特許第6553398号(P6553398)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553398プラズマ処理装置、データ処理装置およびデータ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553398
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置、データ処理装置およびデータ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20190722BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H01L21/302 103
   H01L21/302 101G
   H05H1/46 C
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-97000(P2015-97000)
(22)【出願日】2015年5月12日
(65)【公開番号】特開2016-213360(P2016-213360A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 成一
(72)【発明者】
【氏名】井上 智己
(72)【発明者】
【氏名】中元 茂
(72)【発明者】
【氏名】福地 功祐
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−234859(JP,A)
【文献】 特開2004−110300(JP,A)
【文献】 特表2001−521280(JP,A)
【文献】 特開2003−083720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/00−17/18
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/312−21/32
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469−21/475
H01L 21/86
H05H 1/00−1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料がプラズマ処理される処理室と、前記処理室内にプラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
入力データと平滑化されたデータの予測値との誤差に基づいて平滑化パラメータを変化させる応答型2段指数平滑化法を用いて前記プラズマの発光データが処理されるデータ処理装置と、前記データ処理装置により処理された発光データに基づいて前記プラズマ処理の終了時点を判定する制御装置と、をさらに備え、
前記データ処理装置は、前記誤差をパラメータとする確率密度関数を用いて前記平滑化パラメータの応答係数を求めるとともに前記求めた平滑化パラメータの応答係数に対応する平滑化パラメータを用いて平滑化された前記発光データの予測値を求めることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
試料がプラズマ処理される処理室と、前記処理室内にプラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
入力データと平滑化されたデータの予測値との誤差に基づいて平滑化パラメータを変化させる応答型2段指数平滑化法を用いて前記プラズマの発光データが処理されるデータ処理装置と、前記データ処理装置により処理された発光データに基づいて前記プラズマ処理の終了時点を判定する制御装置と、をさらに備え、
前記データ処理装置は、前記誤差をパラメータとする確率密度関数を1から減じた値を用いて前記平滑化パラメータの応答係数を求めることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマ処理装置において、
前記データ処理装置は、前記求めた平滑化パラメータの応答係数に対応する平滑化パラメータを用いて平滑化された前記発光データの予測値を求めることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
試料がプラズマ処理される処理室と、前記処理室内にプラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
入力データと平滑化されたデータの予測値との誤差に基づいて平滑化パラメータを変化させる応答型2段指数平滑化法を用いて前記プラズマの発光データが処理されるデータ処理装置をさらに備え、
前記データ処理装置は、前記平滑化されたデータの予測値を算出する式の入力データとして前記入力データの最新時における多項式適合法により平滑化された前記入力データを用いるとともに前記平滑化されたデータの傾きの予測値を算出する式における平滑化されたデータの予測値の傾きとして前記平滑化されたデータの予測値の最新時における多項式適合法により一次微分された前記平滑化されたデータの予測値を用いることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載のプラズマ処理装置において、
前記データ処理装置は、前記誤差をパラメータとする確率密度関数を用いて前記平滑化パラメータの応答係数を求めることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項に記載のプラズマ処理装置において、
前記データ処理装置は、Nを0以上の整数とした場合、前記誤差の相対値の予測値を前記誤差の絶対値の予測値により除して定数を加えた値をN乗して前記平滑化パラメータの応答係数を求めることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
試料がプラズマ処理される処理室と、前記処理室内にプラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
入力データと平滑化されたデータの予測値との誤差に基づいて平滑化パラメータを変化させる応答型2段指数平滑化法を用いて前記プラズマの発光データが処理されるデータ処理装置をさらに備え、
前記データ処理装置は、前記誤差を指数荷重移動平均するとともに平滑化されたデータの傾きの予測値に基づいて前記指数荷重移動平均の係数を変化させることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項8】
試料がプラズマ処理される処理室と、前記処理室内にプラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
入力データと平滑化されたデータの予測値との誤差に基づいて平滑化パラメータを変化させる応答型2段指数平滑化法を用いて前記プラズマの発光データが処理されるデータ処理装置をさらに備え、
前記データ処理装置は、前記誤差をパラメータとする確率密度関数を用いて前記平滑化パラメータの応答係数を求め、前記誤差を指数荷重移動平均し、平滑化されたデータの傾きの予測値に基づいて前記指数荷重移動平均の係数を変化させることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
2段指数平滑化法を用いてデータが処理されるデータ処理装置において、
入力データと平滑化されたデータの予測値との誤差に基づいて平滑化パラメータを変化させる応答型2段指数平滑化法を用いて前記入力データが処理され、
前記平滑化パラメータの応答係数は、前記誤差をパラメータとする確率密度関数を用いて求められ
平滑化された前記入力データの予測値は、前記確立密度関数を用いて求められた平滑化パラメータの応答係数に対応する平滑化パラメータを用いて求められることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項10】
2段指数平滑化法を用いてデータを処理するデータ処理方法において、
入力データと平滑化されたデータの予測値との誤差に基づいて平滑化パラメータを変化させる応答型2段指数平滑化法を用いて前記データを処理し、
前記平滑化パラメータの応答係数は、前記誤差をパラメータとする確率密度関数を用いて求められ、
平滑化された前記入力データの予測値は、前記確立密度関数を用いて求められた平滑化パラメータの応答係数に対応する平滑化パラメータを用いて求められることを特徴とするデータ処理方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象とされる系(装置、分析データ等)の一連の数値データにおけるデータ処理装置およびデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象とされる系において、一連の数値データをデータスムージング、データ予測する技術として、種々のモデルが提案されている。また、対象とされる系の状態を把握する目的で、データの変化点である極値(最大値、最小値)あるいは変曲点を検出するため、データの1次微分、2次微分等の微分処理が多用される。特に、ノイズ等を含む計測データ等の時系列データの場合は、高精度にデータスムージング処理、微分処理を行うことにより対象とされる系での変化点を検出し、対象とされる系の制御を行うことが重要な技術課題となっている。
【0003】
従来のデータスムージング、データ予測する技術は、非特許文献1に記載されたようにカ−ブフィッティング法、移動平均法等がある。カーブフィッティング法には、特許文献1に記載されたように多項式適合法(Savitzky-Golay法)がある。また、デジタルフィルタとしては、バターワース型ローパスフィルタ等がある。さらに、移動平均法には、非特許文献2に記載されたように、指数平滑化法等がある。
【0004】
非特許文献2には、1段指数平滑法(平滑化パラメータが1ケ)、2段指数平滑化法(平滑化パラメ−タが2ケ)が開示されており、需要供給予測等の経済関係の分野で利用されている。また、非特許文献3には、入力データ(特に逐次入力データ)に応じて平滑化係数が変化する、応答型1段指数平滑化法が開示されている。平滑化係数は、|相対誤差/絶対誤差|に応じて変化するケースとロジスティック関数に応じて変化するケースが記載されている。一般には、式(1)〜(4)に示す、平滑化係数を|相対誤差/絶対誤差|に応じて変化するケースを使用するケースが多い。
【0005】
データの平滑化:S1t+1 = α1t Y1t + (1 - α1t) S1t 式(1)
平滑化係数: α1t = |δαt/Δαt| 式(2)
相対誤差: δαt = A1(Y1t - S1t) + (1 - A1) δαt-1 式(3)
絶対誤差: Δαt = A1 |Y1t - S1t| + (1 - A1) Δαt-1 式(4)

ここで、入力データは、例えば、時系列データY1t:t=1、2、・・・とし、1期先の出力のデータの平滑化の予測値をSt+1とする。またA1は、任意の定数である。尚、各記号は、非特許文献3と異なるが、なるべく以下の実施例での記号と同一となるように記載した。
【0006】
従来のデータ微分処理する技術は、差分法が多用されることが多い。また、特許文献1、非特許文献4に記載されたように、多項式適合法(Savitzky-Golay法)が使用される場合もある。通常、多項式適合法(Savitzky-Golay法)は、複数の連続したデータを使用し、この連続データの期間の中心点での微分処理結果を導出する場合が多い。しかし、非特許文献4には、使用するデータの任意の点で、多項式適合法(Savitzky-Golay法)により、データスムージング処理および1次微分処理を行う方法が開示されている。
【0007】
ノイズ等を含む計測データ等の時系列データをデータスムージング処理し、1次微分処理、2次微分処理によりデータの変化点を検出し、対象とされる系を制御する例としては、特許文献2に「プラズマエッチング処理装置において、プラズマ発光からの分光強度信号データを移動平均処理によりデータスムージング処理し、1次微分値、2次微分値により、エッチング終点を判定する方法」が開示されている。また、非特許文献3には、1段指数平滑化法において、1期先予測値の誤差の総和を最小とすることにより、最適な平滑化パラメータを推定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−228397号公報
【特許文献2】特開昭61-53728号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「データ処理の裏側」高橋和裕著、Journal of Surface Analysis Vol7.No 1(2000) p68-p77.
【非特許文献2】「時系列モデル入門」A.C.ハーベイ著、国友直人/山本拓訳、(1985)、p173、東京大学出版会、(原著:TIME SERIES MODELS by A.C.Harvey)
【非特許文献3】James W Taylor, Journal of Forecasting, 2004, (23), pp385-394.
【非特許文献4】Peter A. Gorry, Anal. Chem. 1990, (62), pp570-573.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
計測データ等のように真の信号(シグナル)にノイズが加算されたデータよりノイズを除去するデータスムージング処理の場合、S/N比(シグナル/ノイズ比)を大きくすることが技術課題の1つである。データ微分処理の場合においてもS/N比(シグナル/ノイズ比)を大きくすることが技術課題の1つである。
【0011】
例えば、特許文献1に記載されたように差分法によりデータ微分処理を行うとデータスムージング処理が十分でない場合、1次微分処理の出力結果は、ノイズが多く含まれ、スムーズ(平滑な)なデータでなく、S/N比(シグナル/ノイズ比)が小さくなる。上記データを使用して再度、差分法によりデータ微分処理を行うと、2次微分処理の出力結果は、更にノイズが増大し、スムーズなデータでなく、更にS/N比が小さくなる。即ち、データスムージング処理よりもデータ1次微分処理、更にデータ高次微分処理になる程、S/N比(シグナル/ノイズ比、以下、S/N比と称する)を大きくすることが難しい技術課題となる。
【0012】
データ処理には、全てのデータを取得した後、処理を行う方法(オフライン処理)とデータを取得しながら、処理を行う方法(オンライン処理、あるいは逐次データ処理)がある。オンライン処理の場合、データ処理結果をリアルタイムで利用して、例えば、プロセス処理装置の制御等に活用する場合が多い。このため、データ処理結果の遅延時間(真の処理結果との時間的なズレ量)が小さいことが技術課題の1つである。
【0013】
差分法によるデータ微分処理で差分間隔を増加させると、1次微分処理の出力結果および2次微分処理の出力結果は、スムーズなデータとなり、S/N比は増大するが(但し、差分間隔には最適値がある)、時系列データ等のオンライン処理の場合、データ微分処理によるデータ遅延時間が増加するという課題がある。また、ローパスフィルタ等では、カットオフ周波数を減少させると、1次微分処理の出力データおよび2次微分処理の出力データは、スムーズなデータとなり、S/N比は増大するが(但し、カットオフ周波数には最適値がある)、上記と同様に、データ微分処理によるデータ遅延時間が増加するという課題がある。
【0014】
また、多項式適合法(Savitzky-Golay法)によりデータ微分処理を行う場合、連続した複数のデータを必要とし、そのデータ期間の中心の時間での微分値を導出するのが、一般的である。このため、逐次データ処理の場合、少なくとも、最新データの時間から上記の中心のデータまでの時間差だけ原理的に時間遅延が発生するという課題がある。非特許文献4に記載の多項式適合法(Savitzky-Golay法)により最新のデータを取得した時点で微分値を導出した場合、通常の多項式適合法(Savitzky-Golay法)によりデータ中心点で微分値を導出した場合よりもデータ遅延時間は減少するが、その一方で、S/N比は減少する。
【0015】
このため、使用するデータ数を増加すると、S/N比は増加して改善する。しかし、その一方で、多くのデータ数を使用することにより急激な変化に対する追随性(応答性)が劣化して使用するデータ数により応答性に限界が生じるという課題がある。具体的には、真のシグナルに含まれていた高周波成分が、データ処理後のシグナルでにおいて欠落するという課題である。
【0016】
Savitzky-Golay法は、複数のデータを2次曲線あるいは3次曲線にフィッティングするものである。このため、データ数を増加させると、フィッティング精度は向上する。しかし、データ数の期間により2次あるい3次曲線以上の変化には対応できないことが上記の高周波成分が欠落する理由である。
【0017】
さらにプラズマエッチング処理装置でのプラズマエッチングの終点判定方法として特許文献2に開示された方法があるが、この特許文献2に開示されたプラズマエッチングの終点判定方法に対して主に以下のような2つの課題がある。
【0018】
現状の半導体デバイスは、高性能化および高集積化によりFin Field Effect Transistor(Fin FET)構造等の高段差構造を有している。また、通常のプラズマエッチングでは、疎部のパターンと密部のパターンとのエッチング性能差であるマイクロローディングが発生する。さらに被エッチング膜がウエハ面内で不均一の場合がある。
【0019】
これらのことから例えば、プラズマエッチングの終点判定に用いるプラズマ発光からの分光強度信号データの時系列データが2段で変化する場合がある。このようにプラズマ発光からの分光強度信号データの時系列データが2段で変化して1番目あるいは2番目の変化によりプラズマエッチングの終点判定を行う場合、1番目の変化と2番目の変化が短い期間で発生するため、データ処理が2回の変化に追従できずにプラズマエッチングの終点を検出できない。尚、ここでは、プラズマ発光からの分光強度信号データの時系列データが変化した時点をプラズマエッチングの終点としている。
【0020】
また、例えば、1次微分値あるいは2次微分値の遅延時間に対して短時間のプラズマエッチングにおいても1次微分値あるいは2次微分値を算出するデータ処理がプラズマ発光からの分光強度信号データの時系列データの変化に追従できない。つまり、プラズマエッチングの終点検出の応答性が不十分という課題がある。
【0021】
次にプラズマエッチングのマスクパターンを大別すると、溝パターンと孔パターンがある。また、通常、孔パターンのウエハの開口率は、溝パターンのウエハの開口率より小さく、1%未満の開口率の場合もある。また、開口率が小さくなるに従ってプラズマ発光の分光強度の変化は小さくなる。
【0022】
このため、例えば、1%未満の開口率のウエハの場合、プラズマ発光からの分光強度信号データの時系列データの変化が小さすぎるため、プラズマエッチングの終点検出が困難となる。つまり、低S/N比に対応できないという課題がある。尚、ここで開口率とはウエハ全体の面積に対する被エッチング面積の割合のことである。
【0023】
非特許文献3には、入力データ(特に逐次入力データ)に応じて平滑化係数が変化する応答型1段指数平滑化法が開示されている。平滑化係数は、|相対誤差/絶対誤差|に応じて変化するケースとロジスティック関数に応じて変化するケースが記載されている。上記2ケースともに平滑化係数はデータ応答型だが、ベースは1段指数平滑化法なので、S/N比とデータ応答性を両立することが難しいという課題がある。
【0024】
また、ロジスティック関数を使用するケースは、平滑化係数の可動範囲に適した単に出力が0〜1となることが主な理由と推定され、平滑化係数と誤差との関係が十分には配慮されていなかった。このため、データスムージング処理のS/N比性能が必ずしも十分ではないという課題がある。さらにロジスティック関数には、複数のパラメータがあり、パラメータの設定が難しくて使い勝手が良くないという課題がある。
【0025】
上述のようにデータスムージング処理、データ微分処理において、S/N比性能向上とデータ応答性能向上(遅延時間短縮)は、トレードオフ関係がある。データスム-ジング処理方法およびデータ微分処理方法では、データ処理の対象である入力データに応じて各データ処理方法のパラメータを最適化する必要がある。
【0026】
従来は、データ処理のパラメータを順次変更してデータ処理を行い、各データスムージング処理波形、データ微分処理波形等のデータ処理波形、およびS/N比、遅延時間等の数値データを総合的に俯瞰して最適なパラメータを見出していた。しかしながら、上述の方法では、最適なパラメータを見出すのに長時間を要し、また、最適なパラメータを見出す時間短縮等には、データ処理の知識や経験が必要等の課題があった。
【0027】
また、非特許文献3には、1段指数平滑化法において、1期先予測値の誤差の総和を最小とすることにより最適な平滑化パラメータを推定する方法が開示されている。しかし、この方法では、予測値の曲線のなめらかさについて配慮されていないため、変化点を検出する1次微分処理、2次微分処理において、ノイズが大きく、かつ、S/N比が良くないという課題があった。
【0028】
このため、本発明は、デ−タを処理するデータ処理装置を備えるプラズマ処理装置、デ−タを処理するデータ処理装置およびデータ処理方法において、高S/N比とデ−タ遅延時間の短縮やデータ応答性向上を両立できるプラズマ処理装置、データ処理装置およびデータ処理方法を提供する。また、入力データをデータスムージング処理、データ微分処理するのに最適なパラメータを簡便に自動で見出すことができるプラズマ処理装置、データ処理装置およびデータ処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、入力データと平滑化されたデータの予測値との誤差に応じて平滑化パラメータを変化させる応答型2段指数平滑法を用いてデータを処理するデータ処理方法において、入力データと平滑化されたデータの予測値との誤差をパラメータとした、確率密度関数(正規分布型関数、ガウス分布型関数)を用いて、平滑化パラメータの応答性係数を導出することを特徴とする。
【0030】
また、本発明は、入力データと平滑化されたデータの予測値との誤差に応じて平滑化パラメータを変化させる応答型2段指数平滑法を用いてデータを処理するデータ処理方法において、入力データと平滑化されたデータの予測値との誤差を指数荷重移動平均し、該指数荷重移動平均の係数が、平滑化データの傾きに応じて変化する、応答型加算係数を用いることを特徴とする。
【0031】
また、本発明は、2段指数平滑法を用いてデータを処理するデータ処理方法において、連続した複数の入力データを用いて、後退型Savitzky-Golay法でデータスムージング処理を行った結果を、2段指数平滑化法のデータの平滑化の式の入力データとして用い、連続した複数の該データの平滑化の予測値を用いて、後退型Savitzky-Golay法で1次微分処理した結果を、2段指数平滑化の平滑化データの傾きの式に、データの平滑化の予測値の傾きの入力データとして用いることを特徴とする。
【0032】
また、本発明は、試料をプラズマ処理するプラズマ処理方法において、前記試料のプラズマ処理時の発光データを計測し、前記計測された発光データと平滑化された発光データの予測値との誤差に応じて平滑化パラメータを変化させる応答型2段指数平滑法を用いるとともに、入力データとデータの平滑化の予測値との誤差をパラメータとした、確率密度関数(正規分布型関数、ガウス分布型関数)により、平滑化パラメータの応答性係数を導出すること、あるいは入力データとデータの平滑化の予測値との誤差を指数荷重移動平均し、該指数荷重移動平均の係数が、平滑化データの傾きの予測値に応じて変化する、応答型加算係数を用いること、あるいは連続した複数の入力データを用いて、後退型Savitzky-Golay法でデータスムージング処理を行った結果を、2段指数平滑化法のデータの平滑化の式の入力データとして用い、更に連続した複数の該データの平滑化の予測値を用いて、後退型Savitzky-Golay法で1次微分処理した結果を、2段指数平滑化の平滑化データの傾きの式に、データの平滑化の予測値の傾きの入力データとして用いることの少なくとも1つを用いた、前記2段指数平滑法を活用して求められた、1次微分処理結果、あるいは2次微分処理結果の中で、少なくとも一つの処理結果に基づいて前記試料のプラズマ処理状態あるいは前記試料のプラズマ処理状態の変化を検出し、検出結果に応じて前記試料のプラズマ処理を制御することを特徴とする。
【0033】
また、本発明は、処理されるデータを受け取るデータ入出力装置と、前記データ入出力装置データが受け取った前記データを記憶する記憶装置と、入力データと入力データの平滑化の予測値との誤差に応じて平滑化パラメータを変化させる応答型2段指数平滑法を用いるとともに、入力データとデータの平滑化の予測値との誤差をパラメータとした、確率密度関数(正規分布型関数、ガウス分布型関数)により、平滑化パラメータの応答性係数を導出すること、あるいは入力データとデータの平滑化の予測値との誤差を指数荷重移動平均し、該指数荷重移動平均の係数が、データの平滑化の傾きの予測値に応じて変化する、応答型加算係数を用いること、あるいは連続した複数の入力データを用いて、後退型Savitzky-Golay法でデータスムージング処理を行った結果を、2段指数平滑化法のデータの平滑化の式の入力データとして用い、更に連続した複数の該データの平滑化の予測値を用いて、後退型Savitzky-Golay法で1次微分処理した結果を、2段指数平滑化の平滑化データの傾きの式に、データの平滑化の予測値の傾きの入力データとして用いることの少なくとも1つを用いた、前記2段指数平滑法のデータ処理プログラムを記憶するデータ処理プログラム記憶装置と、前記データ処理プログラムに基づいてデータ処理を行うデータ演算処理装置とを備えたことを特徴とするデータ処理装置である。
【0034】
また、本発明は、制御対象となる処理室と、前記処理室に関連するデータを取得する計測装置と、入力データと入力データの平滑化の予測値との誤差に応じて平滑化パラメータを変化させる応答型2段指数平滑法を用いるとともに、入力データとデータの平滑化の予測値との誤差をパラメータとした、確率密度関数(正規分布型関数、ガウス分布型関数)により、平滑化パラメータの応答性係数を導出すること、あるいは入力データとデータの平滑化の予測値との誤差を指数荷重移動平均し、該指数荷重移動平均の係数が、データの平滑化の傾きの予測値に応じて変化する、応答型加算係数を用いること、あるいは連続した複数の入力データを用いて、後退型Savitzky-Golay法でデータスムージング処理を行った結果を、2段指数平滑化法のデータの平滑化の式の入力データとして用い、更に連続した複数の該データの平滑化の予測値を用いて、後退型Savitzky-Golay法で1次微分処理した結果を、2段指数平滑化の平滑化データの傾きの式に、データの平滑化の予測値の傾きの入力データとして用いることの少なくとも1つを用いた、前記2段指数平滑法のデータ処理プログラムに基づいてデータ処理を行うデータ演算処理装置と、前記データ演算処理装置により求められたデータ処理結果を利用して、前記処理室の状態あるいは前記処理室の状態の変化を検出し、検出結果に応じて前記処理室を制御する制御装置とを備えることを特徴とする処理装置である。
【0035】
さらに、本発明は、試料台に載置された試料がプラズマ処理される処理室と、前記試料のプラズマ処理時の発光データを取得する計測装置と、前記計測装置により取得されたデータとデータの平滑化の予測値との誤差に応じて平滑化パラメータを変化させる応答型2段指数平滑法を用いるとともに、入力データとデータの平滑化の予測値との誤差をパラメータとした、確率密度関数(正規分布型関数、ガウス分布型関数)により、平滑化パラメータの応答性係数を導出すること、あるいは入力データと平滑化されたデータの予測値との誤差を指数荷重移動平均し、該指数荷重移動平均の係数が、平滑化データの傾きの予測値に応じて変化する、応答型加算係数を用いること、あるいは連続した複数の入力データを用いて、後退型Savitzky-Golay法でデータスムージング処理を行った結果を、2段指数平滑化法のデータの平滑化の式の入力データとして用い、更に連続した複数の該データの平滑化の予測値を用いて、後退型Savitzky-Golay法で1次微分処理した結果を、2段指数平滑化の平滑化データの傾きの式に、データの平滑化の予測値の傾きの入力データとして用いることの少なくとも1つを用いた、前記2段指数平滑法のデータ処理プログラムに基づいてデータ処理を行うデータ演算処理装置と、前記データ演算処理装置により求められたデータ処理結果を利用して、前記試料のプラズマ処理状態あるいは前記試料のプラズマ処理状態の変化を検出し、検出結果に応じて前記処理室を制御する制御装置とを備えることを特徴とする処理装置である。
【0036】
さらに本発明は、離散化され、連続した、複数の数値データを入力データとし、データスムージング処理、あるいはデータ微分処理を行い、少なくとも1つのパラメータを有する、データ処理方法において、入力データとデータスムージング処理結果との平均二乗誤差と、データスムージング処理結果の2次微分の二乗平均値に、任意の数値の係数を乗じたものを、加算した数値を、評価関数をとし、該評価関数を最小とすることを指標し、該データ処理のパラメータを導出することを特徴とする、データ処理方法である。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、デ−タを処理するデータ処理装置を備えるプラズマ処理装置、デ−タを処理するデータ処理装置およびデータ処理方法において、データ処理結果のS/N比向上とデータ処理結果の応答性向上(デ−タ処理結果の遅延時間低減)を両立することができる。また、データ処理方法の最適パラメータを簡便かつ短時間に自動で見出すことができる。これにより、ユーザビリティが良い、データ処理装置、データ処理方法および処理室を制御する制御装置とを備えることを特徴とする処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】実施例1に係るデ−タ処理装置1の全体構成を示す図である。
図2】実施例1に係るデータ処理のフローを示す図である。
図3A】乱数データにおいて、平均値からの予測値のズレ量の定義を示す図である。
図3B図3Aのデータにおいて、ズレ量/標準偏差σと応答係数Ftとの関係を示す図である。
図4】データ処理の入力となる信号出力の傾きの変化例を示す図である。
図5】実施例1に係る有磁場マイクロ波プラズマエッチング装置の縦断面図である。
図6】エッチング終点検出のための代表的なデータ処理のフロー図である。
図7】実施例1に係るデータ処理装置1において図2のデータ処理フローを用いて式(33)〜式(42)の応答型2段指数平滑化法(タイプIV)を用いた場合のデータ処理結果である。
図8】式(5)〜式(14)の応答型2段指数平滑化法(タイプI)にてN=0とした場合のデータ処理結果である。
図9】式(5)〜式(14)の応答型2段指数平滑化法(タイプI)にてN=1とした場合のデータ処理結果である。
図10】式(5)〜式(14)の応答型2段指数平滑化法(タイプI)にてN=5とした場合のデータ処理結果である。
図11】タイプIの応答型2段指数平滑化法(N=0)の1つのパラメータを順次変化させた場合における、入力データ(Y1t)とデータスムージング処理結果(S1t)を示す(A)と、2次微分処理結果(B2t)を示す(B)とからなる図である。
図12図11の場合において、平均二乗誤差であるE、2次微分の二乗平均であるDおよび評価関数であるWのパラメータ依存性を示した図である。
図13図12における、評価関数Wを用いて自動で導出した×印の位置のパラメータを使用した場合の、入力データ(Y1t)とデータスムージング処理結果(S1t)を示す(A)と、2次微分処理結果(B2t)を示す(B)とからなる図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0040】
まず、図1ないし図10を用いて本発明の第1の実施例に係るデータ処理装置を説明する。ここでは、有磁場マイクロ波プラズマエッチング装置において、高精度のエッチング処理を目的としたプラズマ分光によるエッチング終点検出に本発明を適用した例について説明する。
【0041】
図1に、第1の実施例のデ−タ処理装置1の構成図を示す。本実施例では、デ−タ処理装置1は、デ−タ入出力装置2、記憶装置であるデータ記憶装置3、データ処理プログラム記憶装置4、データ演算処理装置5で構成され、相互にデータ移動が可能なように接続されている。
【0042】
また、必要に応じて上記に加え、データ表示装置(図示省略)が設けられる。データ処理装置1は、対象とする系6(装置、分析データ等)とデータを入出力することができる。これにより、対象とする系6を高精度に制御する。本実施例の場合、対象とする系6は、マイクロ波プラズマ処理装置である。また、データ処理装置1は、単独で使用しても良く、デ−タ解析等に利用することができる。
【0043】
データ入出力装置2は、処理データ、データ処理プログラムのパラメータ等を入出力することができる。データ入出力装置2は、対象とする系6等より一括あるいは逐次に処理するデータを受け取る。データ入出力装置2により受け取られたデータは、RAM等のデータ記憶装置3で記憶され、RAM等のデータ処理プログラム記憶装置4に記憶されたデータ処理プログラムに従ってデータ演算処理装置5によってデータスムージング処理、データ微分処理を行われる。データ演算処理装置5によるデータの演算後、データ入出力装置2によってデータスムージング処理結果データ、データ微分処理結果データを対象とする系6等に出力して対象とする系6の制御に利用する。
【0044】
データ処理プログラムに記憶されているデータ処理方法の全体フロー図を図2に示す。一括あるいは逐次に処理するデータを受け取り、デ−タが入力される。入力データは、時系列データY1t:t=1、2、・・・とした。次に後述する方法により初期値を導出する。次に1回目の2段指数平滑化処理を行い、1回目出力のデータの平滑化の予測値S1tと平滑化されたデータの傾きの予測値B1tを得る。
【0045】
この場合、下記式(5)〜式(14)に示されたタイプIの応答型2段指数平滑化処理法で処理した。
【0046】
データの平滑化 :S1t = α1t Y1t + (1 - α1t) (S1t-1 + B1t-1) 式(5)
平滑化されたデータの傾き:B1t= γ1t (S1t - S1t-1) + (1 -γ1t) B1t-1 式(6)
平滑化係数: α1t = (Kα-Lα) Fα+ Lα 式(7)
応答係数: Fαt = (|δαt/Δαt|+φ)N 式(8)
相対誤差: δαt = A1(Y1t - S1t) + (1 - A1) δαt-1 式(9)
絶対誤差: Δαt = A1 |Y1t - S1t| + (1 - A1) Δαt-1 + φ 式(10)
平滑化係数: γ1t = (Kγ-Lγ) Fγ+ Lγ 式(11)
応答係数: Fγt = (|δγt/Δγt|+φ)N 式(12)
相対誤差: δγt =A2{(S1t - S1t-1)- B1t}+(1 - A2)δγt-1 式(13)
絶対誤差: Δγt =A2|(S1t - S1t-1)- B1t|+(1 - A2) Δγt-1+φ 式(14)

ここで、入力データは、例えば、時系列データY1t:t=1、2、・・・とし、出力のデータの平滑化の予測値S1tと平滑化されたデータの傾きの予測値B1tを逐次データ処理により得ることができる。また、Kα、Lα、Kγ、Lγ、N、A1、A2、φは、任意の定数である。但し、1> Kα> Lα>0、1>Kγ > Lγ>0、1>A1>0、1>A2>0である。φは、絶対誤差ΔαtおよびΔγt、または、応答係数FαtおよびFγtがゼロ値となるのを回避するためにある。また、通常の演算に影響が非常に少なくなるようにφとして極微小値が選択される。
【0047】
式(8)、式(12)においてN=0の場合、応答係数Fα=1、Fγ=1となり、平滑化係数αt=Kα、γt=Kγとなって一定値となる。従って、N=0の場合は、通常の2段指数平滑化法となる。N=1の場合、各平滑化係数は、各相対誤差/絶対誤差に比例して、Kα〜Lα、Kγ〜Lγの範囲を変化する応答型2段指数平滑化法となる。同様にN=5の場合、各平滑化係数は、各相対誤差/絶対誤差の5乗に比例して、Kα〜Lα、Kγ〜Lγの範囲を変化する応答型2段指数平滑化法となる。
【0048】
応答型2段指数平滑化法は、各相対誤差/絶対誤差が小さい場合に各平滑化係数を小さくしてデータスムージング性能を向上させる。一方、各相対誤差/絶対誤差が大きい場合は、各平滑化係数を大きくしてデータ応答性能を向上させる。データスムージング性能とデータ応答性能は、トレードオフ関係にあり、両者のバランスは、上記N値で変化するため、入力データの特性に応じて、上記N値を選択する。
【0049】
次に前述の初期値の導出方法を説明する。一般に、2段指数平滑化処理における、データの平滑化の予測値S1の初期値および平滑化されたデータの傾きの予測値B1の初期値は、例えば、次の方法で導出される。データの平滑化の予測値S1の初期値は、S11=入力データY11(方法A1)、あるいはS11=初期N個の入力データの平均値({Y11+Y12+・・・+Y1N}/N)等(方法A2)で導出される。
【0050】
平滑化されたデータの傾きの予測値B1の初期値は、B11=Y12-Y11(方法B1)、B21={(Y12-Y11)+(Y14-Y13)}/2等(方法B2)で導出される。一般に2段指数平滑化処理は、データ処理の開始直後において誤差が大きいという課題があった。その原因の1つは、上記従来の導出方法による初期値が真の初期のデータの平滑化の予測値、真の初期の平滑化されたデータの傾きの予測値との誤差が大きいことにあった。
【0051】
ここでは、所望のN個のデータ入力開始後初期のデータY1t(t=1、2、・・・、N)を用いて最小2乗法により多項式近似式を導出する。また、初期10個の等時間の間隔の時系列データを使用した。上記で導出された多項式近似式より入力データの直前t=0の仮想データであるデータの平滑化の予測値S10、平滑化されたデータの傾きの予測値B10を導出する。
【0052】
ここでは、多項式近似式として直線1次式を使用し、データの平滑化の予測値S10、平滑化されたデータの傾きの予測値B10は、各々、式(15)、式(16)により導出される。

データの平滑化の予測値S10 = { 330 Y11 + 275 Y12 + 220 Y13 + 165 Y14
+ 110 Y15 + 55 Y16 + 0 Y17 - 55 Y18 - 110 Y19
- 165 Y110 } / 825 式(15)

平滑化されたデータの傾きの予測値B10 = { -45 Y11 - 35 Y12 - 25 Y13 - 15 Y14
- 5 Y15 + 5 Y16 + 15 Y17 + 25 Y18 + 35 Y19
+ 45 Y110 } / 825 式(16)

また、図2に記載された2回目の2段指数平滑化処理における、データの平滑化の予測値の初期値S21と平滑化されたデータの傾きの予測値の初期値B21は、各々、S21=S11、B21=0に設定している。上記の初期値設定方法は、データ入力開始後初期の入力データも誤差が少なく、高精度にデータスムージング処理、データ微分処理できるという効果がある。
【0053】
ここでは、多項式近似式により入力データの直前t=0の仮想データであるデータの平滑化の予測値S10、平滑化されたデータの傾きの予測値B10を導出したが、t=1等、任意の時間の多項式近似式による各予測値を各初期値として使用しても良い。但し、この場合、t=0の仮想データを用いた場合よりも短時間ステップのデータスムージング処理、データ微分処理等には不利となる。
【0054】
上述のように1回目の2段指数平滑化処理を行い、1回目出力のデータの平滑化の予測値S1tと平滑化されたデータの傾きの予測値B1tを得る。次に、1回目出力の平滑化されたデータの傾きの予測値B1tを2回目の入力データY2tとして下記式(17)及び式(18)による2回目の2段指数平滑化処理を行うことによって2回目出力のデータの平滑化の予測値S2tと平滑化されたデータの傾きの予測値B2tを得る。
【0055】
データの平滑化 :S2t = α2 Y2t + (1 - α2) (S2t-1 + B2t-1) 式(17)
平滑化されたデータの傾き:B2t = γ2 (S2t - S2t-1) + (1 -γ2) B2t-1 式(18)

次にデータスムージング処理結果データS1t、デ−タ1次微分処理結果データS2t、データ2次微分処理結果データB2tは、一括あるいは逐次データとして出力される。ここで、2回目の2段指数平滑化における、データの平滑化の平滑化パラメータα2、平滑化されたデータの傾きの平滑化パラメータγ2は、予め任意の定数に設定されている。但し、0<α2<1、0<γ2<1とする。1回目出力の平滑化されたデータの傾きの予測値B1tも1次微分処理結果に相当するため、これを使用しても良いが、データ結果のばらつきが大きいため、2回目の2段指数平滑化処理により、デ−タスム−ジング処理を行っている。
【0056】
上述のタイプIの応答型2段指数平滑化法および2段指数平滑化処理を2回実施する方法によりデータスムージング処理結果、データ1次微分処理結果、データ2次微分処理結果等における、S/N比の増加と遅延時間の短縮を両立を大きく改善することができた。しかしながら、対象とする系の変化点を1次微分データや2次微分データにより検出し、対象とする装置を更に実時間に近く、更に高精度で制御する場合には、更に時間遅延の短縮や応答性の向上、更に高S/N比の両立等のデータ処理性能を向上を図ることにより対象とする装置の制御精度を向上することができる。
【0057】
このため、図2の1回目の2段指数平滑化処理において、本実施例のタイプIIの場合は、下記式(19)〜式(24)を用いてデータ処理を行った。

データの平滑化 :S1t = α1t Y1t + (1 - α1t) (S1t-1 + B1t-1) 式(19)
平滑化されたデータの傾き:B1t = α1t (S1t - S1t-1) + (1 -α1t) B1t-1 式(20)
平滑化係数: α1t = (K - L) Ft+ L 式(21)
応答係数: Ft = 1 - Exp[-δαt2/(2σt2)] 式(22)
相対誤差: δαt = A1(Yt - S1t) + (1 - A1) δαt-1 式(23)
予測誤差分散: σt2 = A1(Yt - S1t2 + (1 - A1)σt-12 式(24)

ここで、K、L、A1は、任意の定数である。但し、1> K> L>0、1>A1>0である。また、σtの初期値は、上述の初期値導出方法と同様に入力データにおいて、初期数点のデータを用いた多項式近似の結果と入力データとの誤差の標準偏差より算出した。また、応答係数Ftは、1から確率密度関数(正規分布型関数、ガウス分布型関数)を減算したものである。一般に、誤差は、正規分布となるケースが多い。このため、正規分布を表現する確率密度関数を利用した応答係数Ftとした。これにより誤差を最小化するのに適した平滑化係数をデータ変化に応じて設定することができる。
【0058】
図3Aに示すように例えば、平均0、標準偏差σ=1の正規分布に従う乱数データにおいて、予測値が最もおこり易い値、平均値からのズレ量を定義する。図3Bには、前記ズレ量/標準偏差σと応答係数Ftとの関係を示す。ここで、N=0、N=1、N=5は、式(5)から式(14)に示したタイプIの応答型2段指数平滑化法における応答係数である。1- PDFは、式(19)〜式(24)に示したタイプIIの確率密度関数を用いた応答型2段指数平滑化法における応答係数である。
【0059】
ここで、PDFは、確率密度関数(Probability Density Function)を示す。1-PDFは、N=5と類似の応答係数の特性を示すが、1-PDFは、N=5と比較してズレ量/標準偏差σ<約1の場合は、応答係数は大きく、ズレ量/標準偏差σ>約1の場合は、応答係数は小さい。この応答特性によりデータスムージング性能(S/N比)とデータ応答性(遅延時間の低減)の両立できる、データスムージング処理、データ微分処理ができるという効果がある。
【0060】
上述の1回目の2段指数平滑化処理において、本実施例のタイプIIIの場合、下記式(25)〜式(32)を用いてデータ処理を行った。

データの平滑化 :S1t = α1t Y1t + (1 - α1t) (S1t-1 + B1t-1) 式(25)
平滑化されたデータの傾き:B1t = α1t (S1t - S1t-1) + (1 -α1t) B1t-1 式(26)
平滑化係数: α1t = (K - L) Ft+ L 式(27)
応答係数: Ft = 1 - Exp[-δαt2/(2σt2)] 式(28)
相対誤差: δαt = A1t(Y1t - S1t) + (1 - A1t) δαt-1 式(29)
予測誤差分散: σt2 = A1t(Y1t - S1t2 + (1 - A1tt-12 式(30)
応答型加算係数: A1t = MAX(A1、βtA1max) 式(31)
傾き係数 : βt = 1 - Exp[-Bt2/(2 NN C)2] 式(32)

ここで、A1maxは、加算係数の上限値(0<A1max<1)であり、NNは感度係数で任意の定数である。またCは、上述の初期値導出方法と同様に入力データにおいて、初期数点のデータを用いた1次近似式の結果より算出した傾きである。タイプIIIは、タイプIIに応答型加算係数を導入したものであり、タイプIIIの式(25)〜式(30)は、タイプIIの式(19)〜式(24)とほぼ同じである。入力となる信号出力の傾きの変化の例を図4に示す。この場合には、初期値の算出期間での初期傾きCを基準として傾きが大きくなり、再び初期と同程度の傾きに変化する。
【0061】
本実施例では、傾きの変化に応じて加算係数を変化させる。式(29)、式(30)より、加算係数A1tは、指数荷重平均処理の係数に相当する。従って、初期傾きに応じて指数荷重平均処理の係数を変化させる。つまり、初期傾きCと比較し、平滑化データの傾きB1tが大きくなった場合には、応答型加算係数A1tを小さくし、実効的に最新のデータの係数の比率が大きくなるようにして応答性を向上させる。応答型加算係数A1tは、まず式(32)により傾き係数βtを算出する。
【0062】
傾き係数βtは、前述の応答係数Ftと同様に確率密度関数(正規分布関数、ガウス型関数)を用いて算出している。応答型加算係数A1tは、式(31)により通常時に設定値A1を使用し、平滑化データの傾きが大きくなり、設定値A1よりもβtA1maxが大きくなった場合、この値を加算係数として使用する。但し、過度に応答性が良くなることを抑制するため、上限値A1maxを設定できる。
【0063】
応答型加算係数A1tの導入により平滑化されたデータの傾きが初期傾きと同程度の傾きの場合、加算係数を設定値に保つ。データの状態の変化を示す平滑化されたデータの傾きが大きくなった場合には、応答型加算係数A1tを大きくすることにより最新のデータの比重が大きくなるため、データ処理の応答性が更に向上するという効果がある。
【0064】
上述の1回目の2段指数平滑化処理において、本実施例のタイプIVの場合は、下記式(33)〜式(42)を用いてデータ処理を行った。

データの平滑化 :S1t = α1t SGB0Dt + (1 - α1t) (S1t-1 + B1t-1) 式(33)
平滑化されたデータの傾き:B1t = α1t SGB1Dt + (1 -α1t) B1t-1 式(34)
SGB0Dt = (83Y1t + 54Y1t-1 + 30Y1t-2 + 11Y1t-3 - 3Y1t-4 - 12Y1t-5 -16Y1t-6
- 15Y1t-7 - 9Y1t-8 + 2Y1t-9 + 18Y1t-10 ) / 143 式(35)
SGB1Dt = (945S1t + 456S1t-1 + 67S1t-2 - 222S1t-3 - 411S1t-4 - 500S1t-5
- 489S1t-6 - 378S1t-7 - 167S1t-8 + 144S1t-9 + 555S1t-10) / 4290
式(36)
平滑化係数: α1t = (K - L) Ft+ L 式(37)
応答係数: Ft = 1 - Exp[-δαt2/(2σt2)] 式(38)
相対誤差: δαt = A1t(Yt - S1t) + (1 - A1t) δαt-1 式(39)
予測誤差分散: σt2 = A1t(Yt - S1t2 + (1 - A1tt-12 式(40)
応答型加算係数: A1t = MAX(A1、βtA1max) 式(41)
傾き係数 : βt = 1 - Exp[-Bt2/(2 NN C)2] 式(42)

ここで、SGB0Dtは、非特許文献3に記載の後退型Savitzky-Golay法により、連続した11項の入力データY1t〜Y1t-10を使用すると共に最新のデータY1tの時点におけるデータスムージング処理結果である。同様にSGB1Dtは、後退型Savitzky-Golay法により、連続した11項のデータの平滑化の予測値S1t〜S1t-10を使用すると共に最新のデータの平滑化の予測値S1tの時点における1次微分処理結果である。但し、非特許文献3には、一部誤記等があると思われ、修正し使用した。
【0065】
式(33)、式(34)、式(37)〜式(42)は、前述のタイプIIIの式(25)〜式(32)と概ね同じである。2段指数平滑化法およびタイプIの応答型2段指数平滑化法の基本部分である式(5)、式(6)の意味は、各々、下記式(43)、式(44)である。

データの平滑化 :S1t = α1t (入力データ)t + (1 - α1t) (S1t-1 + B1t-1)
式(43)
平滑化されたデータの傾き:B1t=γ1t(データの平滑化の予測値の傾き)t+(1 -γ1t)B1t-1 式(44)

タイプIVでは、式(43)の入力データの替わりに前処理として後退型Savitzky-Golay法を用いてデータスムージング処理した結果を用いている。また、式(44)の平滑化されたデータの予測値の傾きの替わりに前処理として後退型Savitzky-Golay法を用いて1次微分処理した結果を用いている。通常、多項式適合法(Savitzky-Golay法)は、複数の連続したデータを使用し、この連続データの期間の中心点でのデータ処理結果を導出する場合が多い。ここでは、これを中心型Savitzky-Golay法とする。これに対し、最新データの時点におけるデータ処理結果を導出する場合を後退型Savitzky-Golay法とする。
【0066】
中心型Savitzky-Golay法の場合、連続データの中心点でのデータ処理結果を導出するため、データ処理に遅延時間が生じることは避けられない。Savitzky-Golay法は、使用するデータ数が多いほどS/N比は向上するが、中心型では、遅延時間が使用するデータ数とともに増加する。後退型Savitzky-Golay法の場合、最新データの時点におけるデータ処理結果を導出するので、データ処理の遅延はほとんどない。しかし、後退型は中心型よりも、S/N比は低下する。
【0067】
検討の結果、中心型でデータ数5ケの場合と後退型でデータ数11ケの場合を比較した結果、ほぼ同程度のS/N比が得られると分かった。Savitzky-Golay法は、複数データを用いて2次あるいは3次曲線に多項式近似するものであるため、データ数が増加すると、使用したデータ数の期間において3次以上の変化が生じる場合には対応できない。即ち、使用するデータ数が増加すると、高周波成分が欠落するリスクが生じる。
【0068】
以上を鑑みてタイプIVでは、式(33)の入力データに後退型Savitzky-Golay法データ数11ケのデータスムージング処理を使用し、式(34)のデータの平滑化の予測値の傾きに後退型Savitzky-Golay法データ数11ケのデータ1次微分処理値を使用した。このため、本実施例によれば、データ遅延時間を増加させず、また、データ処理の周波数特性を劣化を少なく抑えてデータスムージング処理、データ微分処理のS/N比を向上させる効果がある。タイプIVでは、後退型Savitzky-Golay法データ数11ケを使用したが、要求されるデータ処理性能に応じて他のデータ数を使用したり、あるいは中心型と後退型の中間等の時点でデータ処理を行うSavitzky-Golay法を使用しても良い。
【0069】
更にSavitzky-Golay法以外の前処理として入力データをデータスムージング処理した結果を式(43)の入力データとし、また、データの平滑化の予測値をデータ1次微分処理した結果を式(44)のデータの平滑化の予測値の傾きに使用しても良い。
【0070】
図5は、本発明の第1の実施例に係る有磁場マイクロ波プラズマエッチング装置の縦断面図を示す。本実施例では、有磁場マイクロ波プラズマエッチング装置が図1の対象とする系6(装置、分析データ等)に相当する。容器7、放電管8、石英板9及び石英窓10で区画された処理室11の内部を排気用開閉バルブ12を開とし、真空排気装置13により減圧する。エッチングガスは、マスフローコントロ−ラ(図示省略)を介してガス配管14を通り、石英板9と石英シャワープレート15の間を通過して石英シャワープレート15のガス孔から処理室11に導入される。処理室11に導入されたエッチングガスは、排気速度可変バルブ16により処理室11内の圧力を所望の圧力に調整される。
【0071】
また、処理室11は、コイル17、18とヨーク19により生成される磁場領域内にある。マグネトロン20から発振された、この場合周波数2.45GHzのマイクロ波は、アイソレータ(図示省略)、パワーモニタ(図示省略)、整合器21を経由して矩形導波管22内を矩形TE10モードで伝播し、円矩形変換器23を経由して円形導波管24内を円形TE11モードで伝播する。その後、マイクロ波は、空洞共振器25に導入され、石英板9、石英シャワープレート15を透過して処理室11内に入射される。処理室11内には、導入される2.45GHzのマイクロ波と電子サイクロトロン共鳴を生じる磁束密度875Gaussの磁場領域が、処理室11の中心軸およびマイクロ波の導入方向に対し垂直に、また、処理室11の中心軸に対する断面方向に対して全面に形成されている。
【0072】
この2.45GHzのマイクロ波と875Gaussの磁場との相互作用により主に生成されたプラズマにより試料台であるウェハ載置用電極26に載置されたウェハ27がエッチング処理される。また、試料であるウェハ27のエッチング形状を制御するため、ウェハ載置用電極26には整合器(図示省略)を介して高周波電源28が接続され、高周波電圧を印加することが可能になっている。また、ウェハ載置用電極26には、チラーユニット(図示省略)が接続され、ウェハ27の温度を制御することができる。
【0073】
処理室11、ウェハ27、ウェハ載置用電極26は、各々同軸に配置されている。また、エッチングガスを導入する石英シャワープレート15のガス孔領域、真空排気部である排気用開閉バルブ12、排気速度可変バルブ16、真空排気装置13も処理室11に対し各々同軸に配置されている。このため、ウェハ27上でのガス流れは同軸対称である。磁場を生成するコイル17、18、ヨーク19も処理室11に対して同軸に配置されているため、処理室11内の磁場プロファイル、磁束875Gaussの電子サイクロトロン共鳴領域は処理室11に対し同軸に形成される。また、円形導波管24、空洞共振器25も処理室11に対し同軸に配置されているため、処理室11に導入されるマイクロ波も処理室11に対し同軸に導入される。
【0074】
磁場が処理室11に対し同軸に生成され、マイクロ波も処理室11に対し同軸に導入されるため、磁場とマイクロ波との相互作用によって形成されるプラズマは、処理室11に対し同軸に生成される。これにより、プラズマ中の電子やイオンは、ウェハ27に対し同軸に輸送される。また、エッチングガスの流れも処理室11に対し同軸であるため、プラズマにより生成されたラジカルやウェハ27のエッチングによる反応生成物もウェハ27に対し同軸に導入、排気される。従って、エッチングレートや材料選択比やエッチング形状等のエッチングプロセス処理性能をウェハ面内で均一性良くエッチング処理することができる。
【0075】
処理室11で生成されたプラズマからであり処理室11側方からの発光は、石英窓10及び光ファイバー29を通過して分光器30に導入され、光強度の波長依存性の時系列データとして出力される。また、処理室11上方からのプラズマからの発光は、石英シャワープレート15、石英板9、空洞共振器25、円形導波管24、円矩形変換器23及び光ファイバー31を通過して分光器32に導入され、光強度の波長依存性の時系列データとして出力される。
【0076】
処理室11には、エッチングガスおよびウェハ27からのエッチング反応生成物が導入され、これらがマイクロ波と磁場の相互作用により、解離し、プラスマを生成する。このため、処理室11で生成されたプラズマからの発光には、エッチングガスおよびエッチング反応生成物の構成される原子、分子、ラジカルおよびこれらの反応物の情報が含まれている。
【0077】
例えば、パターンマスクの下方にpoly-Si膜とSiO2膜が配置されたSi基板の代表的なpoly-Siエッチングでは、下地SiO2と高選択比でPoly-Siエッチングすることが要求される。エッチングガスは、ハロゲン系ガスが使用され、エッチング反応生成物には、被エッチング材料であるSiとハロゲンが含まれる。エッチング反応生成物は、プラズマにより再解離されるため、プラズマからのSiに起因した波長288nmの発光の光強度を分光器30あるいは分光器32でモニタする。
【0078】
この場合、poly-Si膜のエッチングが終了し、下地SiO2が出現した場合、下地SiO2のエッチレートは小さいため、Siに起因した波長288nmのプラズマ発光強度が急激に減少し、遂には一定値に近づく。このプラズマ発光の変化をモニタしてエッチング処理の終点検出を行う。
【0079】
処理室11側方からのプラズマの発光には、エッチングガスとエッチング反応生成物の情報が含まれるが、処理室11上方からのプラズマの発光には、上記情報に加え、プラズマ光がウェハ27の膜構造および段差構造で干渉を生じるため、ウェハ27の膜構造および段差構造の情報も含んでいる。このプラズマの発光データを解析することによりエッチング中の膜厚、エッチング深さなどをモニタすることができる。本実施例では、簡単のために処理室11側方からのプラズマの発光データをエッチング終点モニタに使用した。
【0080】
エッチング終点検出のための代表的なデータ処理フローを図6に示す。入力デ−タY1tは、エッチング中のプラズマ発光強度の変化を模擬した式(45)の評価関数で作成した。
【0081】
Y1t =H/[1+exp{ -A(t - T)}]+C t+D+F (R - 0.5) 式(45)

ここで、H、A、T、C、D、Fは、任意の定数、Rは0〜1の乱数である。上記評価関数を使用すれば、データスムージング処理、1次微分処理、2次微分処理の解析的な真値が既知であるため、種々のデータ処理方法において、真値との絶対誤差、データ処理に伴なう遅延時間、S/N比(シグナル/ノイズ比)等のデータ処理性能を比較、評価することができる。
【0082】
図6に示すようにエッチング終点のための代表的なデータ処理フローは、図6(A)に示すような入力データ波形を図6(B)に示すようにデータスムージング処理を行った後、図6(C)に示すように1次微分処理、図6(D)に示すように2次微分処理を行う。ノイズが多く含まれる入力データは、データスムージング処理により変化点が明瞭となる。この変化点を1次微分処理ではピーク値の点(時間)として2次微分処理ではゼロクロスする点(時間)として検出する。ゼロクロスする点(時間)を基準にエッチング終点を判断し、エッチング装置を制御し、高精度のエッチング処理を行う。
【0083】
変化点は、1次微分処理のピーク、2次微分処理のゼロクロスによって順次、より明確により簡便に判断できるが、シグナル強度の絶対値は、順次小さくなる。このため、S/N比の高いデータ処理が重要となる。特に、被エッチング面積が小さい低開口率のマスクパターンのエッチングの場合は、エッチング終点前後のプラズマ発光強度の変化が小さいため、更に高S/N比のデータ処理が必要となる。
【0084】
一般にデータスムージング処理、データ微分処理では、S/N比が高くなると、遅延時間が長くなり、真値との絶対誤差が大きくなる。つまり、S/N比と遅延時間、絶対誤差は、トレードオフ関係となっており、S/N比、遅延時間、絶対誤差を同時に満足する、データスムージング処理、データ微分処理が必要である。
【0085】
本実施例では、図2のデータスムージング処理、データ微分処理フローを用いて図6のデータ処理を行う。また、図6の入力データは、図5の有磁場マイクロ波プラズマエッチング装置におけるエッチング中のプラズマ発光をモニタする分光器30からの出力データに相当する。図5に示すように有磁場マイクロ波エッチング装置をシステムとして制御するシステム制御装置33(データ入出力装置、データ処理装置、データ表示装置等を含む)と本実施例のデータ処理装置1とが設けられている。データ処理装置1は、システム制御装置33の一部として、組み込まれても良い。
【0086】
分光器30、分光器32からの出力データは、データ処理装置1に伝送される。データスムージング処理結果、データ1次微分結果、データ2次微分結果は、制御装置であるシステム制御装置33に伝送される。このデータスムージング処理結果、データ1次微分結果、データ2次微分結果に基づいてシステム制御装置33はエッチング終点判定を行い、有磁場マイクロ波エッチング装置をシステムとして制御する。エッチング終点判定では、主にプラズマ生成を制御するため、図5において、システム制御装置33は、マグネトロン20、高周波電源28への接続が図示されている。また、図5での図示は省略したが、システム制御装置33は、システムを構成する他の機器にも接続されている。
【0087】
図7は、本発明の実施例のデータ処理装置1において、図2のデータ処理フローを用い、式(33)〜式(42)のタイプIVの応答型2段指数平滑化法を用いた場合のデータ処理結果である。図8は、式(5)〜式(14)のタイプIの応答型2段指数平滑化法において、N=0とした場合のデータ処理結果である。また、図9は、図8と同様でN=1とした場合のデータ処理結果である。図10は、図8と同様でN=5とした場合のデータ処理結果である。
【0088】
図7図10において、(A)は、入力データ(Y1t)とデータスムジング処理結果(S1t)を示し、(B)は、1次微分処理結果(B1t)を示し、(C)は、1次微分スムージング処理結果(S2t)を示し、(D)は、2次微分処理結果(B2t)を示す。また、図7図10の入力データは、同一のものを使用した。
【0089】
図7図10を比較すると、まず(A)のデータスムージング処理において、本発明のタイプIVの実施例である図7(A)は、タイプIの、図8(A)、図9(A)、図10(A)よりもデータスムージング処理結果が入力データの変化に追随しており、オーバーシュート等が少なく、さらに応答性が良く、誤差が小さいことが分かる。次に(C)の1次微分スムージング処理において、本発明のタイプIVの実施例である図7(C)は、タイプIの、図8(C)、図9(C)、図10(C)よりも1次微分のピークの時間が早く、また波形の半値幅も小さい。このため、データ処理の遅延時間が小さく、応答性が良いことが分かる。
【0090】
(D)の2次微分処理において、本発明のタイプIVの実施例である図7(D)は、タイプIの、図8(D)、図9(D)、図10(D)よりも、2次微分のゼロクロスの時間が早く、また、2次微分波形の全体の幅も小さい。さらに波形もなめらかで、2次微分の信号強度も大きい。このため、データ処理の遅延時間が小さく、応答性が良く、S/N比も良いことが分かる。数値で比較すると、本発明のタイプIVの実施例である図7(D)、タイプI(N=0)の図8(D)、タイプI(N=1)の図9(D)、タイプI(N=5)の図10(D)の順で各々の2次微分波形のS/N比は、1862、68、621、957である。
【0091】
遅延時間は、2次微分波形のゼロクロス時間において、本発明の実施例である図7(D)は、タイプI(N=0)の図8(D)よりも3.9秒早く、タイプI(N=1)の図9(D)よりも1.6秒早く、タイプI(N=5)の図10(D)よりも0.9秒早く、遅延時間が短縮されている。このため、本発明の実施例では、遅延時間とS/N比がともに、タイプIよりも性能向上しており、遅延時間短縮(応答性向上)とS/N比向上を両立させる効果がある。
【0092】
従って、エッチング終点判定の基準となる1次微分のピークの点(時間)、2次微分のゼロクロスの点(時間)を明瞭に検出することができることが分かる。このため、本発明の実施例によれば、絶対値誤差が小さく、S/N比が高く、遅延時間が短い、データスムージング処理、データ微分処理をリアルタイムで逐次処理できるという効果がある。
【0093】
また、(B)1次微分処理において、本発明のタイプIVの実施例である図7(B)は、タイプIの、図8(B)、図9(B)、図10(B)よりも波形がなめらかである。これは、後退型Savitzky-Golay法による前処理の効果である。このため、図2の処理フローにおいて、2回目の入力データとなる、1回目の出力データ(S1t)、(B1t)がなめらかな波形であるため、2回目の2段指数平滑化の平滑化係数を大きくすることができる。これにより、2回目の出力である、1次微分スムージング結果(S2t)と2次微分処理結果(B2t)の遅延時間を短縮し、応答性を向上させることができる。
【0094】
また、データスムージング処理結果およびデータ1次微分処理結果のみが必要な場合には、本実施例によれば、後退型Savitzky-Golay法による前処理の効果により1回目の2段指数平滑化処理によって1次微分のなめらかな波形が得られるため、2回目の2段指数平滑化処理を実施せずに1回目の出力データ(S1t)、(B1t)を用いても良い。この場合、データ処理プログラムが簡単となり、データ処理速度が向上するという効果がある。
【0095】
更に式(5)〜式(14)に示すタイプIの応答型2段指数平滑化法に後退型Savitzky-Golay法を適用した場合をタイプVとし、下記式(46)〜式(57)に示す。

データの平滑化 :S1t = α1t SGB0Dt + (1 - α1t) (S1t-1 + B1t-1) 式(46)
平滑化されたデータの傾き:B1t = γ1t SGB1Dt + (1 -γ1t) B1t-1 式(47)
SGB0Dt = (83Y1t + 54Y1t-1 + 30Y1t-2 + 11Y1t-3 - 3Y1t-4 - 12Y1t-5 -16Y1t-6
- 15Y1t-7 - 9Y1t-8 + 2Y1t-9 + 18Y1t-10 ) / 143 式(48)
SGB1Dt = (945S1t + 456S1t-1 + 67S1t-2 - 222S1t-3 - 411S1t-4 - 500S1t-5
- 489S1t-6 - 378S1t-7 - 167S1t-8 + 144S1t-9 + 555S1t-10) / 4290 式(49)
平滑化係数: α1t = (Kα-Lα) Fα+ Lα 式(50)
応答係数: Fαt = (|δαt/Δαt|+φ)N 式(51)
相対誤差: δαt = A1(Y1t - S1t) + (1 - A1) δαt-1 式(52)
絶対誤差: Δαt = A1 |Y1t - S1t| + (1 - A1) Δαt-1 + φ 式(53)
平滑化係数: γ1t = (Kγ-Lγ) Fγ+ Lγ 式(54)
応答係数: Fγt = (|δγt/Δγt|+φ)N 式(55)
相対誤差: δγt =A2{(S1t - S1t-1)- B1t}+(1 - A2)δγt-1 式(56)
絶対誤差: Δγt =A2|(S1t - S1t-1)- B1t|+(1 - A2) Δγt-1+φ 式(57)

タイプVの場合は、タイプIVよりも応答性等は劣るが、データ処理プログラムが簡単となると言う効果がある。要求されるデータ処理の性能に応じて必要なレベル、複雑さの方式を選択すれば良い。
【0096】
更に式(19)〜式(24)に示すタイプIIの応答型2段指数平滑化法に後退型Savitzky-Golay法を適用した場合をタイプVIとし、下記式(58)〜式(65)に示す。

データの平滑化 :S1t = α1t SGB0Dt + (1 - α1t) (S1t-1 + B1t-1) 式(58)
平滑化されたデータの傾き:B1t = α1t SGB1Dt + (1 -α1t) B1t-1 式(59)
SGB0Dt = (83Y1t + 54Y1t-1 + 30Y1t-2 + 11Y1t-3 - 3Y1t-4 - 12Y1t-5 -16Y1t-6
- 15Y1t-7 - 9Y1t-8 + 2Y1t-9 + 18Y1t-10 ) / 143 式(60)
SGB1Dt = (945S1t + 456S1t-1 + 67S1t-2 - 222S1t-3 - 411S1t-4 - 500S1t-5
- 489S1t-6 - 378S1t-7 - 167S1t-8 + 144S1t-9 + 555S1t-10) / 4290 式(61)
平滑化係数: α1t = (K - L) Ft+ L 式(62)
応答係数: Ft = 1 - Exp[-δαt2/(2σt2)] 式(63)
相対誤差: δαt = A1(Y1t - S1t) + (1 - A1) δαt-1 式(64)
予測誤差分散: σt2 = A1(Y1t - S1t2 + (1 - A1)σt-12 式(65)

タイプVIの場合もタイプIVよりも応答性等は劣るが、データ処理プログラムが簡単となると言う効果がある。また、タイプVにおいてN=0の場合は、平滑化係数が固定の2段指数平滑化法に後退型Savitzky-Golay法を適用した方式となり、最も簡単となる。要求されるデータ処理の性能に応じて必要なレベル、複雑さの方式を選択すれば良い。
【0097】
タイプIIは、タイプIの応答型2段指数平滑化法に確率密度関数を用いたデータ応答型平滑化係数を導入したものである。また、タイプIIIは、タイプIIにデータ応答型加算係数を導入したものである。更にタイプIVは、タイプIIIに後退型Savitzky-Golay法の前処理を導入したものである。タイプVと同様に各々の改善要素である、確率密度関数を用いたデータ応答型平滑化係数、データ応答型加算係数を個別にタイプIの応答型2段指数平滑化法に適用しても良い。また、確率密度関数を用いたデータ応答型平滑化係数、データ応答型加算係数、後退型Savitzky-Golay法を適宜、組合わせてタイプIの応答型2段指数平滑化法に適用しても良い。前述と同様に要求されるデータ処理の性能に応じて必要なレベル、複雑さの方式を選択すれば良い。
【実施例2】
【0098】
上述のようにデータスムージング処理、データ微分処理において、S/N比性能向上とデータ応答性能向上(遅延時間短縮)は、トレードオフ関係である。このため、上述したタイプIの応答型2段指数平滑化法、あるいは本実施例に記載したタイプII、タイプIII、タイプIV、タイプV、タイプVI等のデータスム-ジング処理方法およびデータ微分処理方法では、データ処理の対象である入力データに応じて各データ処理方法のパラメータを最適化する必要がある。
【0099】
従来は、データ処理のパラメータを順次変更し、データ処理を行い、各データスムージング波形、データ微分波形、およびS/N比、遅延時間等の数値データを総合的に俯瞰し、最適なパラメータを見出していた。しかしながら、上述の方法では、最適なパラメータを見出すのに長時間を要し、また最適なパラメータを見出す時間短縮等には、データ処理の知識や経験が必要等の課題があった。
【0100】
また、非特許文献3には、1段指数平滑化法において、1期先予測値の誤差の総和を最小とすることにより最適な平滑化パラメータを推定する方法が開示されている。しかし、この方法では、予測値の曲線のなめらかさについて配慮されていないため、変化点を検出する1次微分処理、2次微分処理において、ノイズが大きく、S/N比が良くないという課題があった。
【0101】
このため、入力データをデータスムージング処理、データ微分処理するのに最適なパラメータを簡便かつ短時間に自動で見出すことができる方法を以下に示す。
【0102】
まず、下記式(66)の評価関数Wを使用する。
【0103】
評価関数W=平均二乗誤差(E)+係数λ×2次微分の二乗平均(D) 式(66)

ここで、平均二乗誤差であるEは、入力データとデータスムージング処理結果の平均二乗誤差であり、入力データに対する、データスムージング処理結果の適合度を評価する。2次微分の二乗平均であるDは、データスムージング処理波形の曲線のなめらかさを評価する。係数λは、任意の数値で、上記の入力データに対する適合度評価と曲線のなめらかさ評価の重要度の比率を調整する。
【0104】
入力データに対するデータスムージング処理結果の適合度が大きいほど、オーバーシュート等が無く、かつ、データ処理の応答性が良く、かつ、データ処理の遅延時間が小さい。また、データスムージング処理波形がなめらかな曲線である程、データ1次微分処理波形、データ2次微分処理波形は、なめらかな曲線となる。その結果、データ1次微分処理とデータ2次微分処理の各々のS/N比が向上する。曲線のなめらかさは、データスムージング処理波形の2次微分の二乗平均Dで評価するが、ここでは差分法で2次微分を算出した。
【0105】
2次微分の二乗平均Dは、直線に近づくほど、小さな値となる。従って、単に2次微分の二乗平均Dが小さいだけでなく、平均二乗誤差Eが小さい値であり、かつ、入力データに対するデータスムージング処理結果の適合度も良く両者が両立した場合、S/N比が良く、データ処理の応答性が良い(遅延時間が少ない)最適なデータ処理となる。本実施例で使用した評価関数Wを下記式(67)に示す。
【0106】
W=Σ(Y1t - S1t2 / N+λ×Σ{(S1t+1 - 2×S1t + S1t+1)/ΔT2 }2 / N
式(67)

ここで、Nはデータ数、ΔTは入力データのサンプリング時間(時間間隔)である。データスムージング処理、データ微分処理の最適パラメータは、評価関数Wが最小値となるように、最急降下法等の勾配法等を用いて導出する。評価関数Wの特性を2次元グラフで示すため、簡単なタイプIの応答型2段指数平滑化法の場合を例に図11図13を用いて説明する。但し、入力データは、図7図10で使用した入力データと類似しているが、違うデータを使用した。
【0107】
図11は、タイプIの応答型2段指数平滑化法の1つのパラメータを順次変化させた場合における、入力データ(Y1t)及びデータスムージング処理結果(S1t)を示す(A)と2次微分処理結果(B2t)を示す(B)とからなる図である。パラメータ1、2、3、4の順に数値は大きい。最も数値が大きいパラメータ4の場合、入力データ波形とデータスムジング波形はほぼ一致し、適合度が良いことがわかる。しかし、2次微分波形は、ゼロクロスの時間が早く、応答性は良いが、ノイズが多く、S/N比が良くないことが分かる。一方、数値が最も小さいパラメータ1の場合、入力波形に対してデータスムージイング波形はオーバーシュートがあり、適合度は良く無く、応答性が良くないことが分かる。また、2次微分波形は、ノイズが小さいが、信号強度も小さく、また、ゼロクロスの時間が遅く、遅延時間が大きいことが分かる。図11の場合、(B)の2次微分処理波形からは、S/N比と遅延時間を両立しているのは、パラメータ2の場合と判断できる。
【0108】
図12は、図11の場合において、平均二乗誤差E、2次微分の二乗平均Dおよび評価関数Wのパラメータ依存性を示した図である。また、図11に対応するパラメータの位置を矢印で図示している。また、×印は、最急降下法等の勾配法等を用いて自動的に導出した評価関数Wが最小値となるパラメータの位置と評価関数Wの数値の位置を示したものである。図13は、図12における、評価関数Wを用いて自動で導出した×印の位置のパラメータを使用した場合の、入力データ(Y1t)及びデータスムージング処理結果(S1t)を示す (A)と2次微分処理結果(B2t)を示す(B)とからなる図である。
【0109】
図12に示すようにパラメータの数値が増加するとともに平均二乗誤差Eは減少し、2次微分の二乗平均Dは増加することが分かる。この結果、評価関数Wは、最小値を有することが分かる。この結果、評価関数Wの最小値を求めることによりS/N比と応答性を両立するパラメータを見出すことができることが分かる。図11に示す定性的なデータ処理波形の特性のパラメータ依存性を図12において定量的に示している。
【0110】
図12に示す×印のパラメータの最適値は、パラメータ2とほぼ一致する。また、図13に示すデータスムジング処理波形及びデータ2次微分処理波形は、図12のパラメータ2のデータスムージング処理波形とデータ2次微分処理波形と各々ほぼ一致していることが分かる。
【0111】
本実施例では、説明の都合上、1つのパラメータを変化させた場合について説明したが、複数のパラメータを最急降下法等の勾配法等を用いて導出することができる。この場合、局所最小値(最適値)の有無等を配慮し、パラメータの初期値および探索範囲を検討する必要がある。また、実施例では、説明の都合上、簡単なタイプIの応答型2段指数平滑化法の場合について説明したが、上述のタイプII、タイプIII、タイプIV、タイプV、タイプVIのデータ処理方式、あるいは1段指数平滑化法(指数加重移動平均:EWMA)、応答型1段指数平滑化法、ローパスフィルタ、カルマンフィルタ等のその他のデータスムージング処理、あるいは差分法等によるデータ微分処処理においても同様に評価関数Wを最小化することによってS/N比と応答性を両立する最適なパラメータを簡便に見出すことができる。
【0112】
また、本実施例では、式(66)および式(67)の2次微分の二乗平均Dにデータスムージング処理結果の2次微分値を使用したが、1次微分処理結果あるいは2次微分処理結果の2次微分の二乗平均を用いても良い。この場合は、各々、1次微分波形の曲線のなめらかさ、2次微分波形の曲線のなめらかさを直接、評価することになる。この場合、データスムージング処理結果と比較して1次微分処理結果、2次微分処理結果は、順に、数値の絶対値が小さくなるため、式(66)および式(67)の係数λを大きくする等の調整が必要である。
【0113】
非特許文献3に記載された、式(1)〜式(4)に示す応答型1段指数平滑化法では、現在の時間tでの入力データY1tと現在時間tでのデータ平滑化の予測値S1tを用いて1期先の時間t+1でのデータ平滑化の予測値St+1を導出している。一方、タイプI〜タイプVIの実施例では、現在時間tでの入力データY1tと1期前の時間t-1でのデータ平滑化の予測値S1t-1を用いて現在の時間tでのデータ平滑化の予測値S1tを導出している。前者は、「1期先予測」、後者は「現在推定」と呼ぶことができる。タイプI〜タイプVIの実施例の場合でもS1t-1→S1t、S1t→S1t+1等の変換により「1期先予測」に変更しても良い。
【0114】
但し、一般に「現在推定」の方が「1期先予測」よりもデータ平滑化の予測値の精度が良い。また、非特許文献3には、「1期先予測」の1段指数平滑化法において、1期先予測値の誤差の総和を最小とすることにより最適な平滑化パラメータを推定する方法が開示されている。
【0115】
「現在推定」の場合には、平滑化係数を1とすると、Y1t=S1tとなり、誤差あるいは平均2乗誤差がゼロとなるため、最急降下法等を用いて最適な平滑化パラメータと推定することができない。しかし、実施例で示したように「現在推定」であっても平均二乗誤差と曲線のなめらかさを考慮した式(66)の評価関数Wを用いることにより最適な平滑化パラメータを導出することができる。
【0116】
本実施例によれば、入力データをデータスムージング処理、データ微分処理するのに最適なパラメータを短時間でデータ処理の知識や経験に頼ることなく、自動で見出すことができる効果がある。これにより、一般ユーザが使い勝手が良く、即ち、ユーザビリティが良い、データ処理装置、データ処理方法および処理室を制御する制御装置とを備える処理装置を提供することができる効果がある。
【0117】
以上、本発明は、特に短時間のエッチングプロセスや短時間での変化を伴うエッチングの終点検出等に有効である。半導体デバイスの高集積化、微細化に伴なって半導体エッチングでは、多層薄膜をエッチングする工程が増加しており、短時間のエッチングプロセス、短時間での変化を伴うエッチングステップでのエッチング終点検出が重要となっている。
【0118】
この短時間プロセス及び短時間変化プロセス対応は、本発明によるS/N比向上と応答性向上の両立した総合性能の向上により、明瞭な1次微分波形、2次微分波形を検出することができるようになる。このことにより、高精度にエッチング終点判定が可能となり、これに基づきプラズマ処理室でのプロセスを制御することによって半導体ウェハを安定した性能で高精度に微細加工できるようになった。
【0119】
以上、上述した実施例では、マイクロ波プラズマエッチング装置におけるエッチングの終点検出に適用して高精度にエッチングを行う場合について詳述したが、他のプラズマ生成方式(誘導結合型、平行平板型等)のエッチング装置および成膜装置、あるいは他の分野の処理装置およびその他の装置等においても装置等から得られる数値データを入力として本発明のデータ処理装置およびデータ処理方法を適用することによって装置の状態を監視し、状態の変化点を高精度に検出することができる。このため、対象とする装置を高精度に制御できるという効果がある。またその他の装置の制御においても、同様の作用効果がある。
【0120】
また、需要供給予測等の経済や金融分野でも本発明のデータ処理装置およびデータ処理方法を適用することにより高精度にデータを分析することができるという効果がある。
【0121】
さらに本発明は、逐次デ−タ処理において、デ−タスム−ジング処理、デ−タ微分処理を高S/N比でデ−タ遅延が小さく、また、データ処理開始初期の期間も信頼性が高いデ−タ処理を行うことができる。
【0122】
また、本発明は、データスムージング値、1次微分値、2次微分値が高いS/N比、短い遅延時間、あるいは、データ処理開始の初期も高い信頼性で逐次、リアルタイムに得られる。さらに、本発明は、このデータスムージング値、1次微分値、2次微分値を用いて対象とする系を高精度に制御することができる。
【0123】
なお、本発明は、上述した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した各実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0124】
また、実施例1および実施例2において、「スムージング」と「平滑化」が混在しているが、実施例1および実施例2における、「スムージング」と「平滑化」は、同義語として使用している。
【符号の説明】
【0125】
1…デ−タ処理装置、2…データ入出力装置、3…データ記憶装置、4…データ処理プログラム記憶装置、5…データ演算処理装置、6…対象とする系、7…容器、8…放電管、9…石英板、10…石英窓、11…処理室、12…排気用開閉バルブ、13…真空排気装置、14…ガス配管、15…石英シャワープレート、16…排気速度可変バルブ、17…コイル、18…コイル、19…ヨーク、20…マグネトロン、21…整合器、22…矩形導波管、23…円矩形変換器、24…円形導波管、25…空洞共振器、26…ウェハ載置用電極、27…ウェハ、28…高周波電源、29…光ファイバー、30…分光器、31…光ファイバー、32…分光器、33…システム制御装置
図1
図2
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図3B
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