特許第6556054号(P6556054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556054誘導体化されたポリアミンを含有する組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556054
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】誘導体化されたポリアミンを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/02 20060101AFI20190729BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20190729BHJP
   C08L 33/10 20060101ALI20190729BHJP
   C08L 79/02 20060101ALI20190729BHJP
   C08L 39/02 20060101ALI20190729BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20190729BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20190729BHJP
   C09D 179/02 20060101ALI20190729BHJP
   C09D 133/02 20060101ALI20190729BHJP
   C09D 133/12 20060101ALI20190729BHJP
   C09D 133/08 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   C08L33/02
   C08L33/08
   C08L33/10
   C08L79/02
   C08L39/02
   C08K3/28
   C09D1/00
   C09D179/02
   C09D133/02
   C09D133/12
   C09D133/08
【請求項の数】32
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-537236(P2015-537236)
(86)(22)【出願日】2013年10月16日
(65)【公表番号】特表2015-533192(P2015-533192A)
(43)【公表日】2015年11月19日
(86)【国際出願番号】EP2013071593
(87)【国際公開番号】WO2014060456
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年10月13日
(31)【優先権主張番号】61/714,497
(32)【優先日】2012年10月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100210099
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 太介
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ランダル ピートリー
(72)【発明者】
【氏名】ルーク エス. イーガン
(72)【発明者】
【氏名】スリダー ジー. アイヤー
(72)【発明者】
【氏名】アーミン ブルクハート
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー ファンク
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−512611(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/045712(WO,A1)
【文献】 特開平10−060308(JP,A)
【文献】 特開2002−322431(JP,A)
【文献】 国際公開第1996/022338(WO,A1)
【文献】 米国特許第4273883(US,A)
【文献】 米国特許第5705560(US,A)
【文献】 特開平08−218037(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第19917235(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C09D 1/00 − 10/00
C09D 101/00 − 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性組成物であって、
(a)65質量%以上の1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーから誘導され、かつ−50℃〜0℃のTgを有する、(メタ)アクリレート及びエチレン性不飽和カルボン酸を共重合してなるカルボキシ基含有共重合体
(b)前記組成物の全質量に対して0質量%超〜6質量%未満の量で存在し、イミノ基上の水素原子をアルコキシ基で置換してなるポリアルキレンイミンまたはアルコキシル化ポリビニルアミンから選択される、誘導体化されたポリアミン;および
(c)アンモニアを含み、
前記の誘導体化されたポリアミンが少なくとも40%の窒素の誘導体化度を有する、前記水性組成物。
【請求項2】
前記の誘導体化されたポリアミンが70%〜90%の窒素の誘導体化度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記のポリアルキレンイミンがアルコキシル化ポリエチレンイミン(PEI)である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記の誘導体化されたポリアミンがアルコキシル化ポリビニルアミンである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記の誘導体化されたポリアミンが前記のカルボキシ基含有共重合体の乾燥質量に対して、0.1質量%〜5質量%で前記組成物中に存在する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記のカルボキシ基含有共重合体が90質量%を上回る1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーから誘導されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記の1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーがメチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびこれらの組合せからなる群から選択されている、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記のカルボキシ基含有共重合体が0質量%を上回り、5質量%までの1つ以上のカルボン酸含有モノマーから誘導されている、請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記のカルボキシ基含有共重合体が0質量%を上回り、5質量%までの1つ以上の燐含有モノマーから誘導されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記のカルボキシ基含有共重合体が0質量%を上回り、35質量%までの1つ以上のさらなるエチレン性不飽和モノマーから誘導されており、
ここで、このさらなるエチレン性不飽和モノマーが、ビニル芳香族モノマー、ブタジエン、(メタ)アクリレートモノマー、ビニルエステルモノマーおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記のカルボキシ基含有共重合体が燐含有モノマーを含んでいない、請求項1から8、10までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記の1つ以上のカルボン酸含有モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
前記の1つ以上の燐含有モノマーが、2−ホスホエチルメタクリレート(PEM)、2−ホスホプロピルメタクリレート、3−ホスホプロピルメタクリレート、ホスホブチルメタクリレート、3−ホスホ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびこれらの組合せからなる群から選択されている、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記のカルボキシ基含有共重合体
(i)メチルメタクリレート10〜15質量%;
(ii)ブチルアクリレート50〜70質量%;
(iii)2−エチルヘキシルアクリレート15〜30質量%;
(iv)0質量%を上回り、5質量%までのカルボン酸含有モノマー;
(v)アクリルアミド0〜5質量%;および
(vi)アセトアセトキシモノマー0〜5質量%;
から誘導されている、請求項1から13までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記のカルボキシ基含有共重合体
(i)ブチルアクリレート55〜75質量%;
(ii)2−エチルヘキシルアクリレート0〜25質量%;
(iii)0質量%を上回り、35質量%までの1つ以上のさらなるエチレン性不飽和モノマー;
(iv)0質量%を上回り、5質量%までのカルボン酸含有モノマー;
(v)アクリルアミド0〜5質量%;および
(vi)アセトアセトキシモノマー0〜5質量%;
から誘導されている、請求項1から14までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
水性組成物であって、
(a)65質量%以上の1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーから誘導され、かつ−50℃〜0℃のTgを有する、(メタ)アクリレート及びエチレン性不飽和カルボン酸を共重合してなるカルボキシ基含有共重合体
(b)前記のカルボキシ基含有共重合体の乾燥質量に対して、0質量%を上回り、5質量%までの量の、アルコキシル化されたポリアミン;および
(c)アンモニア
を含み、
前記のアルコキシル化されたポリアミンが少なくとも40%の窒素の誘導体化度を有する、前記水性組成物。
【請求項17】
水性組成物であって、
(a)(i)ブチルアクリレート55〜75質量%;(ii)2−エチルヘキシルアクリレート0〜25質量%;(iii)0質量%を上回り、35質量%までの1つ以上のさらなるエチレン性不飽和モノマー;(iv)0質量%を上回り、5質量%までのカルボン酸含有モノマー;(v)アクリルアミド0〜5質量%;および(vi)アセトアセトキシモノマー0〜5質量%;から誘導され、−50℃〜0℃のTgを有し、かつ、燐含有モノマーを含んでいない、(メタ)アクリレート及びエチレン性不飽和カルボン酸を共重合してなるカルボキシ基含有共重合体
(b)前記のカルボキシ基含有共重合体の乾燥質量に対して、0質量%を上回り、5質量%までの量で存在する、イミノ基上の水素原子をアルコキシ基で置換してなるポリアルキレンイミンまたはアルコキシル化ポリビニルアミンから選択される誘導体化されたポリアミン;および
(c)アンモニア
を含み、
前記の誘導体化されたポリアミンが少なくとも40%の窒素の誘導体化度を有する、前記水性組成物。
【請求項18】
前記のカルボキシ基含有共重合体が−50℃〜−10℃未満のTgを有する、請求項1から17までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記の誘導体化されたポリアミンが、前記のカルボキシ基含有共重合体の乾燥質量に対して、0.5質量%〜2.5質量%で存在する、請求項1から18までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
さらに、さらなるポリマーを含む、請求項1から19までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記のさらなるポリマーが−70℃〜25℃のTgを有するコポリマーを含む、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
さらに、顔料、フィラーまたはこれらの組合せを含む、請求項1から21までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記の組成物が、ASTM D−2370に従って、室温で14日間の乾燥時間後に200psiを上回る引張強さ、および100%を上回る破断点伸びを有する、請求項1から22までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
水性組成物;および
フィラー
を含む塗料組成物であって、
前記水性組成物が、(a)65質量%以上の1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーから誘導され、かつ−50℃〜0℃のTgを有する、(メタ)アクリレート及びエチレン性不飽和カルボン酸を共重合してなるカルボキシ基含有共重合体;(b)前記水性組成物の全質量に対して0質量%超〜6質量%未満の量で存在し、イミノ基上の水素原子をアルコキシ基で置換してなるポリアルキレンイミンまたはアルコキシル化ポリビニルアミンから選択される、誘導体化されたポリアミン;および(c)アンモニアを含み、前記の誘導体化されたポリアミンが、少なくとも40%の窒素の誘導体化度を有し、
前記の水性組成物が、ASTM D−2370に従って、室温で14日間の乾燥時間後に200psiを上回る引張強さ、および100%を上回る破断点伸びを有する、前記塗料組成物。
【請求項25】
前記フィラーが、炭酸カルシウム、ネフェリンサイアナイト、長石、珪藻土、焼成した珪藻土、タルク、アルミノケイ酸塩、シリカ、アルミナ、クレー、カオリン、マイカ、葉ろう石、パーライト、バライト、ウォラストナイトおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項24に記載の塗料組成物。
【請求項26】
表面上に塗膜を形成させる方法であって、
(a)前記表面に請求項1から23までのいずれか1項に記載の水性組成物または請求項24または25に記載の塗料組成物を塗布する工程;および
(b)この塗料組成物を乾燥させて塗膜を形成させる工程を含み、
その際に、前記表面は、建築表面または屋根である、前記方法。
【請求項27】
さらに、硬化促進剤を塗布する工程を含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記表面は、金属、アスファルト、コンクリート、石材、セラミック、木材、プラスチック、ポリウレタンフォーム、ガラスおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
前記表面は、建築表面である、請求項26から28までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記表面は、外部表面である、請求項26から29までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記表面は、屋根である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記塗膜は、254μm2540μmの乾燥厚さを有する、請求項26から31までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示内容の分野
本発明の開示内容は、一般に、多種多様の用途において使用するための、誘導体化されたポリアミンを含有する塗料に関する。
【0002】
背景
外部表面上での高品質の耐性塗膜の形成は、数々の難題を投げかける。とりわけ、外部表面上での塗膜は、典型的には、塗布および乾燥中、自然の力に晒されたままである。結果として、塗料の塗布および乾燥中の耐候試験条件は、外部塗膜の品質に影響を与えうる。殊に、塗料の塗布中および/または塗布後の降雨は、幾つかの塗膜または全ての塗膜を洗い流す可能性があり、結果として、塗膜の欠陥をまねく。
【0003】
塗膜の硬化時間を短縮した場合、例えば予想外の降雨による塗膜の欠陥は、最小化されうる。この目的に対して、硬化時間を短縮するために、添加剤が塗膜中に配合された。硬化用添加剤を含有する塗膜は、速硬化挙動をまさに示す一方で、この塗膜は、低減された破断点伸びおよび耐候試験下での重大な黄変を含めて深刻な欠点を被る。結果として、速硬化性塗膜の存在は、数多くの用途には不適当であることが証明された。
【0004】
開示内容の概要
アニオン的に安定化されたコポリマー、誘導体化されたポリアミンおよび揮発性塩基を含む速硬化性の水性塗料が開示されている。塗膜は、表面に対して塗布時に速硬化時間を示す。さらに、前記塗料は、実質的に耐候試験下で黄変せず、かつ多種多様な外部用途のために、十分な破断点伸びを含めて、適当な物理的性質を示す。
【0005】
前記塗料は、1つ以上のアニオン的に安定化されたポリマーを含有する。このアニオン的に安定化されたポリマーは、(メタ)アクリレートモノマー、ビニル芳香族モノマー、エチレン性不飽和脂肪族モノマー、ビニルエステルモノマーおよびこれらの組合せを含めて、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーから誘導されうる。幾つかの実施態様において、アニオン的に安定化されたコポリマーは、−70℃〜25℃の測定されたTgを有する。
【0006】
幾つかの例において、アニオン的に安定化されたコポリマーは、(i)1つ以上の(メタ)アクリレートモノマー;(ii)1つ以上のカルボン酸含有モノマー;(iii)任意に、1つ以上のアセトアセトキシモノマー;(iv)任意に、燐含有モノマー;および(v)任意に、モノマー(i)、(ii)、(iii)および(iv)を除いた1つ以上のさらなるエチレン性不飽和モノマーから誘導体化されうる、アクリルをベースとするコポリマーである。一定の実施態様において、アニオン的に安定化されたコポリマーは、80質量%を上回る、1つ以上の(メタ)アクリレートモノマー、例えばメチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびこれらの組合せから誘導される。幾つかの実施態様において、アニオン的に安定化されたコポリマーは、0質量%を上回り、5質量%までの1つ以上のカルボン酸含有モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸およびこれらの組合せから誘導される。一定の実施態様において、アニオン的に安定化されたコポリマーは、0質量%を上回り、35質量%までの1つ以上のさらなるエチレン性不飽和モノマー、例えばスチレン、アクリルアミドおよびこれらの組合せから誘導される。
【0007】
また、前記塗料は、誘導体化されたポリアミン、例えば誘導体化されたポリアルキレンイミン、誘導体化されたポリビニルアミンまたはこれらの組合せを含有する。例示的に誘導体化されたポリアミンは、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレンおよびこれらの組合せから誘導された、アルコキシル化されたポリアミンを含む。
【0008】
適当な誘導体化されたポリアミンは、多種多様な分子量および窒素の誘導体化度を有することができる。例えば、誘導体化されたポリアミンは、5000〜5000000ダルトンの平均分子量および/または5%〜100%の窒素の誘導体化度を有することができる。幾つかの実施態様において、誘導体化されたポリアミンは、アニオン的に安定化されたコポリマーの乾燥質量に対して、0.1質量%〜5質量%で塗料中に存在している。
【0009】
また、前記塗料は、揮発性塩基を含有する。例示的な揮発性塩基は、アンモニア、低級アルキルアミン、例えばジメチルアミンおよびジエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−ジメチルアミノエタノールおよびこれらの組合せを含むが、しかし、これらに限定されない。一定の実施態様において、揮発性塩基は、アンモニアである。
【0010】
さらに、塗料は、さらなるポリマーを含有することができる。このさらなるポリマーは、例えば、1つ以上の(メタ)アクリレートモノマー、ビニル芳香族モノマー、エチレン性不飽和脂肪族モノマー、ビニルエステルモノマーおよびこれらの組合せから誘導されたポリマーまたはコポリマーであることができる。また、前記塗料は、顔料、フィラー、分散剤、合体剤、pH調節剤、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、増粘剤、殺生剤、共溶剤およびこれらの組合せを含めて、1つ以上の添加剤を含有することができる。
【0011】
また、本明細書中に記載された塗料から形成された塗膜、ならびに前記塗膜を形成させる方法が提供される。一般に、塗膜は、本明細書中に記載された塗料を表面に塗布し、この塗料を乾燥させて塗膜を形成させることにより、形成される。生じる乾燥塗膜は、典型的には、少なくとも、アニオン的に安定化されたポリマーおよび誘導体化されたポリアミンを含む。さらに、乾燥塗膜は、1つ以上のさらなるポリマーおよび/または上記された添加剤を含むことができる。塗膜の厚さは、塗料の塗装に依存して変動しうる。幾つかの実施態様において、塗膜は、10ミル〜100ミルの乾燥厚さを有する。一定の実施態様において、塗膜は、ASTM D−2370に従って、室温で14日間の乾燥時間後に200psiを上回る引張強さ、および/またはASTM D−2370に従って、室温で14日間の乾燥時間後に100%を上回る破断点伸びを有する。幾つかの実施態様において、塗膜は、1000時間の促進耐候試験の後に、ASTM D−2370に従って、200psiを上回る引張強さ、および100%を上回る破断点伸びを有する。
【0012】
前記塗料は、金属、アスファルト、コンクリート、石材、セラミック、木材、プラスチック、ポリマー、ポリウレタンフォーム、ガラスおよびこれらの組合せを含めて多種多様な表面に塗布されうるが、しかし、これらの表面に限定されるものではない。前記塗料は、内部表面または外部表面に塗布されうる。一定の実施態様において、前記表面は、建築表面、例えば屋根、壁、床またはこれらの組合せである。
【0013】
1つ以上の実施態様の詳細は、下記に明記されている。他の特徴、目的および利点は、明細書および特許請求の範囲の記載から明らかになるであろう。
【0014】
詳細な説明
本明細書中で使用されるように、“(メタ)アクリレートモノマー”の用語は、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、ジアクリレートモノマーおよびジメタクリレートモノマーを含む。
【0015】
本明細書中に記載された塗料は、1つ以上のアニオン的に安定化されたポリマーを含有する。適当なアニオン的に安定化されたポリマーは、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーから誘導されたコポリマーを含む。例示的なエチレン性不飽和脂肪族モノマーは、(メタ)アクリレートモノマー、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)、エチレン性不飽和脂肪族モノマー(例えば、ブタジエン)、ビニルエステルモノマー(例えば、ビニルアセテート)およびこれらの組合せを含む。幾つかの実施態様において、アニオン的に安定化されたポリマーは、純粋なアクリルコポリマー、スチレンアクリルコポリマー、ビニルアクリルコポリマー、またはカルボキシル化されたスチレンブタジエンコポリマーもしくはカルボキシル化されていないスチレンブタジエンコポリマーを含むことができる。
【0016】
幾つかの実施態様において、アニオン的に安定化されたポリマーは、アクリルをベースとするコポリマーを含む。アクリルをベースとするコポリマーは、1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーから誘導されたコポリマーを含む。アクリルをベースとするコポリマーは、純粋なアクリルポリマー(すなわち、(メタ)アクリレートモノマーだけから誘導されたポリマーもしくはコポリマー)、スチレンアクリルポリマー(すなわち、スチレンと1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーとから誘導されたコポリマー)、またはビニルアクリルポリマー(すなわち、1つ以上のビニルエステルモノマーと1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーとから誘導されたコポリマー)であることができる。
【0017】
幾つかの例において、アクリルをベースとするコポリマーは、
(i)1つ以上の(メタ)アクリレートモノマー;
(ii)1つ以上のカルボン酸含有モノマー;
(iii)任意に、1つ以上のアセトアセトキシモノマー;
(iv)任意に、1つ以上の燐含有モノマー;および
(v)任意に、モノマー(i)、(ii)、(iii)および(iv)を除いた1つ以上のさらなるエチレン性不飽和モノマー
を含む。
【0018】
アクリルをベースとするコポリマーは、モノマーの全質量に対して、55質量%以上の1つ以上の(メタ)アクリレートモノマー(65質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、88質量%以上、90質量%以上、91質量%以上、92質量%以上、93質量%以上、94質量%以上、または95質量%以上の(メタ)アクリレートモノマー)から誘導されうる。幾つかの実施態様において、(メタ)アクリレートモノマーは、3〜6個の炭素原子を有するα,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸および3〜6個の炭素原子を有するα,β−モノエチレン性不飽和ジカルボン酸と、1〜12個の炭素原子を有するアルカノールとのエステル(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸とC1〜C20、C1〜C12、C1〜C8またはC1〜C4アルカノールとのエステル)を含むことができる。
【0019】
例示的なアクリレートモノマーおよび(メタ)アクリレートモノマーは、メチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−メチルヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アルキルクロトネート、ビニルアセテート、ジ−n−ブチルマレート、ジオクチルマレエート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシ(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2,3−ジ(アセトアセトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチルポリグリコール(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートおよびこれらの組合せを含むが、しかし、これらに限定されるものではない。
【0020】
一定の例において、アクリルをベースとするコポリマーは、2つ以上、3つ以上または4つ以上の(メタ)アクリレートモノマーから誘導される。一定の実施態様において、アクリルをベースとするコポリマーは、少なくとも2つの(メタ)アクリレートモノマーから誘導され、その際に、(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1つは、その相応するホモポリマーに対して、80℃以上(例えば、90℃以上、100℃以上、または105℃以上)のTgを有し(例えば、メチルメタクリレート)、かつ(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1つは、その相応するホモポリマーに対して、0℃以下(例えば、−10℃以下、−20℃以下、−30℃以下、−40℃以下、または−50℃以下)のTgを有する(例えば、ブチルアクリレートおよび/または2−エチルヘキシルアクリレート)。
【0021】
特別な実施態様において、アクリルをベースとするコポリマーは、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびこれらの組合せからなる群から選択された1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーから誘導される。
【0022】
アクリルをベースとするコポリマーは、モノマーの全質量に対して、0質量%を上回り、5質量%までの1つ以上のカルボン酸含有モノマーから誘導されうる。例示的なカルボン酸モノマーは、α,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸およびα,β−モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ジメタクリル酸、エチルアクリル酸、アリル酢酸、ビニル酢酸、メサコン酸、メチレンマロン酸、シトラコン酸およびこれらの組合せを含むが、しかし、これらに限定されるものではない。一定の実施態様において、アクリルをベースとするコポリマーは、0質量%を上回り、5質量%まで、または0質量%を上回り、2.5質量%までのアクリル酸、メタクリル酸またはこれらの組合せから誘導される。
【0023】
アクリルをベースとするコポリマーは、0質量%を上回り、5質量%までの1つ以上の燐含有モノマーから誘導されうる。適当な燐含有モノマーの例は、アルコールが重合性ビニルまたはオレフィン基を含む、アルコールの燐酸二水素エステル、アリルホスフェート、ホスホアルキル(メタ)アクリレート、例えば2−ホスホエチル(メタ)アクリレート(PEM)、2−ホスホプロピル(メタ)アクリレート、3−ホスホプロピル(メタ)アクリレートおよびホスホブチル(メタ)アクリレート、3−ホスホ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)フマレートまたはビス(ヒドロキシメチル)イタコネートのモノホスフェートまたはジホスフェート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのホスフェート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのホスフェート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのホスフェート、(メタ)アクリレートの酸化エチレン縮合物のホスフェート、H2C=C(CH3)COO(CH2CH2O)nP(O)(OH)2、ならびに類似の酸化プロピレン縮合物および酸化ブチレン縮合物のホスフェート、ただし、nは、1〜50の量であるものとし、ホスホアルキルクロトネート、ホスホアルキルマレエート、ホスホアルキルフマレート、ホスホジアルキル(メタ)アクリレート、ホスホジアルキルクロトネート、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンホスフィン酸、α−ホスホノスチレン、2−メチルアクリルアミド−2−メチルプロパンホスフィン酸、(ヒドロキシ)ホスフィニルアルキル(メタ)アクリレート、(ヒドロキシ)ホスフィニルメチルメタクリレートおよびこれらの組合せを含む。一定の実施態様において、アクリルをベースとするコポリマーは、0質量%を上回り、2.5質量%までの1つ以上の燐含有モノマーから誘導される。特別な実施態様において、アクリルをベースとするコポリマーは、0質量%を上回り、5質量%まで、または0質量%を上回り、3質量%までの2−ホスホエチルメタクリレート(PEM)から誘導される。
【0024】
アクリルをベースとするコポリマーは、0質量%を上回り、5質量%までの1つ以上のアセトアセトキシモノマーから誘導されうる。適当なアセトアセトキシモノマーは、アセトアセトキシアルキルメタクリレート、例えばアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート(AAEM)、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレートおよび2,3−ジ(アセトアセトキシ)プロピル(メタ)アクリレート;アリルアセトアセテート;ビニルアセトアセテート;およびこれらの組合せを含む。一定の実施態様において、アクリルをベースとするコポリマーは、0質量%を上回り、10質量%まで、または0.5質量%〜5質量%の1つ以上のアセトアセトキシモノマーから誘導される。
【0025】
アクリルをベースとするコポリマーは、0質量%を上回り、35質量%までの1つ以上のさらなるエチレン性不飽和モノマーから誘導されうる。例えば、アクリルをベースとするコポリマーは、20個までの炭素原子を有するビニル芳香族化合物、20個までの炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、(メタ)アクリロニトリル、ビニルハロゲン化物、1〜10個の炭素原子を有するアルコールのビニルエーテル、2〜8個の炭素原子および1または2個の二重結合を有する脂肪族炭化水素、シラン含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、硫黄をベースとするモノマー、またはこれらのモノマーの組合せをさらに含むことができる。
【0026】
適当なビニル芳香族化合物は、スチレン、α−メチルスチレンおよびp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン、ビニルトルエンおよびこれらの組合せを包含する。20個までの炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステルは、例えば、ビニルラウレート、ビニルステアレート、ビニルプロピオネート、ベルサチック酸ビニルエステル、ビニルアセテートおよびこれらの組合せを含む。ビニルハロゲン化物は、塩素、フッ素または臭素によって置換されたエチレン性不飽和化合物、例えば塩化ビニルおよび塩化ビニリデンを包含することができる。ビニルエーテルは、例えば、1〜4個の炭素原子を有するアルコールのビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテルまたはビニルイソブチルエーテルを包含することができる。2〜8個の炭素原子および1または2個の二重結合を有する脂肪族炭化水素は、例えば、4〜8個の炭素原子および2個のオレフィン性二重結合を有する炭化水素、例えばブタジエン、イソプレンおよびクロロプレンを包含することができる。シラン含有モノマーは、例えば、ビニルシラン、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン(VTEO)、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)およびビニルトリイソプロポキシシランおよび(メタ)アクリラトアルコキシシラン、例えば(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよびγ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシランを包含することができる。(メタ)アクリルアミド誘導体は、例えば、下記の一般構造式
CH2=CR1C(O)NR2C(O)R3
〔式中、R1は、水素またはメチルであり;R2は、水素、C1〜C4アルキル基またはフェニル基であり;かつR3は、水素、C1〜C4アルキル基またはフェニル基である〕によって規定された、ケト基を含むアミド官能性モノマーを包含する。例えば、(メタ)アクリルアミド誘導体は、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)またはジアセトンメタクリルアミドであることができる。硫黄含有モノマーは、例えば、スルホン酸およびスルホネート、例えばビニルスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−スルホキシエチルメタクリレート、ビニルブチルスルホネート、スルホン、例えばビニルスルホン、スルホキシド、例えばビニルスルホキシドおよびスルフィド、例えば1−(2−ヒドロキシエチルチオ)ブタジエンを包含する。存在する場合、硫黄含有モノマーは、一般に、0質量%を上回り、5質量%までの量で存在する。
【0027】
幾つかの場合において、前記塗料は、
(i)メチルメタクリレート10〜15質量%、
(ii)ブチルアクリレート50〜70質量%、
(iii)2−エチルヘキシルアクリレート15〜30質量%、
(iv)カルボン酸含有モノマー0質量%を上回り、5質量%まで、
(v)アクリルアミド0〜5質量%、
(vi)アセトアセトキシモノマー0〜5質量%、および
(vii)燐含有モノマー0〜5質量%
から誘導された、アクリルをベースとするコポリマーを含む。
【0028】
幾つかの場合において、前記塗料は、
(i)ブチルアクリレート55〜75質量%、
(ii)2−エチルヘキシルアクリレート0〜25質量%、
(iii)スチレン10〜35質量%、
(iv)カルボン酸含有モノマー0質量%を上回り、5質量%まで、
アクリルアミド0〜5質量%、
(vi)アセトアセトキシモノマー0〜5質量%および
(vii)燐含有モノマー0〜5質量%
から誘導された、アクリルをベースとするコポリマーを含む。
【0029】
幾つかの実施態様において、アニオン的に安定化されたポリマーは、スチレンブタジエンコポリマーを包含する。スチレンブタジエンコポリマーは、カルボキシル化されていてよい(すなわち、1つ以上のカルボン酸含有モノマーからさらに誘導されていてよい)かまたはカルボキシル化されていなくともよい。
【0030】
アニオン的に安定化されたポリマーは、例えばASTM 3418/82の記載と同様に中間点温度を用いて示差走査熱量測定(DSC)によって測定された、−70℃〜25℃のガラス転移温度(Tg)を有することができる。一定の例において、アニオン的に安定化されたコポリマーは、−70℃を上回る(例えば、−60℃を上回る、−50℃を上回る、−40℃を上回る、−30℃を上回る、−20℃を上回る、−10℃を上回る、または0℃を上回る)測定されたTgを有する。幾つかの場合において、アニオン的に安定化されたコポリマーは、15℃未満(例えば、10℃未満、0℃未満、−10℃未満、−20℃未満、−30℃未満、−40℃未満、−50℃未満、または−60℃未満)の測定されたTgを有する。一定の実施態様において、アニオン的に安定化されたコポリマーは、−60℃〜15℃、−55℃〜10℃、または−50℃〜0℃の測定されたTgを有する。幾つかの実施態様において、アニオン的に安定化されたポリマーは、25℃〜80℃のTgを有することができる。前記実施態様において、前記塗料は、さらに、アニオン的に安定化されたポリマーのTgを皮膜形成範囲に抑制するのに適当な合体剤を含むことができる。
【0031】
アニオン的に安定化されたポリマーは、例えば、フリーラジカル乳化重合、懸濁重合およびミニエマルション重合を含めて、異質重合技術によって製造されうる。幾つかの例において、アニオン的に安定化されたポリマーは、フリーラジカル乳化重合を用いて前記モノマーを重合させることによって製造される。乳化重合温度は、10℃〜130℃または50℃〜90℃の範囲であることができる。重合媒体は、水だけを含むことができるかまたは水と水混和性液体、例えばメタノール、エタノールまたはテトラヒドロフランとの混合物を含むことができる。幾つかの実施態様において、重合媒体は、有機溶剤を含まず、かつ水だけを含む。
【0032】
前記乳化重合は、バッチ処理法として、セミバッチ処理法として、または連続的方法の形で実施されうる。幾つかの実施態様において、モノマーの一部は、重合温度に加熱されかつ部分的に重合させることができ、およびモノマーバッチの残りは、その後に、連続的に、段階的に、または濃度勾配を重ね合わせて、重合帯域に供給されうる。幾つかの実施態様において、前記コポリマーは、一段階法で製造される(すなわち、多段階ポリマー粒子、例えばコア/シェル型粒子を製造するように異なるモノマー組成を有する別々の供給材料を包含しない)。
【0033】
前記乳化重合は、水溶性開始剤および調整剤を含めて、さまざまな補助剤を用いて実施されうる。乳化重合のための水溶性開始剤の例は、ペルオキソ二硫酸のアンモニウム塩およびアルカリ金属塩、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム、過酸化水素または有機過酸化物、例えばt−ブチルヒドロペルオキシドである。また、酸化還元(レドックス)開始剤系は、乳化重合のための開始剤として適している。レドックス開始剤系は、少なくとも1つの、通常、無機還元剤と1つの有機酸化剤または無機酸化剤とから構成されている。酸化成分は、例えば、乳化重合に対して既に上記に規定された開始剤を含む。還元成分は、例えば、亜硫酸のアルカリ金属塩、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸のアルカリ金属塩、例えば二亜硫酸ナトリウム、脂肪アルデヒドおよびケトンとのビスルフィット付加化合物、例えばアセトンビスルフィット、または還元剤、例えばヒドロキシメタンスルフィン酸およびその塩、またはアスコルビン酸である。レドックス開始剤系は、当該金属成分が複数の原子価状態で存在しうる可溶性金属化合物の併用下で使用されうる。典型的なレドックス開始剤系は、例えば、アスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキソ二硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/Naヒドロキシメタンスルフィネート、またはt−ブチルヒドロペルオキシド/アスコルビン酸を含む。個々の成分、例えば還元成分は、混合物であってもよく、その際に、1つの例は、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩と二亜硫酸ナトリウムとの混合物である。前記化合物は、通常、水溶液の形で使用され、その際に、より低い濃度は、分散液中に受け入れることができる水の量によって決定され、かつ高い濃度は、水中でのそれぞれの化合物の溶解度によって決定される。濃度は、溶液に対して、0.1質量%〜30質量%、0.5質量%〜20質量%、または1.0質量%〜10質量%であることができる。前記開始剤の量は、一般に、重合されるモノマーに対して、0.1質量%〜10質量%または0.5質量%〜5質量%である。また、2つ以上の異なる開始剤は、乳化重合において使用されてよい。残りのモノマーの除去のためには、開始剤は、乳化重合の終結後に添加されうる。
【0034】
前記重合において、コポリマーの分子量を減少させるために、分子量調整剤または連鎖移動剤を、重合されるモノマー100質量部に対して、例えば、0〜0.8質量部の量で使用することが可能である。適当な例は、チオール基を有する化合物、例えばt−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチルアクリルエステル、メルカプトエタノール、メルカプトプロピルトリメトキシシランおよびt−ドデシルメルカプタンを包含する。さらに、チオール基を含まない調整剤、例えばテルピノレンを使用することができる。幾つかの実施態様において、エマルションポリマーは、モノマー量に対して、0質量%を上回り、0.5質量%までの少なくとも1つの分子量調整剤の存在下で製造される。幾つかの実施態様において、エマルションポリマーは、分子量調整剤0.3質量%未満または0.2質量%未満(例えば、0.10質量%〜0.15質量%)の存在下で製造される。
【0035】
分散剤、例えば界面活性剤は、重合中に添加されてもよく、水性媒体中でのモノマーの分散を維持するのに役立つ。例えば、前記重合は、界面活性剤を3質量%未満または1質量%未満含むことができる。幾つかの実施態様において、前記重合は、実質的には界面活性剤を含まないが、1つ以上の界面活性剤を0.05質量%未満または0.01質量%未満含むことができる。
【0036】
陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤は、重合中、使用されうる。適当な界面活性剤は、3〜50または4〜30のエトキシル化度を有する、エトキシル化されたC8〜C36またはC12〜C18脂肪アルコール、3〜50のエトキシル化度を有する、エトキシル化された、モノ−C4〜C12またはC4〜C9アルキルフェノール、ジ−C4〜C12またはC4〜C9アルキルフェノールおよびトリ−C4〜C12またはC4〜C9アルキルフェノール、スルホコハク酸のジアルキルエステルのアルカリ金属塩、C8〜C12アルキルスルフェートのアルカリ金属およびアンモニウム塩、C12〜C18アルキルスルホン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、ならびにC9〜C18アルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩を包含する。陽イオン性乳化剤は、例えば、少なくとも1個のアミノ基またはアンモニウム基を有し、かつ少なくとも1個のC8〜C22アルキル基を有する化合物を包含する。
【0037】
さらに、本明細書中に記載された前記塗料は、1つ以上の誘導体化されたポリアミンを含有する。前記の誘導体化されたポリアミンは、硬化剤として機能し、かつ塗料の硬化時間を短縮させる。
【0038】
ポリアミンは、複数の第一級アミノ基、第二級アミノ基またはこれらの組合せを含む化合物である。一般に、ポリアミンは、少なくとも3個の第一級アミノ基、第二級アミノ基またはこれらの組合せを含む。例えば、ポリアミンは、少なくとも5個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基、少なくとも10個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基、少なくとも15個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基、少なくとも20個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基、少なくとも25個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基、少なくとも50個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基、或いはそれ以上を含むことができる。ポリアミンは、任意に、さらに1個以上の第三級アミノ基を含むことができる。
【0039】
ポリアミンは、アミノ基を含む、1つ以上のモノマーから誘導されたポリマーまたはコポリマーであることができる。このタイプの適当なモノマーは、ビニルアミン、アリルアミンおよびエチレンイミンを包含する。他の適当な、アミノ基を含むモノマーは、1個以上の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を含む(メタ)アクリレートモノマー、例えば2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−(t−ブチルアミノ)エチルアクリレート、2−(t−ブチルアミノ)エチルメタクリレートを包含する。幾つかの実施態様において、ポリアミンは、アミノ基を有する1つ以上のモノマーから誘導されたアクリルポリマーである。
【0040】
本明細書中で使用される、誘導体化されたポリアミンは、アミンの1個以上の窒素原子が誘導体化されたようにN原子上で誘導体化されているポリアミンである(すなわち、ポリアミン内の幾つかの第一級アミノ基および/または第二級アミノ基が共有結合により変性されて第一級アミノ基および/または第二級アミノ基中の1個以上の水素原子が非水素部分と置き換えられた)。例えば、1個以上の第一級アミノ基を含むポリアミンの場合、誘導体化されたポリアミンは、第一級アミノ基の少なくとも一部が第二級アミノ基または第三級アミノ基に変換されたポリアミンを包含することができる。1個以上の第二級アミノ基を含むポリアミンの場合、誘導体化されたポリアミンは、第二級アミノ基の少なくとも一部が第三級アミノ基に変換されたポリアミンを包含することができる。
【0041】
適当な誘導体化されたポリアミンは、刊行物中に公知であり、かつ幾つかの第一級アミノ基および/または第二級アミノ基が共有結合により変性されて1個以上の水素原子が非水素部分(R)と置き換えられたポリアミンを包含する。幾つかの実施態様において、誘導体化されたポリアミン内のそれぞれのRは、任意に、1個以上のヒドロキシル基で置換された、C1〜C6アルキル基;アシル基(−COR1)、ただし、R1は、C1〜C6アルキル基であるかまたは任意に、1個以上のヒドロキシル基で置換された、C5〜C7アリール基もしくはC5〜C7ヘテロアリール基であるものとし;(−COOR2)、ただし、R2は、C1〜C6アルキル基であるかまたは任意に、1個以上のヒドロキシル基で置換された、C5〜C7アリール基もしくはC5〜C7ヘテロアリール基であるものとし;(−SO23)、ただし、R3は、C1〜C6アルキル基であるかまたは任意に、1個以上のヒドロキシル基で置換された、C5〜C7アリール基もしくはC5〜C7ヘテロアリール基であるものとし、およびポリ(アルキレンオキシド)基からなる群から個々に選択されている。誘導体化されたポリアミン内に存在する複数のR基は、誘導体化されたポリアミンが親水性を有し、この親水性により、誘導体化されたポリアミンが本明細書中に記載された水性組成物と相容性になるように選択されうる。例えば、誘導体化されたポリアミン内の複数のR基は、誘導体化されたポリアミンが水溶性または水分散性であるように選択されうる。幾つかの実施態様において、少なくとも50%の誘導体化されたアミノ基は、アルコキシル化されたアミノ基である。
【0042】
幾つかの実施態様において、誘導体化されたポリアミンは、アルコキシル化されたポリアミノ基を含む。適当なアルコキシル化ポリアミンは、2〜8個の炭素原子を有するアルキレンオキシドから誘導されたアルコキシル化ポリアミンを含む。一定の例において、アルコキシル化ポリアミンは、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレンまたはこれらの組合せから誘導される。特別な実施態様において、アルコキシル化ポリアミンは、アルコキシル化ポリアルキレンイミン、アルコキシル化ポリビニルアミンまたはこれらの組合せである。適当なアルコキシル化ポリビニルアミンは、米国特許第7268199号明細書、Andreら、中に記載された当該ポリアミンであり、この刊行物中のアルコキシル化ポリビニルアミンの教示内容は、参照のために本明細書に援用される。また、適当なアルコキシル化ポリアルキレンイミンおよびその製造法は、刊行物中に公知である。例えば、米国特許第7736525号明細書、Thankachanら、米国特許第6811601号明細書、Borzykら、およびWO 99/67352参照のこと。これらの全ての刊行物中のアルコキシル化ポリアルキレンイミンの教示内容は、参照のために本明細書に援用される。
【0043】
また、適当なアルコキシル化ポリアミンは、例えば、米国特許第8193144号明細書、Tannerら、中に記載された当該ポリアミンを含み、この刊行物中のアルコキシル化ポリアミンの教示内容は、参照のために本明細書に援用される。特別な実施態様において、前記組成物は、エトキシル化ポリエチレンイミン、プロポキシル化ポリエチレンイミン、ブトキシル化ポリエチレンイミンまたはこれらの組合せを含有する。
【0044】
幾つかの実施態様において、誘導体化されたポリアミンは、アルキル化ポリアルキレンイミン(例えば、アルキル化ポリエチレンイミンまたはアルキル化ポリビニルアミン)、ヒドロキシアルキル化ポリアルキレンイミン(例えば、ヒドロキシアルキル化ポリエチレンイミンまたはヒドロキシアルキル化ポリビニルアミン)、アシル化ポリアルキレンイミン(例えば、アシル化ポリエチレンイミンまたはアシル化ポリビニルアミン)、またはこれらの組合せを包含する。
【0045】
誘導体化されたポリアミンは、一般に、アニオン的に安定化されたコポリマーの乾燥質量に対して、10質量%未満の量で前記組成物中に配合される。前記組成物中に存在する誘導体化されたポリアミンの量は、誘導体化されたポリアミンの同一性、前記組成物中に存在する、アニオン的に安定化されたコポリマーの性質および前記組成物の望ましい硬化時間を考慮して選択されうる。
【0046】
幾つかの例において、誘導体化されたポリアミンは、0.05質量%を上回る、0.1質量%を上回る、0.15質量%を上回る、0.20質量%を上回る、0.25質量%を上回る、0.3質量%を上回る、0.4質量%を上回る、0.5質量%を上回る、0.6質量%を上回る、0.7質量%を上回る、0.8質量%を上回る、0.9質量%を上回る、1.0質量%を上回る、1.25質量%を上回る、1.5質量%を上回る、2質量%を上回る、または2.5質量%を上回る量で存在する。幾つかの例において、誘導体化されたポリアミンは、8質量%未満、7.5質量%未満、6質量%未満、5質量%未満、4.5質量%未満、4質量%未満、3.5質量%未満、3質量%未満、2.5質量%未満、2質量%未満、1.5質量%未満、1質量%未満、または0.5質量%未満の量で存在する。
【0047】
幾つかの実施態様において、誘導体化されたポリアミンは、アニオン的に安定化されたコポリマーの乾燥質量に対して、0.1質量%〜5質量%で前記組成物中に存在する。一定の実施態様において、誘導体化されたポリアミンは、アニオン的に安定化されたコポリマーの乾燥質量に対して、0.5質量%〜2.5質量%で前記組成物中に存在する。
【0048】
分子量の範囲および窒素の誘導体化度を有する誘導体化されたポリアミンは、前記塗料中に配合されうる。前記組成物の硬化時間、ならびに生じた塗膜の物理的性質は、誘導体化されたポリアミンの負荷レベル、分子量、ミクロ構造(例えば、分岐度)および窒素の誘導体化度を選択することによって変動されうる。また、前記組成物の硬化時間、ならびに生じた塗膜の物理的性質は、湿度および温度を含めて、塗料の塗布中および乾燥中の周囲条件によって影響を及ぼされうる。幾つかの実施態様において、特別な誘導体化されたポリアミンは、湿度および温度を含めて、周囲条件を考慮して特別な負荷レベルで前記塗料中に配合され、望ましい硬化時間、望ましい物理的性質またはこれらの組合せを有する塗膜を達成する。
【0049】
幾つかの実施態様において、誘導体化されたポリアミンは、500ダルトンを上回る、1000ダルトンを上回る、2500ダルトンを上回る、5000ダルトンを上回る、10000ダルトンを上回る、15000ダルトンを上回る、20000ダルトンを上回る、25000ダルトンを上回る、30000ダルトンを上回る、35000ダルトンを上回る、40000ダルトンを上回る、50000ダルトンと上回る、60000ダルトンを上回る、70000ダルトンを上回る、80000上回る、90000ダルトンを上回る、または100000ダルトンを上回る平均分子量を有する。前記の誘導体化されたポリアミンは、5000000ダルトン未満、2500000ダルトン未満、1000000ダルトン未満、750000ダルトン未満、550000ダルトン未満、500000ダルトン未満、450000ダルトン未満、400000ダルトン未満、350000ダルトン未満、300000ダルトン未満、350000ダルトン未満、300000ダルトン未満、250000ダルトン未満、200000ダルトン未満、175000ダルトン未満、150000ダルトン未満、125000ダルトン未満、または100000ダルトン未満の平均分子量を有することができる。一定の実施態様において、前記の誘導体化されたポリアミンは、5000〜5000000ダルトン、5000ダルトン〜500000ダルトン、または40000〜150000ダルトンの平均分子量を有する。
【0050】
一般に、前記の誘導体化されたポリアミンは、1個以上の水素原子を非水素部分で置き換えるために、共有結合により変性されたポリアミン内で有効な窒素の百分率として規定された、少なくとも5%の窒素の誘導体化度を有するであろう。一定の実施態様において、前記の誘導体化されたポリアミンは、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の窒素の誘導体化度を有する。一定の実施態様において、前記の誘導体化されたポリアミンは、99%未満、98%未満、97%未満、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、または75%未満の窒素の誘導体化度を有する。
【0051】
幾つかの実施態様において、前記の誘導体化されたポリアミンは、5%〜100%の窒素の誘導体化度を有する。一定の実施態様において、前記の誘導体化されたポリアミンは、50%〜95%または70%〜90%の窒素の誘導体化度を有する。前記の誘導体化されたポリアミンがアルコキシル化ポリアミンである実施態様において、窒素の誘導体化度は、相応するヒドロキシアルキル基に変換されたポリアミン内で有効な窒素の百分率として規定された、窒素のアルコキシル化度と呼称されうる。
【0052】
本明細書中に記載された速硬化性塗料は、揮発性塩基も含む。揮発性塩基は、水中で可溶性である塩基性物質であり、通常の貯蔵条件下で水性塗料中に残留し、かつ適当な乾燥条件下で水性塗料から蒸発する。
【0053】
一般に、1つ以上の揮発性塩基は、塗料のpHを7.5〜12.5の範囲内または9〜11の範囲内で維持するために有効な量で前記組成物中に配合される。幾つかの実施態様において、1つ以上の揮発性塩基は、0.1質量%〜5.0質量%で前記組成物中に配合される。一定の実施態様において、1つ以上の揮発性塩基は、0.5質量%〜2.5質量%で前記組成物中に配合される。
【0054】
適当な揮発性塩基は、塩基度および揮発度を含めて、幾つかのファクターに基づいて選択されうる。例示的な揮発性塩基は、アンモニア、低級アルキルアミン、例えばジメチルアミン、トリエチルアミンおよびジエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−ジメチルアミノエタノールおよびこれらの組合せを包含するが、しかし、これらに限定されるものではない。一定の実施態様において、揮発性塩基は、アンモニアである。幾つかの場合において、アンモニアは、前記塗料中に存在する唯一の揮発性塩基である。それとは別に、アンモニアは、他の揮発性塩基、非揮発性塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、またはこれらの組合せと混合して配合されうる。
【0055】
幾つかの実施態様において、前記組成物は、さらにアニオン的に安定化されているかまたは安定化されていない、さらなるポリマーを含有することができる。このさらなるポリマーは、例えば、本明細書中に記載されたモノマーから誘導されるポリマーまたはコポリマーであることができる。
【0056】
存在する場合、さらなるポリマーは、典型的には、アニオン的に安定化されたコポリマーの質量に対して、0質量%を上回り、15質量%までの量で存在する。幾つかの例において、さらなるポリマーは、アニオン的に安定化されたコポリマーの質量に対して、10質量%未満、7.5質量%未満、5質量%未満、2.5質量%未満、2質量%未満、1.5質量%未満、または1質量%未満の量で存在する。存在する場合、さらなるポリマーは、一般に、アニオン的に安定化されたコポリマーの質量に対して、0.05質量%を上回る、0.1質量%を上回る、0.25質量%を上回る、0.5質量%を上回る、0.75質量%を上回る、1.0質量%を上回る、1.5質量%を上回る、または2.5質量%を上回る量で存在する。幾つかの実施態様において、さらなるコポリマーは、アニオン的に安定化されたコポリマーの質量に対して、0.1質量%〜10質量%で前記組成物中に存在する。
【0057】
幾つかの実施態様において、さらなるポリマーは、−70℃〜60℃のTgを有するポリマーを包含することができる。幾つかの場合において、さらなるポリマーは、−70℃を上回る(例えば、−60℃を上回る、−50℃を上回る、−40℃を上回る、−30℃を上回る、−20℃を上回る、−10℃を上回る、0℃を上回る、10℃を上回る、20℃を上回る、または30℃を上回る)測定されたTgを有する。一定の場合において、さらなるポリマーは、60℃を未満(例えば、50℃未満、40℃未満、30℃未満、20℃未満、10℃未満、0℃未満、−10℃未満、−20℃未満、−30℃未満、−40℃未満、または−50℃未満)の測定されたTgを有する。幾つかの場合において、さらなるポリマーは、−70℃〜50℃の測定されたTgを有する。一定の場合において、さらなるポリマーは、−20℃〜50℃のTgを有する。幾つかの実施態様において、さらなるコポリマーは、60℃を上回るかまたは−70℃を下回るTgを有する。
【0058】
幾つかの実施態様において、さらなるポリマーは、アニオン的に安定化されたコポリマーのTgよりも高いTgを有する。例えば、さらなるポリマーは、アニオン的に安定化されたコポリマーの測定されたTgよりも5℃以上、10℃以上、15℃以上、20℃以上、25℃以上、30℃以上、35℃以上、40℃以上、45℃以上、または50℃以上高い、測定されたTgを有することができる。
【0059】
前記水性塗料は、さらに、顔料、フィラー、分散剤、合体剤、pH調節剤、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、増粘剤、殺生剤、共溶剤およびこれらの組合せを含めて、1つ以上の添加剤を包含することができる。前記組成物における添加剤の選択は、アクリルポリマー分散液の性質および前記塗料の意図された使用を含めて、数多くのファクターによって影響が及ぼされるであろう。
【0060】
適当な顔料の例は、金属酸化物、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄またはこれらの組合せを包含する。一定の実施態様において、前記組成物は、二酸化チタン顔料を含む。商業的な二酸化チタン顔料の例は、Kronos Worldwide,Inc.社(Cranbury,N.J.)から商業的に入手できる、KRONOS(登録商標)2101、KRONOS(登録商標)2310、DuPont社(Wilmington,Del.)から商業的に入手できる、TI−PURE(登録商標)R−900、またはMillenium Inorganic Chemicals社から商業的に入手できる、TIONA(登録商標)ATIである。また、二酸化チタンは、濃縮された分散液の形で入手できる。二酸化チタン分散液の例は、KRONOS(登録商標)4311であり、これも、Kronos Worldwide,Inc.社から入手できる。
【0061】
適当なフィラーの例は、炭酸カルシウム、ネフェリンサイアナイト(ネフェリン25%、ナトリウム長石55%およびカリウム長石20%)、長石(アルミノケイ酸塩)、珪藻土、焼成した珪藻土、タルク(水和ケイ酸マグネシウム)、アルミノケイ酸塩、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、クレー(水和ケイ酸アルミニウム)、カオリン(カオリナイト、水和ケイ酸アルミニウム)、マイカ(含水アルミニウムケイ酸カリウム)、葉ろう石(アルミニウムの含水ケイ酸塩)、パーライト、バライト(硫酸バリウム)、ウォラストナイト(メタケイ酸カルシウム)およびこれらの組合せを包含する。一定の実施態様において、前記組成物は、炭酸カルシウムフィラーを含む。
【0062】
適当な分散剤の例は、ポリ酸分散剤および疎水性コポリマー分散剤である。ポリ酸分散剤は、典型的には、ポリカルボン酸、例えばポリアクリル酸またはポリメタクリル酸であり、これらは、部分的または全体的に、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩または低級アルキル第四級アンモニウム塩の形である。疎水性コポリマー分散剤は、アクリル酸、メタクリル酸またはマレイン酸と疎水性モノマーとのコポリマーを含む。一定の実施態様において、前記組成物は、ポリアクリル酸系分散剤、例えばBASF SE社から商業的に入手できるPigment Disperser Nを含む。
【0063】
乾燥中の皮膜形成に役立つ適当な合体剤は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートおよびこれらの組合せを包含する。
【0064】
適当な増粘剤の例は、疎水的に変性されたエチレンオキシドウレタン(HEUR)ポリマー、疎水的に変性されたアルカリ可溶性エマルジョン(HASE)ポリマー、疎水的に変性されたヒドロキシエチルセルロース(HMHECs)、疎水的に変性されたポリアクリルアミドおよびこれらの組合せを包含する。HEURポリマーは、ジイソシアネートと疎水性炭化水素基で末端キャップされたポリエチレンオキシドとの直鎖状反応生成物である。HASEポリマーは、(メタ)アクリル酸のホモポリマーであるか、または(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、もしくは疎水性ビニルモノマーで変性されたマレイン酸のコポリマーである。HMHECsは、疎水性アルキル鎖で変性されたヒドロキシエチルセルロースを含む。疎水的に変性されたポリアクリルアミドは、アクリルアミドと疎水性アルキル鎖(−アルキルアクリルアミド)で変性されたアクリルアミドとのコポリマーを含む。一定の実施態様において、前記塗料は、疎水的に変性されたヒドロキシエチルセルロース増粘剤を含む。
【0065】
適当なpH調節剤の例は、アミノアルコール、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、1−アミノ−2−プロパノール(AMP)、アンモニアおよびこれらの組合せを包含する。
【0066】
消泡剤は、前記塗料の混合中および/または塗布中の泡立ちを最小限にするのに役立つ。適当な消泡剤は、シリコーン油消泡剤、例えばポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサンおよびこれらの組合せを包含する。例示的なシリコーンをベースとする消泡剤は、BYK USA Inc.社(Wallingford,Conn.)から入手できるBYK(登録商標)−035、Evonik Industries社(Hopewell,Va.)から入手できるTEGO(登録商標)シリーズの消泡剤、およびAshland Inc.社(Covington,Ky.)から入手できるDREWPLUS(登録商標)シリーズの消泡剤を包含する。
【0067】
適当な界面活性剤は、非イオン性界面活性剤および陰イオン性界面活性剤を含む。非イオン性界面活性剤の例は、炭素原子数約7〜約18のアルキル基を有しかつ約6個〜約60個のオキシエチレン単位を有するアルキルフェノキシポリエトキシエタノール;長鎖状カルボン酸の酸化エチレン誘導体;長鎖状アルコールの類似の酸化エチレン縮合物およびこれらの組合せである。例示的な陰イオン性界面活性剤は、スルホコハク酸のアンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩および低級アルキル第四級アンモニウム塩、高級脂肪アルコールスルフェート、アリールスルホネート、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネートおよびこれらの組合せを包含する。一定の実施態様において、前記組成物は、非イオン性アルキルポリエチレングリコール界面活性剤、例えばBASF SE社から商業的に入手できるLUTENSOL(登録商標)TDA 8またはLUTENSOL(登録商標)AT−18を含む。一定の実施態様において、前記組成物は、陰イオン性アルキルエーテルスルフェート界面活性剤、例えばBASF SE社から商業的に入手できるDISPONIL(登録商標)FES 77を含む。一定の実施態様において、前記組成物は、陰イオン性ジフェニルオキシドジスルホネート界面活性剤、例えばPilot Chemical社から商業的に入手できるCALFAX(登録商標)DB−45を含む。
【0068】
適当な殺生剤は、貯蔵中、前記塗料中での細菌類および他の微生物類の成長を抑制するために配合されうる。例示的な殺生剤は、2−[(ヒドロキシメチル)アミノ]エタノール、2−[(ヒドロキシメチル)アミノ]2−メチル−1−プロパノール、o−フェニルフェノール、ナトリウム塩、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CIT)、2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3−イソチアゾロンならびにこれらの容認できる塩および組合せを包含する。また、適当な殺生剤は、塗料中のかびまたはその胞子の成長を抑制する防かび剤を含む。防かび剤の例は、2−(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、2−N−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ジヨードメチル−p−トリルスルホンならびにこれらの容認できる塩および組合せを包含する。一定の実施態様において、前記塗料は、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンまたはその塩を含有する。このタイプの殺生剤は、Arch Chemicals, Inc.社(Atlanta,GA)から商業的に入手できるPROXEL(登録商標)BD20を含む。
【0069】
例示的な共溶剤および可塑剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールおよびこれらの組合せを包含する。
【0070】
任意に、前記組成物中に配合されうる他の適当な添加剤は、レオロジー改質剤、湿潤剤および展着剤、均展剤、導電性添加剤、定着剤、粘着防止剤、へこみ防止剤およびはじき防止剤、凍結防止剤、腐食防止剤、静電防止剤、難燃剤および膨張添加剤、染料、蛍光増白剤および蛍光添加剤、UV吸収剤および光安定剤、キレート形成剤、清浄添加剤、架橋剤、艶消し剤、合体剤、保湿剤、殺虫剤、滑剤、付臭剤、油、ワックスおよびスリップ剤、汚れ防止剤、耐汚染剤およびこれらの組合せを包含する。
【0071】
上記塗料は、50〜85%または60〜75%の固体含量を有する水性分散液として提供されうる。幾つかの場合には、本明細書中に記載された塗料は、粉末調合物として提供されうる。このタイプの粉末調合物は、アニオン的に安定化されたコポリマー、誘導体化されたポリアミンおよび任意に、上記した1つ以上の添加剤(例えば、顔料、フィラーおよび/または噴霧乾燥剤)を含む。前記粉末調合物は、使用前に、例えば、上記水性塗料を提供するために、水、1つ以上の揮発性塩基および任意に、1つ以上の共溶剤を添加することによって再生されうる。
【0072】
また、本明細書中に記載された塗料から形成された塗膜ならびにこの塗膜の形成方法が提供される。一般に、塗膜は、本明細書中に記載された塗料を表面に塗布し、この塗料を乾燥させて塗膜を形成させることによって形成される。生じた乾燥塗膜は、典型的には、アニオン的に安定化されたポリマーおよび誘導体化されたポリアミンを最小量で含む。前記乾燥塗膜は、さらに、上記の1つ以上の添加剤(例えば、顔料および/またはフィラー)を含むことができる。
【0073】
塗料は、吹付塗り、ロール塗り、刷毛塗りまたは塗布を含めて、任意の適当な塗装技術によって表面に塗布されうる。塗料は、シングルコートで塗布されうるかまたは特別な用途に必要とされるようなマルチシーケンスコート(例えば、2コートで、または、3コートで)で塗布されうる。一般に、塗料は、周囲条件下で乾燥させることができる。しかし、一定の実施態様において、前記塗料は、例えば、加熱によって、および/または塗膜上での空気の循環によって乾燥されうる。
【0074】
前記塗膜は、表面上での塗膜の硬化時間を短縮するために、硬化促進剤と一緒に共塗布されうる。適当な硬化促進剤は、化合物、例えば揮発性塩基を消費しかつ塗膜硬化時間を短縮させる酸を包含する。例えば、前記硬化促進剤は、希酸、例えば酢酸またはクエン酸であることができる。硬化促進剤は、塗料の塗布前に表面に塗布されうるか、塗料と同時に表面に塗布されうるか、または乾燥前に塗料が表面に塗布された後に、この塗料に塗布されうる。
【0075】
塗膜の厚さは、塗料の塗装に依存して変動しうる。例えば、塗膜は、少なくとも10ミル(約254μm)(例えば、少なくとも15ミル(約381μm)、少なくとも20ミル(約508μm)、少なくとも25ミル(約635μm)、少なくとも30ミル(約762μm)、または少なくとも40ミル(約1016μm))の乾燥厚さを有することができる。幾つかの例において、塗膜は、100ミル(約2540μm)未満、(例えば、90ミル未満(約2286μm)、80ミル未満(約2032μm)、75ミル未満(約1905μm)、60ミル未満(約1524μm)、50ミル未満(約1450μm)、40ミル未満(約1016μm)、35ミル未満(約889μm)、または30ミル(約762μm)未満)の乾燥厚さを有する。幾つかの実施態様において、塗膜は、10ミル(約254μm)〜100ミル(約2540μm)の乾燥厚さを有する。一定の実施態様において、塗膜は、10ミル(約254μm)〜40ミル(約1016μm)の乾燥厚さを有する。
【0076】
本明細書中に記載された塗膜の破断点伸びは、ASTM D−2370に従って測定されうる。一般に、前記塗膜は、少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、または少なくとも200%)の、ASTM D−2370に従って測定した、少なくとも14日の乾燥時間後の破断点伸びを示す。幾つかの実施態様において、前記塗膜は、少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、または少なくとも200%)の、ASTM D−2370に従って測定した、1000時間の促進耐候試験の後の破断点伸びを示す。
【0077】
本明細書中に記載された塗膜の引張強さは、ASTM D−2370に従って測定されうる。一般に、前記塗膜は、少なくとも140psi(例えば、少なくとも150psi、少なくとも160psi、少なくとも170psi、少なくとも180psi、少なくとも190psi、少なくとも200psi、少なくとも210psi、少なくとも220psi、または少なくとも225psi)の、ASTM D−2370に従って測定した、少なくとも14日の乾燥時間後の引張強さを示す。幾つかの実施態様において、前記塗膜は、少なくとも140psi(例えば、少なくとも150psi、少なくとも160psi、少なくとも170psi、少なくとも180psi、少なくとも190psi、少なくとも200psi、少なくとも210psi、少なくとも220psi、または少なくとも225psi)の、ASTM D−2370に従って測定した、1000時間の促進耐候試験の後の引張強さを示す。
【0078】
前記塗料は、金属、アスファルト、コンクリート、石材、セラミック、木材、プラスチック、ポリウレタンフォーム、ガラスおよびこれらの組合せを含めて多種多様な表面に塗布されうるが、しかし、これらの表面に限定されるものではない。
【0079】
前記塗料は、内部表面または外部表面に塗布されうる。一定の実施態様において、前記表面は、建築表面、例えば屋根、壁、床またはこれらの組合せである。前記建築表面は、地面の上方に、地面の下方に、またはこれらの組合せに位置決めされうる。
【0080】
幾つかの場合において、前記塗膜は、表面に塗布されて湿分に対するバリアを形成する。例えば、塗膜は、屋根または壁に塗装されて水漏れを阻止することができるかまたは水漏れを封止することができる。前記塗膜は、耐水性組成物として、土台、壁または屋根に塗装されて水の浸透を阻止する(例えば、弾性耐候性膜を形成させる)ことができる。幾つかの場合において、前記塗膜は、常用の耐候性膜と組み合わせて表面に塗装される。また、前記塗膜は、外断熱仕上工法(EIFS)の一部として塗装されうる。
【0081】
一定の実施態様において、前記塗膜は、表面に塗装されて太陽放射を反射する。この場合には、前記塗膜は、一般に、太陽エネルギーを反射する1つ以上の顔料、例えば二酸化チタンを含有するであろう。太陽熱を反射する場合、前記塗膜は、表面冷却に役立ちうる。建築表面、例えば屋根に塗装された塗膜の場合には、屋根塗装は、建物の内部温度を低下させかつ冷却費用を減少させるのに役立ちうる。
【0082】
幾つかの実施態様において、前記塗料は、路面塗料として路面に塗布される。前記実施態様において、路面は、例えばアスファルトまたはコンクリートであることができる。幾つかの場合において、塗料が路面塗料として塗布される場合には、塗料は、フィラー、例えば反射性フィラーを含有する。
【0083】
一定の実施態様において、前記塗料は、弾性屋根用塗料である。一定の実施態様において、一般に、“屋根葺きに使用され液体で塗布されるアクリルコーティングのための標準規定(Standard Specification for Liquid Applied Acrylic Coating Used in Roofing)と題された、ASTM D6083−05の要件を満たすであろう。”特別な実施態様において、前記塗料は、1000時間の促進耐候試験の後の、ASTM D−2370に従った、200psiを上回る引張強さおよび100%を上回る破断点伸びを有する。
【0084】
また、誘導体化されたポリアミン、例えばアルコキシル化ポリアミンを弾性屋根用塗料に添加することを含む、常用のアクリル系弾性屋根用塗料の硬化時間を短縮する方法が提供される。前記実施態様において、誘導体化されたポリアミンは、一般に、例えば屋根用塗料中の弾性成分の質量に対して、0質量%を上回り、10質量%までの、本明細書中に記載された量で添加される。さらに、前記塗料は、表面に塗布されることができ、かつ上記の乾燥に対する要求を可能にしうる。
【0085】
誘導体化されたポリアミンは、硬化剤として、アニオン的に安定化されたポリマーを含む他のタイプの組成物中に配合されてもよい。殊に、誘導体化されたポリアミンは、速硬化および/または耐降雨性が望まれる、他の組成物の硬化時間の短縮に利用されうる。例えば、誘導体化されたポリアミンは、常用の接着剤(例えば、建築用接着剤)、グラウト、コーキング材、シーラントおよび外断熱仕上工法(EIFS)による外壁材に添加されて硬化時間を短縮することができる。
【0086】
本発明の開示内容の一定の実施態様の例は、下記に記載されるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0087】

例1:ポリエチレンイミン硬化剤を含有する組成物
アニオン的に安定化された、アクリルをベースとするコポリマー(Tg=−32℃)および2つの異なるポリエチレンイミン(PEI−1、MW=1300ダルトン;PEI−2、MW=2000ダルトン)を含有する弾性塗料を下記のように製造した。
【0088】
塗料600gのために、次の成分を混合した:
水37g、Pigment Disperser N2.4g(BASF社)、プロピレングリコール2.0g、BYK 035消泡剤2.4g(BYK社)、Lutensol TDA 8 1.0g(BASF社)、Kronos 2310 60.7g(Kronos,Inc.社)、OMYACARB UFT−FL43.0g(Omya社)、ATOMITE32.2g(Imerys社)、DURAMITE118.4g(Imerys社)およびPROXEL DB20殺生剤1.2g(Arch Chem.社)を均一になるまで混合した。
【0089】
さらに、その後に次の材料:水性ポリマーエマルション230g、水46g、29%アンモニア約2g、またはさらにpH10に達するまでの適当量のポリエチレンイミンまたは他の硬化剤、BYK 035消泡剤5.0g(BYK社)および最後に、プロピレングリコール100g中のNATROSOL 250 MXR2.5g(Ashland社)の予め混合したスラリーを添加した。
【0090】
前記塗膜のシミュレートされた耐降雨性
前記調合物を、30ミル(約762μm)の厚さの塗膜として、PGT Co.社製#2ドローダウンウェルを用いて黒のラネッタ(lanetta)紙上に塗布した。前記塗料をドローダウンした直後に、20分間のタイマーの設定を開始した。20分間の終了が近づいたときに、塗布されたパネルを45°の角度に保持された台の上に置く。このパネルの直ぐ上にビュレットをセットアップする。ビュレットの先端をパネルの表面から10インチ(約25.4cm)の距離で設定する。20分の乾燥時間後、脱イオン水を塗布されたパネル上に滴下する。全部で5mlの脱イオン水を約1分間にわたって前記パネル上に滴下する。塗膜を2時間にわたり20分間隔で試験する。2時間の終了時に、そのつどの間隔での塗膜の完全性を0%から100%までの尺度で目視的に評価する。0%は、耐水性がないことを示し、他方で、100%は、塗膜表面の損傷がなくかつ塗料の流出がないことを示す。これにより、100%の等級に基づく試験体のための硬化時間が証明される。
【0091】
塗膜引張強さおよび塗膜破断点伸びの測定
14日間の乾燥時間後、塗膜引張強さおよび塗膜破断点伸びを、ASTM D−6083に従って測定した。
【0092】
【表1】
【0093】
結果
アニオン的に安定化された、アクリルをベースとするコポリマー(Tg=−32℃)および2つの異なるポリエチレンイミン(PEI−1、MW=1300ダルトン;PEI−2、MW=2000ダルトン)を含有する塗料から形成された塗膜の塗膜引張強さ、塗膜破断点伸びおよびシミュレートされた塗膜耐降雨性が第1表中に示されている。
【0094】
第1表中に示したように、アニオン的に安定化された、アクリルをベースとするコポリマーを含有しかつPEIを含有しない組成物は、40分後に耐洗い流し性(resistence to wash−off)を示さなかった。PEIの添加は、塗膜の耐損傷性および耐洗い流し性(resistence to wash−off)を改善し、その際に、PEI2%を含有する組成物は、40分後に損傷を示さないしかつ洗い流しを示さなかった。しかし、PEIの添加は、塗膜破断点伸びを著しく減少させ、その際に、PEI2%を含有する組成物は、100%未満の塗膜破断点伸びの値を示す。さらに、PEIを含有する全ての組成物は、促進耐候試験後に重大な黄変を示した。
【0095】
例2:アルコキシル化ポリエチレンイミン(APEI)硬化剤を含有する組成物
2つの異なる、アニオン的に安定化された、アクリルをベースとするコポリマー(アクリル−1:Tg=−32℃;アクリル−2:Tg=−28℃)の一方およびエトキシル化ポリエチレンイミンを含有する弾性塗料を下記のように製造した。
【0096】
塗料600gのために、次の成分を混合した:
水37g、Pigment Disperser N2.4g(BASF社)、プロピレングリコール2.0g、BYK 035消泡剤2.4g(BYK社)、Lutensol TDA 8 1.0g(BASF社)、Kronos 2310 60.7g(Kronos,Inc.社)、OMYACARB UFT−FL43.0g(Omya社)、ATOMITE32.2g(Imerys社)、DURAMITE118.4g(Imerys社)およびPROXEL DB20殺生剤1.2g(Arch Chem.社)を均一になるまで混合した。
【0097】
さらに、その後に次の材料:水性ポリマーエマルション230g、水46g、29%アンモニア約2g、またはさらにpH10に達するまでの適当量のポリエチレンイミンまたは他の硬化剤、BYK 035消泡剤5.0g(BYK社)および最後に、プロピレングリコール100g中のNATROSOL 250 MXR2.5g(Ashland社)の予め混合したスラリーを添加した。
【0098】
前記塗料から形成された塗膜の塗膜引張強さ、塗膜破断点伸びおよびシミュレートされた塗膜耐降雨性を、例1における上記記載と同様に測定した。
【0099】
【表2】
【0100】
結果
2つの異なる、アニオン的に安定化された、アクリルをベースとするコポリマー(アクリル−1:Tg=−32℃;アクリル−2:Tg=−28℃)の一方およびエトキシル化ポリエチレンイミン(APEI)を含有する塗料から形成された塗膜の塗膜引張強さ、塗膜破断点伸びおよびシミュレートされた塗膜耐降雨性は、第2表中に示されている。
【0101】
第2表中に示したように、アニオン的に安定化された、アクリルをベースとするコポリマーを含有しかつAPEIを含有しない組成物は、40分後に耐洗い流し性(resistence to wash−off)を示さなかった。APEIの添加は、塗膜の耐損傷性および耐洗い流し性(wash−off resistence)を改善し、その際に、APEI1%を含有する組成物は、40分後に損傷を示さないしかつ洗い流しを示さなかった。さらに、APEIの添加は、塗膜破断点伸びを向上させ、その際に、APEI1%を含有する組成物は、200%を上回る破断点伸びを示す。さらに、APEIを含有する全ての組成物は、促進耐候試験後に黄変を示さなかった。
【0102】
係属された特許請求の範囲の組成物および方法は、本明細書中に記載された特別な組成物および方法による範囲内に制限されるものではなく、これらの組成物および方法は、特許請求の範囲の幾つかの視点ならびに機能的に等価である、任意の組成物および方法の説明が特許請求の範囲の範囲内にあることを意図するものである。さらに、本明細書中に示されかつ記載された組成物および方法に加えて、前記の組成物および方法の種々の変更は、係属された特許請求の範囲の範囲内にあることを意図するものである。さらに、また、本明細書中に開示された、一定の代表的な組成物および方法の工程は、特別に記載される一方で、前記の組成物および方法の工程の他の組合せは、特別に列挙しなくても、係属された特許請求の範囲の範囲内にあることを意図するものである。すなわち、工程、要素、構成材料または構成成分の組合せは、本明細書中に明らかに述べられていてもよいし、あまり述べられていなくともよいが、しかし、工程、要素、構成材料または構成成分の他の組合せは、明らかに述べられていなくとも、包含される。本明細書中で使用される、“含む(comprising)”の用語およびその変形は、“包含する(including)”の用語およびその変形と同義で使用され、かつ公然の制限のない言い方である。前記の“含む(comprising)”および“包含する(including)”の用語は、さまざまな実施態様を説明するために本明細書中で使用されたが、“本質的に...からなる(consisting essentially of)”および“からなる(consisting of)”の用語は、本発明のより詳細な実施態様を提供するために、“含む(comprising)”および“包含する(including)”の代わりに、使用されることができかつ開示されてもいる。実施例とは別の方法で、または他の点で言及される場合には、本明細書中および特許請求の範囲の中で使用される、成分、反応条件等の全体の表現の数は、極めて最小であると解釈されるべきであり、特許請求の範囲と等価の学説に制限しようと試みるべきではなく、かつ有効な桁数および通常の丸めによる取り組み方と考え合わせて構成されるべきである。