特許第6556066号(P6556066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556066
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20190729BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20190729BHJP
   B23Q 3/08 20060101ALI20190729BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20190729BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20190729BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   H01L21/78 F
   B23Q11/00 U
   B23Q3/08 A
   B23Q17/24 C
   B24B41/06 L
   H01L21/78 N
   B24B27/06 M
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-22950(P2016-22950)
(22)【出願日】2016年2月9日
(65)【公開番号】特開2017-143146(P2017-143146A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(72)【発明者】
【氏名】佐脇 悟志
(72)【発明者】
【氏名】山銅 英之
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−114145(JP,A)
【文献】 特開2015−093335(JP,A)
【文献】 実開昭63−033907(JP,U)
【文献】 特開昭54−149575(JP,A)
【文献】 特開2014−024136(JP,A)
【文献】 特開2013−058623(JP,A)
【文献】 特開2003−309087(JP,A)
【文献】 特開2011−171344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23Q 3/08
B23Q 11/00
B23Q 17/24
B24B 27/06
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する複数の分割予定ラインが設定された被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードと、被加工物の切削中に被加工物と該切削ブレードとに切削液を供給する切削液供給ノズルと、該切削ブレードで切削された被加工物を撮像する撮像ユニットと、を備える切削装置であって、
該保持テーブルは、
被加工物を保持する保持面と、該保持面に保持された被加工物の該分割予定ラインに対応する位置に形成された複数の切削ブレード用逃げ溝と、該切削ブレード用逃げ溝によって区画される各領域に形成された複数の吸引孔と、を有する保持治具と、
該吸引孔に負圧を伝達する負圧伝達部と、該保持治具が載置される載置部と、を有する治具ベースと、を含んで構成されており、
該保持治具は、複数の該切削ブレード用逃げ溝のそれぞれに隣接して形成され該切削ブレード用逃げ溝の底面より低い底面を持つ複数の切削液逃げ溝を有することを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該切削液逃げ溝の底面は、該保持面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ基板等の被加工物を切削する際に用いる切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の半導体チップが樹脂等によって封止されたパッケージ基板は、例えば、ストリート等と呼ばれる分割予定ラインに沿って切削ブレードで切削され、各半導体チップに対応する複数のパッケージデバイスへと分割される。このパッケージ基板のような被加工物を切削する際には、専用に設計された保持治具を用いて被加工物を保持することがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
保持治具には、例えば、被加工物の分割予定ラインに対応する複数の切削ブレード用逃げ溝と、分割予定ラインによって区画された被加工物の各領域を吸引する複数の吸引孔とが設けられている。この保持治具を用いれば、分割後の小片(チップ)に対応する領域で被加工物を吸引、保持しながら切削できるので、切削中に被加工物の位置がずれることはない。
【0004】
ところで、被加工物をある程度まで切削した後には、形成されたカーフ(切り口)の位置や状態を確認するためのいわゆるカーフチェックが実施される。カーフチェックでは、例えば、切削後の分割予定ラインをカメラ等の撮像ユニットで撮像し、形成された画像を元にカーフの位置や状態を確認する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−114145号公報
【特許文献2】特開2012−256793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、被加工物の切削中に供給される純水等の切削液が切削ブレード用逃げ溝に溜まると、この切削液の表面で反射する反射光によってハレーションが起こり、カーフの位置や状態を適切に検出できなくなる。
【0007】
ハレーションの発生を防ぐには、例えば、切削ブレード用逃げ溝に溜まった切削液をエアブロー等の方法で除去すれば良い。しかしながら、この方法では、切削液の除去に時間が掛かるので、生産性を十分に高く維持できない。また、過度のエアブローによって、切削時に発生した切削屑が被加工物に固着する等の問題も発生していた。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、切削ブレード用逃げ溝に溜まった切削液によるハレーションの発生を防ぐことができる切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、交差する複数の分割予定ラインが設定された被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードと、被加工物の切削中に被加工物と該切削ブレードとに切削液を供給する切削液供給ノズルと、該切削ブレードで切削された被加工物を撮像する撮像ユニットと、を備える切削装置であって、該保持テーブルは、被加工物を保持する保持面と、該保持面に保持された被加工物の該分割予定ラインに対応する位置に形成された複数の切削ブレード用逃げ溝と、該切削ブレード用逃げ溝によって区画される各領域に形成された複数の吸引孔と、を有する保持治具と、該吸引孔に負圧を伝達する負圧伝達部と、該保持治具が載置される載置部と、を有する治具ベースと、を含んで構成されており、該保持治具は、複数の該切削ブレード用逃げ溝のそれぞれに隣接して形成され該切削ブレード用逃げ溝の底面より低い底面を持つ複数の切削液逃げ溝を有する切削装置が提供される。
【0010】
また、本発明の一態様において、該切削液逃げ溝の底面は、該保持面に対して傾斜していることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る切削装置では、保持治具が、複数の切削ブレード用逃げ溝のそれぞれに隣接する切削液逃げ溝を有し、この切削液逃げ溝の底面が切削ブレード用逃げ溝の底面より低くなっているので、切削液供給ノズルから供給された切削液は、切削ブレード用逃げ溝に溜まることなく切削液逃げ溝に流れ込む。よって、切削ブレード用逃げ溝に溜まった切削液によるハレーションの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】切削装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図2図2(A)は、被加工物の構成例を模式的に示す平面図であり、図2(B)は、被加工物の構成例を模式的に示す底面図であり、図2(C)は、被加工物の構成例を模式的に示す側面図である。
図3図3(A)は、治具ベースの上面に載せた状態の保持治具を模式的に示す平面図であり、図3(B)は、治具ベース及び保持治具を含む保持テーブルの構成例を模式的に示す図である。
図4図4(A)は、切削ブレード用逃げ溝の周辺を拡大した断面図であり、図4(B)は、切削液逃げ溝を説明するための断面図である。
図5図5(A)は、第1変形例に係る保持治具を模式的に示す断面図であり、図5(B)は、第2変形例に係る保持治具を模式的に示す断面図であり、図5(C)は、第3変形例に係る保持治具を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る切削装置の構成例を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、切削装置2は、各構造を支持する基台4を備えている。
【0014】
基台4の上面には、X軸方向(前後方向、加工送り方向)に長い矩形状の開口4aが形成されている。この開口4a内には、X軸移動テーブル6、X軸移動テーブル6をX軸方向に移動させるX軸移動機構(不図示)、及びX軸移動機構を覆う防塵防滴カバー8が設けられている。
【0015】
X軸移動機構は、X軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール(不図示)を備えており、X軸ガイドレールには、X軸移動テーブル6がスライド可能に取り付けられている。X軸移動テーブル6の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレールに平行なX軸ボールネジ(不図示)が螺合されている。
【0016】
X軸ボールネジの一端部には、X軸パルスモータ(不図示)が連結されている。X軸パルスモータでX軸ボールネジを回転させることで、X軸移動テーブル6はX軸ガイドレールに沿ってX軸方向に移動する。
【0017】
X軸移動テーブル6上には、板状の被加工物11を吸引、保持するための保持テーブル(保持手段)10が配置されている。保持テーブル10は、複数の負圧伝達経路(負圧伝達部)を備えた治具ベース12を含む。この治具ベース12の上面(載置部)12aには、被加工物11に対応した保持治具14が装着される。なお、保持テーブル10の詳細については後述する。
【0018】
図2(A)は、被加工物11の構成例を模式的に示す平面図であり、図2(B)は、被加工物11の構成例を模式的に示す底面図であり、図2(C)は、被加工物11の構成例を模式的に示す側面図である。図2(A)及び図2(B)に示すように、被加工物11は、いわゆるパッケージ基板であり、平面視で矩形状に形成された金属枠体13を含む。
【0019】
金属枠体13は、例えば、42アロイ(鉄とニッケルとの合金)や銅等の金属で構成されており、複数のデバイス領域15(ここでは、3個のデバイス領域15)と、各デバイス領域15を囲む外周余剰領域17と、を有する。
【0020】
各デバイス領域15は、交差する複数の分割予定ライン(ストリート)19でさらに複数の領域(ここでは、48個の領域)に区画されており、各領域には、ICやLSI、LED等のデバイス(デバイスチップ)(不図示)が配置されている。
【0021】
また、金属枠体13の裏面13b側には、複数のデバイスを封止する樹脂層21が形成されている。図2(C)に示すように、樹脂層21は、所定の厚みに形成されており、金属枠体13の裏面13bから突出している。この樹脂層21によって、各デバイス領域15の裏面13b側全体が覆われている。
【0022】
図2(A)に示すように、金属枠体13の表面13a側には、各デバイスに対応する複数のステージ23が設けられている。各ステージ23の周囲には、複数の電極パッド(不図示)が形成されている。
【0023】
この被加工物11は、例えば、金属枠体13の裏面13b側から各ステージ23にデバイスを配置し、各デバイスの電極と、ステージ23の周囲に配置された電極パッドとを金属ワイヤー(不図示)等で接続した後に、裏面13b側を樹脂層21で封止することによって得られる。
【0024】
この被加工物11をストリート19に沿って切断、分割することで、樹脂によって封止された複数のパッケージデバイスが完成する。なお、本実施形態では、平面視で矩形状のパッケージ基板を被加工物11として用いているが、被加工物11の種類、形状等に制限はない。例えば、半導体ウェーハ、樹脂基板、金属基板、セラミックス基板等を被加工物11として用いることもできる。
【0025】
基台4の上面には、被加工物11を切削(切削加工)する切削ユニット16を支持するための門型の支持構造18が、開口4aを跨ぐように配置されている。支持構造18の前面上部には、切削ユニット16をY軸方向(左右方向、割り出し送り方向)及びZ軸方向(上下方向)に移動させる切削ユニット移動機構20が設けられている。
【0026】
切削ユニット移動機構20は、支持構造18の前面に配置されY軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール22を備えている。Y軸ガイドレール22には、切削ユニット移動機構20を構成するY軸移動プレート24がスライド可能に取り付けられている。
【0027】
Y軸移動プレート24の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール22に平行なY軸ボールネジ26が螺合されている。Y軸ボールネジ26の一端部には、Y軸パルスモータ(不図示)が連結されている。Y軸パルスモータでY軸ボールネジ26を回転させれば、Y軸移動プレート24は、Y軸ガイドレール22に沿ってY軸方向に移動する。
【0028】
Y軸移動プレート24の表面(前面)には、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール28が設けられている。Z軸ガイドレール28には、Z軸移動プレート30がスライド可能に取り付けられている。
【0029】
Z軸移動プレート30の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール28に平行なZ軸ボールネジ32が螺合されている。Z軸ボールネジ32の一端部には、Z軸パルスモータ34が連結されている。Z軸パルスモータ34でZ軸ボールネジ32を回転させれば、Z軸移動プレート30は、Z軸ガイドレール28に沿ってZ軸方向に移動する。
【0030】
Z軸移動プレート30の下部には、被加工物11を切削する切削ユニット16が設けられている。また、切削ユニット16に隣接する位置には、被加工物11の上面側を撮像するカメラ等の撮像ユニット(撮像手段)36が設置されている。
【0031】
切削ユニット移動機構20で、Y軸移動プレート24をY軸方向に移動させれば、切削ユニット16及び撮像ユニット36は割り出し送りされ、Z軸移動プレート30をZ軸方向に移動させれば、切削ユニット16及び撮像ユニット36は昇降する。
【0032】
切削ユニット16は、スピンドル(不図示)の一端側に装着された円環状の切削ブレード38を備えている。スピンドルの他端側にはモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、切削ブレード38は、スピンドルを介して回転駆動源から伝達する回転力によって回転する。
【0033】
また、切削ブレード38の近傍には、被加工物11の切削中に、切削ブレード38及び被加工物11に対して純水等の切削液を供給する切削液供給ノズル(切削液供給手段)40が配置されている。
【0034】
図3(A)は、治具ベース12の上面12aに載せた状態の保持治具14を模式的に示す平面図であり、図3(B)は、治具ベース12及び保持治具14を含む保持テーブル10の構成例を模式的に示す図である。なお、図3(B)では、図3(A)の一点鎖線AAで示される領域を矢印の方向に見た断面を示している。
【0035】
図3(A)及び図3(B)に示すように、保持治具14は、樹脂等の材料でなる矩形状の平板であり、その上面は、被加工物11を吸引、保持するための保持面14aになっている。
【0036】
保持治具14の保持面14a側には、被加工物11の分割予定ライン19に対応する切削ブレード用逃げ溝14cが形成されている。切削ブレード用逃げ溝14cの上端は、保持面14aに開口している。この切削ブレード用逃げ溝14cにより、保持面14aは、分割後の被加工物11に対応する複数の領域に区画される。
【0037】
切削ブレード用逃げ溝14cの幅は、切削ブレード38の幅より広くなっており、切削ブレード用逃げ溝14cの深さは、切削ブレード38の切り込み深さより深くなっている。そのため、被加工物11を分割予定ライン19に沿って切削する際に切削ブレード38を深く切り込ませても、保持治具14と切削ブレード38とが干渉することはない。なお、保持治具14は、切削ブレード用逃げ溝14cの深さよりも厚く形成される。
【0038】
逃げ溝14cによって区画された各領域には、保持治具14を上下に貫通して保持面14aに開口する吸引孔14dが形成されている。図3(B)に示すように、治具ベース12の上面12aに保持治具14を載せると、各吸引孔14dは、治具ベース12の上面12a側の中央部分に形成された第1の負圧伝達経路(負圧伝達部)12bに接続される。
【0039】
第1の負圧伝達経路12bは、ソレノイドバルブ42aを通じて吸引源44に接続されている。そのため、治具ベース12の上面12aに載せた保持治具14の保持面14aに被加工物11を重ね、被加工物11の分割予定ライン19を切削ブレード用逃げ溝14cに合わせた状態でソレノイドバルブ42aを開けば、被加工物11を保持テーブル10によって吸引、保持できる。
【0040】
なお、治具ベース12の上面12a側の外周部分には、保持治具14を治具ベース12に装着するための第2の負圧伝達経路12cが形成されている。この第2の負圧伝達経路12cは、ソレノイドバルブ42bを通じて吸引源44に接続されている。そのため、治具ベース12の上面12aに保持治具14の下面14bを接触させて、ソレノイドバルブ42bを開けば、保持治具14を治具ベース12の上面12aに固定できる。
【0041】
図4(A)は、切削ブレード用逃げ溝14cの周辺を拡大した断面図である。各切削ブレード用逃げ溝14cに隣接する位置には、各切削ブレード用逃げ溝14cに対して概ね平行な切削液逃げ溝14eが設けられている。この切削液逃げ溝14eの底面14gは、切削ブレード用逃げ溝14cの底面14fよりも低い位置に形成されている。すなわち、切削液逃げ溝14eは、切削ブレード用逃げ溝14cよりも低い位置に配置されている。
【0042】
また、各切削ブレード用逃げ溝14cは、隣接する切削液逃げ溝14eに接続されている。よって、被加工物11の切削中に切削液供給ノズル40から供給された切削液は、切削ブレード用逃げ溝14cに溜まることなく切削液逃げ溝14eに流れ込むことになる。つまり、撮像ユニット36で被加工物11を撮像する際に、切削ブレード用逃げ溝14cに溜まった切削液によってハレーションが発生することもない。
【0043】
図4(B)は、切削液逃げ溝14eを説明するための断面図である。なお、図4(B)では、図3(A)の一点鎖線BBで示される領域を矢印の方向に見た断面を示している。図4(B)に示すように、切削液逃げ溝14eの端部14h,14iは、保持治具14の側面に開口している。
【0044】
よって、切削ブレード用逃げ溝14cから切削液逃げ溝14eに流れ込んだ切削液は、端部14h,14iを通じて保持治具14の外部に排出される。なお、切削液逃げ溝14eの上端は、保持面14aに開口していない。よって、切削液逃げ溝14e内に切削液が残存したとしても、この切削液によってハレーションが発生することはない。
【0045】
保持治具14の製造方法に制限はない。例えば、複数の部品を接着する方法で保持治具14を製造できる。もちろん、3次元プリンタを用いて保持治具14を一体に成形しても良い。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る切削装置2では、保持治具14が、複数の切削ブレード用逃げ溝14cのそれぞれに隣接する切削液逃げ溝14eを有し、この切削液逃げ溝14eの底面14gが切削ブレード用逃げ溝14cの底面14fより低くなっているので、切削液供給ノズル40から供給された切削液は、切削ブレード用逃げ溝14cに溜まることなく切削液逃げ溝14eに流れ込む。よって、切削ブレード用逃げ溝14cに溜まった切削液によるハレーションの発生を防ぐことができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、各切削液逃げ溝14eの2つの端部14h,14iが、保持治具14の側面に開口している態様を例示したが、必ずしも各切削液逃げ溝14eの2つの端部14h,14iが全て開口している必要はない。各切削液逃げ溝14eは互いに接続されているから、少なくともいずれか1つの切削液逃げ溝14eの1つの端部が側面に開口していれば、切削液を保持治具14の外部に排出できる。
【0048】
また、上記実施形態では、切削液逃げ溝14eの底面14g及び切削ブレード用逃げ溝14cの底面14fが共に保持面14aに対して平行な態様を例示したが、切削液逃げ溝14eの底面14g及び切削ブレード用逃げ溝14cの底面14fは、保持面14aに対して傾斜していても良い。
【0049】
図5(A)は、第1変形例に係る保持治具14を模式的に示す断面図であり、図5(B)は、第2変形例に係る保持治具14を模式的に示す断面図である。図5(A)に示す保持治具14では、切削液逃げ溝14eの底面14gが保持面14aに対して傾斜しており、保持治具14の中央部分よりも外周部分(端部14h,14i)で低くなっている。
【0050】
一方、図5(B)に示す保持治具14では、切削液逃げ溝14eの底面14gが保持面14aに対して傾斜しており、保持治具14の一端側(端部14h)よりも他端側(端部14i)で低くなっている。このように、保持面14aに対して切削液逃げ溝14eの底面14gを傾斜させることで、切削液逃げ溝14eからの切削液の排出を促進させることができる。
【0051】
図5(C)は、第3変形例に係る保持治具14を模式的に示す断面図である。図5(C)に示す保持治具14では、切削ブレード用逃げ溝14cの底面14fが保持面14aに対して傾斜しており、底面14fの中央部分よりも切削液逃げ溝14e側で低くなっている。このように、切削液逃げ溝14e側で低くなるように切削ブレード用逃げ溝14cの底面14fを傾斜させることで、切削ブレード用逃げ溝14cから切削液逃げ溝14eへの切削液の排出を更に促進させることができる。
【0052】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0053】
2 切削装置
4 基台
4a 開口
6 X軸移動テーブル
8 防塵防滴カバー
10 保持テーブル(保持手段)
12 治具ベース
12a 上面(載置部)
12b 第1の負圧伝達経路(負圧伝達部)
12c 第2の負圧伝達経路
14 保持治具
14a 保持面
14b 下面
14c 切削ブレード用逃げ溝
14d 吸引孔
14e 切削液逃げ溝
14f,14g 底面
14h,14i 端部
16 切削ユニット
18 支持構造
20 切削ユニット移動機構
22 Y軸ガイドレール
24 Y軸移動プレート
26 Y軸ボールネジ
28 Z軸ガイドレール
30 Z軸移動プレート
32 Z軸ボールネジ
34 Z軸パルスモータ
36 撮像ユニット(撮像手段)
38 切削ブレード
40 切削液供給ノズル(切削液供給手段)
42a,42b ソレノイドバルブ
44 吸引源
11 被加工物
13 金属枠体
13a 表面
13b 裏面
15 デバイス領域
17 外周余剰領域
19 分割予定ライン(ストリート)
21 樹脂層
23 ステージ
図1
図2
図3
図4
図5