特許第6553408号(P6553408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553408
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】風味改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20190722BHJP
   A23L 27/40 20160101ALI20190722BHJP
【FI】
   A23L27/00 Z
   A23L27/40
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-106608(P2015-106608)
(22)【出願日】2015年5月26日
(65)【公開番号】特開2016-214211(P2016-214211A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100143856
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 廣己
(74)【代理人】
【識別番号】100171217
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 望
(74)【代理人】
【識別番号】100161698
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 知子
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100155206
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 源一
(72)【発明者】
【氏名】千葉 朋実
(72)【発明者】
【氏名】茂木 和之
(72)【発明者】
【氏名】根津 亨
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−131562(JP,A)
【文献】 特開2013−138614(JP,A)
【文献】 特開昭50−155668(JP,A)
【文献】 特開2011−125315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00
JSTPlus(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレアチニンを有効成分として含有し、且つマスキング剤である飲食品の風味改善剤。
【請求項2】
クレアチニンを有効成分として含有し、且つ塩味強化剤である飲食品の風味改善剤。
【請求項3】
塩化ナトリウムとクレアチニンを含む食塩組成物であって、
塩化ナトリウム100質量部に対し、クレアチニンが0.000001〜0.5質量部であり、その他の成分の含有量が30質量%以下である、食塩組成物。
【請求項4】
塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムで置換したことを特徴とする請求項記載の食塩組成物。
【請求項5】
請求項記載の風味改善剤を飲食品に添加することを特徴とする飲食品のマスキング方法。
【請求項6】
請求項記載の風味改善剤を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の塩味強化方法。
【請求項7】
飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする請求項記載の飲食品の塩味強化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品の味質や基本風味や風味バランスを変えることなく、極少量の添加でマスキング、塩味強化の風味改善効果を呈する風味改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
塩味、苦味、辛味、甘味、酸味、旨味、渋味などの基本風味は、飲食品毎に好ましいバランスがある。
しかし、飲食品の製造時における加熱殺菌や保存料添加などの食品加工工程中や、該飲食品の保存期間中に、苦味や渋味、あるいはエグ味などのその風味バランスを崩す風味、すなわち雑味が生成してしまうことがある。
このような場合、それらの雑味を取り除く加工、例えば蒸留や溶出などをすればよいが、そのような操作は、微量成分を取り除くことであるから極めて煩雑で、また、飲食品の基本風味まで減少させてしまうおそれがある。
【0003】
また、飲食品の中には、特定の風味だけが極めて強く、その飲食品の好ましい基本風味バランスを崩してしまっている場合もある。
このような場合は、その特定の風味を有する食品成分を配合しない、或は取り除く加工をすればいいが、他の風味まで削ることになってしまい、飲食品の風味バランスをさらに崩してしまうことになってしまう。
【0004】
そのため、雑味を有する飲食品にあっては、飲食品の基本風味のバランスを大きく崩すことなく、上記雑味を感じなくさせることができ、また特定の風味だけが極めて強い飲食品にあっては、極少量の成分を添加するだけで、その強すぎる特定の風味を弱めることができる風味改善剤、いわゆるマスキング剤の提案が各種行なわれてきた。
【0005】
マスキング剤としては、例えば、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(例えば特許文献1参照)、ステビア抽出物(例えば特許文献2参照)、乾燥したアミ類、及び/又はオキアミ類抽出物(例えば特許文献3参照)、グルコン酸の非毒性塩(例えば特許文献4参照)などが提案されている。しかし、特許文献1のマスキング剤は、乳化剤であるため、飲食品の物性に影響を与えてしまうことが多く、また、その風味自体が悪いという問題があった。特許文献2のマスキング剤は、苦味・渋味を有する飲食品にしか効果がなく、また、強い甘味をもつため添加量が制限されるという問題があった。特許文献3のマスキング剤は、苦味を有する食品にしか効果がないことに加え、添加量を比較的多くする必要があるという問題があった。特許文献4のマスキング剤は、添加量を比較的多く多くする必要があるという問題があった。
【0006】
ところで、上記5つの基本風味のうち、塩味は、単なる嗜好としてではなく、飲食品の美味しさを引きたて食欲増進効果もあることから、飲食品の風味として極めて重要である。
飲食品に塩味を付与するには、通常、食塩、すなわち塩化ナトリウムを使用するが、その主要構成成分であるナトリウムの過剰摂取が、高血圧をはじめとする多くの健康疾患の危険因子であることから、塩化ナトリウムの摂取量抑制が推奨され、そのため塩化ナトリウム含量を減じた様々な減塩飲食品が開発され、市販されている。しかし、ただ塩化ナトリウム添加量を減じただけでは、当然基本味の1つである塩味が減ってしまい、飲食品がうす味となり、美味しさが損なわれてしまう。
そのため、飲食品の塩味を維持したまま、塩化ナトリウム含量を減じる方法の検討が多数行なわれてきた。
【0007】
飲食品の塩味を維持したまま塩化ナトリウム含量を減じる方法の一つとして、塩味強化剤を使用する方法がある。
塩味強化剤とは、それ自体は塩味を示さないか、あるいはごく薄い塩味であるが、塩化ナトリウムに極少量添加することで、塩化ナトリウムの塩味を強く感じさせる効果を示す風味改善剤であり、添加することによって、少ない塩化ナトリウム含量の飲食品に、それより塩化ナトリウム含量の高い飲食品と同等の塩味を持たせることができるものである。
塩味強化剤を使用する方法によれば、大きな味質の変化を伴わずに飲食品の塩化ナトリウム含量を低下させることが可能である。そのため、塩味強化剤として、カプサイシン(例えば特許文献5参照)、トレハロース(例えば特許文献6参照)、蛋白質の加水分解物(例えば特許文献7参照)、特定の界面活性剤(例えば特許文献8参照)など多くの物質が提案されている。
【0008】
しかし、これらの塩味強化剤は、その塩味の増強効果が極めて弱いことから、少ない塩化ナトリウム含量の飲食品に、高い塩味増強効果を求める場合、これらの塩味強化剤を多く使用する必要があり、その場合、これらの塩味強化剤は極めて強い塩味以外の風味を有する物質であることから、例えば特許文献5の方法は、辛味が強く感じられ、特許文献6の方法は甘味が感じられ、特許文献7の方法は苦味が感じられ、特許文献8の方法は臭味が感じられるなど、飲食品の味質が変わってしまう問題もあった。
【0009】
ここで、マスキング剤としての効果に加え、塩味強化効果のある素材として乳清ミネラルが提案されている。(例えば特許文献9、10参照)しかし、乳清ミネラルは、その添加量によっては若干の呈味が感じられる場合がある。
【0010】
ここで、肉質様呈味に関係する成分のひとつとしてクレアチニンが知られている。
クレアチニンは生体内の筋肉中の遊離アミノ酸の1種であるクレアチンがクレアチンリン酸になり、筋収縮のエネルギー源として使用されるときの最終代謝産物である。クレアチニンはそれ自体を飲食品に使用することはないため、その風味機能についてはほとんど知られていない。わずかに、クレアチニンをグルタミン酸ナトリウム等の化学調味料やビーフエキス等の天然調味料に添加することでその旨味をひきたたせる効果が奏されること(特許文献11参照)、クレアチニンを添加することで、肉質様の呈味の力価や風味の広がりが強化されること(特許文献12参照)が知られている程度である。
【0011】
しかし、特許文献11及び12に記載の発明はそれぞれ、肉製品の風味付与が目的であり、特許文献11及び12には、クレアチニンのマスキング効果や塩味増強効果についての記載はみられない。更に、クレアチニンの添加量も、調味料の種類にもよるが、特許文献11では調味料に対し0.1〜4%、特許文献12では調味料(グルタミン酸ナトリウム)に対し0.4〜5%と高く、とくに特許文献12では、グルタミン酸ナトリウムやクレアチンとの併用が必須であり、クレアチニン単独添加では呈味性がほとんどなかったとの記載があることからもわかるとおり、クレアチニン自体の呈味効果はほとんど知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−65177号公報
【特許文献2】特開2005−336078号公報
【特許文献3】特開平10−179077号公報
【特許文献4】再公表00−048475
【特許文献5】特開2001−245627号公報
【特許文献6】特開平10−66540号公報
【特許文献7】WO01/039613
【特許文献8】特開平5−184326号公報
【特許文献9】特開2008−054664号公報
【特許文献10】特開2008−054667号公報
【特許文献11】特開昭50−155668号公報
【特許文献12】特開2013−138614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、飲食品の雑味や、飲食品の風味としては強すぎる風味を、飲食品の基本風味バランスを変えることなく、極少量の添加でマスキングすることのできる風味改善剤(マスキング剤)、及び風味改善方法(マスキング方法)を提供することにある。
また、本発明の目的は、飲食品の味質を変えることなく、極少量の使用であっても十分な効果を得ることのできる風味改善剤(塩味強化剤)、塩化ナトリウムと同等の味質であって、塩味が強化された食塩組成物、さらには、飲食品の味質を維持したまま、塩化ナトリウム含量あたりの塩味が強化された飲食品、さらには、飲食品の味質を維持したまま、飲食品の塩味を増強することのできる飲食品の風味改善方法(塩味強化方法)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、肉質様呈味成分として知られていたクレアチニンは、その呈味を示さない程度のごく少量を飲食品に添加した場合に、飲食品の塩味のみは強化するが、酸味や苦味などの雑味については逆にマスキングする作用を有することを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものでクレアチニンを有効成分として含有するマスキング剤、塩味強化剤などの風味改善剤を提供するものである。
また本発明は、上記風味改善剤を使用した飲食品を提供するものである。
また本発明は、上記風味改善剤(マスキング剤)を飲食品に添加することを特徴とする飲食品のマスキング方法を提供するものである。
さらに、本発明は、該風味改善剤(塩味強化剤)と塩化ナトリウムからなる食塩組成物を提供するものである。
さらに、本発明は、該食塩組成物を含有する飲食品を提供するものである。
さらに、本発明は、該風味改善剤(塩味強化剤)を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の食塩味強化方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の風味改善剤は、マスキング剤として、飲食品の雑味や、飲食品の風味としては強すぎる風味を、飲食品の基本風味バランスを変えることなく、極少量の添加でマスキングすることができる。
また、本発明のマスキング方法によれば、飲食品や医薬品に含まれる雑味や強すぎる風味を、その基本風味を変えることなくマスキングすることができる。
さらに、本発明の風味改善剤は塩味強化剤として、極少量の使用であっても、飲食品の味質を変えることなく、塩味を増強することができる。
また、本発明の食塩組成物は、塩化ナトリウムと同等の味質であり、且つ塩味が強化されている。
また、本発明の上記食塩組成物を含有する飲食品は、塩味や美味しさを兼ね備えた減塩飲食品として好ましく使用できる。
さらに、本発明の塩味強化方法によれば、飲食品の塩味をその味質を変えることなく極少量の添加で強化することができ、よって簡単に塩味や美味しさを兼ね備えた減塩飲食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について好ましい実施形態に基づき説明する。
まず、本発明の風味改善剤で使用するクレアチニンについて詳述する。
クレアチニンは、生体内では、筋肉中の遊離アミノ酸の1種であるクレアチンがクレアチンリン酸になり、筋収縮のエネルギー源として使用されるときの最終代謝産物として存在する。
本発明では該クレアチニンを抽出・精製して使用することもできるが、市販のクレアチニンを用いてもよい。
なお、市販のクレアチニンには、無水物や、クレアチニン塩酸塩などの塩が存在するが、いずれを用いても良い。特に入手のし易さから、無水物が好ましい。
【0017】
本発明の風味改善剤は、上記クレアチニンを有効成分として含有するものである。
本発明の風味改善剤は、上記クレアチニンをそのまま単独で使用してもよく、また各種の添加剤と混合して、常法により粉体、顆粒状、錠剤、液剤などの形状に製剤化して用いてもよい。
これらの製剤中の上記クレアチニンの含有量は、純分として、好ましくは0.05〜100質量%、より好ましくは1〜90質量%、更に好ましくは3〜70質量%、最も好ましくは5〜50質量%である。
【0018】
クレアチニンを粉体、顆粒状、錠剤などの形状に製剤化するための添加剤としては、アルギン酸類、ペクチン、海藻多糖類、カルボキシメチルセルロース等の増粘多糖類や、乳糖、でんぷん、二酸化ケイ素等の賦形剤、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、ソルビトール、ステビア等の甘味料、微粒二酸化ケイ素、炭酸マグネシウム、リン酸二ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等の固結防止剤、ビタミン類、香料、酸化防止剤、光沢剤などが挙げられ、これらの一種または二種以上のものが適宜選択して用いられる。
クレアチニンを液剤の形状に製剤化する場合は、クレアチニンを液体に溶解または分散させればよい。クレアチニンを溶解または分散させる液体としては、水、エタノール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0019】
本発明の風味改善剤は、さまざまな飲食品の風味改善に使用できる。
本発明の風味改善剤は、例えば、飲食品の雑味や、飲食品の風味としては強すぎる風味を、その基本風味バランスを変えることなく、極少量の添加で、マスキングすることのできるマスキング剤として好適に使用できる。
上記雑味や、強すぎる風味としては、例えば苦味、渋味、収れん味、辛味、酸味、また、缶詰臭、レトルト臭、畜肉臭、魚臭、牧草臭、大豆臭、酵母エキス臭などが挙げられる。
【0020】
なお、本発明の風味改善剤をマスキング剤として使用する場合の対象となる飲食品としては、例えば味噌、醤油、めんつゆ、たれ、だし、パスタソース、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャップ、ウスターソース、とんかつソース、ふりかけ等の調味料、お吸い物の素、カレールウ、ホワイトソース、お茶漬けの素、スープの素等の即席調理食品、味噌汁、お吸い物、コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類、焼肉、ハム、ソーセージ等の畜産加工品、かまぼこ、干物、塩辛、佃煮、珍味等の水産加工品、漬物等の野菜加工品、ポテトチップス、煎餅等のスナック類、食パン、菓子パン、クッキー等のベーカリー食品類、煮物、揚げ物、焼き物、カレー、シチュー、グラタン、ごはん、おかゆ、おにぎり等の調理食品、パスタ、うどん、ラーメン等の麺類食品、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、風味ファットスプレッド等の油脂加工食品、フラワーペースト、餡等の製菓製パン用素材、パン用ミックス粉、ケーキ用ミックス粉、フライ食品用ミックス粉等のミックス粉、チョコレート、キャンディ、ゼリー、アイスクリーム、ガム等の菓子類、饅頭、カステラ等の和菓子類、コーヒー、コーヒー牛乳、紅茶、ミルクティー、豆乳、栄養ドリンク、野菜飲料、食酢飲料、ジュース、コーラ、ミネラルウォーター、スポーツドリンク等の飲料、ビール、ワイン、カクテル、サワー等のアルコール飲料類、牛乳、ヨーグルト、チーズ等の乳や乳製品等を挙げることができる。
【0021】
本発明の風味改善剤をマスキング剤として使用する場合の飲食品に対する添加量は、特に限定されず、使用する飲食品、求めるマスキング効果の強さに応じて適宜決定される。
飲食品への本発明の風味改善剤の好ましい添加量は、一般的には、飲食品100質量部に対し、風味改善剤に含まれるクレアチニンの純分として、好ましくは0.000001〜0.05質量部、より好ましくは0.000003〜0.03質量部、さらに好ましくは0.000005〜0.01質量部である。
【0022】
また本発明の風味改善剤は、飲食品の味質を変えることなく、極少量の使用であっても十分な効果を得ることのできる塩味強化剤としても好適に使用できる。
なお、対象とする飲食品の種類については塩味を有する飲食品であれば特に制限されず、例えばマスキング剤として使用する場合の飲食品と同様の飲食品に使用することができる。
また、本発明の風味改善剤を塩味強化剤として使用する場合の飲食品に対する添加量は特に限定されず、使用する飲食品の種類、飲食品中の食塩含量、求める塩味強化効果の強さに応じて適宜決定されるが、一般的には、飲食品100質量部に対し、風味改善剤に含まれるクレアチニンの純分として、好ましくは0.0000001〜0.01質量部、より好ましくは0.0000003〜0.006質量部、さらに好ましくは0.0000005〜0.002質量部である。
【0023】
次に、本発明の食塩組成物について述べる。
本発明の食塩組成物は、塩化ナトリウム、及び上記風味改善剤(塩味強化剤)からなるものであり、従来の塩化ナトリウムのみからなる食塩と同等の味質を維持したまま塩味が強化された調味料である。
【0024】
本発明の食塩組成物における、塩化ナトリウムと風味改善剤(塩味強化剤)との比率は、塩化ナトリウム100質量部に対し、風味改善剤(塩味強化剤)に含まれるクレアチニンの純分として、好ましくは0.000001〜0.5質量部、より好ましくは0.0001〜0.2質量部、さらに好ましくは0.0001〜0.03質量部である。0.000001質量部未満では、塩味強化効果が認められ難く、0.5質量部を超えると塩味強化効果も弱まると共に味質に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0025】
なお、本発明の食塩組成物は、塩化ナトリウム含量を減じる目的で、塩化ナトリウムの一部、好ましくは塩化ナトリウムの80%以下、より好ましくは60%以下を公知の塩化ナトリウム代替物に置換することができる。
該塩化ナトリウム代替物としては、塩化カリウム、有機酸のアルカリ金属塩などがあげられ、なかでも本発明の食塩組成物では、同等の味質と塩味を維持したまま、塩化ナトリウムをより多く置換することが可能である点で、塩化カリウムを使用することが好ましい。
【0026】
本発明の食塩組成物は、上記塩化ナトリウム及び上記風味改善剤(塩味強化剤)に加えて、抹茶・コーヒー等の風味素材、糖類、固結防止剤、ビタミン類、香料、香辛料、着色料、酸化防止剤、光沢剤などのその他の成分を含んでいてもよい。本発明の食塩組成物中におけるこれらのその他の成分の含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0027】
次に本発明の飲食品について述べる。
本発明の飲食品は、本発明の風味改善剤を使用した飲食品、もしくは、上記本発明の食塩組成物を含有する飲食品である。
【0028】
まず本発明の風味改善剤を使用した飲食品について述べる。
なお、飲食品の種類や、飲食品における上記本発明の風味改善剤の添加量は、上述のとおりである。
本発明の飲食品への上記本発明の風味改善剤の添加方法は特に制限されず、飲食品の製造時、加工時、調理時、飲食時等に、飲食品又はその素材に混合、散布、噴霧、溶解等、任意の手段により行なわれる。
【0029】
次に、本発明の食塩組成物を含有する飲食品について述べる。
本発明の飲食品における、本発明の食塩組成物の含有量は、特に限定されず、使用する飲食品や求める塩味の強さに応じて適宜決定される。
なお、本発明でいうところの飲食品としては、特に限定されるものではなく、一般に塩化ナトリウムのみからなる食塩を使用する食品であれば問題なく使用することができ、例えば味噌、醤油、めんつゆ、たれ、だし、パスタソース、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャツプ、ウスターソース、とんかつソース、ふりかけ、ハーブ塩、調味塩等の調味料、お吸い物の素、カレールウ、ホワイトソース、お茶漬けの素、スープの素等の即席調理食品、味噌汁、お吸い物、コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類、ハム、ソーセージ、チーズ等の畜産加工品、かまぼこ、干物、塩辛、佃煮、珍味等の水産加工品、漬物等の野菜加工品、ポテトチップス、煎餅等の菓子スナック類、食パン、菓子パン、クッキー等のベーカリー食品類、煮物、揚げ物、焼き物、カレー、シチュー、グラタン、ごはん、おかゆ、おにぎり等の調理食品等があげられる。
なお、食塩を含有しない飲食品であっても、飲食時に食塩が含まれる食品であれば使用することができる。
【0030】
本発明の食塩組成物を含有する上記飲食品は、飲食品の味質を維持しながら、塩化ナトリウム含量あたりの塩味が強化されているという特徴を有する。さらに、本発明の食塩組成物が、その塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムなどの塩化ナトリウム代替物で置換したものである場合は、塩化ナトリウム含量あたりの塩味がさらに強化されたものとすることができる。なお、食塩代替物の種類、置換量は上述のとおりである。
換言すれば、本発明の食塩組成物を、従来の飲食品に含まれる食塩と置換使用する場合、その添加量を減少させたとしても、従来の飲食品と同等の塩味と同等の味質を有する飲食品とすることができ、本発明の食塩組成物を含有する飲食品は、減塩飲食品として極めて好ましく使用することができる。
そのため、本発明の減塩飲食品は、従来の単に塩化ナトリウム含量を減じただけの減塩飲食品や、塩化ナトリウムの一部又は全部を塩化ナトリウム代替品で置換した減塩飲食品に比べ、極めて味質が良好である減塩飲食品であり、また従来の塩味増強物質を使用して塩化ナトリウム含量を減じた減塩飲食品に比べ、塩化ナトリウム含量をさらに少なくすることが可能な減塩飲食品である。
なお、本発明において、減塩飲食品とは、通常の飲食品よりも塩化ナトリウム含量が10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは30〜70%質量%減じた食品である。塩化ナトリウム含量を減じた割合が10%質量未満であると、減塩飲食品といえるほどの意味がなく、90質量%を超えて減ずると、本発明の食塩組成物によっても、同等の強さの塩味を得難くなってしまう。
本発明の飲食品が減塩飲食品である場合、本発明の飲食品における本発明の食塩組成物の含有量は、上記理由から、塩化ナトリウム含量が通常の飲食品の含量に比べて、10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%減じた量となるような含有量であることが好ましい。
【0031】
なお、飲食品に本発明の食塩組成物を含有させる方法としては、飲食品の製造時又は飲食時に本発明の食塩組成物を添加する方法を主に用いることができる。具体的には、本発明の風味改善剤を塩味強化剤として、塩化ナトリウムと共に又は別に、製造時又は飲食時に添加する方法、本発明の風味改善剤を塩味強化剤として含有する飲食品に、塩化ナトリウムを製造時又は飲食時に添加する方法、塩化ナトリウムを含有する飲食品に、本発明の風味改善剤を塩味強化剤として製造時又は飲食時に添加する方法、などがあげられる。即ち、飲食品を飲食するまでの間に、飲食品中で好ましくは上記好ましい比率と含有量で塩化ナトリウムと本発明の風味改善剤が塩味強化剤として飲食品中に含まれていればよい。
【0032】
次に、本発明の飲食品のマスキング方法について述べる。
本発明の飲食品のマスキング方法は、上記本発明の風味改善剤をマスキング剤として、飲食品に添加するものであり、飲食品の基本風味を維持したまま、飲食品の雑味や強すぎる風味をマスキングするものである。
本発明の風味改善剤をマスキング剤として飲食品に添加する方法は、特に限定されず、対象となる飲食品の加工時、調理時、飲食時等に、飲食品またはその素材に混合、散布、噴霧、溶解等任意の手段により行なわれる。
本発明の風味改善剤(マスキング剤)の、飲食品への添加量は、上述のとおりである。
【0033】
次に、本発明の飲食品の塩味強化方法について述べる。
本発明の飲食品の塩味強化方法は、飲食品に対し、上記本発明の風味改善剤を塩味強化剤として添加するものであり、飲食品の味質を維持したまま塩味を強化するものである。
【0034】
本発明の風味改善剤(塩味強化剤)の飲食品への添加量は、風味改善剤(塩味強化剤)に含まれるクレアチニンの純分として、一般的には、飲食品100質量部に対して、好ましくは0.0000001〜0.01質量部、より好ましくは0.0000003〜0.006質量部、さらに好ましくは0.0000005〜0.002質量部である。
【0035】
本発明の塩味強化方法では、最も良質の塩味が得られることから、添加する基となる飲食品は塩化ナトリウムを含有するものであることが好ましい。
その場合、本発明の風味改善剤(塩味強化剤)の飲食品への添加量は、風味改善剤(塩味強化剤)に含まれるクレアチニンの純分として、一般的には、すなわち下述の飲食品が減塩飲食品である場合を除き、飲食品に含まれる塩化ナトリウム100質量部に対して、好ましくは0.000001〜0.5質量部、より好ましくは0.0001〜0.2質量部、さらに好ましくは0.0002〜0.03質量部である。
風味改善剤(塩味強化剤)の飲食品への添加量が、塩化ナトリウムに対し、クレアチニンの純分として0.000001質量部未満、又は、0.5質量部を超えると、塩味強化効果が認められ難く、また0.5質量部を超えると、飲食品の味質に悪影響を与えるおそれがある。
【0036】
なお、塩化ナトリウムを含有する飲食品に対する風味改善剤(塩味強化剤)の添加方法としては、風味改善剤(塩味強化剤)を、飲食品の製造時に原料として添加する方法であっても、また、塩化ナトリウムを含有する飲食品に添加・混合使用する方法でもどちらでも可能である。
【0037】
なお、本発明の飲食品の塩味強化方法においては、本発明の風味改善剤(塩味強化剤)を極少量添加することによって、飲食品の味質を変えることなく塩味を強化することのできることから、従来の飲食品に含まれる塩化ナトリウム含有量を減少させたとしても、従来の飲食品と同等の強さの塩味と、同等の味質を有する飲食品とすることができる。
すなわち、本発明の塩味強化方法においては、本発明の風味改善剤(塩味強化剤)を添加する飲食品は減塩飲食品であることが好ましい。なお、この場合、得られた飲食品もまた減塩飲食品である。
具体的には、本発明の風味改善剤(塩味強化剤)を飲食品の製造時に添加する場合、本発明の風味改善剤(塩味強化剤)を使用することによって塩化ナトリウム含量を減じることで、本来うす味で美味しさに乏しい減塩飲食品を、通常の塩化ナトリウム含量の飲食品と同等の強さの塩味と味質を有する飲食品とすることができる。
また、本発明の風味改善剤(塩味強化剤)を飲食品に添加する場合、塩化ナトリウム含有量が少ないためにうす味で美味しさに乏しい減塩飲食品に対して使用することで、減塩飲食品を、塩化ナトリウム含量が少ないにもかかわらず、通常の塩化ナトリウム含量の飲食品と同等の強さの塩味と味質を有する飲食品とすることができる。
【0038】
さらに、本発明の飲食品の塩味強化方法においては、本発明の風味改善剤(塩味強化剤)を添加する飲食品に含まれる塩化ナトリウムの一部を、塩化カリウム等の食塩代替物に置換することで、さらに飲食品の塩化ナトリウム含量も減じることも可能である。なお、食塩代替物の種類、置換量は上述のとおりである。
【0039】
本発明の飲食品の塩味強化方法において、本発明の風味改善剤(塩味強化剤)を添加する飲食品が減塩飲食品である場合、本発明の風味改善剤(塩味強化剤)の添加量は、減塩飲食品に含まれる塩化ナトリウム100質量部に対し、風味改善剤(塩味強化剤)に含まれるクレアチニンの純分として、好ましくは0.00001〜1.25質量部、より好ましくは0.0001〜0.5質量部、さらに好ましくは0.0002〜0.075質量部である。
風味改善剤(塩味強化剤)の飲食品への添加量が、塩化ナトリウムに対し、クレアチニンの純分として0.00001質量部未満、又は、1.25質量部を超えると、塩味強化効果が認められ難いため、うす味で美味しさに乏しい減塩飲食品となってしまうおそれがあり、また1.25質量部を超えると、飲食品の味質に悪影響を与えるおそれがある。
【0040】
なお、本発明の風味改善剤は医薬品のマスキングにも使用可能である。
上記医薬品としては、経口医薬品であれば特に限定されるものではなく、例えば、カゼ薬、胃腸薬、頭痛薬、歯磨き剤等があげられる。
医薬品に対する本発明のマスキング剤の添加量、添加方法は上述の飲食品に対する添加量や添加方法と同様である。
【実施例】
【0041】
〔実験例1〕
クレアチニンを準備し、塩化ナトリウム100質量部に対し、それぞれ、0.000001質量部、0.00001質量部、0.0001質量部、0.001質量部、0.01質量部、0.1質量部、0.5質量部、1質量部、10質量部添加、混合して食塩組成物を製造し、下記の塩味強度・味質評価を行なった。
【0042】
<塩味強度、味質評価方法>
9人のパネラーに対し、上記実験例1で得られた食塩組成物と、対照として用意した塩化ナトリウム100%からなる食塩を舐めさせ、その塩味強度、味質について、下記パネラー評価基準により4段階評価させ、その合計点数について下記<評価基準>で5段階評価を行ない、その結果をそれぞれ表1、表2に記載した。
【0043】
<パネラーの塩味強度評価基準>
対照に比べあきらかに強化された塩味を感じる・・ 2点
対照に比べ若干強化された塩味を感じる・・・・・ 1点
対照とほぼ同じ程度の塩味を感じる・・・・・・・ 0点
対照より弱い塩味を感じる・・・・・・・・・・ −1点
<パネラーの味質評価基準>
塩化ナトリウム以外の風味を全く感じない・・・・・・・・2点
塩化ナトリウム以外の風味を感じるが、塩味として違和感ない・・・・1点
塩化ナトリウム以外の風味を感じ、且つ塩味として違和感がある・・・0点
耐えがたい異味を感じる・・・・・・・・・−1点
【0044】
<評価基準>
◎ :9人のパネラーの合計点が 15〜18点
○ :9人のパネラーの合計点が 9〜14点
△ :9人のパネラーの合計点が 5〜 8点
× :9人のパネラーの合計点が 0〜 4点
××:9人のパネラーの合計点が 0点未満
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
上記結果より、クレアチニンは、塩化ナトリウム100質量部あたりの添加量が、0.000001〜0.5質量部では塩味の増強効果が見られるが、1質量部以上であると塩味の増強効果はみられず、塩味はほぼ塩化ナトリウムと同レベルとなることがわかる。また、1質量部以上であると、塩味以外の風味(苦味)が感じられる上に、塩味としての違和感が顕れるようになり、異味が感じられることがわかる。
すなわち、クレアチニンは塩味強化剤として極めて好適に使用できることがわかる。
【0048】
<風味評価試験>
〔実施例1〕
クレアチニンを準備し、下述の評価試験1(苦味)、評価試験2(渋味)、評価試験3(収斂味)、評価試験4(辛味)、評価試験5(酸味)、評価試験6(塩味)に供した。
【0049】
[評価試験1(苦味)]
塩酸キニーネの0.02質量%水溶液を2カップ用意し、一方に塩酸キニーネ水溶液100質量部に対しクレアチニン0.001質量部を添加溶解し、もう一方は無添加とした。ここで両者の苦味の比較をすると、クレアチニンを添加した塩酸キニーネ水溶液は無添加の塩酸キニーネ水溶液に比べ、苦味だけが低減されており、たいへん飲みやすくなっていた。
【0050】
[評価試験2(渋味)]
茶ポリフェノールの0.1質量%水溶液を2カップ用意し、一方に茶ポリフェノール水溶液100質量部に対しクレアチニン0.001質量部を添加溶解し、もう一方は無添加とした。ここで両者の渋味の比較をすると、クレアチニンを添加した茶ポリフェノール水溶液は無添加の茶ポリフェノール水溶液に比べ、渋味だけが低減されており、たいへん飲みやすくなっていた。
【0051】
[評価試験3(収斂味)]
塩化マグネシウムの0.1質量%水溶液を2カップ用意し、一方に塩化マグネシウム水溶液100質量部に対しクレアチニン0.001質量部を添加溶解し、もう一方は無添加とした。ここで両者の収斂味の比較をすると、クレアチニンを添加した塩化マグネシウム水溶液は無添加の塩化マグネシウム水溶液に比べ、収斂味だけが低減されており、たいへん飲みやすくなっていた。
【0052】
[評価試験4(辛味)]
「おろし本わさび」(ヱスビー食品製)の2質量%水溶液を2カップ用意し、一方に該わさび水溶液100質量部に対しクレアチニン0.001質量部を添加溶解し、もう一方は無添加とした。ここで両者の辛味の比較をすると、クレアチニンを添加したわさび水溶液は無添加のわさび水溶液に比べ、辛味だけが低減されており、たいへん飲みやすくなっていた。
【0053】
[評価試験5(酸味)]
クエン酸0.7質量%水溶液を2カップ用意し、一方にクエン酸水溶液100質量部に対しクレアチニン0.001質量部を添加溶解し、もう一方は無添加とした。ここで両者の酸味の比較をすると、クレアチニンを添加したクエン酸水溶液は無添加のクエン酸水溶液に比べ、酸味だけが低減されており、たいへん飲みやすくなっていた。
【0054】
[評価試験6(塩味)]
2質量%の食塩水を2カップ用意し、一方に該食塩水100質量部に対しクレアチニン0.001質量部を添加溶解し、もう一方は無添加とした。ここで両者の塩味の比較をすると、クレアチニンを添加した食塩水は無添加の食塩水にくらべ塩味が強化されていた。
【0055】
上記評価試験1〜6でわかるように、クレアチニンは塩味のみは強化するものの、その他の風味(苦み、渋み、収斂味、辛味、酸味)をマスキングするという特異的な効果を有することがわかった。
【0056】
<風味改善剤、飲食品の製造・評価>
〔実施例2〜7〕
クレアチニン及び水を[表3]に記載した配合で溶解・混合し、本発明の風味改善剤A〜Cを調製した。(実施例2〜4)
さらに得られた風味改善剤を用いて減塩コンソメオニオンスープ(実施例5)、コラーゲンペプチド(実施例6)、めんつゆ(実施例7)を製造した。
【0057】
【表3】
【0058】
〔実施例5〕
洋風スープの素(味の素KKコンソメ(塩分ひかえめ):味の素製、塩化ナトリウム含量:26質量%)1.25質量部、塩化ナトリウムのみからなる食塩0.2質量部、塩化カリウム0.55質量部、オニオンパウダー0.35質量部、上白糖0.2質量部、ガーリックパウダー0.1質量部、酵母エキス(ウェルネックスYN−1:富士食品工業製、塩化ナトリウム含量:8.0質量%)0.1質量部、グルタミン酸ナトリウム0.04質量部、ホワイトペッパー0.01質量部、及び風味改善剤A0.01質量部を水97.19質量部に溶解した。これを鍋に入れ沸騰させた後、蒸発分の水を足して100質量部とし、塩化ナトリウム含量が0.54質量%であり、クレアチニンを、飲食品100質量部に対し純分として0.0003質量部含有し、飲食品に含まれる塩化ナトリウム100質量部に対し、純分として0.056質量部含有する、本発明の飲食品である減塩コンソメオニオンスープを得た。得られた減塩コンソメオニオンスープは、塩化ナトリウムの50質量%が、塩化ナトリウム代替物である塩化カリウムで置換されていた。
一方、風味改善剤Aを無添加とした以外は同様の配合・製法で比較用のコンソメオニオンスープを得た。
両コンソメオニオンスープを比較試食したところ、本発明の減塩コンソメオニオンスープは、比較用の減塩コンソメオニオンスープと比べ、基本風味バランスを変えることなく塩味が強化され、且つ、雑味が低減されており、極めて食べやすいものであった。
また、塩化ナトリウムのみからなる食塩の添加量を0.2質量部から0.75質量部とし、塩化カリウム及び風味改善剤Aを無添加とした以外は同様の配合・製法で、通常の塩化ナトリウム含量のコンソメオニオンスープ(塩化ナトリウム含量、1.08質量%)を得た。
上記本発明の減塩コンソメオニオンスープと上記通常の塩化ナトリウム含量のコンソメオニオンスープを比較試食したところ、本発明の減塩コンソメオニオンスープは、通常の塩化ナトリウム含量のコンソメオニオンスープと比べ、塩化ナトリウム含量がほぼ半分であるにもかかわらず、基本風味バランスを変えることなく塩味が強化され、且つ、雑味が低減されており、極めて食べやすいものであった。
【0059】
〔実施例6〕
コラーゲンペプチドの5質量%水溶液を用意し、この水溶液100質量部に対し、風味改善剤B0.001質量部を添加・溶解し、クレアチニンを、飲食品100質量部に対し純分として0.00001質量部含有する、本発明のコラーゲンペプチド水溶液を得た。
ここで、本発明のコラーゲンペプチド水溶液を、風味改善剤無添加のコラーゲンペプチド水溶液と比較試食したところ、本発明のコラーゲンペプチド水溶液は、比較用のコラーゲンペプチド水溶液と比べ、基本風味バランスを変えることなくコラーゲン臭さが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
【0060】
〔実施例7〕
鍋にみりん28.8質量部をいれ、火にかけて軽く沸騰させ、続いて水100質量部、醤油28.8質量部を加え、よく混ぜ合わせ沸騰させた。ここへかつお削り節5質量部を加え再び沸騰したら火を止め、濾し器で濾し、通常めんつゆを得た。(塩化ナトリウム含量=2.6質量%)
一方上記醤油を減塩醤油に変更した以外は同様の製法で減塩めんつゆAを得た。(塩化ナトリウム含量=1.3質量%)
ここで、上記減塩めんつゆ100質量部に対し、風味改善剤Cを0.001質量部添加し、十分溶解・混合し、クレアチニンを、飲食品100質量部に対し純分として0.0004質量部含有し、飲食品に含まれる塩化ナトリウム100質量部に対し、純分として0.03質量部含有する、本発明の減塩飲食品である減塩めんつゆBを得た。
ここで、上記本発明の減塩めんつゆBと、上記通常めんつゆを比較試食したところ、本発明の減塩めんつゆBは、比較用の通常めんつゆと、塩味強度も含め風味バランスは全く変わりがなかった。
【0061】
<食塩組成物、飲食品の製造・評価>
さらに得られた風味改善剤を用いて下記の配合・製法にしたがい、食塩組成物及びポタージュスープを製造した。(実施例8、9)
【0062】
〔実施例8〕
塩化ナトリウム100質量部に対し風味改善剤A0.1質量部を添加して十分混合し、塩化ナトリウム100質量部に対しクレアチニンを純分として0.003質量部含有する、発明の食塩組成物Aとした。
さらに、該本発明の食塩組成物Aを使用して、下記の配合で定法により、塩化ナトリウム含量が0.9質量%であり、クレアチニンを、飲食品100質量部に対し純分として0.000021質量部含有し、飲食品に含まれる塩化ナトリウム100質量部に対し、純分として0.0023質量部含有する、本発明の減塩飲食品であるポタージュスープ1を製造した。一方、上記クレアチニンを全く使用しない、塩化ナトリウム100%からなる食塩を使用した以外は、実施例1と同様の配合・製法で製造された塩化ナトリウム含量が0.93質量%のポタージュスープ2を対照として用意した。ここで、この2種のポタージュスープを比較試食したところ、本発明の飲食品であるポタージュスープ1は、塩味強化剤を使用しないポタージュスープ2より明らかに塩味が強いが、異味は全く感じられず、味質を変えないまま、塩味を強化されたものであった。
【0063】
<ポタージュスープ配合>
スイートコーン(塩化ナトリウム含量0.5%)30質量部、牛乳5質量部、脱脂粉乳5質量部、無塩バター1質量部、食塩組成物A0.7質量部、薄力粉1質量部、糊化澱粉1質量部、ホワイトペッパー0.1質量部、水56.2質量部
【0064】
〔実施例9〕
上記実施例8のポタージュスープの配合で、食塩組成物Aの添加量を0.7質量部から0.37質量部とし、水56.2質量部を56.53質量部とした以外は実施例8と同様の配合・製法で、塩化ナトリウム含量が0.59質量%であり、クレアチニンを、飲食品100質量部に対し純分として0.000011質量部含有し、飲食品に含まれる塩化ナトリウム100質量部に対し、純分として0.0019質量部含有する、塩化ナトリウム含量を通常の35%カットした減塩飲食品である本発明のポタージュスープ3を製造した。
そして実施例8と同様、ポタージュスープ2と比較試食したところ、本発明の減塩飲食品であるポタージュスープ3は、通常の塩化ナトリウム含量であるポタージュスープ2とほぼ同等の強さの塩味であり、且つ、同等の味質であった。