(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553967
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】瞬時位相シフト干渉計
(51)【国際特許分類】
G01B 9/02 20060101AFI20190722BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
G01B9/02
G01B11/24 D
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-140397(P2015-140397)
(22)【出願日】2015年7月14日
(65)【公開番号】特開2017-20962(P2017-20962A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】特許業務法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松浦 心平
【審査官】
櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−257190(JP,A)
【文献】
特開2002−013907(JP,A)
【文献】
米国特許第04872755(US,A)
【文献】
特開2013−061255(JP,A)
【文献】
特開2008−032690(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/002207(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/02
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定の基準となる参照光束と測定対象物からの反射または透過によって得られる測定光束からなる被検光束を複数の光束又は領域に分割し、前記参照光束と前記測定光束の位相差を相対的にシフトさせた後に干渉縞を発生させて、位相シフトした複数の干渉縞画像を同時に撮像し、前記測定対象物の形状を測定する瞬時位相シフト干渉計において、
前記参照光束と前記測定光束の光路長差よりも可干渉距離が短い光源と偏光ビームスプリッタを用い、
前記光源からの光束を該偏光ビームスプリッタにより二つに分割して、光路長可変の遅延光路を用いて一方の光束は遅延させて光路長差を付与して他方の光束と同一光軸上に重ね合わせた後に、前記参照光束と前記測定光束を発生させ、
調整時に前記遅延光路の光路長を変化させて、位相シフトした複数の干渉縞画像をそれぞれ取り込み、各干渉縞画像のそれぞれで得られる干渉縞のバイアス、振幅、位相シフト量の少なくともいずれかを算出しておき、
測定時は、前記干渉縞のバイアス算出結果、振幅算出結果、位相シフト量算出結果の少なくともいずれかに基づいて前記測定対象物の形状を測定することを特徴とする瞬時位相シフト干渉計。
【請求項2】
前記調整時に、前記遅延光路の光路長を変化させて、位相シフトした複数の干渉縞画像をそれぞれ取り込む際、前記測定対象物は干渉計本体に対して固定して配置することを特徴とする、請求項1に記載の瞬時位相シフト干渉計。
【請求項3】
測定の基準となる参照光束と測定対象物からの反射または透過によって得られる測定光束からなる被検光束を複数の領域に分割し、前記参照光束と前記測定光束の位相差を相対的にシフトさせた後に干渉縞を発生させて、位相シフトした複数の干渉縞画像を同時に撮像し、前記測定対象物の形状を測定する瞬時位相シフト干渉計において、
前記参照光束と前記測定光束の光路長差よりも可干渉距離が短い光源を用い、
前記光源からの光束を二つに分割して、光路長可変の遅延光路を用いて一方の光束は遅延させて光路長差を付与して他方の光束と同一光軸上に重ね合わせた後に、前記参照光束と前記測定光束を発生させ、
調整時に前記遅延光路の光路長を変化させて、位相シフトした複数の干渉縞画像をそれぞれ取り込み、各干渉縞画像のそれぞれで得られる干渉縞のバイアス、振幅、位相シフト量の少なくともいずれかを算出しておき、
測定時は、前記干渉縞のバイアス算出結果、振幅算出結果、位相シフト量算出結果の少なくともいずれかに基づいて前記測定対象物の形状を測定する際に、
前記複数の領域を、マイクロポラライザによって区分された、単位セル内の微小領域としたことを特徴とする瞬時位相シフト干渉計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞬時位相シフト干渉計に係り、特に、高精度化のために提案されている、例えば複数の異なる撮像手段又は単一の撮像手段の異なる撮像領域で得られる、位相シフトした複数の干渉縞画像間のバイアス、振幅、位相シフト量の事前測定(校正)をユーザが簡単に実現可能な瞬時位相シフト干渉計に関する。
【背景技術】
【0002】
参照面からの反射光と測定対象物からの反射光によって発生する干渉縞の位相を解析する干渉計は、光の波長をものさしとして、高精度に測定対象物の形状を測定することができる装置である。干渉計によって得られる干渉縞の位相を高精度に解析する代表的な方法は、干渉縞の位相をシフトさせて複数枚の画像を撮像し解析する、位相シフト干渉計である。その位相シフト干渉計の中でも、解析に必要な複数枚の位相シフトした干渉縞を複数の干渉光路とカメラで同時に測定するのが瞬時位相シフト干渉計である。瞬時位相シフト干渉計は、本来の位相シフト干渉計が不得手としてきた、組立現場といった振動環境下での測定対象物の形状測定が可能で、実用性が極めて高い干渉計である。
【0003】
瞬時位相シフト干渉計では、別々のカメラで取り込まれる複数の干渉縞画像間のバイアスや振幅のばらつき、位相シフト量の演算上の設定値に対して光学的に実施した実効値の差異によって、干渉縞位相の解析誤差が発生する。したがって、各カメラで得られる干渉縞のバイアスや振幅、位相シフト量といった、個々の干渉計に固有の光学的パラメータを事前に測定しておき、実際の測定対象物を測定する際には、これら光学的パラメータを考慮して演算を行わなければ、高精度な測定を実現できない。
【0004】
これら光学的パラメータを測定する方法を出願人は特許文献1と特許文献2で開示している。これらの特許文献では、
図1のような瞬時位相シフト干渉計において、
図2に示すように参照面5に対して測定対象物(両特許文献においては、被検面7と記載)を光軸方向にΔd
iシフトさせて複数枚の干渉縞を撮像する。そして、両特許文献内で示された数式などを使ってデータ処理をすることで、瞬時位相シフト干渉計の光学的パラメータを算出することができる。図において、1はレーザ光源、2はレンズ、3はビームスプリッタ、4はコリメータレンズ、6、8は1/4波長板、9は三分光(割)プリズム、10〜12は偏光板、13〜15は撮像装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−13907号公報(
図1、
図3)
【特許文献2】特開2002−13919号公報(
図1、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先に提案された手法を実現するためには、瞬時位相シフト干渉計の参照面5に対して測定対象物(7)を光軸方向に正確にシフトさせる必要がある。そのためには、極めて精度の高い高価な走査ステージを用意し、そこに測定対象物(7)を動かないように設置しなければならない。また、光学的パラメータを測定する際の測定環境における振動は、参照面5に対する測定対象物(7)の相対的なシフト誤差を引き起こすために、振動を排除した精密な測定環境を準備しなければならない。
【0007】
これら光学的パラメータの測定は、個々の干渉計固有で固定の誤差であるため、原理的には干渉計組立調整後に一回だけ実施すればよい。しかしながら実際には、干渉計を構成する光学デバイスの経年変化や、それら光学デバイスを保持している干渉計筐体の変形などにより、光学的パラメータも変化していく。したがって、定期的に測定して値付けし直すことが、高い性能を維持するためには不可欠である。その度ごとに、測定対象物(7)を正確にシフトさせることができる環境に干渉計を持ち込み、測定対象物(7)を正確にシフトさせて光学的パラメータを測定するには、多大な労力を要する。
【0008】
即ち、瞬時位相シフト干渉計の高精度化のために提案されている従来の手法は、特別な装置と特別な測定環境が必要で、ユーザが定期的に測定を実施するのは極めて難しいという問題点を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、瞬時位相シフト干渉計の高精度化のために提案されている、例えば複数の異なる撮像手段又は単一の撮像手段の異なる撮像領域で得られる、位相シフトした複数の干渉縞画像間のバイアス、振幅、位相シフト量の事前測定(校正)をユーザが簡単に実現できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、測定の基準となる参照光束と測定対象物からの反射または透過によって得られる測定光束からなる被検光束を複数の光束又は領域に分割し、前記参照光束と前記測定光束の位相差を相対的にシフトさせた後に干渉縞を発生させて、位相シフトした複数の干渉縞画像を同時に撮像し、前記測定対象物の形状を測定する瞬時位相シフト干渉計において、前記参照光束と前記測定光束の光路長差よりも可干渉距離が短い光源
と偏光ビームスプリッタを用い、前記光源からの光束を
該偏光ビームスプリッタにより二つに分割して、光路長可変の遅延光路を用いて一方の光束は遅延させて光路長差を付与して他方の光束と同一光軸上に重ね合わせた後に、前記参照光束と前記測定光束を発生させ、調整時に前記遅延光路の光路長を変化させて、位相シフトした複数の干渉縞画像をそれぞれ取り込み、各干渉縞画像のそれぞれで得られる干渉縞のバイアス、振幅、位相シフト量の少なくともいずれかを算出しておき、測定時は、前記干渉縞のバイアス算出結果、振幅算出結果、位相シフト量算出結果の少なくともいずれかに基づいて前記測定対象物の形状を測定するようにして、前記課題を解決したものである。
【0011】
ここで、前記調整時に前記遅延光路の光路長を変化させて、位相シフトした複数の干渉縞画像をそれぞれ取り込む際、前記測定対象物は干渉計本体に対して固定して配置することができる。
【0012】
又、
本発明は、測定の基準となる参照光束と測定対象物からの反射または透過によって得られる測定光束からなる被検光束を複数の領域に分割し、前記参照光束と前記測定光束の位相差を相対的にシフトさせた後に干渉縞を発生させて、位相シフトした複数の干渉縞画像を同時に撮像し、前記測定対象物の形状を測定する瞬時位相シフト干渉計において、前記参照光束と前記測定光束の光路長差よりも可干渉距離が短い光源を用い、前記光源からの光束を二つに分割して、光路長可変の遅延光路を用いて一方の光束は遅延させて光路長差を付与して他方の光束と同一光軸上に重ね合わせた後に、前記参照光束と前記測定光束を発生させ、調整時に前記遅延光路の光路長を変化させて、位相シフトした複数の干渉縞画像をそれぞれ取り込み、各干渉縞画像のそれぞれで得られる干渉縞のバイアス、振幅、位相シフト量の少なくともいずれかを算出しておき、測定時は、前記干渉縞のバイアス算出結果、振幅算出結果、位相シフト量算出結果の少なくともいずれかに基づいて前記測定対象物の形状を測定する際に、前記複数の領域を、マイクロポラライザによって区分された、単位セル内の微小領域とする
ようにして、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明による瞬時位相シフト干渉計において、可干渉性の低い光源を使用し、参照光束と測定光束の光路長差を変化させるための遅延光路を配置する。そして、瞬時位相シフト干渉計を補正するために、例えば複数の撮像手段又は単一の撮像手段の異なる撮像領域で得られる干渉縞の光学的パラメータを測定する際には、遅延光路中のミラーを微小平行移動させて干渉縞の位相をシフトさせ、干渉縞を取り込む。そして、各々撮像手段又は撮像領域で得られた複数の位相シフト干渉縞画像から光学的パラメータを算出する。
【0014】
したがって、光学的パラメータの事前測定(校正)を、ユーザが特別な装置を使用することなく、干渉計を実際に使用している環境で簡単に実施できる。よって、干渉計の性能を維持するためのメンテナンスの手間が、大幅に削減できる。これにより、例えば複数の異なる撮像手段又は単一の撮像手段の異なる撮像領域それぞれで得られる干渉縞同士のバイアス及び振幅の差異や、位相シフト量の設定値に対して光学的に実施した実効値の差異によって発生する誤差を低減又は解消して、測定対象物の形状を高精度で測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】特許文献1及び2に記載された、従来の瞬時位相シフト干渉計の光学的な構成の例を示す光路図
【
図2】同じくバイアス、振幅、位相シフト量の測定方法を示す図
【
図3】本発明に係る瞬時位相シフト干渉計の第1実施形態の光学的な構成を示す光路図
【
図4】同じく光学的パラメータの事前測定状態を示す光路図
【
図7】本発明に係る瞬時位相シフト干渉計の第2実施形態の要部構成を示す光路図
【
図8】本発明に係る瞬時位相シフト干渉計の第3実施形態の要部構成を示す光路図
【
図9】第3実施形態で用いる偏光板の例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。又、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0017】
本発明に係る瞬時位相シフト干渉計の第1実施形態の構成を
図3に示す。光源100からの光束を偏光面が直交した二つの成分に分割する。本実施形態では、偏光ビームスプリッタ(PBS)201で水平偏光の光束l
1と垂直偏光の光束l
2に分割し、垂直偏光(l
2)の反射光束をミラーとしての直角プリズム203で反射させて迂回させた後に、PBS202で水平偏光の光束l
1と垂直偏光の光束l
2を重ね合わせる。そして、レンズ301、ビームスプリッタ302、レンズ303を含むビーム拡大光学系300によって拡大コリメートした後に、従来のフィゾー型干渉計と同様に同じ光軸上に配置した、参照面400と測定対象物500の表面(以下、測定面とも称する)を照射する。両面からの被検光束をビームスプリッタ302によってビーム拡大光学系300から取り出して、結像レンズ600を透過させる。そして、λ/4板700を透過させて水平偏光と垂直偏光の光束l
1、l
2を互いに左右逆回りの円偏光にした後に、撮像系800に入射する。撮像系800内の三分割プリズム809によって、被検光束を分割した後に、それぞれの分割光路上に、異なる回転調整した偏光板810、811、812を配置することで、参照面400に対する測定面500からの反射光の位相差を干渉縞に可視化する。そして、干渉縞画像を3台のカメラ813、814、815で撮像する。
【0018】
この干渉計においては、迂回の光路長差L
aと参照面400と測定面500からの反射光の光路長差L
bを一致させて、さらに、光源100に可干渉距離ΔLが光路長差L
aよりも短い光源を使用する。すると、三分割した光路上に配置した偏光板810、811、812を透過して可視化される干渉縞は、参照面400からの反射光による垂直偏光成分と測定面500からの反射光による水平偏光成分の光束によってのみ発生する。また、3台のカメラ813、814、815によって得られる干渉縞は各カメラ813、814、815の前に配置した偏光板810、811、812の設置角度に応じて、位相がシフトした干渉縞になる。
【0019】
次に、本発明の目的である、3台の別々のカメラ813、814、815によって得られる干渉縞画像間のバイアスと振幅および干渉縞間の位相シフト量を、特別な装置を使用することなく簡単に測定する方法を示す。
【0020】
本干渉計によって得られる干渉縞は、遅延光路200を経た参照面400で反射した垂直偏光の光束l
2と、迂回させずに測定対象物500を照射して得られる水平偏光の光束l
1との間で発生したものである。したがって、
図4に示すように、直角プリズム203の位置を図の上下にシフトさせて、装置内部の遅延光路200による参照光束(l
2)の遅延量を変化させることによって、参照光束(l
2)に対して測定光束(l
1)を相対的に位相シフトさせることができる。そこで、遅延光路200の直角プリズム203に微小変位移動機構204を追加して、干渉縞の位相をシフトさせる。そして、それぞれのカメラ813、814、815で干渉縞画像を取り込み、特許文献1や特許文献2に示された数式などを使って演算することで、各々のカメラ813、814、815によって得られる干渉縞画像間のバイアスと振幅と位相シフト量の光学的パラメータを取得することができる。
【0021】
各カメラ813、814、815で得られる干渉縞の光学的パラメータの測定は、装置内部に組み込まれた微小変位移動機構204の動作によって実現される。そのため、ユーザが高精度な移動ステージを別途用意する必要がなく、誰でも簡単に実現できる。
【0022】
遅延光路200のミラーには図示したような直角プリズム203を使用すれば、その光学的な性質上、微小変位に伴う直角プリズムのヨーイングなどによる光軸ずれは小さくできる。従来の測定対象物500をシフトさせる場合には、参照面400に対する測定面の相対姿勢は一定に保ったまま、光軸方向に正確に平行移動させなければならない。これらを比較すると、本発明手法では、位相シフトさせるために必要な微小変位移動機構204をより簡単に製作できることが分かる。
【0023】
次に、本発明で示す干渉縞のバイアス、振幅、位相シフト量といった光学的パラメータの測定方法の別の特徴を述べる。
【0024】
従来の方法においては、参照面400に対して測定対象物500を相対的にシフトさせる機構を干渉計とは別に配置することになる。この場合、干渉計と測定対象物500は独立性の高い保持機構にせざるを得ず、測定環境で生じた振動によって、測定対象物500に相対的なシフト誤差が発生する。したがって、光学的パラメータを測定する際には、振動を排除した精密な測定環境が要求される。
【0025】
これに対して、本発明手法においては、測定対象物500は参照面400に対して固定の光路上で設置しても良いため、
図5に例示するように、測定対象物500を固定部材501で参照面400の鏡筒401にしっかりと固定して配置することができる。これにより、干渉計本体900と測定対象物500をなかば剛体のように設置することができるため、組立加工現場といった環境でも、振動の影響を受けることなく測定することができる。即ち、本発明手法は、従来の方法のように、精密な測定環境をわざわざ用意しなくても、干渉縞のパラメータ測定を実施することができるといった特徴がある。
【0026】
なお、干渉縞の光学的パラメータ測定の実施形態については、フィゾー型干渉計の例を示したが、本発明で適用できる干渉計は、これに限定されるものではない。
【0027】
例えば、参照光束と測定光束をビームスプリッタで概略90°で分割して干渉させる、トワイマングリーン型干渉計や、独立光路に分割して透過波面などを計測するマッハツェンダ型干渉計など、参照光束と測定光束の二光束に分割して干渉させる干渉計であれば、いずれのタイプの干渉計であっても適用可能であることは言うまでもない。
【0028】
また、
図3に示した干渉計の光学的な構成例においては、遅延光路200は直角プリズム203と偏光ビームスプリッタ201、202を用いた例を示したが、この形に限定されるものではなく、参照光束と測定光束の光路長差を相殺する遅延光路であれば、どのような形でも良い。例えば、
図6に示す変形例のように、PBS211と、λ/4板212、214と、平面ミラー213、215を組み合わせて、PBS211での透過光と反射光との間で遅延させたものでも構わない。この場合、向かい合せた平面ミラー213、215の片方または両方(
図6では213のみ)を光軸方向に移動させることによって、
図4に示したものと同様のシフト量Δd
iを与えることができる。
【0029】
また、遅延を付与するために使用するミラーは、
図3、
図4や
図6の例に示した直角プリズム203や平面ミラー213、215に限定されるものではなく、リトロリフレクタやキャッツアイなど光を反射させる機能を持つ素子であればどのようなものであっても使用可能である。
【0030】
更に、カメラの数も3台に限定されず、複数の画像が同時に得られるならば、
図7に要部を模式的に示す第2実施形態のように、1台のカメラ820の撮像領域を3台分に分割して使用しても良い。或いは、
図8に要部を模式的に示す第3実施形態のように、
図9の如く、カメラの画素サイズに合わせて、偏光板810、811、812に相当する微小領域が単位セル内に形成された偏光板であるマイクロポラライザ(ポラライザアレイとも称する)830を用いることで、光束を分割せずに位相シフトした干渉縞を単一のカメラ820で得るようにしても良い。
【符号の説明】
【0031】
100…光源
200…遅延光路
201、202、211…偏光ビームスプリッタ(PBS)
203…直角プリズム
204…微小変位移動機構
212、214、700…λ/4板
213、215…平面ミラー
300…ビーム拡大光学系
400…参照面
401…鏡筒
500…測定対象物(測定面)
501…固定部材
600…結像レンズ
800…撮像系
809…三分割プリズム
810、811、812…偏光板
813、814、815、820…カメラ
830…マイクロポラライザ(偏光板)
900…干渉計本体