特許第6554612号(P6554612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554612
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】真空蒸着装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   C23C14/24 C
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-531822(P2018-531822)
(86)(22)【出願日】2017年7月19日
(86)【国際出願番号】JP2017026066
(87)【国際公開番号】WO2018025638
(87)【国際公開日】20180208
【審査請求日】2018年6月27日
(31)【優先権主張番号】特願2016-152343(P2016-152343)
(32)【優先日】2016年8月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】北沢 僚也
(72)【発明者】
【氏名】中村 寿充
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 伸一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 一也
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−100002(JP,A)
【文献】 特開2003−317948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24−14/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内に配置される蒸着源を備え、蒸着源が蒸着物質を収容する収容箱と蒸着物質を加熱して昇華または気化させる加熱手段とを有する真空蒸着装置であって、
収容箱に、昇華または気化した蒸着物質の蒸気を噴出する噴出部が設けられ、噴出部が真空チャンバ内の被成膜物より鉛直方向上方に位置するものにおいて、
噴出部が、鉛直方向に対して斜め下向きの噴出口を有して当該噴出口から被成膜物に向けて蒸着物質の蒸気が噴出され、収容箱が被成膜物の端部から離間する位置にオフセット配置されることを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記収容箱を加熱し、当該収容箱からの輻射熱により蒸着物質を加熱するものであることを特徴とする請求項1記載の真空蒸着装置。
【請求項3】
前記噴出口に近接配置されて当該噴出口からの蒸着物質の蒸気が被成膜物に向けて噴出されることを防止する、鉛直方向に往復動自在なシャッター板を備え、シャッター板が被成膜物の端部から離間方向にオフセット配置されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の真空蒸着装置。
【請求項4】
被成膜物を水平に保持する保持部を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の真空蒸着装置。
【請求項5】
前記保持部を鉛直方向の軸を中心に回転駆動する駆動手段を更に有することを特徴とする請求項4に記載の真空蒸着装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の真空蒸着装置であって、
被成膜物が一方向に長手の基板であり、移動手段により基板を前記蒸着源に対して真空チャンバ内の一方向に相対移動させながら成膜するものにおいて、
蒸着源に対する基板の相対移動方向をX軸方向、X軸方向に直交する基板の幅方向をY軸方向として、前記収容箱に、噴出部がY軸方向に所定の間隔で列設されていることを特徴とする真空蒸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着装置に関し、より詳しくは、収容箱に設けられる昇華または気化した蒸着物質の噴出部が真空チャンバ内の被成膜物より鉛直方向上方に位置する所謂デポダウン方式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の真空蒸着装置は例えば特許文献1で知られている。このものでは、真空チャンバの鉛直方向下方に、当該真空チャンバの一方向に基板を搬送する基板搬送手段が設けられ、その上部に蒸着源が対向配置されている。蒸着源は、基板を跨ぐように設けられる、蒸着物質を収容する筒状の収容箱を有し、収容箱の下部には、蒸着物質の噴出口がその長手方向に沿って所定の間隔で列設されている。そして、ヒータで蒸着物質を加熱して収容箱内で昇華または気化させ、この昇華または気化したものを噴出口から基板に向けて噴出させることで、基板に対して成膜される。
【0003】
ここで、収容箱内で昇華または気化した蒸着物質は、噴出口から基板に向けて噴出するだけでなく、例えば、噴出口の周辺に位置する収容箱の外表面部分に付着、堆積する。この場合、付着、堆積した蒸着物質はパーティクルの発生源となり得る。このため、上記従来例のように、基板を跨ぐように収容箱が設けられていると、収容箱に付着した蒸着物質がパーティクルとなって下方に落下し、基板に付着するといった不具合が生じ、これでは、製品歩留まりが低下する等の問題を招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4216522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、パーティクルの影響を可及的に少なくできる所謂デポダウン方式の真空蒸着装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、真空チャンバ内に配置される蒸着源を備え、蒸着源が蒸着物質を収容する収容箱と蒸着物質を加熱して昇華または気化させる加熱手段とを有する本発明の真空蒸着装置は、収容箱に、昇華または気化した蒸着物質の蒸気を噴出する噴出部が設けられ、噴出部が真空チャンバ内の被成膜物より鉛直方向上方に位置し、噴出部が、鉛直方向に対して斜め下向きの噴出口を有して当該噴出口から被成膜物に向けて蒸着物質の蒸気が噴出され、収容箱が被成膜物の端部から離間する位置にオフセット配置されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、収容箱内で昇華または気化した蒸着物質を噴出口から基板に向けて噴出させたときに、収容箱の外表面にも蒸着物質が付着、堆積し、これがパーティクルの発生源となって下方に落下しても、収容箱がオフセット配置されているため、被成膜物に付着し難くなる。結果として、パーティクルの影響を可及的に少なくできる。
【0008】
本発明においては、前記加熱手段は、前記収容箱を加熱し、当該収容箱からの輻射熱により前記蒸着物質を加熱するものであることが好ましい。これによれば、収容箱の外表面に蒸着物質が付着しても、収容箱自体が加熱されていることで、蒸着物質が再度昇華または気化される。このため、パーティクルの発生源がつくられ難くなり、有利である。
【0009】
また、前記噴出口に近接配置されて当該噴出口からの蒸着物質の蒸気が被成膜物に向けて噴出されることを防止する、鉛直方向に往復動自在なシャッター板を備え、シャッター板が被成膜物の端部から離間方向にオフセットされていることが好ましい。これによれば、シャッター板に付着した蒸着物質がパーティクルとなって、下方に落下しても、被成膜物に付着し難くすることができる。
【0010】
また、被成膜物が水平に配置される保持部を有することが好ましい。ここで、水平とは、厳密な水平を意味するのではなく、実質的な水平を意味するものとする。更に、前記保持部を鉛直方向の軸線を中心に回転駆動する駆動手段を更に有することが好ましい。これによれば、膜厚分布を改善することができる。
【0011】
なお、被成膜物が一方向に長手の基板であり、前記移動手段により基板を前記蒸着源に対して真空チャンバ内の一方向に相対移動させながら成膜する場合、蒸着源に対する基板の相対移動方向をX軸方向、X軸方向に直交する基板の幅方向をY軸方向として、前記収容箱に、噴出部がY軸方向に所定の間隔で列設されていることが好ましい。この場合、基板の幅によっては、膜厚分布の均一性を高めるために、蒸着源をY軸方向両側に夫々配置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の真空蒸着装置の実施形態を説明する、一部を断面視とした部分斜視図。
図2】基板と蒸着源との配置関係を説明する図。
図3】蒸着源の変形例を説明する図。
図4】真空蒸着装置の変形例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、被成膜物を矩形の輪郭を持つ所定厚さのガラス基板(以下、「基板S」という)とし、基板Sの片面に所定の薄膜を成膜する場合を例に本発明の真空蒸着装置の実施形態を説明する。
【0014】
図1及び図2を参照して、真空蒸着装置DMは真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1には、特に図示して説明しないが、排気管を介して真空ポンプが接続され、所定圧力(真空度)に真空引きして保持できるようになっている。また、真空チャンバ1の鉛直方向下部には基板搬送装置2が設けられている。基板搬送装置2は、成膜面としての上面を開放した状態で基板Sを保持するキャリア21を有し、図外の駆動装置によってキャリア21、ひいては基板Sを真空チャンバ1内の一方向に所定速度で移動するようになっている。基板搬送装置2としては公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略するが、本実施形態では、基板搬送装置2が、後述の蒸着源に対して真空チャンバ1内の一方向に基板Sを相対移動させる移動手段を構成する。以下においては、蒸着源に対する基板Sの相対移動方向をX軸方向、X軸方向に直交する基板Sの幅方向をY軸方向とする。
【0015】
真空チャンバ1には、基板Sより鉛直方向上方に位置させて蒸着源3が設けられている。蒸着源3は、基板Sに成膜しようとする薄膜に応じて適宜選択される蒸着物質Vmを収容する収容箱31を有する。この場合、収容箱31は、Y軸方向に長手の直方体形状のものであり、その下面のY軸方向の角部には、筒体で構成される噴出部としての噴出ノズル32の複数本がY軸方向に所定間隔をおいて突設されている。この場合、噴出ノズル32はそのノズル孔の孔軸32aが鉛直方向に対して所定の角度で傾斜され、その先端の噴出口32bが鉛直方向斜め下向きとなるようにしている。この場合、孔軸32aの傾斜角は、基板Sの幅、蒸着物質Vmに起因する噴出ノズル32からの蒸着物質Vmの噴出分布や基板Sに形成しようとする薄膜の膜厚の均一性等を考慮して適宜設定される。
【0016】
また、噴出ノズル32を含む収容箱31の周囲には加熱手段としての電熱線33が巻回され、図外の電源より通電することで、収容箱31をその全体に亘って略均等に加熱できるようにしている。そして、収容箱31を加熱することで当該収容箱31からの輻射熱により容器31a内の蒸着物質Vmを加熱して当該蒸着物質Vmを昇華または気化させることができるようになっている。なお、特に図示して説明しないが、収容箱31内には分散板が設けられ、収容箱31を加熱してその内部の蒸着物質Vmを昇華または気化させ、この昇華または気化した蒸着物質Vmを各噴出ノズル32から略均等に噴出できるようにしている。また、収容箱31を略均等に加熱する方式は上記のものに限られるものではない。さらに、容器31a内の蒸着物質Vmを直接加熱する加熱手段を別に設けてもよく、例えば、別の加熱手段としての電熱線を容器31aの周囲に巻回し、通電して蒸着物質Vmを伝熱により加熱してもよい。
【0017】
上記のように構成された収容箱31は、噴出ノズル32の噴出口32bが基板SのY軸方向一端から離間する位置にオフセット配置されている。この場合、噴出口32bと基板SのY軸方向一端との間の間隔DSは、基板Sに形成しようとする薄膜の膜厚の均一性等を考慮して適宜設定される。また、真空チャンバ1内には、噴出ノズル32の噴出口32bに近接配置されて当該噴出口32bからの蒸着物質の蒸気が基板Sに向けて噴出されることを防止する、鉛直方向に往復動自在なシャッター板4を備える。シャッター板4は、噴出ノズル32からの蒸着物質Vmの噴出が安定するまでの間、図中仮想線で示す遮蔽位置に移動し、噴出が安定すると、図中実線で示す噴出位置に移動する。これらの両位置の間でシャッター板4を往復動させる駆動手段としては、公知の構造のものを用いることができるため、ここでは説明を省略する。シャッター板4もまた、基板SのY軸方向一端から離間方向にオフセットされている。シャッター板4の下端は、収容箱31に向けてL字状に屈曲させている。
【0018】
以上の実施形態によれば、収容箱31内で昇華または気化した蒸着物質Vmを噴出口32bから基板Sに向けて噴出させたときに、収容箱31の外表面にも蒸着物質Vmが付着、堆積し、これがパーティクルの発生源となって下方に落下しても、収容箱31がオフセット配置されているため、基板Sに付着し難くなる。結果として、パーティクルの影響を可及的に少なくできる。また、加熱手段33は、収容箱31を加熱し、収容箱31からの輻射熱により蒸着物質Vmを加熱する構成を採用したため、噴出口32bを含む収容箱31の内面や外面に蒸着物質Vmが付着しても、収容箱31自体が加熱されていることで、蒸着物質Vmが再度昇華または気化される。このため、パーティクルの発生源がつくられ難くなり、有利である。しかも、シャッター板4が基板Sの端部から離間方向にオフセットされ、シャッター板4の下端が収容箱31に向けてL字状に屈曲されていることが好ましい。これによれば、上記同様、シャッター板4に付着した蒸着物質がパーティクルとなって、下方に落下しても、基板に付着し難くすることができる。
【0019】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。上記実施形態では、収容箱31に複数本の噴出ノズル32を設けたものを例に説明したが、一本の噴出ノズル32だけを設けることもでき、また、収容箱の角部に円形やスリット状の孔を開設して、これを噴出部としてもよい。
【0020】
ところで、収容箱31をオフセット配置した場合、基板Sの幅によっては、膜厚分布が略均一にできない場合がある。このような場合、図3に示すように、真空チャンバ1内に、基板Sの幅方向両側に夫々収容箱31を配置することができる。この場合、各噴出ノズル32の孔軸32aを適宜変えて配置することもできる。また、図4に示すように、基板Sを回転ステージ5上に設置し、所定の回転数で回転しながら成膜することができる。回転ステージ5としては、基板Sを水平に保持する板状の保持部51を有し、この保持部51にモータ等の駆動手段52の回転軸53が連結され、駆動手段52により保持部51を回転軸53を中心に回転駆動する公知のものを用いることができる。このような構成を採用すれば、膜厚分布を改善することができる。
【0021】
また、膜厚分布を改善するために、蒸着源3もしくは基板Sを移動させてもよい。例えば、収容箱3が基板Sに対してオフセット配置される状態は維持したまま、蒸着源3と基板Sとの間の距離DSを変更するように、蒸着源3と基板Sの少なくともいずれか一方を水平移動させてもよい。もしくは、蒸着源3を上下に移動させてもよく、蒸着源3を噴出ノズル32の並設方向(X軸方向)にのびる軸を中心に所定の角度でスイングさせてもよい。
【0022】
更に、上記実施形態では、被成膜物をガラス基板とし、基板搬送装置2によりガラス基板を一定の速度で搬送しながら成膜するものを例に説明したが、真空蒸着装置の構成は、上記のものに限定されるものではない。例えば、被成膜物をシート状の基材とし、駆動ローラと巻取りローラとの間で一定の速度で基材を移動させながら基材の片面に成膜するような装置にも本発明は適用できる。また、被成膜物を真空チャンバ1にセットし、蒸着源に公知の構造を持つ駆動手段を付設して、被成膜物に対して蒸着源3を相対移動させながら成膜することにも本発明は適用できる。更に、収容箱31に噴出ノズル32を一列で設けたものを例に説明したが、複数列で設けることもできる。
【符号の説明】
【0023】
DM…真空蒸着装置、S…基板(被成膜物)、Vm…蒸着物質、1…真空チャンバ、2…基板搬送装置(保持部、移動手段)、3…蒸着源、31…収容箱、32…噴出ノズル(噴出部)、32b…噴出口、33…電熱線(加熱手段)、4…シャッター板、51…保持部、52…駆動手段、53…回転軸(軸)。
図1
図2
図3
図4