(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ページデータに係る情報を担持した信号光と記録用参照光とを干渉させて形成した干渉縞をホログラム記録媒体に記録するホログラム記録装置の光路中に配設される空間フィルターであって、
中心部が透明とされ、この中心部から、ナイキスト周波数部の外部に至る周辺部まで透過率が漸次低下するような透過率特性を有する構成とされ、
前記透過率特性が、cos(x)関数曲線、sin(x)/x関数曲線、チェビシェフフィルターに用いられるチェビシェフ関数曲線、バターワースフィルターに用いられるバターワース関数曲線、ベッセルフィルターに用いられるベッセル関数曲線、引弧線、公算曲線、楕円曲線およびアーネシーの曲線のうちから選択される曲線に沿った特性とされていることを特徴とする空間フィルター。
【背景技術】
【0002】
ホログラム記録装置においては、一般に、デジタルデータを担持した信号光を参照光とともにホログラム記録媒体に同時に照射し、それにより生成された干渉縞をこの記録媒体中に書き込むことによって、該デジタルデータを記録する。
一方、デジタルデータが記録されたホログラム記録媒体に参照光を照射すると、この記録媒体中に書き込まれている干渉縞により光の回折が生じて、上記信号光が担持していたデジタルデータを再生することができる。
【0003】
ところで、上記ホログラム記録媒体への情報記録時においては、例えば
図2に示すように、SLM(空間光変調素子:以下同じ)107からのデジタルデータを担持した偏光はFTレンズ108によって所定の集光位置(焦点面)に集光され、この後、FTレンズ110およびFTレンズ111を介してホログラム記録媒体112上に照射されることになる。
このようなホログラム記録において、FTレンズを通過後の光の分布はフーリエ変換されている。つまり、空間的に配置されている白と黒のビットパターンによる2次元画像のデジタルデータは、FTレンズの焦点面ではフーリエ変換された周波数分布となる。
【0004】
一般的な信号処理理論では、信号の周波数分布において、ナイキスト周波数までの情報があれば、再生可能であり、それ以上の周波数の信号は不要である。
ホログラムにおけるデータ記録でも同様であり、ナイキスト周波数までの情報があれば、記録データの再生が可能なため、一般的には、SLM(サイズ、画素数)とレンズ(NA、焦点距離等)に合わせた矩形型の空間フィルターを上記集光位置(焦点面)に挿入し、不要な高周波信号をカットしている。
【0005】
すなわち、このような矩形型の空間フィルターを用いたホログラムメモリー技術においては、2次元のパターン信号を担持した信号光をFTレンズで一旦焦点面上に集光して、信号領域を空間領域から空間周波数領域に変換し、不要な高周波成分光を空間フィルターでカットした後、ホログラム記録媒体上に記録するようにしている。
【0006】
ところで、このような高周波成分光を矩形型等の空間フィルターでカットする際に生じる問題を解決する従来技術としては以下のような文献記載のものが知られている。
すなわち、例えば、下記特許文献1および下記特許文献2のように、記録する情報系列にDCを一定とした符号化を行い、符号間干渉を防止するようにしたものが知られている。
また、下記特許文献3のように、高調波の折り返し成分が発生しないよう、空間光変調素子のサンプリングピッチとCMOSセンサーのサンプリングピッチを互いに調整するようにしたものが知られている。
さらに、ガウス分布の光量を逆補正するように空間光変調素子で強度を修正する下記特許文献4等も知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、矩形型の空間フィルターによる高周波信号のカットは、矩形フィルターの配設位置精度に大きく依存する。また、ナイキスト周波数付近では、光が連続的に存在しているため、フィルターエッジによる回折、散乱(信号処理の観点からは信号の折返し現象(エイリアシング))等により、信号品質の劣化やノイズ成分が増大する。
そして、再生信号の符号間干渉の増大やSNRの低下により、再生信号の誤り率が増加し
てしまう。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、ホログラム記録時において、高周波成分をカットする空間フィルターを光路中に配した場合にも、信号品質の劣化やノイズ成分の増大が生じる虞を回避し、再生信号の誤り率の低下を防止し得る空間フィルターおよびそれを用いたホログラム記録装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、従来の矩形型の空間フィルターに代えて、中心部から周辺部に向かうにしたがって透過率が低下する透過率特性を有する空間フィルターを採用する。
本発明の
第1の空間フィルターは、
ページデータに係る情報を担持した信号光と記録用参照光とを干渉させて形成した干渉縞をホログラム記録媒体に記録するホログラム記録装置の光路中に配設される空間フィルターであって、
中心部が透明とされ、この中心部から、ナイキスト周波数部の外部に至る周辺部まで透過率が漸次低下するような透過率特性を有する構成とされ、
前記透過率特性が、cos(x)関数曲線、sin(x)/x関数曲線、チェビシェフフィルターに用いられるチェビシェフ関数曲線、バターワースフィルターに用いられるバターワース関数曲線、ベッセルフィルターに用いられるベッセル関数曲線、引弧線、公算曲線、楕円曲線およびアーネシーの曲線のうちから選択される曲線に沿った特性とされていることを特徴とするものである。
【0011】
この場合において
、前記透過率が、透明基板上に付設する、金属膜、有機膜および誘電体膜から選択される膜の厚みにより調整されてなることが好ましい。
また、本発明の第2の空間フィルターは、
情報表示用の空間光変調素子に表示されたページデータに係る情報を担持した信号光と記録用参照光とを干渉させて形成した干渉縞をホログラム記録媒体に記録するホログラム記録装置の光路中に配設される空間フィルターであって、
該空間フィルターは、前記空間光変調素子の各画素に対応した空間フィルター要素をマトリックス状に配列されるとともに、該空間光変調素子の前記ホログラム記録媒体側の、該空間光変調素子と対向する位置に配されてなり、
前記空間フィルター要素は、該空間フィルター要素の各中心部から各周辺部に向かうにしたがって透過率が低下する透過率特性を有する構成とされていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の
第1のホログラム記録装置は、
ページデータに係る情報を担持した信号光と記録用参照光とを干渉させて形成した干渉縞をホログラム記録媒体に記録するホログラム記録装置において、
前記ページデータを表示する空間光変調素子と、この空間光変調素子および前記ホログラム記録媒体の配設位置の間の光路中に配された高周波カット用の空間フィルターとを備え、
該空間フィルターは、中心部
が透明とされ、この中心部から、ナイキスト周波数部の外部に至る周辺部まで透過率が漸次低下するような透過率特性を有する構成とされ、
該空間フィルターが、前記空間光変調素子と前記ホログラム記録媒体の配設位置との間に配されたフーリエ変換レンズの該ホログラム記録媒体側の焦点面近傍であって、前記空間光変調素子からの光束の集光位置に配設され、
前記透過率特性が、cos(x)関数曲線、sin(x)/x関数曲線、チェビシェフフィルターに用いられるチェビシェフ関数曲線、バターワースフィルターに用いられるバターワース関数曲線、ベッセルフィルターに用いられるベッセル関数曲線、引弧線、公算曲線、楕円曲線およびアーネシーの曲線のうちから選択される曲線に沿った特性とされていることを特徴とするものである。
【0013】
また、
本発明の第2のホログラム記録装置は、
ページデータに係る情報を担持した信号光と記録用参照光とを干渉させて形成した干渉縞をホログラム記録媒体に記録するホログラム記録装置において、
前記ページデータを表示する空間光変調素子と、この空間光変調素子および前記ホログラム記録媒体の配設位置の間の光路中に配された高周波カット用の空間フィルターとを備え、
該空間フィルターは、前記空間光変調素子の各画素に対応した空間フィルター要素をマトリックス状に配列されるとともに、該空間光変調素子の前記ホログラム記録媒体側の、該空間光変調素子と対向する位置に配されてなり、
前記空間フィルター要素は、該空間フィルター要素の各中心部から各周辺部に向かうにしたがって透過率が低下する透過率特性を有する構成とされていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の空間フィルターは、高周波カット用の空間フィルターであって、中心部から周辺部に向かうにしたがって透過率が低下する透過率特性を有する構成とされていることから、不要な高周波成分をカットとすることができるとともに不要な散乱光やフィルターの位置ずれによる再生信号の誤り率の上昇を抑えることができる。
また、この空間フィルターを用いた本発明のホログラム記録装置においては、不要な高周波成分をカットとすることができるとともに不要な散乱光やフィルターの位置ずれによる再生信号の誤り率の上昇を抑えることができる。これにより、繰り返し演算の回数を低減することができるので、メモリーの大容量化および読取り処理の高速化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る空間フィルターおよびそれを用いたホログラム記録装置を、図面を参照しながら説明する。
まず
図1を用いて、第1の実施形態に係る空間フィルターの構成を説明する。なお、
図1の縦軸および横軸に付された各数値は、各々画素数を示すものである(
図4〜6の縦軸および横軸、ならびに
図7、8の横軸も同じ)。
【0017】
この第1の実施形態に係る空間フィルターは、高周波カット用の空間フィルターであっ
て、その中心部は光透過率が100%となるように、すなわち、中心部においては、ガラ
ス、石英、ポリカーボネート等の透明板に金属膜等の透過率低減材料は付設せず、周辺部に向かうほど、付設される金属膜等の透過率低減材料の膜厚が厚くなり、周辺部では透過率が0%となるような膜厚とされている。
このような膜は金属膜の他、有機膜や誘電体膜等で作製することができ、作成する手法としてはスパッタ法、真空蒸着法、電着法、さらにはスピンコート法等種々の成膜法を用いることができる。
【0018】
上述した光透過率の変化は、中心から周辺部に向かうにしたがって漸次(以下、なだらかに、とも称する)減少していくことが好ましく、その特性曲線としては、例えば、cos(x)関数曲線、あるいはsin(x)/x関数曲線に沿ったものとすることが好ましい。
【0019】
また、上記周辺部がナイキスト周波数部とすると効率が良い。ナイキスト周波数部よりも高い周波数となる領域まで含めるようにしてもよいが、信号処理理論からするとナイキスト周波数部までの周波数の信号まであれば、元信号を再生することができるので、メモリー容量および再生処理時間の観点からしても、ナイキスト周波数以上の周波数のものはカットしておくことが好ましい。
【0020】
また、上記空間フィルターの配設位置としては、ホログラム記録装置において、情報を担持した信号光がホログラム記録媒体112に照射される前に、フーリエ変換レンズによって集光される集光位置(信号光は平行光束の状態でFTレンズ108に入射するのでFTレンズ108の記録媒体側焦点位置に一致する)に設定される。
【0021】
次に、本実施形態に係るホログラム記録装置は、ホログラム記録再生装置としての機能を有しているので、以下においては、本実施形態によるホログラム記録装置をホログラム記録再生装置10と称し、
図2、3を用いて、その作用を説明する。
【0022】
図2に示すように(濃く表示された部材および光路が信号の記録に関与する)ホログラム記録装置10を用いてホログラム記録を行う際には、レーザー光源101から出力され、シャッター102を通過したレーザー光(ここではS偏光(縦偏光))が1/2波長板1
03によって45度偏光の状態となるまで偏光面を回転せしめられた後、PBS(偏光ビームスプリッター)104によってP偏光およびS偏光の2系に分離される。
【0023】
このうちP偏光はPBS104を透過後、シャッター105を通過し、その後、反射型液晶素子(LCOS)等からなるSLM(空間光変調素子)107上に照射される。この照射されたP偏光は、SLM107の素子面に映出された白と黒のビットパターンによる2次元画像のデジタルデータを担持するとともに、S偏光に変換されて(実際には、白表示とされた素子からの光がS偏光に変換される)反射され、信号光としてPBS106に戻る。このSLM107から戻った信号光は、PBS106により反射され、FT(フーリエ変換)レンズ108を通過後、空間フィルター109で、空間周波数の領域において、ナイキスト周波数よりも低い低周波成分は透過し、それ以上の高周波成分をカットされて、再度、FT(フーリエ変換)レンズ110、FT(フーリエ変換)レンズ111を介してホログラム記録媒体112上に照射される。
【0024】
一方、PBS104によって反射されたS偏光は1/2波長板116を通過するが、ここでは、1/2波長板116とビームの偏光軸を合わせてあるので、ビームの偏光面は回転しない。次にPBS115に入射したS偏光はPBS115で反射された後、ミラー119、ガルバノミラー120で各々反射され、リレーレンズ121を通過後、ホログラム記録媒体112上の信号光照射領域に照射される。このようにしてホログラム記録媒体112上に照射された参照光と信号光はいずれもS偏光とされているので、このホログラム記録媒体112上で干渉して干渉縞が生じ、この干渉縞がホログラム記録媒体112に書
き込まれることになる。
【0025】
次に、
図3に示すように(濃く表示された部材および光路が信号の再生に関与する)、ホログラム記録装置10を用いてホログラム記録データの再生を行う際には、レーザー光源101からの光束は、上述した記録時と同様にして、PBS104まで到達し、2系に分離される。このうち、一方の系であるPBS104を透過したP偏光はシャッター105で遮断されるのに対し、他方の系であるPBS104で反射されたS偏光は45度回転した1/2波長板116によって偏光面を回転させられてP偏光に変換され、PBS(偏光ビームスプリッター)115を直進する。この後、このP偏光は、ガルバノミラー114によって反射され、リレーレンズ113を通過して、ホログラム記録媒体112に入射する。ホログラム記録媒体に保持された干渉縞によって回折された信号光はFTレンズ111、FTレンズ110、空間フィルター109、およびFTレンズ108を通過後、PBS106を通過して2次元撮像素子117で撮像されることにより、デジタルデータが演算装置118で復元されることになる。
【0026】
ところで、上述したようなホログラム記録再生装置10の記録時における、FTレンズ108を通過後の光の分布はフーリエ変換された状態とされている。すなわち、空間的に配置されている白と黒のビットパターンによる、空間領域における2次元画像のデジタルデータは、FTレンズ108の焦点位置(FTレンズ108に入射する信号光は平行光束とされているので集光点はFTレンズ108の記録媒体112側の焦点位置となる)では空間周波数領域におけるフーリエ変換された周波数分布となる。
【0027】
一般的に信号処理理論では、信号の周波数分布において、ナイキスト周波数までの情報があれば、信号の再生が可能であり、それ以上の信号は不要である。
ホログラム記録においても、このような信号処理理論が成立し、ナイキスト周波数までの情報があれば、記録再生が可能なため、FTレンズ108の焦点位置に、空間フィルター109を挿入し、この空間フィルター109によって不要な高周波信号をカットしている。
【0028】
しかし、この空間フィルター109が、従来技術のように、矩形型の透孔である場合には、高周波信号をカットする精度が矩形フィルターの配置位置精度に大きく依存するため、精度良く高周波信号カット処理を行うことが困難となる。また、ナイキスト周波数付近では、光が連続的に存在しているため、フィルターエッジによる回折、散乱(信号処理理論の観点からは信号の折返し現象(エイリアシング))等により、信号品質が劣化し、ノイズ成分が増大することになる。
そして、再生信号の符号間干渉の増大やSNRの低下により、再生信号の誤り率が増加してしまう。
【0029】
そこで、本実施形態の空間フィルター109においては、前述したように、中心部から周辺部に向かうにしたがって透過率が低下する透過率特性を有する構成とされていることから、不要な高周波成分をカットとすることが可能となると共に再生時の符号間干渉を少なくすることが可能となる。これにより再生信号の誤り率を低下させることが可能となる。
【0030】
したがって、記録再生特性を向上させることが可能であることから、繰り返し演算の回数を低減することができるのでメモリーの大容量化、読取処理の高速化を図ることができる。
【0031】
次に、
図4〜8を用い、上記実施形態に係る空間フィルター109の作用効果について、従来技術による比較例の作用効果と比較しつつ説明する。
【0032】
図4に、ホログラム記録媒体112に記録され得る記録データのパターン(SLMに表示されるデータのパターン)の一例を示す。この記録データのパターンは、疑似ランダムデータ列の5ビットを1単位としてホログラム記録用の3×3の9ビットへ変換する59変調コードを利用して得られた記録データのパターンである。
【0033】
図5は、上記記録データを担持した光束をFTレンズ108に透過させた際の強度分布を示すものである。このように高域のノイズが多い状態のデータをホログラム記録媒体112上に記録するようにした場合、良好な再生信号を得ることができない虞がある。また、不要な光までもホログラム記録媒体112に照射することで、ホログラム記録媒体112の記録感度の低下を招来する虞がある。
【0034】
そこで、前述したように、従来技術に係る比較例においても、FTレンズ108の焦点位置に空間フィルターを挿入しているが、
図6に示す矩形型の空間フィルターを用いた場合には、サンプリング周波数の1/2のナイキスト周波数を中心として折り返しのノイズ
成分が生じてしまう。その結果、SNRは6.90597dBまで低下した。
【0035】
これに対して、FTレンズ108の焦点位置に本実施形態に係る空間フィルター109を挿入した場合において、ナイキスト周波数150で振幅が半分となるような条件とすると、cos(x)曲線に沿って振幅を変化させた場合のSNRは8.0083dBとなり、sin(x)/x曲線に
沿って振幅を変化させた場合のSNRは7.64281dBとなった。
【0036】
なお、
図7は、上記実施形態の空間フィルター109について、この空間フィルター109の中心からの半径方向の距離(画素数:pixel数)に対するSNRの値を示すグラフである。
【0037】
なお、
図7に示す各値の計算をするにあたっては、画素数が150で振幅が半分となる、
図8に示すフィルター曲線を基準としている。そして、このフィルター曲線において、振幅が0となる画素数を半径値となるようにしており、
図8に示す場合においては、振幅が0となるときの画素数225を半径値とすることができるので、この画素数225を用いて、フィルター曲線の式を作成した。
作成されたフィルター曲線の式は、下式(1)で表される。
【0038】
(数1)
cos(画素数/225×2)・π (ラジアン) ………(1)
【0039】
図7は、種々のデータから得られたグラフの各々について、振幅が0となる点を半径として計算し、そのときのSNRをプロットすることにより得ている。
このように、本実施形態の空間フィルター109を用いた場合、上記いずれの曲線(cos(x)曲線、sin(x)/x曲線)に沿った態様においても、折り返し成分がのった比較例の空間フィルターより良好なSNR値を示した。
【0040】
なお、発明の本質とは異なるが、本実施形態と対比する比較例である
図6に示す矩形型の空間フィルターについて、以下に若干の補足説明を行う。
すなわち、レーザー光源101の波長をλ、SLM107の画素ピッチをΔd
1、FTレ
ンズ108の焦点距離をf
1としたとき、フーリエ面での一次回折光の像高Yは次式(2)で表される。
【0041】
(数2)
Y=(f
1/Δd
1)・λ ………(2)
ナイキスト周波数はこの1/2となるので、像高Yは次式(3)で表されることになる
。
【0042】
(数3)
Y=(f
1/2Δd
1)・λ ………(3)
さらに、光強度分布は、フィルターの中心部分(DC部分)を中心として左右対称に延びる裾野を有しているので、空間フィルターのフィルターサイズに係る像高Yは、最終的に、上式(3)の2倍の下式(4)で表されるものとなる。
【0043】
(数4)
Y=(f
1/Δd
1)・λ ………(4)
この像高Yに対応するサイズの矩形のフィルターが、上記比較例に係る矩形状の空間フィルターとなる。
【0044】
また、本発明の空間フィルターおよびホログラム記録装置としては、上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。
例えば、上記空間フィルター109は、ロールオフ率を約0.5として作製したフィルター膜を使用しているが、膜の作製条件を変化させ、これよりも急峻なあるいは緩慢なロールオフ率を適用することもできる。
ここで、ロールオフ率をα、全周波数(信号による全帯域)をf
0、振幅をTとすると、ロールオフフィルター(空間フィルター109)の式は下式(5)で表される。
【0046】
また、空間フィルターを配設する光路上の位置としては、上述した実施形態装置のようにFTレンズ108の焦点位置(空間周波数領域)に配設するのではなく、
図9(A)に示すようにSLM107AのPBS106側に、このSLM107Aと対向させる位置(空間領域
)に空間フィルター122を配設するようにしてもよい。
【0047】
この場合、
図9(B)に示すように(SLM107Aを反転させて内部が見やすい状態と
して表している)SLM107の各画素に各々対応するように各空間フィルター要素122
aを設ける必要がある。
【0048】
図10は、SLM107Aの各画素に各々対応して設けられた空間フィルター要素122
aの配列状態を示すものである。
SLM107Aの各画素がマトリックス状に配列されていることから、これらの各空間フ
ィルター要素122aもマトリックス状に配列されている。
【0049】
また、上記空間フィルター要素122aは、上述した実施形態の空間フィルター109と同様に、中心部は光透過率が100%とされ、周辺部まで透過率がなだらかに低下する(所定のフィルター特性の逆フーリエ変換によって、周波数領域でナイキスト周波数(あ
るいは、その外部)までなだらかに低下する)ような透過率特性に構成されている。
【0050】
一般に、SLM107で変調された記録データは強度変化が白黒2値のいわゆる矩形デー
タとなっているが、SLM107の各画素からの光束が上記各空間フィルター要素122a
により、画素の中心部から周辺部に向かうにしたがって、その強度変化がcos(x)曲線やsin(x)/x曲線に沿ってなだらかに減少するように構成することができる。
【0051】
したがって、このようにSLM107のPBS106側に、各空間フィルター要素122aをSLM107の各画素と対向させるようにして空間フィルター要素122aを配設すること
により、上述した実施形態のように、FTレンズ108の焦点位置になだらかな透過曲線を持たせるフィルターを入れるのと同じ効果を得ることができる。
【0052】
なお、本発明の空間フィルターの透過率変化の基準となる透過率曲線としては、cos(x)曲線やsin(x)/x曲線に限られるものではなく、例えば、チェビシェフフィルター、バターワースフィルター、およびベッセルフィルター等の曲線を用いるようにしてもよく、さらには、引弧線、公算曲線、楕円曲線およびアーネシーの曲線等を用いるようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態装置においては、空間光変調素子としてLCOS等の反射型液晶素子を用いているが、これに替えて、例えばDMD(デジタル・ミラー・デバイス)等の画像表示素子を用いることができる。