【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物名 2015年度精密工学会秋季大会講演論文集「杜の都で創生、精密工学のパラダイムシフト」第045 掲載年月日 平成27年8月20日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト/インフラ状態モニタリング用センサシステム開発/道路インフラ状態モニタリング用センサシステムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る電子デバイスの製造方法の一実施形態の要部の各工程の素子平面図を示し、
図2は、本発明に係る電子デバイスの製造方法の一実施形態の要部の各工程の素子断面図を示す。ここで、
図2(A)、(B)、(C)及び(D)は、それぞれ対応する
図1(A)、(B)、(C)及び(D)の素子平面図の水平線Xで切断した素子断面図を示す。
【0018】
まず、
図2(A)に示すように、シリコン(Si)基板12、二酸化シリコン(SiO
2)層13及び表面シリコン(Si)層14がこの順で積層された、扁平な直方体形状のSOI基板11の表面に下部電極層、圧電薄膜層及び上部電極層を積層した後、フォトリソグラフィーやエッチングなどの公知の技術を適用して、下部電極層を互いに離間する下部電極15a及び15bに形成し、更に圧電薄膜層及び上部電極層をそれぞれ所定の長さの直方体形状の圧電薄膜16a及び16b、上部電極17a及び17bに形成する。このとき、
図1(A)及び
図2(A)に示すように、圧電薄膜16a及び16bと上部電極17a及び17bは、それらの長手方向上の各一方の端部が、下部電極15a及び15bの端部側表面の一部が露出するように短く形成される。
【0019】
ここで、表面シリコン層14は、Si基板12及びSiO
2層13よりも薄い厚さ(例えば3μm)である。また、下部電極15a及び15bと上部電極17a及び17bは、それぞれ同一構成で、例えばチタン(Ti)膜と白金(Pt)膜とが積層された厚さ100nmの構造である。一方、圧電薄膜16a及び16bは、所定の機能を実現するための機能性素子の一例で、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:lead zirconate titanate)製の圧電特性を有する薄膜で、その厚さは例えば1.9μmである。
【0020】
続いて、
図1(B)及び
図2(B)に示すように、蒸着、パターニング及びエッチングなどの公知の技術を適用して、露出した下部電極15a、15bの端部側表面の上に矩形状の電極パッド18a、18bを形成すると共に、電極パッド18a、18bの形成位置と対向する上部電極17a、17bの表面位置に矩形状の電極パッド19a、19bを形成する。電極パッド18a、18b、19a、19bは例えば金(Au)により構成されている。
【0021】
続いて、
図1(C)及び
図2(C)に示すように、フォトリソグラフィーやエッチングなどの公知の技術をSOI基板11のSiO
2層13及び表面Si層14に適用して、下部電極15a、18bよりも長手方向の長さが長い所定の長さの直方体形状のSiO
2膜13a、13b及び表面Si膜14a、14bをそれぞれ離間して形成する。これにより、Si基板12の表面の一部が露出する。また、この工程では、
図1(C)の平面図に示すような後述するテーパ形状の支持部20及び21が複数個所に形成される。支持部20はSiO
2膜13a及び表面Si膜14aの積層部分であり、支持部21はSiO
2膜13b及び表面Si膜14bの積層部分である。
【0022】
そして、
図2(D)の断面図に示すように、Si基板12の裏面側から、例えばDRIEなどの深掘エッチングにより、Si基板12とSiO
2膜13a、13bの各所定幅の周縁部分を残し、それ以外を除去する。これにより、SOI基板11は、Si基板が12’で、SiO
2膜13aが13a’で、SiO
2膜13bが13b’でそれぞれ示すように、周縁部分の一部のみが残された凹部22a、22bが形成されたものとなる。これにより、表面Si膜14a、下部電極15a、圧電薄膜16a、上部電極17a、電極パッド18a及び19aからなる第1の積層構造体を本体部分とする第1の電子デバイスと、表面Si膜14b、下部電極15b、圧電薄膜16b、上部電極17b、電極パッド18b及び19bからなる第2の積層構造体を本体部分とする第2の電子デバイスとが、
図1(D)及び
図2(D)に示すように、支持部20、21により少なくとも長手方向の両端部分でSi基板12’の凹部22a、22b以外の部分(すなわち平面四角枠形状の枠部分)で支持される。
【0023】
以上の実施形態の製造方法は、公知のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスの作製方法と同様であり、本実施形態によれば、この公知の方法と同様の工程を経て電子デバイスを製造することができる。ただし、MEMSデバイスと本実施形態の電子デバイスとの違いは、必要な構成素子がすべて構造体上に存在していることである。また、本実施形態の製造方法で製造する電子デバイスは、SOI基板の上側の積層構造体の本体部分と、その本体部分をSOI基板のSi基板上に支持する支持構造とからなるが、その支持構造が後述するように積層構造体の底面の長手方向に直交する幅よりも短い部分からなる平面形状の複数の支持部からなる点に特徴がある。上記の支持部は
図1及び
図2の実施形態では平面がテーパ形状の支持部である。
【0024】
すなわち、表面Si膜14a、下部電極15a、圧電薄膜16a、上部電極17a、電極パッド18a及び19aからなる第1の積層構造体の端部は、支持部として積層構造体の底面の長手方向に直交する幅よりも短い部分からなる平面がテーパ形状のSiO
2膜13a’によりSi基板12’上に支持され、また、表面Si膜14b、下部電極15b、圧電薄膜16b、上部電極17b、電極パッド18b及び19bからなる第2の積層構造体の端部は、支持部として積層構造体の底面の長手方向に直交する幅よりも短い部分からなる平面がテーパ形状のSiO
2膜13b’によりSi基板12’上に支持されている。これにより、後述するように、第1の積層構造体及び第2の積層構造体を目的の電子デバイスとして製造するために、平面形状が四角枠状のSi基板12'から剥離する際に極めて容易に剥離することができる。
【0025】
次に、本発明に係る電子デバイスの第1の実施形態について説明する。
図3は、本発明に係る電子デバイスの第1の実施形態の説明用平面図を示す。同図中、
図1及び
図2と同一構成部分には同一符号を付してある。ただし、
図1及び
図2に示した符号の添字a、bは省略してある。
図3(A)は、本発明に係る電子デバイスの第1の実施形態の平面図を示す。
図3(A)の平面図に示す本実施形態の電子デバイス30は、
図1及び
図2と共に説明した第1、第2の積層構造体及びその支持部と同様の構造であり、平面が概略四角枠状のSi基板12’の上に、SiO
2膜、表面Si膜、下部電極15、機能性素子である圧電薄膜16、及び上部電極17が積層され、かつ、下部電極15の所定位置と上部電極17の所定位置に矩形状の電極パッド18、19が形成された積層構造体の本体部分と、後述する平面形状の複数の支持部とからなる構造である。
【0026】
この電子デバイス30を構成する、SOI基板11よりも薄い偏平な直方体形状の積層構造体の本体部分には、表面に下部電極15、圧電薄膜16、上部電極17、電極パッド18、19がすべて搭載されている。下部電極15及び上部電極17は、機能性素子の入力信号又は出力信号用電極であるが、ここでは機能性素子が圧電薄膜16であることから、それぞれには圧電薄膜16に所定の機能動作(収縮又は伸張動作)を行わせるための駆動信号が印加されるか、圧電薄膜16の収縮又は伸張動作により発生した信号を出力する。
【0027】
ここで、本実施形態の電子デバイス30は、SOI基板の平面四角枠状のSi基板12’の枠部分のみに、積層構造体の本体部分が支持部(
図3(A)の20(21)で示す部分)で支持されるように架け渡される構造であるが、その支持構造が積層構造体の底面の長手方向に直交する幅よりも短い部分で構成された複数の支持部からなる点に特徴がある。複数の支持部は或る間隔を空けて形成されており、それぞれの平面形状は一例としてテーパ形状である。このことについて更に説明する、
図3(A)の積層構造体の平面図において、表面Si膜の上側の積層構造部分を除いた構成は
図3(B)に示す如くになる。なお、
図3(A)の電極パッド18及び支持部20(21)付近の模式図を
図3(E)に示す。
【0028】
図3(C)は、
図3(B)の破線の四角部分25で囲んだ支持部20(21)を拡大した図である。
図3(B)及び(C)から分かるように、階層構造体の支持部20(21)は、平面形状が2つの直線状の稜線が鋭角で交わる端点付近のテーパ形状の先端部分(換言すると、先細りの形状の先端部分)において、Si基板12’の上に積層構造体を支持する。支持部20(21)を構成するテーパ形状の先端部分は、Si基板12’の枠部分の上においてはそれぞれ階層構造体の長手方向に直交する長さである幅(
図3(B)にWで示す)よりも短い長さの3辺からなる三角形状である。
【0029】
更に、
図3(C)中の破線の四角部分26を拡大した
図3(D)の斜視図及び
図3(F)の模式図に示すように、上記のテーパ形状の先端部分は、四角枠状に形成されたSi基板12’に対して、SOI基板のSiO
2膜13’及び表面シリコン膜14’が積層された部分からなる。かかる構造の電子デバイス30によれば、犠牲層エッチングのためのサイズの制約や、特殊な材料の導入をすることなく、機能性素子である圧電薄膜16と、その入力信号又は出力信号用の下部電極15及び上部電極17と、電極パッド18及び19とが積層された極薄の構造体の本体部分をSi基板12’から極めて容易に剥離して、任意の位置に転写することができる。
【0030】
次に、本発明に係る電子デバイスの製造方法の第2の実施形態について説明する。
図4は、本発明に係る電子デバイスの製造方法の第2の実施形態の各工程説明図を示す。同図中、
図1及び
図2と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
図4(A)において、チップ実装機の吸引コレット41の先端に弾力性のある粘着材42が真空吸引されている。粘着材42としては、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)などがある。粘着材42の平面の大きさはSi基板12’に支持されている第1の積層構造体35aや第2の積層構造体35bの平面の大きさと同程度とされている。
【0031】
実施形態では、
図1と共に説明した製造方法で第1及び第2の積層構造体35a及び35bを作成した後、続いて、
図4(A)の断面図に示すように、吸引コレット41の先端に粘着材42を真空吸引した状態で、矢印43で示すように粘着材42を例えば第2の積層構造体35bの最上面の上部電極17bに押し付けて粘着する。
【0032】
次に、吸引コレット41に吸引されている粘着材42と上部電極17bとの粘着状態を保ったまま、
図4(B)の断面図に矢印44で示すように上方向に粘着材42を引き上げると、第2の積層構造体35bは、厚さが薄く、かつ、面積が小さなテーパ形状の支持部(
図1(D)及び
図2(D)、
図3(A)の20、21等)により本体部分がSi基板12’に支持されているだけであるので、応力がそのテーパ形状の支持部に集中して、小なる力によりテーパ形状の支持部で破断されて
図4(B)に示すように粘着材42と共に引き上げられ、Si基板12’から剥離(分離)される。
【0033】
このとき、
図4(B)の断面図及び
図4(C)の平面図に示すように、支持部21を構成するSiO
2膜13’と共に、その上の表面Si膜の一部14b’も破断する。
図4(C)の21’はSi基板12’の表面に残ったSiO
2膜13b’及び表面Si膜の一部14b’の積層部分(支持部21の一部)を示す。なお、ここでは第2の積層構造体35bの本体部分をSi基板12’から剥離するように説明しているが、同様にして第1の積層構造体35aの本体部分をSi基板12’から剥離することもできることは勿論である。なお、粘着材42を用いることなく吸引コレット41で直接に積層構造体35a又は35bの本体部分を吸引してSi基板12’から剥離することも可能である。ただし、この場合は吸引した際の衝撃により、積層構造体35a又は35bの本体部分の一部が破損する可能性がある。
【0034】
続いて、Si基板12’から剥離され、かつ、吸引コレット41に吸引されている粘着材42に粘着されている第2の積層構造体35bの本体部分を、
図4(D)に示すようにフレキシブル回路基板51の上方の所定位置に移動した後、
図4(D)に矢印45で示すように下方向に移動してフレキシブル回路基板51の表面の所定領域に形成されている接着層53に接着する。ここで、フレキシブル回路基板51の表面の上記所定領域は、銅製の配線54、55の形成領域の間の第2の積層構造体35bの本体部分が転写されるべき領域であり、そこには予め印刷やディスペンス技術により第2の積層構造体35b(及び第1の積層構造体35a)の本体部分と同程度の大きさで接着層53が形成されている。
【0035】
なお、チップ実装機は顕微鏡などを用いたアライメント機能により、吸引コレット41を移動してフレキシブル回路基板51の任意の場所に、剥離させた積層構造体35b(及び35a)の本体部分を±数μmの精度でマウントできる。接着層53は例えばエポキシ樹脂をスクリーン印刷したものであり、その接着力は粘着材42の粘着力より大であるので、その後、粘着材42を吸引している吸引コレット41を上方向に引き上げると粘着材42を第2の積層構造体35bの本体部分から分離することができる。このようにして、フレキシブル回路基板51の所定領域に第2の積層構造体35bの本体部分が転写された極薄の電子デバイスを製造することができる。なお、一例として、フレキシブル回路基板51は50μmの厚さであり、接着層53は30μmの厚さであり、配線54、55は18μmの厚さである。したがって、電子デバイスは極薄の積層構造体の本体部分とフレキシブル回路基板51とからなる極薄の構造である。
【0036】
次に、本発明に係る電子デバイスの配線構造について説明する。電子デバイスを駆動するためには配線処理が必要になる。微小サイズの電子デバイスでは、通常、直径数十μmの金ワイヤなどによるワイヤボンディングや、はんだバンプを利用したリフローなどにより構造体の電極と基板上の配線とを接続する方法がとられる。しかし、本発明に係る電子デバイスのような極薄構造体では、ワイヤを電極に圧着させる際の衝撃で損傷することが確認されている。また、低融点であるポリマー材料などのフレキシブル回路基板に構造体を転写するため、高温となるリフローを用いることも困難である。
【0037】
そこで、本発明に係る電子デバイスにおいては、スクリーン印刷やインクジェット印刷、ディスペンサを用いた導電性ペーストの塗布による配線接続を行う。これらの印刷・塗布技術は段差のある箇所で断線することなくペースト材料を印刷・塗布することが苦手であるが、本発明に係る電子デバイスのような極薄の積層構造体は厚さが5μm程度であるため、その端部においても断線することなくペースト材料を印刷・塗布することが可能である。しかし、本発明に係る電子デバイスは、積層構造体の側面に上部電極(17;17a,17b)及び下部電極(15;15a,15b)が暴露された構造であるため、導電性ペーストを直接印刷・塗布するとショートが発生する。そこで、このショートが発生しないように配線する必要がある。
【0038】
図5は、上記のショートの発生を防止した本発明に係る電子デバイスの配線構造の一例を説明する素子断面図を示す。
図5中、
図4と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。ただし、
図5では
図4に示した符号の添字bは省略してある。添字aを付して示す符号の第1の積層構造体についても同様に適用できるためであり、どちらでもよく区別が不要であるからである。
【0039】
本発明の配線構造では、まず、
図5(A)の断面図に示すように、フレキシブル回路基板51の表面の接着層53に接着された積層構造体35の本体部分の上部電極17に接続された電極パッド19側の端部に対して、絶縁性ペースト61を印刷・塗布することで、積層構造体35の電極パッド19側の側面を保護する。絶縁性ペースト61は、電極パッド19の上面の一部、上部電極17の端部、圧電薄膜16の端部、下部電極15の端部、表面Si膜14の端部、接着層53の端部及びフレキシブル回路基板51の表面の一部をそれぞれ被覆するように印刷・塗布されるが、配線
55には印刷・塗布されない。
【0040】
その後、
図5(B)の断面図に示すように、電極パッド19の上面から絶縁性ペースト61の表面を経由して配線55の表面の一部に至るまでの範囲を被覆するように導電性ペースト62を印刷・塗布すると共に、積層構造体35の下部電極15に接続された電極パッド18側の端部から配線54までの範囲を被覆するように導電性ペースト63を印刷・塗布する。これにより、上部電極17と下部電極15とのショートを発生させることなく、上部電極17と配線55とを電気的に接続できると共に、下部電極15と配線54とを電気的に接続できる。
【0041】
図6は、本発明に係る電子デバイスの配線構造の一例を説明する素子平面の顕微鏡写真の図を示す。同図中、
図5と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
図6(A)は、フレキシブル回路基板51の表面に積層構造体35が転写された電子デバイスの平面の顕微鏡写真を示す。
図6(B)は、
図5(A)と共に説明した積層構造体35の本体部分の上部電極17に接続された電極パッド19側の端部に対して、絶縁性ペースト61が印刷・塗布された状態の電子デバイスの平面の顕微鏡写真を示す。
図6(C)は、
図5(B)と共に説明した積層構造体35の本体部分の下部電極パッド19の上面から絶縁性ペースト61の表面を経由して配線55の表面の一部に至るまでの範囲に導電性ペースト62が印刷・塗布され、かつ、積層構造体35の本体部分の下部電極15に接続された電極パッド18側の端部及び配線54とそれらの間に導電性ペースト63が印刷・塗布された状態の電子デバイスの平面の顕微鏡写真を示す。
【0042】
次に、本発明に係る電子デバイスの利用例について説明する。
図7は、本発明に係る電子デバイスの効果確認のための実験装置の一例の概略構成図を示す。同図において、一端が固定され、他端が上下に振動可能の非固定端とされた、扁平な直方体形状のステンレス板71の固定端側付近に、本発明に係る電子デバイス72と市販の歪みゲージ73とが近接並行して接着されている。本発明に係る電子デバイス72は例えば
図5(B)の断面図に示した、機能性素子として圧電薄膜16を備える電子デバイスで、その配線54及び55が増幅器74を介してオシロスコープ75の入力端子に接続されている。一方、市販の歪みゲージ73は、出力端子が増幅器76を介してパーソナルコンピュータ(パソコン)77に接続されている。
【0043】
かかる構成の装置におけるステンレス板71の他端を
図7に示すように、ステンレス板71の反発力に抗して指先78で下方向に押下した後、指先78をステンレス板71から離すと、ステンレス板71の先端が固定端を支点として上下に振動する。このとき、オシロスコープ75では
図8に実線Iで示すように時間の経過とともに振動する波形の電圧(縦軸の左側の目盛り)が観測された。一方、このときパソコン77では
図8に一点鎖線IIで示すように時間の経過とともに振動するマイクロストレイン(縦軸の右側の目盛り)が観測された。上記の電圧波形の振幅値及びマイクロストレインの値は、指先78の押圧力に対応した振動の大きさに応じて変化した。これにより、本発明に係る電子デバイス72は、市販の歪みゲージ73と同様に歪みセンサとしての応用例が可能であることが示された。
【0044】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含するものである。例えば、本発明に係る電子デバイスは、SOI基板の平面四角枠状のSi基板の枠部分のみに、積層構造体の本体部分が支持部で支持されるように架け渡される構造であるが、その支持構造は積層構造体の底面の長手方向に直交する幅よりも短い長さ部分からなる平面形状の複数の支持部からなる構成であれば形状を問わない。例えば、実施形態ではSi基板12’の枠部分に積層構造体の本体部分を支持する支持部20、21の平面形状は、
図1(D)及び
図9(A)に示したようなテーパ形状であったが、本発明は
図9(B)〜(F)に示した各形状のいずれであってもよい。なお、積層構造体の底面の幅である積層構造体の底面の長手方向に直交する方向の長さは、例えば下部電極の幅に略等しい。
【0045】
ここで、
図9(B)は、Si基板12’の枠部分に積層構造体を支持する支持部81、82の平面形状がテーパ形状を示しているが、
図1(D)及び
図9(A)に示す実施形態のテーパ形状がSi基板12’の枠部分方向に従って幅が狭くなる形状であるのに対し、Si基板12’の枠部分において最も幅が広く積層構造体本体方向に従って幅が狭くなる形状である点で異なる。すなわち、
図1(D)及び
図9(A)に示す実施形態の支持部81、82はテーパ形状の先細りの先端部分付近がSi基板12’の枠部分に位置し、
図9(B)に示す支持部83、84は積層構造体の本体部分に位置する。
【0046】
また、
図9(C)に示す支持部83、84の平面形状、及び
図9(D)に示す支持部85、86の平面形状がいずれも直線と曲線とで囲まれた半円形状であるが、曲線部分の位置が異なる。また、
図9(E)に示す支持部87、88は、その平面形状が鼓のように三角形の頂点同士が結合された対向する2つの三角形からなる形状である。更に、
図9(F)に示す支持部89、90は、その平面形状が幅の狭い長方形状である。
【0047】
また、
図1及び
図3ではSOI基板のSi基板に対してSiO
2膜及び表面Si膜の積層部分をテーパ形状に形成しているが、SOI基板のSi基板及びSiO
2膜の積層部分に対して表面Si膜のみをテーパ形状に形成するようにしてもよい。また、
図5では積層構造体35の電極パッド19側の側面のみを絶縁性ペースト61により保護するように説明したが、積層構造体35の電極パッド18側の側面も絶縁性ペーストにより保護するようにしてもよい。
【0048】
また、本発明における所定の機能を実現するための機能性素子には、上記の実施形態の圧電薄膜以外に、半導体歪みゲージ、磁性薄膜、ホール素子、熱電変換材料、赤外線検出素子、半導体信号処理回路などを含む。また、転写される回路基板はフレキシブル回路基板51として説明したが、フレキシブルでなくても構わない。更に、基板はSOI基板でなくてもよく、例えばSi基板上のSiO
2層の表面にアルミナの薄膜が形成されたアルミナオンインシュレータのような基板でもよい。
【0049】
更に、本発明は、例えば互いに同一又は少なくとも一部が異なる種類の機能性素子をそれぞれ有する複数の積層構造体の本体部分を、粘着材で複数の電子デバイスの各積層基板から同時にあるいは個別に剥離し、剥離したそれら複数の積層構造体の本体部分を大面積の一の回路基板上に接着して転写するような構成も包含するものである。この場合、大面積の一の回路基板に異なる複数の積層構造体の本体部分を同時に接着して転写するか、あるいは素子ごとに別個に接着して転写する。例えば、温度センサ、加速度センサ、信号処理回路では、別々のウェハで異なる種類の構造体を作製し、それら異なる種類の複数の構造体を剥離して一の回路基板に接着して転写する。