【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
評価方法
以下の実施例および比較例において、訓練された評価者によって、茹卵の卵殻を剥いた際の剥けやすさの評価を行った。卵殻の剥けやすさは、所定の個数の茹卵の卵殻を剥くのに要する時間(秒)と、剥いた卵の外観の目視観察により行った。なお、外観の評価は、以下の3つのランクに従った。
Aランク:茹卵の表面に傷が全くないもの
Bランク:茹卵の表面に傷が少しあるが問題のないもの
Cランク:茹卵の表面に割れ、大きな欠けがあるもの
【0041】
処理液の調製方法
以下の実施例および比較例において、対照処理液として水道水を用い、液中に含まれる気泡の粒径により、以下の2種類の処理液を調製した。気泡の発生には、ファインバブル発生装置を用いて、気泡発生時のバブリング圧力範囲を適宜調整等することにより、発生する泡の粒径および粒子密度を以下の数値範囲となるようにした。
処理液A:水道水にウルトラファインバブルを発生させたもの
処理液B:水道水にマイクロバブルおよびウルトラファインバブルの両方を発生させたもの
【0042】
処理液Aに含まれる粒子の粒径および粒子密度の測定方法
処理液Aに含まれる粒子の粒径および粒子密度は、ナノサイト(日本カンタムデザイン社取扱い、Malvern社製、測定範囲1〜2000nm)で分析した。処理液A中の粒子の粒径は、いずれも約50〜150nmであった。また、気泡発生時のバブリング圧力等を調整することにより、各試験例において、処理液A中の粒子密度が、いずれも4×10
7個/mL以上となるように調整した。
【0043】
処理液Bに含まれる粒子の粒子密度
処理液Bに含まれる粒子のうち、ウルトラファインバブルについては、処理液Aと同様にして分析した。マイクロバブルについては、バブルの発生直後にハイスピードマイクロスコープカメラで撮影し、そのようにして撮影した写真を解析装置へ供することにより粒径を測定した。処理液Bに含まれる気泡の粒径および粒子密度は、以下の通りであった。
ウルトラファインバブル
・粒径:約50〜250nm
・密度:1×10
8個/mL以上であった。
マイクロバブル
・粒径:約10〜100μm
・密度は測定できなかった。
したがって、処理液Bに含まれる粒子密度は、少なくとも1×10
8個/mL以上であった。
【0044】
卵白表面温度の測定
茹卵の卵白表面温度は、温度計(エラブジャパン社製)を茹卵の鈍端部から鋭端部に向けて刺し、鋭端部の卵殻にあたるまで挿入することにより、卵白表面から卵黄方向に5mm内側を測定した。
【0045】
[試験例1]
実施例1〜2および比較例1〜2
処理液に含まれる気泡の粒径が殻の剥けやすさに与える影響について試験を行った。
【0046】
原料卵および茹卵の調製方法
殻付き生卵(MSサイズ、pH=約8.9(無調整))20個を使用した。これらの生卵にひびを入れ、95℃で10分ボイルして、茹卵を調製した。
【0047】
冷却条件
上記の通り調製した茹卵を、下表1の冷却条件で冷却した。なお、冷却開始時の卵白表面温度は80℃であり、冷却に用いる冷却水の温度は5℃であった。また、この時の卵白表面温度が70℃に達した時から40℃になるまでの冷却時間は283秒であった。
比較例2において使用した冷却水は、水槽に水道水を入れ、そこへ市販の水槽用エアポンプを用いてエアを吹き込むことにより調製した。
【0048】
歩留まり率の算出方法
全殻付き茹卵の個数に対する外観評価AおよびBの茹卵の合計個数から歩留まり率を算出した。また、冷却水として水道水を用いた場合の歩留まりを基準として、歩留まりの向上率を算出した。
【0049】
結果
実施例1〜2および比較例1〜2の結果は、下表1の通りである。
【0050】
【表1】
【0051】
溶存酸素濃度は同じであっても、ウルトラファインバブルを含む処理液A、およびウルトラファインバブルとマイクロバブルを含む処理液Bを用いて茹卵を冷却した場合に、歩留り率が向上していた。
【0052】
[試験例2]
実施例3および比較例3〜5
殻付き茹卵を冷却液に接触させる温度が殻の剥けやすさに与える影響について試験を行った。
【0053】
原料卵および茹卵の調製方法
試験例1と同様の原料卵20個を、ひび入れ後に試験例1と同様の条件でボイルして茹卵を調製した。
【0054】
冷却条件
上記の通り調製した茹卵を、以下の冷却条件で冷却した。このとき、殻付き茹卵1部に対する処理液の割合が10部となるように調整した。
(1)実施例3
90℃の卵白表面温度を有する殻付き茹卵20個を、5℃の処理液Aに30分間接触させた。
(2)比較例3
90℃の卵白表面温度を有する殻付き茹卵20個を、5℃の水道水に30分間接触させた。
(3)比較例4
90℃の卵白表面温度を有する殻付き茹卵20個を、5℃の水道水に15分間接触させた。その後、冷却終了後10℃の卵白表面温度を有する殻付き茹卵20個を、5℃の処理液Aに15分間接触させた。
(4)比較例5
90℃の卵白表面温度を有する殻付き茹卵20個を、5℃の水道水に15分間接触させた。その後、冷却終了後10℃の卵白表面温度を有する殻付き茹卵20個を、5℃の処理液Aに30分間接触させた。
【0055】
結果
実施例3および比較例3〜5の結果は、下表2の通りである。
【0056】
【表2】
【0057】
卵白表面温度が70℃以上で、ウルトラファインバブルを含む処理液に接触させると、剥く時間が短縮された。
【0058】
[試験例3]
実施例4〜5および比較例6
茹卵の冷却速度が殻の剥けやすさに与える影響について試験を行った。
【0059】
原料卵および茹卵の調製方法
試験例1と同様の原料卵20個を、ひび入れ後に試験例1と同様の条件でボイルして茹卵を調製した。
【0060】
試験方法
上記の通り調製した殻付き茹卵を以下の冷却条件で冷却し、冷却後の茹卵の殻を剥くのに要する時間を測定した。このとき、殻付き茹卵1部に対する処理液の割合が10部となるように調整した。
(1)実施例4
90℃の卵白表面温度を有する殻付き茹卵を、該温度が25℃になるまで5℃の処理液Aに接触させた。
(3)実施例5
90℃の卵白表面温度を有する殻付き茹卵を、該温度が25℃になるまで15℃の処理液Aに接触させた。
(2)比較例6
90℃の卵白表面温度を有する殻付き茹卵を、該温度が25℃になるまで5℃の水道水に接触させた。
【0061】
冷却速度の算出
冷却速度は、卵白表面温度が70℃に達した時から40℃になるまでの所要時間を用いて算出した。
【0062】
剥けやすさの評価
いずれの例においても、殻付き茹卵を5℃まで冷却した後に20個の茹卵の殻を剥くのに要する時間を測定することにより、殻の剥けやすさの試験を行った。
【0063】
結果
実施例4〜5および比較例6の結果は、下表3の通りである。
【0064】
【表3】
【0065】
冷却開始時に15℃以下の処理液を用いた場合には、剥きやすさが向上した。また、冷却水の温度が低いほど、効果が高かった。
【0066】
[試験例4]
実施例6〜7および比較例7
処理液Aに含まれる粒子密度が殻の剥けやすさに与える影響について試験を行った。
【0067】
試験方法
試験例1と同様にして調製した殻付き茹卵15個を、以下の冷却条件で冷却し、殻の剥けやすさを比較した。このとき、殻付き茹卵1部に対する処理液の割合が5部となるように調整した。
(1)実施例6
90℃の卵白表面温度を有する殻付き茹卵を、5℃の処理液Aに30分間接触させた。殻付茹卵に接触させた時の処理液Aの粒子密度は、約8×10
7個/mLであった。
(2)実施例7
90℃の卵白表面温度を有する殻付き茹卵を、バブリングする圧力を変え、粒子密度を約4×10
7個/mLにした5℃の処理液Aに30分間接触させた。
(2)比較例7
90℃の卵白表面温度を有する殻付き茹卵を、5℃の水道水に30分間接触させた。
【0068】
結果
実施例6〜7および比較例7の結果は、下表4の通りである。
【0069】
【表4】
【0070】
粒子密度が4×10
7個/mL以上であると剥く時間が短くなり、8×10
7個/mL以上だとより短くなった。粒子密度は気泡密度と密接な相関関係があることから、ウルトラファインバブルを多く含む処理液を用いた場合の方が、卵殻の剥けやすさが高かったと考えられる。
【0071】
[試験例5]
実施例8〜9および比較例8
ひびの有無が卵殻の剥けやすさに与える影響について試験を行った。
【0072】
試験方法
試験例1と同様に調製したひび入り茹卵と、同様の生卵をひびを入れずに95℃で10分ボイルした茹卵を、それぞれ20個ずつ処理液Aで冷却して殻の剥けやすさを比較した。このとき、冷却開始時の卵白表面温度は90℃であり、殻付き茹卵1部に対する処理液の割合が10部となるように調整した。
【0073】
結果
実施例8〜9および比較例8の結果は、下表5の通りである。
【0074】
【表5】
【0075】
ひびが無い場合でも、ウルトラファインバブルを含有する処理液で冷却した方が、水道水で冷却したものよりもきれいに剥けた。