特許第6555563号(P6555563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6555563-接着テープ、物品及び物品の製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555563
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】接着テープ、物品及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/08 20060101AFI20190729BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20190729BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20190729BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20190729BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190729BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20190729BHJP
   B32B 7/10 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   C09J5/08
   C09J7/38
   C09J7/35
   C09J201/00
   C09J11/06
   C09J11/08
   B32B7/10
【請求項の数】7
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-559031(P2018-559031)
(86)(22)【出願日】2017年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2017044867
(87)【国際公開番号】WO2018123615
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-251162(P2016-251162)
(32)【優先日】2016年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-87168(P2017-87168)
(32)【優先日】2017年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 久美子
(72)【発明者】
【氏名】秋山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】森野 彰規
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/111507(WO,A1)
【文献】 特開平05−311134(JP,A)
【文献】 特開昭58−204075(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/138881(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)と少なくともその一方の面側に粘着剤層(B)を有し、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さ方向の膨張率〔加熱後の熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)の厚さ/加熱前の熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さ〕×100が150%以上であり、前記接着剤層(B)の厚さ方向の膨張率〔加熱後の接着剤層(B1)の厚さ/加熱前の接着剤層(B)の厚さ〕×100が120%以下である接着テープの前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を、被着体(C1)を構成する部位(c1−1)貼付する工程[1]、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を50℃〜150℃の温度で加熱する工程[2]、前記加熱によって前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)が膨張し、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)が形成される工程[3]、及び、前記接着テープを構成する接着剤層(B)が、前記被着体(C1)を構成する他の部位(c1−2)または他の被着体(C2)に貼付される工程[4]をこの順で有することを特徴とする、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙が請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着テープの膨張物を介して接着または充填された物品の製造方法。
【請求項2】
前記工程[1]が、0.1N/cm以上の力で圧着させる工程を含む請求項に記載の物品の製造方法。
【請求項3】
前記工程[4]が、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を膨張させることによって生じる力によって、接着剤層(B)と、前記被着体(C1)を構成する他の部位(c1−2)または他の被着体(C2)とが圧着される工程を含む請求項8または9に記載の物品の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)が0.5N/20mm以上の接着力を有するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の物品の製造方法
【請求項5】
前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)が、熱可塑性樹脂と、膨張開始温度が50℃〜150℃の範囲の熱膨張カプセルとを含有する層である請求項1〜4のいずれか1項に記載の物品の製造方法
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂の70℃〜120℃の範囲における1Hzでの動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paの範囲である請求項5に記載の物品の製造方法
【請求項7】
熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)と少なくともその一方の面側に粘着剤層(B)を有し、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さ方向の膨張率〔加熱後の熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)の厚さ/加熱前の熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さ〕×100が150%以上であり、前記接着剤層(B)の厚さ方向の膨張率〔加熱後の接着剤層(B1)の厚さ/加熱前の接着剤層(B)の厚さ〕×100が120%以下である接着テープの前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を、被着体(C1)を構成する部位(c1−1)貼付する工程[1]、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を加熱する工程[2]、前記加熱によって前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)が膨張し、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)が形成される工程[3]、及び、前記接着テープを構成する接着剤層(B)が、前記被着体(C1)を構成する他の部位(c1−2)または他の被着体(C2)に貼付される工程[4]をこの順で有することを特徴とする、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙の充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温で、かつ短時間の加熱等の刺激を与えることによって、その厚さ方向に膨張しうる構成を備えた接着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
接着テープは、一般に、一方の被着体を他方の被着体の平面部分や曲面部分等へ固定等する際に好適に使用することができ、例えば自動車用部材や電気機器等をはじめとする様々な製品の製造場面で広く使用されている。
【0003】
一方、接着テープの使用範囲が、ますます拡大することが期待されるなかで、前記接着テープには、例えば一方の被着体が有する空隙内に、他方の被着体を固定する場面で好適に使用できることが求められている。具体的には、ハイブリッド自動車等に搭載されるモーターとしては、一般に、コア部(ローターコア)の所定の位置(空隙)に磁石が埋め込まれた構成を有するものが知られており、前記コア部が有する空隙内に前記磁石を固定する際に、前記接着テープを使用することが検討されている。
【0004】
前記用途で使用可能な接着テープとしては、例えば第1面および前記第1面の反対側に第2面を有し、連通口を有する基材と、前記基材の第1面に形成された、熱硬化性熱膨張性エポキシ接着剤を含む第1接着層とを有し、前記熱硬化性熱膨張性エポキシ接着剤が、加熱時に前記基材の前記連通口を通過して前記基材の第2面上に第2接着層を形成する熱硬化性熱膨張性接着シートが知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、前記熱硬化性接着テープは、加熱前の状態では十分な接着力を有さないため、加熱前において、熱硬化性接着テープを被着体の所定の位置に仮貼付(仮接着)することが困難な場合や、仮貼付できた場合であっても、前記熱硬化性接着テープの被着体からのズレを引き起こす場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−023559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、加熱前において優れた接着力を有し、加熱によって膨張可能で、かつ、加熱膨張後にも優れた接着力を発現可能な接着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙を充填する用途で使用する接着テープであって、前記接着テープが熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を有するものであり、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さ方向の膨張率〔加熱後の熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)の厚さ/加熱前の熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さ〕×100が150%以上であることを特徴とする接着テープによって、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の接着テープは、優れた接着力を有することから、加熱前であっても被着体の正確な位置に貼付することが可能であり、仮貼付後に接着テープの貼付位置のズレを引き起こすことがないから、被着体が有する空隙や、2以上の被着体の間の空隙を十分に充填または接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】せん断接着力の測定方法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の接着テープは、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙を充填する用途で使用する接着テープであって、前記接着テープが熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を有するものであり、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さ方向の膨張率〔加熱後の熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)の厚さ/加熱前の熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さ〕×100が150%以上であることを特徴とする接着テープである。
【0012】
本発明の接着テープは、少なくとも前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を有するものを使用する。
前記接着テープとしては、単層または2層以上の前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)によって構成される接着テープ、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)とそれ以外の膨張性接着剤層(例えば光膨張性の接着剤層や熱硬化性の膨張性接着剤層)とによって構成される接着テープ、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)と膨張しにくい接着剤層(例えば後述する接着剤層(B)等)とによって構成される接着テープ等が挙げられる。
なかでも、前記接着テープとしては、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)とそれ以外の接着剤層とによって構成される接着テープを使用することが、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙を、前記接着テープの膨張物によって充填しかつ強固に接着するうえで好ましい。
【0013】
前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)とそれ以外の接着剤層とによって構成される接着テープとしては、具体的には、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の少なくとも一方の面に、後述する接着剤層(B)を有するものを使用することが好ましい。前記接着テープとしては、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を前記膨張前に予め被着体に貼付することが、前記膨張後の前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)と前記被着体との優れた密着性を維持するうえで好ましい。
【0014】
(熱可塑性熱膨張性接着剤層(A))
前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)は、例えば加熱によって膨張しうる層である。前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)としては、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さ方向の膨張率〔加熱後の前記放置後の熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さ/前記放置前の熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さ〕×100が150%以上となるものを使用する。前記膨張率は、200%以上であることが好ましく、250%〜1000%であることがより好ましい。かかる接着テープであれば、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙の高さ(厚さ)が大きい場合であっても、前記接着テープを膨張させることで、前記空隙内で他方の被着体を好適に固定したり、前記空隙内を前記接着テープで充填したりすることができる。また、前記接着テープであれば、被着体の表面が粗面の場合であっても、前記粗面に他方の被着体を好適に固定することができる。
なお、前記膨張率は、前記接着テープを50℃〜150℃の温度下で30分間放置した場合において、前記放置前(膨張前)の熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さに対する、前記放置によって熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)が膨張して形成された熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)の厚さの割合を指すが、60℃〜145℃の温度下が好ましく、70℃〜140℃の温度下がより好ましい。
【0015】
前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)としては、加熱前であっても被着体に仮貼付可能なレベルの接着性を付与するうえで、180度方向に300mm/分の速度で引き剥がした際の接着力が0.5N/20mm以上であるものを使用することが好ましく、1N/20mm以上であるものを使用することがより好ましく、2N/20mm以上であるものを使用することがより好ましく、3N/20mm以上であるものを使用することが被着体からの前記接着テープの剥がれや位置ズレを防止するうえでさらに好ましい。
【0016】
膨張前の前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さは、10μm〜250μmの範囲であることが好ましく、20μm〜150μmの範囲であることがより好ましく、30μm〜100μmの範囲であることが、加熱前であっても被着体に仮貼付可能なレベルの接着性を付与でき、被着体からの前記接着テープの剥がれや位置ズレを防止するうえで好ましい。
【0017】
一方、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)が膨張することによって形成された熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)の厚さは、20μm〜2500μmの範囲であることが好ましく、40μm〜1500μmの範囲であることが、より一層優れた接着力を得るうえで好ましい。また、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)は、多孔構造を有するものであることが好ましい。
【0018】
また、前記接着テープとしては、前記接着テープの総厚さに対して、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さが10%以上であるものを使用することが好ましく、30%以上であるものを使用することが、前記空隙内に他方の被着体を好適に固定したり、前記空隙内を前記接着テープで充填したりしやすいためより好ましい。
前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)としては、前記したとおり予め被着体に接着できる程度の接着力を有し、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)が膨張することによって生じる加圧力で被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙を充填及び接着できるものを使用する。
【0019】
前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)としては、後述する接着剤組成物(a)を、例えば離型ライナーや粘着テープの支持体に塗工し乾燥等することによって製造することができる。
【0020】
前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)は、熱可塑性樹脂を含有する接着剤組成物(a)を用いて形成することができる。前記熱可塑性樹脂の含有量は接着剤組成物(a)の全固形成分に対して50質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
【0021】
前記熱可塑性樹脂としては、加熱によって容易に膨張可能なものを使用することができる。
前記熱可塑性樹脂としては、1Hz及び23℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G23が1.0×10〜5.0×10Paの範囲であるものを使用することが好ましく、かつ、1Hz及び70℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G70が1.0×10〜1.0×10Paの範囲であるものを使用することが好ましく、かつ、1Hz及び120℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G120が1.0×10〜1.0×10Paの範囲であるものを使用することが、加熱前であっても被着体から前記接着テープの剥がれや位置ズレを防止でき、かつ、前記空隙を十分に充填可能なレベルにまで膨張可能な接着テープを得るうえで特に好ましい。
【0022】
前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を膨張させる前の状態の接着テープは、加熱前であっても被着体から前記接着テープの剥がれや位置ズレを防止でき、かつ、膨張後に常温環境下で収縮等を抑制するうえで1Hz及び23℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G23が好ましくは1.0×10〜5.0×10Pa、より好ましくは5.0×10〜1.0×10Pa、特に好ましくは5.0×10〜5.0×10Paである熱可塑性樹脂を含有するものを使用することができる。
【0023】
また、前記熱可塑性樹脂としては、上記範囲内の1Hz及び23℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G23を有するとともに、70℃〜120℃の範囲における1Hzでの動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paの範囲であるものを使用することが、粘着テープの平面方向(流れ方向や幅方向)への膨張を抑制し、その厚さ方向に膨張させるうえで好ましい。
前記熱可塑性樹脂としては、1Hz及び70℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G70が好ましくは1.0×10〜1.0×10Pa、より好ましくは5.0×10〜5.0×10Pa、特に好ましくは5.0×10〜1.0×10Paのものを使用することができる。
また、前記熱可塑性樹脂としては、1Hz及び70℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G70が好ましくは1.0×10〜1.0×10Pa、より好ましくは5.0×10〜5.0×10Pa、特に好ましくは5.0×10〜1.0×10Paのものを使用することができる。
【0024】
また、前記熱可塑性樹脂の1Hz及び120℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G120は、1.0×10〜1.0×10Paであることが好ましく、5.0×10〜5.0×10Paであることがより好ましく、5.0×10〜2.0×10Paであることがさらに好ましい。
【0025】
前記熱可塑性樹脂の前記貯蔵弾性率G120は、前記貯蔵弾性率G70よりも小さいことが好ましく、前記貯蔵弾性率G70は、前記貯蔵弾性率G23よりも小さいことが好ましい。
【0026】
なお、前記貯蔵弾性率G23、G70及びG120の測定は、市販の粘弾性試験機を用い、後述する実施例に記載の方法で測定した。前記測定の試験片としては、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)に含有される熱可塑性樹脂(膨張剤を含まない)を加熱し離型ライナー上に塗布し冷却することによって得られた厚さ2mmの試験片を使用する。
【0027】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば膨張前に優れた接着力を有し、膨張剤の膨張開始温度で軟化し、膨張剤が膨張し易く、膨張後であっても優れた接着力を発現できるものを使用することが好ましい。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等のウレタン系樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等の塩化ビニル系樹脂;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリトリメチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリブチレンナフタレ−ト等のポリエステル系樹脂;ナイロン(登録商標)等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン(PS)、イミド変性ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、イミド変性ABS樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合(SAN)樹脂、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン(AES)樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、シクロオレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂;ニトロセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂;シリコーン系樹脂;フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、これらのなかでも、特にスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマーまたはアクリル系樹脂等を使用することが好ましく、スチレン系熱可塑性エラストマーまたはアクリル系樹脂を使用することが特に好ましい。
【0028】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(SEB)等のスチレン系AB型ジブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS))、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS))、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)等のスチレン系ABA型トリブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン(SBSB)等のスチレン系ABAB型テトラブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン−スチレン(SBSBS)等のスチレン系ABABA型ペンタブロック共重合体;これら以上のAB繰り返し単位を有するスチレン系マルチブロック共重合体;スチレン−ブタジエンラバー(SBR)等のスチレン系ランダム共重合体のエチレン性二重結合を水素添加した水素添加物;等が挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーは市販品を用いてもよい。
【0029】
前記アクリル系樹脂としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを含む単量体を重合して得られるものを使用することができる。
前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、具体的には、ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を使用することが好ましく、ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートを単独または組み合わせ使用することがより好ましい。
また、前記単量体としては、前記したもののほかに、アクリルニトリル、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、アクリルアミド、イタコン酸、スチレン、酢酸ビニル等を使用することができる。
【0030】
前記接着剤組成物(a)は熱硬化性樹脂を含有してもよい。熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を使用することができる。なかでも、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ヒンダトイン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン/フェノールエポキシ樹脂、脂環式アミンエポキシ樹脂、脂肪族アミンエポキシ樹脂、及び、CTBN変性(カルボキシターミネーティッドブタジエンニトリル変性)やハロゲン変性されたエポキシ樹脂等を、単独または2以上組み合わせ使用することができる。
前記熱硬化性樹脂の含有量は接着剤組成物(a)の全固形成分に対して50質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0031】
前記接着剤組成物(a)は膨張剤を含有していてもよい。膨張剤としては、前記膨張後の熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)として多孔構造を形成できるものを使用することが好ましく、例えば炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素アンモニウム、アジド等の無機化合物、トリクロロモノフルオロメタン等のフッ化アルカン、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン化合物、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾール等のトリアゾール化合物、N,N’−ジニトロソテレフタルアミド等のN−ニトロソ化合物を使用することができる。
【0032】
また、前記膨張剤としては、熱で膨張する熱膨張剤が好ましく、例えば炭化水素系溶剤をマイクロカプセル化した熱膨張性カプセル等の膨張性カプセルを使用することができる。前記熱膨張剤としては、前記熱可塑性樹脂の軟化点前後の温度で気体を発生し膨張し得るものを使用することが好ましい。前記熱膨張剤の膨張開始温度としては、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることが、保管時の安定性に優れ、かつ、耐熱性の低い被着体を損傷させずに前記接着テープを十分に膨張させられ、膨張後に優れた接着力を得られるため好ましい。
前記膨張剤としては、前記したなかでも炭化水素系溶剤をマイクロカプセル化した熱膨張性カプセルを使用することが、例えば熱等の影響による熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の劣化等を防止するうえでより好ましい。前記した膨張剤としては単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
前記熱膨張性カプセルの市販品としては、例えばエクスパンセル(日本フィライト株式会社製)、マツモトマイクロスフェアー(松本油脂製薬株式会社製)、マイクロスフェアー(株式会社クレハ製)等が挙げられる。
前記熱膨張性カプセルとしては、松本油脂製薬株式会社製 マツモトマイクロスフェアーF−30、F−36、F−36D、F−36LV、F−48、F−48D、F−50、FN−80GS、F−65、日本フィライト株式会社製 エクスパンセル053−40、007−40、031−40等を用いることが、熱可塑性樹脂の軟化する温度前後で膨張するため、粘着テープの平面方向(流れ方向や幅方向)への膨張を抑制し、その厚さ方向へより効果的に膨張できるため好ましい。
前記熱膨張性カプセルとしては、膨張前の前記カプセルの体積に対し、膨張後の体積(体積膨張率)8倍〜60倍であるものを使用することが好ましい。
【0034】
前記膨張剤の使用量、好ましくは前記熱膨張性カプセルの使用量は、前記層(A)の全成分の固形分100質量部に対して、0.3質量部〜30質量部の範囲であることが好ましく、1質量部〜20質量部の範囲であることがより好ましく、3〜17質量部の範囲であることが更に好ましく、5質量部〜15質量部の範囲であることが被着体が有する空隙を充填等するのに十分に膨張することができ、かつより一層優れた接着力を得るためさらに好ましい。
【0035】
前記接着剤組成物(a)としては、前記したもののほかに必要に応じて、粘着付与剤、架橋剤、硬化剤、硬化促進剤等を含有するものを使用することができる。
【0036】
(接着剤層(B))
また、本発明の接着テープとしては、前記したとおり、接着剤層(B)を有するものを使用することが好ましい。
前記接着テープを構成する接着剤層(B)としては、粘着性または接着性を有する層を形成可能な接着剤組成物(b)を用いて形成することができる。
【0037】
前記接着剤層(B)としては、前記接着剤層(B)の厚さ方向の膨張率〔加熱後の前記放置後の接着剤層(B)の厚さ/前記放置前の接着剤層(B)の厚さ〕×100が120%以下であるものを使用することができる。前記接着剤層(B)の膨張率は、115%以下であることが好ましく、110%以下であることがより好ましい。かかる接着テープであれば、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)が膨張した後であっても、被着体に対する優れた接着力を維持することができる。なお、前記接着剤層(B)の膨張率は、前記接着テープを100℃の環境下に30分間放置した場合において、前記放置前の前記接着剤層(B)の厚さに対する、前記放置後の接着剤層の厚さの割合を指す。
【0038】
前記接着剤層(B)の厚さは、1μm〜150μmの範囲であることが好ましく、5μm〜100μmの範囲であることが、前記接着テープを構成する熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)が膨張し、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙を充填し、前記接着剤層(B)が被着体(C2)に貼付された際に優れた接着力を発現できるためより好ましい。
【0039】
前記接着剤層(B)は、前記したとおり膨張率の低いことが好ましいため、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を形成する際に使用可能なものとして例示した膨張剤を実質的に含有しないものであることが好ましい。
前記接着剤(B)としては、例えば熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂を含有し、前記膨張剤の含有量が少ないまたは含有しない接着剤組成物(b)を好適に使用することができる。
前記接着剤組成物(b)に使用可能な樹脂としては、従来知られる樹脂を選択し使用することができる。なかでも、前記樹脂としては、本発明の接着テープの生産効率を向上させるうえで、例えば前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の形成に使用可能な接着剤組成物(a)含有される熱可塑性樹脂として例示したものと、同様のものを使用することが好ましい。
【0040】
前記接着剤組成物(b)としては、例えば前記熱可塑性樹脂等の樹脂と、必要に応じて粘着付与樹脂、架橋剤、その他の添加剤等を含有するものを使用することができる。
【0041】
前記粘着付与樹脂としては、接着剤層(B)の強接着性を調整することを目的として、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、安定化ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、石油樹脂系粘着付与樹脂等を使用することができる。
【0042】
前記架橋剤としては、接着剤層(B)の凝集力を向上させることを目的として、公知のイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、多価金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、ケト・ヒドラジド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、シラン系架橋剤、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン系架橋剤等を使用することができる。
【0043】
前記添加剤としては、必要に応じて本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、pHを調整するための塩基(アンモニア水など)や酸、発泡剤、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、ガラスやプラスチック製の繊維状、バルーン状、ビーズ状、金属粉末状の充填剤、顔料、染料等の着色剤、pH調整剤、皮膜形成補助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の公知のものを使用することができる。
【0044】
前記接着剤組成物(b)としては、良好な塗工作業性等を維持するうえで溶媒を含有するものを使用することができる。前記溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン等を使用することができる。また、前記接着剤組成物(b)として水系接着剤組成物を使用する場合には、前記溶媒として水、または、水を主体とする水性溶媒を使用できる。
【0045】
本発明の接着テープは、例えば前記接着剤組成物(a)を離型ライナーに塗布し乾燥することによって熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を形成する工程[I]を経ることによって製造することができる。
本発明の接着テープのうち、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)と前記接着剤層(B)とによって構成される接着テープは、前記工程[I]と、前記工程[I]とは別に、前記接着剤組成物(b)を離型ライナーに塗布し乾燥等することによって接着剤層(B)を形成する工程[II]と、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の片面に前記接着剤層(B)を転写し、それらを圧着等する工程[III]とを経ることによって製造することができる。
なお、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)は、前記接着テープを製造する過程で、実質的に膨張しないことが好ましい。
【0046】
また、本発明の接着テープとしては、必要に応じ、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)と接着剤層(B)との間に不織布層または樹脂フィルム層または金属からなる層(Z)を有するものを使用することができる。かかる接着テープは、良好な剛性を有するため、貼付作業性に優れる。
【0047】
前記層(Z)としては、例えば不織布であれば、材質としては好ましくはパルプ、レーヨン、マニラ麻、アクリロニトリル、ナイロン、ポリエステル等からなり、不織布の引張り強度を満足するために、必要に応じて抄紙工程でポリアミドを添加し、乾燥後にコーティングする1工程含浸処理や、ビスコースや、熱可塑性樹脂をバインダーとした2工程含浸処理等をしてもよい。樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルム等を用いて形成される樹脂フィルム層、金属からなる層としては、アルミニウム、銅等の金属層が挙げられる。
【0048】
前記層(Z)としては、1μm〜200μmの厚さを有するものを使用することが好ましい。
【0049】
前記層(Z)を有する接着テープは、例えば前記接着剤組成物(a)を離型ライナーに塗布し乾燥することによって熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を形成する工程[I]、前記工程[I]とは別に、前記接着剤組成物(b)を離型ライナーに塗布し乾燥等することによって接着剤層(B)を形成する工程[II]、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の片面に、前記層(Z)を積層する工程[IV]、及び、前記層(Z)からなる面に、前記接着剤層(B)を転写しそれらを圧着する工程[V]を経ることによって製造することができる。
【0050】
上記方法等で得られた本発明の接着テープは、加熱により膨張でき、かつ、優れた接着力を有するため、もっぱら被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙が、本発明の接着テープの膨張物によって充填または接着された物品の製造場面で好適に使用することができる。
前記物品の製造方法としては、例えば被着体(C1)を構成する部位(c1−1)に、前記接着テープの熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)または接着剤層(B)を貼付する工程[1]、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を加熱する工程[2]、前記加熱によって前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)が膨張し、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)が形成される工程[3]、及び、前記接着テープを構成する熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)または接着剤層(B)が、前記被着体(C1)を構成する他の部位(c1−2)または他の被着体(C2)に貼付される工程[4]を有する物品の製造方法が挙げられる。
【0051】
前記工程[1]では、被着体(C1)を構成する部位(c1−1)に接着テープの熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)または接着剤層(B)を、0.1N/cm以上の力で圧着させることが、前記接着テープの被着体(C1)を構成する部位(c1−1)への接着力が高まり、加熱前であっても接着テープと被着体(C1)とのズレを抑制できるため好ましい。
【0052】
前記被着体(C1)を構成する部位(c1−1)に前記接着テープの前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)または前記接着剤層(B)を圧着させる際には、必要に応じてプレス機、ローラー等の機器を使用してもよく、指でそれらを押圧してもよい。
【0053】
前記工程[2]における加熱温度は、例えば前記膨張剤が膨張する温度(膨張開始温度)に対応した温度であることが好ましく、具体的には、50〜150℃であることが好ましく、60〜145℃がより好ましく、70〜140℃であることが保管時の安定性に優れ、かつ、耐熱性の低い被着体を損傷させずに前記接着テープを十分に膨張させられ、膨張後に優れた接着力を得られるため好ましい。
前記加熱方法としては、例えば物品をオーブンや加熱炉等の加温装置に投入し、物品全体を加熱する方法や、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)または前記接着テープまたは前記被着体に熱源を接触または接近させることによって、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を加熱する方法が挙げられる。
前記熱源としては、例えばハロゲンランプ、レーザー照射装置、電磁誘導加熱装置、ホットスタンプ、ホットプレート、半田コテ等を使用することができる。加熱方法は、物品の大きさによって選択することができる。
本発明の接着テープは、前記加熱後、その厚さ方向に膨張することが好ましく、その流れ方向または幅方向に実質的に膨張しないことが好ましい。
【0054】
前記工程[2]によって前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)は膨張し熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)を形成する(工程[3])。熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)は、前記膨張によって、おもに接着テープの厚さ方向に膨張する。
【0055】
前記工程[4]では、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)を膨張させることによって生じる力によって、前記接着剤層(A1)または前記接着剤層(B)と、前記被着体(C1)を構成する他の部位(c1−2)または他の被着体(C2)とが圧着される。そのため、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙を充填する際に、例えばプレス機等を用いて圧力を加える必要がない。また、前記膨張によって生じる力で、接着テープと被着体とが密着されるため、被着体として表面に凹凸を有するもの(粗面を有するもの)を使用した場合であっても、接着テープと被着体との間に隙間が形成されにくい。
前記被着体(C1)及び(C2)としては、例えばガラス、アルミニウム等の金属、アクリル、ポリカーボネート等の樹脂からなるプラスチック等が挙げられる。前記被着体(C1)及び(C2)としては、同一の材質や形状からなるものを使用してもよく、異なる材質や形状のものを使用してもよい。
前記被着体(C1)及び(C2)としては、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)や前記接着剤層(B)が接触する表面が粗面であってもよい。
【0056】
前記被着体(C1)および前記被着体(C2)の形状としては特に規定されないが、例えば2次元形状、3次元形状(曲面等)、表面凹凸を有する形状、嵌合する形状等を挙げられる。上記形状の組み合わせでも良い。
【0057】
本発明の接着テープは、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)または前記接着テープ全体に熱を与えることによって膨張させることができる。
【0058】
前記物品の製造方法としては、前記工程[1]、工程[2]及び工程[3]の順で行うことが、加熱前において優れた接着力を有し、加熱によって膨張可能で、かつ、加熱膨張後にも優れた接着力を発現するうえで好ましい。とりわけ、被着体(C1)または(C2)の表面が粗面である場合には、良好な接着力を発現するうえで効果的である。
例えば、はじめに工程[2]を経ることによって予め加熱膨張させた接着テープを用い、表面凹凸のある被着体に貼付等しようとした場合であっても、それらの界面に微細な隙間が形成される可能性を低減することができる。
【0059】
前記方法で得られる物品としては、例えば自動車の可動部に搭載される小型モーターが挙げられる。前記モーターは、通常、外装部材(筒状部材)とその蓋状部材とによって構成される。前記モーターとしては、具体的には、金属製の筒状部材と、前記筒状部材に対応した形状である樹脂製の蓋状部材とが、嵌合した状態で固定されたものが挙げられる。本発明の接着テープは、前記筒状部材と前記蓋状部材との間に形成される場合がある空隙を充填することができる。
【実施例】
【0060】
(調製例1)
<接着剤組成物(a−1)の調製>
重量平均分子量30万のスチレン−ブタジエンブロック共重合体S(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は50質量%。前記スチレン−ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は30質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は70質量%)を100質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(軟化点115℃、分子量1000)65質量部を混合したものを、トルエンに溶解することによって接着剤組成物(a−1)を得た。
【0061】
(調製例2)
<接着剤組成物(a−2)の調製>
調製例1で使用したテルペンフェノール系粘着付与樹脂(軟化点115℃、分子量1000)の使用量を65質量部から100質量部に変更したこと以外は調製例1と同様の方法で接着剤組成物(a−2)を得た。
【0062】
(調製例3)
<接着剤組成物(a−3)の調製>
スチレン−ブタジエンブロック共重合体Sの代わりに、重量平均分子量20万のスチレン−イソプレンブロック共重合体T(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は52質量%。前記スチレン−イソプレンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は15質量%、ポリイソプレン単位の質量割合は85質量%)100質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂の代わりにC5石油系粘着付与樹脂(軟化点100℃、数平均分子量885)40質量部、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(軟化点125℃、数平均分子量880)30質量部、液状粘着付与樹脂としてHV−100(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、低分子量ポリブテン)5質量部を使用したこと以外は調製例1と同様の方法で接着剤組成物(a−3)を得た。
【0063】
(調製例4)
<接着剤組成物(a−4)の調製>
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、ブチルアクリレート44.9質量部、2−エチルヘキシルアクリレート50質量部、アクリル酸2質量部、酢酸ビニル3質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.1質量部とを酢酸エチル100質量部に溶解し、70℃で10時間重合することによって、重量平均分子量80万のアクリル系共重合体W溶液を得た。
【0064】
次に、アクリル系共重合体W100質量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂D−135(荒川化学工業株式会社製)30質量部を添加し、酢酸エチルを加えて混合することによって、不揮発分45質量の接着剤組成物(a−4)を得た。
【0065】
(調製例5)
<接着剤組成物(a−5)の調製>
攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器にブチルアクリレート95.5質量部、アクリル酸4質量部、ヒドロキシエチルアクリレート0.5質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100質量部に溶解し、80℃で8時間重合することによって、重量平均分子量65万のアクリル系共重合体溶液Xを得た。
【0066】
次に、アクリル系共重合体X100質量部に対し、ロジンエステル系樹脂A−100(荒川化学社製)を10質量部、重合ロジンエステル系樹脂D−135(荒川化学社製)を20質量部添加し、トルエンを加えて混合することによって、不揮発分45質量%の接着剤組成物(a−5)を得た。
【0067】
(調製例6)
<接着剤組成物(a−6)の調製>
調製例1で使用したテルペンフェノール系粘着付与樹脂(軟化点115℃、分子量1 000)の使用量を65質量部から5質量部に変更したこと以外は調製例1と同様の方法で接着剤組成物(a−6)を得た。
【0068】
(調製例7)
<接着剤組成物(a−7)の調製>
エピクロンN−680(DIC株式会社製のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂溶液、エポキシ当量215g/eq、不揮発分75質量%)21.4質量部と、「YL−7862」(三菱化学株式会社製のエポキシ樹脂、エポキシ当量3748g/eq、不揮発分50質量%)48質量部とを混合した後、メチルエチルケトン30.6質量部を混合することによって不揮発分40質量%のエポキシ樹脂組成物Yを得た。
【0069】
次に、前記エポキシ樹脂組成物Y100質量部に対し、硬化剤としてキュアゾール2MAOK−PW(四国化成株式会社製、イミダゾール系硬化促進剤)0.4質量部とを混合し、10分間撹拌することによって、接着剤組成物(a−7)を得た。
【0070】
<接着剤組成物(a−8)の調製>
調製例1で使用したテルペンフェノール系粘着付与樹脂(軟化点115℃、分子量1 000)の使用量を65質量部から20質量部に変更したこと以外は調製例1と同様の方法で接着剤組成物(a−8)を得た。
【0071】
<接着テープの作製>
【0072】
(実施例1)
上質紙の両面にポリエチレン層を有し、ポリエチレン層の片面にシリコーン系離型処理剤層を有する厚さ130μmの離型紙の表面に、接着剤組成物(a−1)の全固形分100質量部に対し膨張剤としてマツモトマイクロスフェアーF−36D(松本油脂製薬株式会社製、熱膨張性マイクロカプセル、初期粒子径10〜16μm、膨張開始温度70〜80℃)を10質量部混合し10分間攪拌したものを、棒状の金属アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが60μmになるように塗工し、65℃に設定した乾燥機で10分間乾燥することによって熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)を作製した。前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)を、上記とは別の離型紙に積層し、2kgのハンドローラーを用い、前記貼付物の上面を一往復させることによって、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)からなる接着テープを得た。
【0073】
(実施例2)
接着剤組成物(a−1)の代わりに接着剤組成物(a−2)用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−2)からなる接着テープを得た。
【0074】
(実施例3)
接着剤組成物(a−1)の代わりに接着剤組成物(a−3)用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−3)からなる接着テープを得た。
【0075】
(実施例4)
上質紙の両面にポリエチレン層を有し、ポリエチレン層の片面にシリコーン系離型処理剤層を有する厚さ130μmの離型紙の表面に、接着剤組成物(a−4)100質量部の不揮発分が30質量%になるまでトルエンで希釈し10分間攪拌したものに膨張剤としてF−36Dを10質量部混合し10分間攪拌したものを、棒状の金属アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが60μmになるように塗工し、65℃に設定した乾燥機で10分間乾燥することによって熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−4)を作製したこと以外は実施例1と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−4)からなる接着テープを得た。
【0076】
(実施例5)
接着剤組成物(a−4)の代わりに接着剤組成物(a−5)用いたこと以外は実施例4と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−5)からなる接着テープを得た。
【0077】
(実施例6)
実施例1と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)を作製した。
次に、上質紙の両面にポリエチレン層を有し、ポリエチレン層の片面にシリコーン系離型処理剤層を有する、厚さ130μmの離型紙の表面に、前記接着剤組成物(a−1)を、棒状の金属アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが60μmになるように塗工し、65℃に設定した乾燥機で10分間乾燥することによって接着剤層(B−1)を作製した。
【0078】
前記で得た熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)に、前記接着剤層(B−1)を貼付し、2kgのハンドローラーを用い、前記貼付物の上面を一往復させることによって、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)の片面に接着剤層(B−1)が積層した接着テープを得た。
【0079】
(実施例7)
接着剤組成物(a−1)の代わりに接着剤組成物(a−2)用いたこと以外は実施例6と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−2)および接着剤層(B−2)を作製し、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−2)の片面に接着剤層(B−2)が積層した接着テープを得た。
【0080】
(実施例8)
接着剤組成物(a−1)の代わりに接着剤組成物(a−3)用いたこと以外は実施例6と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−3)および接着剤層(B−3)を作成し、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−3)の片面に接着剤層(B−3)が積層した接着テープを得た。
【0081】
(実施例9)
接着剤組成物(a−1)の代わりに接着剤組成物(a−4)用いたこと以外は実施例6と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−4)および接着剤層(B−4)を作成し、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−4)の片面に接着剤層(B−4)が積層した接着テープを得た。
【0082】
(実施例10)
接着剤組成物(a−1)の代わりに接着剤組成物(a−5)用いたこと以外は実施例6と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−5)および接着剤層(B−5)を作成し、前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−5)の片面に接着剤層(B−5)が積層した接着テープを得た。
【0083】
(実施例11)
熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)を、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に貼付し、もう一方の面に前記で得た接着剤層(B−1)を貼付した後、4kgf/cmで加圧しラミネートすることによって、ポリエチレンテレフタレートフィルムに熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)及び接着剤層(B−1)が積層した接着テープを得た。
【0084】
(実施例12)
熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)の代わりに熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−2)を、接着剤層(B−1)の代わりに接着剤層(B−2)を用いたこと以外は実施例11と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレートフィルムに熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−2)及び接着剤層(B−2)が積層した接着テープを得た。
【0085】
(実施例13)
熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)の代わりに熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−3)を、接着剤層(B−1)の代わりに接着剤層(B−3)を用いたこと以外は実施例11と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレートフィルムに熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−3)及び接着剤層(B−3)が積層した接着テープを得た。
【0086】
(実施例14)
熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)の代わりに熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−4)を、接着剤層(B−1)の代わりに接着剤層(B−4)を用いたこと以外は実施例11と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレートフィルムに熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−4)及び接着剤層(B−4)が積層した接着テープを得た。
【0087】
(実施例15)
熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)の代わりに熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−5)を、接着剤層(B−5)の代わりに接着剤層(B−4)を用いたこと以外は実施例15と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレートフィルムに熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−5)及び接着剤層(B−5)が積層した接着テープを得た。
【0088】
(実施例16)
熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)を、厚さ35μmの不織布の片面に貼付し、もう一方の面に前記で得た接着剤層(B−1)を貼付した後、80℃で4kgf/cmで加圧しラミネートすることによって、不織布に熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)及び接着剤層(B−1)が積層した接着テープを得た。
【0089】
(実施例17)
熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)の代わりに熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−2)を、接着剤層(B−1)の代わりに接着剤層(B−2)を用いたこと以外は実施例16と同様の方法で、不織布に熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−2)及び接着剤層(B−2)が積層した接着テープを得た。
【0090】
(実施例18)
熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)の代わりに熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−3)を、接着剤層(B−1)の代わりに接着剤層(B−3)を用いたこと以外は実施例16と同様の方法で、不織布に熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−3)及び接着剤層(B−3)が積層した接着テープを得た。
【0091】
(実施例19)
熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)の代わりに熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−4)を、接着剤層(B−1)の代わりに接着剤層(B−4)を用いたこと以外は実施例16と同様の方法で、不織布に熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−4)及び接着剤層(B−4)が積層した接着テープを得た。
【0092】
(実施例20)
熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−1)の代わりに熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−5)を、接着剤層(B−1)の代わりに接着剤層(B−5)を用いたこと以外は実施例16と同様の方法で、不織布に熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−5)及び接着剤層(B−5)が積層した接着テープを得た。
【0093】
(実施例21)
膨張剤としてF−36Dの代わりにエクスパンセル051−40(日本フィライト株式会社製、熱膨張性マイクロカプセル、初期粒子径12μm、膨張開始温度110℃)用いたこと以外は実施例6と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−6)の片面に接着剤層(B−1)が積層した接着テープを得た。
【0094】
(実施例22)
接着剤組成物(a−1)の代わりに接着剤組成物(a−6)を用いたこと以外は実施例6と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−7)の片面に接着剤層(B−1)が積層した接着テープを得た。
【0095】
(実施例23)
接着剤組成物(a−1)の代わりに接着剤組成物(a−8)を用いたこと以外は実施例6と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−13)の片面に接着剤層(B−1)が積層した接着テープを得た。
【0096】
(実施例24)
膨張剤としてF−36Dの代わりにF−30(松本油脂製薬株式会社製、熱膨張性マイクロカプセル、初期粒径10〜16μm、膨張開始温度70〜80℃)用いたこと以外は実施例6と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−14)の片面に接着剤層(B−1)が積層した接着テープを得た。
【0097】
(実施例25)
膨張剤としてF−36Dの代わりにエクスパンセル031−40(日本フィライト株式会社製、熱膨張性マイクロカプセル、初期粒子径10μm〜16μm、膨張開始温度80〜95℃)用いたこと以外は実施例6と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−15)の片面に接着剤層(B−1)が積層した接着テープを得た。
【0098】
(実施例26)
接着剤組成物(a−2)の全固形分100質量部に対し膨張剤としてF−36Dを5部混合したこと以外は実施例2と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−16)からなる接着テープを得た。
【0099】
(実施例27)
接着剤組成物(a−2)の全固形分100質量部に対し膨張剤としてF−36Dを15部混合したこと以外は実施例2と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−17)からなる接着テープを得た。
【0100】
(実施例28)
接着剤組成物(a−2)の全固形分100質量部に対し膨張剤としてF−36Dを30部混合したこと以外は実施例2と同様の方法で、熱可塑性熱膨張性接着剤層(A−17)からなる接着テープを得た。
【0101】
(比較例1)
膨張剤F−36Dを用いないこと以外は実施例1と同様の方法で接着剤層(A−8)からなる接着テープを得た。
【0102】
(比較例2)
膨張剤F−36Dを用いないこと以外は実施例2と同様の方法で接着剤層(A−9)からなる接着テープを得た。
【0103】
(比較例3)
膨張剤F−36Dを用いないこと以外は実施例3と同様の方法で接着剤層(A−10)からなる接着テープを得た。
【0104】
(比較例4)
膨張剤F−36Dを用いないこと以外は実施例4と同様の方法で接着剤層(A−11)からなる接着テープを得た。
【0105】
(比較例5)
膨張剤F−36Dを用いないこと以外は実施例5と同様の方法で接着剤層(A−12)からなる接着テープを得た。
【0106】
(比較例6)
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面がシリコーン化合物で剥離処理された離型フィルムの表面に、接着剤組成物(a−7)100質量部に対し、膨張剤としてエクスパンセル051−40を3.2質量部を混合し、10分間撹拌したものを、棒状の金属アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し75℃に設定した乾燥機で10分間乾燥することによって接着剤層(A−13)を作製した。前記接着剤層(A−13)を、前記離型フィルムに貼付し、2kgのハンドローラーを用い、前記貼付物の上面を一往復させることによって、前記接着剤層(A−13)からなる接着テープを得た。
【0107】
[熱膨張性接着剤層の貯蔵弾性率の測定方法]
調製例1〜6、8で作成した接着剤組成物(a−1)〜(a−6),(a−8)をアプリケーターを用いて乾燥後の厚さが100μmとなるように、離型ライナーの表面に塗布し、85℃で5分間乾燥させることによって、厚さ100μmの粘着剤層を、それぞれ複数枚形成した。
【0108】
次に、同一の粘着剤を用いて得た粘着剤層を重ねあわせることによって、厚さ2mmの粘着剤層からなる試験片を、それぞれ作成した。
【0109】
ティ・エイ・インスツルメントジャパン社製の粘弾性試験機(アレス2kSTD)に、直径7.9mmのパラレルプレートを装着した。前記試験片を、前記パラレルプレートで圧縮荷重40〜60gで挟み込み、周波数1Hz、温度領域−60〜150℃、及び、昇温速度2℃/minの条件で、23℃下での貯蔵弾性率(G23)及び70℃下での貯蔵弾性率(G70)及び120℃下での貯蔵弾性率(G120)を測定した。なお、比較例6については熱硬化性樹脂を使用しており、前述の測定方法が適用できないため割愛した。
【0110】
[熱膨張性接着剤層の初期接着力の測定方法]
180度引き剥がし接着力は、JIS Z 0237に従い測定した。
実施例6〜22においては接着テープの接着剤層(B)側の離型ライナーを剥がし、その接着剤層を、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムで裏打ちした。その他のものについては、離型ライナーを剥がす面は特に規定しない。前記裏打ちした接着テープを幅20mm幅に切断した後、接着テープの熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)側の離型ライナーを剥がし、その接着剤層にSUS板の脱脂処理した平滑な表面に貼り合わせ、2kgローラーで1往復したものを試験片とした。
前記試験片を、23℃環境下で1時間放置した後、同環境下で、テンシロン引張試験機[株式会社エーアンドデイ製、型式:RTM−100]を用い、前記試験片を構成する両面接着テープを、SUS板から、180度方向に300mm/分の速度で引き剥がした際の接着力を測定した。
【0111】
[接着テープ、及びそれを構成する各接着剤層の膨張率の測定方法]
前記方法で作製した接着テープの厚さ、及びそれを構成する各接着剤層の厚さを、厚み計を用いてそれぞれ測定した。
また、前記接着テープを、100℃の環境下に30分間放置することによって膨張させた。
なお、実施例21は120℃の環境下に30分間、比較例6は130℃の環境下に1時間放置することによって膨張させた。
次に、前記膨張後の接着テープの厚さ、それを構成する接着剤層の厚さを、厚み計を用いてそれぞれ測定した。
前記膨張率は、前記接着テープを100℃の環境下に30分間放置する前(膨張前)の前記接着テープの厚さに対する、前記放置後の接着テープの割合、及び、前記放置前の熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さに対する、前記放置によって前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)が膨張して形成された熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)の厚さの割合、及び、前記放置前の前記接着剤層(B)の厚さに対する、前記放置後の接着剤層(B)の厚さの割合を、以下の式にしたがって算出した。
[前記放置後(膨張後)の接着テープの厚さ/前記放置前(膨張前)の接着テープの厚さ]×100
[前記放置後(膨張後)の接着テープを構成する膨張した熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)〔熱可塑性熱膨張性接着剤層(A1)〕の厚さ/前記放置前(膨張前)の接着テープを構成する熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)の厚さ]×100
[前記放置後の接着テープを構成する接着剤層(B)の厚さ/前記放置前の接着テープを構成する接着剤層(B)の厚さ]×100
【0112】
[接着剤層(A)の膨張率2の測定方法]
接着テープを85℃の環境下に30分間放置したこと以外は、接着テープ、それを構成する各接着剤層の膨張率の測定方法と同様の方法で、実施例1〜5の接着剤層(A)の膨張率を測定した。
【0113】
[空隙充填性の評価方法]
幅15mm×長さ70mm×厚さ0.5mmの2枚の表面平滑なアルミニウム板を脱脂処理し、一方のアルミニウム板(C1)(図1中の1)の上面(C1−1)の端部に、2本のスペーサー(図1の3)を、12mmの間をあけて平行に並べ、接着テープ(50μm)を用いて接着した。前記スペーサーは、スペーサーと接着に用いた接着テープの総厚が、実施例1〜28及び比較例1〜5で作成した各接着テープの総厚に対して60μm厚くなるように調製したものを使用した。
次に、前記アルミニウム板(C1)の上面(C1−1)側で、かつ、前記2本のスペーサーの間に、10mm×10mmの大きさに裁断した接着テープを貼付し(実施例6〜22については前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)に相当する面を貼付し)、2kgのハンドローラーを用いて圧着した。実施例1〜5及び比較例1〜6の貼付する面については特に規定しない。
次に、前記接着テープの上面(実施例6〜25については前記接着剤層(B)に相当する面)に、脱脂処理した平滑な表面を有する他のアルミニウム板(C2)(幅15mm×長さ70mm×厚み0.5mm)を載置し、これらをクリップで固定した。
上記固定したものを、100℃で30分間加熱した後、23℃環境下に30分間放置し冷却した。なお、実施例21は120℃で30分間、比較例6は130℃で1時間加熱した後、23℃環境下に30分間放置し冷却した。
次に、前記クリップを外し、アルミニウム板(C2)の端部を持ち上げた。この際、アルミニウム板(C1)が落下しなかったものを「〇」、落下したものを「×」と評価した。
【0114】
[せん断接着力1の測定方法]
空隙充填性評価と同様のものを作成し、100℃で30分間加熱した後、23℃環境下に30分間放置し冷却した後、クリップを外したものを試験片とした。なお、実施例21は120で30分間、比較例6は130℃で1時間加熱した後、23℃環境下に30分間放置し冷却した後、クリップを外した。
前記試験片を前記2枚のアルミニウム板の端部をそれぞれチャッキングし、引張試験機を用いて180度方向に引張速度10mm/分で引張試験することによって、前記接着テープの接着力を求めた。
【0115】
[せん断接着力2の測定方法]
前記スペーサーは、スペーサーと接着に用いた接着テープの総厚が、実施例1〜28及び比較例1〜5で作成した各接着テープの総厚に対して120μm厚くなるように調製したものを使用したこと以外は、せん断接着力1の測定方法と同様の方法で測定を行った。
【0116】
[せん断接着力3の測定方法]
空隙充填性評価と同様の試験片を実施例1〜5を用いて作成し、85℃で30分加熱した後、23℃環境下に30分間放置し冷却した後、クリップを外したものを試験片とした。さらに、前記スペーサーは、スペーサーと接着に用いた接着テープの総厚が実施例1〜5で作成した各接着テープの総厚に対して30μm厚くなるように調製し、せん断接着力1の測定方法と同様の方法で測定を行った。
【0117】
[せん断接着力4の測定方法]
実施例6〜10を用いて、アルミニウム板(C1)の上面(C1−1)側で、かつ、前記2本のスペーサーの間に、10mm×10mmの大きさに裁断した接着テープの接着剤層(B)を貼付したこと以外はせん断接着力1の測定方法と同様の方法で測定を行った。
【0118】
[部材選択性]
空隙充填性評価と同様の試験片を実施例1〜28及び比較例1〜6で作成した接着テープを用いて、アルミニウム板、アクリル板でそれぞれ作成した。(アクリル板:幅15mm×長さ70mm×厚さ1.5mmの2枚の表面平滑なアクリル板を脱脂処理し、一方のアクリル板(D1)(図2中の1)の上面(D1−1)の端部に、2本のスペーサー(図2の3)を、12mmの間をあけて平行に並べ、接着テープ(50μm)を用いて接着した。前記スペーサーは、スペーサーと接着に用いた接着テープの総厚が、実施例1〜28及び比較例1〜5で作成した各接着テープの総厚に対して60μm厚くなるように調製したものを使用した。
次に、前記アクリル板(D1)の上面(D1−1)側で、かつ、前記2本のスペーサーの間に、10mm×10mmの大きさに裁断した接着テープを貼付し(実施例6〜22については前記熱可塑性熱膨張性接着剤層(A)に相当する面を貼付し)、2kgのハンドローラーを用いて圧着した。次に、前記接着テープの上面(実施例6〜22については前記接着剤層(B)に相当する面)に、脱脂処理した平滑な表面を有する他のアクリル板(D2)(幅15mm×長さ70mm×厚み1.5mm)を載置し、これらをクリップで固定した。)
前記試験片を100℃で30分間加熱した後、23℃環境下に30分間放置し冷却した。なお、実施例22については130℃で30分加熱した後、23℃環境下に30分間放置し冷却した。次に、前記クリップを外し、アルミニウム板(C2)及びアクリル板(C2)の端部を持ち上げた。この際、アルミニウム板(C1)およびアクリル板(D1)が落下せず、かつ、アルミニウム板及びアクリル板の変形が見られなかったものを「〇」、落下はしないがアルミニウム板及びアクリル板の変形が見られたものを「△」、落下したものを「×」と評価した。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
【表5】
【0124】
【表6】
【0125】
【表7】
*F−36D:マツモトマイクロスフェアーF−36D
*F−30 :マツモトマイクロスフェアーF−30
*051−40:エクスパンセル051−40
*031−40:エクスパンセル031−40
【符号の説明】
【0126】
1 アルミニウム板(C1)
2 アルミニウム板(C2)
3 スペーサー
4 接着テープ
5 接着テープとアルミニウム板(c2)との間の空隙
図1