(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記監視対象の半導体電力変換装置の外部において音が発生した場合に当該音を前記音検知部よりも先に採取する位置に外部音検知部が更に設置されることを特徴とする請求項1記載の半導体電力変換装置の故障部位特定方法。
前記音データについて周波数成分毎のスペクトル値が計算され、当該周波数成分毎のスペクトル値が用いられて前記監視対象の半導体電力変換装置における異常・故障の種類が識別されることを特徴とする請求項1記載の半導体電力変換装置の故障部位特定方法。
前記監視対象の半導体電力変換装置の外部において音が発生した場合に当該音を前記音検知部よりも先に採取する位置に設置される外部音検知部を更に有することを特徴とする請求項4記載の半導体電力変換装置の故障部位特定装置。
前記音データについて周波数成分毎のスペクトル値を計算すると共に当該周波数成分毎のスペクトル値を用いて前記監視対象の半導体電力変換装置における異常・故障の種類を識別する手段を更に有することを特徴とする請求項4記載の半導体電力変換装置の故障部位特定装置。
前記音データが前記所定の音圧レベル以上である場合であっても、当該の音データに関する音が、前記監視対象の半導体電力変換装置の外部において音が発生した場合に当該音を前記音検知部よりも先に採取する位置に設置された外部音検知部によって採取されたものであるときは、当該の音データに関する音については前記音が発生した部位を特定する処理を行わないことを特徴とする請求項7記載の半導体電力変換装置の故障部位特定プログラム。
前記音データについて周波数成分毎のスペクトル値を計算すると共に当該周波数成分毎のスペクトル値を用いて前記監視対象の半導体電力変換装置における異常・故障の種類を識別する処理を更にコンピュータに行わせることを特徴とする請求項7記載の半導体電力変換装置の故障部位特定プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特に大容量の半導体電力変換装置では、半導体素子の個数が多くなるに従ってこれら半導体素子の各々に個別に取り付けられるセンサの個数が多くなると共に回路が複雑になってしまうという問題がある。さらに、半導体電力変換装置の設置後にセンサ回路を追加することは困難であるために予備の配線を予め準備しておく必要があるなどの事情も相俟って回路が一層複雑になってしまうという問題がある。したがって、センサが個別に取り付けられるという従来の手法は、半導体電力変換装置の異常・故障の判別手法として汎用性及び適応性が高いとは言い難い。
【0007】
また、センサが取り付けられていない半導体電力変換装置では、異常・故障が発生した場合には、当該異常・故障の発生部位を特定するために多大な手間と時間とが必要とされ、延いては、半導体電力変換装置の稼働率が低下するという問題がある。したがって、センサが取り付けられない場合には、半導体電力変換装置の異常・故障への対応を効率良く迅速に行うことができず、延いては半導体電力変換装置の有効活用が阻害されてしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、半導体素子や電子部品の個数に影響されることなく半導体電力変換装置における異常・故障の発生を検知することができ、尚且つ、異常・故障の発生の検知と同時に当該異常・故障の発生部位を特定することができる半導体電力変換装置の故障部位特定方法、故障部位特定装置、及び故障部位特定プログラム、並びに、故障部位特定機能を備える半導体電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、半導体電力変換装置の半導体スイッチング素子を故意に故障させながら音を採取する試験を行う中で、半導体素子に不具合が発生して半導体電力変換装置が故障停止する前に、通常の動作音(言い換えると、正常な状態での動作時の音)とは異なる音が発生することを知見した。なお、半導体素子の不具合の種類や程度などによって異常音の発生から半導体電力変換装置が故障停止するまでの時間は特定の時間に限定されるものではないが、本発明者らの試験では例えば半導体電力変換装置が故障停止するおよそ9秒前から6秒前の間に複数回の異音が発生した事例があった。
【0010】
本発明は上記知見に基づくものであり、本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定方法は、監視対象の半導体電力変換装置から発生する音が複数の音検知部によって採取されて音データが取得され、当該音データが所定の音圧レベル以上である場合に音検知部のそれぞれにおける音の採取に関する計測時間と共に音データが記録され、これら音データの中から二個が選択され組み合わされて作成される音データの対毎に計測時間の時間差が算出され、前記音データの対毎の時間差に基づいて音が発生した部位が特定されるようにしている。
【0011】
また、本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定装置は、監視対象の半導体電力変換装置から発生する音を採取して音データを出力する複数の音検知部と、音データが所定の音圧レベル以上である場合に音検知部のそれぞれにおける音の採取に関する計測時間と共に音データを記録する手段と、複数の音データの中から二個が選択され組み合わされて作成される音データの対毎に計測時間の時間差を算出し、さらに、前記音データの対毎の時間差に基づいて音が発生した部位を特定する手段とを有するようにしている。
【0012】
また、本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定プログラムは、監視対象の半導体電力変換装置から発生する音が複数の音検知部によって採取されて取得された音データが所定の音圧レベル以上である場合に音検知部のそれぞれにおける音の採取に関する計測時間と共に音データを記録する処理と、複数の音データの中から二個が選択され組み合わされて作成される音データの対毎に計測時間の時間差を算出する処理と、前記音データの対毎の時間差に基づいて音が発生した部位を特定する処理とをコンピュータに行わせるようにしている。
【0013】
したがって、これらの半導体電力変換装置の故障部位特定方法、故障部位特定装置、及び故障部位特定プログラムによると、半導体電力変換装置から発生する音を採取することによって半導体電力変換装置における異常・故障の発生の検知が行われるようにしているので、半導体電力変換装置の半導体素子や電子部品の各々に個別に取り付けられるセンサを必要とすることなく半導体電力変換装置における異常・故障の発生の検知が行われる。
【0014】
これらの半導体電力変換装置の故障部位特定方法、故障部位特定装置、及び故障部位特定プログラムによると、さらに、半導体電力変換装置から発生する音を採取することによって半導体電力変換装置における異常・故障の発生の検知と同時に当該異常・故障の発生部位の特定が行われるようにしているので、半導体電力変換装置の半導体素子や電子部品の各々に個別に取り付けられるセンサを必要とすることなく半導体電力変換装置における異常・故障の発生の検知と同時に当該異常・故障の発生部位の特定が行われる。
【0015】
また、本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定方法、故障部位特定装置、及び故障部位特定プログラムは、音の採取が、監視対象の半導体電力変換装置が起動する際,停止する際,出力電圧や出力電流を変更する際,またはスイッチング周波数を変更する際のうちの少なくともいずれか一つで行われるようにして
いる。
したがって、通常の連続的・継続的で定常的な動作をしている時には顕在化しない異常音が特別の動作によって顕在化して採取される。
【0016】
また、本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定方法は監視対象の半導体電力変換装置の外部において音が発生した場合に当該音を音検知部よりも先に採取する位置に外部音検知部が更に設置されるようにしても良く、また、本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定装置は監視対象の半導体電力変換装置の外部において音が発生した場合に当該音を音検知部よりも先に採取する位置に設置される外部音検知部を更に有するようにしても良く、また、本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定プログラムは音データが所定の音圧レベル以上である場合であっても当該の音データに関する音が監視対象の半導体電力変換装置の外部において音が発生した場合に当該音を音検知部よりも先に採取する位置に設置された外部音検知部によって採取されたものであるときは当該の音データに関する音については音が発生した部位を特定する処理を行わないようにしても良い。これらの場合には、半導体電力変換装置の外部で発生した音であって半導体電力変換装置における異常・故障とは関係のない音が分析処理から除外される。
【0017】
また、本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定方法は音データについて周波数成分毎のスペクトル値が計算されて当該周波数成分毎のスペクトル値が用いられて監視対象の半導体電力変換装置における異常・故障の種類が識別されるようにしても良く、また、本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定装置は音データについて周波数成分毎のスペクトル値を計算すると共に当該周波数成分毎のスペクトル値を用いて監視対象の半導体電力変換装置における異常・故障の種類を識別する手段を更に有するようにしても良く、また、本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定プログラムは音データについて周波数成分毎のスペクトル値を計算すると共に当該周波数成分毎のスペクトル値を用いて監視対象の半導体電力変換装置における異常・故障の種類を識別する処理を更にコンピュータに行わせるようにしても良い。これらの場合には、半導体電力変換装置における異常・故障の発生部位の特定に加えて当該異常・故障の種類が識別される。
【0018】
また、本発明の故障部位特定機能を備える半導体電力変換装置は、上述の半導体電力変換装置の故障部位特定装置を備えるようにしている。したがって、この半導体電力変換装置によると、上述の半導体電力変換装置の故障部位特定装置によって奏される作用を発揮し得る半導体電力変換装置が実現される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定方法、故障部位特定装置、及び故障部位特定プログラムや故障部位特定機能を備える半導体電力変換装置によれば、半導体電力変換装置の半導体素子や電子部品の各々に個別に取り付けられるセンサを必要とすることなく半導体電力変換装置における異常・故障の発生の検知を行うことができるので、半導体電力変換装置の半導体素子や電子部品の個数に関係なく所定の個数のセンサによって半導体電力変換装置における異常・故障の発生を検知することが可能であり、多数のセンサを必要とする仕組みと比べて整備費用の低減と装置の小型化とを実現し、延いては半導体電力変換装置の異常・故障の検出手法としての汎用性及び適応性の向上を図ることが可能になる。
【0020】
本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定方法、故障部位特定装置、及び故障部位特定プログラムや故障部位特定機能を備える半導体電力変換装置によれば、さらに、半導体電力変換装置の半導体素子や電子部品の各々に個別に取り付けられるセンサを必要とすることなく半導体電力変換装置における異常・故障の発生の検知と同時に当該異常・故障の発生部位の特定を行うことができるので、半導体電力変換装置の半導体素子や電子部品の個数に関係なく所定の個数のセンサによって半導体電力変換装置における異常・故障の発生部位を特定することが可能であると共に、半導体電力変換装置の異常・故障への対応を効率良く迅速に行うことが可能になり、延いては半導体電力変換装置の稼働率を向上させて半導体電力変換装置の異常・故障の検出・判別手法としての有用性の向上を図ることが可能になる。
【0021】
また、本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定方法、故障部位特定装置、及び故障部位特定プログラムや故障部位特定機能を備える半導体電力変換装置は、装置が起動,停止,出力電圧や出力電流を変更,またはスイッチング周波数を変更する際に音の採取が行われるようにし
ており、通常の連続的・継続的で定常的な動作をしている時には顕在化しない異常音を特別の動作によって顕在化させて採取することができるので、半導体電力変換装置における異常の捕捉及び当該異常に係る部位の特定、更に言えば異常の徴候の捕捉及び当該異常の徴候に係る部位の特定を行うことができ、半導体電力変換装置の故障停止の未然防止を行い且つ異常部位の特定を行うことが可能になり、延いては半導体電力変換装置の異常・故障の検出手法としての有用性及び信頼性の更なる向上を図ることが可能になる。
【0022】
また、本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定方法、故障部位特定装置、及び故障部位特定プログラムや故障部位特定機能を備える半導体電力変換装置は、装置の外部で発生した音を音検知部よりも先に採取する位置に外部音検知部が更に設置されるようにした場合には、半導体電力変換装置における異常・故障とは関係のない音を分析処理から除外することができるので、異常・故障の発生部位の特定処理の効率及び精度を向上させることが可能になり、延いては半導体電力変換装置の異常・故障の検出手法としての有用性及び信頼性の更なる向上を図ることが可能になる。
【0023】
また、本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定方法、故障部位特定装置、及び故障部位特定プログラムや故障部位特定機能を備える半導体電力変換装置は、音データの周波数成分毎のスペクトル値が用いられて異常・故障の種類が識別されるようにした場合には、半導体電力変換装置における異常・故障の発生部位の特定に加えて当該異常・故障の種類を識別することができるので、半導体電力変換装置の異常・故障の検出手法としての有用性の更なる向上を図ることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0026】
なお、以下の説明において、単位であることを明確にするために単位としての記号や文字を〔 〕で括って表記する場合がある。
【0027】
図1乃至
図3に、本発明の半導体電力変換装置の故障部位特定方法、故障部位特定装置、及び故障部位特定プログラムの実施形態の一例を示す。
【0028】
本実施形態の半導体電力変換装置の故障部位特定方法は、監視対象の半導体電力変換装置から発生する音が複数の音検知部によって採取されて音データが取得され(S1)、当該音データが所定の音圧レベル以上である場合に音検知部のそれぞれにおける音の採取に関する計測時間と共に音データが記録され(S2,S3,S4)、これら音データの中から二個が選択され組み合わされて作成される音データの対毎に計測時間の時間差が算出されると共に当該時間差に音速が掛け合わされて距離差に換算され、前記音データの対毎の距離差に基づいて音が発生した部位が特定され(S5)、また、音データに対してフーリエ変換処理若しくはウェーブレット変換処理が施されて周波数成分毎のスペクトル値が計算されると共に当該周波数成分毎のスペクトル値が用いられて監視対象の半導体電力変換装置における異常・故障の種類が識別される(S6)ようにしている(
図1参照)。
【0029】
本実施形態の半導体電力変換装置の故障部位特定装置10は、監視対象の半導体電力変換装置から発生する音を採取して音データを出力する複数の音検知部1と、音データが所定の音圧レベル以上である場合に音検知部1のそれぞれにおける音の採取に関する計測時間と共に音データを記録する手段としての音圧検査部2と、複数の音データの中から二個が選択され組み合わされて作成される音データの対毎に計測時間の時間差を算出すると共に当該時間差に音速を掛け合わせて距離差に換算し、さらに、前記音データの対毎の距離差に基づいて音が発生した部位を特定する手段としての部位特定部4と、音データに対してフーリエ変換処理若しくはウェーブレット変換処理を施して周波数成分毎のスペクトル値を計算すると共に当該周波数成分毎のスペクトル値を用いて監視対象の半導体電力変換装置における異常・故障の種類を識別する手段としての種類識別部5とを有する(
図2参照)。
【0030】
そして、半導体電力変換装置の故障部位特定方法の実施にあたり、初期設定として、計測時間tmの値が0にされると共に記憶部7に記憶されている音検知部の識別子と計測時間tmとの組み合わせによって構成される検知部計測時間データが消去される(S0)。
【0031】
計測時間tmは、監視対象の半導体電力変換装置において異常・故障が発生した場合に複数の音検知部1のそれぞれで時間差で採取される音を或る一つの(厳密には、或る一つと想定される)異常・故障に起因して発生したものであると区別するために利用される変数である。
【0032】
その上で、半導体電力変換装置の故障部位特定方法の実施として、まず、半導体電力変換装置から発生する音の採取が行われて音データの取得が行われる(S1)。
【0033】
具体的には、音採取機能を備える音検知部が監視対象の半導体電力変換装置に対して複数設置され、前記半導体電力変換装置から発生する音が各音検知部の音採取機能によって採取される(言い換えると、音の音圧信号が採取される、或いは、音の音圧レベルが測定される)。
【0034】
図2に示す例では、一台の半導体電力変換装置から発生する音を採取するために、四個の音検知部1A,1B,1C,1Dが設置される場合(言い換えると、一つの半導体電力変換装置の故障部位特定装置10が四個の音検知部1A,1B,1C,1Dを備える場合)を例として示している。
【0035】
ここで、本発明の説明において、複数の音検知部1A,1B,1C,1Dのうちのいずれであるかを特定する必要がないときや、複数の音検知部1A,1B,1C,1Dを一つの集まりとして取り扱うときは、単に「音検知部1」と表記する。
【0036】
なお、本発明においては、半導体電力変換装置の内部における異常・故障の発生部位を特定するためには、二個以上の音検知部1が設置されれば良いものの、三個以上の音検知部1が設置されることが好ましく、四個以上の音検知部1が設置されることが一層好ましく、また、五個以上の音検知部1が設置されるようにしても良い。
【0037】
音検知部1の音採取機能を構成する具体的な仕組みは、特定の機器や装置に限定されるものではなく、半導体電力変換装置から発生する動作音(ただし、動作音の発生に起因したり関連したりする種々の物理量を含む)を採取(言い換えると、集音,収音)することに適切な機器や装置が適宜選択される。音検知部1の音採取機能を構成する具体的な仕組みとして、例えば音センサ(マイクロホン)や振動センサ(振動の変位検出型センサ,速度検出型センサ,若しくは加速度検出型センサ)が用いられ得る。
【0038】
音検知部1の設置の態様は、特定の態様に限定されるものではなく、監視対象の半導体電力変換装置から発生する動作音を採取(集音,収音)し得るように適切な場所や設置・固定の仕方などが適宜選択される。なお、音検知部1は、半導体電力変換装置の筐体の外面に接触して設置されるようにしても良く、或いは、半導体電力変換装置の内部に設置されるようにしても良い。
【0039】
なお、音検知部1は、監視対象の半導体電力変換装置における異常・故障の発生部位の特定の精度の向上を図るために、音検知部1同士は監視対象の半導体電力変換装置の筐体外面や内部において可能な限り離れて設置されることが好ましい。音検知部1は、具体的には例えば、監視対象の半導体電力変換装置の筐体を直方体と捉えたときの各頂点のうちの少なくとも一部の頂点に設置されることが好ましい。
【0040】
音検知部1は、音採取機能に加え、増幅機能を必要に応じて備え、また、A/D変換機能を備えるものとして構成される。
【0041】
そして、各音検知部1により、監視対象の半導体電力変換装置から発生する音が音響(言い換えると、音圧、或いは、音圧レベル)として採取され、必要に応じて増幅され、また、デジタル信号に変換された上で出力される。ここで、音検知部1から出力されるデジタル信号のことを「音データ」と呼ぶ。
【0042】
なお、音検知部1が音採取機能,必要に応じての増幅機能,A/D変換機能,及び信号出力機能を一体の機器・装置として備えるようにすることは必須の要件ではなく、これらの機能を有する別々の機器・装置の集まり・組み合わせとして音検知部1が構成されるようにしても良い。
【0043】
また、半導体電力変換装置から発生する音の採取は、半導体電力変換装置が通常の動作(言い換えると、連続的・継続的で定常的な動作)をしている時でも良く、或いは、特定の動作をしている時でも良い。
【0044】
音の採取が行われる時の、半導体電力変換装置の特定の動作としては、具体的には例えば、以下のものが挙げられる。
【0045】
ア)起動時
監視対象の半導体電力変換装置が起動する際の動作音が採取される。
【0046】
イ)停止時
監視対象の半導体電力変換装置が停止する際の動作音が採取される。
【0047】
ウ)出力変更時
監視対象の半導体電力変換装置が出力電圧や出力電流を変更する際の動作音が採取される。
【0048】
エ)スイッチング周波数変更時
監視対象の半導体電力変換装置がスイッチング周波数を変更する際の動作音が採取される。
【0049】
次に、S1の処理によって取得された音データが所定の音圧レベル以上であるか否かの判断が行われる(S2)。
【0050】
具体的には、S1の処理において各音検知部1から出力された音データが音圧検査部2に入力され、当該音圧検査部2により、音データのそれぞれが、予め定められた音圧レベルに関する閾値と比較される。
【0051】
音圧レベルに関する閾値は、監視対象の半導体電力変換装置において異常・故障の発生に伴って異常音が発生したか否かを判断するための閾値である。
【0052】
音圧レベルに関する閾値は、特定の値に限定されるものではなく、監視対象の半導体電力変換装置において異常・故障が生じた際に発生する音の大きさ(言い換えると、音圧)に対応する適当な値に、事前の分析・検討結果などを踏まえるなどして適宜設定される。
【0053】
そして、各音検知部1から出力された音データのうちのいずれもが音圧レベルに関する閾値未満である場合には(S2:No)、S4の処理に進む。
【0054】
なお、S1及びS2の処理は、例えば、音検知部1からの音データの出力ピッチに合わせて(言い換えると、音検知部1からの音データの出力をトリガーとして)繰り返される。
【0055】
一方、各音検知部1から出力された音データのうちのいずれかが音圧レベルに関する閾値以上である場合には(S2:Yes)、監視対象の半導体電力変換装置において異常・故障の発生に伴って異常音が発生したと判断された上で、S3の処理に進む。
【0056】
そして、音圧レベルに関する閾値以上の音データを出力した音検知部の識別子、及び、計測時間が、記憶させられる(S3)。
【0057】
具体的には、音圧検査部2により、音圧レベルに関する閾値以上の音データを出力した音検知部1の識別子と、計測時間tmの値とが、相互に対応づけられて記憶部7に記憶させられる。
【0058】
計測時間tm〔s や μs など〕は、各音検知部1において音が採取された実際の時刻の差分として算出されるようにしても良く、或いは、S0の処理において計測時間tmの値が0にされてからS2の処理において最初に「Yes」の判断がされた時から各音検知部1において音が採取された時までの経過時間でも良い。なお、最初に「Yes」の判断がされたときの音の採取の時が0〔s〕である。
【0059】
つまり、計測時間tmは、複数の音検知部1のうちのいずれかで音圧レベルに関する閾値以上の音データに係る音が最初に採取された時(時刻)から他の音検知部1のそれぞれで音圧レベルに関する閾値以上の音データに係る音が採取された時(時刻)までの経過時間である。
【0060】
S3の処理により、音圧レベルに関する閾値以上の音データが出力された音検知部1の識別子と、当該音検知部1における前記音データに係る音の採取に関する計測時間tmの値との組み合わせによって構成される検知部計測時間データが整理される。
【0061】
次に、計測時間の値が所定の時間より大きいか否かの判断が行われる(S4)。
【0062】
具体的には、S2の処理において音圧検査部2によって記憶部7に記憶させられた計測時間tmの値が計測時間判断部3によって読み込まれ、当該計測時間判断部3により、前記計測時間tmの値が予め定められた計測時間に関する閾値と比較される。
【0063】
計測時間に関する閾値は、複数の音検知部1で時間差で採取される複数の音が或る一つの(厳密には、或る一つと想定される)異常・故障の発生によるものであるか否かを判断するための閾値である。
【0064】
計測時間に関する閾値は、特定の値に限定されるものではなく、監視対象の半導体電力変換装置の一箇所から異常音が発生した場合に当該の半導体電力変換装置に設置された音検知部1によって採取される音の時間差として想定される最大値を踏まえるなどして、適当な値に適宜設定される。
【0065】
なお、音検知部1によって採取される音の時間差の最大値は、半導体電力変換装置内の一点(つまり、異常・故障の発生位置)から各音検知部1までの距離差の最大値に依存し、音速並びに半導体電力変換装置の大きさ及び各音検知部1の設置位置とを考慮することによって想定され得る。その上で計測時間に関する閾値は、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、0.01秒程度に設定されることが考えられる。
【0066】
そして、記憶部7に記憶された計測時間tmの値が計測時間に関する閾値以下である場合には(S4:No)、S1の処理に戻る。
【0067】
一方、計測時間tmの値が計測時間に関する閾値より大きい場合には(S4:Yes)、S5の処理に進む。
【0068】
そして、S3の処理によって整理された検知部計測時間データが用いられて半導体電力変換装置における異常・故障の発生部位の特定が行われる(S5)。
【0069】
具体的には、S3の処理において記憶部7に記憶された音検知部1の識別子と計測時間tmの値との組み合わせによって構成される検知部計測時間データが部位特定部4によって読み込まれる。このとき、記憶部7に記憶されている検知部計測時間データの全てが読み込まれる。
【0070】
そして、部位特定部4により、読み込まれた全ての検知部計測時間データの中から二個が選択され組み合わされて作成される一対の検知部計測時間データの対毎(言い換えると、全ての検知部計測時間データから二個を選択する組み合わせ毎)に、計測時間の時間差が算出される。
【0071】
本実施形態では、具体的には、四個の音検知部1A,1B,1C,1Dが設置されているので、これら四個の音検知部1のそれぞれに関する検知部計測時間データが存在する可能性がある。そして、四個の検知部計測時間データの中から二個を選択する組み合わせは、各検知部計測時間データの種別を音検知部1の符号によって表すと、1A−1B,1A−1C,1A−1D,1B−1C,1B−1D,及び1C−1Dの合計六個になる。
【0072】
なお、音検知部1によっては異常音を採取していないこともあり得るので、必ずしも、設置されている全ての音検知部1に関して検知部計測時間データが存在しているとは限らない。
【0073】
また、計測時間の時間差は、記憶部7に記憶されている全ての検知部計測時間データから二個を選択する組み合わせ、言い換えると、設置されている全ての音検知部1から二個を選択する組み合わせとして考えられる組み合わせの全てについて算出される必要は必ずしもなく、半導体電力変換装置における異常・故障の発生部位であって異常音の発生位置(謂わば、音源)の特定に必要とされる組み合わせについてのみ算出されるようにしても良い。
【0074】
上述の処理で算出される検知部計測時間データの対毎の時間差は、監視対象の半導体電力変換装置において離間した位置(具体的には例えば、音検知部1Aと音検知部1B,音検知部1Aと音検知部1C,音検知部1Bと音検知部1Cなど)で取得された一対の音データにおける時間のずれ量であり、すなわち、異常音の発生位置(音源)から各音検知部1までの音の到達時間の差である。
【0075】
部位特定部4により、さらに、検知部計測時間データの対毎の時間差と音速とが掛け合わされて異常音の発生位置から各音検知部1までの距離差(具体的には例えば、異常音の発生位置から音検知部1Aまでの距離と異常音の発生位置から音検知部1Bまでの距離との差)が算出される。
【0076】
以上により、音検知部1の対毎に、異常音の発生位置がどちらの音検知部1に近いかが求められると共に、異常音の発生位置から各音検知部1までの距離差が求められる。具体的には例えば、音検知部1Aと音検知部1Bとの組み合わせについて、異常音の発生位置が音検知部1Aと音検知部1Bとのどちらに近いかが求められると共に、異常音の発生位置から音検知部1Aまでの距離と異常音の発生位置から音検知部1Bまでの距離との差が求められる。
【0077】
これにより、各音検知部1の間の距離は既知であることも考慮すると、音検知部1の対毎に、既知の間隔で設置されている二個の音検知部1のうちの一方に近く且つこれら二個の音検知部1からの距離の差が一定であるという条件を満たす範囲に異常音の発生位置は存在すると特定される。ここで、前記範囲のことを「音発生位置範囲」と呼ぶ。
【0078】
そして、音検知部1の対毎に音発生位置範囲が求められる結果として複数の音発生位置範囲が求められ、これら複数の音発生位置範囲が重複する部分に異常・故障の発生部位は存在しているとして位置が特定される。
【0079】
なお、音検知部1の設置個数によっては音発生位置範囲が重複する部分が複数求められたり拡がりを有する範囲として求められたりする場合も考えられる。この場合には、音発生位置範囲が重複する部分が監視対象の半導体電力変換装置の外側であるときは、当該重複する部分は監視対象の半導体電力変換装置の異常・故障の発生部位ではあり得ないとして除外し、異常・故障の発生部位が存在する可能性のある範囲が絞り込まれるようにしても良い。
【0080】
そして、部位特定部4により、音発生位置範囲が重複する部分に関する情報(データ)が表示部6へと出力される。
【0081】
ここで、本発明における異常・故障の発生部位の特定は、例えば、故障した半導体素子が特定され得る程度の細かさ(言い換えると、分解能)でも良く、或いは、故障した半導体素子の位置が半導体電力変換装置の「右上手前側」のように大まかな部位で特定され得る程度の細かさ(分解能)でも良く、さらに言えば、故障した半導体素子の位置が半導体電力変換装置の「上側」のように大まかな範囲で特定され得る程度でも良い。
【0082】
表示部6により、上記情報(データ)に基づいて、監視対象の半導体電力変換装置における異常・故障の発生部位が、例えば、半導体電力変換装置の輪郭などが現された図形上に表示されたり、上下・左右・奥行きなどの位置を表す用語と寸法との組み合わせによって表示されたりする。
【0083】
ここで、異常・故障の発生部位を特定する処理は、各音検知部1からの音データの出力に合わせて同時的・即時的に行われるようにしても良く、或いは、各音検知部1から出力された音データが適当な記憶媒体などに一旦記憶されるなどして当該音データの出力の事後的に行われるようにしても良い。
【0084】
なお、音データの出力に合わせて同時的・即時的に行われる場合には、異常・故障の発生部位が表示される表示部6は、音発生位置範囲が重複する部分に関する情報(データ)を表示することによって監視対象の半導体電力変換装置において異常・故障が発生したことを外部に対して知らせることも行っており、この点において警報機能を備えると言える。
【0085】
本実施形態ではさらに、S3の処理によって整理された検知部計測時間データが用いられて半導体電力変換装置における異常・故障の種類の識別が行われる(S6)。
【0086】
具体的には、種類識別部5により、S3の処理において記憶部7に記憶された検知部計測時間データのうちの少なくとも一つの音データが読み込まれると共に当該音データに対してフーリエ変換処理若しくはウェーブレット変換処理が施されて周波数成分毎のスペクトル値として周波数f〔Hz〕における周波数強度P(f)が計算される。なお、ウェーブレット変換処理が施された場合には周波数強度は時間の情報(T)を含むので「P(f,T)」と表され得るものの、本発明の説明においては、フーリエ変換処理やウェーブレット変換処理が施されたものとしてどちらも「P(f)」と表す。また、音データの周波数成分毎のスペクトル値の計算の仕方は、フーリエ変換処理やウェーブレット変換処理に限定されるものではなく、周波数成分毎のスペクトル値として周波数f〔Hz〕における周波数強度P(f)が計算され得る適当な方法が適宜選択される。
【0087】
また、予め、異常・故障の種類毎に、どのような周波数成分でスペクトル値が大きくなるのかという属性データとして周波数f〔Hz〕における周波数強度(「異常音データ」と呼ぶ)が整備される。
【0088】
なお、異常・故障の種類としては、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、半導体スイッチング素子の異常・故障,回路基板の異常・故障,或いはコンデンサ素子の異常・故障が挙げられる。
【0089】
そして、種類識別部5により、フーリエ変換処理若しくはウェーブレット変換処理後の周波数強度P(f)と異常音データとが比較され、周波数強度P(f)が所定の値以上になっている周波数f〔Hz〕に基づいて、言い換えると、周波数強度P(f)と異常音データとの類似の程度に基づいて、監視対象の半導体電力変換装置における異常・故障の種類が識別される。なお、周波数強度P(f)と異常音データとの類似の程度を評価する手法は、特定の方法に限定されるものではなく、複数のデータ群の特徴の相似・相関の度合いを判定したり計量したりし得る適当な手法が適宜選択される。
【0090】
ここで、上述の半導体電力変換装置の故障部位特定装置10は、各部が全て一体のものとして構成されて監視対象の半導体電力変換装置の内部や近傍に設置されるようにしても良く、或いは、各部が複数の箇所に分散されて設置されるようにしても良い。
【0091】
具体的には例えば、音検知部1は監視対象の半導体電力変換装置の筐体外面や内部に設置されると共に音圧検査部2,計測時間判断部3,部位特定部4,種類識別部5,表示部6,及び記憶部7は前記半導体電力変換装置から離れた場所に設置されるようにしたり、音検知部1,音圧検査部2,計測時間判断部3,部位特定部4,種類識別部5,及び記憶部7は監視対象の半導体電力変換装置の筐体外面や内部に設置されると共に表示部6は前記半導体電力変換装置から離れた場所に設置されるようにしたり、或いは、音検知部1は監視対象の半導体電力変換装置の筐体外面や内部に設置されると共に音圧検査部2,計測時間判断部3,部位特定部4,種類識別部5,及び記憶部7は前記半導体電力変換装置が設置されている区画内(例えば、室内)に設置された上で表示部6は前記半導体電力変換装置から離れた場所(例えば、管理制御室や監視センタなど)に設置されるようにしたりすることが考えられる。
【0092】
また、半導体電力変換装置の故障部位特定装置10を構成する各部のうち接続していることが必要とされる各部が、データや制御指令等の信号の送受信(即ち、出入力)が可能であるように電気的に接続される。
【0093】
具体的には、半導体電力変換装置の故障部位特定装置10を構成する各部が一体のものとして構成される場合は、接続が必要な各部が適宜に、例えばバス等の信号回線によって接続される。
【0094】
また、半導体電力変換装置の故障部位特定装置10を構成する各部が別体のものとして構成される場合(さらに、各部が複数の場所に分散し離れて設置される場合)は、接続が必要な各部が適宜に、例えば、各々に接続されて敷設されたケーブル等が用いられる有線による信号送受の仕組みによって接続されたり、各々に接続された無線信号送受信機が用いられる無線による信号送受の仕組みによって接続されたり、或いは、これら信号送受の仕組みが組み合わされて接続されたりする。
【0095】
<半導体電力変換装置の故障部位特定プログラムがコンピュータ上で実行される場合>
上述の音圧検査部2,計測時間判断部3,部位特定部4,及び種類識別部5は、半導体電力変換装置の故障部位特定プログラムがコンピュータ上で実行されることによって当該コンピュータによって実現されるようにしても良い。
【0096】
半導体電力変換装置の故障部位特定プログラム17を実行するためのコンピュータ20の全体構成を
図3に示す。
【0097】
このコンピュータ20は制御部11,記憶部12,入力部13,表示部14,及びメモリ15を備え、これらが相互にバス等の信号回線によって接続されている。
【0098】
制御部11は、記憶部12に記憶されている半導体電力変換装置の故障部位特定プログラム17によってコンピュータ20全体の制御並びに半導体電力変換装置の故障部位の特定に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。
【0099】
記憶部12は、少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
【0100】
入力部13は、少なくとも作業者の命令や種々の情報を制御部11に与えるためのインターフェイス(即ち、情報入力の仕組み)であり、例えばキーボードやマウス或いはタッチパネルである。なお、例えばキーボードとマウスとの両方のように複数種類のインターフェイスを入力部13として有するようにしても良い。
【0101】
表示部14は、制御部11の制御によって文字や図形或いは画像等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。そして、上述の表示部6としての機能を奏する。
【0102】
メモリ15は、制御部11が種々の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。そして、上述の記憶部7としての機能を奏する。
【0103】
また、コンピュータ20には、音検知部1が、データや制御指令等の信号の送受信(即ち、出入力)が可能であるように、具体的には例えば上述のような有線による信号送受の仕組みや無線による信号送受の仕組み或いはこれら信号送受の仕組みが組み合わされることにより、電気的に接続される。
【0104】
そして、コンピュータ20の制御部11には、半導体電力変換装置の故障部位特定プログラム17が実行されることにより、監視対象の半導体電力変換装置から発生する音を採取する複数の音検知部1から出力される音データの入力を受ける処理を行うデータ受部11aと、音データが所定の音圧レベル以上である場合に音検知部1のそれぞれにおける音の採取に関する計測時間と共に音データを記録する処理を行う音圧検査部11bと、複数の音データの中から二個が選択され組み合わされて作成される音データの対毎に計測時間の時間差を算出すると共に当該時間差に音速を掛け合わせて距離差に換算し、さらに、前記音データの対毎の距離差に基づいて音が発生した部位を特定する処理を行う部位特定部11dと、音データに対してフーリエ変換処理若しくはウェーブレット変換処理を施して周波数成分毎のスペクトル値を計算すると共に当該周波数成分毎のスペクトル値を用いて監視対象の半導体電力変換装置における異常・故障の種類を識別する処理を行う種類識別部11eとが構成される。
【0105】
そして、音検知部1によって上述したS1の処理が行われて音データが出力され、当該音データがデータ受部11aを介して音圧検査部11bに入力され、当該音圧検査部11bによってS2の処理として上述した音圧検査部2と同様の処理が行われると共に所定の場合(即ち、S2:Yes)にS3の処理として上述した音圧検査部2と同様の処理が行われ、また、計測時間判断部11cによってS4の処理として上述した計測時間判断部3と同様の処理が行われ、さらに、部位特定部11dによってS5の処理として上述した部位特定部4と同様の処理が行われ、本実施形態では加えて、種類識別部11eによってS6の処理として上述した種類識別部5と同様の処理が行われる。
【0106】
<半導体電力変換装置自体が半導体電力変換装置の故障部位特定装置を備える場合>
上述の半導体電力変換装置の故障部位特定装置10は、監視対象の半導体電力変換装置自体に備えられるようにしても良い。この場合の全体構成を
図4に示す。
【0107】
この場合には、表示部6は、監視対象の半導体電力変換装置の外部から視認され得る例えば筐体の外面の一部として配設された画面を備えるものとして構成され、当該の半導体電力変換装置における異常・故障の発生部位を表示するものとして構成されることが考えられる。
【0108】
以上の構成を有する半導体電力変換装置の故障部位特定方法、故障部位特定装置、及び故障部位特定プログラムやこの故障部位特定装置を備える半導体電力変換装置によれば、半導体電力変換装置から発生する音に基づいて半導体電力変換装置における異常・故障の発生の検知が行われるようにしているので、半導体電力変換装置の半導体素子や電子部品の各々に個別に取り付けられるセンサを必要とすることなく半導体電力変換装置における異常・故障の発生の検知を行うことができる。このため、半導体電力変換装置の半導体素子や電子部品の個数に関係なく所定の個数のセンサによって半導体電力変換装置における異常・故障の発生を検知することが可能であり、多数のセンサを必要とする仕組みと比べて整備費用の低減と装置の小型化とを実現し、延いては半導体電力変換装置の異常・故障の検出手法としての汎用性及び適応性の向上を図ることが可能になる。
【0109】
以上の構成を有する半導体電力変換装置の故障部位特定方法、故障部位特定装置、及び故障部位特定プログラムやこの故障部位特定装置を備える半導体電力変換装置によれば、さらに、半導体電力変換装置から発生する音に基づいて半導体電力変換装置における異常・故障の発生の検知と同時に当該異常・故障の発生部位を特定するようにしているので、半導体電力変換装置の半導体素子や電子部品の各々に個別に取り付けられるセンサを必要とすることなく半導体電力変換装置における異常・故障の発生部位の特定を行うことができる。このため、半導体電力変換装置の半導体素子や電子部品の個数に関係なく所定の個数のセンサによって半導体電力変換装置における異常・故障の発生部位を特定することが可能であると共に、半導体電力変換装置の異常・故障への対応を効率良く迅速に行うことが可能になり、延いては半導体電力変換装置の稼働率を向上させて半導体電力変換装置の異常・故障の検出・判別手法としての有用性の向上を図ることが可能になる。
【0110】
なお、上述の形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
【0111】
例えば、上述の実施形態ではS5の処理において異常音の発生位置から各音検知部1までの音の到達時間の差が距離差に換算された上で前記異常音の発生部位が特定されるようにしているが、距離差に換算されることなく到達時間の差のまま用いられて前記異常音の発生部位が特定されるようにしても良い。具体的には、検知部計測時間データの対毎の時間差を算出した上で、これら時間差によって音検知部1の対毎に異常音の発生位置がどちらの音検知部1に近いかが分かるので、二個の音検知部1を結ぶ線分の垂直二等分平面によって区画される空間のうちの異常音の発生位置に近い方の音検知部1側を音発生位置範囲とし、音検知部1の対毎に求められる音発生位置範囲が重複する部分に異常音の発生部位が存在しているとされて異常・故障の発生部位が特定されるようにしても良い。
【0112】
また、上述の実施形態ではS5の処理において異常音の発生位置から各音検知部1までの音の到達時間の差が距離差に換算されて求められる音発生位置範囲が重複する部分として異常音の発生部位が特定されるようにしているが、採取された音の各音検知部1までの到達時間の差のパターンが監視対象の半導体電力変換装置における音発生部位毎の音の各音検知部1までの到達時間の差のパターンと比較されることによって異常音の発生部位が特定されるようにしても良い。具体的には、例えば主要な部品や交換可能なユニットなどが区別され得る程度に若しくは単純に機械的に監視対象の半導体電力変換装置内の空間が区画された上でこれら区画された空間毎に当該空間において発生した音の各音検知部1までの到達時間が求められ、音検知部1の識別子と当該音検知部1における音の到達時間との組み合わせによって構成される理論時間データが予め整理される。そして、検知部計測時間データと理論時間データとが比較され、データの類似の程度に基づいて前記区画された空間のうちのいずれであるか(なお、複数の空間の場合も考えられる)として異常音の発生部位が特定されて異常・故障の発生部位が特定されるようにしても良い。なお、この場合における、検知部計測時間データと理論時間データとの類似の程度を評価する手法は、特定の方法に限定されるものではなく、複数のデータ群の特徴の相似・相関の度合いを判定したり計量したりし得る適当な手法が適宜選択される。
【0113】
また、上述の実施形態では音検知部1は監視対象の半導体電力変換装置の筐体外面や内部に設置されるようにしているが、半導体電力変換装置の外部で発生した音であって半導体電力変換装置における異常・故障とは関係のない音を分析処理から除外し得るように、半導体電力変換装置の外部において音の発生源となるものから音が発生した場合にその音を監視対象の半導体電力変換装置の筐体外面や内部に設置された音検知部1よりも先に採取(収音)し得る位置に外部音検知部が更に設置されるようにしても良い。なお、外部音検知部は、一個のみ設置されるようにしても良く、また、複数個設置されるようにしても良い。
【0114】
この場合には、外部音検知部を更に備えるものとして半導体電力変換装置の故障部位特定装置10が構成され、上述の実施形態における音検知部1に加えて外部音検知部によってもS1の処理が行われて音データが取得され出力されると共にS2の処理が行われて前記音データが所定の音圧レベル(即ち、音圧レベルに関する閾値)以上であるか否か判断される。
【0115】
そして、前記音データが所定の音圧レベル以上である場合であっても、当該の音データに関する音が最初に外部音検知部によって採取(収音)されたものであるときは当該の音データに関する音は監視対象の半導体電力変換装置の外部において発生した音であると判断されるのでS2の処理の結論は「No」とされてS4の処理に進む。このとき、外部音検知部に続いて音検知部1によって当該の音データに関する音が採取されてその後の処理が行われないようにするため、外部音検知部によって最初に音が採取されたときは全ての音検知部1及び外部音検知部における音の採取の処理(S1)が一定時間停止させられる。
【0116】
一方で、前記音データが所定の音圧レベル以上である場合で、当該の音データに関する音が最初に音検知部1のうちのいずれかによって採取(収音)されたものであるときはS2の処理の結論は「Yes」とされてS3の処理に進む(即ち、上述の実施形態と同様の処理の流れになる)。このとき、計測時間tmの値が計測時間に関する閾値以下である(S4:No)ためにS1乃至S3の処理が繰り返される間に(即ち、最初ではない順序で)外部音検知部によって所定の音圧レベル以上の音データが取得された場合には、当該音データも検知部計測時間データとしてS5の処理において用いられるようにしても良い。
【0117】
また、上述の実施形態では異常・故障の発生部位の特定処理(S5)に加えて異常・故障の種類の識別処理(S6)が行われるようにしているが、異常・故障の種類の識別処理は行われないようにしても良い。すなわち、本発明においては異常・故障の種類を識別する処理は必須の構成ではなく、異常・故障の発生部位を特定する処理までが行われるようにしても良い。