特許第6554392号(P6554392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6554392-スピンナー装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554392
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】スピンナー装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20190722BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 648G
   H01L21/68 F
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-221978(P2015-221978)
(22)【出願日】2015年11月12日
(65)【公開番号】特開2017-92298(P2017-92298A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清原 恒成
(72)【発明者】
【氏名】久保 徹雄
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−232523(JP,A)
【文献】 特開2014−127638(JP,A)
【文献】 特開2005−019963(JP,A)
【文献】 特開平09−159422(JP,A)
【文献】 特開平10−135311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの保持爪をウエーハの外周に接触させてウエーハを保持する保持機構と、スピン回転軸を軸として該保持機構を回転させる回転駆動部を備えるスピン回転機構と、を備えるスピンナー装置であって、
ウエーハの中心が該スピン回転軸の軸心と一致しているか否かを判断する判断手段を備え、
該保持機構は、保持爪の位置に応じた出力を行う出力部を備え、
該判断手段は、少なくとも3つの該保持爪が保持したウエーハの中心と該スピン回転軸の軸心とが一致したときのそれぞれの該保持爪に対応したそれぞれの出力部からの出力値を記憶する記憶部と、
該スピン回転軸が所定角度回転したときの該出力部の出力値が、該記憶部が記憶した保持爪の出力値と一致するか否かに基づきウエーハのずれを判断する判断部と、
を備えたスピンナー装置。
【請求項2】
前記出力部は、保持爪回動軸を軸に前記保持爪を回動させてウエーハを保持したときの該保持爪の位置を検出するセンサと、該保持爪と共に該保持爪回動軸を軸に回動し該センサを反応させる反応部と、該反応部で該センサを反応させる量を電圧に変換するアンプと、
を備える請求項1に記載のスピンナー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを保持した状態で回転させ洗浄・乾燥するスピンナー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいてウエーハを洗浄する洗浄手段には、例えば、ウエーハを1枚1枚処理していく枚葉スピン式の洗浄手段がある。この洗浄手段には、例えば、ウエーハの外周を複数の保持爪でクランプして保持し、このクランプした部分をスピン回転軸を軸に公転させることでウエーハを回転させ洗浄・乾燥するスピンナー装置がある(例えば、特許文献1,2参照)。このスピンナー装置では、ウエーハの外周を保持する保持爪を回動させて開き、スピンナーテーブル上方に搬送されたウエーハを挟み込み保持させている。
【0003】
すなわち、上記の例におけるスピンナー装置はスピンナーテーブルの外周部に保持爪回動軸に連結される保持爪を少なくとも3つ備えており、ウエーハを保持する際には、この少なくとも3つの保持爪を結んだ仮想的な三角形の外心とスピンナーテーブルの回転中心であるスピン回転軸とを一致させている。この少なくとも3つの保持爪を回動させる各突出部が上昇して、スピンナーテーブルがスピン回転することで、各突出部よって各保持爪と繋がる保持爪回動軸が回動し、これに伴って少なくとも3つの保持爪はスピンナーテーブルの回転中心であるスピン回転軸から離間する方向に回動されて開かれた状態となる。
【0004】
そして、3つの保持爪を結んだ仮想的な三角形の外心とウエーハの中心とが一致するように、ウエーハがスピンナーテーブル上方に搬送された後、スピンナーテーブルがスピン逆回転することで、ばねの力により3つの保持爪は、スピン回転軸に近付く方向に回動し閉じていく。そして、少なくとも3つの保持爪がウエーハの外周に接触することで、ウエーハに保持爪以外が接触していない状態で、ウエーハが保持爪で保持される状態となる。
【0005】
少なくとも3つの保持爪でウエーハを保持させた後、更に各保持爪回動軸から各突出部が離れるまでスピンナーテーブルをスピン逆回転させた後、突出部を下降させる。そして、突出部が下降した状態で、スピンナーテーブルをスピン回転させ各保持爪をスピン回転軸を軸にして公転させることによって、少なくとも3つの保持爪によって保持されたウエーハWをスピン回転させる。次いで、各保持爪により保持されるウエーハWの上面及び下面に対して、洗浄水供給手段から洗浄水を供給しながら、スピン回転洗浄を行う。その後、洗浄水の供給を停止させ、ウエーハの回転を高速回転に切換えて、遠心力により洗浄水を外周方向に向かって吹き飛ばして乾燥させる。この乾燥の際には、例えば乾燥エアーを吹き付けることにより、さらに高速で乾燥させることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3909915号公報
【特許文献2】特開2015−122400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、スピンナー装置の製造において、理想的には、少なくとも3つの保持爪は、スピン回転軸を中心としてスピンナーテーブル上に周方向に正確に等間隔に配設され、また、各保持爪に対応する少なくとも3つの突出部もスピン回転軸を中心に正確に等間隔に配設される。この場合には、ウエーハの外周に少なくとも3つの保持爪を接触させた時に、各保持爪は同じ回動角度でウエーハを保持することができる。よって、保持爪がウエーハを保持したことを検出する少なくとも3つのセンサも、スピン回転軸を中心に周方向に等間隔に配設される。
【0008】
しかし、3つの保持爪と3つの突出部と3つのセンサとを正確に等間隔で配置させることは困難である。さらに、ウエーハをスピンナーテーブル上方に搬送し保持爪で挟み込み保持する際に、ウエーハの中心とスピン回転軸の軸心とを正確に一致させてウエーハをスピンナーテーブル上方に搬送し位置付けることは難しく、保持爪で保持されるウエーハの中心がスピン回転軸の軸心からずれる場合がある。この状態で、ウエーハがスピン回転すると、スピン回転により発生する遠心力が各保持爪に均等にかからないことから、保持爪によるウエーハの保持が保たれず、ウエーハが吹き飛び落下してしまうことがある。
【0009】
よって、スピンナー装置において、ウエーハの中心がスピン回転軸の軸心からずれた状態で保持爪によりウエーハが保持されたときに、ウエーハの中心のずれを認識するという課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、少なくとも3つの保持爪をウエーハの外周に接触させてウエーハを保持する保持機構と、スピン回転軸を軸として該保持機構を回転させる回転駆動部を備えるスピン回転機構と、を備えるスピンナー装置であって、ウエーハの中心が該スピン回転軸の軸心と一致しているか否かを判断する判断手段を備え、該保持機構は、保持爪の位置に応じた出力を行う出力部を備え、該判断手段は、少なくとも3つの該保持爪が保持したウエーハの中心と該スピン回転軸の軸心とが一致したときのそれぞれの該保持爪に対応した出力部からの出力値を記憶する記憶部と、該スピン回転軸が所定角度回転したときの該出力部の出力値が、該記憶部が記憶した少なくとも1つの保持爪の出力値と一致するか否かに基づきウエーハのずれを判断する判断部と、を備えたスピンナー装置である。
【0011】
前記出力部は、保持爪回動軸を軸に前記保持爪を回動させてウエーハを保持したときの該保持爪の位置を検出するセンサと、該保持爪と共に該保持爪回動軸を軸に回動し該センサを反応させる反応部と、該反応部で該センサを反応させる量を電圧に変換するアンプとを備えるものとすると好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るスピンナー装置は、少なくとも3つの保持爪をウエーハの外周に接触させてウエーハを保持する保持機構と、スピン回転軸を軸として保持機構を回転させる回転駆動部を備えるスピン回転機構と、ウエーハの中心がスピン回転軸の軸心と一致しているか否かを判断する判断手段とを備え、保持機構は、保持爪の位置に応じた出力を行う出力部を備え、判断手段は、少なくとも3つの保持爪が保持したウエーハの中心とスピン回転軸の軸心とが一致したときのそれぞれの保持爪に対応した出力部からの出力値を記憶する記憶部と、スピン回転軸が所定角度回転したときの出力部の出力値が、記憶部が記憶した少なくとも1つの保持爪の出力値と一致するか否かに基づきウエーハのずれを判断する判断部とを備えるものとしたことで、ウエーハ自体がスピン回転する前にウエーハの中心のスピン回転軸からのずれを認識することができる。したがって、この認識に基づいてウエーハの位置を補正することができ、少なくとも3つの保持爪によりウエーハを確実に保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】スピンナー装置の一例を示す(A)平面視断面図及び(B)側面視破断図である。
図2】ウエーハを搬入可能な状態にあるスピンナー装置において、ウエーハを保持しようとする状態を示す(A)平面視断面図及び(B)側面視破断図である。
図3】ウエーハのセンタリングが正確に行われた状態でウエーハを保持しているスピンナー装置において、ウエーハが回転可能である状態を示す(A)平面視断面図及び(B)側面視破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1(A)、(B)に示すスピンナー装置1は、基台11と、洗浄水の飛散を防止するケース12と、少なくとも3つの保持爪311をウエーハWの外周Wdに接触させウエーハWを保持する保持機構3と、スピン回転軸40aを軸として保持機構3を回転させる回転駆動部41を備えるスピン回転機構4と、保持機構3によって保持されたウエーハWに洗浄水を供給する洗浄水供給手段13とを備え、例えば研削装置に搭載され、ウエーハWを洗浄し、乾燥させる機能を有している。
【0015】
図1(B)に示すように、ケース12は、有底円筒状に形成され、底面に排水口121を備え、円筒状の基台11の外周側に固定されている。
【0016】
スピン回転機構4は、スピンナー装置1の中央部に配設されており、保持機構3に接続される回転シャフト40と、回転シャフト40の軸中心となるスピン回転軸40aと、スピン回転軸40aを軸として保持機構3を回転させるモータなどの回転駆動部41とを少なくとも備えている。
【0017】
回転シャフト40は、例えば、円柱状に形成されており、その軸心であるスピン回転軸40aの軸方向は水平面に対して直交する方向(Z軸方向)となっている。回転シャフト40は、基台11の内周側に配設され、軸受42を介して基台11により回転可能に支持されている。回転シャフト40には、回転シャフト40の中央をZ軸方向に貫く貫通孔40bが形成されている。軸受42の上方には、パッキン43が配設されており、貫通孔40bを通り貫通孔40bの上端から噴出した洗浄水が回転シャフト40と基台11との間の隙間から漏れるのを防ぐ。
【0018】
回転シャフト40の下端側には、モータなどの回転駆動部41がロータリージョイント44を介して接続されており、回転駆動部41が回転シャフト40を回転させることに伴って、保持機構3も回転する。
【0019】
ロータリージョイント44には洗浄水を供給する洗浄水供給手段13が接続されている。洗浄水供給手段13は、ロータリージョイント44に一端が連通する給水管131と、給水管131のもう一端が連通する洗浄水供給源130とを備えている。洗浄水供給源130から供給された洗浄水は、給水管131を通り、ロータリージョイント44から貫通孔40bへ流入し、貫通孔40bの上端から噴出する。また、洗浄水供給手段13は、洗浄水供給源130から供給される洗浄水を噴出する図示しない洗浄水ノズルを備えており、洗浄水ノズルは、その噴出口が上プレート32の上面に対するように設置されている。
【0020】
保持機構3は、回転シャフト40に固定された上プレート32と、上プレート32に配設された少なくとも3つの保持部31a〜31cと、円環板状の下プレート34と、下プレート34を昇降させる昇降部35a、35bと、各保持爪311の位置に応じた出力を行う出力部36a〜36cとを備えている。なお、本実施形態においては、保持機構3は3つの保持部31a〜31cを備えているが、保持機構3が備える保持部を4つ以上として、4つ以上の保持爪311でウエーハWをより確実に保持できるものとしてもよい。そして、保持部を4つ以上とすることに付随して、その他の各構成(出力部の数等)もそれぞれ変更可能である。
【0021】
上プレート32は、例えば、外形が円環板状であり、その中心に回転シャフト40が嵌め込まれて回転シャフト40の上部と一体となった状態で、ケース12内に配設されており、回転シャフト40が回転することに伴って回転する。
【0022】
上プレート32の外周領域には、例えば、上プレート32の厚み方向に貫通して形成された貫通孔が3つ設けられており、その各貫通孔にはベアリング321がそれぞれ配設されている。保持部31a〜31cは、それぞれ軸方向がZ軸方向である保持爪回動軸319を軸として回動可能に、ベアリング321を介して上プレート32に配設されている。保持部31a〜31cの各保持爪回動軸319は、回転シャフト40のスピン回転軸40aを中心として、周方向に、等間隔(図示の例では、120度ずつの間隔)離間して配置されている。これにより、ウエーハWの中心Woとスピン回転軸40aの軸心とを一致させて上プレート32上にウエーハWが搬入された場合には、保持部31a〜31cにより、ウエーハWを三方から均等な力で保持することができる。
【0023】
保持部31b及び保持部31cの構成は、保持部31aの構成と同様であるから、以下に保持部31aの構成についてのみ説明する。保持部31aは、ウエーハWの外周Wdに接触する保持爪311と、保持爪回動軸319を軸として保持爪311を回動させるアーム(a)312と、回動の軸となる保持爪回動軸319と、上プレート32の下面側に配置されたアーム(b)314と、アーム(b)314の先端において上側に突出して配置された柱部315と、上プレート32に固定され下側に突出する柱部317と、2つの柱部315,317の間に設けられたばね316とを備える。保持爪311は、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂などの硬いプラスチックで形成されている。アーム(a)312は、一方の端に保持爪311が固定され、他方の端に保持爪回動軸319が固定され、保持爪回動軸319の回転に伴って回動し、保持爪311を上プレート32の上方で移動させる。
【0024】
例えば、アーム(a)312の側面はスピン回転軸側へ円弧状に膨らんだ形状としており、上プレート32が回転すると、保持部31aの周囲に相対的な空気流を発生させる。この空気流により発生した揚力は、スピン回転軸40aに近付く方向へと保持爪311を付勢する。
【0025】
アーム(b)314は、一方の端に保持爪回動軸319が固定され、保持爪回動軸319の回転に伴って回動する。柱部315は、アーム(b)314の他方の端に固定され、アーム(b)314の回動に伴って移動する。柱部315の移動により2つの柱部315,317の間の距離が大きくなると、ばね316の弾性により、2つの柱部315,317の間の距離を縮める方向の力が発生する。これにより、スピン回転軸40aに近付く閉じ方向に保持爪311が付勢される。
【0026】
下プレート34は、水平面に平行でスピン回転軸40aと同軸の円環板状であり、中央に円形の開口341を有しており、開口341に回転シャフト40を貫通させた状態でケース12内に配置されている。回転シャフト40は開口341に遊嵌しており、回転シャフト40が回転しても、下プレート34は回転しない。また、下プレート34は、下側の面に、+Z方向に突出する3つの突出部342a〜342cを備えている。
【0027】
各昇降部35a,35bは、例えば、エアシリンダであり、それぞれ、下プレート34の下面に接続されたピストン352と、ピストン352をZ軸方向に平行に移動させるシリンダ351とを備え、シリンダ351がピストン352を昇降させることにより、下プレート34をZ軸方向に上下動させる。
【0028】
出力部36b及び出力部36cの構成は、出力部36aの構成と同様であるから、以下に出力部36aの構成についてのみ説明する。出力部36aは、例えば、保持爪回動軸319を軸に保持爪311を回動させてウエーハWを保持したときの保持爪311の位置を検出するセンサ360と、保持爪311と共に保持爪回動軸319を軸に回動しセンサ360を反応させる反応部361と、反応部361でセンサ360を反応させる量を電圧に変換するアンプ362とを備える。
【0029】
センサ360は、例えば、アンプ分離型の静電容量形近接センサであり、図示の例では円板状に形成されており、トランジスタを含む図示しない発振回路と検出電極とを備えている。センサ360は、下プレート34の上面でかつ突出部342aの近傍(出力部36bにおいては、下プレート34の上面でかつ突出部342bの近傍であり、出力部36cにおいては、下プレート34の上面でかつ突出部342cの近傍となる)に配設されている。
反応部361がセンサ360に近接するとセンサ360と大地との間に発生する静電容量が変化し、発振回路の発振状態が変化する。そして、その変化を検出して反応部361の近接を検知する。
【0030】
反応部361は、例えば、金属又は樹脂を円板状に形成したものであり、保持部31aのアーム(b)314の先端部下面(出力部36bにおいては、保持部31bのアーム(b)314の先端部下面となり、出力部36cにおいては、保持部31cのアーム(b)314の先端部下面となる)に配設されており、保持爪回動軸319の回動に伴って、保持爪回動軸319を軸にして水平面内で回動する。反応部361が水平面内で回動しそれぞれがセンサ360の上方を非接触で通過する際に、Z軸方向から反応部361及びセンサ360を視認した場合に把握できる反応部361とセンサ360との重なり領域Sが形成される。重なり領域Sの面積は、反応部361の回動(すなわち、保持爪回動軸319の回転)により増減する量であり、重なり領域Sが大きいほど検出電極の静電容量が大きくなり、重なり領域Sが小さいほど検出電極の静電容量も小さくなる。
【0031】
アンプ362は、センサ360に接続されており、反応部361でセンサ360を反応させる量(本実施形態においては、センサ360が静電容量形近接センサであることから、重なり領域Sの面積に比例する検出電極の静電容量)を電圧に変換して出力する。つまり、重なり領域Sが大きいほど高い電圧を検出信号として出力し、重なり領域Sが小さいほど低い電圧を検出信号として出力する。
また、静電容量形近接センサ以外に反応部361が金属の場合には誘導形近接センサでもよい。
【0032】
スピンナー装置1は、ウエーハWの中心Woがスピン回転軸40aの軸心と一致しているか否かを判断する判断手段5を備えている。判断手段5は、少なくとも3つの保持爪311が保持したウエーハWの中心Woとスピン回転軸40aの軸心とが一致したときのそれぞれの保持爪311に対応した出力部36a〜36cからの出力値を記憶する記憶部50と、スピン回転軸40aが所定角度(すなわち、各保持爪311がウエーハWの外周Wdに接触した際のスピン回転軸40aの回転角度)回転したときの出力部36a〜36cの出力値が、記憶部50が記憶した少なくとも1つの保持爪311の出力値と一致するか否かに基づきウエーハWのずれを判断する判断部51とを備えている。
【0033】
少なくともメモリ等の記憶素子からなる記憶部50は、例えば、第1の記憶部50a、第2の記憶部50b及び第3の記憶部50cからなり、それぞれが、出力部36a〜36cの各アンプ362に配線を介して接続されており、各アンプ362から検出信号が送られてくる。そして、第1の記憶部50a〜第3の記憶部50cは、送られてきた検出信号に基づく出力部36a〜36cそれぞれの出力値を記憶する。そして、第1の記憶部50a〜第3の記憶部50cには、CPU等からなる判断部51が配線を介して接続されている。
【0034】
以下に、図1図3を用いて、スピンナー装置1がウエーハWを保持した後、ウエーハWを洗浄する手順を説明する。ここでは、ウエーハWの中心Woとスピン回転軸40aとのずれ等がなく、少なくとも3つの保持爪311によりウエーハWが正確にセンタリングされ保持される場合を想定している。
【0035】
図2(A)、(B)に示すように、昇降部35a,35bが下プレート34を+Z方向へ上昇させて、下プレート34の突出部342a〜342cを、保持部31a〜31cの各アーム(b)314に接触する高さまで上昇させる。
【0036】
次に、回転駆動部41が回転シャフト40を所定方向に回転させると、保持部31a〜31cの各アーム(b)314に下プレート34の突出部342a〜342cがそれぞれ当接し、保持爪回動軸319を軸にしてアーム(b)314が回動する。これに伴って、アーム(a)312が回動し、各保持爪311がスピン回転軸40aから離れる方向R1に周回移動する。各保持爪311が開き、各保持爪311とスピン回転軸40aとの間の距離がウエーハWの半径より大きくなるので、開いた3つの保持爪311で囲まれた中央に円板状のウエーハWを搬入することができる。また、ばね316が、例えば伸長し、ばね316の弾性(伸縮性)により、2つの柱部315,317の間の距離を縮める方向の力が発生する。
【0037】
次いで、スピン回転軸40aの軸心線上にウエーハWの中心Woが位置するようウエーハWを位置付けて搬入する。図3(A)、(B)に示すように、ウエーハWの搬入後、回転駆動部41が回転シャフト40を逆方向に回転させると、保持部31a〜31cの各アーム(b)314が下プレート34の突出部342a〜342cからそれぞれ離れ、ばね316の付勢力により、保持爪回動軸319を軸にしてアーム(b)314が逆方向に回動する。これに伴って、アーム(a)312が逆方向に回動し、各保持爪311がスピン回転軸40aに近付く閉じ方向R2に周回移動して、ウエーハWの外周Wdに接触する。各保持爪311は、各ばね316により、スピン回転軸40aに近付く方向へ付勢されているので、その力で、ウエーハWがクランプされ、保持される。ここで、ウエーハWの中心Woがスピン回転軸40aの軸心と一致して搬入されていることから、保持部31a〜31cを結ぶ仮想的な三角形の外心とウエーハWの中心Woとが一致する。したがって、3つの保持爪311の水平面内における回転角度(例えば、各保持爪回動軸319を軸中心として想定する)も同一となり、3つの保持爪311はウエーハWを均一な力で正確に保持する。
【0038】
次いで、昇降部35a,35bが下プレート34を−Z方向に下降させ、上プレート32が回転しても、各アーム(b)314に突出部342a〜342cが当たらない位置に退避させる。各保持爪311がウエーハWの外周Wdに接触したとき、ばね316は、例えば、自然長まで縮みきらずに途中で止まることになり、ばね316の付勢力はなくならず、保持爪311によるウエーハWの保持は保たれる。このように、スピン回転運動を利用して、各保持爪311の開閉をするので、可動部を増やすことなく、各保持爪311を開閉することができる。
【0039】
このようにしてウエーハWが保持された状態で、回転駆動部41が回転シャフト40を回転させ、上プレート32及び保持部31a〜31cを回転させると、保持部31a〜31cに保持されたウエーハWが回転する。洗浄水供給源130から供給される洗浄水は、ロータリージョイント44を介して貫通孔40bの上端から噴出し、ウエーハWの下側の面を洗浄する。洗浄水供給源130から供給され図示しない洗浄ノズルから噴出した洗浄水は、ウエーハWの上面を洗浄する。ここで、保持部31a〜31cがウエーハWの外周Wdをクランプして保持するので、ウエーハWの両面全面が洗浄される。そして、洗浄に供された洗浄水は、排水口121から排水される。
【0040】
洗浄が終了したら、洗浄水供給源130からの洗浄水の供給を停止する。その後、回転駆動部41が高速回転を続けると、ウエーハWの上面及び下面に付着した洗浄水が遠心力により飛ばされ、ウエーハWが乾燥される。この乾燥の際には、例えば乾燥エアーをウエーハWに吹き付けることにより、さらに高速で乾燥させるものとしてもよい。
また、乾燥エアーを吹き付けない場合は、洗浄水で洗浄する時よりも高速で回転させ遠心力で洗浄水を吹き飛ばし乾燥させてもよい。
【0041】
以下に、図1〜3を用いて、ウエーハWの中心Woのずれを認識する場合の、スピンナー装置1の各構成の動作及び認識方法について説明する。
【0042】
まず、図3(A)、(B)に示すように、ウエーハWの中心Woがスピン回転軸40aの軸心と一致した状態で、保持部31a〜31cの各保持爪311によりウエーハWがスピンナー装置1に保持されたときの(すなわち、ウエーハWのセンタリングがなされたときの)、3つの出力部36a〜36cの出力値D1a、出力値D1b及び出力値D1cが測定される。
なお、図3では、保持爪の回動角度を分かりやすくするため、突出部342a〜342cをスピン回転軸40aを軸に回転させているが、スピン回転軸40aを回転させたとき保持爪31a〜31cが回転される。
【0043】
ここで、ウエーハWのセンタリングが確実になされているかを否か判断する場合には、例えば、回転駆動部41が回転シャフト40を回転させ、保持部31a〜31cに保持されたウエーハWを回転させ、ウエーハWの外周がスピン回転軸40aを中心とする円を描くか否かで判断する。すなわち、例えば、保持爪311により保持されたウエーハWの外周Wdにマーキングを形成し(ここで用いられるウエーハWは、例えば、試験用のウエーハであってもよい。)、次いで、ウエーハWを回転させる。回転しているウエーハWの上方に、例えば、CMOSイメージセンサ等を備える高速度カメラを設置し、回転しているウエーハWの上面を高速で連続撮影する。そして、撮像された撮像画から、ウエーハWの外周Wdに形成したマーキングが、スピン回転軸40aを中心とする円を描いているか否かを判断する。
【0044】
図3(A)、(B)に示すように、ウエーハWのセンタリングが確実になされている場合であっても、3つの出力部36a〜36cの出力値D1a、出力値D1b及び出力値D1cは、3つの保持爪311、3つの突出部342a〜342c、3つのセンサ360の取りつけ具合により異なる。すなわち、保持部31a〜31cの各保持爪回動軸319の回転角度は同一にならないため、保持部31aにおけるセンサ360と反応部361の重なり領域S1a、保持部31bにおけるセンサ360と反応部361との重なり領域S1b、及び保持部31cにおけるセンサ360と反応部361との重なり領域S1cの面積はそれぞれ異なる。各重なり領域S1a〜S1cの各面積に比例する各センサ360の静電容量が、保持部31a〜31cの各アンプ362により電圧に変換されて、3つの出力部36a〜36cの出力値D1a、出力値D1b及び出力値D1cとなる。
【0045】
3つの出力部36a〜36cの基準となる出力値D1a、出力値D1b及び出力値D1cについての情報は、それぞれ、第1の記憶部50a〜第3の記憶部50cに送信されて記憶される。次いで、ウエーハWが3つの保持爪311から外される。
【0046】
なお、各ウエーハWの外径の微差も考慮して、ウエーハWを各保持爪311により保持しスピン回転させた場合に、遠心力によるウエーハWの保持爪311から離脱を起こさせない許容値(ウエーハ径許容値)を設定してもよい。この許容値は、例えば、重なり領域Sの面積を基準として定められる。例えば、図3(A)に示すウエーハWより小径のウエーハW1を正確にセンタリングして、少なくとも3つの保持爪311により保持した場合には、図示の例では、ウエーハWを保持している場合に比して、各保持爪回転軸319の回転角度が大きくなり、各保持爪311はよりスピン回転軸40aに近付いた位置でウエーハW1を保持することになる。したがって、図示の例では、保持爪311がウエーハW1を保持した場合のセンサ360と反応部361との重なり領域Smin(図には不図示)の面積は、センサ360と反応部361との重なり領域S1aの面積よりも小さくなる。同じように、保持爪311がウエーハWよりも大径のウエーハを保持した場合のセンサ360と反応部361との重なり領域Smax(図には不図示)を設定し、ウエーハ径許容最小値(領域Sminの面積における出力値)≦(基準となる出力値D1a、出力値D1b及び出力値D1c)≦ウエーハ径許容最大値(領域Smaxの面積)を設定してもよい。
【0047】
スピン回転軸40aが所定角度(各保持爪311がウエーハWの外周Wdに接触した際のスピン回転軸40aの回転角度)回転したときの出力部36a〜36cの出力値についての情報は、判断部51に送信される。判断部51は、例えば、第1の記憶部50a、第2の記憶部50b及び第3の記憶部50cにそれぞれ記憶されている基準となる出力値D1a、出力値D1b及び出力値D1cと、各出力値D2a、出力値D2b及び出力値D2cとが全て異なっていることから、ウエーハWの中心Woがスピン回転軸40aの軸心に対してずれていると判断する。なお、判断部51は、例えば、1つの保持部31aの保持爪311に対応する出力部36aの出力値D2aと、第1の記憶部50aに記憶されている出力値D1aとだけに基づき、ウエーハWの中心Woがスピン回転軸40aの軸心に対してずれていると判断してもよい。
【0048】
上記のように、スピンナー装置1は、少なくとも3つの保持爪311をウエーハWの外周Wdに接触させウエーハWを保持する保持機構3と、スピン回転軸40aを軸として保持機構3を回転させる回転駆動部41を備えるスピン回転機構4と、ウエーハWの中心Woがスピン回転軸40aの軸心と一致しているか否かを判断する判断手段5とを備え、保持機構3は、3つの各保持爪311の位置に応じた出力を行う出力部36a〜36cを備え、判断手段5は、3つの保持爪311が保持したウエーハWの中心Woとスピン回転軸40aの軸心とが一致したときのそれぞれの保持爪311に対応した出力部36a〜36cからの出力値D1a〜D1cを記憶する第1の記憶部50a〜第3の記憶部50cと、スピン回転軸40aが所定角度回転したときの出力部36a〜36cの出力値D2a〜D2cが、第1の記憶部50a〜第3の記憶部50cが記憶した3つの保持爪311の出力値D1a〜D1cとそれぞれ一致するか否かに基づきウエーハWのずれを判断する判断部51とを備えるものとしたことで、ウエーハW自体をスピン回転する前、すなわち、ウエーハWが3つの保持爪311で保持された段階で、ウエーハWの中心Woのスピン回転軸40aからのずれを認識することができる。そして、この認識に基づいて、ウエーハWの位置を補正すること等によって、少なくとも3つの保持爪311によりウエーハを確実に保持することが可能となる。
ウエーハWの位置を補正する場合は、例えば、保持爪311で保持されるウエーハWが保持爪311からウエーハWを落下させない程度で僅かに保持爪311を開く方向に回動させたのち再び保持爪311でウエーハWを挟み保持させることで保持爪311で保持されるウエーハWの位置が補正される。
【0049】
また、出力部36a〜36cを、各保持爪回動軸319を軸に各保持爪311を回動させてウエーハWを保持したときの保持爪311の位置を検出するセンサ360と、保持爪311と共に保持爪回動軸319を軸に回動しセンサ360を反応させる反応部361と、反応部361でセンサ360を反応させる量を電圧に変換するアンプ362とを備えるものと、スピン回転軸40aの回転角度に基づく出力部36a〜36cの出力値を、各保持爪回動軸319の回転角度(すなわち、3つの保持爪311の回転角度)に連関させるものとしたことで、ウエーハW自体をスピン回転する前、すなわち、ウエーハWが3つの保持爪311で保持された段階で、ウエーハWの中心Woのスピン回転軸40aからのずれを認識することができる。
【0050】
なお、本発明に係るスピンナー装置1は上記実施形態に限定されるものではなく、また、添付図面に図示されている各構成の大きさや形状等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【0051】
例えば、出力部36a〜36cは、センサ360が検出電極のみからなる電極分離形の静電容量形近接センサを備えるものとしてもよい。また、例えば、出力部36a〜36cは、センサ360が、受光素子と発光素子とを備え反射光の受光量や変調位相等の情報を用いて対象物体との距離や傾き等を同時に測定することのできる光学式近接センサ等からなるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1:スピンナー装置 11:基台 12:ケース 121:排水口
13:洗浄水供給手段 130:洗浄水供給源 131:給水管
3:保持機構 32:上プレート 321:ベアリング
34:下プレート 341:開口 342a〜342c:突出部
35a、35b:昇降部 351:シリンダ 352:ピストン 319:保持爪回動軸
31a〜31c:保持部 311:保持爪 312:アーム(a)、314:アーム(b)
316:ばね
315、317:柱部
36a〜36c:出力部 360:センサ 361:反応部 362:アンプ
4:スピン回転機構 40:回転シャフト 40a:スピン回転軸 40b:貫通孔
41:回転駆動部 42:軸受け 43:パッキン 44:ロータリージョイント
5:判断手段 50:記憶部 50
W:ウエーハ Wd:ウエーハの外周
図1
図2
図3