【実施例】
【0065】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
以下における略号は以下のとおりである。
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ
テトラカルボン酸誘導体A〜C:それぞれ、下記式(A)〜(C)で表される化合物
【0066】
DA−1〜DA−6:それぞれ、下記式(DA−1)〜式(DA−6)で表される化合物
DBOP:ジフェニル(2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-3-ベンゾオキサゾリル)ホスホナート
【0067】
【化33】
【0068】
(DA−5の合成)
第1ステップ:N−2−(4−ニトロフェニル)エチル−N−(4−ニトロベンジル)アミン(DA−5−1)の合成
【化34】
2−(4−ニトロフェニル)エチルアミン塩酸塩(50.0g,247mmol)を水(300g)及びDMF(50.0g)に溶解し、炭酸ナトリウム(78.4g,740mmol)を加え、4−ニトロベンジルブロミド(53.3g,247mmol)のDMF溶液(200g)を、25℃で1時間かけて滴下した。滴下中、DMF/水=1/1(w/w、100g)を追加し、析出物による撹拌不良を解消した。そのまま室温で20時間撹拌し、さらに、40℃で4時間撹拌した後、HPLCで原料の消失を確認した。その後、反応液を室温に放冷し、析出物をろ取した。次いで、析出物を水(150g)で2回、2−プロパノール(50.0g)で2回洗浄し、50℃で減圧乾燥して、N−2−(4−ニトロフェニル)エチル−N−(4−ニトロベンジル)アミン(DA−5−1)を得た(白色固体、収量:73g、収率:99%)。
【0069】
以下、得られた化合物の確認は、
1H−NMR分析及び
13C{
1H}−NMR分析により、以下のスペクトルデータを得て行なった。
なお、
1H−NMRは、Varian社製のフーリエ変換型超伝導核磁気共鳴装置(FT−NMR)INOVA−400(400MHz)を用いて測定し、テトラメチルシランを内部標準としたシグナルの化学シフトδ(単位:ppm)(分裂パターン、積分値)を表す。「s」はシングレット、「d」はダブレット、「t」はトリプレット、「q」はカルテット、「m」はマルチプレット、「br」はブロード、「J」はカップリング定数、「DMSO-d
6」は重ジメチルスルホキシドを意味する。
また、
13C{
1H}−NMRは、Varian社製のフーリエ変換型超伝導核磁気共鳴装置(FT−NMR)INOVA−400(400MHz)を用いて測定し、テトラメチルシランを内部標準としたシグナルの化学シフトδ(単位:ppm)を表す。
【0070】
1H NMR (DMSO-d
6):δ 8.18 (d, J = 8.8 Hz, 2H, C
6H
4), 8.15 (d, J = 8.8 Hz, 2H, C
6H
4), 7.59, (d, J = 8.8 Hz, 2H, C
6H
4), 7.52 (d, J = 8.8 Hz, 2H, C
6H
4), 3.87 (s, 2H, CH
2), 2.91 (t, J = 7.0 Hz, 2H, CH
2), 2.80 (t, J = 7.0 Hz, 2H, CH
2), 2.46 (s, 1H, NH).
13C{
1H} NMR (DMSO-d
6):δ 149.8, 149.5, 146.6, 146.3, 130.3, 129.2, 123.7, 123.6, 52.4, 50.0, 36.0 (each s).
融点(DSC):123℃
【0071】
第2ステップ:N−tert−ブトキシカルボニル−N−(2−(4−ニトロフェニル)エチル)−N−(4−ニトロベンジル)アミン(DA−5−2)の合成
【化35】
N−2−(4−ニトロフェニル)エチル−N−4−ニトロベンジルアミン(73g,0.24mol)をDMF(371g)に溶解し、二炭酸ジtert−ブチル(54g,0.24mol)を2〜8℃で10分かけて滴下した。その後、20℃で4時間撹拌し、原料の消失をHPLCで確認した。続いて、DMFを減圧留去し、反応液に酢酸エチル(371g)を加え、水(371g)で3回洗浄した。その後、有機相を濃縮し、オレンジ色オイルを得た(粗収量:96g,粗収率:97%)。この粗物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=7/3(v/v,Rf値=0.3)で精製して黄色オイルを得た。(粗収量:82.0g、粗収率:82.8%(2ステップ))。この黄色オイルにメタノール(118g)を加え、50℃で溶解させた後、撹拌しながら冷却し、0〜5℃で30分撹拌した。その後、析出した固体をろ取し、乾燥することで、N−tert−ブトキシカルボニル−N−2−(4−ニトロフェニル)エチル−N−4−ニトロベンジルアミン(DA−5−2)を得た(白色粉末, 収量:74.5 g, 収率:78%(2ステップ))。
【0072】
1H NMR (DMSO-d
6):δ 8.22 (d, J = 8.4 Hz, 2H, C
6H
4), 8.18-8.16 (br, 2H, C
6H
4), 7.51 (d, J = 8.4 Hz, 2H, C
6H
4), 7.48 (br, 2H, C
6H
4), 4.57-4.54 (br, 2H, CH
2), 3.55-3.49 (br, 2H, CH
2), 2.97 (br, 2H, CH
2), 1.36-1.32 (br, 9H, tert-Bu).
13C{
1H} NMR (DMSO-d
6):δ 155.2, 154.8, 147.9, 147.5, 147.1, 147.0, 146.5, 130.6, 128.7, 128.4, 124.0, 123.8, 79.7, 50.3, 49.2, 48.4, 34.3, 34.0, 28.2 (each s).
融点(DSC):77℃
【0073】
第3ステップ:N−tert−ブトキシカルボニル−N−(2−(4−アミノフェニル)エチル)−N−(4−アミノベンジル)アミン(DA−5)の合成
【化36】
N−tert−ブトキシカルボニル−N−2−(4−ニトロフェニル)エチル−N−4−ニトロベンジルアミン(74g,0.18mol)をテトラヒドロフラン(370g)に溶解し、3質量%白金−炭素(7.4g)を加え、水素雰囲気下、室温で72時間撹拌した。原料の消失をHPLCで確認し、ろ過により触媒を除去した。その後、ろ液を濃縮し、乾燥することで、DA−5の粗物を薄黄色オイルとして得た(粗収量:66g、粗収率:105%)。得られた粗物をトルエン(198g)に80℃で溶解した後、2℃で1時間撹拌して結晶を析出させた。析出した固体をろ取し、乾燥することでDA−5を得た(白色粉末、収量:56g、収率:90%)。
【0074】
1H NMR (DMSO-d
6):δ 6.92 (d, J = 8.0 Hz, 2H, C
6H
4), 6.84-6.76 (br, 2H, C
6H
4), 6.54 (d, J = 8.0 Hz, 2H, C
6H
4), 6.50 (d, J = 8.0 Hz, 2H, C
6H
4), 4.98 (s, 2H, NH
2), 4.84 (s, 2H, NH
2), 4.16 (br, 2H, CH
2), 3.13 (br, 2H, CH
2), 2.51 (br, 2H, CH
2), 1.41 (s, 9H, tert-Bu).
13C{
1H} NMR (DMSO-d
6):δ 155.4, 154.9, 148.2, 147.2, 129.5, 129.3, 129.1, 128.9, 126.6, 125.7, 114.5, 114.3, 78.9, 78.8, 50.2, 49.2, 48.4, 33.9, 33.3, 28.5 (each s).
融点(DSC):103℃
【0075】
(DA−6の合成)
第1ステップ:DA−6−1の合成
【化37】
窒素雰囲気下、4口フラスコに、ジメチルホルムアミド(390g)、4−フルオロニトロベンゼン(65.01g、0.4607mol)、4―アミノメチルピペリジン(25.00g、0.2189mol)、及び炭酸カリウム(90.89g、0.6576mol)を加え、60℃で撹拌反応させた。22時間加熱攪拌した後に、中間体の消失をHPLCで確認した。その後、室温まで冷却して、ろ過により炭酸カリウムを除去し、さらに、炭酸カリウムをジメチルホルムアミド250gで2回洗浄した。集めた溶液を、内容物が295gになるまで減圧留去し、次いで、水1500gを加えて、黄色固体を析出させた。その後、析出物をろ過により回収し、乾燥して、DA−6−1の粗物を得た。得られた粗物をテトラヒドロフランにて再結晶して精製し、黄色固体のDA−6−1を得た(58.75g、0.1649mol、収率75.3%)。
【0076】
1H−NMR(DMSO-d
6):δ=8.05-7.98(m,4H), 7.41(t,1H J=6.8), 7.02(d,2H, J=9.6), 6.68(d,2H, J=9.2), 4.09(d,2H, J=13.6), 3.10(t,2H, J=6.0), 2.98(t,2H, J=12.0), 1.91−1.89(m,1H), 1.89−1.83(m,2H), 1.29−1.19(m,2H).
【0077】
第2ステップ:DA−6−2の合成
【化38】
窒素雰囲気下、4口フラスコに、テトラヒドロフラン(400g)、DA−6−1(19.99g、0.0561mol)、及びN、N―ジメチル−4−アミノピリジン(77.44mg、0.634mmol)を加え、50℃に加熱した。その溶液へ、二炭酸ジ-tert−ブチル(15.26g、0.0699mol)とテトラヒドロフラン15gの混合液を滴下し、24時間反応させた後、HPLCにて原料が消失したことを確認した。内容物を減圧留去した後、トルエンで再結晶を行い、析出した結晶をろ取し、乾燥させて、黄色固体の化合物DA−6−2を収率87.3%で得た(22.34g、0.0489mol)。
【0078】
1H−NMR(DMSO-d
6):δ=8.21(d,2H, J=8.8), 8.01(d,2H J=9.2), 7.61(d,2H, J=9.2), 6.98(d,2H, J=9.6), 4.02(d,2H, J=13.6), 3.69(d,2H,J=7.2), 2.91(t,2H, J=11.6),1.86−1.70(m,1H), 1.66(d,2H, J=11.2), 1.42(s,9H), 1.22−1.10(m,2H).
【0079】
ステップ3:DA−6の合成
【化39】
窒素雰囲気下、4口フラスコに、テトラヒドロフラン(447g)、DA−6−2(22.34g、0.0489mol)、及びパラジウムカーボン粉末(1.156g)を入れた後、系内を水素雰囲気に置換し、室温で23時間攪拌した。HPLCにて原料が消失したことを確認した後、パラジウムカーボンをろ過し、得られた溶液を減圧留去して粗物を得た。得られた粗物にクロロホルム(206g)を加え、60℃に加温した後、60℃の水(100g)で2回分液操作を繰り返した。次いで、得られた有機層に活性炭(0.754g)を加え、攪拌した後、ろ過により活性炭を除去した。内容物を減圧濃縮し、得られた固体をトルエンで再結晶を行った。その後、得られた結晶を乾燥させて、薄クリーム色固体の目的物、(DA−6)を収率71.3%で得た(13.83g、0.0349mol)。
【0080】
1H−NMR(DMSO-d
6):δ=6.83(d,2H, J=8.0), 6.65(d,2H J=8.4), 6.50(d,2H, J=8.4), 6.45(d,2H, J=8.4), 5.05(br, 2H), 4.54(br,2H), 3.41(d,2H, J=6.8), 3.29(d,2H,J=12.4), 2.36(t,2H, J=10.8), 1.64(d,2H, J=11.6), 1.42−1.19(br,12H).
【0081】
以下に、粘度、固形分濃度、及び分子量の測定方法を示す。
[粘度]
ポリアミド酸溶液又はポリアミド酸エステル溶液の粘度は、E型粘度計TVE−22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE−1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
【0082】
[分子量]
ポリアミド酸及びポリアミド酸エステルの分子量は、GPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド換算値として、数平均分子量(以下、Mnとも言う。)と重量平均分子量(以下、Mwとも言う。)を算出した。
GPC装置:Shodex社製(GPC−101)
カラム:Shodex社製(KD803、KD805の直列)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H2O)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製TSK(標準ポリエチレンオキサイド(重量平均分子量(Mw)が、約900,000、150,000、100,000、及び30,000))、及び、ポリマーラボラトリー社製ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)が、約12,000、4,000、及び1,000)。測定は、ピークが重なるのを避けるため、900,000、100,000、12,000、及び1,000の4種類を混合したサンプルと、150,000、30,000、及び4,000の3種類を混合したサンプルの2サンプルを別々にして行った。
【0083】
(合成例1)
撹拌子を入れた四つ口フラスコに、(A)を11.22g(43.1mmol)投入した後、NMP265gを加えて撹拌して溶解させた。次いで、トリエチルアミンを13.36g(132mmol)、DA−1を5.57g(24.2mmol)、DA−3を1.97g(6.6mmol)、及びDA−5を9.02g(26.4mmol)加えて、撹拌して溶解させた。
この溶液を撹拌しながら、DBOPを33.9g(88.4mmol)添加し、更にNMPを36.4g加え、室温で12時間撹拌してポリアミド酸エステルの溶液を得た。このポリアミド酸エステル溶液の温度25℃における粘度は42.6mPa・sであった。
【0084】
このポリアミド酸エステル溶液をメタノール2260g中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄した後、温度100℃で減圧乾燥し、ポリアミド酸エステルの粉末を得た。このポリアミド酸エステルの分子量はMn=12,601、Mw=29,033であった。
得られたポリアミド酸エステルの粉末にNMPを加えて、50℃にて30hr攪拌して溶解させた後、NMP及びBCSを加え、ポリアミド酸エステルが6質量%、NMPが69質量%、BCSが25質量%になるよう、ポリアミド酸エステル溶液(A)を調製した。
【0085】
(合成例2)
撹拌子を入れた四つ口フラスコに、(A)を2.55g(9.80mmol)投入した後、NMP45.0gを加えて撹拌して溶解させた。次いで、トリエチルアミンを2.13g(21.0mmol)、DA−1を1.96g(8.50mmol)、及びDA−3を0.45g(1.50mmol)加えて、撹拌して溶解させた。
この溶液を撹拌しながら、DBOPを8.05g(21.0mmol)添加し、更にNMPを7.94g加え、室温で12時間撹拌してポリアミド酸エステルの溶液を得た。このポリアミド酸エステル溶液の温度25℃における粘度は50.0mPa・sであった。
このポリアミド酸エステル溶液をメタノール408g中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄した後、温度100℃で減圧乾燥し、ポリアミド酸エステルの粉末を得た。このポリアミド酸エステルの分子量はMn=12,542、Mw=35,098であった。
得られたポリアミド酸エステルの粉末にNMPを加えて、50℃にて30hr攪拌して溶解させた後、NMP及びBCSを加え、ポリアミド酸エステルが6質量%、NMPが69質量%、BCSが25質量%になるよう、ポリアミド酸エステル溶液(B)を調製した。
【0086】
(合成例3)
撹拌子を入れた四つ口フラスコに、DA−2を3.52g(12.0mmol)、DA−4を0.96g(5.00mmol)、及びDA−6を1.90g(4.8mmol)投入した後、NMP67.8gを加えて、撹拌し溶解させた。次いで、(C)を1.13g(5.30mmol)添加し、2時間室温で攪拌した。その後、(B)を3.66g(16.8mmol)添加し、次いで、NMPを22.60g加えて、50℃で15時間反応させ、ポリアミド酸の溶液を得た。このポリアミド酸の溶液の温度25℃における粘度は152mPa・sであった。このポリアミド酸の分子量はMn=13,100、Mw=34,500であった。
得られたポリアミド酸の溶液に、ポリアミド酸が6質量%、NMPが69質量%、BCSが25質量%になるよう、NMP及びBCSを加え、ポリアミド酸溶液(A)を調製した。
【0087】
(合成例4)
撹拌子を入れた四つ口フラスコに、DA−2を2.05g(8.4mmol)、DA−4を0.84g(4.20mmol)、及びDA−6を0.55g(1.4mmol)投入した後、NMP33.87gを加えて、撹拌し溶解させた。次いで、(C)を0.66g(3.40mmol)添加し、2時間室温で攪拌した。その後、(B)を2.13g(9.8mmol)添加し、次いで、NMPを11.29g加えて、50℃で15時間反応させ、ポリアミド酸の溶液を得た。このポリアミド酸の溶液の温度25℃における粘度は172mPa・sであった。このポリアミド酸の分子量はMn=13,800、Mw=35,800であった。
得られたポリアミド酸の溶液に、ポリアミド酸が6質量%、NMPが69質量%、BCSが25質量%になるよう、NMP及びBCSを加え、ポリアミド酸溶液(B)を調製した。
【0088】
(合成例5)
撹拌子を入れた四つ口フラスコに、DA−2を3.66g(15.0mmol)、及びDA−4を1.99g(10.0mmol)投入した後、NMP69.24gを加えて、撹拌し溶解させた。次いで、(C)を1.18g(6.0mmol)添加し、2時間室温で攪拌した。その後、(B)を3.82g(17.5mmol)添加し、次いで、NMPを23.08g加えて、50℃で15時間反応させ、ポリアミド酸の溶液を得た。このポリアミド酸の溶液の温度25℃における粘度は105mPa・sであった。このポリアミド酸の分子量はMn=11,300、Mw=28,600であった。
得られたポリアミド酸の溶液に、ポリアミド酸が6質量%、NMPが69質量%、BCSが25質量%になるよう、NMP及びBCSを加え、ポリアミド酸溶液(C)を調製した。
【0089】
(実施例1)
攪拌子の入った三角フラスコに、合成例1で得られたポリアミド酸エステル溶液(A)8.10gと、合成例3で得られたポリアミド酸溶液(A)12.1gとを入れて、室温で3時間攪拌し、液晶配向剤(A−1)を得た。
【0090】
(実施例2)
攪拌子の入った三角フラスコに、合成例1で得られたポリアミド酸エステル溶液(A)8.00gと、合成例4で得られたポリアミド酸溶液(B)12.1gとを入れて、室温で3時間攪拌し、液晶配向剤(A−2)を得た。
【0091】
(比較例1)
攪拌子の入った三角フラスコに、合成例2で得られたポリアミド酸エステル溶液(B)7.99gと、合成例5で得られたポリアミド酸溶液(C)12.1gとを入れて、室温で3時間攪拌し、液晶配向剤(B−1)を得た。
【0092】
(比較例2)
攪拌子の入った三角フラスコに、合成例1で得られたポリアミド酸エステル溶液(A)8.01gと、合成例5で得られたポリアミド酸溶液(C)12.0gとを入れて、室温で3時間攪拌し、液晶配向剤(B−2)を得た。
【0093】
<液晶セルの作製>
FFS方式の液晶表示素子の構成を備えた液晶セルの作製は、以下のように行った。
初めに、電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×35mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板である。基板上には第1層目として対向電極を構成する、ベタ状のパターンを備えたIZO(Indium Zinc Oxide)電極が形成されている。第1層目の対向電極の上には、第2層目として、CVD(化学気相蒸着)法により成膜されたSiN(窒化珪素)膜が形成されている。第2層目のSiN膜の膜厚は500nmであり、層間絶縁膜として機能する。第2層目のSiN膜の上には、第3層目としてIZO膜をパターニングして形成された、櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素及び第2画素の2つの画素を形成している。各画素のサイズは、縦10mmで横約5mmである。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により電気的に絶縁されている。
【0094】
第3層目の画素電極は、中央部分が屈曲したくの字形状の電極要素を、複数配列して構成された櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は3μmであり、電極要素間の間隔は6μmである。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲したくの字形状の電極要素を、複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字のくの字に似た形状を備える。さらに、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有する。
各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっている。すなわち、後述する液晶配向膜のラビング方向を基準とした場合、画素の第1領域では、画素電極の電極要素が+10°の角度(時計回り)をなすように形成され、画素の第2領域では、画素電極の電極要素が−10°の角度(時計回り)をなすように形成されている。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される、液晶の基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が、互いに逆方向となるように構成されている。
【0095】
次に、得られた液晶配向剤を、1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板に、スピンコート塗布にて塗布した。80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚60nmのポリイミド膜を得た。このポリイミド膜を、レーヨン布でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:500rpm、移動速度:30mm/sec、押し込み長:0.3mm、ラビング方向:3層目IZO櫛歯電極に対して10°傾いた方向)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した。その後、80℃で15分間乾燥して、液晶配向膜付き基板を得た。また、対向基板として、裏面にITO電極が形成されている、高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板にも、上記と同様にして、ポリイミド膜を形成し、上記と同様の手順で、配向処理が施された液晶配向膜付き基板を得た。
【0096】
これら2枚の液晶配向膜付き基板を1組とし、基板上に液晶注入口を残した形でシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合い、ラビング方向が逆平行になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて、セルギャップが4μmの空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC−2041(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS方式の液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを、110℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置してから各評価に使用した。
以下に、蓄積電荷の緩和特性、交流駆動時の正負電圧の非対称化による蓄積電荷量、電圧保持率(VHR)バックライトエージング耐性、及びラビング耐性の評価法を示す。
【0097】
<蓄積電荷の緩和特性の評価>
上記液晶セルを、偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、画素電極と対向電極とを短絡して同電位にした状態で、2枚の偏光板の下からLEDバックライトを照射しておき、2枚の偏光板の上で測定するLEDバックライト透過光の輝度が最小となるように、液晶セルの角度を調節した。
次に、この液晶セルに周波数30Hzの矩形波を印加しながら、23℃の温度下でのV−T特性(電圧−透過率特性)を測定し、相対透過率が23%となる交流電圧を算出した。
次に、相対透過率が23%となる交流電圧で、なおかつ周波数30Hzの矩形波を5分間印加した後、+1.0Vの直流電圧を重畳し、30分間駆動させた。その後、直流電圧を切り、再び相対透過率が23%となる交流電圧で、なおかつ周波数30Hzの矩形波のみを20分間印加した。
蓄積した電荷の緩和が速いほど、直流電圧を重畳したときの液晶セルへの電荷蓄積も速いことから、蓄積電荷の緩和特性は、直流電圧を重畳した直後の相対透過率が30%以上の状態から30分が経過するまでに、相対透過率が28%未満に低下した場合は、「良好」と定義して評価した。直流電圧を重畳してから30分が経過しても、相対透過率が28%未満に低下しなかった場合は、「不良」と定義して評価した。
【0098】
<交流駆動時の正負電圧の非対称化による蓄積電荷量の評価>
上記液晶セルを、偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、画素電極と対向電極とを短絡して同電位にした状態で、2枚の偏光板の下からLEDバックライトを照射しておき、2枚の偏光板の上で測定するLEDバックライト透過光の輝度が最小となるように、液晶セルの角度を調節した。
次に、この液晶セルに周波数30Hzの矩形波を印加しながら、60℃の温度下でのV−T特性(電圧−透過率特性)を測定し、相対透過率が23%及び100%となる交流電圧を算出した。その後、画素電極と対向電極とを短絡して同電位にした状態で60分間以上放置し、液晶セルに蓄積した電荷を放出した。
次に、相対透過率が100%となる交流電圧で、なおかつ周波数30Hzの矩形波を30分間印加した。但し、その30分間のうち、3分間おきに20秒間のみ相対透過率が23%となる交流電圧に切り替えた。相対透過率が23%となる交流電圧に切り替えている20秒間の間に、V−F特性(直流電圧−フリッカ特性)を測定し、相対透過率が100%となる交流電圧で駆動した際の、正負電圧の非対称化による蓄積電荷を打ち消す直流電圧値を記録した。この蓄積電荷を打ち消す直流電圧値の絶対値が小さければ小さいほど、交流電圧駆動による電荷が蓄積しづらいことを示すため、残像特性が良好であると考えられる。
【0099】
<電圧保持率(VHR)バックライトエージング耐性の評価>
VHRのバックライトエージング耐性(電圧保持率1)は以下のようにして評価した。
初めに、電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×40mmの大きさで、厚さが1.1mmのガラス基板である。基板上には膜厚35nmのITO電極が形成されており、電極は縦40mm、横10mmのストライプパターンである。次に、液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板に、スピンコート塗布にて塗布した。50℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、230℃のIR式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させて液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜を、レーヨン布でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:1000rpm、移動速度:20mm/sec、押し込み長:0.4mm)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した。その後、80℃で15分間乾燥して、液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に4μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板をラビング方向が逆方向、かつ膜面が向き合うようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。
【0100】
この空セルに減圧注入法によって、液晶ZLI−4792(メルク社製)を注入し、注入口を封止して液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを110℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置し、VHR測定用の液晶セルを得た。次いで、本セルを、70℃オーブン中、LED光源(1000cd)下で、72時間エージングを行った。
72時間のバックライトエージング後、本セルに、60℃の温度下で1Vの電圧を60μsec印加し、100msec後の電圧を測定して、電圧がどのくらい保持できているかをVHRとし、その値の大小で、VHRバックライトエージング耐性を評価した。即ち、このVHRの値が大きければ、VHRバックライトエージング耐性は良好である。
【0101】
<ラビング耐性>
液晶配向剤を、全面にITO電極が付いたガラス基板のITO面にスピンコートし、50℃のホットプレート上で5分間乾燥させた。その後、230℃のIR式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させて、液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜を、レーヨン布でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:1000rpm、移動速度:20mm/sec、押し込み長:0.4mm)した。本基板を顕微鏡にて観察を行ない、膜面にラビングによるスジがみられなかったものを「良好」、スジがみられたものを「不良」として評価した。
【0102】
【表1】