特許第6555341号(P6555341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555341
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】導電性基板
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20190729BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20190729BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   H01B5/14 Z
   H01B5/14 B
   H01B5/14 A
   B32B15/04 Z
   C23C14/06 N
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-515522(P2017-515522)
(86)(22)【出願日】2016年4月21日
(86)【国際出願番号】JP2016062673
(87)【国際公開番号】WO2016175130
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2018年5月25日
(31)【優先権主張番号】特願2015-91714(P2015-91714)
(32)【優先日】2015年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】下地 匠
(72)【発明者】
【氏名】永田 純一
【審査官】 松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−129183(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/067943(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/084605(WO,A1)
【文献】 特開2013−204046(JP,A)
【文献】 特開2009−231426(JP,A)
【文献】 特開2008−166655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/00−19/04
B32B 15/04
C23C 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
前記透明基材の少なくとも一方の面上に形成された金属層と、
前記透明基材の少なくとも一方の面上に形成された黒化層とを有し、
前記黒化層は、銅の単体および/または化合物と、ニッケルの単体および化合物とを含有し、
前記ニッケルの化合物が、ニッケル酸化物およびニッケル水酸化物を含む導電性基板。
【請求項2】
前記黒化層について、X線光電子分光法により測定した際に、
Ni 2P3/2スペクトルのピーク強度の比が、ニッケル単体のピーク強度を100とした場合に、ニッケル酸化物のピーク強度が70以上80以下、ニッケル水酸化物のピーク強度が65以上である、請求項1に記載の導電性基板。
【請求項3】
前記金属層は銅を含有する請求項1または2に記載の導電性基板。
【請求項4】
前記透明基材の少なくとも一方の面上に、透明基材側から前記金属層と、前記黒化層とがその順に形成された請求項1乃至3のいずれか一項に記載の導電性基板。
【請求項5】
前記透明基材の少なくとも一方の面上に、透明基材側から前記黒化層と、前記金属層と、前記黒化層とがその順に形成された請求項1乃至3のいずれか一項に記載の導電性基板。
【請求項6】
前記黒化層の厚さが100nm以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の導電性基板。
【請求項7】
前記黒化層は、波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均が40%以下である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の導電性基板。
【請求項8】
メッシュ状の配線を備えた請求項1乃至7のいずれか一項に記載の導電性基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、高分子フィルム上に透明導電膜としてITO(酸化インジウム−スズ)膜を形成したタッチパネル用の透明導電性フィルムが従来から用いられている。
【0003】
ところで、近年タッチパネルを備えたディスプレイの大画面化が進んでおり、これに対応してタッチパネル用の透明導電性フィルム等の導電性基板についても大面積化が求められている。しかし、ITOは電気抵抗値が高いため、導電性基板の大面積化に対応できないという問題があった。
【0004】
このため、例えば特許文献2、3に開示されているようにITO膜にかえて銅等の金属箔を用いることが検討されている。しかし、例えばITO膜にかえて金属箔を用いた場合、金属箔は金属光沢を有しているため、反射によりディスプレイの視認性が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、銅等により構成される金属層と共に、黒色の材料により構成される黒化層を形成した導電性基板が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2003−151358号公報
【特許文献2】日本国特開2011−018194号公報
【特許文献3】日本国特開2013−069261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、配線パターンを有する導電性基板とするためには、金属層と黒化層とを形成した後に、金属層と黒化層とをエッチングして所望のパターンを形成する必要があるが、エッチング液に対する反応性が金属層と黒化層とで大きく異なっていた。このため、金属層と黒化層とを同時にエッチングしようとすると、いずれかの層が目的の形状にエッチングできない場合や、平面内で均一にエッチングされず寸法ばらつきが生じる場合があり、金属層と黒化層とを同時にエッチングできないという問題があった。
【0008】
上記従来技術の問題に鑑み、本発明の一側面では、同時にエッチングできる金属層と黒化層とを備えた導電性基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明の一側面では、
透明基材と、
前記透明基材の少なくとも一方の面上に形成された金属層と、
前記透明基材の少なくとも一方の面上に形成された黒化層とを有し、
前記黒化層は、銅の単体および/または化合物と、ニッケルの単体および化合物とを含有し、
前記ニッケルの化合物が、ニッケル酸化物およびニッケル水酸化物を含む導電性基板を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面によれば、同時にエッチングできる金属層と黒化層とを備えた導電性基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の実施形態に係る導電性基板の断面図。
図1B】本発明の実施形態に係る導電性基板の断面図。
図2A】本発明の実施形態に係る導電性基板の断面図。
図2B】本発明の実施形態に係る導電性基板の断面図。
図3】本発明の実施形態に係るメッシュ状の配線を備えた導電性基板の上面図。
図4A図3のA−A´線における断面図。
図4B図3のA−A´線における断面図。
図5】ロール・ツー・ロールスパッタリング装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の導電性基板、および導電性基板の製造方法の一実施形態について説明する。
(導電性基板)
本実施形態の導電性基板は、透明基材と、透明基材の少なくとも一方の面上に形成された金属層と、透明基材の少なくとも一方の面上に形成された黒化層とを有することができる。そして、黒化層は、銅の単体および/または化合物と、ニッケルの単体および化合物とを含有し、ニッケルの化合物として、ニッケル酸化物およびニッケル水酸化物を含むことができる。
【0013】
なお、本実施形態における導電性基板とは、金属層等をパターニングする前の、透明基材の表面に金属層、及び黒化層を有する基板と、金属層等をパターニングした基板、すなわち配線基板と、を含む。金属層及び黒化層をパターニングした後の導電性基板は透明基材が金属層等により覆われていない領域を含むため光を透過することができ、透明導電性基板となっている。
【0014】
ここでまず、本実施形態の導電性基板に含まれる各部材について以下に説明する。
【0015】
透明基材としては特に限定されるものではなく、可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板等を好ましく用いることができる。
【0016】
可視光を透過する絶縁体フィルムとしては例えば、ポリアミド系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、シクロオレフィン系フィルム、ポリイミド系フィルム、ポリカーボネート系フィルム等の樹脂フィルム等を好ましく用いることができる。特に、可視光を透過する絶縁体フィルムの材料として、ポリアミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド、ポリカーボネート等をより好ましく用いることができる。
【0017】
透明基材の厚さについては特に限定されず、導電性基板とした場合に要求される強度や、静電容量、光の透過率等に応じて任意に選択することができる。透明基材の厚さとしては例えば10μm以上200μm以下とすることができる。特にタッチパネルの用途に用いる場合、透明基材の厚さは20μm以上120μm以下とすることが好ましく、20μm以上100μm以下とすることがより好ましい。タッチパネルの用途に用いる場合で、例えば特にディスプレイ全体の厚さを薄くすることが求められる用途においては、透明基材の厚さは20μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0018】
透明基材の全光線透過率は高い方が好ましく、例えば全光線透過率は30%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。透明基材の全光線透過率が上記範囲であることにより、例えばタッチパネルの用途に用いた場合にディスプレイの視認性を十分に確保することができる。
【0019】
なお透明基材の全光線透過率はJIS K 7361−1に規定される方法により評価することができる。
【0020】
次に金属層について説明する。
【0021】
金属層を構成する材料は特に限定されず用途にあった電気伝導率を有する材料を選択できるが、電気特性に優れ、且つエッチング処理のし易さから、金属層を構成する材料として銅を用いることが好ましい。すなわち、金属層は銅を含有することが好ましい。
【0022】
金属層が銅を含有する場合、金属層を構成する材料は、例えばCuと、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Mn,Co,Wから選ばれる少なくとも1種類以上の金属との銅合金、または銅と上記金属から選ばれる1種類以上の金属とを含む材料であることが好ましい。また、金属層は銅から構成される銅層とすることもできる。
【0023】
金属層を形成する方法は特に限定されないが、光の透過率を低減させないため、他の部材と金属層との間に接着剤を配置しないで形成されていることが好ましい。すなわち、金属層は、他の部材の上面に直接形成されていることが好ましい。なお、金属層は黒化層、または透明基材の上面に形成することができる。このため、金属層は、黒化層、または透明基材の上面に直接形成されていることが好ましい。
【0024】
他の部材の上面に金属層を直接形成するため、金属層は乾式めっき法を用いて成膜された金属薄膜層を有することが好ましい。乾式めっき法としては特に限定されるものではないが、例えば蒸着法や、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を用いることができる。特に膜厚の制御が容易であることからスパッタリング法を用いることが好ましい。
【0025】
また金属層をより厚くする場合には、乾式めっきの後に湿式めっき法を用いて積層をすることができる。具体的には例えば、透明基材または黒化層上に、金属薄膜層を乾式めっき法により形成し、該金属薄膜層を給電層として用い、湿式めっき法の一種である電解めっきにより金属めっき層を形成することができる。
【0026】
なお、上述の様に乾式めっき法のみで金属層を成膜した場合、金属層は金属薄膜層により構成できる。また、乾式めっき法と湿式めっき法とを組み合わせて金属層を形成した場合、金属層は金属薄膜層と金属めっき層とにより構成できる。
【0027】
上述のように乾式めっき法のみ、又は乾式めっき法と湿式めっき法とを組み合わせて金属層を形成することにより透明基材または黒化層上に接着剤を介さずに直接金属層を形成することができる。
【0028】
金属層の厚さは特に限定されるものではなく、金属層を配線として用いた場合に、該配線に供給する電流の大きさや配線幅等に応じて任意に選択することができる。
【0029】
ただし、金属層が厚くなると、配線パターンを形成するためにエッチングを行う際にエッチングに時間を要するためサイドエッチが生じ易くなり、細線が形成しにくくなる等の問題を生じる場合がある。このため、金属層の厚さは5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
【0030】
また、特に導電性基板の抵抗値を低くし、十分に電流を供給できるようにする観点から、例えば金属層は厚さが50nm以上であることが好ましく、60nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。
【0031】
なお、金属層が上述のように金属薄膜層と、金属めっき層とを有する場合には、金属薄膜層の厚さと、金属めっき層の厚さとの合計が上記範囲であることが好ましい。
【0032】
金属層が金属薄膜層により構成される場合、または金属薄膜層と金属めっき層とにより構成される場合のいずれの場合でも、金属薄膜層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば50nm以上500nm以下とすることが好ましい。
【0033】
次に、黒化層について説明する。
【0034】
金属層は金属光沢を有するため、透明基材上に金属層をエッチングして配線を形成するのみでは配線が光を反射し、例えばタッチパネル用の配線基板として用いた場合、ディスプレイの視認性が低下するという問題があった。そこで、黒化層を設ける方法が検討されてきた。しかしながら、金属層と黒化層とでエッチング液に対する反応性が大きく異なる場合があり、金属層と黒化層とを同時にエッチングしようとすると、金属層や、黒化層について所望の形状にエッチングできず、または寸法ばらつきが生じる等の問題があった。このため、従来検討されている導電性基板では、金属層と黒化層とを別行程でエッチングする必要があり、金属層と黒化層とを同時に、すなわち1つの工程でエッチングすることは困難であった。
【0035】
そこで、本発明の発明者らは金属層と同時にエッチングできる黒化層、すなわちエッチング液に対する反応性に優れ、金属層と同時にエッチングを行った場合でも、所望の形状にパターニングでき、寸法ばらつきの発生を抑制できる黒化層について検討を行った。そして、黒化層が銅の単体および/または化合物と、ニッケルの単体および化合物とを含有し、ニッケルの化合物がニッケル酸化物及びニッケル水酸化物を含むことで、黒化層のエッチング液に対する反応性を、金属層の場合とほぼ同等にできることを見出し、本発明を完成させた。
【0036】
本実施形態の導電性基板の黒化層は、上述の様に黒化層が銅の単体および/または化合物と、ニッケルの単体および化合物とを含有し、ニッケルの化合物としてニッケル酸化物及びニッケル水酸化物を含むことができる。ここで、黒化層に含まれる銅の化合物は特に限定されるものではないが、例えば酸化物および/または水酸化物を挙げることができる。このため、黒化層は例えば、ニッケルの単体、ニッケル酸化物、およびニッケル水酸化物を含有し、さらに、銅の単体、銅酸化物、銅水酸化物から選択された1種類以上を含有することができる。
【0037】
上述の様に黒化層がニッケル酸化物を含有することで、黒化層が金属層表面での光の反射を抑制できる色となり、黒化層としての機能を発揮することができる。特に銅の化合物も含有することで金属層表面での光の反射を抑制でき、黒化層としての機能を高めることができる。
【0038】
そして、さらにニッケル水酸化物を含有することで、エッチング液に対する反応性を高め、金属層とほぼ同等のエッチング液に対する反応性を有することができる。
【0039】
黒化層中に含まれる各成分の割合については特に限定されるものではなく、導電性基板に要求される光の反射の抑制の程度や、エッチング液に対する反応性の程度等に応じて任意に選択することができ、特に限定されるものではない。ただし、本発明の発明者らの検討によると、エッチング液に対する反応性を十分に高める観点から、例えば黒化層をX線光電子分光法(XPS)により測定した際に、ニッケル水酸化物について、ピークとして識別できる程度に黒化層に含まれていることが好ましい。
【0040】
特に、黒化層について、X線光電子分光法(XPS)により測定した際に、Ni 2P3/2スペクトルのピーク強度の比が、ニッケル単体のピーク強度を100とした場合に、ニッケル酸化物のピーク強度が70以上80以下、ニッケル水酸化物のピーク強度が65以上であることが好ましい。これは、黒化層が、ニッケル単体、すなわち金属ニッケルに対して、所定の割合でニッケル酸化物、およびニッケル水酸化物を含有することで、黒化層としての光の反射を抑制する機能と、エッチング液に対する反応性とを特に高めつつ両立できるためである。
【0041】
黒化層の形成方法は特に限定されるものではなく、上述の各成分を含有するように形成できる方法であれば任意の方法を選択することができる。ただし、上述の各成分を含有するように黒化層の組成を比較的容易にコントロールできることから、スパッタリング法を用いることが好ましい。
【0042】
なお、黒化層は、透明基材および/または金属層等の他の部材の上面に接着剤を介さずに直接形成することが好ましい。そして、黒化層を乾式めっき法で成膜することで、黒化層を他の部材の上面に接着剤を介さずに直接形成できる。このため係る観点からも黒化層の成膜方法はスパッタリング法が好ましい。
【0043】
スパッタリング法により、本実施形態の導電性基板の黒化層を成膜する場合、ニッケル及び銅を含有する合金のターゲットを用いることができる。なお、黒化層が、金属成分としてニッケル及び銅以外を含有しない場合には、ニッケル及び銅からなる合金のターゲットを用いることができる。
【0044】
そして、チャンバー内に酸素ガス及び水蒸気を供給しながら、上述のターゲットを用いてスパッタリング法により黒化層を形成することができる。これにより、ニッケル化合物として、チャンバー内に供給した酸素ガスとターゲット中のニッケルとに由来するニッケル酸化物、及びチャンバー内に供給した水蒸気とターゲット中のニッケルとに由来するニッケル水酸化物を含む黒化層を形成できる。
【0045】
この際、チャンバー内に供給する酸素ガスと、水蒸気との割合を選択することにより、黒化層中に含まれる成分の比率を選択することができる。
【0046】
特に、チャンバー内には、黒化層に供給する酸素及び水蒸気の量を調整し易いように、不活性ガスと、酸素ガスと、水蒸気とを同時に供給し、それぞれの分圧を調整することが好ましい。なお、不活性ガスとしては特に限定されるものではなく、アルゴンやヘリウムを好ましく用いることができる。また、水蒸気は不活性ガスとの混合気体として供給することができる。
【0047】
上述のように黒化層を成膜する際に、チャンバーに供給する不活性ガス、酸素ガス、水蒸気の、各ガスの供給割合は特に限定されるものではなく、黒化層の目標組成等に応じて任意に選択することができる。
【0048】
例えば、予備試験等を行い、成膜した黒化層についてX線光電子分光法(XPS)により測定した際に、Ni 2P3/2スペクトルのピーク強度の比が上述の好適な強度比となるように、各ガスの供給条件を選択することが好ましい。
【0049】
黒化層の厚さは特に限定されるものではなく、導電性基板に要求される光の反射の抑制する程度等に応じて任意に選択することができる。
【0050】
黒化層の厚さは例えば20nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。黒化層は、金属層による光の反射を抑制する機能を有するが、黒化層の厚さが薄い場合には、金属層による光の反射を十分に抑制できない場合がある。これに対して、黒化層の厚さを20nm以上とすることにより、金属層の表面での反射をより確実に抑制できるため好ましい。
【0051】
また、黒化層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、必要以上に厚くすると、配線を形成する際のエッチングに要する時間が長くなり、コストの上昇を招くことになる。このため、黒化層の厚さは100nm以下とすることが好ましく、50nm以下とすることがより好ましい。
【0052】
次に、導電性基板の構成例について説明する。
【0053】
上述のように、本実施形態の導電性基板は透明基材と金属層と黒化層とを有することができる。この際、金属層と黒化層とについての透明基材上の積層の順番は特に限定されるものではない。また、金属層と黒化層とはそれぞれ複数層形成することもできる。ただし、金属層表面での光の反射を抑制するために、金属層の表面のうち光の反射を特に抑制したい面に黒化層を配置することが好ましい。金属層表面での光の反射を特に抑制することが要求される場合、黒化層が金属層の上面及び下面に形成された積層構造、すなわち金属層が黒化層に挟まれた構造とすることもできる。
【0054】
具体的な構成例について、図1A図1B図2A図2Bを用いて以下に説明する。図1A図1B図2A図2Bは、本実施形態の導電性基板の、透明基材、金属層、黒化層の積層方向と平行な面における断面図の例を示している。
【0055】
本実施形態の導電性基板は、例えば透明基材の少なくとも一方の面上に、透明基材側から金属層と、黒化層とがその順に積層された構造を有することができる。
【0056】
具体的には例えば、図1Aに示した導電性基板10Aのように、透明基材11の一方の面11a側に金属層12と、黒化層13と、を一層ずつその順に積層することができる。また、図1Bに示した導電性基板10Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ金属層12A、12Bと、黒化層13A、13Bと、を一層ずつその順に積層することができる。なお、金属層12(12A、12B)、及び、黒化層13(13A、13B)を積層する順は、図1A図1Bの例に限定されず、透明基材11側から黒化層13(13A、13B)、金属層12(12A、12B)の順に積層することもできる。
【0057】
また、例えば黒化層を透明基材11の一方の面側に複数層設けた構成とすることもできる。この場合例えば、透明基材の少なくとも一方の面上に、透明基材側から黒化層と、金属層と、黒化層とがその順に形成された構造とすることができる。
【0058】
具体的には例えば図2Aに示した導電性基板20Aのように、透明基材11の一方の面11a側に、第1の黒化層131と、金属層12と、第2の黒化層132と、をその順に積層することができる。
【0059】
この場合も透明基材11の両面に金属層、第1の黒化層、第2の黒化層を積層した構成とすることもできる。具体的には図2Bに示した導電性基板20Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ第1の黒化層131A、131Bと、金属層12A、12Bと、第2の黒化層132A、132Bと、をその順に積層できる。
【0060】
なお、図1B図2Bにおいて、透明基材の両面に金属層と、黒化層と、を積層した場合において、透明基材11を対称面として透明基材11の上下に積層した層が対称になるように配置した例を示したが、係る形態に限定されるものではない。例えば、図2Bにおいて、透明基材11の一方の面11a側の構成を図1Aの構成と同様に、金属層12と、黒化層13と、をその順に積層した形態とし、透明基材11の上下に積層した層を非対称な構成としてもよい。
【0061】
ここまで、本実施形態の導電性基板について説明してきたが、本実施形態の導電性基板においては、透明基材上に金属層と、黒化層とを設けているため、金属層による光の反射を抑制することができる。
【0062】
本実施形態の導電性基板の光の反射の程度については特に限定されるものではないが、例えばタッチパネル用の導電性基板として用いた場合のディスプレイでの配線視認性を抑制するためには、黒化層の波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均は低い方が良い。例えば、黒化層は、波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均は40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましい。
【0063】
反射率の測定は、導電性基板の黒化層に光を照射するようにして測定を行うことができる。具体的には例えば図1Aのように透明基材11の一方の面11a側に金属層12、黒化層13の順に積層した場合、黒化層13に光を照射するように黒化層13の表面Aに対して光を照射し、測定できる。そして、波長400nm以上700nm以下の光を例えば波長1nm間隔で上述のように導電性基板の黒化層13に対して照射し、測定した値の平均値を該黒化層の波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均とすることができる。
【0064】
本実施形態の導電性基板は上述のように例えばタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。この場合導電性基板にはメッシュ状の配線を備えた構成とすることができる。
【0065】
メッシュ状の配線を備えた導電性基板は、ここまで説明した本実施形態の導電性基板の金属層及び黒化層をエッチングすることにより得ることができる。
【0066】
例えば、二層の配線によりメッシュ状の配線とすることができる。具体的な構成例を図3に示す。図3はメッシュ状の配線を備えた導電性基板30を金属層、および黒化層の積層方向の上面側から見た図を示している。図3に示した導電性基板30は、透明基材11と、図中Y軸方向に平行な複数の配線31Aと、X軸方向に平行な配線31Bとを有している。なお、配線31A、31Bは金属層をエッチングして形成されており、該配線31A、31Bの上面および/または下面には図示しない黒化層が形成されている。また、黒化層は配線31A、31Bと同じ形状にエッチングされている。
【0067】
透明基材11と配線31A、31Bとの配置は特に限定されない。透明基材11と配線との配置の構成例を図4A図4Bに示す。図4A図4B図3のA−A´線での断面図に当たる。
【0068】
まず、図4Aに示したように、透明基材11の上下面にそれぞれ配線31A、31Bが配置されていてもよい。なお、図4Aでは配線31A、31Bの上面には、配線と同じ形状にエッチングされた黒化層32A、32Bが配置されている。
【0069】
また、図4Bに示したように、1組の透明基材11を用い、一方の透明基材11を挟んで上下面に配線31A、31Bを配置し、かつ、一方の配線31Bは透明基材11間に配置されてもよい。この場合も、配線31A、31Bの上面には配線と同じ形状にエッチングされた黒化層32A、32Bが配置されている。なお、既述のように、黒化層と、金属層との配置は限定されるものではない。このため、図4A図4Bいずれの場合でも黒化層32A、32Bと配線31A、31Bとの配置は上下を逆にすることもできる。また、例えば黒化層を複数層設けることもできる。
【0070】
ただし、黒化層は金属層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。このため、図4Bに示した導電性基板において、例えば、図中下面側からの光の反射を抑制する必要がある場合には、黒化層32A、32Bの位置と、配線31A、31Bの位置とをそれぞれ逆にすることが好ましい。また、黒化層32A、32Bに加えて、配線31A、31Bと透明基材11との間にそれぞれ黒化層をさらに設けてもよい。
【0071】
図3及び図4Aに示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は例えば、図1Bのように透明基材11の両面に金属層12A、12Bと、黒化層13A、13Bと、を備えた導電性基板から形成することができる。
【0072】
図1Bの導電性基板を用いて形成した場合を例に説明すると、まず、透明基材11の一方の面11a側の金属層12A及び黒化層13Aを、図1B中Y軸方向に平行な複数の線状のパターンがX軸方向に沿って所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。なお、図1B中のX軸方向は、各層の幅方向と平行な方向を意味している。また、図1B中のY軸方向とは、図1B中の紙面と垂直な方向を意味している。
【0073】
そして、透明基材11のもう一方の面11b側の金属層12B及び黒化層13Bを図1B中X軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけてY軸方向に沿って配置されるようにエッチングを行う。
【0074】
以上の操作により図3図4Aに示したメッシュ状の配線を有する導電性基板を形成することができる。なお、透明基材11の両面のエッチングは同時に行うこともできる。すなわち、金属層12A、12B、黒化層13A、13Bのエッチングは同時に行ってもよい。また、図4Aにおいて、配線31A、31Bと、透明基材11との間にさらに配線31A、31Bと同じ形状にパターニングされた黒化層を有する導電性基板は、図2Bに示した導電性基板を用いて同様にエッチングを行うことで作製できる。
【0075】
図3に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は、図1Aまたは図2Aに示した導電性基板を2枚用いることにより形成することもできる。図1Aの導電性基板を2枚用いて形成した場合を例に説明すると、図1Aに示した導電性基板2枚についてそれぞれ、金属層12及び黒化層13を、X軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけてY軸方向に沿って配置されるようにエッチングを行う。そして、上記エッチング処理により各導電性基板に形成した線状のパターンが互いに交差するように向きをあわせて2枚の導電性基板を貼り合せることによりメッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。2枚の導電性基板を貼り合せる際に貼り合せる面は特に限定されるものではない。例えば、金属層12等が積層された図1Aにおける面Aと、金属層12等が積層されていない図1Aにおける面11bとを貼り合せて、図4Bに示した構造となるようにすることもできる。
【0076】
なお、黒化層は金属層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。このため、図4Bに示した導電性基板において、図中下面側から光の反射を抑制する必要がある場合には、黒化層32A、32Bの位置と、配線31A、31Bの位置とを逆に配置することが好ましい。また、黒化層32A、32Bに加えて、配線31A、31Bと透明基材11との間に黒化層をさらに設けてもよい。
【0077】
また、例えば透明基材11の金属層12等が積層されていない図1Aにおける面11b同士を貼り合せて断面が図4Aに示した構造となるようにすることもできる。
【0078】
なお、図3図4A図4Bに示したメッシュ状の配線を有する導電性基板における配線の幅や、配線間の距離は特に限定されるものではなく、例えば、配線に流す電流量等に応じて選択することができる。
【0079】
また、図3図4A図4Bにおいては、直線形状の配線を組み合わせてメッシュ状の配線(配線パターン)を形成した例を示しているが、係る形態に限定されるものではなく、配線パターンを構成する配線は任意の形状とすることができる。例えばディスプレイの画像との間でモアレ(干渉縞)が発生しないようメッシュ状の配線パターンを構成する配線の形状をそれぞれ、ぎざぎざに屈曲した線(ジグザグ直線)等の各種形状にすることもできる。
【0080】
このように2層の配線から構成されるメッシュ状の配線を有する導電性基板は、例えば投影型静電容量方式のタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。
(導電性基板の製造方法)
次に本実施形態の導電性基板の製造方法の一構成例について説明する。
【0081】
本実施形態の導電性基板の製造方法は、
透明基材の少なくとも一方の面側に金属層を形成する金属層形成工程と、
透明基材の少なくとも一方の面側に黒化層を形成する黒化層形成工程とを有することができる。
【0082】
そして、黒化層形成工程においては、銅の単体および/または化合物と、ニッケルの単体および化合物とを含有し、ニッケルの化合物が、ニッケル酸化物、及びニッケル水酸化物を含む黒化層を成膜することができる。
【0083】
以下に本実施形態の導電性基板の製造方法について説明するが、本実施形態の導電性基板の製造方法により、既述の導電性基板を好適に製造することができる。このため、以下に説明する点以外については上述の導電性基板の場合と同様の構成とすることができるため説明を省略する。
【0084】
なお、上述のように、本実施形態の導電性基板においては、金属層と黒化層とを透明基材上に配置する際の積層の順番は特に限定されるものではない。また、金属層と黒化層とはそれぞれ複数層形成することもできる。このため、上記金属層形成工程と、黒化層形成工程とを実施する順番や、実施する回数については特に限定されるものではなく、形成する導電性基板の構造に合わせて任意の回数、タイミングで実施することができる。
【0085】
以下、各工程について説明する。
【0086】
まず、金属層形成工程について説明する。
【0087】
金属層形成工程においては、透明基材の少なくとも一方の面側に金属層を形成できる。
【0088】
なお、金属層形成工程、または黒化層形成工程に供する透明基材の種類は特に限定されるものではないが、既述のように可視光を透過する樹脂基板(樹脂フィルム)や、ガラス基板等を好ましく用いることができる。透明基材は必要に応じて予め任意のサイズに切断等行っておくこともできる。
【0089】
そして、金属層は既述のように、金属薄膜層を有することが好ましい。また、金属層は金属薄膜層と金属めっき層とを有することもできる。このため、金属層形成工程は、例えば乾式めっき法により金属薄膜層を形成する工程を有することができる。また、金属層形成工程は、乾式めっき法により金属薄膜層を形成する工程と、該金属薄膜層を給電層として、湿式めっき法の一種である電気めっき法により金属めっき層を形成する工程と、を有していてもよい。
【0090】
金属薄膜層を形成する工程で用いる乾式めっき法としては、特に限定されるものではなく、例えば、蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法等を用いることができる。なお、蒸着法としては真空蒸着法を好ましく用いることができる。金属薄膜層を形成する工程で用いる乾式めっき法としては、特に膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。
【0091】
金属薄膜層は例えばロール・ツー・ロールスパッタリング装置を用いて好適に成膜することができる。
【0092】
以下に、ロール・ツー・ロールスパッタリング装置を用いた場合を例に金属薄膜層を形成する工程を説明する。
【0093】
図5はロール・ツー・ロールスパッタリング装置50の一構成例を示している。
【0094】
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50は、その構成部品のほとんどを収納した筐体51を備えている。
【0095】
筐体51内には、金属薄膜層を成膜する基材を供給する巻出ロール52、キャンロール53、スパッタリングカソード54a〜54d、巻取ロール55等を具備する。また、金属薄膜層を成膜する基材の搬送経路上には、上記各ロール以外に任意にガイドロールやヒーター56等を設けることもできる。
【0096】
キャンロール53の構成についても特に限定されないが、例えばその表面が硬質クロムめっきで仕上げられ、その内部には筐体51の外部から供給される冷媒や温媒が循環し、略一定の温度に調整できるように構成されていることが好ましい。
【0097】
スパッタリングカソード54a〜54dは、マグネトロンカソード式でキャンロール53に対向して配置することが好ましい。スパッタリングカソード54a〜54dのサイズは特に限定されないが、スパッタリングカソード54a〜54dの金属薄膜層を成膜する基材の幅方向の寸法は、金属薄膜層を成膜する基材の幅より広いことが好ましい。
【0098】
金属薄膜層を成膜する基材は、ロール・ツー・ロール真空成膜装置であるロール・ツー・ロールスパッタリング装置50内を搬送されて、キャンロール53に対向するスパッタリングカソード54a〜54dで金属薄膜層が成膜される。
【0099】
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて金属薄膜層を成膜する場合、成膜する組成に対応したターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに装着する。そして、金属薄膜層を成膜する基材を巻出ロール52にセットした装置内を真空ポンプ57a、57bにより真空排気した後、アルゴン等のスパッタリングガスを気体供給手段58により筐体51内に導入することができる。気体供給手段58の構成は特に限定されないが、図示しない気体貯蔵タンクを有することができる。そして、気体貯蔵タンクと筐体51との間に、ガス種ごとにマスフローコントローラー(MFC)581a、581b、及びバルブ582a、582bを設け、各ガスの筐体51内への供給量を制御できるように構成できる。図5ではマスフローコントローラーと、バルブとを2組設けた例を示しているが、設置する数は特に限定されず、用いるガス種の数に応じて設置する数を選択することができる。スパッタリングガスを筐体51内に供給する際、スパッタリングガスの流量及び、真空ポンプ57bと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブ59の開度とを調整して装置内を例えば0.13Pa以上1.3Pa以下に保持し、成膜を実施することが好ましい。
【0100】
この状態で、巻出ロール52から基材を例えば毎分0.5m〜10mの速度で搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給してスパッタリング放電を行う。これにより基材上に所望の金属薄膜層を連続的に成膜することができる。
【0101】
なお、ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50は上述した部材以外にも任意の部材を設けることができる。例えば図5に示したように、筐体51内の真空度を測定するための真空計60a、60bや、ベントバルブ61a、61b等を設けることができる。
【0102】
次に金属めっき層を形成する工程について説明する。湿式めっき法により金属めっき層を形成する工程における条件、すなわち、電気めっき処理の条件は、特に限定されるものではなく、常法による諸条件を採用すればよい。例えば、金属めっき液を入れためっき槽に金属薄膜層を形成した基材を供給し、電流密度や、基材の搬送速度を制御することによって、金属めっき層を形成できる。
【0103】
次に、黒化層形成工程について説明する。
【0104】
黒化層形成工程は既述のように、透明基材の少なくとも一方の面側に黒化層を成膜する工程である。黒化層の成膜手段は特に限定されるものではないが、スパッタリング法を好適に用いることができる。これは、スパッタリング法によれば、比較的容易に銅の単体および/または化合物と、ニッケルの単体および化合物とを含有し、ニッケルの化合物が、ニッケル酸化物、及びニッケル水酸化物である層を形成できるためである。
【0105】
スパッタリング法により黒化層を成膜する場合、例えば上述のロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いることができる。ロール・ツー・ロールスパッタリング装置の構成については既述のため、ここでは説明を省略する。
【0106】
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて黒化層を成膜する場合、例えばニッケル及び銅を含有する合金のターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに装着する。そして、黒化層を成膜する基材を巻出ロール52にセットした装置内を真空ポンプ57a、57bにより真空排気する。
【0107】
その後、酸素ガス、水蒸気とを含むスパッタリングガスを気体供給手段58により筐体51内に導入する。この際、スパッタリングガスの流量と、真空ポンプ57bと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブ59の開度とを調整して装置内を例えば0.13Pa以上13Pa以下に保持し、成膜を実施することが好ましい。
【0108】
なお、筐体51内には、黒化層に供給する酸素及び水蒸気の量を調整し易いように、不活性ガスと、酸素ガスと、水蒸気とを同時に供給し、それぞれの分圧を調整することが好ましい。従って、スパッタリングガスは不活性ガスと、酸素ガスと、水蒸気とを含有することが好ましい。不活性ガスとしては特に限定されるものではなく、アルゴンやヘリウムを好ましく用いることができる。また、水蒸気は不活性ガスとの混合気体として供給することができる。
【0109】
スパッタリングガス中の酸素ガス及び水蒸気の比率は特に限定されるものではなく、成膜する黒化層の組成等に応じて選択することができる。
【0110】
例えばニッケル水酸化物は、成膜した黒化層をX線光電子分光法(XPS)により測定した際に、ニッケル水酸化物について、ピークとして識別できる程度に黒化層に含まれていることが好ましい。
【0111】
また特に、成膜した黒化層についてX線光電子分光法(XPS)により測定した際に、Ni 2P3/2スペクトルのピーク強度の比が、ニッケル単体のピーク強度を100とした場合に、ニッケル酸化物のピーク強度が70以上80以下、ニッケル水酸化物のピーク強度が65以上であることが好ましい。このため、成膜した黒化層についてのX線光電子分光法の測定結果が上記結果となるように各ガスの供給量を調整をすることが好ましい。
【0112】
また、黒化層を成膜する際、導電性基板の幅方向全体に渡って、黒化層中のニッケル単体に対するニッケル酸化物、およびニッケル水酸化物が例えば上述の所望の範囲となるように、ガスの供給配管の配置を調整しておくことが好ましい。
【0113】
この状態で、巻出ロール52から基材を例えば毎分0.5m〜10mの速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給してスパッタリング放電を行う。これにより基材上に所望の黒化層を連続成膜することができる。
【0114】
そして、ここで説明した導電性基板の製造方法により得られる導電性基板は、メッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。この場合、上述の工程に加えて、金属層と、黒化層と、をエッチングすることにより、配線を形成するエッチング工程をさらに有することができる。
【0115】
係るエッチング工程は例えば、まず、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストを、導電性基板の最表面に形成する。図1Aに示した導電性基板の場合、導電性基板に配置した黒化層13の露出した面A上にレジストを形成することができる。なお、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストの形成方法は特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィー法等、従来の技術と同様の方法により形成することができる。
【0116】
次いで、レジスト上面からエッチング液を供給することにより、金属層12、黒化層13のエッチングを実施することができる。
【0117】
なお、図1Bのように透明基材11の両面に金属層、黒化層を配置した場合には、導電性基板の最表面A及びBにそれぞれ所定の形状の開口部を有するレジストを形成し、透明基材11の両面に形成した金属層12A、12B、黒化層13A、13Bを同時にエッチングしてもよい。
【0118】
また、透明基材11の両側に形成された金属層12A、12B及び黒化層13A、13Bについて、一方の側ずつエッチング処理を行うこともできる。すなわち、例えば、金属層12A及び黒化層13Aのエッチングを行った後に、金属層12B及び黒化層13Bのエッチングを行うこともできる。
【0119】
本実施形態の導電性基板に形成する黒化層は金属層と同様のエッチング液への反応性を示すため、エッチング工程において用いるエッチング液は特に限定されるものではなく、一般的に金属層のエッチングに用いられるエッチング液を好ましく用いることができる。エッチング液としては例えば、塩化第二鉄と塩酸との混合水溶液をより好ましく用いることができる。エッチング液中の塩化第二鉄と塩酸との含有量は特に限定されるものではないが、例えば、塩化第二鉄を5重量%以上50重量%以下の割合で含むことが好ましく、10重量%以上30重量%以下の割合で含むことがより好ましい。また、エッチング液は例えば、塩酸を1重量%以上50重量%以下の割合で含むことが好ましく、1重量%以上20重量%以下の割合で含むことがより好ましい。なお、残部については水とすることができる。
【0120】
エッチング液は室温で用いることもできるが、反応性を高めるため加温していることが好ましく、例えば40℃以上50℃以下に加熱して用いても良い。
【0121】
上述したエッチング工程により得られるメッシュ状の配線の具体的な形態については、既述のとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0122】
また、既述のように、図1A図2Aに示した透明基材11の一方の面側に金属層、黒化層を有する導電性基板を2枚貼り合せてメッシュ状の配線を備えた導電性基板とする場合には、導電性基板を貼り合せる工程をさらに設けることができる。この際、2枚の導電性基板を貼り合せる方法は特に限定されるものではなく、例えば接着剤等を用いて接着することができる。
【0123】
以上に本実施形態の導電性基板及び導電性基板の製造方法について説明した。係る導電性基板によれば、黒化層についてもエッチング液に対する反応性が優れており、金属層と黒化層とがエッチング液に対してほぼ同じ反応性を示すことができる。このため、金属層と黒化層とを同時にエッチング処理した場合に、金属層及び黒化層を所望の形状にパターニングし、寸法ばらつきの発生を抑制できる。従って、金属層及び黒化層を同時にエッチングすることができる。
【0124】
また、黒化層は金属層による光の反射を抑制することができ、例えばタッチパネル用の導電性基板とした場合に、配線表面での光の反射を抑制し、ディスプレイの視認性を高めることができる。
【実施例】
【0125】
以下に具体的な実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
実施例、比較例において作製した試料について以下の方法により評価を行った。
(1)X線光電子分光法(XPS)による測定
測定は、X線光電子分光装置(PHI社製、形式:QuantaSXM)により行った。なお、X線源には単色化Al(1486.6eV)を使用した。
【0126】
後述のように、以下の各実施例、比較例では、図2Aの構造を有する導電性基板を作製した。そこで、図2Aにおける第2の黒化層132の外部に露出した面132aをArイオンエッチングし、最表面から10nm内部のNi 2P3/2スペクトルを測定した。得られたスペクトルからニッケル単体、すなわち金属ニッケルのピーク高さ(強度)を100としたときの、ニッケル酸化物およびニッケル水酸化物のピーク高さ(強度)をそれぞれ算出した。
(2)反射率測定
測定は、分光光度計(島津製作所製、形式:UV−2600)により、入射角5°の正反射法にて、黒化層の波長400nm以上700nm以下の範囲の光の反射率の平均を求めた。測定に当たっては上記波長域の光を波長1nm間隔で変化させて照射し、各波長での反射率の測定を行い、その平均値を黒化層の波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均としている。
【0127】
以下の各実施例、比較例では、図2Aの構造を有する導電性基板を作製している。このため、図2Aにおける第2の黒化層132の外部に露出した面132aについて、波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均を測定、算出した。なお、各実施例、比較例において、測定、算出した、黒化層の波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均は、表1中において反射率として示している。
(3)エッチング試験
エッチング試験では塩化第二鉄を10重量%、塩酸を1重量%、残部は水からなるエッチング液を用いた。
【0128】
各実施例、比較例で作製した導電性基板を、レジスト等は形成せずに、温度25℃のエッチング液中に60sec浸漬した後、エッチング液から取り出した。そしてその後、水洗により導電性基板に付着したエッチング液を十分に洗い流した。
【0129】
エッチング液に浸漬、水洗した後の導電性基板を目視により観察し、透明基材上に残った金属層および黒化層の有無を観察した。
【0130】
金属層および黒化層が残存しない場合、すなわち残渣が確認できない場合には、同時にエッチングできる金属層、および黒化層を備えた導電性基板であることを示している。これに対して金属層と、黒化層との少なくとも一方が残存している場合、すなわち残渣が確認できた場合には、成膜した金属層および黒化層を同時にエッチングできないことを示している。
(試料の作製条件)
実施例、比較例として、以下に説明する条件で導電性基板を作製し、上述の評価方法により評価を行った。
[実施例1]
図2Aに示した構造を有する導電性基板を作製した。
(黒化層形成工程)
まず、幅500mm、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製の透明基材を図5に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置50の巻出ロール52にセットした。なお、透明基材として用いたポリエチレンテレフタレート樹脂製の透明基材について、全光線透過率をJIS K 7361−1に規定された方法により評価を行ったところ97%であった。
【0131】
また、スパッタリングカソード54a〜54dに、ニッケル65wt%と、銅35wt%とを含有するニッケル−銅合金のターゲットをセットした。
【0132】
次にロール・ツー・ロールスパッタリング装置50のヒーター56を100℃に加熱し、透明基材を加熱し、基材中に含まれる水分を除去した。
【0133】
続いて筐体51内を1×10−4Paまで排気した後、筐体51内に、アルゴンガス、酸素ガス、水蒸気を導入した。なお、水蒸気は室温において飽和水分を含有するアルゴンガスとして導入している。アルゴンガス、酸素ガス、水分を含有するアルゴンガス(アルゴン・水分混合ガス)は表1に示す供給量となるように筐体51内に供給し、筐体51内の圧力が2Paになるように調整した。
【0134】
そして、透明基材を巻出ロール52から毎分2mの速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給し、スパッタリング放電を行い、透明基材上に黒化層を連続成膜した。係る操作により透明基材上に第1の黒化層131を厚さが50nmとなるように形成した。
【0135】
なお、第1の黒化層を成膜する際、上述の様にニッケル−銅合金のターゲットを用い、筐体51内に、アルゴンガス、酸素ガス、水蒸気を導入してスパッタリングを行った。このため、第1の黒化層は銅の単体および/または化合物と、ニッケルの単体および化合物とを含有することとなる。
(金属層形成工程)
続いて、第1の黒化層を成膜した透明基材を巻出ロール52にセットし、スパッタリングカソード54a〜54dにセットしたターゲットを銅のターゲットに変更した。そして、ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50の筐体51内を1×10−4Paまで排気した後、筐体51内にアルゴンガスのみを導入し、圧力が0.3Paになるように調整した点以外は第1の黒化層の場合と同様にして第1の黒化層の上面に金属層として銅層を厚さが200nmとなるように形成した。
(黒化層形成工程)
続いて、第1の黒化層、及び金属層を成膜した透明基材を巻出ロール52にセットし、第1の黒化層131と同条件で金属層12の上面に第2の黒化層132を形成した。
【0136】
作製した導電性基板の試料について、上述のX線光電子分光法(XPS)による測定、反射率測定、およびエッチング試験の評価を実施した。結果を表1に示す。
[実施例2〜実施例4]
第1の黒化層、および第2の黒化層を形成する際に、筐体51内に供給するアルゴンガス、酸素ガス、および水分を含有するアルゴンガス(アルゴン・水分混合ガス)の流量を表1に示した値とした点以外は実施例1と同様にして導電性基板を作製し、評価を行った。
【0137】
結果を表1に示す。
[比較例1]
第1の黒化層、および第2の黒化層を形成する際に、筐体51内に供給するアルゴンガス、酸素ガスの流量を表1に示した値とし、水分を含有するアルゴンガス(アルゴン・水分混合ガス)を供給しなかった点以外は実施例1と同様にして導電性基板を作製した。また、作製した導電性基板について上述の評価を行った。
【0138】
結果を表1に示す。
【0139】
【表1】

表1に示した結果によると、実施例1〜実施例4の試料において、黒化層をX線光電子分光法により評価を行ったところ、ニッケル単体、およびニッケル酸化物、ニッケル水酸化物のピークが確認され、各成分を含有することが確認できた。
【0140】
これに対して、比較例1については、ニッケル水酸化物の明確なピークは確認されなかった。なお、比較例1についてはニッケル単体のピーク強度を100とした際のニッケル水酸化物の強度が58となっているが、これはニッケル水酸化物のピーク位置におけるXPS測定データの強度を示しており、ベースラインの強度となる。
【0141】
なお、実施例1〜実施例4については、表1に示したようにニッケル単体を100とした際の酸化ニッケルおよび水酸化ニッケルの比率はそれぞれ、酸化ニッケル70以上80以下であり、水酸化ニッケルは65以上であることを確認できた。
【0142】
そして実施例1〜実施例4で作製した導電性基板についてエッチング試験を実施したところ、いずれの試料についてもエッチング後のPETフィルム上には黒化層および金属層の残渣は見られなかった。従って、黒化層も良好なエッチング性を示し、黒化層と金属層とを同時にエッチングできることを確認できた。
【0143】
また、実施例1〜実施例4は、黒化層の波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均が40.0%以下となっており、黒化層は金属層表面での光の反射を十分に抑制できていることを確認できた。
【0144】
一方で、比較例1の導電性基板においては、エッチング試験を実施した際にPETフィルム上には黒化層の残渣が認められた。すなわち、比較例1の導電性基板で形成した黒化層はエッチング液に対する反応性が低く、黒化層と金属層とを同時にエッチングできないことが確認できた。
【0145】
以上の結果から、黒化層が銅の単体および/または化合物と、ニッケルの単体および化合物とを含有し、ニッケルの化合物がニッケル酸化物、及びニッケル水酸化物を含む場合、黒化層はエッチング液に対して良好な反応性を示すことを確認できた。そして、黒化層が上述の成分を含有する場合に、黒化層と金属層とを同時にエッチングできることを確認できた。
【0146】
以上に導電性基板を、実施形態および実施例等で説明したが、本発明は上記実施形態および実施例等に限定されない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0147】
本出願は、2015年4月28日に日本国特許庁に出願された特願2015−091714号に基づく優先権を主張するものであり、特願2015−091714号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0148】
10A、10B、20A、20B、30 導電性基板
11 透明基材
12、12A、12B 金属層
13、13A、13B、131、132、131A、131B、132A、132B、32A、32B 黒化層
31A、31B 配線
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5