特許第6553940号(P6553940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553940
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20190722BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20190722BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20190722BHJP
【FI】
   H01L21/78 F
   H01L21/78 R
   B23K26/364
   B23K26/00 M
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-99843(P2015-99843)
(22)【出願日】2015年5月15日
(65)【公開番号】特開2016-219492(P2016-219492A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田中 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大久保 広成
(72)【発明者】
【氏名】川崎 善太郎
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−151117(JP,A)
【文献】 特開2013−038364(JP,A)
【文献】 特開昭54−111757(JP,A)
【文献】 特開平07−211671(JP,A)
【文献】 特開2006−263763(JP,A)
【文献】 特開2012−028635(JP,A)
【文献】 特開2008−262983(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0217153(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/00
B23K 26/364
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割予定ラインによって区画された領域に複数のデバイスが形成されたウエーハにレーザー光線を照射して分割予定ラインにアブレーション加工を施して溝を形成するレーザー加工装置であって、
ウエーハを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたウエーハにレーザー光線を照射する集光器を備えたレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的にX軸方向に加工送りする加工送り手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とをX軸方向と直交するY軸方向に相対的に割り出し送りする割り出し送り手段と、加工領域を撮像する撮像手段と、制御手段と、を含み、
該制御手段は、
デバイスに形成されているキーパターンが含まれる画像を記憶し、該撮像手段によって撮像された画像に含まれるパターンとキーパターンとのマッチングによってターゲットパターンを検出するターゲットパターン検出手段と、
該ターゲットパターンとアブレーション加工によって形成された該溝とのY軸方向の間隔を検出する間隔検出手段と、
該加工送り手段を作動させて該撮像手段に対して該保持手段に保持されたウエーハをX軸方向に移動させて該ターゲットパターン検出手段による該X軸方向に並ぶ複数のデバイスに形成された該ターゲットパターンの検出と該間隔検出手段による該間隔の検出とを実施して各ターゲットパターンごとの該間隔を示すマップを作成するマップ作成手段と、
を少なくとも備えるレーザー加工装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記マップ作成手段が作成したマップに基づいて、複数のデバイスに各々対応した前記ターゲットパターンとアブレーション加工によって形成された前記溝とのY軸方向の各間隔の最大値と最小値との差が許容範囲内にあるか否かを判定し、許容範囲内であれば精度合格とし、許容範囲外であれば精度不合格とする合否判定手段を備える請求項1記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記マップ作成手段が作成したマップに基づいて前記割り出し送り手段を作動させて分割予定ラインに照射されるレーザー光線のY軸方向の位置を補正する位置補正手段を備える請求項1又は2記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハにレーザー光線を照射して加工溝を形成することができるレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、レーザー加工装置によって分割予定ラインに沿ってレーザー光線が照射され溝が形成されて個々のデバイスに分割された後、各種電子機器等に利用されている。
【0003】
上記レーザー加工装置は、ウエーハを保持する保持手段と、保持手段に保持されたウエーハにレーザー光線を照射する集光器を備えたレーザー光線照射手段と、保持手段とレーザー光線照射手段とを相対的にX軸方向に加工送りする加工送り手段と、保持手段とレーザー光線照射手段とをX軸方向と直交するY軸方向に相対的に割り出し送りする割り出し送り手段と、加工領域を撮像する撮像手段と、制御手段と、を含み構成されており、例えば、幅が約50μm程度の分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射してアブレーション加工を施し高精度に溝を形成することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、分割予定ラインに沿って形成される溝は、例えば、溝を起点としてウエーハを個々のデバイスに分割する場合(例えば、特許文献2参照)、または低誘電率絶縁体と銅等の金属箔とが絡みあうように分割予定ラインに積層されたLow−k膜を除去する場合(例えば、特許文献3参照)に形成される。そして、いずれの場合においても、分割予定ラインに隣接して各デバイスが形成されていることから、アブレーション加工によって形成された溝は、分割予定ラインの幅からはみ出すことなくその内側に収まって形成される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−245467号公報
【特許文献2】特開2007−19252号公報
【特許文献3】特開2007−173475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、レーザー加工装置に備える保持手段とレーザー光線照射手段とを相対的にX軸方向に加工送りする加工送り手段において、Y軸方向へのヨーイング(回転振動)が生じた場合には、レーザー光線が分割予定ラインから外れて照射されることで、デバイスが損傷するという問題がある。よって、レーザー加工装置を用いてウエーハにレーザー光線を照射しアブレーション加工を施して溝を形成する場合に、加工送り手段にY軸方向におけるヨーイングが生じたとしても、このヨーイングが許容値の範囲であるか否かを検出できるようにするという課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、複数の分割予定ラインによって区画された領域に複数のデバイスが形成されたウエーハにレーザー光線を照射して分割予定ラインにアブレーション加工を施して溝を形成するレーザー加工装置であって、ウエーハを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたウエーハにレーザー光線を照射する集光器を備えたレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的にX軸方向に加工送りする加工送り手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とをX軸方向と直交するY軸方向に相対的に割り出し送りする割り出し送り手段と、加工領域を撮像する撮像手段と、制御手段と、を含み、該制御手段は、デバイスに形成されているキーパターンが含まれる画像を記憶し、該撮像手段によって撮像された画像に含まれるパターンとキーパターンとのマッチングによってターゲットパターンを検出するターゲットパターン検出手段と、該ターゲットパターンとアブレーション加工によって形成された該溝とのY軸方向の間隔を検出する間隔検出手段と、該加工送り手段を作動させて該撮像手段に対して該保持手段に保持されたウエーハをX軸方向に移動させて該ターゲットパターン検出手段による該X軸方向に並ぶ複数のデバイスに形成された該ターゲットパターンの検出と該間隔検出手段による該間隔の検出とを実施して各ターゲットパターンごとの該間隔を示すマップを作成するマップ作成手段と、を少なくとも備えるレーザー加工装置である。
【0008】
また、前記レーザー加工装置は、前記マップ作成手段が作成したマップに基づいて、複数のデバイスに各々対応した前記ターゲットパターンとアブレーション加工によって形成された前記溝とのY軸方向の各間隔の最大値と最小値との差が許容範囲内にあるか否かを判定し、許容範囲内であれば精度合格とし、許容範囲外であれば精度不合格とする合否判定手段を備えると好ましい。
【0009】
さらに、前記制御手段は、前記マップ作成手段が作成したマップに基づいて前記割り出し送り手段を作動させ分割予定ラインに照射されるレーザー光線のY軸方向の位置を補正する位置補正手段を備えると好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るレーザー加工装置は、レーザー加工装置に備える制御手段を、撮像手段によって撮像された画像に含まれるパターンとキーパターンとのマッチングによってターゲットパターンを検出するターゲットパターン検出手段と、ターゲットパターンとアブレーション加工によって形成された溝とのY軸方向の間隔を検出する間隔検出手段と、加工送り手段を作動させて撮像手段に対して保持手段に保持されたウエーハをX軸方向に移動させてターゲットパターン検出手段によるターゲットパターンの検出と間隔検出手段による間隔の検出とを実施して各ターゲットパターンごとの間隔を示すマップを作成するマップ作成手段とを少なくとも備えるものとしたことで、加工送り手段にY軸方向におけるヨーイングが生じたとしても、作成したマップに基づいて生じたヨーイングが許容値の範囲内にあるかどうかを確認することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係るレーザー加工装置は、レーザー加工装置に備える制御手段に、上記の構成に加えて、マップ作成手段が作成したマップに基づいて、複数のデバイスに各々対応したターゲットパターンとアブレーション加工によって形成された前記溝とのY軸方向の各間隔の最大値と最小値との差が許容範囲内にあるか否かを判定し、許容範囲内であれば精度合格とし、許容範囲外であれば精度不合格とする合否判定手段を備えるものとしたことで、加工送り手段にY軸方向におけるヨーイングが生じたとしても、このヨーイングが許容値の範囲を外れている場合には精度不合格と判定することが可能となり、オペレータが加工送り手段を修理又は交換して加工送り手段に生じるヨーイングを許容範囲内に収めることにより、レーザー加工装置に備えるレーザー照射手段から照射するレーザー光線が分割予定ラインから外れて照射されてデバイスが損傷するという事態を防ぐことが可能となる。
【0012】
さらに、本発明に係るレーザー加工装置は、レーザー加工装置に備える制御手段に、上記の構成に加えて、マップ作成手段が作成したマップに基づいて割り出し送り手段を作動させて分割予定ラインに照射されるレーザー光線のY軸方向の位置を補正する位置補正手段を備えるものとしたことで、マップ作成手段で作成したマップに基づいて、加工送り手段に生じるヨーイングをキャンセルできるように割り出し送り手段を作動させることにより、分割予定ラインに照射されるレーザー光線のY軸方向の位置を補正することが可能となる。よって、加工送り手段を修理又は交換することなく加工送り手段に生じるヨーイングを許容範囲に収めることで、レーザー加工装置に備えるレーザー照射手段から照射するレーザー光線が分割予定ラインから外れて照射されてデバイスが損傷するという事態を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】レーザー加工装置の一例を示す斜視図である。
図2】フレームに支持されたウエーハの例を示す斜視図である。
図3】キーパターンを含む画像の例を示す説明図である。
図4】ウエーハの表面の一部を拡大して示す平面図である。
図5】ウエーハにレーザー光線を照射して分割予定ラインにアブレーション溝を形成している状態を示す斜視図である。
図6】撮像手段により、ウエーハの表面上の分割予定ラインに形成されたアブレーション溝とデバイスに形成されたターゲットパターンとを含んだ領域を撮像している状態を示す斜視図である。
図7】アブレーション溝が形成されたウエーハの表面の一部を拡大して示す平面図である。
図8】マップ作成手段により作成したターゲットパターンごとの間隔を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すレーザー加工装置2は、粘着テープTを介してリングフレームFに支持され保持手段40に保持されたウエーハWにレーザー光線照射手段8によってレーザー光線を照射する装置である。
【0015】
レーザー加工装置2の基台20の前方(−Y方向側)には、保持手段40をレーザー光線照射手段8に対してX軸方向に加工送りする加工送り手段21が備えられている。加工送り手段21は、X軸方向の軸心を有するボールネジ210と、ボールネジ210と平行に配設された一対のガイドレール211と、ボールネジ210を回動させるパルスモータ212と、内部のナットがボールネジ210に螺合し底部がガイドレール211に摺接する可動板213とから構成される。そして、パルスモータ212がボールネジ210を回動させると、これに伴い可動板213がガイドレール211にガイドされてX軸方向に移動し、可動板213上に配設された保持手段40が可動板213の移動に伴いX軸方向に移動することで、保持手段40に保持されたウエーハWが加工送りされる。パルスモータ212は、制御手段9に接続されており、例えば、制御手段9に備える図示しないパルス発振器から供給されるパルス信号によって動作する。そして制御手段9は、供給したパルス信号数をカウントすることにより、保持手段40の加工送り量を認識し、保持手段40のX軸方向における位置を制御する。
【0016】
保持手段40は、例えば、円形状に形成されたチャックテーブルであり、ウエーハを吸着する吸着部400と、吸着部400を支持する枠体401とを備える。吸着部400は図示しない吸引源に連通し、吸着部400の露出面である保持面400a上でウエーハWを吸引保持する。保持手段40は、カバー41によって周囲から囲まれ、保持手段40の底面側に配設された回転手段43により駆動されて回転可能となっている。また、保持手段40の周囲には、リングフレームFを固定する固定手段42が配設されている。
【0017】
保持手段40は、加工送り手段21によりX軸方向に往復移動が可能であるとともに、保持手段40の下方に配設された割り出し送り手段22により、X軸方向と直交するY軸方向に割り出し送り可能となっている。割り出し送り手段22は、Y軸方向の軸心を有するボールネジ220と、ボールネジ220と平行に配設された一対のガイドレール221と、ボールネジ220を回動させるパルスモータ222と、内部のナットがボールネジ220に螺合し底部がガイドレール221に摺接する可動板223とから構成される。そして、パルスモータ222がボールネジ220を回動させると、これに伴い可動板223がガイドレール221にガイドされてY軸方向に移動し、可動板223上に配設された保持手段40が可動板223の移動に伴いY軸方向に移動して割り出し送りされることで、保持手段40に保持されたウエーハWが割り出し送りされる。パルスモータ222は、制御手段9に接続されており、例えば、制御手段9に備える図示しないパルス発振器から供給されるパルス信号によって動作する。そして制御手段9は、供給したパルス信号数をカウントすることにより、保持手段40の割り出し送り量を認識し、保持手段40のY軸方向における位置を制御する。
【0018】
レーザー加工装置2の基台20の後方(+Y方向側)には、壁部23が立設されており、壁部23の側面にはレーザー光線を照射する集光器81を備えたレーザー光線照射手段8が配設されている。
【0019】
レーザー光線照射手段8のハウジング80内には、図示しないレーザー光線発振器が配設され、ハウジング80の先端の下面には、レーザー光線発振器から発振されたレーザー光線を集光するための集光器81が装着されている。集光器81は、レーザー光線発振器から発振したレーザー光線を、集光器81の内部に備える図示しないミラーによって反射させ、集光レンズ81aに入光させることで、レーザー光線をウエーハWの表面に集光してアブレーション加工を施すことができる。
【0020】
図1に示すように、例えば、保持手段40の移動経路の上方でかつ集光器81の近傍には、ウエーハWの加工領域を撮像する撮像手段70が配設されている。撮像手段70は、例えば、CCDイメージセンサを用いたカメラ等であるが、これに限定されるものではない。撮像手段70が撮像した撮像画は、例えば、ハウジング80上に配設されたモニター等の表示手段71に表示されることにより、オペレータが確認可能となる。
【0021】
図2に示すウエーハWは、例えば、円形状の半導体ウエーハであり、ウエーハWの表面Wa上には、例えば幅が約50μmの分割予定ラインSによって区画された格子状の領域に多数のデバイスDが形成されている。ウエーハWは、粘着テープTを介してリングフレームFに支持された状態で、図1に示すレーザー加工装置2に備える保持手段40に保持される。なお、ウエーハWの形状及び種類は、本実施形態に限定されるものではない。
【0022】
ウエーハWの各デバイスDには同一の回路パターンが形成されている。そして、各デバイスDの表面に形成されている回路パターンのうちの特徴的な形状を有する一つのパターンが、例えば図3に示すキーパターンPとしてあらかじめ選定され、そのキーパターンPが映った画像70aが制御手段9に記憶される。キーパターンPは、ウエーハWの表面Wa上に形成された多数のデバイスDの一つ一つについて、同様の位置に形成されている。図3の例のキーパターンPは、L字型に形成されているが、この形状には限定されない。
【0023】
制御手段9は、例えば、少なくともCPUとメモリ等の記憶素子とを備えており、撮像手段70によって撮像された画像に含まれるパターンと図3に示したキーパターンPとのマッチングによって、キーパターンPと同一形状のターゲットパターンを検出するターゲットパターン検出手段90と、ターゲットパターンとアブレーション加工によって分割予定ラインSに形成されたアブレーション溝とのY軸方向の間隔を検出する間隔検出手段91と、加工送り手段21を作動させ撮像手段70に対して保持手段40に保持されたウエーハWをX軸方向に移動させて各ターゲットパターンごとにターゲットパターンとアブレーション加工によって分割予定ラインSに形成されたアブレーション溝とのY軸方向の間隔とを示すマップを作成するマップ作成手段92と、マップ作成手段92が作成したマップに基づいて、複数のデバイスDに各々対応したターゲットパターンとアブレーション溝とのY軸方向の各間隔の最大値と最小値の差が許容範囲であるか否かを検出し、許容範囲内であれば精度合格とし、許容範囲外であれば精度不合格とする合否判定手段93と、マップ作成手段92で作成されたマップに基づいて割り出し送り手段22を作動させてレーザー光線のY軸方向の位置を補正する位置補正手段94とを備える。
【0024】
ターゲットパターン検出手段90は、例えば、図3に示した画像70aを記憶している。また、ターゲットパターン検出手段90は、図4に示すターゲットパターンP1とX軸方向にのびる分割予定ラインSとの位置関係、すなわち、分割予定ラインSの中心線SoとターゲットパターンP1との一定の基準間隔Loについても予め記憶している。
【0025】
以下に、図1に示したウエーハWに対してレーザー光線照射手段8からレーザー光線を照射して分割予定ラインSにアブレーション加工を施してアブレーション溝を形成する場合の、レーザー加工装置2の動作について説明する。
【0026】
(1)レーザー光線照射工程
レーザー加工装置2に備えるマップ作成手段92により上記マップを作成するためには、アブレーション加工によって形成された少なくとも1本のアブレーション溝が必要となる。そこで、例えば、ウエーハWに対して、レーザー加工装置2によりレーザー光線を照射することで分割予定ラインSにアブレーション加工を施して1本のアブレーション溝を形成する。なお、本工程でアブレーション加工を施す分割予定ラインSは、例えば、最も長く最も多くのデバイスDに隣接している分割予定ラインS中の一本である図5に示すX軸方向に延びる分割予定ラインS1を選択する。なお、ウエーハWに代えて試験用のウエーハを用いてもよい。
【0027】
まず、図1に示すレーザー光線照射装置2に備える保持手段40の保持面400aとウエーハWの裏面Wb側に貼着された粘着テープTとが対向するように位置合わせを行い、粘着テープTを介してリングフレームFに支持されたウエーハWを保持手段40上に載置する。そして、保持手段40の周囲に配設された固定手段42によりリングフレームFを固定し、保持手段40に接続された図示しない吸引源を作動してウエーハWを保持手段40上に吸引保持する。
【0028】
次いで、加工送り手段21により、保持手段40に保持されたウエーハWが−X方向に送られて、撮像手段70の直下に位置付けられた後、撮像手段70によりウエーハWの加工すべき領域が撮像される。撮像手段70により撮像された撮像画は、撮像手段70に接続された制御手段9に備えるターゲットパターン検出手段90にデジタル信号として送られる。
【0029】
ターゲットパターン検出手段90は、送られてきた撮像画から、それぞれのデバイスDの表面に形成されたパターンと、ターゲットパターン検出手段90に記憶している図3に示したキーパターンPとのマッチングを行い、図4に示すターゲットパターンP1を検出して、予めターゲットパターン検出手段90に記憶されている情報、すなわち図4に示したX軸方向に延びる分割予定ラインSの中心線SoとターゲットパターンP1との一定の基準間隔Loから、X軸方向に延びる一本の分割予定ラインS1の位置を検出する。分割予定ラインS1が検出されるのに伴って、図1に示す制御手段9に備えるパルス発振器から所定量のパルス信号が割り出し送り手段22に備えるパルスモータ222に供給されることで、保持手段40が割り出し送り手段22によってY軸方向に駆動され、分割予定ラインS1とレーザー光線照射手段8に備える集光器81とのY軸方向における位置あわせがなされる。この位置あわせは、例えば、集光器81に備える集光レンズ81aの直下に分割予定ラインS1の中心線Soが位置するように行われる。
【0030】
分割予定ラインS1と集光器81とのY軸方向における位置あわせがされた後、図5に示すように集光器81から照射されるレーザー光線の集光点を分割予定ラインS1の中心線Soに合わせる。そして、レーザー光線を分割予定ラインS1の中心線Soに沿って照射しつつ、ウエーハWを−X方向に100mm/秒の速度で加工送りして、分割予定ラインS1にアブレーション加工を施す。そうすると、分割予定ラインS1にはアブレーション溝Mが形成されていく。そして、例えば、X軸方向に延びる一本の分割予定ラインS1の全長にレーザー光線を照射し終えるX軸方向の所定の位置までウエーハWを−X方向に進行させた後、ウエーハWの−X方向での加工送りを一度停止させ、保持手段40を+X方向へ送り出して元の位置に戻す。
【0031】
上記レーザー光線の照射は、例えば、以下のレーザー加工条件で実施する。
光源 :YAGレーザーまたはYVO4レーザー
波長 :355nm(紫外光)
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :3W
加工送り速度 :100mm/秒
【0032】
(2)ターゲットパターン検出工程
上記のようにして、X軸方向に延びる一本の分割予定ラインS1にアブレーション加工を施してアブレーション溝Mを形成した後、図6に示すように、保持手段40に保持されたウエーハWが再び−X方向に送られて、図6に示すように、アブレーション溝MとデバイスD1に形成されたターゲットパターンP1と含む撮像領域G1が撮像手段70により撮像される。ここで、アブレーション溝Mは、例えば、加工送り手段21にY軸方向へのヨーイングが生じたことにより、図7に示すように分割予定ラインS1の中心線Soと平行な直線とはならず、中心線Soに対してY軸方向に変位して形成される箇所を有する蛇行線となっている。
【0033】
このように、撮像手段70により、デバイスD1に形成されたターゲットパターンP1と分割予定ラインS1に形成されたアブレーション溝Mとの両方が含まれた領域G1が撮像され、この撮像画がターゲットパターン検出手段90に送られると、ターゲットパターン検出手段90は、撮像手段70が撮像した撮像画中のターゲットパターンP1と、ターゲットパターン検出手段90に予め記憶しているキーパターンPとが一致するか否かを判断するパターンマッチングを行う。そして、パターンマッチングが完了した時点で、撮像手段70及び保持手段40が停止する。
【0034】
(3)間隔検出工程
次いで、パターンマッチングが完了した時点におけるターゲットパターンP1とアブレーション溝Mとの両方が含まれた撮像領域G1についての撮像画が、間隔検出手段91へと送られる。間隔検出手段91は、それぞれが有する固有の色情報を持つ画素によって、撮像画中のターゲットパターンP1とアブレーション溝Mとを認識する。そして、例えば、ターゲットパターンP1とアブレーション溝Mとの間の画素数に基づき、図7に示す両者のY軸方向の間隔L1を算出する。例えば、間隔L1は203μmとなる。
【0035】
(4)マップ作成工程
間隔検出手段91によりターゲットパターンP1とアブレーション溝MとのY軸方向の間隔L1が検出された後、マップ作成手段92は、デバイスD1と対応付けて、デバイスD1内のターゲットパターンP1とアブレーション溝Mとの間隔L1の値である「203μm」を、例えば図8に示すマップCに記録する。
【0036】
次いで、再度ターゲットパターン検出工程及び間隔検出工程を行う。すなわち、加工送り手段21により保持手段40が加工送りされて、先に検出したターゲットパターンP1の隣に位置する別の一つのターゲットパターンP2とアブレーション溝Mとが両方とも含まれた撮像領域G2についての一つの撮像画が撮像手段70により撮像され、一つのターゲットパターンP2が検出され、さらにターゲットパターンP2とアブレーション溝MとのY軸方向の間隔L2が一つ検出される。例えば、間隔L2は241μmとなる。そして、マップ作成工程において、マップ作成手段92は、デバイスD2と対応付けて、ターゲットパターンP2とアブレーション溝MとのY軸方向の間隔L2の値をマップCに記録する。
【0037】
このような動作を、例えば、X軸方向に並ぶ一列のデバイスの全てについて繰り返すことで、マップ作成手段92は一つのマップCを作成する。すなわち、以下上記と同様に、分割予定ラインS1に隣接してX軸方向にm個並列に形成された各デバイスD3、デバイスD4、・・・デバイスD(m−1)、デバイスDm上に形成された各ターゲットパターンP3、ターゲットパターンP4、・・・ターゲットパターンP(m−1)、ターゲットパターンPmと、アブレーション溝MとのY軸方向の各間隔L3、間隔L4、・・・間隔L(m−1)、間隔Lmとを検出していき、一つのマップCを作成する。
【0038】
なお、マップ作成手段92により作成されるマップCは上記の例には限られない。例えば、図7に示すターゲットパターンP1とアブレーション溝MとのY軸方向の間隔L1が一つ検出された後、先に検出したターゲットパターンP1の隣に位置する別のターゲットパターンP2を一つ飛び越えて、その隣に位置するターゲットパターンP3とアブレーション溝MとのY軸方向の間隔L3を一つ検出し、その検出したターゲットパターンP3とアブレーション溝MとのY軸方向の間隔L3の値を記録するようにしてもよい。また、各ターゲットパターンとアブレーション溝MとのY軸方向の間隔が所定の回数(例えば、X軸方向に並ぶ一列のデバイスDの全てについて)検出された後、検出された間隔の値をメモリに一時的に記憶しておき、その一時的に記憶しておいたデータを一括して記録して一つのマップを作成するようにしてもよい。
【0039】
(5)合否判定工程
合否判定手段93は、マップ作成手段92が作成したマップCに基づいて、複数のデバイスDに各々対応したターゲットパターンとアブレーション溝MとのY軸方向の各間隔の最大値と最小値との差を算出する。また、合否判定手段93は、複数のデバイスに各々対応したターゲットパターンとアブレーション溝MとのY軸方向の各間隔の最大値と最小値との差の許容値を記憶しており、各ターゲットパターンとアブレーション溝MとのY軸方向の各間隔の最大値と最小値との差が、許容値以下、すなわち許容範囲内にあるか否かを判定し、許容範囲内であれば精度合格とし、許容範囲外であれば精度不合格とする。合否判定手段93には、例えば、予め各ターゲットパターンPとアブレーション溝MとのY軸方向の各間隔の最大値と最小値の差の許容範囲として10μmが記憶されている。そして、合否判定手段93が、マップCに基づいて、ターゲットパターンP2とアブレーション溝MとのY軸方向の間隔L2(241μm)を最大値として選択し、ターゲットパターンP1とアブレーション溝MとのY軸方向の間隔L1(203μm)を最小値として選択し、さらに最大値と最小値との差(38μm)を算出する。
【0040】
ターゲットパターンとアブレーション溝MとのY軸方向の各間隔の最大値と最小値の差である38μmは、許容範囲外にあるため、合否判定手段93は精度不合格と判定して、その旨を図1に示す表示手段71に表示してオペレータに知らせる。精度不合格の報知を受けたオペレータは、加工送り手段21を修理又は交換して加工送り手段21に生じるヨーイングを許容範囲に収めることが可能となる。
【0041】
このように、加工送り手段21にY軸方向におけるヨーイングが生じた場合においても、本発明に係るレーザー加工装置2においては、ターゲットパターン検出手段90により各ターゲットパターンを検出し、検出した各ターゲットパターンとアブレーション溝MとのY軸方向の各間隔を間隔検出手段91で検出して、マップ作成手段92によってマップCを作成することにより、加工送り手段21に生じたヨーイングが許容範囲内あるか否かを確認することが可能となる。
【0042】
また、制御手段9に合否判定手段93も備えることで、マップ作成手段92が作成したマップCに基づいて、本実施形態におけるように加工送り手段21に生じたヨーイングが許容範囲外にあることオペレータが容易に判断できるようになり、オペレータが加工送り手段21を修理又は交換することで、加工送り手段21に生じるヨーイングを許容範囲に収めることが可能となり、レーザー加工装置2に備えるレーザー照射手段8から照射するレーザー光線が分割予定ラインSから外れて照射されデバイスDが損傷してしまうのを防ぐことが可能となる。
【0043】
なお、加工送り手段21にヨーイングが生じている場合でも、そのヨーイングが許容範囲であるか否かにかかわらず、加工送り手段21を修理又は交換せず、位置補正手段94により割り出し送り手段22の動作を調整することで、分割予定ラインSに照射されるレーザー光線のY軸方向の位置を補正してもよい。
【0044】
例えば、位置補正手段94は、マップ作成手段92が作成したマップCから、加工送り手段21のY軸方向に生じるヨーイングに対する補正値を算出する。補正値は、各ターゲットパターンとアブレーション溝MとのY軸方向の各間隔L1、L2、・・・Lmと、分割予定ラインSの中心線SoとターゲットパターンPとの一定の基準間隔Lo(例えば210μm)との差の値とする。位置補正手段94は、算出した補正値をメモリ等に記憶しておき、記憶した補正値に基づいて、制御手段9から割り出し送り手段22に備えるパルスモータ222に供給されるパルス信号の供給数を増減させることにより、その補正値の分だけレーザー光線照射手段8のY軸方向の位置を補正しながら、加工送り手段21が割り出し送り手段22及び保持手段40を加工送りする。そうすると、分割予定ラインSの中心線Soに沿って蛇行しないアブレーション溝を形成することができる。
【0045】
制御手段9に位置補正手段94も備えると、加工送り手段21を修理又は交換することなく、加工送り手段21に生じるヨーイングを許容範囲に収めることができ、レーザー照射手段8から照射するレーザー光線が分割予定ラインから外れて照射されてデバイスが損傷するという事態を防ぐことが可能となる。
【0046】
なお、上記実施形態における加工送り手段21は、保持手段40をX軸方向に移動させる構成としたが、加工送り手段は、レーザー光線照射手段8をX軸方向に移動させる構成としてもよい。すなわち、加工送り手段は、保持手段40とレーザー光線照射手段8とを相対的にX軸方向に加工送りすることができればよい。
【0047】
また、上記実施形態における割り出し送り手段22は、保持手段40をY軸方向に移動させる構成としたが、割り出し送り手段は、レーザー光線照射手段8をY軸方向に移動させる構成としてもよい。すなわち、加工送り手段は、保持手段40とレーザー光線照射手段8とを相対的にY軸方向に割り出し送りすることができればよい。
【符号の説明】
【0048】
2:レーザー加工装置
21:加工送り手段
210:ボールネジ 211:ガイドレール 212:パルスモータ 213:可動板
22:割り出し送り手段 220:ボールネジ 221:ガイドレール 222:パルスモータ 223:可動板
23:壁部
40:保持手段 400:吸着部 400a:保持面 401:枠体 41:カバー 42:固定手段 43:回転手段
70:撮像手段 71:表示手段
8:レーザー光線照射手段
80:ハウジング 81:集光器 81a:集光レンズ
9:制御手段
90:ターゲットパターン検出手段 91:間隔検出手段 92:マップ作成手段 93:合否判定手段 94:位置補正手段
W:ウエーハ Wa:ウエーハの表面 Wb:ウエーハの裏面
S:分割予定ライン So:X軸方向に延びる分割予定ラインの中心線 Lo:基準間隔 D:デバイス F:リングフレーム M:アブレーション溝
P:キーパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8