特許第6554471号(P6554471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6554471-難燃の熱可塑性ポリウレタン 図000017
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554471
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】難燃の熱可塑性ポリウレタン
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20190722BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20190722BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20190722BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20190722BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20190722BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20190722BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20190722BHJP
   C08K 5/52 20060101ALI20190722BHJP
   C08K 5/5317 20060101ALI20190722BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20190722BHJP
   H01B 3/00 20060101ALI20190722BHJP
   H01B 3/30 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   C08L75/04
   C08L31/04
   C08L23/06
   C08L23/12
   C08L23/16
   C08L25/04
   C08K3/22
   C08K5/52
   C08K5/5317
   C08K5/5313
   H01B3/00 A
   H01B3/30 B
【請求項の数】17
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-541622(P2016-541622)
(86)(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公表番号】特表2017-504689(P2017-504689A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】EP2014076335
(87)【国際公開番号】WO2015090952
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年12月1日
(31)【優先権主張番号】13199090.5
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヘンツェ,オリファー,シュテッフェン
(72)【発明者】
【氏名】ミューレン,オリファー
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンボーム,ディルク
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−117609(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/058349(WO,A1)
【文献】 特表2013−501081(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0132457(US,A1)
【文献】 特表2013−513668(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0238664(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0255707(US,A1)
【文献】 特開2012−219232(JP,A)
【文献】 特開昭61−197655(JP,A)
【文献】 特表2011−512449(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0324183(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/029250(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0176622(US,A1)
【文献】 米国特許第9670337(US,B2)
【文献】 特開2002−128983(JP,A)
【文献】 特開2008−174759(JP,A)
【文献】 米国特許第3775521(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第102250408(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 18/00 − 18/87
C08G 71/00 − 71/04
C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
H01B 3/16 − 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)、(b)、(c)及び(d):
(a)少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、
(b)エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレンから構成される共重合体からなる群から選択されたポリマーの少なくとも1種、
(c)少なくとも1種の金属水酸化物、並びに、
(d)リン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、ホスフィン酸の誘導体及びこれらの誘導体の2種以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1種の含リン難燃剤
を含む組成物であって、
前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールから構成される熱可塑性ポリウレタンであって、
前記少なくとも1種のポリカーボネートジオールが、ブタンジオール及びヘキサンジオールから構成されるポリカーボネートジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールから構成されるポリカーボネートジオール、ヘキサンジオールから構成されるポリカーボネートジオール、並びに、これらのポリカーボネートジオールの2種以上の混合物からなる群から選択される
ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ポリマーがエチレン−酢酸ビニル共重合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリカーボネートジオールが、GPCにより測定された500〜4000の範囲の数平均分子量Mnを有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリウレタンが、50000〜150000Daの数平均分子量を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリウレタンがジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)から構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリウレタンが、DIN 53505に従って測定された80A〜95Aの範囲のショア硬度を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が、ASTM D1238に従って測定された4g/10分〜8g/10分の範囲のメルトフローレート(190℃/2.16kg)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記金属水酸化物が、水酸化アルミニウム、酸化水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及びこれらの水酸化物の2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記金属水酸化物が水酸化アルミニウムである、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記金属水酸化物がシェルにより少なくとも部分的に囲まれる、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物
【請求項11】
前記含リン難燃剤が、レゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(RDP)、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)(BDP)、及びリン酸ジフェニルクレシル(DPK)からなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物中の前記熱可塑性ポリウレタンの割合が、全体組成物に基づいて、15質量%〜65質量%の範囲である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレンから構成される共重合体からなる群から選択された前記ポリマーの、前記組成物中の割合が、組成物全体に基づいて5質量%〜25質量%の範囲である、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物中の前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の割合が、組成物全体に基づいて5質量%〜25質量%の範囲である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物中の前記金属水酸化物の割合が、組成物全体に基づいて45質量%〜65質量%の範囲である、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記含リン難燃剤の割合が、組成物全体に基づいて2質量%〜15質量%の範囲である、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物をケーブルシースの製造に使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレンをベースとする共重合体からなる群から選択されたポリマーの少なくとも1種、少なくとも1種の金属水酸化物、並びに、少なくとも1種の含リン難燃剤を含む組成物に関し、ここでは、前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタン、並びに、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される。さらに、本発明は、ケーブルシースの製造に該組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PVCから製造されたケーブルは、燃焼で有毒ガスを放出するという欠点を有する。従って、低い排煙(smoke gas)濃度及び低い排煙毒性を有し、優れた機械的特性、耐摩耗性及び柔軟性を有し、熱可塑性ポリウレタンをベースとする製品が開発されている。可燃性性能が不十分である理由で、様々な難燃剤を含む熱可塑性ポリウレタンをベースとする組成物が開発されている。
【0003】
これらの場合、ハロゲン化難燃剤も無ハロゲン難燃剤も熱可塑性ポリウレタン(TPUs)に添加することが可能である。一般的には、無ハロゲン難燃剤を含む熱可塑性ポリウレタンは、燃焼される場合、より少ない毒性及びより少ない腐食性排煙を放出するという利点を有する。無ハロゲンの難燃性TPUsは、例えばEP 0 617 079 A2、WO 2006/121549 A1又はWO 03/066723 A2に記載されている。
【0004】
また、無ハロゲンの形態で難燃の熱可塑性ポリウレタンを提供するために、金属水酸化物を単独で又は含リン難燃剤及び/又は層状ケイ酸塩(sheet silicates)と組み合わせて使用することが可能である。
【0005】
EP 1 167 429 A1は、ケーブルシース用の難燃性熱可塑性ポリウレタンに関する。該組成物は、ポリウレタン、好ましくはポリエーテルをベースとするポリウレタン、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム、及びリン酸エステルを含む。また、US 2013/0059955 A1には、リン酸塩をベースとする難燃剤を含む無ハロゲンのTPU組成物が開示すされている。
【0006】
DE 103 43 121 A1には、金属水酸化物、特に水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムを含む難燃性熱可塑性ポリウレタンが開示されている。該熱可塑性ポリウレタンはそれらの分子量を特徴としている。さらに、該組成物がリン酸塩又はホスホン酸塩を含むことが可能である。熱可塑性ポリウレタンを合成するための出発物質について、公開されたイソシアネート反応性の化合物は、ポリエステルオール及びポリエーテルオール、並びに、ポリカーボネートジオールであり、好ましくはポリエーテルポリオールである。ポリカーボネートジオールの実施例は記載されていない。また、DE 103 43 121 A1によれば、1種のポリオールでなく、異なるポリオールの混合物を使用することも可能である。さらに、充填剤の高いレベル、換言すれば、熱可塑性ポリウレタンの機械的特性の悪化をもたらす金属水酸化物及び他の固体組成物の高い割合が開示されている。
【0007】
燃焼試験に所要の充填剤の高いレベルの結果としてよく発生する困難性を低下させ、所要の機械的特性、排煙濃度及び排煙毒性を実現するために、さらなる添加剤がよく添加される。
【0008】
例えば、WO 2011/072458 A1には、熱可塑性ポリウレタン、約5質量%〜約50質量%のオレフィンブロックコポリマー(OBC)及び約30質量%〜約70質量%の難燃剤を含む柔軟な無ハロゲンの難燃性組成物が開示されている。これらの系は単相性又は二相性であることが可能である。
【0009】
US 2013/0081853 A1は、TPUポリマー、ポリオレフィン、リンをベースとする難燃剤及び他の添加剤を含む組成物、好ましくは無ハロゲンの難燃性組成物に関する。US 2013/0081853 A1によれば、該組成物は良好な機械的特性を有する。
【0010】
US 4,381,364には、ハロゲン化ポリビニル樹脂及びジエン−ニトリル共重合体ゴムを有する熱可塑性ポリウレタンの混合物を含む熱可塑性組成物が開示されている。同様に、ケーブルシースとしての使用方法も開示されている。
【0011】
また、US2012/0202061 A1には、熱可塑性ポリウレタン、水和金属及びリンをベースとする難燃剤を含む難燃組成物が開示されている。該組成物は、良好な難燃特性及び高い絶縁抵抗を特徴とする。
【0012】
しかしながら、先行技術から知られた組成物は、十分な機械的特性を示さなく、又は、ただ不十分な燃焼特性、例えば排煙濃度を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】EP 0 617 079 A2
【特許文献2】WO 2006/121549 A1
【特許文献3】WO 03/066723 A2
【特許文献4】EP 1 167 429 A1
【特許文献5】US 2013/0059955 A1
【特許文献6】DE 103 43 121 A1
【特許文献7】WO 2011/072458 A1
【特許文献8】US 2013/0081853 A1
【特許文献9】US 4,381,364
【特許文献10】US2012/0202061 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、先行技術から続き、本発明の目的は、優れた機械的特性を有し、優れた難燃性を示し、且つ、同時に優れた機械的及び化学的安定性を有する難燃の熱可塑性ポリウレタンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明により、この目的は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレンをベースとする共重合体からなる群から選択されたポリマーの少なくとも1種、少なくとも1種の金属水酸化物、並びに、少なくとも1種の含リン難燃剤を含む組成物により実現され、ここでは、前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタン、並びに、少なくとも1種のジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、Petrellaプロットで混合物のコーン熱量計測定の結果を示す。ここで、急速に高まる炎(PHRR/tig−1/kWm−2−1)に寄与する材料の傾向をにプロットしている。長く続く炎(THE/MJm−2)に寄与する材料の傾向をy軸にプロットしている。Petrella(Petrella R.V., The assessment of full scale fire hazards from cone calorimeter data, Journal of Fire Science, 12 (1994), 14頁)によれば、熱の最大放出及び着火時間の指数は、対応の材料が急速に高まる炎に寄与する程度を評価する。さらに、総放熱は、どのように対応の材料が長く続く炎(long-lasting fire)に寄与するのかを評価する。よりよい難燃性を有する材料は非常に低いx及びy値を有する。材料V、VII、XIII及びXIV(2つの黒丸で表している)は、比較材料I、II及びIII(黒正方形で表す)と比較すると、優れた特性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の組成物は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレンをベースとする共重合体からなる群から選択されたポリマーの少なくとも1種、少なくとも1種の金属水酸化物、並びに、少なくとも1種の含リン難燃剤を含み、こでは、前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタン、並びに、少なくとも1種のジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される。驚いたことに、本発明の組成物が先行技術から知られた組成物と比較すると、優れた特性、例えば優れた難燃性及び優れた経時安定性(aging stability)を有することが発現された。さらに、本発明の組成物は、排煙濃度に関する優れた特性及び優れた機械的特性を有する。該機械的特性の測定の一例は、老化する前に本発明の組成物から製造された成形部品の引張強度及び破断点伸びである。引張強度はDIN 53504に従って測定される。
【0018】
さらに、本発明の組成物は、多くの応用に必要である非常に優れた耐摩耗性を有する。
【0019】
本発明の組成物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレンをベースとする共重合体からなる群から選択されたポリマーの少なくとも1種を含む。驚いたことに、本発明の組成物が、本発明の成分の組み合わせの結果として、特にケーブルシースとしての使用に対して、特性の最適化されたプロファイルを有することは発現された。
【0020】
使用された熱可塑性ポリウレタンと、効率良く加工される組成物の成分との十分な適合性(compatibility)を有すれば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレンをベースとする共重合体からなる群から選択されたポリマーは、広範囲以内に変化してもよい。好ましくは、使用されたポリマーが75A〜95Aの範囲のショア硬度を有する。
【0021】
好ましくは、本発明の組成物がエチレン−酢酸ビニルを含む。したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここでは、前記ポリマーがエチレン−酢酸ビニル共重合体である。
【0022】
他の実施態様において、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、全体共重合体に基づいて20%〜40%の範囲、好ましくは25%〜35%の範囲、より好ましくは28%〜32%の範囲の酢酸ビニルの割合を有する。このエチレン−酢酸ビニル共重合体は、例えば、ASTM D1238に従って測定された4〜8g/10分の範囲、好ましくは5〜7g/10分の範囲、より好ましくは5.5〜6.5g/10分の範囲のメルトフローレート(melt flow rate)を有する。したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここでは、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が、ASTM D1238に従って測定された4〜8g/10分の範囲のメルトフローレート(190℃/2.16kg)を有する。
【0023】
本発明により、組成物において、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレンをベースとする共重合体からなる群から選択されたポリマーの割合が、好ましくは全体組成物に基づいて5%〜25%の範囲、より好ましくは全体組成物に基づいて7%〜20%の範囲、特に全体組成物に基づいて9%〜16%の範囲である。
【0024】
したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここでは、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレンをベースとする共重合体からなる群から選択されたポリマーの割合が全体組成物に基づいて5%〜25%の範囲である。したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここでは、組成物中のエチレン−酢酸ビニル共重合体の割合が全体組成物に基づいて5%〜25%の範囲である。
【0025】
少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレンをベースとする共重合体からなる群から選択されたポリマーの少なくとも1種、少なくとも1種の金属水酸化物、並びに、少なくとも1種の含リン難燃剤に加えて、本発明は他の添加剤を含んでもよい。
【0026】
熱可塑性ポリウレタン
一般的には、熱可塑性ポリウレタンは公知である。典型的には、熱可塑性ポリウレタンは、任意に少なくとも1種の(d)触媒及び/又は(e)通例の補助剤及び/又は添加剤の存在下で、成分(a)イソシアネート、(b)イソシアネート反応性化合物、及び任意に(c)鎖延長剤の反応により製造される。成分(a)イソシアネート、(b)イソシアネート反応性化合物、及び任意に(c)鎖延長剤は、個別に又は共に、構成成分とも称される。
【0027】
本発明の組成物は、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタン、並びに、少なくとも1種のジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンを含む。したがって、本発明の組成物に存在するポリウレタンは、少なくとも1種のポリカーボネートジオール又はポリテトラヒドロフランポリオールを成分(b)として使用して製造される。
【0028】
特に、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタン、並びに、少なくとも1種のジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択された熱可塑性ポリウレタンを使用してケーブルシースとしての使用に特に好適である組成物を得ることが可能であることは発現された。少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンが特に有利であり、それは該熱可塑性ポリウレタンが優れた酸化老化安定性を有する組成物をもたらす原因である。
【0029】
したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここでは、前記熱可塑性ポリウレタンが少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンをベースとする熱可塑性ポリウレタンである。
【0030】
好ましくは、使用された有機イソシアネート(a)は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族イソシアネートであり、より好ましくはトリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、ブチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナートメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート、及び/又はジシクロヘキシルメタン4,4’−、2,4’−及び2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネートである。特に好ましくは、4,4’−MDIの使用である。
【0031】
したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここでは、前記熱可塑性ポリウレタンがジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をベースとする。
【0032】
本発明により、ポリカーボネートジオール又はポリテトラヒドロフランポリオールは、イソシアネート反応性化合物(b)として使用される。好適なポリテトラヒドロフランポリオールは、例えば、500〜5000g/mol、好ましくは500〜2000g/mol、より好ましくは800〜1200g/molの範囲の分子量を有する。
【0033】
本発明により、好ましくは、少なくとも1種のポリカーボネートジオール、好ましくは脂肪族ポリカーボネートジオールの使用である。好適なポリカーボネートジオールは、例えば、アルカンジオールをベースとするポリカーボネートジオールである。好適なポリカーボネートジオールは、完全に二官能価OH−官能性のポリカーボネートジオール、好ましくは完全に二官能価OH−官能性の脂肪族ポリカーボネートジオールである。好適なポリカーボネートジオールは、例えば、ブタンジオール、ペンタンジオール又はヘキサンジオール、特にブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、又はそれらの混合物をベースとする。この明細書において、好ましくは、ブタンジオール及びヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、並びに、これらのポリカーボネートジオールの2種以上の混合物を使用することである。
【0034】
好ましくは、使用されたポリカーボネートジオールは、GPCにより測定された500〜4000の範囲、好ましくはGPCにより測定された650〜3500の範囲、より好ましくはGPCにより測定された800〜3000の範囲の数平均分子量Mnを有する。
【0035】
したがって、他の実施態様において、本発明は、上記の組成物にも関し、ここでは、前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンであり、前記少なくとも1種のポリカーボネートジオールが、ブタンジオール及びヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、並びに、これらのポリカーボネートジオールの2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0036】
したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここでは、前記ポリカーボネートジオールがGPCにより測定された500〜4000の範囲の数平均分子量Mnを有する。
【0037】
より好ましくは、ペンタン−1,5−ジオール及びヘキサン−1,6−ジオールをベースとし、好ましくは2000g/molの分子量Mを有するコポリカーボネートジオールである。
【0038】
また、他の実施態様において、本発明は上記の組成物にも関し、ここでは、前記少なくとも1種のポリカーボネートジオールがブタンジオール及びヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、並びに、これらのポリカーボネートジオールの2種以上の混合物からなる群から選択され、前記ポリカーボネートジオールがGPCにより測定された500〜4000の範囲の数平均分子量Mnを有する。
【0039】
好ましくは、使用された鎖延長剤(c)は、0.05kg/mol〜0.499kg/molの分子量を有する脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物、好ましくは二官能価化合物(例えば、アルキレンラジカルに2個〜10個の炭素原子を有するジアミン及び/又はアルカンジオール)、3個〜8個の炭素原子を有するジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、オクタ−、ノナ−及び/又はデカアルキレングリコール、特に1,2−エチレングリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、好ましくは対応するオリゴ−及び/又はポリプロピレングリコールであってもよく、ここでは、鎖延長剤の混合物を使用することも可能である。化合物(c)は、第1級ヒドロキシル基しかを有しないことが好ましく、最も好ましくはブタン−1,4−ジオールである。
【0040】
好ましい実施態様において、ジイソシアネート(a)のNCO基と、イソシアネート反応性を有する化合物(b)のヒドロキシル基と、鎖延長剤(c)との反応を特に促進する触媒(D)は、3級アミン、特にトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。もう1つの好ましい実施態様において、これらは、有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物、好ましくは鉄(III)アセチルアセトネート、スズ化合物、好ましくはスズ二酢酸、スズジオクトエート、スズジラウレート又は脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩、好ましくは二酢酸ジブチルスズ、ジブチルスズジラウレート、又は好ましくは2又は3、特に3の酸化状態で存在しているビスマス塩である。好ましくはカルボン酸である。好ましくは、使用されるカルボン酸は、6個〜14個の炭素原子、より好ましくは8個〜12個の炭素原子を有するカルボン酸である。好適なビスマス塩の例は、ネオデカン酸ビスマス(III)、2−エチルヘキサン酸ビスマス及びオクタン酸ビスマスである。
【0041】
好ましくは、触媒(d)は、イソシアネート反応性化合物(b)の100質量部に対して、0.0001質量部〜0.1質量部の量で使用される。好ましくは、スズ触媒、特にスズジオクトエートである。
【0042】
また、触媒(d)だけでなく、通例の補助剤(e)も構成成分(a)〜(c)に添加することが可能である。例としては、表面活性物質、充填剤、難燃剤、核形成剤、酸化安定剤、潤滑剤及び離型剤、染料及び顔料、及び加水分解、光、熱又は変色などに対しての任意の安定剤、有機及び/又は無機の充填剤、強化剤、並びに、可塑剤を含む。好適な補助剤及び添加剤は、例えば、Kunststoffhandbuch[プラスチック添加剤ハンドブック],第7章,Vieweg and Hochtlen出版,Carl Hanser Verlag,Munich,1966(103〜113頁)に見出される。
【0043】
熱可塑性ポリウレタンの好適な製造方法は、例えば、EP 0922552 A1、DE 10103424 A1又はWO 2006/072461 A1に記載されている。典型的には、この製造は、ベルトシステム又は反応押出機で行われるが、実験室規模、例えば手動キャスティング法でも行われる。成分の物理的特性により、それらは互いに直接に混合され、又は、個々成分は予混合され又は予反応されてプレポリマーを提供し、ただその後に重付加を受ける。他の実施態様において、まず、熱可塑性ポリウレタンは、任意に触媒と共に、補助剤も任意に組み込まれる構成成分から製造される。その場合、少なくとも1種の難燃剤は、この材料に導入され、均一に分散される。好ましくは、該均一的分散系は、押出機で、好ましくは二軸式押出機(twin-shaft extruder)で行われる。TPUsの硬度を調整するために、典型的に鎖延長剤(c)の含有量の増大に伴って硬度を増大することで、構成成分(b)及び(c)の使用量を、相対的に広いモル比の範囲内で変化し得る。
【0044】
例えば、95未満、好ましくは95〜80ショアA、より好ましくは約85AのショアA硬度を有する熱可塑性ポリウレタンを製造するために、生成する構成成分(b)及び(c)の混合物が200を超え、特に230〜450のヒドロキシル当量を有するように、基本的に二官能価のポリヒドロキシル化合物(b)、及び、有利に1:1〜1:5、好ましくは1:1.5〜1:4.5のモル比の鎖延長剤を使用することは可能であり、一方で、より硬いTPUs、例えば98を超え、好ましくは55〜75ショアDの硬度を有するものを製造するために、得た(b)及び(c)の混合物が110〜200、好ましくは120〜180のヒドロキシル当量を有するように、(b):(c)のモル比が1:5.5〜1:15、好ましくは1:6〜1:12の範囲である。
【0045】
したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここでは、前記熱可塑性ポリウレタンが、DIN 53505に従って測定された80A〜95Aの範囲のショア硬度を有する。
【0046】
本発明の熱可塑性ポリウレタンを製造するために、好ましくは、構成成分(a)、(b)及び(c)は、触媒(d)及び任意の補助剤及び/又は添加剤(e)の存在下で、ジイソシアネート(a)のNCO基の当量と構成成分(b)及び(c)のヒドロキシル基の総量との比が0.9〜1.1:1、好ましくは0.95〜1.05:1、特に約0.96〜1.0:1であるような量で、反応される。
【0047】
また、他の実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここでは、前記熱可塑性ポリウレタンが50000〜150000Daの範囲の平均分子量を有する。
【0048】
本発明の組成物は、いずれの場合にも全体組成物に基づいて、15質量%〜65質量%の範囲、好ましくは20質量%〜55質量%の範囲、より好ましくは23質量%〜45質量%の範囲、特に好ましくは26質量%〜35質量%の範囲の量の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0049】
一実施態様において、本発明の組成物を製造するために、ポリマー、熱可塑性ポリウレタン及び難燃剤は1つの工程で加工される。もう1つの好ましい実施態様において、本発明の組成物を製造するために、まず、反応押出機、ベルトシステム又は他の好適な装置は、使用され、その後に少なくとも1種のポリマー及び他の難燃剤が少なくとも1つの他の工程又は2つ以上の工程で導入される熱可塑性ポリウレタン(好ましくはペレットの形態で)を製造される。
【0050】
好ましくは密閉式混練機(internal kneader)又は押出機、好ましくは二軸式押出機である混合ユニットで、熱可塑性ポリウレタンをポリマー、少なくとも1種の難燃剤、特に少なくとも1種の金属水酸化物、及び少なくとも1種の含リン難燃剤を混合する。好ましくは、金属水酸化物が水酸化アルミニウムである。好ましい実施態様において、少なくとも1つの他の工程で混合ユニットに導入された難燃剤は、液体形態、換言すれば、21℃の温度で液体形態である。押出機の使用方法のもう1つの好ましい実施態様において、押出機の材料注入の流れ方向での投入点(intake point)の後ろに存在する温度で、導入された難燃剤は液体である。
【0051】
本発明により、好ましくは50000〜150000Daの範囲の数平均分子量を有する熱可塑性ポリウレタンを製造することである。一般的には、熱可塑性ポリウレタンの数平均分子量の上限は、加工性及び所望の特性のスペクトルにより測定される。
【0052】
金属水酸化物
本発明の組成物は少なくとも1種の金属水酸化物を含む。燃える際には、金属水酸化物は、水だけを排出し、従って、任意の有毒又は腐食性の排煙生成物も生成しない。さらに、これらの水酸化物は、燃える際に、排煙濃度を低下させることが可能である。しかしながら、ある場合には、これらの物質は、熱可塑性ポリウレタンの加水分解を促進し、また、ポリウレタンの酸化老化に影響を及ぼすという欠点を有する。
【0053】
この明細書において、好ましくは、好ましい水酸化物が、マグネシウム、カルシウム、亜鉛及び/又はアルミニウムの水酸化物又はそれらの混合物である。より好ましくは、金属水酸化物は水酸化アルミニウム、酸化水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及びこれらの水酸化物の2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0054】
したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここでは、前記金属水酸化物が水酸化アルミニウム、酸化水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及びこれらの水酸化物の2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0055】
好ましくは、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムとの混合物である。特に好ましくは、水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムである。最も好ましくは水酸化アルミニウムである。
【0056】
したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物にも関し、ここでは、前記金属水酸化物が水酸化アルミニウムである。
【0057】
好ましくは、本発明の組成物中の少なくとも1種の金属水酸化物の割合は、45質量%〜65質量%の範囲である。より高い充填剤レベルで、対応するポリマー材料の機械的特性が許容できないほど損なわれる。より好ましくは、ケーブル断熱に対して重要である引張強度及び破断点伸びが許容できないほど低下される。好ましくは、本発明の組成物における金属水酸化物の割合は、いずれの場合にも全体組成物に基づいて、48質量%〜60質量%の範囲、より好ましくは50質量%〜55質量%の範囲である。
【0058】
したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物にも関し、ここでは、前記組成物の性基金属水酸化物の割合が全体組成物に基づいて、45質量%〜65質量%の範囲である。
【0059】
典型的には、本発明において使用された金属水酸化物は2m/g〜150m/gの比表面積を有するが、該比表面積は、好ましくは2m/g〜9m/gの間、より好ましくは3m/g〜8m/gの間、最も好ましくは3m/g〜5m/gの間である。比表面積は、DIN ISO 9277:2003−05に従ってBET法により、窒素で測定される。
【0060】
被覆された金属水酸化物
本発明において、金属水酸化物の表面は、少なくとも部分的に外膜(envelope)とも称されるシェル(shell)により、少なくとも部分的に囲まれてもよい。シェルは、コーティング又は表面処理(surface treatment)という通常に使用される用語と同一視される。シェルは、ぴったり合う又はファンデルワールス力(van der Waals forces)の結果として純粋に物理的な手段で金属水酸化物に付着し、又は、化学的に金属水酸化物と結合する。これは、主に共有結合性相互作用(covalent interaction)により達成される。
【0061】
本発明の金属水酸化物、特に水酸化アルミニウムの全体を包み込むシェルをもたらす表面処理又は表面改質(surface modification)は、文献に幅広く記載されている。好適な材料及びコーティング技術が記載されている参考文献は、「粒子充填のポリマー複合材料」(第2版),Rothon,Roger N.編,2003年,Smithers Rapra Technologyである。特に、第4章が関連性を有する。相応の材料は、例えばベルグハイムでもドイツでもNabaltec、Schwandorf又はMartinswerkeから、市販されている。
【0062】
好ましいコーティング材料は、酸度関数(acid function)を有し、好ましくは少なくとも1種のアクリル酸又は酸無水物、好ましくは無水マレイン酸を有する飽和又は不飽和ポリマーであり、それは、それらが特に有効な手段で金属水酸化物の表面に付加するからである。
【0063】
ポリマーは、1種のポリマー又はポリマーの混合物、好ましくは1種のポリマーである。好ましいポリマーは、モノ−及びジオレフィンのポリマー、それらの混合物、もう1種又は他のビニルモノマーを有するモノ−及びジオレフィンのコポリマー、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(アルファ−メチルスチレン)、ジエン又はアクリロイル誘導体を有するスチレン又はアルファ−メチルスチレンのコポリマー、スチレン又はアルファ−メチルスチレンのグラフトコポリマー、ハロゲン化ポリマー、アルファ、ベタ−不飽和酸及びそれらの誘導体に由来するポリマー、並びに、これらのモノマーと互い又はこれらのモノマーと他の不飽和モノマーとのコポリマーである。
【0064】
同様に好ましいコーティング材料は、単量体有機酸及びそれらの塩であり、好ましくは飽和脂肪酸である;不飽和酸が常用されていない。好ましい脂肪酸は、10個〜30個の炭素原子、好ましくは12個〜22個、特に16個〜20個の炭素原子を含む;それらは、脂肪族であり、好ましくは二重結合を有しない。より特に好ましくはステアリン酸である。好ましい脂肪酸誘導体は、それらの塩、好ましくはカルシウム、アルミニウム、マグネシウム又は亜鉛の塩である。特に好ましくはカルシウムであり、特にステアリン酸カルシウムの形態である。
【0065】
金属水酸化物、好ましくは水酸化アルミニウムを包み込むシェル形成する他の好ましい物質は、下記の構造を有する有機シラン化合物であり、
(R)4-n --- Si --- Xn
式中、n=1,2又は3、
Xは、金属水酸化物の表面と反応する、カップリング基とも称される加水分解性基である。好ましくは、Rラジカルは、ヒドロカルビル基であり、有機シラン化合物が熱可塑性ポリウレタンとの優れた混合性を有するように選択される。Rラジカルが、加水分解に安定な炭素−ケイ素結合によりケイ素と結合され、反応性又は不活性であってもよい。好ましくは不飽和ヒドロカルビルラジカルである反応性ラジカルの一例は、アリルラジカルである。好ましくは、Rラジカルは、不活性であり、さらに好ましくは2個〜30個の炭素原子、好ましくは6個〜20個の炭素原子、より好ましくは8個〜18個の炭素原子を有する飽和ヒドロカルビルラジカルである;さらに好ましくは、それは分岐状又は直鎖である脂肪族ヒドロカルビルラジカルである。
【0066】
さらに好ましくは、有機シラン化合物は、Rラジカルのみを含み、且つ、一般式、
R --- Si --- (X)3
を有する。好ましくは、カップリング基Xは、ハロゲン,好ましくは塩素であり、したがって、カップリング剤はトリ−、ジ−又はモノクロロシランである。同様に好ましくは、カップリング基Xは、アルコキシ基、好ましくはメトキシ又はエトキシ基である。より好ましくは、該ラジカルは、好ましくはメトキシ又はエトキシカップリング基を有するヘキサデシルラジカルである;したがって、有機シランがヘキサデシルシランである。
【0067】
前記シランは、金属水酸化物の総量に基づいて、0.1質量%〜5質量%、さらに好ましくは0.5質量%〜1.5質量%、より好ましくは約1質量%の量で金属水酸化物に適用される。カルボン酸及び誘導体は、金属水酸化物の総量に基づいて、0.1質量%〜5質量%、さらに好ましくは1.5質量%〜5質量%、より好ましくは3質量%〜5質量%の量で金属水酸化物に適用される。
【0068】
好ましくは50%を超え、さらに好ましくは70%を超え、より好ましくは90%を超える金属水酸化物をシェルにより部分的に囲むものは、10μm未満、好ましくは5μm未満、より好ましくは3μm未満の最大寸法を有する。同時に、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%の粒子は、0.1μmを超え、さらに好ましくは0.5μmを超え、より好ましくは1μmを超える少なくとも1つの最大寸法を有する。
【0069】
好ましくは、本発明の熱可塑性ポリウレタンの製造において、既に被覆された金属水酸化物が使用される。これのようにするだけで、熱可塑性ポリウレタンの成分を有するコーティング材料の不要な副反応が避けられ、熱可塑性ポリウレタンの酸化分解を防止するという利点を特に効果的に持つことになる。さらに好ましくは、金属水酸化物のコーティングは、ポリウレタンが押出機の下流部(downstream part)で添加される前に、押出機の投入領域でも行われる。
【0070】
したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物にも関し、ここでは、前記金属水酸化物がシェルにより少なくとも部分的に囲まれる。
【0071】
含リン難燃剤
本発明の組成物は少なくとも1種の含リン難燃剤を含む。本発明により、原則として、熱可塑性ポリウレタンに対して任意の既知の含リン難燃剤を使用することが可能である。
【0072】
この明細書において、好ましくは、リン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、ホスフィン酸の誘導体、又はこれらの誘導体の2種以上の混合物を使用することである。
【0073】
したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物にも関し、ここでは、前記含リン難燃剤が、リン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、ホスフィン酸の誘導体、又はこれらの誘導体の2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0074】
他の好ましい実施態様において、含リン難燃剤は21℃で液体である。
【0075】
好ましくは、リン酸、ホスホン酸又はホスフィン酸の誘導体は、有機若しくは無機カチオンの塩、又は有機エステルを有する塩である。有機エステルは、リンに直接結合した酸素原子の少なくとも1つが有機ラジカルでエステル化された含リン酸の誘導体である。好ましい実施態様において、有機エステルは、アルキルエステルであり、別の好ましい実施態様において、アリールエステルである。より好ましくは、当該含リン酸の全てのヒドロキシル基がエステル化された。
【0076】
好ましくは、有機リン酸エステル、特にリン酸のトリエステル、例えばリン酸トリアルキル及び特にリン酸トリアリール(例えばリン酸トリフェニル)である。
【0077】
本発明により、好ましくは、一般式(I)のリン酸エステルを、熱可塑性ポリウレタン用の難燃剤として使用することであり、
【化1】
式中、Rは、任意に置換されたアルキル、シクロアルキル又はフェニル基を表し、nは1〜15である。
【0078】
一般式(I)のRがアルキルラジカルである場合、1個〜8個の炭素原子を有するアルキルラジカルが特に有用である。シクロアルキル基の一例はシクロヘキシルラジカルである。好ましくは、一般式(I)(式中、R=フェニル又はアルキル置換のフェニル)のリン酸エステルを使用することである。一般式(I)のnは、特に1であり、又は好ましくは3〜6の範囲である。一般式(I)のこの好ましいリン酸エステルの例は、フェニレン1,3−ビス(ジフェニル)リン酸、フェニレン1,3−ビス(ジキシレニル)リン酸、及びn=3〜6の平均オリゴマー化レベルを有する相応のオリゴマー生成物を含む。好ましいレゾルシノールは、典型的にオリゴマーに存在するレゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(RDP)である。
【0079】
他の好ましい含リン難燃剤は、典型的にオリゴマーの形態であるビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)(BDP)、及びリン酸ジフェニルクレシル(DPK)である。
【0080】
したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここでは、前記含リン難燃剤が、レゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(RDP)、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)(BDP)及びリン酸ジフェニルクレシル(DPK)からなる群から選択される。
【0081】
したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここでは、前記含リン難燃剤がレゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(RDP)である。
【0082】
有機ホスホン酸塩は、有機若しくは無機カチオンの塩又はホスホン酸エステルを有する塩である。好ましいホスホン酸エステルは、アルキル−又はフェニルホスホン酸のジエステルである。本発明において難燃剤として使用されるホスホン酸エステルの例は、一般式(II)のホスホン酸塩を含み、
【化2】
式中、
は、任意に置換アルキル、シクロアルキル又はフェニル基を表し、ここでは、2つのRラジカルは互いに結合して環状になってもよく、
は、任意に置換アルキル、シクロアルキル又はフェニル基である。
【0083】
特に好適であるのは、環状ホスホン酸塩であり、例えば、
【化3】
式中、Rは、CH及びCであり、ペンタエリスリトールに由来し、又は、
【化4】
式中、Rは、CH及びCであり、ネオペンチルグリコールに由来し、又は、
【化5】
式中、Rは、CH及びCであり、カテコールに由来し、又は、
【化6】
式中、Rは、非置換又は置換フェニルラジカルでる。
【0084】
ホスフィン酸エステルは、一般式R(P=O)ORを有し、ここでは、有機基R、R及びRが同一でも又は異なっていてもよい。R、R及びRラジカルは、脂肪族又は芳香族のものであり、1個〜20個、好ましくは1個〜10個、より好ましくは1個〜3個の炭素原子を有する。好ましくは少なくとも1つの前記ラジカルが脂肪族のものであり、好ましくは全ての前記ラジカルが脂肪族のものであり、最も好ましくはR及びRがエチルラジカルである。また、さらに好ましくは、Rがエチルラジカル又はメチルラジカルである。他の好ましい実施態様において、R、R及びRは、同時にエチルラジカル又はメチルラジカルである。
【0085】
好ましくは、ホスフィン酸塩、換言すれば、ホスフィン酸の塩である。R及びRラジカルは、脂肪族又は芳香族のものであり、1個〜20個、好ましくは1個〜10個、より好ましくは1個〜3個の炭素原子を有する。好ましくは、好ましくは少なくとも1つの前記ラジカルが脂肪族のものであり、好ましくは全ての前記ラジカルが脂肪族のものであり、最も好ましくはR及びRがエチルラジカルである。ホスフィン酸の好ましい塩は、アルミニウム、カルシウム又は亜鉛塩である。好ましい実施態様はジエチルホスフィン酸アルミニウムである。
【0086】
含リン難燃剤、それらの塩及び/又はそれらの誘導体は、単独の物質として又は混合物として本発明の組成物に使用される。
【0087】
この明細書において、少なくとも1種の含リン難燃剤は好適な量で使用される。好ましくは、少なくとも1種の含リン難燃剤は、いずれの場合にも全体組成物に基づいて、2質量%〜15質量%の範囲、より好ましくは3質量%〜10質量%の範囲、特に好ましくは4質量%〜5質量%の範囲で存在する。
【0088】
したがって、他の実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここでは、前記含リン難燃剤の割合が、全体組成物に基づいて、2質量%〜15質量%の範囲である。
【0089】
好ましい実施態様において、本発明の組成物は、含リン難燃剤としてのレゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(RDP)を含む。他の好ましい実施態様において、発明の組成物は、含リン難燃剤としてのレゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(RDP)及び水酸化アルミニウムを含む。
【0090】
様々な難燃剤の組み合わせ、並びに、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレンをベースとする共重合体からなる群から選択され、使用されたポリマーの組み合わせにより、機械的特性及び難燃性が特定の要求に対して最適化される。
【0091】
本発明により、含リン難燃剤、特にリン酸エステル、ホスホン酸エステル及び/又はホスフィン酸エステル及び/又はそれらの塩は、少なくとも1種の難燃剤としての金属水酸化物との混合物で使用される。好ましくは、使用されたリン酸エステル、ホスホン酸エステル及び/又はホスフィン酸エステルの総質量と、本発明の組成物に使用された金属水酸化物の質量との質量比は、1:8〜1:12の範囲である。
【0092】
また、本発明は、コーティング、減衰要素(damping elements)、ベローズ(bellows)、フィルム又は繊維、成形部品、建物及び輸送の床、不織物、好ましくはシール、ローラー、靴底、ホース、ケーブル、ケーブルコネクタ、ケーブルシース、クッション、ラミネート、プロファイル、ベルト、サドル、フォーム、プラグコネクタ、垂下ケーブル(trailing cables)、太陽電池モジュール、自動車のトリムの製造に、上記の難燃の熱可塑性ポリウレタンの少なくとも1種を含む本発明の組成物を使用する方法に関する。好ましくは、ケーブルシースの製造に使用することである。好ましくは、該製造は、ペレットから、本発明の組成物の射出成形、カレンダー、粉末焼結又は押出により、及び/又は本発明の組成物のさらなる発泡により行われる。
【0093】
したがって、本発明は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレンをベースとする共重合体からなる群から選択されたポリマーの少なくとも1種、少なくとも1種の金属水酸化物、並びに、少なくとも1種の含リン難燃剤を含む上記組成物をケーブルシースの製造に使用する方法に関し、ここでは、前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタン、並びに、少なくとも1種のジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される。
【0094】
本発明の他の実施態様は、特許請求の範囲及び実施例から見出され得る。本発明の上述した又は以下に説明する主題/方法/使用方法の特徴は、各場合において述べた組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱しない限り他の組み合わせでも使用することができることは言うまでもない。したがって、例えば、好ましい特徴と特に好ましい特徴との組み合わせや、別に特徴化されていない特徴と特に好ましい特徴との組み合わせなどは、この組み合わせが明示的に記載されていない場合であっても、黙示的に含まれる。
【0095】
本発明の例示的な実施態様が以下に記載されているが、これらは本発明に制限されない。より特に、本発明は、従属参照及びしたがって下記に特定される組み合わせから生じる実施態様も含む。
【0096】
1.少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレンをベースとする共重合体からなる群から選択されたポリマーの少なくとも1種、少なくとも1種の金属水酸化物、並びに、少なくとも1種の含リン難燃剤を含む組成物であって、前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタン、並びに、少なくとも1種のジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択されることを特徴とする組成物。
【0097】
2.前記ポリマーがエチレン−酢酸ビニル共重合体である、実施態様1に記載の組成物。
【0098】
3.前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンである実施態様1又は2に記載の組成物。
【0099】
4.前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンであり、前記少なくとも1種のポリカーボネートジオールが、ブタンジオール及びヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、並びに、これらのポリカーボネートジオールの2種以上の混合物からなる群から選択される実施態様1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【0100】
5.前記ポリカーボネートジオールが、GPCにより測定された500〜4000の範囲の数平均分子量Mnを有する実施態様1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【0101】
6.前記熱可塑性ポリウレタンが、50000〜150000Daの範囲の平均分子量を有する実施態様1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【0102】
7.前記熱可塑性ポリウレタンがジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をベースとする、実施態様1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【0103】
8.前記熱可塑性ポリウレタンが、DIN 53505に従って測定された80A〜95Aの範囲のショア硬度を有する実施態様1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【0104】
9.前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が、ASTM D1238に従って測定された4〜8g/10分の範囲のメルトフローレート(190℃/2.16kg)を有する実施態様1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【0105】
10.前記金属水酸化物が、水酸化アルミニウム、酸化水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及びこれらの水酸化物の2種以上の混合物からなる群から選択される実施態様1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【0106】
11.前記金属水酸化物が水酸化アルミニウムである、実施態様1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【0107】
12.前記金属水酸化物がシェルにより少なくとも部分的に囲まれる、実施態様1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【0108】
13.前記含リン難燃剤が、リン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、ホスフィン酸の誘導体及びこれらの誘導体の2種以上の混合物からなる群から選択される実施態様1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【0109】
14.前記含リン難燃剤が、レゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(RDP)、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)(BDP)、及びリン酸ジフェニルクレシル(DPK)からなる群から選択される実施態様1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【0110】
15.前記組成物中の前記熱可塑性ポリウレタンの割合が、全体組成物に基づいて、15%〜65%の範囲である実施態様1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【0111】
16.エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレンをベースとする共重合体からなる群から選択された前記ポリマーの、前記組成物中の割合が、全体組成物に基づいて5%〜25%の範囲である実施態様1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【0112】
17.前記組成物中の前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の割合が、全体組成物に基づいて5%〜25%の範囲である実施態様1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【0113】
18.前記組成物中の前記金属水酸化物の割合が、全体組成物に基づいて45%〜65%の範囲である実施態様1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【0114】
19.前記含リン難燃剤の割合が、全体組成物に基づいて2%〜15%の範囲である実施態様1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【0115】
20.実施態様1から19のいずれか一項に記載の組成物をケーブルシースの製造に使用する方法。
【0116】
21.少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、少なくとも1種のエチレン−酢酸ビニル共重合体、なくとも1種の金属水酸化物及び少なくとも1種の含リン難燃剤を含む組成物であって、前記熱可塑性ポリウレタンが少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンである組成物。
【0117】
22.少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、少なくとも1種のエチレン−酢酸ビニル共重合体、なくとも1種の金属水酸化物及び少なくとも1種の含リン難燃剤を含む組成物であって、前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタン、並びに、少なくとも1種のジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される組成物。
【0118】
以下の実施例は、本発明の説明になるが、本発明の対象に対して全く制限しない。
【実施例】
【0119】
実施例は、本発明の組成物の向上した難燃性、優れた機械的特性及び低い排煙濃度を示す。
【0120】
1.原料
Elastollan 1185A10:1000の分子量を有するポリテトラヒドロフランポリオール(PTHF)、ブタン−1,4−ジオール及びMDIをベースとし、BASFポリウレタンGmbH,Elastogranstrasse 60, 49448 Lemfordeから入手したショア硬度85AのTPU。
【0121】
Elastollan A:Ube(Eternacoll PH−200D)から入手したポリカーボネートジオール、ブタン−1,4−ジオール及びMDIをベースとし、実験材料であるショア硬度87AのTPU。
【0122】
Apyral 40 HS1:Nabaltec AG,Alustrasse 50−52,D−92421 Schwandorfから入手し、Al(OH)含有量[%]が約99.5であり、粒子サイズ(レーザー回折)[μm]D50が1.4であり、比表面積(BET)[m/g]が3.5であり、約1%ヘのキサデシルシランをベースとする疎水性表面コーティングを有する水酸化アルミニウム。
【0123】
Cloisite 5:Rockwood粘土添加剤GmbH、Stadtwaldstraβe 44,D−85368 Moosburgから入手し、粉末であり、平均粒子サイズD50が40μm(換言すれば、少なくとも50%の粒子が40μmより小さい)であり、天然ベントナイトをベースとする有機的に変性されたナノ分散性層状ケイ酸塩。
【0124】
ETERNACOLL(登録商標) PH 200D:約2000の分子量Mを有し、ペンタン−1,5−ジオール及びヘキサン−1,6−ジオールをベースとするコポリカーボネートジオール。
【0125】
Fyrolflex RDP:CAS #が125997−21−9であり、Supresta Netherlands B.V.,Office Park De Hoef,Hoefseweg 1,3821 AE Amersfoort,オランダから入手したレゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)。
【0126】
Crodamide ER BEAD:CAS #が112−84−5であり、Croda Europe有限会社,Cowick Hall,Snaith,Goole,Yorkshireのイーストライディング,DN14 9AA,GBから入手したエルカ酸アミド。
【0127】
Exolit OP 1230:CAS #が225789−38−8であり、Clariant Produkte (Deutschland) GmbH,Chemiepark knapsack,50351 Hurthから入手したジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩。
【0128】
Nofia HM 1100:CAS #が68664−06−2であり、FRX Polymers,200 Turnpike Road Chelmsford,MA 01824から入手したポリホスホネート。
【0129】
Aflammit PCO 900:Thor Specialities (UK) LTD,Wincham Avenue,Wincham,Cheshire CW8 6GB,UKから入手し、約245℃の融点を有する高い難燃性能及び最大270℃〜280℃までの優れた熱安定性を有する特許品(24%P)。
【0130】
Elvax 260A:DuPont,1007 Market Street,Wilmington,DE 19898から入手したエチレン共重合体。
【0131】
2.マニュアルキャスティングプロセスによるElastollan Aの製造
当該処方物に明記されているポリオールの量及び鎖延長剤の量を、計量してブリキ缶に入れ、窒素で簡単にブランケットする。前記缶を、蓋で密封し、加熱キャビネット内で90℃まで加熱する。
【0132】
スラブの熱処理のために更なる加熱キャビネットを80℃まで予熱する。テフロン皿をホットプレートの上に置き、該ホットプレートを125℃に調整する。
【0133】
液体イソシアネートの計算量を、容積測定により測定した。このため、液体イソシアネート(MDIの容積測定は約48℃の温度で行う)を、PEコップ内で検量し、10秒以内にPEコップに入れる。次に、このようにして空になったコップ自体の重さを量り、イソシアネートの計算量をコップに入れる。MDIの場合、コップを約48℃で加熱キャビネット内に保存する。
【0134】
室温で固体である加水分解安定剤及び酸化防止剤などの添加物は直接計量する。
【0135】
予熱したポリオールを、ラボジャッキの上に設置した撹拌器の下に置く。次に、撹拌器のパドルをポリオールに完全に浸すまで、ラボジャッキで反応容器を持ち上げる。
【0136】
撹拌器のモーターをオンにする前に、速度制御器が零点位置にあることをしっかりと確認する。次に、空気を混入して撹拌しなくても良好な混合を確保するように、速度を徐々に上げる。
【0137】
次に、添加剤、例えば酸化防止剤をポリオールに添加する。
【0138】
ホットエアガンで、反応混合物の温度を80℃まで慎重に調節する。
【0139】
イソシアネートを添加する前に、必要に応じて、マイクロシリンジにより反応混合物に触媒を計量して添加する。その後、80℃で、イソシアネートを、10秒以内で反応混合物に、容積測定により事前に決めた量を導入することにより、添加する。その重量のチェックを再び量ることにより行う。処方物の量から+/−0.2gの逸脱を記録した。イソシアネートの添加と同時に、ストップウオッチの作動を開始する。110℃まで達すると、125℃で予熱したテフロン皿に反応混合物を注入する。
【0140】
ストップウオッチを開始してから10分後、ホットプレートからスラブを取り除き、その後、80℃の加熱キャビネット内で15時間保存する。切削ミルで冷却したスラブを粉砕する。110℃でペレットを3時間乾燥させ、乾燥状態下で保存する。
【0141】
原則として、この方法は反応押出機又はベルト法に適用し得る。
【0142】
Elastollan A及びBの処方物を表1に記載する。
【0143】
【表1】
【0144】
Elastollan Aの製造について、使用したポリカーボネートジオールはUbeから入手したポリカーボネートジオール(Eternacoll PH−200D)である。
【0145】
3.混合物の製造
下記の表2は、各成分を質量部で記載する組成物のリストである。混合物はそれぞれに、10個のバレル部に分け、35Dの軸長(screw length)を有する2軸押出機Berstoff ZE 40 Aを用いて製造する。
【0146】
【表2】
【0147】
4.機械的特性
混合部を有するスリーゾーンスクリュー(three-zone screw)(スクリュー比1:3)を備えるArenz一軸式押出機を用いて混合物を押出し、厚さ1.6mmのフィルムを得た。対応する試験試料の密度、ショア硬度、引張強度及び破断点伸びを測定した。
【0148】
全ての製造した混合物は少なくとも9MPaの引張強度を有し、高い充填剤レベルが低い引張強度をもたらすことは明らかである。その結果を表3にまとめる。
【0149】
【表3】
【0150】
5.酸化老化の安定性
本発明において、酸化老化は、時間経過とともに熱可塑性ポリウレタンの機械的パラメーター(例えば引張強度、破断点伸び、引裂伝播抵抗、可撓性、耐衝撃性、柔軟性など)の任意の不利な変化に関する。
【0151】
酸化老化耐性を評価するため、試験試料を空気循環オーブンで113℃で7日間保存し、その後に機械的パラメーターを測定した。表4で結果をまとめる。
【0152】
ポリカーボネートをベースとするTPUをベースとする混合物に比して、PTHF 1000をベースとする混合物は、引張強度の大きいな低下を有する。
【0153】
【表4】
【0154】
6.難燃性
難燃性を評価するため、厚さ1.6mmの試験試料をUL 94V(装置及び電器部品のプラスチック材料の可燃性試験のUL安全基準)に従ってテストする。全ての混合物を、厚さ1.6mmのV−0として分類した。しかし、違いが個々のアフターバーン時間においで明らかであった。
【0155】
混合物I、IV、VI、VII、IX、X、XI及びXIIにおいて、非常に短いアフターバーン時間を測定した;これらの混合物が好ましい。表5で結果をまとめる。
【0156】
【表5】
【0157】
難燃性を評価するため、ケーブル絶縁及びケーブルシースの従来の押出ライン(45mm直径の平滑管押出機)で、ケーブルを製造した。2.5:1の圧縮比を有する従来のスリーゾーンスクリューを使用した。
【0158】
まず、0.3mmの個々の混合物のチューブ法で個々の混合物で、コア(16本の単線からなる撚線)を絶縁した。絶縁コアの直径は1.8mmであった。これらのコアの3つをより糸状にして、シェル(シェルの厚さが1mmであり、間隙が2mmである)を印刷法で押出により適用した。ケーブル全体の外径は6.3mmであった。
【0159】
その後、VW1テスト(UL標準1581、§1080−VW−1(垂直試料)燃焼試験)をケーブルに対して行った。いずれの場合にも、試験を3つのケーブルに対して行った。
【0160】
混合物I、II、IV、VI、VII、IX、X、XI及びXIIにおいて、試験に少なくとも1回合格した;混合物I、VI、VII、IX、X、XI及びXIIにおいて、試験に3回合格した。表6で結果をまとめる。
【0161】
【表6】
【0162】
難燃性を評価するため、コーン熱量計で35 kW/mの放射強度でISO 5660パート1及びパート2(2002〜12)に従って厚さ5mmの試験試料を水平にテストした。200 x 150 x 5 mmの寸法のコーン測定用の試験試料を30mmのネジ径を有するArburg 520S(ゾーン1〜ゾーン3、180℃;ゾーン4〜ゾーン6、185℃)に射出成形した。その後、シートをコーン測定に所要のサイズに切った。
【0163】
混合物IV、VI、VII、XI及びXIIは、より低いMAHRE値及びより高い燃焼残留物量を有する。よりよい難燃性を示すことから、これらの混合物が好ましい。
【0164】
Petrella(Petrella R.V., The assessment of full scale fire hazards from cone calorimeter data, Journal of Fire Science, 12 (1994), 14頁)によれば、熱の最大放出及び着火時間の指数(quotient)は、どのように対応の材料が急速に高まる火(fast-growing fire)に寄与するかを評価する。さらに、総放熱は、どのように対応の材料が長く続く火(long-lasting fire)に寄与するかを評価する。
【0165】
混合物のコーン熱量測定の結果は、図1に再現されるPetrellaプロットのグラフとして示した。ここで、材料の急速に高まる炎(PHRR/tig−1/kWm−2−1)に寄与する傾向をx軸にプロットしている。長く続く炎(THE/MJm−2)に寄与する傾向をy軸にプロットしている。
【0166】
よりよい難燃性を有する材料は小さいx及びy値を有する。表2及びPetrellaプロットで結果をまとめる。
【0167】
材料VI、VII、XI及びXIIは、より高い難燃性を有し、その結果として好ましい。表7で結果をまとめる。
【0168】
【表7】
【0169】
7.排煙濃度
排煙濃度を評価するため、ASTM E 662に従う測定を厚さ1.6mmの試験試料に行った。混合物IIIにおいて、特に低い排煙濃度を測定した;さらに、混合物IV、VI、VII、IX、X、XI及びXIIにおいて、低い排煙濃度を測定した。これらの混合物が好ましい。表8で結果をまとめる。
【0170】
【表8】
【0171】
排煙濃度を評価するため、コーン測定の結果を用いた。混合物III、VI、VII、XI及びXIIにおいて、低い排煙濃度を測定した。これらの混合物が好ましい。表9で結果をまとめる。
【0172】
【表9】
【0173】
実施例が示すように、本発明の組成物IV、VI、VII、IX、X、XI及びXIIにおいて、低い排煙濃度及び高い難燃性を測定した。
図1