特許第6554387号(P6554387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6554387ロードロック装置における基板冷却方法、基板搬送方法、およびロードロック装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554387
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】ロードロック装置における基板冷却方法、基板搬送方法、およびロードロック装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20190722BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H01L21/205
   C23C16/44 F
   H01L21/68 A
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-209766(P2015-209766)
(22)【出願日】2015年10月26日
(65)【公開番号】特開2017-84897(P2017-84897A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】阪上 博充
(72)【発明者】
【氏名】岡野 真也
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−182235(JP,A)
【文献】 特開2000−317761(JP,A)
【文献】 特開平11−330219(JP,A)
【文献】 特開2004−303969(JP,A)
【文献】 特開2010−165841(JP,A)
【文献】 特開2001−044108(JP,A)
【文献】 特開2012−119626(JP,A)
【文献】 特開2011−091373(JP,A)
【文献】 特開2008−192840(JP,A)
【文献】 特開2006−093543(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0318142(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205、21/31、21/365、21/469、
21/67−21/683、21/86、
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する容器と、前記容器内に配置され、基板を近接させた状態で基板を冷却する冷却部材と、前記容器内を排気する排気機構と、前記容器内にパージガスを導入するパージガス導入機構とを有し、大気圧近傍の第1の圧力に保持された第1のモジュールと真空状態の第2の圧力に保持された第2のモジュールとの間で基板を搬送する際に、前記第1の圧力および前記第2の圧力の間で圧力制御するロードロック装置を用い、前記第2のモジュールから搬送されてきた高温の基板を前記第1のモジュールへ搬送する際に前記基板を冷却する基板冷却方法であって、
前記容器内を前記第2の圧力に保持し、前記容器と前記第2のモジュールとを連通して、前記高温の基板を前記容器内へ搬入する工程と、
前記基板を前記冷却部材に近接した冷却位置に位置させる工程と、
前記容器内の圧力が、前記冷却部材表面と前記基板裏面との間の領域が分子流条件を満たす第3の圧力となるように前記容器内を排気して前記容器内の圧力を前記第3の圧力に保持し、前記基板の温度を均一化する工程と、
前記容器内にパージガスを導入して前記容器内の圧力を前記第1の圧力に上昇させ、その過程で前記冷却部材からの伝熱により前記基板を冷却する工程と
を有することを特徴とするロードロック装置における基板冷却方法。
【請求項2】
前記高温の基板の温度は200℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のロードロック装置における基板冷却方法。
【請求項3】
前記冷却位置において、前記冷却部材の表面と前記基板の裏面との距離は、0.2〜1mmの範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロードロック装置における基板冷却方法。
【請求項4】
前記第3の圧力の保持時間は、5〜60secであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のロードロック装置における基板冷却方法。
【請求項5】
前記第2の圧力は、20〜200Paの範囲であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のロードロック装置における基板冷却方法。
【請求項6】
前記冷却部材は、その中に冷却媒体を通流させることにより所定の温度に温調されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のロードロック装置における基板冷却方法。
【請求項7】
基板を収容する容器と、前記容器内に配置され、基板を近接させた状態で基板を冷却する冷却部材と、前記容器内を排気する排気機構と、前記容器内にパージガスを導入するパージガス導入機構とを有し、大気圧近傍の第1の圧力に保持された第1のモジュールと真空状態の第2の圧力に保持された第2のモジュールとの間で基板を搬送する際に、前記第1の圧力および前記第2の圧力の間で圧力制御するロードロック装置を用いて、高温の基板を前記第2のモジュールから前記第1のモジュールへ搬送する基板搬送方法であって、
前記容器内を前記第2の圧力に保持し、前記容器と前記第2のモジュールとを連通して、前記高温の基板を前記容器内へ搬入する工程と、
前記基板を前記冷却部材に近接した冷却位置に位置させる工程と、
前記容器内の圧力が、前記冷却部材表面と前記基板裏面との間の領域が分子流条件を満たす第3の圧力となるように前記容器内を排気して前記容器内の圧力を前記第3の圧力に保持し、前記基板の温度を均一化する工程と、
前記容器内にパージガスを導入して前記容器内の圧力を前記第1の圧力に上昇させ、その過程で前記冷却部材からの伝熱により前記基板を冷却する工程と、
前記基板が所定温度に冷却された時点で、前記基板を前記第2のモジュールへ搬出する工程と
を有することを特徴とする基板搬送方法。
【請求項8】
前記高温の基板の温度は200℃以上であることを特徴とする請求項7に記載の基板搬送方法。
【請求項9】
前記冷却位置において、前記冷却部材の表面と前記基板の裏面との距離は、0.2〜1mmの範囲であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の基板搬送方法。
【請求項10】
前記第3の圧力の保持時間は、5〜60secであることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の基板搬送方法。
【請求項11】
前記第2の圧力は、20〜200Paの範囲であることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の基板搬送方法。
【請求項12】
前記冷却部材は、その中に冷却媒体を通流させることにより所定の温度に温調されていることを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の基板搬送方法。
【請求項13】
大気圧近傍の第1の圧力に保持された第1のモジュールと真空状態の第2の圧力に保持された第2のモジュールとの間で基板を搬送する際に、前記第1の圧力および前記第2の圧力の間で圧力制御するロードロック装置であって、
基板を収容する容器と、
前記容器内に配置され、基板を近接させた状態で基板を冷却する冷却部材と、
前記容器内を排気する排気機構と、
前記容器内にパージガスを導入するパージガス導入機構と、
前記容器を前記第1のモジュールおよび前記第2のモジュールのいずれかに連通させる連通手段と、
前記ロードロック装置の各構成部を制御する制御機構と
を有し、
前記制御機構は、前記第2のモジュールから搬送されてきた高温の基板を前記第1のモジュールへ搬送する際に、
前記容器内を前記第2の圧力に保持し、前記容器と前記第2のモジュールとを連通して、前記高温の基板を前記容器内へ搬入させ、
前記基板を前記冷却部材に近接した冷却位置に位置させ、
前記容器内の圧力が、前記冷却部材表面と前記基板裏面との間の領域が分子流条件を満たすような第3の圧力となるように前記容器内を排気させて前記容器内の圧力を前記第3の圧力に保持させ、前記基板の温度を均一化させ
前記容器内にパージガスを導入させて前記容器内の圧力を前記第1の圧力に上昇させて、その過程で前記冷却部材からの伝熱により前記基板を冷却させることを特徴とするロードロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空で基板を処理する基板処理システムに用いられるロードロック装置における基板冷却方法、基板搬送方法、およびロードロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、被処理基板である半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)に対し、成膜処理やエッチング処理等の真空雰囲気で行われる真空処理が多用されている。最近では、このような真空処理の効率化の観点、および酸化やコンタミネーション等の汚染を抑制する観点から、複数の真空処理ユニットを真空に保持される搬送室に連結し、この搬送室に設けられた搬送装置により各真空処理ユニットにウエハを搬送可能としたクラスターツール型のマルチチャンバタイプの基板処理システムが用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
このようなマルチチャンバ処理システムにおいては、大気中に置かれているウエハカセットと真空に保持された搬送室との間でウエハを搬送するために、搬送室とウエハカセットとの間に大気雰囲気と真空雰囲気で切り替え可能なロードロック装置を設け、このロードロック装置を介してウエハが搬送される。
【0004】
ところで、成膜処理としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法のように、ウエハを200℃以上、例えば500℃といった高温に加熱して処理を行うものがある。このような高温処理に上述したマルチチャンバ処理システムを適用する場合には、ウエハは高温のまま真空処理ユニットから取り出され、ロードロック装置の容器内に搬送される。しかし、このような高温状態でウエハを大気に曝露するとウエハが酸化されてしまう。また、このような高温のままウエハを収納容器に収納させると、通常樹脂製である収納容器が溶ける等の不都合が生じる。
【0005】
このような不都合を回避するため、ロードロック装置の容器内にウエハを冷却する冷却機構を備えたクーリングプレートを配置し、ウエハをクーリングプレートに近接した状態でロードロック装置の容器内を真空から大気圧に戻す間にウエハを冷却することが行われている(例えば特許文献2)。
【0006】
ところで、高温のウエハが真空処理ユニットから取り出された後、急激に冷却されるとウエハの表裏の熱膨張差に起因してウエハが反ってしまうことがある。このため、特許文献2では、ロードロック装置でウエハの反りが生じた際に、圧力の上昇を停止することや、クーリングプレートの上方の離れた位置で待機すること等により冷却を緩和することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−208589号公報
【特許文献2】特開2009−182235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、最近ではウエハに形成される素子が複雑化し、ウエハが反りやすくなっており、ウエハがロードロック装置に搬入される前にウエハに反りが発生している場合も多く、ロードロック装置内でウエハの反りを効果的に回復させつつ、一層効率よくウエハを冷却することが求められる。
【0009】
したがって、本発明は、ロードロック装置内で基板の反りを効果的にかつ十分に回復させつつ、基板を高効率で冷却することができるロードロック装置における基板冷却方法、および基板搬送方法を提供することを課題とする。また、基板の反りを効果的にかつ十分に回復させつつ、基板を高効率で冷却することができるロードロック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、基板を収容する容器と、前記容器内に配置され、基板を近接させた状態で基板を冷却する冷却部材と、前記容器内を排気する排気機構と、前記容器内にパージガスを導入するパージガス導入機構とを有し、大気圧近傍の第1の圧力に保持された第1のモジュールと真空状態の第2の圧力に保持された第2のモジュールとの間で基板を搬送する際に、前記第1の圧力および前記第2の圧力の間で圧力制御するロードロック装置を用い、前記第2のモジュールから搬送されてきた高温の基板を前記第1のモジュールへ搬送する際に前記基板を冷却する基板冷却方法であって、前記容器内を前記第2の圧力に保持し、前記容器と前記第2のモジュールとを連通して、前記高温の基板を前記容器内へ搬入する工程と、前記基板を前記冷却部材に近接した冷却位置に位置させる工程と、前記容器内の圧力が、前記冷却部材表面と前記基板裏面との間の領域が分子流条件を満たす第3の圧力となるように前記容器内を排気して前記容器内の圧力を前記第3の圧力に保持し、前記基板の温度を均一化する工程と、前記容器内にパージガスを導入して前記容器内の圧力を前記第1の圧力に上昇させ、その過程で前記冷却部材からの伝熱により前記基板を冷却する工程とを有することを特徴とするロードロック装置における基板冷却方法を提供する。
【0011】
本発明の第2の観点は、基板を収容する容器と、前記容器内に配置され、基板を近接させた状態で基板を冷却する冷却部材と、前記容器内を排気する排気機構と、前記容器内にパージガスを導入するパージガス導入機構とを有し、大気圧近傍の第1の圧力に保持された第1のモジュールと真空状態の第2の圧力に保持された第2のモジュールとの間で基板を搬送する際に、前記第1の圧力および前記第2の圧力の間で圧力制御するロードロック装置を用いて、高温の基板を前記第2のモジュールから前記第1のモジュールへ搬送する基板搬送方法であって、前記容器内を前記第2の圧力に保持し、前記容器と前記第2のモジュールとを連通して、前記高温の基板を前記容器内へ搬入する工程と、前記基板を前記冷却部材に近接した冷却位置に位置させる工程と、前記容器内の圧力が、前記冷却部材表面と前記基板裏面との間の領域が分子流条件を満たす第3の圧力となるように前記容器内を排気して前記容器内の圧力を前記第3の圧力に保持し、前記基板の温度を均一化する工程と、前記容器内にパージガスを導入して前記容器内の圧力を前記第1の圧力に上昇させ、その過程で前記冷却部材からの伝熱により前記基板を冷却する工程と、前記基板が所定温度に冷却された時点で、前記基板を前記第2のモジュールへ搬出する工程とを有することを特徴とする基板搬送方法を提供する。
【0012】
上記第1の観点および第2の観点において、前記高温の基板の温度は200℃以上であることが好ましい。また、前記冷却位置において、前記冷却部材の表面と前記基板の裏面との距離は、0.2〜1mmの範囲であることが好ましい。さらに、前記第3の圧力の保持時間は、5〜60secであることが好ましい。
【0013】
前記第2の圧力は、20〜200Paの範囲であってよい。また、前記冷却部材は、その中に冷却媒体を通流させることにより所定の温度に温調される構成をとることができる。
【0014】
本発明の第3の観点は、大気圧近傍の第1の圧力に保持された第1のモジュールと真空状態の第2の圧力に保持された第2のモジュールとの間で基板を搬送する際に、前記第1の圧力および前記第2の圧力の間で圧力制御するロードロック装置であって、基板を収容する容器と、前記容器内に配置され、基板を近接させた状態で基板を冷却する冷却部材と、前記容器内を排気する排気機構と、前記容器内にパージガスを導入するパージガス導入機構と、前記容器を前記第1のモジュールおよび前記第2のモジュールのいずれかに連通させる連通手段と、前記ロードロック装置の各構成部を制御する制御機構とを有し、前記制御機構は、前記第2のモジュールから搬送されてきた高温の基板を前記第1のモジュールへ搬送する際に、前記容器内を前記第2の圧力に保持し、前記容器と前記第2のモジュールとを連通して、前記高温の基板を前記容器内へ搬入させ、前記基板を前記冷却部材に近接した冷却位置に位置させ、前記容器内の圧力が、前記冷却部材表面と前記基板裏面との間の領域が分子流条件を満たすような第3の圧力となるように前記容器内を排気させて前記容器内の圧力を前記第3の圧力に保持させ、前記基板の温度を均一化させ、前記容器内にパージガスを導入させて前記容器内の圧力を前記第1の圧力に上昇させて、その過程で前記冷却部材からの伝熱により前記基板を冷却させることを特徴とするロードロック装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高温の基板を第2の圧力の容器内に搬入した後、基板を冷却部材に近接した冷却位置に位置させ、その状態で、容器内の圧力を、冷却部材表面と基板裏面との間の領域が分子流条件を満たす第3の圧力になるように容器内を排気することにより、基板が断熱状態となるので、伝熱でのウエハの冷却はほとんど進行せず、基板内で熱交換が進み、また、基板は均熱性のとれた冷却部材に近接しており、温度の均一化が促進される。このため、基板の反りを短時間で十分に回復させることができる。そして、このように基板が均熱化されて反りが十分に回復された状態で、容器内にパージガスを導入して圧力を上昇させるので、基板を高効率で冷却することができ、冷却時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る基板冷却方法が適用されるロードロック装置を備えたマルチチャンバタイプの基板処理システムを概略的に示す水平断面図である。
図2図1の基板処理システムにおけるロードロック装置を示す垂直断面図である。
図3図1の基板処理システムにおけるロードロック装置を示す水平断面図である。
図4】分子流領域と連続流領域における圧力Pと熱伝導率kとの関係を示す図である。
図5】ロードロック装置における冷却シーケンスの具体例を説明するためのフローチャートである。
図6図5の冷却シーケンスの際の容器内の圧力変化を示す図である。
図7】従来例の冷却シーケンスでウエハを冷却した際のウエハのセンターとエッジの変位を示す図である。
図8】本発明の実施形態の冷却シーケンスでウエハを冷却した際のウエハのセンターとエッジの変位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0018】
<基板処理システム>
図1は、本発明の一実施形態に係る基板冷却方法が適用されるロードロック装置を備えたマルチチャンバタイプの基板処理システムを概略的に示す水平断面図である。
【0019】
基板処理システム100は、基板に対してCVD法による成膜処理のような高温での処理を行うものである。特に、200℃以上の基板処理に好適である。被処理基板は、特に限定されるものではないが、以下の説明では、基板として半導体ウエハ(ウエハ)を用いた場合を例にとって説明する。
【0020】
図1に示すように、基板処理システム100は、ウエハWに対して上記のような高温処理を行う4つの処理ユニット1、2、3、4を備えており、これらの処理ユニット1〜4は六角形をなす搬送室5の4つの辺に対応する壁部にそれぞれ対応して設けられている。処理ユニット1、2、3、4は、その中で処理プレート上に被処理基板であるウエハWを載置した状態で所定の高温処理が行われる。また、搬送室5の他の壁部には2つのロードロック装置6が接続されている。なお、ロードロック装置6は1つであっても3つ以上であってもよい。
【0021】
2つのロードロック装置6の搬送室5と反対側には搬入出室8が接続されており、搬入出室8のロードロック装置6と反対側には被処理基板としてのウエハWを収容可能な3つのキャリアCを取り付けるポート9、10、11が設けられている。搬入出室8の上部には清浄空気のダウンフローを形成するためのフィルタ(図示せず)が設けられている。
【0022】
処理ユニット1〜4は、同図に示すように、搬送室5の各壁部に対応する壁部にゲートバルブGを介して接続され、これらは対応するゲートバルブGを開放することにより搬送室5と連通され、対応するゲートバルブGを閉じることにより搬送室5から遮断される。また、2つのロードロック装置6は、搬送室5の残りの壁部のそれぞれに、第1のゲートバルブG1を介して接続され、また、搬入出室8に第2のゲートバルブG2を介して接続されている。
【0023】
搬送室5内には、処理ユニット1〜4、ロードロック装置6に対して、ウエハWの搬入出を行う搬送装置12が設けられている。この搬送装置12は、搬送室5の略中央に配設されたベース13と、ベース13に基端部が取り付けられた2つの多関節アーム14とを有している。ウエハWは、多関節アーム14の先端に設けられたハンド14aに支持された状態で搬送される。この搬送室5内は真空ポンプ(図示せず)により排気されて所定の真空度に保持されるようになっている。
【0024】
搬入出室8のウエハ収納容器であるポート9,10、11にはそれぞれ図示しないシャッターが設けられており、これらポート9,10,11にウエハWを収容した、または空のフープFがステージSに直接取り付けられ、取り付けられた際にシャッターが外れて外気の侵入を防止しつつ搬入出室8と連通するようになっている。また、搬入出室8の側面にはアライメントチャンバ15が設けられており、そこでウエハWのアライメントが行われる。
【0025】
搬入出室8内には、フープFに対するウエハWの搬入出およびロードロック装置6に対するウエハWの搬入出を行う搬送装置16が設けられている。この搬送装置16は、2つの多関節アームを有しており、これら2つの多関節アーム17がフープFの配列方向に沿ってレール18上を走行可能となっていて、その先端のハンド17a上にウエハWを支持した状態でウエハWの搬送を行う。
【0026】
この基板処理システム100における各構成部、例えば、処理ユニット1〜4、搬送室5、ロードロック装置6におけるガス供給系や排気系、搬送装置12、16、ゲートバルブ等は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えた制御部20により制御されるようになっている。制御部20は真空処理システムのプロセスシーケンスおよび制御パラメータであるプロセスレシピを記憶した記憶部や、入力手段およびディスプレイ等を備えており、選択されたプロセスレシピに従って真空処理システムを制御するようになっている。
【0027】
<ロードロック装置>
次に、ロードロック装置6について詳細に説明する。
図2はロードロック装置を示す垂直断面図、図3はその水平断面図である。これらの図に示すように、ロードロック装置6は、容器31を有している。この容器31は、上部が開口した容器本体31aと、容器本体31aの上部開口を塞ぐ蓋体31bとを有している。容器31内の底部には、ウエハWが近接された状態で配置されてウエハWを冷却するクーリングプレート(冷却部材)32が設けられている。容器31およびクーリングプレート32は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成されている。
【0028】
容器31の一方の側壁には真空に保持された搬送室5と連通可能な開口34が設けられており、これと対向する側壁には最も高圧の第1の圧力(大気圧)に保持された搬入出室8と連通可能な開口35が設けられている。そして、開口34は上述した第1のゲートバルブG1により開閉可能となっており、開口35は上述した第2のゲートバルブG2により開閉可能となっている。
【0029】
容器31の底部には、容器31内を真空排気するための排気口36およびパージガス(例えばNガス)を導入するためのパージガス導入口37が設けられている。排気口36には排気管41が接続されており、この排気管41には、開閉バルブ42、排気速度調整バルブ43および真空ポンプ44が設けられている。また、パージガス導入口37には、パージガス供給配管45が接続されている。このパージガス供給配管45はパージガス源48から延びており、その途中には開閉バルブ46および流量調節バルブ47が設けられている。
【0030】
そして、真空側の搬送室5との間でウエハWの搬送を行う場合には、開閉バルブ46を閉じ、開閉バルブ42を開けた状態として、排気速度調整バルブ43を調節して所定速度で真空ポンプ44により排気管41を介して容器31内を排気し、容器31内の圧力を搬送室5内の圧力に対応する第2の圧力とし、その状態で第1のゲートバルブG1を開けて容器31と搬送室5との間を連通する。また、大気側の搬入出室8との間でウエハWの搬送を行う場合には、開閉バルブ42を閉じ、開閉バルブ46を開けた状態として、流量調節バルブ47を調節して容器31内にパージガス源48からパージガス供給配管45を介してNガス等のパージガスを所定流量で容器31内に導入してその中の圧力を大気圧近傍の第1の圧力にし、その状態で第2のゲートバルブG2を開けて容器31と搬入出室8との間を連通する。また、後述するように、容器31内はウエハWの反り矯正を目的として第2の圧力よりも低い第3の圧力にすることが可能となっている。
【0031】
容器31内の圧力は、圧力調整機構49により大気圧と所定の真空雰囲気との間で調整される。この圧力調整機構49は、圧力計59により測定された容器31内の圧力に基づいて、開閉バルブ42、排気速度調整バルブ43、流量調節バルブ47および開閉バルブ46を制御することにより容器31内の圧力を調整する。圧力調整機構49は上述の制御部20により制御される。
【0032】
クーリングプレート32には、ウエハ搬送用の3本(図2では2本のみ図示)のウエハ昇降ピン50がクーリングプレート32の表面(上面)に対して突没可能に設けられ、これらウエハ昇降ピン50は支持板51に固定されている。そして、ウエハ昇降ピン50は、モータやエアシリンダ等の駆動機構53によりロッド52を昇降させることにより、支持板51を介して昇降され、クーリングプレート32の表面(上面)から突出した、ウエハWの受け渡しを行う上昇位置と、クーリングプレート32内に没した下降位置とをとることができるようになっている。ウエハ昇降ピン50が上昇位置に位置している状態において、搬送装置12における多関節アーム14のハンド14a、または搬送装置16における多関節アーム17のハンド17aが容器31に挿入されて、これらいずれかのハンドとの間でウエハWが受け渡しされる。クーリングプレート32の上面には、3個(図2では2個のみ図示)のウエハ支持ピン54が取り付けられており、ウエハWが載せられたウエハ昇降ピン50を下降位置に下降させることにより、ウエハWがウエハ支持ピン54に載置され、ウエハWがクーリングプレート32に近接した冷却位置に位置されるようになっている。このように、ウエハWがクーリングプレート32の上面に直接接触しないことにより、ウエハW裏面へのパーティクルの付着を低減することができる。このときのクーリングプレート32からウエハ裏面までの距離は、0.2〜1mmが好ましく、例えば0.3mmとされる。
【0033】
クーリングプレート32内には、冷却媒体流路55が形成されており、この冷却媒体流路55には冷却媒体導入路56および冷却媒体排出路57が接続されていて、図示しない冷却媒体供給部から冷却水等の冷却媒体が通流されてクーリングプレート32に近接されたウエハWを冷却可能となっている。クーリングプレート32は、冷却媒体により、例えば25℃に温調される。
【0034】
<基板処理システムにおける処理動作>
次に、以上のように構成される基板処理システムにおける処理動作について説明する。
【0035】
まず、搬送装置16により搬入出室8に接続されたフープFからウエハWを取り出し、いずれかのロードロック装置6の容器31(図2参照)に搬入する。このとき、ロードロック装置6の容器31内にパージガスが導入されてその中が第1の圧力(大気圧)にされ、その後第2のゲートバルブG2を開放して、搬送装置16によりウエハWを搬入する。
【0036】
その後、容器31内を真空排気し、容器31内の圧力が搬送室5に対応する第2の圧力になった際に、第1のゲートバルブG1を開放して搬送装置12のハンド14aにより容器31内からウエハWを搬出する。そして、処理ユニット1〜4のうち、いずれかのゲートバルブGを開き、ハンド14a上のウエハWをその処理ユニットに搬入し、その処理ユニット内でウエハWに対してCVD成膜等の高温での真空処理を行う。
【0037】
処理ユニット内での真空処理が終了後、いずれかのロードロック装置6の容器31内を搬送室5に対応する第2の圧力に真空排気し、そのロードロック装置6の第1のゲートバルブG1を開けて処理後のウエハWをそのロードロック装置6の容器31内に搬入する。
【0038】
ウエハWをロードロック装置6の容器31内に搬入する際には、ウエハWは高温になっているので、ウエハ昇降ピン50を上昇させて上昇位置に位置させ、搬送装置12の一方の多関節アーム14のハンド14a上のウエハWを昇降ピン50上に受け渡し、その後、昇降ピン50を下降位置に下降させて、ウエハWをクーリングプレート32上のウエハ支持ピン54上の冷却位置に位置させる。容器31内におけるウエハWの冷却は、容器31内にパージガスを導入して圧力を搬入出室8への搬送圧力である第1の圧力(大気圧)まで上昇させ、その過程でクーリングプレート32の冷熱を、パージガスを介してウエハWに伝熱することにより行われる。
【0039】
このとき、処理ユニット1〜4から搬出されたウエハWは、高温状態から急激に冷却されるため、表裏の熱膨張差に起因して反りが発生することがある。このように反りが発生した状態のウエハWは、ロードロック装置6内で反りを回復させる必要がある。
【0040】
このため、従来、ウエハWを容器31に搬送して、昇降ピン50を下降させる前に、ロードロック装置6の容器31を密閉状態にして、ピン上に所定時間ウエハWを保持することによりウエハの反りを回復する手法がとられていた。しかし、このような手法では、要求される時間でウエハWの反りを十分に回復させることが困難であった。また、ウエハWの反りを十分に回復させようとすると、ロードロック装置6におけるウエハWの処理時間が長いものとなってしまう。
【0041】
そこで、本実施形態では、ロードロック装置6の容器31内の圧力を搬送室と同等の第2の圧力にした状態でウエハWを容器31内に搬入し、ウエハWをクーリングプレート32に近接した冷却位置に位置させた際に、容器31内の圧力が、クーリングプレート32とウエハ裏面との間の領域が分子流条件を満たす第3の圧力となるように、容器31内の排気(真空引き)を行い、その圧力に所定時間保持した後、容器31内にパージガスを導入してウエハWの冷却を行う。
【0042】
ここで、分子流とは、希薄気体の流れにおいて、分子の平均自由行程λが、流れの代表的な長さLよりも小さい流れをいう。すなわちクヌーセン数KnをKn=λ/Lとした場合、Kn>1になるような流れをいう。本実施形態の場合、Lは冷却位置におけるクーリングプレート32表面からウエハ裏面までの距離であり、例えば0.3mmである。
【0043】
分子流領域では、気体分子どうしの衝突が極めて少なく、気体分子は、ほぼ直接クーリングプレート32の表面とウエハ裏面との間を移動する。このため、気体による伝熱量は、気体分子の数、すなわち圧力に比例する。分子流領域では、熱エネルギーを伝達する気体分子の数は極めて少ないため、熱伝導は極めて小さい。このため、クーリングプレート32の表面とウエハ裏面との間が分子流条件を満たすようにすることにより、これらの間をほぼ断熱状態とすることができる。
【0044】
このように、容器31内の圧力を、クーリングプレート32の表面とウエハ裏面との間の領域が分子流条件を満たす第3の圧力に保持することにより、ウエハWが断熱状態となるので、伝熱でのウエハの冷却はほとんど進行せず、ウエハW内で熱交換が進み、また、ウエハWは均熱性のとれたクーリングプレートに近接していることも相俟って、温度の均一化が促進される。このため、ウエハWの反りを短時間で十分に回復させることができる。なお、ウエハWとクーリングプレート32は近接しているので、輻射による冷却も多少進行する。そして、このようにウエハWが均熱化されて反りが十分に回復された状態で、容器31内にパージガスを導入して圧力を上昇させるので、ウエハWを高効率で冷却することができ、冷却時間を短縮することができる。より断熱効果を高める点から、第3の圧力は10Pa以下が好ましい。
【0045】
一方、Kn<1となる連続流(粘性流)領域では、圧力が変化すると熱エネルギーを伝達する気体分子の数が変化するものの、平均自由工程も変化するため、気体による伝熱量は圧力に依存せず、クーリングプレート32の表面とウエハ裏面との間は一定の熱伝導率となり、分子流条件のような断熱効果は生じ難い。
【0046】
分子流領域と連続流領域における圧力Pと熱伝導率kとの関係を図4に示す。圧力Pthを閾値として、それよりも圧力が高い領域が連続流領域となり、熱伝導率kはk=kgの一定値となるのに対し、Pthよりも圧力が低い分子流領域では、熱伝導率kは、圧力Pに比例し、k=kg×(P/Pth)となる。
【0047】
上記Pthは、パージガスとしてNガスを用いた場合には、以下の(1)式で表すことができる。
【数1】
ここで、k:ボルツマン定数、σ:N分子の直径、πσ:衝突断面積である。(1)式から、ウエハ温度Tを500℃(773K)とした場合に、クーリングプレート32の上面とウエハ裏面との間の距離Lが0.1755mmであれば、Pthは100Pa、1.755mmであれば10Pa、17.55mmであれば1Paとなる。例示したL=0.3mmの場合はPthが58.5Paということになる。
【0048】
従来、CVD成膜の場合、搬送室の圧力は20〜200Pa程度、好ましくは100〜200Pa程度であり、ロードロック装置にウエハを搬入する際には、ロードロック装置の容器内の圧力をその圧力に設定していた。しかし、この範囲の圧力では、クーリングプレート32の表面とウエハ裏面との間の領域は連続流条件になることが多く、その場合には、本実施形態のように断熱状態を確保することができない。また、ウエハWを上昇させた状態で保持しているので均熱がとりにくい。このため、上述したように従来は短時間で反りを回復することが困難であり、ウエハの反りが十分に回復しない状態でパージガスを導入せざるを得なかった。また、ウエハのセンターとエッジの変位の差が0.7mmを超えると、急激にパージガスを導入したときにウエハの反りが進行するおそれがあることも知られており、このため従来はパージガス導入の初期段階でスローパージを入れる必要もあり、冷却効率を高くすることは困難であった。
【0049】
これに対して、本実施形態では、ウエハWをクーリングプレート32に近接させた後、容器31内の圧力を、クーリングプレート32の表面とウエハ裏面との間の領域が分子流条件を満たす第3の圧力に保持することにより、ウエハの反りを十分に回復させて、エッジとセンターの変位の差をほぼ確実に0.7mm以下とすることができるので、パージガスを導入する際に最初から大流量でパージガスを導入してもウエハが再び反ることがなく、冷却効率を極めて高くすることができる。また、ウエハのエッジとセンターの変位の差(反り)が少ないため、クーリングプレート32とウエハ裏面との距離がウエハの面内で均一になる。よって、クーリングプレート32からの冷熱をウエハ裏面の全面で受けることになるため、この点でも冷却効率を高くすることができる。
【0050】
<ロードロック装置における冷却シーケンスの具体例>
次に、ロードロック装置における冷却シーケンスの具体例について説明する。図5は当該シーケンスを説明するためのフローチャート、図6はその際の容器内の圧力変化を示す図である。
【0051】
最初に、容器31内の圧力を搬送室5と同様の第2の圧力(20〜200Pa、好ましくは100〜200Pa)に調整した状態でゲートバルブG1を開にし、ウエハ昇降ピン50を上昇させて上昇位置に位置させ、いずれかの処理ユニットで高温の成膜処理を行った後のウエハWを搬送装置12(多関節アーム14のハンド14a)により容器31内に搬入し、ウエハ昇降ピン50上に受け渡す(ステップ1)。このときのウエハWの温度は200℃以上が好適である。
【0052】
次に、ゲートバルブG1を閉じ、ウエハ昇降ピン50を下降位置に下降させ、ウエハWをクーリングプレート32上面のウエハ支持ピン54上に載置させ、ウエハWをクーリングプレート32に近接した冷却位置に位置させる(ステップ2)。このときのクーリングプレート32からウエハ裏面までの距離は0.2〜1mmが好ましく、例えば0.3mmとされる。
【0053】
次に、容器31内の圧力が、クーリングプレート32表面とウエハ裏面との間の領域が分子流条件を満たす第3の圧力となるように、真空ポンプ44により容器31内を排気(真空引き)する(ステップ3)。このとき、真空ポンプ44を引き切り状態とし、クーリングプレート32とウエハ裏面との間の距離Lが0.3mmでは、容器31内を58.5Pa以下に排気する。これにより、ウエハWが断熱状態となるので、ウエハWの冷却はほとんど進行せず、ウエハW内で熱交換が進むとともに、ウエハWが均熱状態のクーリングプレート32に近接していることにより、ウエハW温度の均一化が促進される。このため、上述したように、ウエハWの反りが回復される。この時の保持時間は、5〜60secが好ましい。また、断熱効果をより高める点から、第3の圧力は10Pa以下が好ましい。
【0054】
なお、ステップ3の真空引きは、ウエハWがウエハ支持ピン54上に載置された状態で、所定の圧力で所定時間保持されればよく、上昇位置にあるウエハ昇降ピン50上にウエハWが存在している状態、またはウエハ昇降ピン50によりウエハWを下降している途中で真空引きを開始してもよい。
【0055】
真空引き終了後、容器31内にパージガス(例えばNガス)を導入し、容器31内の圧力を搬入出室8への搬送圧力である第1の圧力(大気圧)に上昇させ、その過程でクーリングプレート32からの伝熱によりウエハWの冷却を行う(ステップ4)。
【0056】
ロードロック装置6によりウエハWが所定温度まで冷却されて冷却が完了した時点で、ゲートバルブG2を開にし、ウエハ昇降ピン50によりウエハWを上昇させ、搬送装置16における多関節アーム17のハンド17aにより容器31から搬入出室8へ搬出する(ステップ5)。そして、ハンド17a上のウエハWを、いずれかのフープFに搬送する。
【0057】
なお、従来は、複数のロードロック装置に対して一つの真空ポンプで対応可能であったが、本実施形態では、処理後のウエハが戻されたときに真空引きを行う必要があるため、一つのロードロック装置において処理前のウエハの真空引きが行われているときに、他のロードロック装置において処理後のウエハの真空引きが可能なように、複数の真空ポンプを設ける必要がある。
【0058】
<実験例>
次に、ロードロック装置により種々のシーケンスでウエハの冷却を行った際のウエハの反りの回復状態を実験した結果について説明する。
【0059】
ここでは、ウエハの反りが凸状であり、ウエハの外周部を保持した状態におけるセンターとエッジの変位の経時変化を示す。ウエハのセンターとエッジの変位差が減少すると反り量が減るため、センターまたはエッジの一方が急な傾きで他方に収束したときに反り回復が良好と判断した。
【0060】
図7(a)〜(c)は、従来例を示し、図8(a)、(b)は、本実施形態の例を示す。
【0061】
図7(a)は、反り回復処理を行わない場合であり、ウエハをロードロック装置の容器内に搬入し、ウエハ昇降ピンを下降させてウエハをクーリングプレートに近接させた後、スローパージを10sec、メインパージを19sec行ったものであるが、ウエハのセンターとエッジの変位差が大きく、反りが回復していないことがわかる。
【0062】
これに対して、図7(b)は、ウエハの反り対策として、上昇位置にあるウエハ昇降ピン上にウエハを載置した状態で10sec保持した後、ウエハ昇降ピンを下降させてウエハをクーリングプレートに近接させ、スローパージを10sec、メインパージを19sec行ったものであるが、ウエハの反り量は図7(a)と同程度であり、反り回復効果はほとんど見られない。
【0063】
図7(c)は、ウエハ反り対策として、上昇位置にあるウエハ昇降ピン上にウエハを載置した状態で真空引きし、60sec保持した後、ウエハ昇降ピンを下降させてウエハをクーリングプレートに近接させ、スローパージを10sec、メインパージを19sec行ったものである。この場合、ウエハの反りはある程度回復したものの、収束の傾きが小さく、冷却のための時間が極めて長くなり、効率的な冷却が行われなかった。
【0064】
これに対し、図8(a)、(b)は、ウエハをクーリングプレートに近接させた後に、分子流条件を満たす圧力に保持する処理をそれぞれ25sec、10sec行った後にメインパージを19sec行ったものであるが、いずれも急な傾きでセンターがエッジに収束しており、いずれも短時間でウエハの反りが回復していることがわかる。
【0065】
<他の適用>
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、真空処理ユニットを4つ、ロードロック装置を2つ設けたマルチチャンバタイプの真空処理システムに本発明を適用した例について説明したが、本発明は、高温の基板をロードロック装置で冷却し、他のモジュールに搬出するものであれば、このような装置に限定されるものではなく、例えば、真空処理ユニットが1個でロードロック装置が1個のシステムであっても適用可能である。さらにまた、被処理基板についても、半導体ウエハに限らず、FPD用ガラス基板などの他の基板を対象にすることができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0066】
1〜4;真空処理ユニット
5;搬送室
6;ロードロック装置
8;搬入出室
12,16;搬送装置
20:制御部
31:容器
32:クーリングプレート(冷却部材)
36;排気口
37;パージガス導入口
44;真空ポンプ
48;パージガス源
49;圧力調整機構
50;ウエハ昇降ピン
54;ウエハ支持ピン
55;冷却媒体流路
100;基板処理システム
W;半導体ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8