(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持基材の層とシリコーン樹脂層とガラス基板の層とをこの順で備え、前記支持基材の層と前記シリコーン樹脂層の界面の剥離強度が前記シリコーン樹脂層と前記ガラス基板の層の界面の剥離強度よりも高い、ガラス積層体であって、
前記シリコーン樹脂層中のシリコーン樹脂が、アルケニル基を有し、数平均分子量が500〜9000であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)と、ハイドロシリル基を有するハイドロジェンポリシロキサン(B)とを反応させて得られる硬化物であり、
前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)中の前記アルケニル基と、前記ハイドロジェンポリシロキサン(B)中の前記ハイドロシリル基との混合モル比(ハイドロシリル基のモル数/アルケニル基のモル数)が0.7/1〜1.3/1である、ガラス積層体。
前記シリコーン樹脂層が、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、前記ハイドロジェンポリシロキサン(B)、および、ヒルデブランド溶解度パラメータ(SP値)が14.0MPa1/2以下の溶媒を含み、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)中の前記アルケニル基と、前記ハイドロジェンポリシロキサン(B)中の前記ハイドロシリル基との混合モル比(ハイドロシリル基のモル数/アルケニル基のモル数)が0.7/1〜1.3/1である硬化性樹脂組成物を塗布して得られる層に、硬化処理を施して得られる層である、請求項1に記載のガラス積層体。
前記シリコーン樹脂層が、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、前記ハイドロジェンポリシロキサン(B)、および、沸点が200℃以下の溶媒を含み、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)中の前記アルケニル基と、前記ハイドロジェンポリシロキサン(B)中の前記ハイドロシリル基との混合モル比(ハイドロシリル基のモル数/アルケニル基のモル数)が0.7/1〜1.3/1である硬化性樹脂組成物を塗布して得られる層に、硬化処理を施して得られる層である、請求項1に記載のガラス積層体。
前記シリコーン樹脂層が、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、前記ハイドロジェンポリシロキサン(B)、および、沸点が200℃超の溶媒を含み、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)中の前記アルケニル基と、前記ハイドロジェンポリシロキサン(B)中の前記ハイドロシリル基との混合モル比(ハイドロシリル基のモル数/アルケニル基のモル数)が0.7/1〜1.3/1であり、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)および前記ハイドロジェンポリシロキサン(B)の合計含有量が70質量%以上100質量%未満である硬化性樹脂組成物を塗布して得られる層に、硬化処理を施して得られる層である、請求項1に記載のガラス積層体。
支持基材の片面に、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)および前記ハイドロジェンポリシロキサン(B)を含み、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)中の前記アルケニル基と、前記ハイドロジェンポリシロキサン(B)中の前記ハイドロシリル基との混合モル比(ハイドロシリル基のモル数/アルケニル基のモル数)が0.7/1〜1.3/1である層を形成し、前記支持基材面上で前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)と前記ハイドロジェンポリシロキサン(B)とを反応させてシリコーン樹脂層を形成し、次いで前記シリコーン樹脂層の表面にガラス基板を積層する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のガラス積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、以下の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0010】
本発明のガラス積層体は、支持基材の層とシリコーン樹脂層とガラス基板の層とをこの順で備える。すなわち、支持基材の層とガラス基板の層との間にシリコーン樹脂層を有し、シリコーン樹脂層は、一方の側が支持基材の層に接し、他方の側がガラス基板の層に接している。
本発明のガラス積層体の特徴点の一つは、シリコーン樹脂層中のシリコーン樹脂が所定の数平均分子量のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを用いて形成されている点が挙げられる。本発明者らは、従来技術の問題点について検討を行ったところ、ガラス基板の剥離性に、シリコーン樹脂層中に残存する未反応のハイドロシリル基が関連していることを知見した。つまり、シリコーン樹脂層中に未反応のハイドロシリル基が数多く残存している場合、ガラス積層体への高温加熱処理の際に、ハイドロシリル基がガラス基板と反応して、シリコーン樹脂層とガラス基板との接着性が向上してしまい、結果としてガラス基板が剥離しづらくなることを知見した。そこで、所定の数平均分子量のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを用いてシリコーン樹脂層を形成することにより、未反応のハイドロシリル基の残存量を低下させ、ガラス基板の剥離性を向上させた。より具体的には、該アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、その数平均分子量の低さから高い運動性を有するため、ハイドロジェンポリシロキサン中のハイドロシリル基との反応性が高く、結果として未反応のハイドロシリル基の量が減ると推測される。
なお、該シリコーン樹脂層を使用することにより、ガラス基板の剥離の際にシリコーン樹脂層の凝集破壊がより抑制される。
さらに、後述するように所定のヒルデブランド溶解度パラメータ(SP値)の溶媒を含む硬化性樹脂組成物を用いた場合は、得られるシリコーン樹脂層の平坦性がより優れ、ガラス基板との密着性がより優れる。
【0011】
図1は、本発明に係るガラス積層体の一例の模式的断面図である。
図1に示すように、ガラス積層体10は、支持基材12の層とガラス基板16の層とそれらの間にシリコーン樹脂層14が存在する積層体である。シリコーン樹脂層14は、その一方の面が支持基材12に接すると共に、その他方の面がガラス基板16の第1主面16aに接している。言い換えると、シリコーン樹脂層14は、ガラス基板16の第1主面16aに接している。
支持基材12の層およびシリコーン樹脂層14からなる2層部分は、液晶パネルなどの電子デバイス用部材を製造する部材形成工程において、ガラス基板16を補強する。なお、ガラス積層体10の製造のためにあらかじめ製造される支持基材12の層およびシリコーン樹脂層14からなる2層部分をシリコーン樹脂層付き支持基材18という。
【0012】
このガラス積層体10は、後述する部材形成工程まで使用される。即ち、このガラス積層体10は、そのガラス基板16の第2主面16b上に液晶表示装置などの電子デバイス用部材が形成されるまで使用される。その後、電子デバイス用部材が形成されたガラス積層体は、シリコーン樹脂層付き支持基材18と電子デバイス(部材付きガラス基板)に分離され、シリコーン樹脂層付き支持基材18は、電子デバイスを構成する部分とはならない。シリコーン樹脂層付き支持基材18には新たなガラス基板16と積層され、新たなガラス積層体10として再利用することができる。
【0013】
支持基材12とシリコーン樹脂層14の界面は、剥離強度(x)を有し、支持基材12とシリコーン樹脂層14の界面に剥離強度(x)を越える引き剥がし方向の応力が加えられると、支持基材12とシリコーン樹脂層14の界面が剥離する。シリコーン樹脂層14とガラス基板16の界面は、剥離強度(y)を有し、シリコーン樹脂層14とガラス基板16の界面に剥離強度(y)を越える引き剥がし方向の応力が加えられると、シリコーン樹脂層14とガラス基板16の界面が剥離する。
ガラス積層体10(後述の電子デバイス用部材付き積層体も意味する)においては、上記剥離強度(x)は上記剥離強度(y)よりも高い。したがって、ガラス積層体10に支持基材12とガラス基板16とを引き剥がす方向の応力が加えられると、本発明のガラス積層体10は、シリコーン樹脂層14とガラス基板16の界面で剥離してガラス基板16とシリコーン樹脂層付き支持基材18に分離する。
【0014】
剥離強度(x)は、剥離強度(y)と比較して、充分高いことが好ましい。剥離強度(x)を高めることは、支持基材12に対するシリコーン樹脂層14の付着力を高め、かつ加熱処理後においてガラス基板16に対してよりも、相対的に高い付着力を維持できることを意味する。
支持基材12に対するシリコーン樹脂層14の付着力を高めるためには、後述するように、所定の成分を含む硬化性樹脂組成物の層(すなわち、硬化性樹脂組成物の塗膜)を支持基材12上で硬化(例えば、架橋硬化)させてシリコーン樹脂層14を形成することが好ましい。硬化の際の接着力で、支持基材12に対して高い結合力で結合したシリコーン樹脂層14を形成することができる。
一方、硬化後のオルガノポリシロキサンの硬化物のガラス基板16に対する結合力は、上記硬化時に生じる結合力よりも低いのが通例である。したがって、支持基材12上で硬化性樹脂組成物の層に硬化処理を施してシリコーン樹脂層14を形成し、その後シリコーン樹脂層14の面にガラス基板16を積層して、ガラス積層体10を製造することが好ましい。
【0015】
以下で、まず、ガラス積層体10を構成する各層(支持基材12、ガラス基板16、シリコーン樹脂層14)について詳述し、その後、ガラス積層体および電子デバイスの製造方法について詳述する。
【0016】
<支持基材>
支持基材12は、ガラス基板16を支持して補強し、後述する部材形成工程(電子デバイス用部材を製造する工程)において電子デバイス用部材の製造の際にガラス基板16の変形、傷付き、破損などを防止する。
支持基材12としては、例えば、ガラス板、プラスチック板、SUS板などの金属板などが用いられる。通常、部材形成工程が熱処理を伴うため、支持基材12は、ガラス基板16との線膨張係数の差の小さい材料で形成されることが好ましく、ガラス基板16と同一材料で形成されることがより好ましく、支持基材12は、ガラス板であることが好ましい。特に、支持基材12は、ガラス基板16と同じガラス材料からなるガラス板であることが好ましい。
【0017】
支持基材12の厚さは、ガラス基板16よりも厚くてもよいし、薄くてもよい。好ましくは、ガラス基板16の厚さ、シリコーン樹脂層14の厚さ、およびガラス積層体10の厚さに基づいて、支持基材12の厚さが選択される。例えば、現行の部材形成工程が厚さ0.5mmの基板を処理するように設計されたものであって、ガラス基板16の厚さとシリコーン樹脂層14の厚さとの和が0.1mmの場合、支持基材12の厚さを0.4mmとする。支持基材12の厚さは、通常の場合、0.2〜5.0mmであることが好ましい。
【0018】
支持基材12がガラス板の場合、ガラス板の厚さは、扱いやすく、割れにくいなどの理由から、0.08mm以上であることが好ましい。また、ガラス板の厚さは、電子デバイス用部材形成後に剥離する際に、割れずに適度に撓むような剛性が望まれる理由から、1.0mm以下であることが好ましい。
【0019】
支持基材12とガラス基板16との25〜300℃における平均線膨張係数の差は、好ましくは500×10
-7/℃以下であり、より好ましくは300×10
-7/℃以下であり、さらに好ましくは200×10
-7/℃以下である。差が大き過ぎると、部材形成工程における加熱冷却時に、ガラス積層体10が激しく反ったり、支持基材12とガラス基板16とが剥離したりする可能性がある。支持基材12の材料がガラス基板16の材料と同じ場合、このような問題が生じるのを抑制することができる。
【0020】
<ガラス基板>
ガラス基板16は、第1主面16aがシリコーン樹脂層14と接し、シリコーン樹脂層14側とは反対側の第2主面16bに電子デバイス用部材が設けられる。
ガラス基板16の種類は、一般的なものであってよく、例えば、LCD、OLEDといった表示装置用のガラス基板などが挙げられる。ガラス基板16は、耐薬品性、耐透湿性に優れ、且つ、熱収縮率が低いものも得ることができる。熱収縮率の指標としては、JIS R 3102(1995年改正)に規定されている線膨張係数が用いられる。
【0021】
ガラス基板16の線膨張係数が大きいと、部材形成工程は、加熱処理を伴うことが多いので、様々な不都合が生じやすい。例えば、ガラス基板16上にTFTを形成する場合、加熱下でTFTが形成されたガラス基板16を冷却すると、ガラス基板16の熱収縮によって、TFTの位置ずれが過大になるおそれがある。
【0022】
ガラス基板16は、ガラス原料を溶融し、溶融ガラスを板状に成形して得られる。このような成形方法は、一般的なものであってよく、例えば、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法、フルコール法、ラバース法などが用いられる。また、特に厚さが薄いガラス基板16は、一旦、板状に成形したガラスを成形可能温度に加熱し、延伸などの手段で引き伸ばして薄くする方法(リドロー法)で成形して得られる。
【0023】
ガラス基板16のガラスの種類は、特に限定されないが、無アルカリホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスが好ましい。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40〜90質量%のガラスが好ましい。
【0024】
ガラス基板16のガラスとしては、電子デバイス用部材の種類やその製造工程に適したガラスが採用される。例えば、液晶パネル用のガラス基板は、アルカリ金属成分の溶出が液晶に影響を与えやすいことから、アルカリ金属成分を実質的に含まないガラス(無アルカリガラス)からなる(ただし、通常アルカリ土類金属成分は含まれる)。このように、ガラス基板16のガラスは、適用されるデバイスの種類およびその製造工程に基づいて適宜選択される。
【0025】
ガラス基板16の厚さは、ガラス基板16の薄型化および/または軽量化の観点から、0.3mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.15mm以下であり、さらに好ましくは0.10mm以下である。0.3mm以下の場合、ガラス基板16に良好なフレキシブル性を与えることが可能である。0.15mm以下の場合、ガラス基板16をロール状に巻き取ることが可能である。
また、ガラス基板16の厚さは、ガラス基板16の製造が容易であること、ガラス基板16の取り扱いが容易であることなどの理由から、0.03mm以上であることが好ましい。
【0026】
なお、ガラス基板16は、2層以上からなっていてもよく、この場合、各々の層を形成する材料は、同種材料であってもよいし、異種材料であってもよい。また、この場合、「ガラス基板16の厚さ」は、全ての層の合計の厚さを意味するものとする。
【0027】
<シリコーン樹脂層>
シリコーン樹脂層14は、ガラス基板16と支持基材12とを分離する操作が行われるまでガラス基板16の位置ずれを防止すると共に、ガラス基板16などが分離操作によって破損するのを防止する。シリコーン樹脂層14のガラス基板16と接する表面14aは、ガラス基板16の第1主面16aに剥離可能に密着する。シリコーン樹脂層14は、ガラス基板16の第1主面16aに弱い結合力で結合しており、その界面の剥離強度(y)は、シリコーン樹脂層14と支持基材12との間の界面の剥離強度(x)よりも低い。
すなわち、ガラス基板16と支持基材12とを分離する際には、ガラス基板16の第1主面16aとシリコーン樹脂層14との界面で剥離し、支持基材12とシリコーン樹脂層14との界面では剥離し難い。このため、シリコーン樹脂層14は、ガラス基板16の第1主面16aと密着するが、ガラス基板16を容易に剥離することができる表面特性を有する。すなわち、シリコーン樹脂層14は、ガラス基板16の第1主面16aに対してある程度の結合力で結合してガラス基板16の位置ずれなどを防止していると同時に、ガラス基板16を剥離する際には、ガラス基板16を破壊することなく、容易に剥離できる程度の結合力で結合している。本発明では、このシリコーン樹脂層14表面の容易に剥離できる性質を剥離性という。一方、支持基材12の第1主面とシリコーン樹脂層14とは相対的に剥離しがたい結合力で結合している。
なお、シリコーン樹脂層14とガラス基板16の界面の結合力は、ガラス積層体10のガラス基板16の面(第2主面16b)上に電子デバイス用部材を形成する前後に変化してもよい(すなわち、剥離強度(x)や剥離強度(y)が変化してもよい)。しかし、電子デバイス用部材を形成した後であっても、剥離強度(y)は、剥離強度(x)よりも低い。
【0028】
シリコーン樹脂層14とガラス基板16の層とは、弱い接着力やファンデルワールス力に起因する結合力で結合していると考えられる。シリコーン樹脂層14を形成した後、その表面にガラス基板16を積層する場合、シリコーン樹脂層14のシリコーン樹脂が接着力を示さないほど充分に架橋している場合は、ファンデルワールス力に起因する結合力で結合していると考えられる。しかし、シリコーン樹脂層14のシリコーン樹脂は、ある程度の弱い接着力を有することが少なくない。たとえ、接着性が極めて低い場合であっても、ガラス積層体10製造後、その積層体上に電子デバイス用部材を形成する際には、加熱操作などにより、シリコーン樹脂層14のシリコーン樹脂は、ガラス基板16面に接着し、シリコーン樹脂層14とガラス基板16の層との間の結合力は、上昇すると考えられる。
場合により、積層前のシリコーン樹脂層14の表面や積層前のガラス基板16の第1主面16aに両者間の結合力を弱める処理を行って積層することもできる。積層する面に非接着性処理などを行い、その後積層することにより、シリコーン樹脂層14とガラス基板16の層の界面の結合力を弱め、剥離強度(y)を低くすることができる。
【0029】
また、シリコーン樹脂層14は、接着力や粘着力などの強い結合力で支持基材12表面に結合されている。たとえば、上述したように、硬化性樹脂組成物の層を支持基材12表面で硬化させることにより、硬化物であるシリコーン樹脂を支持基材12表面に接着して、高い結合力を得ることができる。また、支持基材12表面とシリコーン樹脂層14との間に強い結合力を生じさせる処理(例えば、カップリング剤を使用した処理)を施して支持基材12表面とシリコーン樹脂層14との間の結合力を高めることもできる。
シリコーン樹脂層14と支持基材12の層とが高い結合力で結合していることは、両者の界面の剥離強度(x)が高いことを意味する。
【0030】
シリコーン樹脂層14の厚さは、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物が溶媒を含有する場合、含有しない場合のいずれの場合であっても、形成されるシリコーン樹脂層14の厚さは、2〜100μmであることが好ましく、3〜50μmであることがより好ましく、7〜20μmであることがさらに好ましい。シリコーン樹脂層14の厚さがこのような範囲であると、シリコーン樹脂層14とガラス基板16との間に気泡や異物が介在することがあっても、ガラス基板16のゆがみ欠陥の発生を抑制することができる。また、厚さが比較的厚い場合は、異物が存在していても、気泡となることを抑制することができる。また、シリコーン樹脂層14の厚さが厚すぎると、シリコーン樹脂層14を形成するのに時間および材料を要するため経済的ではなく、耐熱性が低下する場合がある。また、シリコーン樹脂層14の厚さが薄すぎると、シリコーン樹脂層14とガラス基板16との密着性が低下する場合がある。 シリコーン樹脂層14の厚さは、硬化性樹脂組成物の樹脂成分の濃度や、支持基材上に塗工する塗布液の量で調節することができる。
なお、シリコーン樹脂層14は、2層以上からなっていてもよい。この場合「シリコーン樹脂層14の厚さ」は、全ての層の合計の厚さを意味するものとする。
【0031】
シリコーン樹脂層14に含まれるシリコーン樹脂は、アルケニル基を有し、数平均分子量が500〜9000であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)と、ハイドロシリル基を有するハイドロジェンポリシロキサン(B)とを反応させて得られる硬化物(例えば、架橋硬化物)である。該シリコーン樹脂は、3次元網目構造を形成していることが好ましい。
【0032】
アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)(以後、ポリシロキサン(A)とも称する)とは、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。
ポリシロキサン(A)の数平均分子量は、500〜9000であり、ガラス基板の剥離がより容易である点から、1000〜8000が好ましく、1500〜6000がより好ましい。
数平均分子量が500未満の場合、揮発成分が多くなり、硬化が十分に進行しない。数平均分子量が9000超の場合、ガラス基板16の剥離性に劣る。
上記数平均分子量の測定方法としては、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定し、標準ポリスチレンに換算したときの数平均分子量である。
【0033】
ポリシロキサン(A)は、直鎖状、分岐鎖状でもよく、ガラス基板16の剥離性がより優れる点で、直鎖状(例えば、線状)が好ましい。
ポリシロキサン(A)に含まれるアルケニル基としては特に限定されないが、例えば、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2−プロペニル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキシニル基などが挙げられ、中でも耐熱性に優れる点から、ビニル基が好ましい。
ポリシロキサン(A)に含まれるアルケニル基の数は、特に制限されないが、ガラス基板16の剥離性がより優れる点から、1分子あたり少なくとも2個有することが好ましく、2〜120個有することがより好ましく、2〜3個有することがさらに好ましい。
なお、また、ポリシロキサン(A)に含まれるアルケニル基以外の基としては、アルキル基(特に、炭素数4以下のアルキル基)が挙げられる。
【0034】
ポリシロキサン(A)中におけるアルケニル基の位置は、特に制限されないが、ポリシロキサン(A)の末端および/または側鎖が挙げられる。
ポリシロキサン(A)が直鎖状の場合、アルケニル基は、下記に示すM単位およびD単位のいずれかに存在してもよく、M単位とD単位の両方に存在していてもよい。硬化速度の点から、少なくともM単位に存在していることが好ましく、2個のM単位の両方に存在していることが好ましい。
なお、M単位およびD単位とは、オルガノポリシロキサンの基本構成単位の例であり、M単位とは有機基が3つ結合した1官能性のシロキサン単位、D単位とは有機基が2つ結合した2官能性のシロキサン単位である。シロキサン単位において、シロキサン結合は、2個のケイ素原子が1個の酸素原子を介して結合した結合であることより、シロキサン結合におけるケイ素原子1個当たりの酸素原子は1/2個とみなし、式中O
1/2と表現される。
【0036】
なお、アルケニル基を有するM単位としては、上記Rのうちいずれか1つがアルケニル基であり、他のRがアルキル基である態様が好ましい。
また、アルケニル基を有するD単位としては、上記Rのうちいずれか1つがアルケニル基であり、他のRがアルキル基である態様が好ましい。
【0037】
ハイドロジェンポリシロキサン(B)(以後、ポリシロキサン(B)とも称する)は、ハイドロシリル基(ケイ素原子に結合した水素原子)を有するオルガノポリシロキサンである。
ポリシロキサン(B)の数平均分子量は、特に制限されないが、ガラス基板16の剥離がより容易である点から、500〜9000が好ましく、1000〜8000がより好ましく、1500〜6000がさらに好ましい。
【0038】
ポリシロキサン(B)は、直鎖状、分岐鎖状でもよく、ガラス基板16の剥離性がより優れる点で、直鎖状(例えば、線状)が好ましい。
ポリシロキサン(B)に含まれるハイドロシリル基(ケイ素原子に結合した水素原子)の数は、特に制限されないが、ガラス基板16の剥離性がより優れる点から、1分子あたり少なくとも2個有することが好ましく、2〜120個有することがより好ましく、2〜100個有することがさらに好ましい。
また、ポリシロキサン(B)に含まれるハイドロシリル基以外の基としては、アルキル基(特に、炭素数4以下のアルキル基)が挙げられる。
【0039】
ポリシロキサン(B)中におけるハイドロシリル基の位置は、特に制限されないが、ポリシロキサン(B)の末端および/または側鎖が挙げられる。
ポリシロキサン(B)が直鎖状の場合、ハイドロシリル基は、上述したM単位およびD単位のいずれかに存在してもよく、M単位とD単位の両方に存在していてもよい。
【0040】
ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)との混合比率は、ポリシロキサン(A)中のアルケニル基と、ポリシロキサン(B)中のハイドロシリル基との混合モル比(ハイドロシリル基のモル数/アルケニル基のモル数)が、0.7/1〜1.3/1であり、ガラス基板16の剥離性がより優れる点で、0.8/1〜1.2/1が好ましい。
混合モル比が1.3/1超の場合、加熱処理後のガラス基板16の剥離性に劣る。なお、混合モル比が1.3/1を超える場合に、加熱処理後の剥離力が上昇する原因は明らかではないが、加熱処理により、硬化物中の未反応のハイドロシリル基とガラス表面のシラノール基とのなんらかの反応が関与しているものと考えている。また、混合モル比が0.7/1未満の場合、硬化物の架橋密度が低下するため、耐薬品性等に問題が生じるおそれがある。また、硬化物の架橋密度の低下に伴い、耐熱性の低下懸念がある。
【0041】
シリコーン樹脂層14中に含まれるシリコーン樹脂は、上記ポリシロキサン(A)と上記ポリシロキサン(B)とを反応(例えば、付加反応)させて得られる硬化物である。
反応は、必要に応じて、触媒(例えば、ヒドロシリル化触媒)の存在下にて実施してもよい。
この触媒としては白金族金属触媒を用いることが好ましい。白金族金属触媒としては、白金系、パラジウム系、ロジウム系などの触媒が挙げられ、特に白金系触媒として用いることが経済性、反応性の点から好ましい。白金系触媒としては、公知のものを用いることができる。具体的には、白金微粉末、白金黒、塩化第一白金酸、塩化第二白金酸などの塩化白金酸、四塩化白金、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、あるいは白金のオレフィン錯体、アルケニルシロキサン錯体、カルボニル錯体などが挙げられる。
触媒は、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)との合計質量に対して、1〜10000質量ppmが好ましく、10〜1000質量ppmがより好ましい。
【0042】
シリコーン樹脂層14中にはシリコーンオイルが含まれていてもよい。ここで用いられるシリコーンオイルは、ポリシロキサン(A)またはポリシロキサン(B)とは反応しない、すなわち、非反応性のシリコーンオイルである。
シリコーンオイルの種類は、特に限定されないが、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル(ポリシロキサンの側鎖の一部がフェニル基であるもの)、などのストレートシリコーンオイル、ストレートシリコーンオイルの側鎖にポリエーテル基、アラルキル基、フロロアルキル基、長鎖アルキル基、高級脂肪酸エステル基、高級脂肪酸アミド基、ハロゲン基などを導入した非反応性の変性シリコーンオイル、両末端にポリエーテル基、メトキシ基、フェニル基などを導入した非反応性の変性シリコーンオイルが例示される。
なお、シリコーンオイルとは不揮発性成分であって、揮発性成分である溶媒とは異なる。
より具体的には、シリコーンオイルとは沸点が235℃以上のものを意図し、沸点が235℃未満のもの(例えば、シロキサン化合物)は溶媒に該当する。上記沸点は、1気圧下での測定値である。
【0043】
シリコーンオイルの粘度(動粘度。25℃にて測定)は、特に制限されないが、シリコーン樹脂層14中に含まれるシリコーン樹脂の表面にブリードアウトしやすくガラス基板の剥離性が優れる点で、0.5〜1000000(mm
2/s)が好ましく、5〜100000(mm
2/s)がより好ましく、50〜80000(mm
2/s)がさらに好ましく、100〜60000(mm
2/s)が特に好ましく、50〜10000(mm
2/s)がより特に好ましく、100〜10000(mm
2/s)が最も好ましい。
【0044】
シリコーン樹脂層14中に含まれるシリコーンオイルの含有量は、特に制限されないが、「ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)」の合計質量を100質量部とした場合、0.5〜15質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましく、2〜10質量部がさらに好ましい。0.5質量部以上であるとガラス基板の剥離性が優れる点で好ましく、15質量部以下であると加熱時の発泡がより抑制される点で好ましい。
【0045】
上記ポリシロキサン(A)に対するシリコーンオイルの質量比(ポリシロキサン(A)/シリコーンオイル)は、100/0.5〜100/16が好ましく、100/2〜100/16がより好ましく、100/4〜100/11がさらに好ましい。100/0.5以上であるとガラス基板の剥離性が優れる点で好ましく、100/16以下であると加熱時の発泡がより抑制される点で好ましい。
【0046】
シリコーン樹脂層14の形成方法は、特に制限されないが、通常、上記ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを含む組成物の層に対して、硬化処理を施す方法が挙げられる。シリコーン樹脂層の形成方法の詳細について、後段の[ガラス積層体およびその製造方法]で詳述する。
【0047】
[ガラス積層体およびその製造方法]
本発明のガラス積層体10は、上述したように、支持基材12とガラス基板16とそれらの間にシリコーン樹脂層14が存在する積層体である。
本発明のガラス積層体10の製造方法は、特に制限されないが、支持基材12とシリコーン樹脂層14との界面の剥離強度(x)が、シリコーン樹脂層14とガラス基板16との界面の剥離強度(y)よりも高い積層体を得るために、支持基材12表面上でポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを反応させてシリコーン樹脂層14を形成する方法が好ましい。すなわち、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを上記混合モル比で含む層を支持基材12の表面に形成し、支持基材12表面上でポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを反応させてシリコーン樹脂層14(例えば、架橋シリコーン樹脂の層)を形成し、次いで、シリコーン樹脂層14のシリコーン樹脂面にガラス基板16を積層して、ガラス積層体10を製造する方法である。
ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを支持基材12表面上で硬化させると、硬化反応時の支持基材12表面との相互作用により接着し、シリコーン樹脂と支持基材12表面との剥離強度は高くなると考えられる。したがって、ガラス基板16と支持基材12とが同じ材質からなるものであっても、シリコーン樹脂層14と両者間の剥離強度に差を設けることができる。
以下、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを含む層を支持基材12の表面に形成し、支持基材12表面上でポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを反応(例えば、架橋)させてシリコーン樹脂層14を形成する工程を樹脂層形成工程、シリコーン樹脂層14のシリコーン樹脂面にガラス基板16を積層してガラス積層体10とする工程を積層工程といい、各工程の手順について詳述する。
【0048】
(樹脂層形成工程)
樹脂層形成工程では、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを含む層を支持基材12の表面に形成し、支持基材12表面上でポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを架橋させてシリコーン樹脂層14を形成する。なお、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とは、上述した所定の混合モル比(ハイドロシリル基のモル数/アルケニル基のモル数)が0.7/1〜1.3/1となるように混合される。
支持基材12上にポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを含む層を形成するためには、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを上記混合モル比で含む硬化性樹脂組成物を使用し、この組成物を支持基材12上に塗布して組成物の層を形成することが好ましい。組成物中におけるポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)との濃度の調整などにより、組成物の層の厚さを制御することができる。
【0049】
なお、組成物の塗布性が良好となり、より高速で塗布が可能となる点、より薄膜のシリコーン樹脂層を形成できる点、粘度低下によるレベリング性の向上の点、および、塗布膜の平坦性の向上の点より、硬化性樹脂組成物には、溶媒が含まれることが好ましい。
溶媒の種類は、特に制限されず、例えば、酢酸ブチル、ヘプタン、2−ヘプタノン、1−メトキシ−2−プロパノールアセテート、トルエン、キシレン、THF、クロロホルム、ジアルキルポリシロキサン、飽和炭化水素などが挙げられる。
溶媒の動粘度は、特に制限されないが、シリコーン樹脂層14の平坦性がより優れる点で、23mm
2/s以下が好ましく、12mm
2/s以下がより好ましく、6mm
2/s以下がさらに好ましい。下限は、特に制限されないが、0.1mm
2/s以上の場合が多い。
溶媒は、形成されたシリコーン樹脂層の表面に残留することがないよう、100℃以上で乾燥させることが好ましく、溶媒の沸点以上で加熱することが好ましい。しかし、仮に樹脂層表面に残留した溶媒が、樹脂層と積層したのち剥離したガラス基板の表面に転写したとしても、ガラス基板の表面に常圧プラズマ処理などを施し、水接触角が小さくなるように表面の性状を変えることができる。
また、溶媒の沸点は、特に制限されないが、シリコーン樹脂層14の平坦性がより優れる点で、30〜280℃が好ましく、50〜230℃がより好ましい。なお、沸点は、大気圧下での値を意図する。
なかでも、ガラス積層体に高温加熱処理を施した後であっても、ガラス基板をより容易に剥離できる点で、溶媒の沸点は、200℃以下であることが好ましい。
また、溶媒の沸点が200℃超の場合であっても、このような溶媒を含む組成物中のポリシロキサン(A)およびポリシロキサン(B)の合計割合(合計含有量)が、組成物全質量に対して、70質量%以上100質量%未満であれば、ガラス積層体に高温加熱処理を施した後であっても、ガラス基板をより容易に剥離できる。なお、この態様においては、組成物中における溶媒の含有量が0質量%超30質量%以下であることが好ましい。また、この態様であれば、シリコーン樹脂層から溶媒を除去しやすく、生産性にも優れる。
【0050】
使用される溶媒の溶解度パラメータである、ヒルデブランド溶解度パラメータ(SP値)(以後、「ヒルデブランドのSP値」とも称する)は、特に制限されず、例えば、18MPa
1/2以下の溶媒が挙げられるが、得られるシリコーン樹脂層14の平坦性がより優れる点で、ヒルデブランドのSP値が14.0MPa
1/2以下の溶媒を使用することが好ましい。該溶媒は、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)との相溶性に優れ、組成物の層を形成する際に、該層の表面をあらすことなく、揮発することができ、結果としてシリコーン樹脂層14の平坦性がより優れる。
該溶媒のヒルデブランドのSP値は、14.0MPa
1/2以下が好ましく、13.5MPa
1/2以下がより好ましく、13.0MPa
1/2以下がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)との相溶性の点から、10.0MPa
1/2以上が好ましい。
上記ヒルデブランド溶解度パラメータ(SP値)は、ハンセンのSP値[δD, δP, δH]を用いて、次のように表すことができる。
ヒルデブランドのSP値=「(δD
2+δP
2+δH
2)の平方根」
ハンセン(Hansen)溶解度パラメータは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメータを、分散項δD,極性項δP,水素結合項δHの3成分に分割し、3次元空間に表したものである。分散項δDは、分散力のよる効果、極性項δPは、双極子間力による効果、水素結合項δHは水素結合力の効果を示す。なお、ハンセン溶解度パラメータの定義と計算は、Charles M.Hansen著、Hansen Solubility Parameters: A Users Handbook (CRCプレス,2007年)に記載されている。また、コンピュータソフトウエア Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)を用いることにより、簡便にハンセン溶解度パラメータを推算することができる。なお、本発明では、ハンセンのSP値[δD, δP, δH]の実際の計算に当たっては、ハンセンらによって作成されたソフトウエア、HSPiP ver.4.1を用いる。
なお、具体例としては、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンのハンセンのSP値[δD,δP,δH=12.8, 1.3, 1]から、ヒルデブランド溶解度パラメータ(SP値)が12.9となる。
【0051】
上記ヒルデブランドのSP値を有する溶媒としては、ポリシロキサン(A)およびポリシロキサン(B)に対する相溶性がより優れ、シリコーン樹脂層14の平坦性がより優れる点から、ケイ素原子を含有する溶媒が好ましく、ジアルキルポリシロキサン(好ましくは、ジメチルポリシロキサン(ポリジメチルポリシロキサン))が好ましい。
ジアルキルポリシロキサンとしては、直鎖状、分岐鎖状、および、環状のいずれでもよく、直鎖状または環状が好ましく、環状(例えば、環状ジアルキルポリシロキサン)がより好ましい。また、ジアルキルポリシロキサンは、上述した粘度または沸点の範囲であることが好ましい。
ジアルキルポリシロキサンの具体例としては、例えば、以下式(1)で表される環状ジメチルポリシロキサンや、式(2)で表される直鎖状ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0053】
上記式(1)中、nは3〜9の整数を表す。
上記式(2)中、mは3〜9の整数を表す。
このような式で表わされる化合物としては、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン(ヒルデブランドのSP値:12.9)、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン(ヒルデブランドのSP値:11.5)、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン(ヒルデブランドのSP値:12.9)などが挙げられる。
【0054】
硬化性樹脂組成物に溶媒が含まれる場合は、塗布性の点から、ポリシロキサン(A)およびポリシロキサン(B)の合計割合は、組成物全質量に対して、10〜95質量%が好ましく、20〜90質量%がより好ましく、30〜70質量%がさらに好ましく、30〜50質量%がより好ましい。
【0055】
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、ポリシロキサン(A)、ポリシロキサン(B)および溶媒以外の成分が含まれていてもよい。
例えば、上述した触媒やシリコーンオイルが含まれていてもよい。
また、硬化性樹脂組成物には、さらに、触媒とともに触媒活性を調整する目的で触媒活性を抑制する作用のある活性抑制剤(反応抑制剤、遅延剤等とも呼ばれる化合物)を併用することが好ましい。活性抑制剤としては、例えば、各種有機窒素化合物、有機リン化合物、アセチレン系化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物などが挙げられる。さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、各種シリカ、炭酸カルシウム、酸化鉄などの無機フィラーなどを含有していてもよい。
【0056】
支持基材12表面上にポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを含む硬化性樹脂組成物を塗布する方法は、特に限定されず、公知の方法を使用することができる。例えば、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、グラビアコート法などが挙げられる。
その後、必要に応じて、溶媒を除去するための乾燥処理が実施されてもよい。乾燥処理の方法は、特に制限されないが、例えば、減圧条件下で溶媒を除去する方法や、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)との硬化が進行しないような温度で加熱する方法などが挙げられる。
【0057】
次いで、支持基材12上の硬化性樹脂組成物の層に硬化処理を施し、層中のポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを反応(具体的には架橋)させて、シリコーン樹脂層14を形成する。より具体的には、
図2(A)に示すように、該工程では支持基材12の少なくとも片面の表面上にシリコーン樹脂層14が形成される。
硬化(例えば、架橋)の方法としては、通常、熱硬化が採用される。
ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを反応させる際の温度条件は、シリコーン樹脂層14の耐熱性を向上し、ガラス基板16と積層後の剥離強度(y)を上記のように制御しうる範囲内で特に制限されないが、80〜250℃が好ましく、120〜230℃がより好ましい。また、加熱時間は、通常、10〜120分が好ましく、30〜60分がより好ましい。
【0058】
なお、組成物の層は、プレキュア(予備硬化)を行った後、後硬化(本硬化)を行って硬化させてもよい。プレキュアを行うことにより、耐熱性により優れたシリコーン樹脂層14を得ることができる。
【0059】
(積層工程)
積層工程は、上記の樹脂層形成工程で得られたシリコーン樹脂層14のシリコーン樹脂面上にガラス基板16を積層し、支持基材12の層とシリコーン樹脂層14とガラス基板16の層とをこの順で備えるガラス積層体10を得る工程である。より具体的には、
図2(B)に示すように、シリコーン樹脂層14の支持基材12側とは反対側の表面14aと、第1主面16aおよび第2主面16bを有するガラス基板16の第1主面16aとを積層面として、シリコーン樹脂層14とガラス基板16とを積層し、ガラス積層体10を得る工程である。
【0060】
ガラス基板16をシリコーン樹脂層14上に積層する方法は、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
例えば、常圧環境下でシリコーン樹脂層14の表面上にガラス基板16を重ねる方法が挙げられる。なお、必要に応じて、シリコーン樹脂層14の表面上にガラス基板16を重ねた後、ロールやプレスを用いてシリコーン樹脂層14にガラス基板16を圧着させてもよい。ロールまたはプレスによる圧着により、シリコーン樹脂層14とガラス基板16の層との間に混入している気泡が比較的容易に除去されるので好ましい。
【0061】
真空ラミネート法や真空プレス法によりシリコーン樹脂層14とガラス基板16とを圧着すると、気泡の混入の抑制や良好な密着の確保が行われるのでより好ましい。真空下で圧着することにより、微小な気泡が残存した場合でも、加熱により気泡が成長することがなく、ガラス基板16のゆがみ欠陥につながりにくいという利点もある。
【0062】
ガラス基板16を積層する際には、シリコーン樹脂層14に接触するガラス基板16の表面を十分に洗浄し、クリーン度の高い環境で積層することが好ましい。クリーン度が高いほど、ガラス基板16の平坦性は良好となるので好ましい。
【0063】
なお、ガラス基板16を積層した後、必要に応じて、プレアニール処理(例えば、加熱処理)を行ってもよい。該プレアニール処理を行うことにより、積層されたガラス基板16のシリコーン樹脂層14に対する密着性が向上し、適切な剥離強度(y)とすることができ、後述する部材形成工程の際に電子デバイス用部材の位置ずれなどが生じにくくなり、電子デバイスの生産性が向上する。
プレアニール処理の条件は、使用されるシリコーン樹脂層14の種類に応じて適宜最適な条件が選択されるが、ガラス基板16とシリコーン樹脂層14の間の剥離強度(y)をより適切なものとする点から、200℃以上(好ましくは、200〜400℃)で5分間以上(好ましくは、5〜30分間)加熱処理を行うことが好ましい。
【0064】
なお、シリコーン樹脂層14の形成は、上記方法に限られるものではない。
例えば、シリコーン樹脂表面に対する密着性がガラス基板16よりも高い材質の支持基材12を用いる場合には、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを含む上記硬化性樹脂組成物を何らかの剥離性表面上で硬化してシリコーン樹脂のフィルムを製造し、このフィルムをガラス基板16と支持基材12との間に介在させ同時に積層することができる。
また、シリコーン樹脂による接着性がガラス基板16に対して充分低くかつその接着性が支持基材12に対して充分高い場合は、ガラス基板16と支持基材12の間でポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)とを含む上記硬化性樹脂組成物の層を硬化させてシリコーン樹脂層14を形成することができる。
さらに、支持基材12がガラス基板16と同様のガラス材料からなる場合であっても、支持基材12表面の接着性を高める処理を施してシリコーン樹脂層14に対する剥離強度を高めることもできる。例えば、シランカップリング剤のような化学的に固定力を向上させる化学的方法(プライマー処理)や、フレーム(火炎)処理のように表面活性基を増加させる物理的方法、サンドブラスト処理のように表面の粗度を増加させることにより引っかかりを増加させる機械的処理方法などが例示される。
【0065】
(ガラス積層体)
本発明のガラス積層体10は、種々の用途に使用することができ、例えば、後述する表示装置用パネル、太陽電池(PV)、薄膜2次電池、表面に回路が形成された半導体ウェハ等の電子部品を製造する用途などが挙げられる。なお、該用途では、ガラス積層体10が高温条件(例えば、350℃以上)で曝される(例えば、1時間以上)場合が多い。
ここで、表示装置用パネルとは、LCD、OLED、電子ペーパー、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネル、量子ドットLEDパネル、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シャッターパネル等が含まれる。
なお、ガラス積層体中のシリコーン樹脂層にシリコーンオイルが含まれる場合、シリコーン樹脂層とガラス基板の層の界面の剥離強度がより低下し、好ましい。具体的には、シリコーン樹脂層とガラス基板の層の界面の剥離強度は、0.10N/25mm以上1.40N/25mm以下であることが好ましい。
【0066】
[電子デバイスおよびその製造方法]
本発明においては、上述した積層体を用いて、ガラス基板と電子デバイス用部材とを含む電子デバイス(以後、適宜「部材付きガラス基板」とも称する)が製造される。
電子デバイスの製造方法は、特に限定されないが、電子デバイスの生産性に優れる点から、上記ガラス積層体中のガラス基板上に電子デバイス用部材を形成して電子デバイス用部材付き積層体を製造し、得られた電子デバイス用部材付き積層体からシリコーン樹脂層のガラス基板側界面を剥離面として電子デバイス(部材付きガラス基板)とシリコーン樹脂層付き支持基材とに分離する方法が好ましい。
以下、上記ガラス積層体中のガラス基板上に電子デバイス用部材を形成して電子デバイス用部材付き積層体を製造する工程を部材形成工程、電子デバイス用部材付き積層体からシリコーン樹脂層のガラス基板側界面を剥離面として部材付きガラス基板とシリコーン樹脂層付き支持基材とに分離する工程を分離工程という。
以下に、各工程で使用される材料および手順について詳述する。
【0067】
(部材形成工程)
部材形成工程は、上記積層工程において得られたガラス積層体10中のガラス基板16上に電子デバイス用部材を形成する工程である。より具体的には、
図2(C)に示すように、ガラス基板16の第2主面16b(露出表面)上に電子デバイス用部材20を形成し、電子デバイス用部材付き積層体22を得る。
まず、本工程で使用される電子デバイス用部材(機能性素子とも称される)20について詳述し、その後工程の手順について詳述する。
【0068】
(電子デバイス用部材)
電子デバイス用部材20は、ガラス積層体10中のガラス基板16上に形成され電子デバイスの少なくとも一部を構成する部材である。より具体的には、電子デバイス用部材20としては、表示装置用パネル、太陽電池、薄膜2次電池、または、表面に回路が形成された半導体ウェハ等の電子部品などに用いられる部材(例えば、表示装置用部材、太陽電池用部材、薄膜2次電池用部材、電子部品用回路)が挙げられる。
【0069】
例えば、太陽電池用部材としては、シリコン型では、正極の酸化スズなど透明電極、p層/i層/n層で表されるシリコン層、および負極の金属等が挙げられ、その他に、化合物型、色素増感型、量子ドット型などに対応する各種部材等を挙げることができる。
また、薄膜2次電池用部材としては、リチウムイオン型では、正極および負極の金属または金属酸化物等の透明電極、電解質層のリチウム化合物、集電層の金属、封止層としての樹脂等が挙げられ、その他に、ニッケル水素型、ポリマー型、セラミックス電解質型などに対応する各種部材等を挙げることができる。
また、電子部品用回路としては、CCDやCMOSでは、導電部の金属、絶縁部の酸化ケイ素や窒化珪素等が挙げられ、その他に圧力センサ・加速度センサなど各種センサやリジッドプリント基板、フレキシブルプリント基板、リジッドフレキシブルプリント基板などに対応する各種部材等を挙げることができる。
【0070】
(工程の手順)
上述した電子デバイス用部材付き積層体22の製造方法は、特に限定されず、電子デバイス用部材の構成部材の種類に応じて従来公知の方法にて、ガラス積層体10のガラス基板16の第2主面16b上に、電子デバイス用部材20を形成する。
なお、電子デバイス用部材20は、ガラス基板16の第2主面16bに最終的に形成される部材の全部(以下、「全部材」という)ではなく、全部材の一部(以下、「部分部材」という)であってもよい。シリコーン樹脂層14から剥離された部分部材付きガラス基板を、その後の工程で全部材付きガラス基板(後述する電子デバイスに相当)とすることもできる。
また、シリコーン樹脂層14から剥離された、全部材付きガラス基板には、その剥離面(第1主面16a)に他の電子デバイス用部材が形成されてもよい。また、全部材付き積層体を組み立て、その後、全部材付き積層体から支持基材12を剥離して、電子デバイスを製造することもできる。さらに、全部材付き積層体を2枚用いて組み立て、その後、全部材付き積層体から2枚の支持基材12を剥離して、2枚のガラス基板を有する部材付きガラス基板を製造することもできる。
【0071】
例えば、OLEDを製造する場合を例にとると、ガラス積層体10のガラス基板16のシリコーン樹脂層14側とは反対側の表面上(ガラス基板16の第2主面16bに該当)に有機EL構造体を形成するために、透明電極を形成する工程、さらに透明電極を形成した面上にホール注入層・ホール輸送層・発光層・電子輸送層等を蒸着する工程、裏面電極を形成する工程、封止板を用いて封止する工程、等の各種の層形成や処理の工程が行われる。これらの層形成や処理として、具体的には、例えば、成膜処理、蒸着処理、封止板の接着処理等が挙げられる。
【0072】
また、例えば、TFT−LCDを製造する場合は、ガラス積層体10のガラス基板16の第2主面16b上に、レジスト液を用いて、CVD法およびスパッター法など、一般的な成膜法により形成される金属膜および金属酸化膜等にパターン形成して薄膜トランジスタ(TFT)を形成するTFT形成工程と、別のガラス積層体10のガラス基板16の第2主面16b上に、レジスト液をパターン形成に用いてカラーフィルタ(CF)を形成するCF形成工程と、TFT形成工程で得られたTFT付き積層体とCF形成工程で得られたCF付き積層体とを積層する貼合わせ工程等の各種工程を有する。
【0073】
TFT形成工程やCF形成工程では、周知のフォトリソグラフィ技術やエッチング技術等を用いて、ガラス基板16の第2主面16bにTFTやCFを形成する。この際、パターン形成用のコーティング液としてレジスト液が用いられる。
なお、TFTやCFを形成する前に、必要に応じて、ガラス基板16の第2主面16bを洗浄してもよい。洗浄方法としては、周知のドライ洗浄やウェット洗浄を用いることができる。
【0074】
貼合わせ工程では、TFT付き積層体の薄膜トランジスタ形成面と、CF付き積層体のカラーフィルタ形成面とを対向させて、シール剤(例えば、セル形成用紫外線硬化型シール剤)を用いて貼り合わせる。その後、TFT付き積層体とCF付き積層体とで形成されたセル内に、液晶材を注入する。液晶材を注入する方法としては、例えば、減圧注入法、滴下注入法がある。
【0075】
(分離工程)
分離工程は、
図2(D)に示すように、上記部材形成工程で得られた電子デバイス用部材付き積層体22から、シリコーン樹脂層14とガラス基板16との界面を剥離面として、電子デバイス用部材20が積層されたガラス基板16(部材付きガラス基板)と、支持基材12とに分離して、電子デバイス用部材20およびガラス基板16を含む部材付きガラス基板(電子デバイス)24を得る工程である。
剥離時のガラス基板16上の電子デバイス用部材20が必要な全構成部材の形成の一部である場合には、分離後、残りの構成部材をガラス基板16上に形成することもできる。
【0076】
ガラス基板16と支持基材12とを剥離する方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、ガラス基板16とシリコーン樹脂層14との界面に鋭利な刃物状のものを差し込み、剥離のきっかけを与えた上で、水と圧縮空気との混合流体を吹き付けたりして剥離することができる。好ましくは、電子デバイス用部材付き積層体22の支持基材12が上側、電子デバイス用部材20側が下側となるように定盤上に設置し、電子デバイス用部材20側を定盤上に真空吸着し(両面に支持基材が積層されている場合は順次行う)、この状態でまず刃物をガラス基板16−シリコーン樹脂層14界面に刃物を侵入させる。そして、その後に支持基材12側を複数の真空吸着パッドで吸着し、刃物を差し込んだ箇所付近から順に真空吸着パッドを上昇させる。そうするとシリコーン樹脂層14とガラス基板16との界面やシリコーン樹脂層14の凝集破壊面へ空気層が形成され、その空気層が界面や凝集破壊面の全面に広がり、支持基材12を容易に剥離することができる。
また、支持基材12は、新たなガラス基板と積層して、本発明のガラス積層体10を製造することができる。
【0077】
なお、電子デバイス用部材付き積層体22から部材付きガラス基板24を分離する際においては、イオナイザによる吹き付けや湿度を制御することにより、シリコーン樹脂層14の欠片が部材付きガラス基板24に静電吸着することをより抑制することができる。
【0078】
上述した部材付きガラス基板24の製造方法は、携帯電話やPDAのようなモバイル端末に使用される小型の表示装置の製造に好適である。表示装置は、主としてLCDまたはOLEDであり、LCDとしては、TN型、STN型、FE型、TFT型、MIM型、IPS型、VA型等を含む。基本的にパッシブ駆動型、アクティブ駆動型のいずれの表示装置の場合でも適用することができる。
【0079】
上記方法で製造された部材付きガラス基板24としては、ガラス基板と表示装置用部材を有する表示装置用パネル、ガラス基板と太陽電池用部材を有する太陽電池、ガラス基板と薄膜2次電池用部材を有する薄膜2次電池、ガラス基板と電子デバイス用部材を有する電子部品などが挙げられる。表示装置用パネルとしては、液晶パネル、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネルなどを含む。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例等により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって限定されるものではない。
【0081】
以下の実施例1〜25、比較例1〜2では、支持基材としては、無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス板(縦240mm、横240mm、板厚0.5mm、線膨張係数38×10
-7/℃、旭硝子社製商品名「AN100」)を使用した。
【0082】
<実施例1>
初めに、板厚0.5mmの支持基材を純水洗浄した後、さらにUV洗浄して清浄化した。
次に、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(数平均分子量:2000、アルケニル基の数:2個以上)(100質量部)と、ハイドロジェンポリシロキサン(数平均分子量:2000、ハイドロシリル基の数:2個以上)(15質量部)と配合した。なお、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン中のアルケニル基と、ハイドロジェンポリシロキサン中のハイドロシリル基との混合モル比(ハイドロシリル基のモル数/アルケニル基のモル数)は、0.9/1であった。さらに、触媒(白金触媒)を、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの合計質量に対し、300ppm添加した。この液を、硬化性樹脂組成物Xとする。この硬化性樹脂組成物Xを、ダイコーターを用いて支持基材の第1主面上に塗布して、未硬化のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンを含む層を支持基材上に設けた。
【0083】
次に、230℃で、10分間、大気中で加熱硬化して、支持基材の第1主面に厚さ10μmのシリコーン樹脂層を形成した。なお、シリコーン樹脂層の平坦性は、良好であった。
その後、ガラス基板と、支持基材のシリコーン樹脂層面とを、室温下で真空プレスにより貼り合わせ、ガラス積層体Aを得た。
この際、ガラス基板として、無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス板(縦200mm、横200mm、板厚0.2mm、線膨張係数38×10
-7/℃、旭硝子社製商品名「AN100」)を使用した。
得られたガラス積層体Aにおいては、支持基材とガラス基板は、シリコーン樹脂層と気泡を発生することなく密着しており、歪み状欠点もなかった。また、ガラス積層体Aにおいて、シリコーン樹脂層と支持基材の層との界面の剥離強度が、ガラス基板の層とシリコーン樹脂層との界面の剥離強度よりも大きかった。
【0084】
次に、ガラス積層体Aを窒素雰囲気下にて350℃で60分間加熱処理を行い、室温まで冷却したところ、ガラス積層体Aの支持基材とガラス基板の分離やシリコーン樹脂層の発泡や白化など外観上の変化は、認められなかった。
そして、350℃、60分間の加熱処理後のガラス積層体Aに対して、以下の剥離試験を行い、ガラス基板の剥離強度(N/25mm)を測定した。その際の剥離強度は、1.49N/25mmであった。
(剥離強度の測定方法)
剥離強度の測定方法は、幅25mm・長さ70mmのガラス積層体Aを用意し、オートグラフAG−20/50kNXDplus(島津製作所)を用いて、ガラス基板の剥離を行った。
この際、ガラス基板とシリコーン樹脂層の界面に厚さ0.1mmのステンレス製刃物を挿入させて剥離の切欠部を形成した後、ガラス基板を完全に固定し、支持基材を引き上げることで強度の測定を行った。なお、剥離速度は、30mm/minあった。荷重を検知した地点を0とし、その位置から2.0mm引き上げた位置での剥離強度を測定値とした。
【0085】
<実施例2>
アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(数平均分子量:2000)の代わりに、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(数平均分子量:5000、アルケニル基の数:2個以上)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体Bを得た。なお、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン中のアルケニル基と、ハイドロジェンポリシロキサン中のハイドロシリル基との混合モル比が実施例1と同じようなるように、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの使用量を調整した。
得られたシリコーン樹脂層の平坦性は、良好であった。
また、得られたガラス積層体Bにおいては、支持基材とガラス基板は、シリコーン樹脂層と気泡を発生することなく密着しており、歪み状欠点もなかった。また、ガラス積層体Bにおいて、シリコーン樹脂層と支持基材の層との界面の剥離強度が、ガラス基板の層とシリコーン樹脂層との界面の剥離強度よりも大きかった。
次に、ガラス積層体Bを実施例1と同様の加熱処理をおこなったところ、ガラス積層体Bの支持基材とガラス基板の分離やシリコーン樹脂層の発泡や白化など外観上の変化は、認められなかった。
また、加熱処理後の剥離強度は、1.51N/25mmであった。
【0086】
<実施例3>
アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(数平均分子量:2000)の代わりに、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(数平均分子量:8000、アルケニル基の数:2個以上)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体Cを得た。なお、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン中のアルケニル基と、ハイドロジェンポリシロキサン中のハイドロシリル基との混合モル比が実施例1と同じようなるように、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの使用量を調整した。
得られたシリコーン樹脂層の平坦性は、良好であった。
また、得られたガラス積層体Cにおいては、支持基材とガラス基板は、シリコーン樹脂層と気泡を発生することなく密着しており、歪み状欠点もなかった。また、ガラス積層体Cにおいて、シリコーン樹脂層と支持基材の層との界面の剥離強度が、ガラス基板の層とシリコーン樹脂層との界面の剥離強度よりも大きかった。
次に、ガラス積層体Cを実施例1と同様の加熱処理をおこなったところ、ガラス積層体Cの支持基材とガラス基板の分離やシリコーン樹脂層の発泡や白化など外観上の変化は、認められなかった。
また、加熱処理後の剥離強度は、1.56N/25mmであった。
【0087】
<実施例4>
硬化性樹脂組成物Xに、さらに溶媒としてオクタメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業社製、KF−994。動粘度(25℃):2.3mm
2/s、沸点:175℃、SP値:12.9MPa
1/2)を加えた以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体Dを得た。
なお、オクタメチルシクロテトラシロキサンの使用量は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの合計量が組成物全量に対して、80質量%になる量とした。
なお、この際のダイコーターの塗布速度は、実施例1に比べて、2倍の速度で塗布することができた。また、その際、硬化性樹脂組成物Xの吐出量に関しては、10μmのシリコーン樹脂層が形成されるように、調整した。
【0088】
得られたシリコーン樹脂層の平坦性は、良好であった。
また、得られたガラス積層体Dにおいては、支持基材とガラス基板は、シリコーン樹脂層と気泡を発生することなく密着しており、歪み状欠点もなかった。また、ガラス積層体Dにおいて、シリコーン樹脂層と支持基材の層との界面の剥離強度が、ガラス基板の層とシリコーン樹脂層との界面の剥離強度よりも大きかった。
次に、ガラス積層体Dを実施例1と同様の加熱処理をおこなったところ、ガラス積層体Dの支持基材とガラス基板の分離やシリコーン樹脂層の発泡や白化など外観上の変化は、認められなかった。
また、加熱処理後の剥離強度は、1.46N/25mmであった。
【0089】
<実施例5>
オクタメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業社製、KF−994)の代わりに、溶媒としてIPソルベント2028(出光興産社製。動粘度(40℃):2.53mm
2/s、沸点:216〜262℃、SP値:14.5〜16.3MPa
1/2)を使用した以外は、実施例4と同様の方法で、ガラス積層体Eを得た。
なお、この際のダイコーターの塗布速度は、実施例1に比べて、2倍の速度で塗布することができた。また、その際、硬化性樹脂組成物Xの吐出量に関しては、10μmのシリコーン樹脂層が形成されるように、調整した。
ガラス積層体Eにおいては、シリコーン樹脂層と支持基材の層との界面の剥離強度が、ガラス基板の層とシリコーン樹脂層との界面の剥離強度よりも大きかった。
次に、ガラス積層体Eを実施例1と同様の加熱処理をおこなったところ、ガラス積層体Eの支持基材とガラス基板の分離やシリコーン樹脂層の発泡や白化など外観上の変化は、認められなかった。
また、加熱処理後の剥離強度は、1.49N/25mmであった。
なお、得られたガラス積層体Eにおいては、支持基材とガラス基板は、シリコーン樹脂層と気泡を発生することなく密着しており、歪み状欠点もなかったが、シリコーン樹脂層の平坦性がやや劣った。
【0090】
<実施例6>
ガラス基板として、無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス板(板厚0.2mm)の代わりに、無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス板(板厚0.1mm)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体Fを得た。
得られたガラス積層体Fにおいては、支持基材とガラス基板は、シリコーン樹脂層と気泡を発生することなく密着しており、歪み状欠点もなかった。また、ガラス積層体Fにおいて、シリコーン樹脂層と支持基材の層との界面の剥離強度が、ガラス基板の層とシリコーン樹脂層との界面の剥離強度よりも大きかった。
次に、ガラス積層体Fを実施例1と同様の加熱処理をおこなったところ、ガラス積層体Fの支持基材とガラス基板の分離やシリコーン樹脂層の発泡や白化など外観上の変化は、認められなかった。
また、加熱処理後の剥離強度は、1.48N/25mmであった。
【0091】
<比較例1>
アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(数平均分子量:2000)の代わりに、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(数平均分子量:10000、アルケニル基の数:2個以上)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体Gを得た。なお、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン中のアルケニル基と、ハイドロジェンポリシロキサン中のハイドロシリル基との混合モル比が実施例1と同じようなるように、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの使用量を調整した。
得られたシリコーン樹脂層の平坦性は、良好であった。
また、得られたガラス積層体Gにおいては、支持基材とガラス基板は、シリコーン樹脂層と気泡を発生することなく密着しており、歪み状欠点もなかった。また、ガラス積層体Gにおいて、シリコーン樹脂層と支持基材の層との界面の剥離強度が、ガラス基板の層とシリコーン樹脂層との界面の剥離強度よりも大きかった。
次に、ガラス積層体Gを実施例1と同様の加熱処理をおこなったところ、ガラス積層体Gの支持基材とガラス基板の分離やシリコーン樹脂層の発泡や白化など外観上の変化は、認められなかった。
また、加熱処理後の剥離強度は、1.75N/25mmであった。
【0092】
<比較例2>
アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(数平均分子量:10000)の代わりに、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(数平均分子量:15000、アルケニル基の数:2個以上)を用いた以外は、比較例1と同様の方法で、ガラス積層体Hを得た。なお、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン中のアルケニル基と、ハイドロジェンポリシロキサン中のハイドロシリル基との混合モル比が実施例1と同じようなるように、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの使用量を調整した。
得られたシリコーン樹脂層の平坦性は、良好であった。
また、得られたガラス積層体Hにおいては、支持基材とガラス基板は、シリコーン樹脂層と気泡を発生することなく密着しており、歪み状欠点もなかった。また、ガラス積層体Hにおいて、シリコーン樹脂層と支持基材の層との界面の剥離強度が、ガラス基板の層とシリコーン樹脂層との界面の剥離強度よりも大きかった。
次に、ガラス積層体Hを実施例1と同様の加熱処理をおこなったところ、ガラス積層体Hの支持基材とガラス基板の分離やシリコーン樹脂層の発泡や白化など外観上の変化は、認められなかった。
また、加熱処理後の剥離強度は、1.78N/25mmであった。
【0093】
<作業性の評価>
上記した実施例1〜6および比較例1、2、ならびに後述する実施例7〜25の各ガラス積層体の作業性の評価は、以下のように行なった。
実施例および比較例で得られたガラス積層体(幅25mm・長さ70mm)中のシリコーン樹脂層中のガラス基板との界面の一端側に、ステンレス製刃物を5mm挿入し、長さ方向に沿ってステンレス製刃物を50mm移動させた。ステンレス製刃物がガラス基板の割れを起こさずにスムーズに移動した場合を「○」、ステンレス製刃物の移動が困難で、ガラス基板の割れが引き起こされる場合を「×」とした。その結果については、表1〜3の表中の作業性の欄に表記した。
上記ステンレス製刃物の移動しやすさは、シリコーン樹脂層とガラス基板との剥離強度と関連し、剥離強度が大きい場合は、ステンレス製刃物が移動しにくくなる。
<剥離強度の評価>
上記した実施例1〜6および比較例1、2、ならびに後述する実施例7〜25の各ガラス積層体の剥離強度の評価は、前述した(剥離強度の測定方法)の項目で示した方法によって測定した数値を用いた。
【0094】
上記実施例1〜6および比較例1、2の仕様および評価結果を、表1として、以下にまとめて示す。
なお、表1および2において、SP値(ヒルデブランドのSP値)の単位は、MPa
1/2である。
表1および2において、「ポリシロキサン(A)」とは、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを意図する。
表1中、「平坦性」に関して、平坦性が良好であったものを「○」、実用上問題ないが良好でなかったものを「△」、平坦性が悪く実用上問題がある場合を「×」とした。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示すように、500〜9000の範囲内の数平均分子量のポリシロキサン(A)を使用した場合は、剥離強度が低く、ガラス基板を剥離しやすかった。このガラス基板の剥離性により、生産性も優れていた。
また、実施例4と5との比較より、硬化性樹脂組成物が溶媒を含む場合は、ヒルデブランドのSP値:14.0MPa
1/2以下の溶媒を使用することにより、シリコーン樹脂層の平坦性がより優れることが確認された。
一方、数平均分子量が500〜9000の範囲内でないポリシロキサン(A)を使用した場合は、剥離強度が増大し、結果として作業性にも劣っていた。
【0097】
<実施例7>
硬化性樹脂組成物Xに、さらに溶媒としてオクタメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業社製、KF−994。動粘度(25℃):2.3mm
2/s、沸点:175℃、SP値:12.9MPa
1/2)を加えた以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体Iを得た。
なお、オクタメチルシクロテトラシロキサンの使用量は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの合計量が組成物全量に対して、40質量%になる量とした。
【0098】
<実施例8>
硬化性樹脂組成物Xに、さらに溶媒としてデカメチルシクロペンタシロキサン(信越化学工業社製、KF−995。動粘度(25℃):4mm
2/s、沸点:210℃、SP値:11.5MPa
1/2)を加えた以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体Jを得た。
なお、デカメチルシクロペンタシロキサンの使用量は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの合計量が組成物全量に対して、40質量%になる量とした。
【0099】
<実施例9>
硬化性樹脂組成物Xに、さらに溶媒としてデカメチルシクロペンタシロキサン(信越化学工業社製、KF−995。動粘度(25℃):4mm
2/s、沸点:210℃、SP値:11.5MPa
1/2)を加えた以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体Kを得た。
なお、デカメチルシクロペンタシロキサンの使用量は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの合計量が組成物全量に対して、60質量%になる量とした。
【0100】
<実施例10>
硬化性樹脂組成物Xに、さらに溶媒としてデカメチルシクロペンタシロキサン(信越化学工業社製、KF−995。動粘度(25℃):4mm
2/s、沸点:210℃、SP値:11.5MPa
1/2)を加えた以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体Lを得た。
なお、デカメチルシクロペンタシロキサンの使用量は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの合計量が組成物全量に対して、70質量%になる量とした。
【0101】
<実施例11>
硬化性樹脂組成物Xに、さらに溶媒としてデカメチルシクロペンタシロキサン(信越化学工業社製、KF−995。動粘度(25℃):4mm
2/s、沸点:210℃、SP値:11.5MPa
1/2)を加えた以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体Mを得た。
なお、デカメチルシクロペンタシロキサンの使用量は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの合計量が組成物全量に対して、80質量%になる量とした。
<実施例12>
硬化性樹脂組成物Xに、さらに溶媒としてオクタメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業社製、KF−994。動粘度(25℃):2.3mm
2/s、沸点:175℃、SP値:12.9MPa
1/2)を加えた以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体Nを得た。
なお、オクタメチルシクロテトラシロキサンの使用量は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの合計量が組成物全量に対して、50質量%になる量とした。
【0102】
上記実施例1、4、5、7〜12の仕様、ならびに剥離強度、作業性および再積層性の評価結果を、表2として、以下にまとめて示す。
なお、表2及び表3に示した再積層性の評価は、以下の方法により行なった。
<再積層性の評価方法>
ガラス積層体の高温処理後に、ガラス積層体からガラス基板を剥離して樹脂層付き支持基材を得て、再度、同じ樹脂層付き支持基材を新規のガラス基板と積層し使用する際に、吸着が進行しやすく、積層しやすいかを下記の方法により評価した(この評価を「再積層性の評価」とした)。
ガラス積層体Aを窒素雰囲気下にて350℃で60分間加熱処理を行い、室温まで冷却した。 そして、350℃、60分間の加熱処理後のガラス積層体Aからガラス基板を剥離し、樹脂層付き支持基材を得た。
この剥離により得られた樹脂層付き支持基材を、新規に準備した清浄なガラス基板に対し常圧下でロール積層させた。
なお、ガラス積層体Aの代わりにガラス積層体I、Nを用いて上記と同様の手順でロール積層を行った。なお、表3における再積層性は、ガラス積層体Aの代わりにガラス積層体Oからガラス積層体AAを用いて上記と同様の手順でロール積層を行ったものである。
評価基準として、ガラス積層体A(実施例1)を基準とし、実施例1よりも、積層の際に気泡が残りにくい場合を「◎」、実施例1と同等の場合を「○」、実施例1よりも気泡が残りやすい場合を「×」とし、その結果を表2および3に表記した。
【0103】
【表2】
【0104】
表2に示すように、沸点が200℃以下の溶媒を使用した実施例4、7および12においては、ポリシロキサン(A)およびポリシロキサン(B)の合計含有量に関わらず、剥離強度が低く、ガラス基板を剥離しやすかった。
また、沸点が200℃超の溶媒を使用した実施例5、8〜11の比較から分かるように、ポリシロキサン(A)およびポリシロキサン(B)の合計含有量が70質量%以上の場合、剥離強度がより低く、ガラス基板をより剥離しやすかった。
【0105】
<実施例13>
硬化性樹脂組成物Xに、さらにシリコーンオイルとしてジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製、KF−96−200cs。動粘度(25℃):200mm
2/s)を「ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)」の合計質量を100質量部としたときに1質量部加えた以外は、実施例1と同様の手順に従って、ガラス積層体Oを得た。
<実施例14>
ジメチルポリシロキサンの使用量を1質量部から4質量部に変更した以外は、実施例13と同様の手順に従って、ガラス積層体Pを得た。
<実施例15>
上記ジメチルポリシロキサンと共に、溶媒としてオクタメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業社製、KF−994。動粘度(25℃):2.3mm
2/s、沸点:175℃、SP値:12.9MPa
1/2)を硬化性樹脂組成物Xにさらに加えた以外は、実施例13と同様の手順に従って、ガラス積層体Qを得た。
なお、オクタメチルシクロテトラシロキサンの使用量は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの合計量が組成物全量に対して、40質量%になる量とした。
【0106】
<実施例16>
ジメチルポリシロキサンの使用量を1質量部から2質量部に変更した以外は、実施例15と同様の手順に従って、ガラス積層体Rを得た。
【0107】
<実施例17>
シリコーンオイルとしてジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製、KF−96−200cs。動粘度(25℃):200mm
2/s)をジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製、KF−96−50cs。動粘度(25℃):50mm
2/s)に変更し、溶媒としてオクタメチルシクロテトラシロキサンの使用量を変更した以外は、実施例16と同様の手順に従って、ガラス積層体Sを得た。
なお、オクタメチルシクロテトラシロキサンの使用量は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの合計量が組成物全量に対して、50質量%になる量とした。
【0108】
<実施例18>
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製、KF−96−50cs。動粘度(25℃):50mm
2/s)をジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製、KF−96−200cs。動粘度(25℃):200mm
2/s)に変更した以外は、実施例17と同様の手順に従って、ガラス積層体Tを得た。
【0109】
<実施例19>
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製、KF−96−50cs。動粘度(25℃):50mm
2/s)をジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製、KF−96−1000cs。動粘度(25℃):1000mm
2/s)に変更した以外は、実施例17と同様の手順に従って、ガラス積層体Uを得た。
【0110】
<実施例20>
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製、KF−96−50cs。動粘度(25℃):50mm
2/s)をジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製、KF−96H−10000cs。動粘度(25℃):10000mm
2/s)に変更した以外は、実施例17と同様の手順に従って、ガラス積層体Vを得た。
【0111】
<実施例21>
上記ジメチルポリシロキサンと共に、溶媒としてオクタメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業社製、KF−994。動粘度(25℃):2.3mm
2/s、沸点:175℃、SP値:12.9MPa
1/2)を硬化性樹脂組成物Xにさらに加えた以外は、実施例14と同様の手順に従って、ガラス積層体Wを得た。
なお、オクタメチルシクロテトラシロキサンの使用量は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの合計量が組成物全量に対して、50質量%になる量とした。
【0112】
<実施例22>
ジメチルポリシロキサンの使用量を4質量部から6質量部に変更した以外は、実施例21と同様の手順に従って、ガラス積層体Xを得た。
【0113】
<実施例23>
ジメチルポリシロキサンの使用量を4質量部から8質量部に変更した以外は、実施例21と同様の手順に従って、ガラス積層体Yを得た。
【0114】
<実施例24>
ジメチルポリシロキサンの使用量を4質量部から10質量部に変更した以外は、実施例21と同様の手順に従って、ガラス積層体Zを得た。
【0115】
<実施例25>
ジメチルポリシロキサンの使用量を4質量部から15質量部に変更した以外は、実施例21と同様の手順に従って、ガラス積層体AAを得た。
【0116】
上記実施例7〜25にて得られたガラス積層体(ガラス積層体I〜AA)中のシリコーン樹脂層の平坦性は、良好であった。
また、得られたガラス積層体(ガラス積層体I〜AA)においては、支持基材とガラス基板は、シリコーン樹脂層と気泡を発生することなく密着しており、歪み状欠点もなかった。また、ガラス積層体(ガラス積層体I〜AA)において、シリコーン樹脂層と支持基材の層との界面の剥離強度が、ガラス基板の層とシリコーン樹脂層との界面の剥離強度よりも大きかった。
次に、ガラス積層体(ガラス積層体I〜AA)を実施例1と同様の加熱処理を行なったところ、いずれのガラス積層体(ガラス積層体I〜AA)においても、支持基材とガラス基板の分離やシリコーン樹脂層の発泡や白化など外観上の変化は、認められなかった。
また、ガラス積層体(ガラス積層体I〜AA)の加熱処理後の剥離強度を、表2と表3にまとめて示す。剥離強度の測定方法は、実施例1と同様であった。
【0117】
上記実施例13〜25の各仕様、ならびに剥離強度、作業性および再積層性の評価結果を、表3として、以下にまとめて示す。
なお、表3中の「含有量」は、組成物中における「ポリシロキサン(A)」および「ポリシロキサン(B)」の組成物全質量に対する合計含有量(質量%)を表す。
【0118】
【表3】
【0119】
表3に示すように、シリコーンオイルを添加した実施例13から実施例25は、表2に示すシリコーンオイルを添加していない実施例1、7、12と比較して剥離強度が低下し、リワーク性にも優れていた。
【0120】
<実施例26>
本例では、実施例1で得た、ガラス積層体Aを用いてOLEDを製造する。
まず、ガラス積層体Aにおけるガラス基板の第2主面上に、プラズマCVD法により窒化シリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンの順に成膜する。次に、イオンドーピング装置により低濃度のホウ素をアモルファスシリコン層に注入し、窒素雰囲気下、加熱処理し脱水素処理をおこなう。次に、レーザアニール装置によりアモルファスシリコン層の結晶化処理をおこなう。次に、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングおよびイオンドーピング装置より、低濃度のリンをアモルファスシリコン層に注入し、N型およびP型のTFTエリアを形成する。次に、ガラス基板の第2主面側に、プラズマCVD法により酸化シリコン膜を成膜してゲート絶縁膜を形成した後に、スパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりゲート電極を形成する。次に、フォトリソグラフィ法とイオンドーピング装置により、高濃度のホウ素とリンをN型、P型それぞれの所望のエリアに注入し、ソースエリアおよびドレインエリアを形成する。次に、ガラス基板の第2主面側に、プラズマCVD法による酸化シリコンの成膜で層間絶縁膜を、スパッタリング法によりアルミニウムの成膜およびフォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりTFT電極を形成する。次に、水素雰囲気下、加熱処理し水素化処理をおこなった後に、プラズマCVD法による窒素シリコンの成膜で、パッシベーション層を形成する。次に、ガラス基板の第2主面側に、紫外線硬化性樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ法により平坦化層およびコンタクトホールを形成する。次に、スパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより画素電極を形成する。
【0121】
続いて、蒸着法により、ガラス基板の第2主面側に、正孔注入層として4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、正孔輸送層としてビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン、発光層として8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq
3)に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したもの、電子輸送層としてAlq
3をこの順に成膜する。次に、スパッタリング法によりアルミニウムを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより対向電極を形成する。次に、ガラス基板の第2主面側に、紫外線硬化型の接着層を介してもう一枚のガラス基板を貼り合わせて封止する。上記手順によって、ガラス基板上に有機EL構造体を形成する。ガラス基板上に有機EL構造体を有するガラス積層体A(以下、パネルAという。)が、本発明の電子デバイス用部材付き積層体である。
【0122】
続いて、パネルAの封止体側を定盤に真空吸着させたうえで、パネルAのコーナー部のガラス基板と樹脂層との界面に、厚さ0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、ガラス基板と樹脂層の界面に剥離のきっかけを与える。そして、パネルAの支持基材表面を真空吸着パッドで吸着した上で、吸着パッドを上昇させる。ここで刃物の差し込みは、イオナイザ(キーエンス社製)から除電性流体を当該界面に吹き付けながら行う。次に、形成した空隙へ向けてイオナイザからは引き続き除電性流体を吹き付けながら、かつ、水を剥離前線に差しながら真空吸着パッドを引き上げる。その結果、定盤上に有機EL構造体が形成されたガラス基板のみを残し、樹脂層付き支持基材を剥離することができる。
続いて、分離されたガラス基板をレーザーカッタまたはスクライブ−ブレイク法を用いて切断し、複数のセルに分断した後、有機EL構造体が形成されたガラス基板と対向基板とを組み立てて、モジュール形成工程を実施してOLEDを作製する。こうして得られるOLEDは、特性上問題は生じない。