(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
<第1実施形態>
〔構成〕
図1(a)〜(d)は、本発明の実施形態に係るホールセンサ100の構成例を示す断面図と平面図と底面図、及び外観図である。
図1(a)は、
図1(b)を破線A−A´で切断した断面を示している。また、
図1(b)では、図面の複雑化を回避するために、パッケージ部材(樹脂部材)を省略して示している。
図1(a)〜(d)に示すように、ホールセンサ100は、GaAsホール素子10と、リード端子20と、複数の金属細線(導電性接続部材)31〜34と、パッケージ部材50と、外装めっき層60とを備える。また、リード端子20は、複数のリード端子22〜25を有する。
【0014】
(1)ホール素子
まず、GaAsホール素子10の構成例について説明する。
GaAsホール素子10は、半絶縁性のガリウムヒ素(GaAs)基板11と、このGaAs基板11上に形成された半導体薄膜からなる活性層12と、活性層12に電気的に接続する電極13a〜13dと、GaAs基板11の電極13a〜13dが設けられている面とは反対側の面側に設けられた保護層40と、を有する。活性層12は、例えば平面視で十字(クロス)型であり、クロスの4つの先端部上にそれぞれ電極13a〜13dが設けられている。
【0015】
(1.1)基板
GaAs基板11の抵抗率は5.0×10
7Ω・cm以上である。GaAs基板11の抵抗率の上限は特に制限はないが、一例を挙げると、1.0×10
9Ω・cm以下である。このように本発明の実施形態では高抵抗のGaAs基板が使用される。
図2は、GaAs基板の抵抗値と、GaAs基板中のアクセプタ型不純物(すなわち、P型不純物)の濃度との関係を示す図である。
図2に示すように、GaAs基板の抵抗値はGaAs基板中のアクセプタ型不純物の濃度(例えば、炭素:Cの濃度)によって大きく変化する。GaAs基板の抵抗値を高くするためには、GaAs基板中のアクセプタ型不純物の濃度(例えば、Cの濃度)を高くすればよい。例えば、GaAs基板11の抵抗率を5.0×10
7Ω・cm以上とするためには、GaAs基板11中のCの濃度を1.5×10
15atoms・cm
−3以上にすればよい。GaAs基板11中のCの濃度の上限は、例えば、1.0×10
16atoms・cm
−3以下である。
【0016】
(1.2)活性層
図3は第1実施形態に係るGaAsホール素子10の構成例を示す平面図である。詳しくは、
図3(a)は活性層12を示す平面図であり、
図3(b)は活性層12と電極13a〜13dとを示す平面図である。活性層12は、基板11上に形成された基板11よりも低抵抗の層である。活性層12は、例えば、GaAsなどの化合物半導体層にSi、Sn、S、Se、Te、Ge又はCなどの不純物を打ち込み、加熱による活性化を行うことにより形成される。活性層12の平面視形状は、例えば、不純物を打ち込む領域を変えることによって任意に形状を変えることができる。
【0017】
図3(a)に示すように、活性層12の平面視による形状はクロス型であり、そのクロス型を構成する2本の直線部の各端部12a〜12cはそれぞれ平面視で「八」の字型(すなわち、電極と接続する部分に向かって幅が徐々に広がる形状)となっている。
具体的には、活性層12は、第1の端部12a、第2の端部12b、第3の端部12c及び第4の端部12dを有する。第1の端部12aは、第1の幅L1を有する第1の活性領域121と、第1の活性領域121に接続し、かつ第1の幅L1よりも広い第2の幅L2(L1<L2)を有する第2の活性領域122とを有する。平面視で、第1の活性領域121は、第2の活性領域122よりも活性層12の中央寄りに位置する。第2の端部12bは、第3の幅L3を有する第3の活性領域123と、第3の活性領域123に接続し、かつ第3の幅L3よりも広い第4の幅L4(L3<L4)を有する第4の活性領域124とを有する。平面視で、第4の活性領域124は、第3の活性領域123よりも活性層12の中央寄りに位置する。
【0018】
第3の端部12cは、第5の幅L5を有する第5の活性領域125と、第5の活性領域125に接続し、かつ第5の幅L5よりも広い第6の幅L6(L5<L6)を有する第6の活性領域126とを有する。平面視で、第6の活性領域126は、第5の活性領域125よりも活性層12の中央寄りに位置する。第4の端部12dは、第7の幅L7を有する第7の活性領域127と、第7の活性領域127に接続し、かつ第7の幅L7よりも広い第8の幅L8(L7<L8)を有する第8の活性領域128とを有する。平面視で、第8の活性領域126は、第7の活性領域125よりも活性層12の中央寄りに位置する。また、例えば、L1=L3=L5=L7である。
【0019】
図3(b)に示すように、第1の端部12aでは、第2の活性領域122が第1の電極13aと接している。第1の活性領域121は第1の電極13aと接していない。同様に、第2の端部12bでは、第4の活性領域124が第2の電極13bと接している。第3の活性領域123は第2の電極13bと接していない。第3の端部12cでは、第6の活性領域126が第3の電極13cと接している。第5の活性領域125は第3の電極13cと接していない。第4の端部12dでは、第8の活性領域128が第4の電極13dと接している。第7の活性領域127は第4の電極13dと接していない。
【0020】
ホール素子10では、第1の電極13a、第2の電極13b、第3の電極13c及び第4の電極13dの何れか一つが接地電位(GND)に接続するための接地電極として使用可能である。例えば、接地電極として、第1の電極13aが使用される。ここで、接地電極として使用される第1の電極13aは、第1の活性領域121ではなく、第1の活性領域121よりも幅広の第2の活性領域122と接している。リーク電流が最も流れやすい箇所である、活性層12と第1の電極13aの端部とが接続する箇所14aも、第2の活性領域122内にある。
【0021】
(1.3)電極
電極13a〜13dは、例えば、下から順にAuGe、Ni、Auが積層された金属薄膜、又は、下から順にTi、Auが積層された金属薄膜からなる。
図3(b)において、平面視で向かい合う一対の電極13a、13cがホール素子に電流を流すための入力端子である。例えば、電極13aが接地電極であり、電極13cは電源電位に接続するための電源電極である。また、電極13a、13cを結ぶ線と平面視で直交する方向で向かい合う他の一対の電極13b、13dがホール素子から電圧を出力するための出力端子である。
【0022】
(2)リード端子
ホールセンサ100は、アイランドレス構造であり、外部との電気的接続を得るための複数のリード端子22〜25を有する。
図1(b)に示すように、リード端子22〜25は、GaAsホール素子10の周囲(例えば、ホールセンサ100の四隅近傍)に配置されている。例えば、リード端子22とリード端子24とがGaAsホール素子10を挟んで対向するように配置されている。また、リード端子23とリード端子25とがGaAsホール素子10を挟んで対向するように配置されている。さらに、リード端子22とリード端子24とを結ぶ直線(仮想線)と、リード端子23とリード端子25とを結ぶ直線(仮想線)とが平面視で交差するように、リード端子22〜25はそれぞれ配置されている。リード端子20(リード端子22〜25)は、例えば銅(Cu)等の金属からなる。また、リード端子20は、その面側又は裏面の一部がエッチング(即ち、ハーフエッチング)されていてもよい。
【0023】
なお、図示しないが、リード端子20の表面で(
図1(a)における上面側)、金属細線31〜34で接続されるリード端子22〜25の表面には、Agめっきが施されていることが電気的接続の観点から好ましい。
また、別の態様で、リード端子20の少なくとも表面及び裏面には、外装めっき層60に代えて、ニッケル(Ni)−パラジウム(Pd)−金(Au)等のめっきが施されていてもよい。ホールセンサであるが、アイランドレスのため、磁性体であるNiめっき膜の影響を受けにくいため実施が可能となる。
【0024】
(3)導電性接続部材
金属細線31〜34は、GaAsホール素子10が有する電極13a〜13dと、リード端子22〜25をそれぞれ電気的に接続する導線であり、例えば金(Au)からなる。
図1(b)に示すように、金属細線31はリード端子22と電極13cとを接続し、金属細線32はリード端子23と電極13dとを接続している。また、金属細線33はリード端子24と電極13aとを接続し、金属細線34はリード端子25と電極13bとを接続している。
【0025】
保護層40は、GaAs基板11の電極13a〜13dが設けられている面とは反対側の面(例えば、裏面)側を覆っている。保護層40は、GaAs基板11を保護可能なものであれば特に限定はなく、導体、絶縁体、又は半導体のうち、少なくとも何れか1つを含んでいてもよい。即ち、保護層40は、導体、絶縁体、又は半導体の何れか1つからなる層であってもよいし、これらのうち2つ以上を含む層であってもよい。保護層40は導体、絶縁体、又は半導体の何れかからなる層を複数積層させた積層構造でもよい。導体としては、例えば、銀ペーストなどの導電性樹脂などが考えられる。絶縁体としては、例えば、エポキシ系の熱硬化型樹脂と、フィラーとしてシリカ(SiO
2)とを含む絶縁ペースト、窒化ケイ素、二酸化ケイ素などが考えられる。半導体としては、例えば、Si基板やGe基板などの貼り合わせが考えられる。但し、リーク電流防止の観点から、保護層40は、絶縁層を含むことが好ましい。保護層40を絶縁層を含む層とすることにより、保護層40とGaAs基板11の両方でリーク電流を防止することが可能となる。但し、リードフレーム等のGaAsホール素子10を支持するための金属製のアイランドは保護層40には含まれない。
【0026】
(4)パッケージ部材
パッケージ部材50は、GaAsホール素子10と、リード端子20と、金属細線31〜34とをパッケージしている。言いかえると、パッケージ部材50は、GaAsホール素子10の一部と、リード端子20の少なくとも表面側(即ち、金属細線と接続する側の面)と、金属細線31〜34とを封止している。封止とは、外気と接触しないように覆って保護することである。パッケージ部材50は、例えばエポキシ系の熱硬化型樹脂からなり、リフロー時の高熱に耐えられるようになっている。
【0027】
各リード端子22〜25の複数の面のうち、金属細線と接続している面とは反対側の面を、各リード端子22〜25の第1面とする。また、GaAs基板11が有する複数の面のうち、電極が設けられている面とは反対側の面を、GaAs基板11の第2面とする。
図1(a)及び(c)に示すように、ホールセンサ100の底面側(即ち、配線基板に実装する側)では、各リード端子22〜25の第1面(裏面)の少なくとも一部と、GaAs基板11の第2面(裏面)の少なくとも一部と、パッケージ部材50の同一の面(例えば、裏面)からそれぞれ露出している。また、GaAs基板11の第2面(裏面)の少なくとも一部は保護層40で覆われている。この保護層40の少なくとも一部も、パッケージ部材50の上記同一の面(例えば、裏面)から露出している。なお、上記の第1面、第2面、同一の面としてそれぞれ例示した裏面とは、活性層及び電極が形成された面の反対側に位置する面のことであり、
図1(a)の断面図では下側に位置する面のことである。
外装めっき層60は、パッケージ部材50から露出しているリード端子22〜25の裏面に形成されている。外装めっき層60は、例えばスズ(Sn)等からなる。
【0028】
〔動作〕
上記のホールセンサ100を用いて磁気(磁界)を検出する場合は、例えば、リード端子22を電源電位(+)に接続すると共に、リード端子24を接地電位(GND)に接続して、リード端子22からリード端子24に駆動電流を流す。そして、リード端子23、25間の電位差V1−V2(=ホール出力電圧VH)を測定する。ホール出力電圧VHの大きさから磁界の大きさを検出し、ホール出力電圧VHの正負から磁界の向きを検出する。
即ち、リード端子22は、GaAsホール素子10に所定電圧を供給する電源用リード端子である。リード端子24は、GaAsホール素子10に接地電位を供給する接地用リード端子である。リード端子23、25は、GaAsホール素子10のホール起電力信号を取り出す信号取出用リード端子である。
【0029】
〔製造方法〕
本発明の実施形態に係るホールセンサの製造方法は、基材の一方の面に複数のリード端子が形成されたリードフレームを準備する工程と、基材の一方の面の複数のリード端子で囲まれる領域に、保護層を有するGaAsホール素子を載置する工程と、GaAsホール素子が有する複数の電極部と複数のリード端子とを複数の導電性接続部材でそれぞれ電気的に接続する工程と、基材のGaAsホール素子が載置された面側をパッケージ部材でパッケージする工程と、パッケージ部材及び保護層から基材を分離する工程と、を備え、基材を分離する工程では、保護層と複数のリード端子とをパッケージ部材から露出させる。なお、保護層を有するGaAsホール素子とは、GaAs基板の複数の電極部が設けられている面とは反対側の面側に保護層が設けられているGaAsホール素子のことである。
【0030】
図4(a)〜(e)及び
図5(a)〜(d)は、ホールセンサ100の製造方法を示す工程順に示す平面図と断面図である。なお、
図4(a)〜(e)において、ダイシングのブレード幅(即ち、カーフ幅)の図示は省略している。
図4(a)に示すように、まず、前述のリード端子が形成されたリードフレーム120を用意する。このリードフレーム120は、
図1(b)に示したリード端子20が平面視で縦方向及び横方向に複数繋がっている基板である。
【0031】
次に、
図4(b)に示すように、リードフレーム120の裏面側に、例えば、基材として耐熱性フィルム80の一方の面を貼付する。この耐熱性フィルム80の一方の面には例えば絶縁性の粘着層が塗布されている。粘着層は、その成分として、例えばシリコーン樹脂がベースとなっている。この粘着層によって、耐熱性フィルム80にリードフレーム120を貼付し易くなっている。リードフレーム120の裏面側に耐熱性フィルム80を貼付することによって、リードフレーム120の貫通している貫通領域を、裏面側から耐熱性フィルム80で塞いだ状態となる。
【0032】
なお、基材である耐熱性フィルム80としては、粘着性を有すると共に、耐熱性を有する樹脂製のテープが用いられることが好ましい。
粘着性については、粘着層の糊厚がより薄いほうが好ましい。また、耐熱性については、約150℃〜200℃の温度に耐えることが必要とされる。このような耐熱性フィルム80として、例えばポリイミドテープを用いていることができる。ポリイミドテープは、約280℃に耐える耐熱性を有している。このような高い耐熱性を有するポリイミドテープは、後のパッケージやワイヤーボンディング時に加わる高熱にも耐えることが可能である。また、耐熱性フィルム80としては、ポリイミドテープの他に、以下のテープを用いることも可能である。
・ポリエステルテープ 耐熱温度、約130℃(但し使用条件次第で耐熱温度は約200℃にまで達する)。
・テフロン(登録商標)テープ 耐熱温度:約180℃
・PPS(ポリフェニレンサルファイド) 耐熱温度:約160℃
・ガラスクロス 耐熱温度:約200℃
・ノーメックペーパー 耐熱温度:約150〜200℃
・他に、アラミド、クレープ紙が耐熱性フィルム80として利用し得る。
【0033】
次に、
図4(c)に示すように、耐熱性フィルム80の粘着層を有する面のうち、リード端子22〜25で囲まれた領域に、保護層40を有するGaAsホール素子10を載置する(即ち、ダイボンディングを行う。)。ここでは、保護層40を耐熱性フィルム80の粘着層を有する面に対向させてダイボンディングを行う。
次に、
図4(d)に示すように、金属細線31〜34の一端を各リード端子22〜25にそれぞれ接続し、金属細線31〜34の他端を電極13a〜13dにそれぞれ接続する(即ち、ワイヤーボンディングを行う。)。そして、
図4(e)に示すように、パッケージ部材50を形成する(即ち、樹脂パッケージを行う。)。この樹脂パッケージは、例えばトランスファーパッケージ技術を用いて行う。
【0034】
例えば
図5(a)に示すように、下金型91と上金型92とを備えるモールド金型90を用意し、このモールド金型90のキャビティ内にワイヤーボンディング後のリードフレーム120を配置する。次に、キャビティ内であって、耐熱性フィルム80の粘着層を有する面(即ち、リードフレーム120と接着している面)の側に加熱し溶融したモールド樹脂を注入し、充填する。これにより、GaAsホール素子10と、リードフレーム120と、金属細線31〜34とをパッケージするパッケージ部材50を形成する。即ち、GaAsホール素子10の一部と、リードフレーム120の少なくとも表面側と、金属細線31〜34とをモールド樹脂で封止する。モールド樹脂が硬化してパッケージ部材50が完成したら、これをモールド金型から取り出す。なお、樹脂封止後は任意の工程で、パッケージ部材50の表面に例えば符号等(図示せず)をマーキングしてもよい。
【0035】
次に、
図5(b)に示すように、パッケージ部材50から耐熱性フィルム80を剥離する。これにより、パッケージ部材50からGaAsホール素子10の保護層40を露出させる。そして、
図5(c)に示すように、リードフレーム120のパッケージ部材50から露出している面(少なくとも、各リード端子22〜25のパッケージ部材50から露出している裏面)に外装めっきを施して、外装めっき層60を形成する。
【0036】
次に、
図5(d)に示すように、パッケージ部材50の上面(即ち、ホールセンサ100の外装めっき層60を有する面の反対側の面)にダイシングテープ93を貼付する。そして、例えば
図4(e)に示した仮想の2点鎖線に沿って、リードフレーム120に対してブレードを相対的に移動させて、パッケージ部材50及びリードフレーム120を切断する(即ち、ダイシングを行う。)。つまり、パッケージ部材50及びリードフレーム120を複数のGaAsホール素子10の各々ごとにダイシングして個片化する。
図5(d)に示すように、ダイシングされたリードフレームは、リード端子20となる。
【0037】
以上の工程を経て、
図1(a)〜(d)に示したホールセンサ100が完成する。
図6は、本発明の実施形態に係るホールセンサ装置200の構成例を示す断面図である。ホールセンサ100が完成した後は、例えば
図6に示すように配線基板250を用意し、この配線基板250の一方の面にホールセンサ100を実装する。この実装工程では、例えば、各リード端子22〜25のうち、パッケージ部材50から露出し且つ外装めっき層60で覆われている裏面を、ハンダ70を介して配線基板250の配線パターン251に接続する。このハンダ付けは、例えばリフロー方式で行うことができる。
【0038】
リフロー方式は、配線パターン251上にハンダペーストを塗布(即ち、印刷)し、その上に外装めっき層60が重なるように配線基板250上にホールセンサ100を配置し、この状態でハンダペーストに熱を加えてハンダを溶かす方法である。実装工程を経て、
図6に示すように、ホールセンサ100と、ホールセンサ100が取り付けられる配線基板250と、ホールセンサ100の各リード端子22〜25を配線基板250の配線パターン251に電気的に接続するハンダ70と、を備えたホールセンサ装置200が完成する。
【0039】
〔第1実施形態の効果〕
本発明の第1実施形態は、以下の効果を奏する。
(1)活性層12のうち、接地電極として使用される第1の電極13aと接する領域は、第1の活性領域121ではなく、第1の活性領域121よりも幅広の第2の活性領域122である。これにより、第1の電極13aと活性層12との接触領域の面積を大きくすることができるので、この接触領域を流れるリーク電流の電流密度を小さくすることができる。
【0040】
(2)また、活性層12の第1の端部12aのみならず、活性層12の第2の端部12b、第3の端部12c及び第4の端部12dも、第1の端部12aと同様に幅が異なる2つの活性領域を有する。そして、これら第2の端部12b、第3の端部12c及び第4の端部12dにおいても、幅広の活性領域が電極と接している。例えば、
図3(b)に示したように、第2の端部12bでは、第3の活性領域123ではなく、第4の活性領域124に第2の電極13bが接している。第3の端部12cでは、第5の活性領域125ではなく、第6の活性領域126に第3の電極13cが接している。第4の端部12dでは、第7の活性領域127ではなく、第8の活性領域128に第4の電極13dが接している。
これにより、第1の電極13aではなく、第2の電極13b、第3の電極13c又は第4の電極13dを接地電極として使用する場合でも、この接地電極と活性層との接触領域の面積を大きくすることができ、この接触領域を流れるリーク電流の電流密度を小さくすることができる。
【0041】
(3)上記したように、活性層と電極との接触領域を流れるリーク電流の電流密度を小さくすることができるので、この接触領域の接触状態が変化することを抑制することができる。これにより、アイランドレス構造のホールセンサであって、ホール素子を小型薄型化した場合でも、活性層と電極との接触領域に大きい電流密度のリーク電流が流れにくく、リーク電流に起因するオフセット電圧の変化量が小さいホールセンサを提供することができる。このホールセンサでは、リーク電流に起因するオフセット電圧の変化量を小さくすることができるので、ホール素子に印加する磁場をより正確に測定することができる。
【0042】
(4)また、アイランドレス構造のホールセンサ100において、GaAsホール素子の基板に抵抗率が5.0×10
7Ω・cm以上の高抵抗のGaAs基板を用いている。これにより、ホールセンサ100を配線基板250に取り付ける際に、例えば、電源電位に接続されるリード端子(即ち、電源端子)22下からGaAsホール素子10の下方までハンダ70がはみ出した場合に流れるリーク電流の増大を抑えることができる。つまり、例えば
図7に示すように、電源端子22→金属細線31→第3の電極13c→活性層12→第1の電極13a→金属細線33→リード端子24の方向に電流を流した場合に、ホール素子10の厚みが薄い場合は、電源端子22→ハンダ70→ホール素子10→金属細線33→リード端子24の経路でリーク電流が流れやすくなる。しかし、本発明の実施形態は、GaAsホール素子の基板に高抵抗のGaAs基板を用いているので、このリーク電流の増大をさらに抑制することができる。
【0043】
(5)本発明の実施形態は、リーク電流が流れやすくなるGaAsホール素子の基板が0.1mm以下において特に好適に用いることができる。アイランドレス構造のホールセンサにおいてGaAsホール素子を小型薄型化した場合でも、リーク電流の増大を防止することができる。
【0044】
〔変形例〕
上記の第1実施形態では、
図1(a)〜(c)に示したように、GaAs基板11の電極13a〜13dが設けられている面とは反対側の面(例えば、裏面)側が、保護層40で覆われている場合について説明した。しかしながら、本発明において、保護層40は無くてもよい。
【0045】
図8は、第1実施形態の変形例に係るホールセンサ100Aを示す断面図である。例えば
図8に示すように、GaAs基板11の裏面側は、ホールセンサ100Aの外部に露出していてもよい。また、この場合、GaAs基板11の裏面は、パッケージ部材50の上記同一の面(例えば、裏面)と、面一に(すなわち、段差なく)配置されていてもよい。このような構成であっても、上記した第1実施形態の効果(1)〜(5)と同様の効果を奏する。
【0046】
なお、この変形例は、後述の第2、第3実施形態にも適用してよい。すなわち、第2、第3実施形態においても、GaAs基板11の裏面に保護層40は無くてもよく、GaAs基板11の裏面が外部に露出していてもよい。また、GaAs基板11の外部に露出した裏面は、パッケージ部材50の裏面と面一に配置されていてもよい。
【0047】
<第2実施形態>
〔構成〕
図9は、本発明の第2実施形態に係るGaAsホール素子210の構成例を示す平面図である。
図9に示すように、このGaAsホール素子210では、第1の電極13aの面積をS1、第1の電極13aと活性層12との接触領域の面積(すなわち、接触面積)をC1としたときに、C1/S1が15%以上となっている。第1の電極13aと活性層12との接触面積が大きいので、第1の電極13aと活性層12との接触面積を流れるリーク電流の電流密度が小さくなる。C1/S1は大きいほど好ましく、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上であり、特に好ましくは100%である。
【0048】
同様に、第2の電極13bの面積をS2、第2の電極13bと活性層12との接触面積をC2としたときに、C2/S2が15%以上となっている。C2/S2は大きいほど好ましく、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上であり、特に好ましくは100%である。
また、第3の電極13cの面積をS3、第3の電極13cと活性層12との接触面積をC3としたときに、C3/S3が15%以上となっている。C3/S3は大きいほど好ましく、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上であり、特に好ましくは100%である。
また、第4の電極13dの面積をS4、第4の電極13dと活性層12との接触面積をC4としたときに、C4/S4が15%以上となっている。C4/S4は大きいほど好ましく、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上であり、特に好ましくは100%である。
【0049】
〔第2実施形態の効果を示す実験データ〕
電極13と活性層12との接触面積の影響を調べるために下記(A)〜(D)の手順で実験を行った。
(A):C1/S1が1%〜20%のホール素子を準備する。
(B):それぞれのホール素子で、対向する電極間(第1の電極13aと第3の電極13cとの間)に6Vの電圧を印加する。そして磁場が印加されていない状態で、第2の電極13bと第4の電極13d間のホール起電力Vu(即ちオフセット電圧)を測定する。
【0050】
(C):隣り合う電極間(第1の電極13aと第2の電極13b)に80Vの電圧を印加し、第1の電極13a−活性層12−第2の電極13b間に大電流を流す。これにより、接地電極として使用される第1の電極13aと活性層12との間にリーク電流が擬似的に流れた状態を作る。
(D):(B)と同様に、第1の電極13aと第3の電極13cとの間に6Vの電圧を印加してオフセット電圧を測定し、(B)で測定したオフセット電圧との変化量ΔVuを測定する。
【0051】
図10は(A)〜(D)を行ったときの実験結果を示すグラフである。
図10の横軸はC1/S1(接触面積/電極面積)を示し、縦軸はオフセット電圧の変化量ΔVuを示す。
図10に示すように、C1/S1(接触面積/電極面積)が15%を超えると、ΔVuが小さくなる。即ち、C1/S1が15%以上のホール素子は、大きいリーク電流が流れても活性層と電極との接触状態が変化しにくいことが分かる。
【0052】
〔第2実施形態の効果〕
本発明の第2実施形態は、以下の効果を奏する。
(1)接地電極である第1の電極13aの面積をS1とし、第1の電極13aと活性層12との接触面積をC1としたとき、S1に対するC1の割合(C1/S1)は15%以上となっている。第1の電極13aと活性層12との接触面積は大きく、第1の電極13aと活性層12との接触領域を流れるリーク電流の電流密度を小さくすることができる。その結果、
図10に示したようにΔVuを小さくすることができる。
したがって、アイランドレス構造のホールセンサであって、ホール素子を小型薄型化した場合でも、活性層と電極との接触領域に大きい電流密度のリーク電流が流れにくく、リーク電流に起因するオフセット電圧の変化量が小さいホールセンサを提供することができる。
【0053】
(2)また、C1/S1と同様に、C2/S2、C3/S3、C4/S4の各割合もそれぞれ15%以上となっている。これにより、第1の電極13aではなく、第2の電極13b、第3の電極13c又は第4の電極13dを接地電極として使用する場合でも、この接地電極と活性層12との接触面積は大きく、電極と活性層との接触領域を流れるリーク電流の電流密度を小さくすることができる。その結果、
図10に示したようにΔVuを小さくすることができる。
【0054】
<第3実施形態>
本発明では、上記第1実施形態で説明したGaAsホール素子10の特徴と、第2実施形態で説明したGaAsホール素子210の特徴とを組み合わせてもよい。第3実施形態では、このような態様として2つの構成例を示す。
【0055】
〔第1の構成例〕
図11は、本発明の第3実施形態に係るGaAsホール素子310Aの構成例(第1の構成例)を示す平面図である。詳しくは、
図11(a)は活性層12を示す平面図であり、
図11(b)は活性層12と電極13a〜13dとを示す平面図である。
図11に示すように、このGaAsホール素子310Aでは、接地電極として使用される第1の電極13aは、第1の活性領域121ではなく、第1の活性領域121よりも幅広の第2の活性領域122と接している。また、GaAsホール素子310Aでは、C1/S1が15%以上100%未満となっている。
【0056】
同様に、第2の電極13bは、第3の活性領域123ではなく、第4の活性領域124と接している。C2/S2は、15%以上100%未満となっている。また、第3の電極13cは、第5の活性領域125ではなく、第6の活性領域126と接している。C3/S3は、15%以上100%未満となっている。また、第4の電極13dは、第7の活性領域127ではなく、第8の活性領域128と接している。C4/S4は、15%以上100%未満となっている。
【0057】
〔第2の構成例〕
図12は、本発明の第3実施形態に係るGaAsホール素子310Bの構成例(第2の構成例)を示す平面図である。この第2の構成例において、上記した第1の構成例と異なる点は、C1/S1、C2/S2、C3/S3、C4/S4の各割合がそれぞれ100%となっている点である。それ以外の構成は、第1の構成例と同じである。
【0058】
〔第3実施形態の効果〕
本発明の第3実施形態によれば、第1実施形態の効果と同様の効果を奏し、第2実施形態の効果と同様の効果も奏する。
<その他>
本発明は、以上に記載した各実施形態とその変形例に限定されうるものではない。当業者の知識に基づいて各実施形態とその変形例に設計の変更等を加えることが可能であり、そのような変更等を加えた態様も本発明に含まれる。