含まれることが好ましく、30〜300質量部含まれることがより好ましく、40〜200質量部含まれることがさらに好ましい。
【0226】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、式(1)で表されるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を含有していてもよい。該エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等を用いることができる。これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0227】
式(1)で表されるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を配合する場合、その配合割合は本発明の効果を発揮できる範囲であればよい。式(1)で表されるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を配合する場合、式(1)で表されるエポキシ樹脂と、式(1)で表されるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂との配合比率は、質量比で、例えば100:0〜20:80であり、好ましくは100:0〜30:70であり、より好ましくは100:0〜40:60である。
【0228】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤を含んでいてもよい。前記硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応して硬化物を得ることができるものであれば特に限定はない。
【0229】
前記硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、メルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤などが挙げられる。
【0230】
アミン系硬化剤として、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの鎖状脂肪族アミン;イソフォロンジアミン、ベンゼンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタンなどの脂環式アミン;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン、ジアミノジエチルジフェニルメタンなどの芳香族アミン;ベンジルジメチルアミン、トリエチレンジアミン、ピペリジン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、DBU(1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7)、DBN(1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5)、などの第二級及び三級アミン等が挙げられる。
【0231】
アミド系硬化剤として、例えば、ジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂(ポリアミノアミド等)等が挙げられる。
【0232】
酸無水物系硬化剤として、例えば、無水マレイン酸、ドデセニル無水コハク酸などの脂肪族酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物;無水メチルナジック酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物等が挙げられる。
【0233】
フェノール系硬化剤として、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビフェニル型ノボラック樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、フェノールビフェニレン樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ベンゾオキサジン環を有する化合物等が挙げられる。
【0234】
メルカプタン系硬化剤として、例えば、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)、ポリサルファイドポリマー等が挙げられる。
【0235】
イソシアネート系硬化剤として、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0236】
活性エステル系硬化剤としては、例えば、1分子中にエポキシ樹脂と反応するエステル基を1個以上有する化合物であり、フェノールエステル、チオフェノールエステル、N−ヒドロキシアミンエステル及び複素環ヒドロキシ化合物エステル等が挙げられる。
【0237】
硬化剤は、単独で用いてもよく、また、求める特性に応じて使い分けることが可能であり、2種以上を併用してもよい。
【0238】
前記硬化剤の配合量は特に限定されない。例えば全エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量あたり、硬化剤中の反応性官能基の当量が0.1〜5当量となる配合量とすることが好ましい。より好ましくは0.3〜3当量であり、さらに好ましくは0.5〜2当量である。
【0239】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでいてもよい。特に、硬化促進剤は、硬化剤と併用することで、硬化反応速度を高めたり、あるいは得られる硬化物の強度を高めることができる。前記硬化促進剤としては、エポキシ樹脂と反応して硬化物を得ることができるものであれば特に限定されない。
【0240】
前記硬化促進剤として、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール化合物;ジシアンジアミド及びその誘導体;DBU(1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7)、DBN(1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5)、2,4,6−トリス( ジメチルアミノメチル) フェノールなどの第三級アミン;リン系化合物、ルイス酸化合物、カチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0241】
これらの中でも、耐熱性および電気特性の観点から、硬化剤としては酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤が好ましく、硬化促進剤としてはイミダゾール化合物、リン系化合物、ルイス酸化合物、カチオン重合開始剤が好ましい。
【0242】
硬化促進剤は単独で用いてもよく、また、求める特性に応じて使い分けることが可能であり、2種以上を併用してもよい。
【0243】
前記硬化促進剤の配合量は特に限定されない。例えば全エポキシ樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部を配合することが好ましい。より好ましくは、0.1〜5質量部であり、さらに好ましくは0.5〜3質量部である。
【0244】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の目的や効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加剤を含有してもよい。
【0245】
前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、無機蛍光体、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、溶剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン老化防止剤、増粘剤、可塑剤、放射線遮断剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、リン系過酸化物分解剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤等が挙げられる。
【0246】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、式(1)で表されるエポキシ樹脂及び有機微粒子、さらに必要に応じて他の成分を混合することにより製造することができる。混合方法は、均一に混合できる方法であれば特に限定はなく、例えばパドル羽根による混合・攪拌、ホモミキサーによる混合・攪拌、自転公転ミキサーによる混合・攪拌などを挙げることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、粘度が低いため溶剤を添加することなく調製することができるが、必要に応じ、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で溶剤(例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン等)を添加してもよい。
【0247】
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化することにより硬化物を得ることができる。硬化の方法は、例えば、該組成物を加熱硬化することで実施できる。硬化温度は、通常室温〜250℃であり、硬化時間は、組成液によって異なり、通常30分〜1週間まで幅広く設定することができる。
【0248】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
【実施例】
【0249】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0250】
製造例1(エポキシ樹脂Aの製造)
攪拌機、温度計及び冷却器を備え付けた200mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、アリルグリシジルエーテル5.9g、ヘキサクロロ白金酸六水和物の2wt%エタノール溶液0.05g、トルエン100gを仕込み、液温を70℃まで昇温させた。その後、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン5.0gを15分間で滴下し、引続き、90℃で4時間攪拌した。トルエンを濃縮により除去後、無色透明液体の1,4−ビス[(2,3−エポキシプロピルオキシプロピル)ジメチルシリル]ベンゼン(エポキシ樹脂A)10.3g(エポキシ当量211g/eq)を取得した。
【0251】
製造例2(エポキシ樹脂Bの製造)
攪拌機、温度計及び冷却器を備え付けた200mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、1,2−エポキシ−5−ヘキセン5.0g、ヘキサクロロ白金酸六水和物の2wt%エタノール溶液0.05g、トルエン100gを仕込み、液温を70℃まで昇温させた。その後、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン5.0gを15分間で滴下し、引続き、90℃で5時間攪拌した。トルエンを濃縮により除去後、無色透明液体の1,4−ビス[(2,3−エポキシブチル)ジメチルシリル]ベンゼン(エポキシ樹脂B)9.5g(エポキシ当量195g/eq)を取得した。
【0252】
製造例3(エポキシ樹脂Cの製造)
攪拌機、温度計及び冷却器を備え付けた200mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン6.4g、ヘキサクロロ白金酸六水和物の2wt%エタノール溶液0.05g、トルエン100gを仕込み、液温を70℃まで昇温させた。その後、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン5.0gを15分間で滴下し、引続き、90℃で4時間攪拌した。トルエンを濃縮により除去後、無色透明液体の1,4−ビス{[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]ジメチルシリル}ベンゼン(エポキシ樹脂C)10.8g(エポキシ当量221g/eq)を取得した。
【0253】
製造例4(エポキシ樹脂Dの製造)
攪拌機、温度計及び冷却器を備え付けた200mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン4.3g、ヘキサクロロ白金酸六水和物の2wt%エタノール溶液0.05g、トルエン250gを仕込み、液温を70℃まで昇温させた。その後、ビス[(p−ジメチルシリル)フェニル]エーテル5.0gを15分間で滴下し、引続き、90℃で6時間攪拌した。トルエンを濃縮により除去後、無色透明液体の4,4’−ビス{[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]ジメチルシリル}ジフェニルエーテル(エポキシ樹脂D)8.9g(エポキシ当量267g/eq)を取得した。
【0254】
製造例5(エポキシ樹脂Eの製造)
攪拌機、温度計及び冷却器を備え付けた200mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン7.4g、ヘキサクロロ白金酸六水和物の2wt%エタノール溶液0.05g、トルエン250gを仕込み、液温を70℃まで昇温させた。その後、1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼン5.0gを15分間で滴下し、引続き、90℃で6時間攪拌した。トルエンを濃縮により除去後、無色透明液体の1,3,5−トリス{[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]ジメチルシリル}ベンゼン(エポキシ樹脂E)11.8g(エポキシ当量208g/eq)を取得した。
【0255】
実施例、比較例
表1及び表2に記載した配合量の各成分をカップに秤量し、自転公転(ARE−310、シンキー社製)を用いて、室温(25℃)で2000rpmで5分間混合した。その後、室温(25℃)で2200rpmで5分間脱泡することでエポキシ樹脂組成物を調製した。エポキシ樹脂組成物中には、用いた有機微粒子がそのまま含まれていた。
【0256】
表1及び表2中の各成分は以下の通りである。なお、表1及び表2の各成分の数値は、質量部を示す。
【0257】
・エポキシ樹脂F:ダイセル社製脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021P;一般名は3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)(エポキシ当量137g/eq)
・エポキシ樹脂G:三菱化学社製Bis−A型エポキシ樹脂(グレード828)(エポキシ当量189g/eq)
・有機微粒子A:エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体微粒子「ボンドファースト」(住友化学社製)を体積平均粒子径13μmとした球状の有機微粒子(住友精化社製)
・有機微粒子B:無水マレイン酸変性ポリエチレン「アドマー」(三井化学社製)を体積平均粒子径25μmとした球状の有機微粒子(住友精化社製)
・有機微粒子C:無水マレイン酸変性ポリプロピレン「ACumist1863」(ハネウェル社製、体積平均粒子径6〜7.5μm)
・その他成分A:4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30(MH−700、新日本理化社製)
・その他成分B:2−エチル−4−メチルイミダゾール(三菱化学社製)
【0258】
なお、各有機微粒子の体積平均粒子径は、電気検知式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製 コールターマルチサイザー)にて測定した値である。具体的には、100mlのビーカーにISOTONII(ベックマンコールター社製 電解液)を20ml、アルキル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤を0.2ml混合した。そこへ各有機微粒子を0.1g添加し、スパチュラで撹拌しながら3分間超音波をあてて粒子を分散させた。この分散液を用いて電気検知式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製 コールターマルチサイザー)にて体積平均粒子径を測定した。
【0259】
得られた各実施例及び比較例のエポキシ樹脂組成物について、以下の項目について評価した。なお、各評価の結果を表1及び表2に併せて示す。
【0260】
(1)銅箔に対する90度ピール強度
各実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂組成物をアルミ板に塗布し、その上から厚さ35μmの電解銅箔(古河電気工業社製)を重ね合わせた。100℃で1時間、120℃で2時間、150℃で2時間加熱して硬化させた。硬化後、幅1cmになるようにカッターで切れ目を入れ、90度ピール強度試験片とした。得られた試験片について、AGS−X(島津製作所社製)を用いて、試験速度50mm/minの条件で90度ピール強度試験を実施した。
【0261】
(2)電気特性(比誘電率・誘電正接)
実施例及び比較例で得られた各エポキシ樹脂組成物を樹脂製モールド(厚さ2mm)に流し込み、100℃で1時間、120℃で2時間、150℃で2時間加熱して硬化させた。次いで、硬化物を幅20mm×長さ30mm×厚さ2mmのサイズに切り出し、誘電率測定用試験片とした。得られた試験片は、誘電率測定装置(インピーダンスアナライザー、アジレント社製)を用いて、25℃にて、比誘電率(1GHz)及び誘電正接(1GHz)を測定した。また、誘電率測定装置の校正は、PTFEを用いて行った。結果を表1および表2に示す。
【0262】
【表1】
【0263】
【表2】