(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
開示するプラズマ処理方法は、1つの実施形態において、プラズマ処理装置が第1の工程と第2の工程とを実行する。プラズマ処理装置は、チャンバと、載置台と、フォーカスリングと、第1の上部電極と、第2の上部電極とを備える。載置台は、チャンバの内部に設けられ、被処理基板が載置される載置面を有する。フォーカスリングは、載置面を囲むように載置台の周囲に設けられる。第1の上部電極は、載置台の載置面に対向するように載置台の上方に設けられる。第2の上部電極は、第1の上部電極を囲むように第1の上部電極の周囲に設けられ、第1の上部電極と絶縁される。プラズマ処理装置は、第1の工程において、チャンバ内に生成されたプラズマにより、載置台の載置面に載置された被処理基板に所定の処理を施す。また、プラズマ処理装置は、第2の工程において、第1の工程の経過時間に応じて、第2の上部電極に印加される負の直流電圧の絶対値を増加させる。
【0011】
また、開示するプラズマ処理方法の1つの実施形態において、プラズマ処理装置は、第2の工程において、第1の工程の経過時間に対する、被処理基板のエッヂ付近のホールの傾斜角度を示す第1のデータと、第2の上部電極に印加される負の直流電圧の絶対値に対する、被処理基板のエッヂ付近のホールの傾斜角度を示す第2のデータとに基づいて、第2の上部電極に印加される負の直流電圧の絶対値を決定してもよい。
【0012】
また、開示するプラズマ処理方法の1つの実施形態において、第2のデータは、第1の上部電極に印加される直流電圧の値毎に作成されてもよい。また、プラズマ処理装置は、第2の工程において、第1の上部電極に印加されている直流電圧の値に対応する第2のデータを特定し、特定された第2のデータと第1のデータとに基づいて、第2の上部電極に印加される負の直流電圧の絶対値を決定してもよい。
【0013】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、チャンバと、載置台と、フォーカスリングと、第1の上部電極と、第2の上部電極と、制御部とを備える。載置台は、チャンバの内部に設けられ、被処理基板が載置される載置面を有する。フォーカスリングは、載置面を囲むように載置台の周囲に設けられる。第1の上部電極は、載置面に対向するように載置台の上方に設けられる。第2の上部電極は、第1の上部電極を囲むように第1の上部電極の周囲に設けられ、第1の上部電極と絶縁される。制御部は、チャンバ内に生成されたプラズマにより被処理基板に所定の処理が施される処理時間の経過に応じて、第2の上部電極に印加される負の直流電圧の絶対値を増加させる制御を行う。
【0014】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、第1の工程の経過時間に対する、被処理基板のエッヂ付近のホールの傾斜角度を示す第1のデータと、第2の上部電極に印加される負の直流電圧の絶対値に対する、被処理基板のエッヂ付近のホールの傾斜角度を示す第2のデータとを記憶する記憶部をさらに備えてもよい。また、制御部は、第1のデータおよび第2のデータを記憶部から読み出し、読み出された第1のデータおよび第2のデータに基づいて、第2の上部電極に印加される負の直流電圧の絶対値を決定してもよい。
【0015】
また、開示するプラズマ処理装置の1つの実施形態において、記憶部は、第1の上部電極に印加される直流電圧の値毎に第2のデータを記憶してもよい。また、制御部は、第1の上部電極に印加されている直流電圧の値に対応する第2のデータを記憶部が記憶する第2のデータの中で特定し、特定された第2のデータと第1のデータとに基づいて、第2の上部電極に印加される負の直流電圧の絶対値を決定してもよい。
【0016】
また、開示するプラズマ処理装置の1つの実施形態において、第2の上部電極は、円環状であってもよく、第2の上部電極の内周面は、フォーカスリングの軸線を基準として、フォーカスリングの内周面よりも、軸線から離れた位置となるように、第1の上部電極の周囲に配置されていてもよい。
【0017】
以下に、開示するプラズマ処理方法およびプラズマ処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により開示される発明が限定されるものではない。
【0018】
[プラズマ処理装置1の構成]
図1は、プラズマ処理装置1全体の概略構成の一例を模式的に示す断面図である。本実施形態におけるプラズマ処理装置1は、例えば容量結合型平行平板プラズマエッチング装置である。プラズマ処理装置1は、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムによって形成された略円筒状のチャンバ10を有する。チャンバ10は保安接地されている。
【0019】
チャンバ10の底部には、セラミックス等によって形成された絶縁板12を介して円柱状の支持台14が配置されている。支持台14の上に例えばアルミニウム等で形成された載置台16が設けられている。載置台16は下部電極としても機能する。
【0020】
載置台16の上面には、被処理基板の一例である半導体ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック18が設けられている。静電チャック18は、導電膜で形成された電極20を一対の絶縁層または絶縁シートで挟んだ構造を有する。電極20には直流電源22が電気的に接続されている。半導体ウエハWは、静電チャック18の上面18aに載置され、直流電源22から供給された直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により静電チャック18に吸着保持される。半導体ウエハWが載置される静電チャック18の上面18aは、載置台16の載置面の一例である。
【0021】
静電チャック18の周囲であって、載置台16の上面には、導電性部材24bが設けられる。また、導電性部材24bの上には、静電チャック18の上面18aを囲むように、例えばシリコン等で形成された導電性のフォーカスリング24aが設けられる。フォーカスリング24aにより、エッチング等のプラズマ処理の均一性が向上する。載置台16および支持台14の側面には、例えば石英で形成された円筒状の内壁部材26が設けられている。
【0022】
支持台14の内部には、例えば環状の冷媒室28が形成されている。冷媒室28には、外部に設けられた図示しないチラーユニットから、配管30aおよび30bを介して、例えば冷却水等の所定温度の冷媒が循環供給される。冷媒室28内を循環する冷媒によって、支持台14、載置台16、および静電チャック18の温度が制御され、静電チャック18上の半導体ウエハWが所定温度に制御される。
【0023】
また、図示しない伝熱ガス供給機構からの例えばHeガス等の伝熱ガスが配管32を介して静電チャック18の上面18aと半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
【0024】
下部電極として機能する載置台16の上方には、載置台16と対向するように上部電極34が設けられている。上部電極34と載置台16との間の空間がプラズマ生成空間となる。上部電極34は、下部電極として機能する載置台16上の半導体ウエハWと対向してプラズマ生成空間と接する面、つまり対向面を形成する。
【0025】
上部電極34は、絶縁性遮蔽部材42を介して、チャンバ10の上部に支持されている。上部電極34は、第1の電極板36と、第2の電極板35と、電極支持体38とを有する。第1の電極板36は、載置台16との対向面を構成し、多数の吐出孔37を有する。第1の電極板36および第2の電極板35は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体または半導体が好ましく、例えばシリコンやSiCで形成されることが好ましい。第2の電極板35は、環状の形状を有し、第1の電極板36を囲むように第1の電極板36の周囲に設けられている。第2の電極板35は、フォーカスリング24aの上方の位置に設けられる。第2の電極板35は、絶縁性部材39により第1の電極板36と絶縁されている。第1の電極板36は、第1の上部電極の一例であり、第2の電極板35は、第2の上部電極の一例である。
【0026】
図2は、フォーカスリング24aと第2の電極板35との位置関係の一例を模式的に示す上面図である。
図3は、フォーカスリング24aと第2の電極板35との位置関係の一例を模式的に示す拡大断面図である。
図2には、上部電極34から載置台16へ向かう方向から見た場合のフォーカスリング24aおよび第2の電極板35が示されている。
図2に示すように、フォーカスリング24aおよび第2の電極板35は、円環状の形状を有し、フォーカスリング24aおよび第2の電極板35の中心軸はほぼ一致している。
図2に示す点oは、フォーカスリング24aおよび第2の電極板35の中心軸が通る点を示す。本実施形態において、フォーカスリング24aの内周面24cの半径r1は、例えば
図2および
図3に示すように、第2の電極板35の内周面35aの半径r2よりも短い。なお、他の形態として、フォーカスリング24aの内周面24cの半径r1は、第2の電極板35の内周面35aの半径r2と同じ長さであってもよい。
【0027】
図1に戻って説明を続ける。電極支持体38は、第1の電極板36および第2の電極板35を着脱自在に支持する。また、電極支持体38は、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウム等の導電性材料によって形成された水冷構造を有する。電極支持体38の内部には、ガス拡散室40が設けられている。ガス拡散室40からは吐出孔37に連通する多数のガス流通孔41が下方に延びている。
【0028】
電極支持体38にはガス拡散室40へ処理ガスを導くガス導入口62が形成されており、ガス導入口62にはガス供給管64が接続されている。ガス供給管64にはバルブ70およびマスフローコントローラ(MFC)68を介して処理ガス供給源66が接続されている。半導体ウエハWに対してエッチングの処理が行われる場合、処理ガス供給源66からは、エッチングのための処理ガスがガス供給管64を介してガス拡散室40に供給される。ガス拡散室40内に供給された処理ガスは、ガス拡散室40内で拡散し、それぞれのガス流通孔41および吐出孔37を介してプラズマ処理空間内にシャワー状に吐出される。すなわち、上部電極34は、プラズマ処理空間内に処理ガスを供給するためのシャワーヘッドとしても機能する。
【0029】
電極支持体38には、ローパスフィルタ(LPF)46aおよびスイッチ47aを介して可変直流電源48aが電気的に接続されている。可変直流電源48aは、後述する制御部95から指示された大きさ(絶対値)の負の直流電圧を出力する。スイッチ47aは、可変直流電源48aから電極支持体38への負の直流電圧の供給および遮断を制御する。以下では、可変直流電源48aから電極支持体38に供給される負の直流電圧をセンターDCと呼ぶ場合がある。
【0030】
第2の電極板35には、LPF46bおよびスイッチ47bを介して可変直流電源48bが電気的に接続されている。可変直流電源48bは、後述する制御部95から指示された大きさ(絶対値)の負の直流電圧を出力する。スイッチ47bは、可変直流電源48bから第2の電極板35への負の直流電圧の供給および遮断を制御する。以下では、可変直流電源48bから第2の電極板35に供給される負の直流電圧をエッヂDCと呼ぶ場合がある。
【0031】
チャンバ10の側壁から上部電極34の高さ位置よりも上方には、円筒状の接地導体10aが設けられている。接地導体10aは、その上部に天壁を有している。
【0032】
下部電極として機能する載置台16には、整合器87を介して第1の高周波電源89が電気的に接続されている。また、載置台16には、整合器88を介して第2の高周波電源90が電気的に接続されている。第1の高周波電源89は、27MHz以上の周波数、例えば40MHzの高周波電力を出力する。第2の高周波電源90は、13.56MHz以下の周波数、例えば2MHzの高周波電力を出力する。
【0033】
整合器87は、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第1の高周波電源89のインピーダンスと負荷インピーダンスとが見かけ上一致するように、第1の高周波電源89のインピーダンスと負荷インピーダンスと整合させる。同様に、整合器88は、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第2の高周波電源90のインピーダンスと負荷インピーダンスとが見かけ上一致するように、第2の高周波電源90のインピーダンスと負荷インピーダンスと整合させる。
【0034】
チャンバ10の底部には排気口80が設けられている。排気口80には、排気管82を介して排気装置84が接続されている。排気装置84は、例えばターボ分子ポンプ等の真空ポンプを有しており、チャンバ10内を所望の真空度まで減圧することができる。また、チャンバ10の側壁には半導体ウエハWを搬入および搬出するための開口85が設けられており、開口85はゲートバルブ86により開閉可能となっている。
【0035】
チャンバ10の内壁には、チャンバ10の内壁に沿って、チャンバ10の内壁にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するためのデポシールド11が着脱自在に設けられている。また、デポシールド11は、内壁部材26の外周にも設けられている。チャンバ10の底部のチャンバ壁側のデポシールド11と内壁部材26側のデポシールド11との間には排気プレート83が設けられている。デポシールド11および排気プレート83としては、例えばアルミニウム材にY2O3等のセラミックスが被覆されたものを好適に用いることができる。
【0036】
デポシールド11のチャンバ内壁を構成する部分の半導体ウエハWとほぼ同じ高さ部分には、グランドにDC的に接続された導電性部材(GNDブロック)91が設けられている。GNDブロック91により、チャンバ10内の異常放電が防止される。
【0037】
プラズマ処理装置1の各構成部は、制御部95によって制御される。制御部95には、工程管理者がプラズマ処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザインターフェイス96が接続されている。
【0038】
さらに、制御部95には、プラズマ処理装置1で実行される各種処理を制御部95の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置1の各構成部に処理を実行させるためのプログラム、すなわちレシピ等が格納された記憶部97が接続されている。また、記憶部97には、後述する第1のテーブルおよび第2のテーブルのデータが格納される。記憶部97は、例えばハードディスクや半導体メモリ等である。また、記憶部97は、コンピュータにより読み取り可能な可搬性の記憶媒体であってもよい。この場合、制御部95は、該記憶媒体からデータを読み取る装置を経由して、該記憶媒体に記憶された制御プログラム等を取得する。記憶媒体は、例えば、CD−ROMやDVD等である。
【0039】
制御部95は、ユーザインターフェイス96を介したユーザからの指示等に応じて、任意のレシピを記憶部97から読み出して実行することにより、プラズマ処理装置1の各部を制御し、半導体ウエハWに対して所定のプラズマ処理を施す。なお、本実施形態におけるプラズマ処理装置1は、制御部95、ユーザインターフェイス96、および記憶部97を含む。
【0040】
このように構成されたプラズマ処理装置1において、半導体ウエハWに対してエッチング処理が行われる場合、まず、ゲートバルブ86が開状態に制御され、開口85を介してエッチング対象の半導体ウエハWがチャンバ10内に搬入され、静電チャック18上に載置される。そして、直流電源22から所定の直流電圧が静電チャック18に印加され、半導体ウエハWが静電チャック18の上面18aに吸着保持される。
【0041】
そして、処理ガス供給源66からエッチングのための処理ガスが所定の流量でガス拡散室40へ供給され、ガス流通孔41および吐出孔37を介して処理ガスがチャンバ10内に供給される。また、排気装置84によりチャンバ10内が排気され、チャンバ10内の圧力が所定の圧力に制御される。チャンバ10内に処理ガスが供給された状態で、第1の高周波電源89からプラズマ生成用の高周波が所定のパワーで載置台16に印加されるとともに、第2の高周波電源90からイオン引き込み用の高周波が所定のパワーで載置台16に印加される。また、可変直流電源48aから所定の大きさの負の直流電圧が電極支持体38に印加され、可変直流電源48bから所定の大きさの負の直流電圧が第2の電極板35に印加される。
【0042】
上部電極34の吐出孔37から吐出された処理ガスは、載置台16に印加された高周波により、上部電極34と載置台16との間に生じたグロー放電中でプラズマ化し、このプラズマで生成されるラジカルやイオンによって半導体ウエハWの被処理面がエッチングされる。
【0043】
また、本実施形態において、制御部95は、プラズマ処理の経過時間に応じて、可変直流電源48bを制御して、第2の電極板35に印加される負の直流電圧の大きさを増加させる。
【0044】
[プラズマ処理時間とホールの傾斜角度との関係]
ここで、プラズマ処理時間と半導体ウエハWの被処理面に形成されるホールの傾斜角度との関係について説明する。
図4は、フォーカスリング24aの消耗に伴うイオンの入射方向の傾きの変化を示す説明図である。フォーカスリング24aが消耗していない場合には、例えば
図4(a)に示すように、フォーカスリング24aの上方のプラズマシースは、半導体ウエハWの上方のプラズマシースよりも例えば高い位置に形成される。この場合、半導体ウエハWの周縁部(エッヂ)付近では、プラズマ中のイオンが半導体ウエハWの被処理面の周縁部の方向に斜めに傾いて入射する。エッチングでは、イオンの入射方向に沿ってホールが形成される。そのため、半導体ウエハWの被処理面の周縁部付近に形成されるホールの深さ方向の形状は、鉛直方向に対して半導体ウエハWの被処理面の周縁部の方に斜めに傾いた形状となる。
【0045】
その後、プラズマ処理が繰り返され、フォーカスリング24aがプラズマにより消耗すると、例えば
図4(b)に示すように、フォーカスリング24aの高さが低くなる。これにより、例えば
図4(b)に示すように、フォーカスリング24aの上方のプラズマシースの位置が低くなり、半導体ウエハWの中心部付近の上方に形成されたプラズマシースよりも、半導体ウエハWの周縁部付近の上方に形成されたプラズマシースの位置が低くなる。これにより、半導体ウエハWの周縁部付近では、プラズマ中のイオンが半導体ウエハWの被処理面の中心部の方向に斜めに傾いて入射する。これにより、半導体ウエハWの被処理面の周縁部付近に形成されるホールの深さ方向の形状は、鉛直方向に対して半導体ウエハWの被処理面の中心部の方に斜めに傾いた形状となる。
【0046】
ここで、ホールの深さ方向の傾斜角度の定義について説明する。
図5は、実施形態におけるホールの傾斜角度の定義を説明する図である。本実施形態において、ホールの傾斜角度θは、例えば
図5に示すように、鉛直方向に対するホールの深さ方向の角度として定義される。例えば
図5(a)に示すように、半導体ウエハWに形成されたホールh1が半導体ウエハWの被処理面の周縁部の方向に斜めに傾く場合に、ホールの傾斜角度θは正の値となる。また、例えば
図5(b)に示すように、半導体ウエハWに形成されたホールh2が半導体ウエハWの被処理面の中心部の方向に斜めに傾く場合に、ホールの傾斜角度θは負の値となる。
【0047】
図4に示した例では、フォーカスリング24aが消耗していない状態において、ホールの傾斜角度θが正の所定値(例えば、θ=+0.5deg)となるような形状のフォーカスリング24aがチャンバ10内に設置される。そして、プラズマ処理の時間の経過に従ってフォーカスリング24aが消耗し、ホールの傾斜角度θが減少する。そして、ホールの傾斜角度θは、やがて負の値となる。その後、プラズマ処理の時間の経過に伴い、フォーカスリング24aがさらに消耗し、傾斜角度θがさらに大きな負の値となる。フォーカスリング24aは、ホールの傾斜角度θが所定の大きさの負の角度(例えば、θ=−0.5deg)となる前に交換される。
【0048】
[エッヂDCと傾斜角度θの関係]
次に、エッヂDCとホールの傾斜角度θとの関係について説明する。
図6は、センターDCおよびエッヂDCの組合せ毎のホールの傾斜角度θの測定結果の一例を示す図である。
図6の測定結果を参照すると、第2の電極板35に印加される負の直流電圧であるエッヂDCの絶対値が増加するほど、ホールの傾斜角度θが正の方向に増加していることが分かる。第2の電極板35に印加される負の直流電圧の絶対値を増加させると、例えば
図7に示すように、フォーカスリング24aの上方のプラズマシースが第2の電極板35の方向、即ち、上方に移動する。
図7は、第2の電極板35に印加される負の直流電圧の絶対値を増加させた場合のプラズマシースの位置の変化の一例を示す図である。そのため、イオンの入射方向が半導体ウエハWの被処理面の周縁部の方向に傾き、イオンの入射により形成されたホールの傾斜角度θが正の方向に傾いたと考えられる。
【0049】
そのため、例えば
図8(a)および(b)に示すように、プラズマ処理時間の経過に従って、フォーカスリング24aが消耗し、プラズマシースの位置が低くなっても、第2の電極板35に印加するエッヂDCの大きさ(絶対値)を増加させれば、フォーカスリング24aの消耗に伴うホールの傾斜角度θの変化を抑制することができると考えられる。
【0050】
[第1のテーブル]
次に、エッヂDCの値を決定するために用いられる第1のテーブルの作成方法について説明する。まず、プラズマ処理時間に対するホールの傾斜角度θが測定される。例えば、実際に複数の半導体ウエハWに対してエッチング処理が行われ、プラズマ処理の累積時間毎の半導体ウエハWについて、半導体ウエハWに形成されたホールの傾斜角度θが測定される。なお、他の例として、プラズマ処理の累積時間に応じた消耗量分、高さが低くなるように加工されたフォーカスリング24aを用いて、半導体ウエハWに対してエッチング処理が行われ、半導体ウエハWに形成されたホールの傾斜角度θが測定されてもよい。
【0051】
プラズマ処理時間毎のホールの傾斜角度θの測定結果から、プラズマ処理の単位時間当たりの傾斜角度θの変化量が算出される。プラズマ処理時間毎のホールの傾斜角度θの測定値を図示すると、例えば
図9のようになる。
図9は、プラズマ処理時間とホールの傾斜角度との関係の一例を示す図である。
図9の例では、プラズマ処理の単位時間に対する傾斜角度θの変化量は、10時間当たり−0.023degであった。
【0052】
そして、プラズマ処理の経過時間毎に、傾斜角度θの値が、第1のテーブルとして記憶部97内に保存される。
図10は、第1のテーブル970の一例を示す図である。第1のテーブル970には、例えば
図10に示すように、プラズマ処理の経過時間971に対応付けて、ホールの傾斜角度θ972が格納される。なお、
図10の例では、ホールの傾斜角度θ972の初期値が0.50degとなっているが、ホールの傾斜角度θ972の初期値は0degなど、他の値であってもよい。第1のテーブル970は、第1のデータの一例である。
【0053】
[第2のテーブル]
次に、エッヂDCの値を決定するために用いられる第2のテーブルの作成方法について説明する。まず、例えば
図6に示したように、センターDCとエッヂDCの組合せ毎に、ホールの傾斜角度θが測定される。そして、センターDCの値毎に、エッヂDCに対するホールの傾斜角度θの測定結果から、エッヂDCの電圧変化に対する傾斜角度θの変化量が算出される。エッヂDCに対するホールの傾斜角度θの測定値を図示すると、例えば
図11のようになる。
図11は、エッヂDCの電圧変化に対するホールの傾斜角度の変化の一例を示す図である。
図11の測定結果において、センターDCは−150Vである。
図11の例では、エッヂDCの電圧変化に対する傾斜角度θの変化量は、10V当たり0.007degであった。
【0054】
そして、傾斜角度θが、エッヂDCの初期値に対応する傾斜角度θからの相対値Δθに変換される。そして、センターDCの値毎に、エッヂDCと相対値Δθの組合せが、第1のテーブルとして記憶部97内に保存される。
図12は、第2のテーブル975の一例を示す図である。第2のテーブル975には、例えば
図12に示すように、センターDCの電圧値976毎に、個別テーブル977が格納される。それぞれの個別テーブル977には、エッヂDCの電圧値978に対応付けて、相対値Δθ979が格納される。第2のテーブル975は、第2のデータの一例である。
【0055】
[エッヂDCの制御]
図13は、プラズマ処理装置1によって実行されるエッヂDCの制御処理の一例を示すフローチャートである。なお、
図13に示すフローチャートの開始前に、半導体ウエハWがチャンバ10内に搬入され、チャンバ10内に処理ガスが供給され、チャンバ10内の圧力が所定の圧力に制御される。また、電極支持体38には、処理レシピに規定された負の直流電圧がセンターDCとして印加される。
【0056】
まず、制御部95は、可変直流電源48aおよび48bを制御して、エッヂDCをセンターDCと同じ値に設定する(S100)。これにより、第2の電極板35には、電極支持体38に印加される負の直流電圧と同じ大きさの負の直流電圧が印加される。
【0057】
次に、制御部95は、第1の高周波電源89および第2の高周波電源90を制御して、所定電力の高周波を載置台16にそれぞれ印加する。これにより、チャンバ10内に処理ガスのプラズマが生成され、生成されたプラズマにより、半導体ウエハWに対するプラズマ処理が開始される(S101)。
【0058】
次に、制御部95は、プラズマ処理の累積時間を示す経過時間tを0に初期化する(S102)。また、制御部95は、エッヂDCを更新するタイミングを示す時間t
0を、所定時間Δtで初期化する(S103)。所定時間Δtは、例えば10時間である。
【0059】
次に、制御部95は、経過時間tが時間t
0に達したか否かを判定する(S104)。経過時間tが時間t
0に達していない場合(S104:No)、制御部95は、ステップS112に示す処理を実行する。
【0060】
一方、経過時間tが時間t
0に達した場合(S104:Yes)、制御部95は、記憶部97内の第1のテーブル970を参照して、現在の経過時間tに対応付けられた傾斜角度θを特定する(S105)。そして、制御部95は、特定された傾斜角度θと、所定の傾斜角度θ
0との差分Δθ
mを算出する(S106)。所定の傾斜角度θ
0とは、基準となる傾斜角度である。本実施形態において、傾斜角度θ
0は、例えば+0.5degである。
【0061】
次に、制御部95は、記憶部97内の第2のテーブル975を参照して、電極支持体38に印加されているセンターDCの値に対応付けられている個別テーブル977を特定する(S107)。そして、制御部95は、特定された個別テーブル977内で、ステップS106において算出された差分Δθ
mに最も近い相対値Δθを特定する(S108)。
【0062】
次に、制御部95は、個別テーブル977を参照して、ステップS108において特定された相対値Δθに対応付けられているエッヂDCの電圧値を特定する(S109)。そして、制御部95は、特定された電圧値の負の直流電圧を出力するように可変直流電源48bを制御する。これにより、ステップS109において特定された電圧値の負の直流電圧が第2の電極板35に印加される(S110)。
【0063】
次に、制御部95は、エッヂDCを更新するタイミングを示す時間t
0に、所定時間Δtを加算し(S111)、プラズマ処理を終了するか否かを判定する(S112)。プラズマ処理を終了しない場合(S112:No)、制御部95は、再びステップS104に示した処理を実行する。一方、プラズマ処理を終了する場合(S112:Yes)、プラズマ処理装置1は、本フローチャートに示したエッヂDCの制御処理を終了する。
【0064】
以上、一実施形態について説明した。上記説明から明らかなように、本実施形態のプラズマ処理装置1によれば、フォーカスリング24aの消耗に伴うホールの傾きの変動を抑制することができる。
【0065】
なお、開示の技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0066】
例えば、上記した実施形態において、上部電極34には、第1の電極板36および第2の電極板35が設けられ、第2の電極板35には、第1の電極板36に印加される負の直流電圧とは独立に制御される負の直流電圧が印加される。しかし、開示の技術はこれに限られない。例えば、第2の電極板35は、径方向に複数の環状の部材で構成され、それぞれの環状の部材に印加される負の直流電圧が独立に制御されてもよい。これにより、半導体ウエハWの周縁のシースの分布をより精度よく制御することができる。
【0067】
また、上記した実施形態では、半導体ウエハWに対してプラズマを用いたエッチングを行うプラズマ処理装置1を例に説明したが、開示の技術はこれに限られない。プラズマを用いて処理を行う装置であれば、成膜装置や、半導体ウエハW上に積層された膜をプラズマを用いて改質する装置等においても、上記したエッヂDCの制御を適用することができる。
【0068】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者には明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。