【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
[実施例・比較例]
(実施例1)
CZ法にて窒素ドープなしで直径300mm、P型、方位<100>、酸素濃度15ppma(JEIDAスケール)のシリコン単結晶棒を製造し、このシリコン単結晶棒からワイヤーソーを用いてシリコンウェーハを切り出し、面取り、ラッピング、エッチング、鏡面研磨加工を施して、直径300mmのシリコン単結晶鏡面ウェーハ(熱処理に用いるシリコンウェーハ)を用意した。
【0044】
このシリコンウェーハを用い、
図1に示す熱処理の条件(Arガス雰囲気)にて、1150℃1時間の熱処理(第1の熱処理を50分、第2の熱処理を10分)を行った。なお、第1の熱処理はArガス雰囲気にて1150℃で50分行い、第2の熱処理はArガス95%と窒素(N
2)ガス5%(Arガス:窒素ガス=19L/min:1L/min)との混合ガス雰囲気にして1150℃で10分間行った。
【0045】
次に、熱処理後、ウェーハ表面の粗さを改善するため、0.1μmの鏡面研磨を行ったのち、シリコンウェーハの評価を行った。具体的には、熱処理後のシリコンウェーハを、中心を通る[110]方向に劈開し、赤外散乱トモグラフィー法にて、シリコンウェーハの中心(中心から0mm)、中心から70mm、及び中心から140mmの3点についてBMD密度測定を行った。この結果を
図2に示した。また、赤外散乱トモグラフィー装置から得られたBMDの深さ方向分布を表す散乱体イメージ像(欠陥の散乱像)を
図4に示した。
【0046】
(実施例2)
実施例1と同様にしてシリコンウェーハの用意及び熱処理を行った。ただし、第2の熱処理は、Arガス90%と窒素ガス10%(Arガス:窒素ガス=18L/min:2L/min)との混合ガス雰囲気にして1150℃で10分間行った。
熱処理後のシリコンウェーハについて、実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を
図2及び
図4に示した。
【0047】
(実施例3)
実施例1と同様にしてシリコンウェーハの用意及び熱処理を行った。ただし、第2の熱処理は、Arガス75%と窒素ガス25%(Arガス:窒素ガス=15L/min:5L/min)との混合ガス雰囲気にして1150℃で10分間行った。
熱処理後のシリコンウェーハについて、実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を
図2及び
図4に示した。
【0048】
(実施例4)
CZ法にて窒素を1×10
13atoms/cm
3台になるようにドープして直径300mm、P型、方位<100>、酸素濃度15ppma(JEIDAスケール)のシリコン単結晶棒を製造し、このシリコン単結晶棒からワイヤーソーを用いてシリコンウェーハを切り出し、面取り、ラッピング、エッチング、鏡面研磨加工を施して、窒素のドープの有無以外は実施例1とほぼ同一の条件とした直径300mmのシリコン単結晶鏡面ウェーハ(熱処理に用いるシリコンウェーハ)を用意した。
【0049】
この窒素をドープしたシリコンウェーハを用い、実施例1と同様にしてシリコンウェーハの用意及び熱処理を行った。また、熱処理後のシリコンウェーハについて、実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を
図3及び
図5に示した。
【0050】
(実施例5)
実施例4と同様にしてシリコンウェーハの用意及び熱処理を行った。ただし、第2の熱処理は、Arガス90%と窒素ガス10%(Arガス:窒素ガス=18L/min:2L/min)との混合ガス雰囲気にして1150℃で10分間行った。
熱処理後のシリコンウェーハについて、実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を
図3及び
図5に示した。
【0051】
(実施例6)
実施例4と同様にしてシリコンウェーハの用意及び熱処理を行った。ただし、第2の熱処理は、Arガス75%と窒素ガス25%(Arガス:窒素ガス=15L/min:5L/min)との混合ガス雰囲気にして1150℃で10分間行った。
熱処理後のシリコンウェーハについて、実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を
図3及び
図5に示した。
【0052】
(比較例1)
実施例1と同様にしてシリコンウェーハの用意及び熱処理を行った。ただし、第2の熱処理は、Arガスのみ(Arガス:20L/min)の雰囲気(即ち、窒素ガスを含まない雰囲気)にして1150℃で10分間行った。
熱処理後のシリコンウェーハについて、実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を
図2及び
図4に示した。
【0053】
(比較例2)
実施例1と同様にしてシリコンウェーハを用意し、特許文献1の請求項1の記載に従って、
図7に示す熱処理条件(窒素ガスを5%混合した混合ガス雰囲気で昇温した後、Arガス雰囲気に置換して高温熱処理を行う熱処理条件)にて熱処理を行った(即ち、本発明のシリコンウェーハの熱処理方法における第2の熱処理は行っていない)。
熱処理後のシリコンウェーハについて、実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を
図2及び
図4に示した。
【0054】
(比較例3)
実施例1と同様にしてシリコンウェーハを用意し、Arガス中にアンモニアガスを3%混合した混合ガス雰囲気で1175℃10秒のRTAによる熱処理を施した。
熱処理後のシリコンウェーハについて、実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を
図2及び
図4に示した。また、
図6に
図4中の比較例3における欠陥の散乱像の写真を拡大した写真を示した。
【0055】
(比較例4)
実施例4と同様にしてシリコンウェーハの用意及び熱処理を行った。ただし、第2の熱処理は、Arガスのみ(Arガス:20L/min)の雰囲気(即ち、窒素ガスを含まない雰囲気)にして1150℃で10分間行った。
熱処理後のシリコンウェーハについて、実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を
図3及び
図5に示した。
【0056】
(比較例5)
実施例4と同様にしてシリコンウェーハを用意し、特許文献1の請求項1の記載に従って、
図7に示す熱処理条件(窒素ガスを5%混合した混合ガス雰囲気で昇温した後、Arガス雰囲気に置換して高温熱処理を行う熱処理条件)にて熱処理を行った。
熱処理後のシリコンウェーハについて、実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を
図3及び
図5に示した。
【0057】
(比較例6)
実施例4と同様にしてシリコンウェーハを用意し、Arガス中にアンモニアガスを3%混合した混合ガス雰囲気で1175℃10秒のRTAによる熱処理を施した。
熱処理後のシリコンウェーハについて、実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を
図3及び
図5に示した。また、
図6に
図5中の比較例6における欠陥の散乱像の写真を拡大した写真を示した。
【0058】
[評価結果]
図2,3に示されるように、窒素ドープなしのシリコンウェーハ及び窒素ドープありのシリコンウェーハのどちらのウェーハにおいても、本発明のシリコンウェーハの熱処理方法で熱処理を行った実施例1〜6においてのみ、BMD測定を行った3点全てにおいてBMD密度が1×10
9/cm
3以上となることが明らかとなった。
【0059】
一方、第2の熱処理をArガスのみ(Arガス100%)で行った比較例1及び比較例4では、BMD密度が1×10
9/cm
3未満となる測定点があった。また、窒素ガスを5%混合した混合ガス雰囲気で昇温した後、Arガス雰囲気に置換して高温熱処理を行った比較例2及び比較例5では、BMD測定を行った3点全てにおいてBMD密度が1×10
9/cm
3未満となった。さらに、1175℃10秒のRTAによる熱処理を施した比較例3及び比較例6では、BMDを検出することができなかった。
【0060】
また、
図4〜6に示した欠陥の散乱像を詳細に検討したところ、比較例1〜6ではDZ層直下に1×10
9/cm
3以上の高密度のBMDが形成されておらず、本発明のシリコンウェーハの熱処理方法で熱処理を行った実施例1〜6においてのみ、DZ層直下に1×10
9/cm
3以上の高密度のBMDが形成されていることが確認できた。
【0061】
上記の結果より、本発明のシリコンウェーハの熱処理方法であれば、DZ層直下に1×10
9/cm
3以上の高密度のBMDを形成できることが確認できた。また、特許文献1の熱処理方法では、本発明の課題であるDZ層直下への1×10
9/cm
3以上の高密度のBMD形成を達成することはできないものであることも、本発明者らの実験により確認された。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。